JP2008136450A - 2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】工業的にかつ高収率に2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを微生物学的に製造する方法を提供する。
【解決手段】一般式(1):
Figure 2008136450

(式中、Rはカルバモイル基又はヒドロキシイミノメチル基を示す。)
で表される4−置換ピリジンに、その2位にヒドロキシル基を導入する能力を有するクレブトレラ属の微生物又はその処理物を作用させ、対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの製造方法及び2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを製造することのできる微生物に関する。2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンは、医農薬中間体を始め、各種ファインケミカルの中間体として用いられ、産業上有用な化合物である。
微生物学的手法により2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを製造する方法としては、デルフティア・スピーシーズ(Delftia sp.)YGK−A649(FERM BP−10389)、デルフティア・スピーシーズ(Delftia sp.)YGK−C217(FERM BP−10388)、又はアシドボラックス・スピーシーズ(Acidovorax sp.)YGK−A854(FERM BP−10387)により、イソニコチン酸アミド又は4−ピリジンアルドキシムを対応する2−ヒドロキシイソニコチン酸アミド又は2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムへそれぞれ変換する方法(特許文献1)が知られている。しかしながら、特許文献1の実施例に開示されている2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドと2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムの蓄積濃度をそれぞれ計算すると、YGK−A649株が0.26%と0.24%、YGK−C217株が0.21%と0.45%、YGK−A854株が0.31%と0.57%であり、生産効率が低く、工業的生産方法として必ずしも満足できるものではなかった。
国際公開2006/030909号パンフレット
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンが蓄積反応液中で飽和した状態においても、持続的に一定の反応速度で4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンに変換する能力を有する微生物を用い、反応を進行させることにより、高効率な2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの蓄積反応ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、一般式(1):
Figure 2008136450
(式中、Rはカルバモイル基又はヒドロキシイミノメチル基を示す。)
で表される4−置換ピリジンに、その2位にヒドロキシル基を導入する能力を有するクレブトレラ属の微生物又はその処理物を作用させることを特徴とする、一般式(2):
Figure 2008136450
(式中、Rはカルバモイル基又はヒドロキシイミノメチル基を示す。)
で表される2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを製造する方法に関する。
本発明方法の好ましい態様においては、前記微生物がクラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443(FERM P−20939)である。
また、本発明は、受託番号FERM P−20939である、クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443にも関する。
本発明によれば、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの反応系への蓄積速度を一定に保って長時間反応が可能となり、高濃度の2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの蓄積反応をすることで、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを工業的にかつ高収率に製造することができる。
本発明方法において出発原料として用いる4−置換ピリジンとしては、イソニコチン酸アミド〔R=カルバモイル基〕と4−ピリジンアルドキシム〔R=ヒドロキシイミノメチル基〕を挙げることができる。
本発明方法で使用することのできる微生物は、4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを著量生成し、蓄積する能力を有する微生物であればその起源は限定されない。
4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを著量生成し、蓄積する能力を有する微生物は、例えば、クラブトレラ属に属する微生物が好ましく、更に具体的には、クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443(FERM P−20939)を挙げることができる。クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443は平成18年6月21日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に上記受託番号で国内寄託されている。
本発明方法において使用することのできるクラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443(FERM P−20939)の菌学的性質は次のとおりである。
1.形態的・培養的性質(+は陽性、−は陰性を表す。)
(1)細胞形態:桿菌
(2)幅:0.7〜0.8μm
(3)長さ:1.5〜2.0μm
(4)胞子形成:−
(5)運動性:+
(6)コロニー形態:円形、周縁全縁、隆起状態レンズ状、表面形状スムーズ、不透明、クリーム色
2.生理学的性質(+は陽性、−は陰性を表す。)
(1)グラム染色:−
(2)各培養温度での生育:37℃ +、45℃ −
(3)カタラーゼ:+
(4)オキシダーゼ:+
(5)酸/ガス産生(グルコース):−/−
(6)O/Fテスト(グルコース):+/−
(7)硝酸塩還元:+
(8)インドール産生:−
(9)ブドウ糖 酸性化:−
(10)アルギニンジヒドロラーゼ:−
(11)ウレアーゼ:−
(12)エスクリン加水分解:+
(13)ゼラチン加水分解:−
(14)β−ガラクトシダーゼ:+
(15)各種化合物の資化性
ブドウ糖:+
L−アラビノース:+
D−マンノース:+
D−マンニトール:+
N−アセチル−D−グルコサミン:+
マルトース:+
グルコン酸カリウム:−
n−カプリン酸:−
アジピン酸:−
dl−リンゴ酸:−
クエン酸ナトリウム:−
酢酸フェニル:−
(16)チトクロームオキシダーゼ:+
3.化学分類学的性質
本菌株よりゲノムDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の配列を解析した。決定された塩基配列を配列表の配列番号1に示す。こうして得られた本菌株の16S rDNA塩基配列(配列番号1)を用いて、DNA塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対して相同性を検索し、近縁菌群と系統樹を作製した結果、本菌株はクラブトレラ属に属すると推定された。最も近縁であった基準株はクラブトレラ・サッカロフィラ(Crabtreella saccharophila) IAM12669[Accession No.238789]であり、相同率は99.0%であった。
以上の結果より、本菌株をクラブトレラ・スピーシーズであると判定した。従って、本発明は、この新規菌株にも関する。
次に、本発明において使用することができるクラブトレラ属に属する微生物の培養方法を、クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443(FERM P−20939)の培養方法をもって説明するが、以下の方法は、YGK−A443の培養に限定されるものではなく、培養方法も本発明方法に使用することのできる微生物が増殖する限り、以下の方法に限定されるものではない。
蓄積反応に用いる前記微生物の培養液の調整方法としては、(ア)炭素源及び窒素源を適宜添加した培地に微生物の菌体を接種して同一の該培地中で増殖させて培養液を得る方法、(イ)培養を段階的に行なって培養液を得る方法、すなわち、前培養と本培養を組み合わせて培養液を得る方法が挙げられるが、好ましくは(イ)の方法である。(イ)の方法は、まず、前培養として、炭素源及び窒素源を適宜添加した培地に前記微生物の菌株を接種して微生物を増殖させて、本培養で使用する微生物の確保を目的として第一段階の培養液(以下、前培養液という。)を得た後、次に、本培養として、容量を増大させた培地に前培養液を加えて、炭素源及び窒素源を適宜添加して微生物を培養することで蓄積反応に十分な酵素の産生を目的として第二段階の培養液(以下、本培養液という。)を得る方法である。
前記微生物を培養するための培地は、通常これらの微生物が生育可能な培地であれば特に制限はなく、一般的な微生物用の任意の公知培地を用いることができる。培地の炭素源及び窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、アミノ酸、有機酸、糖類、及び/又はイソニコチン酸などを使用することができる。また、必要に応じて、微量金属塩、ビタミン類、核酸関連物質、及び/又は無機塩類などを添加することもできる。
炭素源及び窒素源の供給方法としては、(1)培地作成時にあらかじめ添加しておく方法、(2)微生物の増殖にあわせて、炭素源及び窒素源を連続又は間欠的に供給していく方法が挙げられるが、好ましくは(2)の方法である。前記(2)の方法は、微生物の増殖により消費した炭素源及び窒素源を追加していくため、微生物の濃度を高くすることができる利点がある。前記(2)の方法を更に具体的に説明すると、微生物が炭素源及び窒素源を消費する速度に合わせて炭素源及び窒素源を添加する方法などがある。例えば、微生物が生育するとともにpHが上昇し、かつ、炭素源及び窒素源を含む水溶液が酸性である場合、pHコントローラーを用いて、培養液のpHが一定になるように、炭素源及び窒素源を含む酸性の水溶液を添加すると、微生物の増殖の進行とともに、炭素源及び窒素源を少しずつ添加する方法を用いることができる。
更に、培養の際に、前記微生物が有する、4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを生成する能力を最大限に引き出すために、必要に応じて4−置換ピリジン、又はイソニコチン酸を培地に添加して培養することもできる。その場合、4−置換ピリジン、又はイソニコチン酸の添加量は、培地及び培養液に対して0.01〜3.0w/v%であり、好ましくは0.3〜2.0w/v%である。以下、本明細書において特に断りのない限り、%は、重量/容量%(w/v%)を意味する。
前記微生物の培養温度は、好ましくは10〜37℃、より好ましくは23〜32℃である。培養時の培地のpHは、好ましくは6.0〜10.0であり、より好ましくはpH6.5〜9.0である。培養は、好気的条件下で行うことが好ましく、液体培養時には通気及び撹拌を行うことが望ましい。培養時間は、好ましくは10時間〜1週間であり、より好ましくは1〜5日間であり、最も好ましくは、2〜4日である。
以上のようにして、前記の微生物の培養菌体を培養液中に蓄積させ、以下の2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの蓄積反応に用いることができる。
[i]得られた培養液はそのまま以下に述べる蓄積反応に使用してもよいし、
[ii]微生物を培養液から回収して反応に使用したり、更に
[iii]回収した微生物の処理物、例えば、破砕物、粗酵素、精製酵素などを反応に使用することもできる。
続いて、前記の微生物又はその処理物により、4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを生成する反応を実施する。この反応は、バッチ式でも、また、バイオリアクターなどを用いた連続式でも可能である。バッチ式反応の場合には、数時間から2週間で行うことができる。
上述の[i]の場合を具体的に説明すると、上記の方法で増殖させた前記微生物を含む培養液に、直接、4−置換ピリジンを加え、対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを反応系内に蓄積させる反応を開始させることができる。蓄積反応のpHは、好ましくはpH6.0〜10.0であり、より好ましくはpH6.0〜9.0である。反応温度は、好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは10〜35℃である。前記4−置換ピリジンの添加量は、培養液に対して0.1〜5.0%であり、より好ましくは0.2〜3.0%である。4−置換ピリジンの添加は一度に行ってもよいが、高濃度の4−置換ピリジンによる反応阻害が見られる場合には分割して添加してもよい。
対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの蓄積反応は、前記微生物が十分に増殖して、変換能力が十分となった時点から開始することができるが、前記微生物の増殖が十分でない培養初期段階でも、生育阻害が起こらない濃度範囲で培養液に4−置換ピリジンを添加して、微生物の増殖と対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジン蓄積反応を同時に行うことができる。
4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを蓄積する反応に関しては、上記の条件で蓄積反応を行った場合、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの蓄積濃度が0.1〜0.2%に達した時点で、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンが反応液中に析出し、その後も一定の反応速度を保って4−置換ピリジンから対応する2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを生成し、蓄積することができる。
また、上述の[ii]の場合には、上記の培養方法で増殖させた微生物を、ろ過又は遠心分離により培養液から回収して蓄積反応に使用することができる。すなわち、得られた微生物は4−置換ピリジンを含む生理食塩水、又は緩衝液などの水性溶媒に懸濁して反応に使用することができる。反応条件(pH、温度、4−置換ピリジンの添加量)は[i]の場合と同じである。
更に、上述の[iii]の場合には、前記培養方法で増殖させ、回収した微生物の処理物(例えば、破砕物、粗酵素、精製酵素)は、4−置換ピリジンを含む水性溶媒に懸濁して反応に使用することができる。あるいは、微生物又はその処理物を公知の方法で適当な担体に固定化し、その固定化物を水性溶媒と接触させて反応に使用してもよい。前記微生物又はその処理物を使用した蓄積反応に用いる水性溶媒としては、生理食塩水、リン酸カリウム緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液などを挙げることができる。反応条件は、[i]の場合と同様である。
以上のようにして得られた蓄積反応後の反応液から、必要に応じて、ろ過、遠心分離などにより微生物を除去した後、必要に応じて塩酸や硫酸などの酸溶液を加えて2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを沈殿させて、あるいは溶媒で2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを抽出して、2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを回収することができる。粗酵素、精製酵素などの処理物を使用した場合には菌体除去操作を省略することができる。また、クロマトグラフィーなどの公知の精製方法により2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを回収することもできる。
以下に代表的な実施例を示し、本発明の具体的な説明を行うが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。実施例において使用する培地を以下記載する。
(1)培地[A]
脱塩水1.0L中に、酵母エキス1.0g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物4.3g、リン酸二水素カリウム4.2g、硫酸鉄(II)七水和物0.3g、モリブデン(VI)酸二ナトリウム二水和物0.3g、塩化マンガン(II)四水和物0.3g、硫酸マグネシウム七水和物0.5g及びイソニコチン酸3.0gを含み、水酸化ナトリウム水溶液によりpHを7.5に調整した培地。
《実施例1:クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443の培養液を用いた2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの高濃度蓄積反応》
(1)前培養
培地[A]100mLを500mL容の三角フラスコに入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌を実施した後、フィルター滅菌したスクロース10%溶液2.5mLを添加した。この三角フラスコに、栄養寒天培地に維持したクラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443の菌体を1白金耳接種し、27℃で27時間振とう培養して、前培養液を得た。
(2)本培養
一方、撹拌、通気、温度及びpH調整が可能な2L容のジャーファーメンターに培地[A]1Lを入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌を実施した後、フィルター滅菌したスクロース10%溶液25mLを添加した。このジャーファーメンターに、上述の前培養液20mLを加え、撹拌及び通気を実施しながら27℃及びpH7.5で19時間培養を行った。
その後、炭素源及び窒素源であるスクロース7.5%とイソニコチン酸10%を含む酸性の水溶液を、pHコントローラーを用いて培養液に添加することで、培養液がpH7.2になるように、炭素源及び窒素源を少しずつ添加し、培養を継続した。本培養を開始してから46時間目で、スクロース7.5%とイソニコチン酸10%を含む水溶液の添加総量が380mLになり、培養を終了し、本培養液を得た。
(3)蓄積反応
得られた本培養液1L(菌体濃度:濁度(660nm)=24)に、25℃で撹拌及び通気を実施しながら、培養液中のイソニコチン酸アミド濃度が0.2〜1.0%の範囲に保たれるようにイソニコチン酸アミドを固体で適宜添加し、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積反応を行ったところ、ほぼ一定の速度で2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドが蓄積した。2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの濃度が約0.1%に達した時点で、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドが析出した。
反応液中のイソニコチン酸アミドの基質濃度及び2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの生成濃度の経過を図1に示す。図中におけるINAAはイソニコチン酸アミドを、2HINAAは2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドを示す。
反応101時間目で反応液を下記の条件でHPLC分析したところ、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積重量は192.7g(1.40モル)、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積濃度は19.9%(蓄積重量192.7g/最終反応液量970mL)であった。前記蓄積反応中に消費したイソニコチン酸アミドの合計量179.7g(1.47モル)に対して、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドのモル変換率は95%に相当した。
上記で得られた反応液(定量値で2−ヒドロキシイソニコチン酸アミド192.7gを含む)について、菌体を遠心ろ過機で除去して、析出した2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの結晶を得た。得られた2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドを、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、溶解させた後、ろ過することで、微生物由来の不溶物を除去した後、中和して2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドを析出させ、白色結晶を得た。得られた結晶は、乾燥重量で188.7g(1.37モル)、HPLC分析の面比は99.4%であった。得られた化合物は、HPLC−MS、H−NMR、13C−NMR及びIR分析により、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドと同定された。
[HPLCの分析条件]
カラム;CAPCELL PAK C18 MGII (SHISEIDO) 4.6×250mm
移動相;5v/v%アセトニトリル(85%リン酸を加えてpHを2.5に調整)
流速;1mL/分
カラム温度;40℃
検出波長;210nm
保持時間;イソニコチン酸アミド=2.7分、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミド=3.7分
《実施例2:クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443の培養液を用いた2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの長時間蓄積反応》
実施例1の(1)及び(2)と同様の方法でクラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443を培養して、得られた本培養液1L(菌体濃度:濁度(660nm)=19)に、25℃で撹拌及び通気を実施しながら、培養液中のイソニコチン酸アミド濃度が0.2〜1.0%の範囲に保たれるようにイソニコチン酸アミドを固体又は5%水溶液で適宜添加して、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積反応を10日間(240時間)行った。2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの濃度が約0.1%に達した時点で、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドが析出した。反応液に含まれる2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドを実施例1記載の条件でHPLC分析して、2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積速度(1時間当たりの2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積濃度の増加量)を求めたところ、10日間ほぼ一定であり、イソニコチン酸アミドを2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドに変換する酵素が長時間安定であることを確認した。
表1は、反応時間が48時間、145時間及び240時間における反応液量、並びに2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積濃度、蓄積重量及び蓄積速度を示している。なお、1時間当たりの2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドの蓄積重量の増加量を蓄積速度として求めた(例えば、反応240時間における蓄積速度は、蓄積重量(438−278)/反応時間(240−145)=1.7)。表中における2HINAAは2−ヒドロキシイソニコチン酸アミドを示す。
Figure 2008136450
《実施例3:クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443の静止菌体を用いた2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムの蓄積反応》
実施例1の(1)及び(2)と同様の方法でクラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443を培養して得られた本培養液10mL(菌体濃度:濁度(660nm)=28.5)を遠心分離により集菌し、静止菌体を得た。これに、4−ピリジンアルドキシム0.5%を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を10mL加え、懸濁した。この懸濁液を50mL三角フラスコに入れ、撹拌を行いながら、27℃にて反応を開始した。その後、懸濁液の4−ピリジンアルドキシム濃度が0.2〜0.6%の範囲に保たれるように4−ピリジンアルドキシムを適宜添加し、2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムの蓄積反応を行った。2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムの濃度が約0.2%に達した時点で、2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムが析出した。反応95時間目で懸濁液を下記の条件でHPLC分析したところ、2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムの蓄積濃度は2.3%となり、前記蓄積反応中に消費した4−ピリジンアルドキシムに対して、2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシムのモル変換率は100%に相当した。反応生成物は、HPLC−MS、H−NMR、及び13C−NMR分析により確認した。
[HPLCの分析条件]
カラム;CAPCELL PAK C18 MGII (SHISEIDO) 4.6×250mm
移動相;5v/v%アセトニトリル(85%リン酸を加えてpHを2.5に調整)
流速;1mL/分
カラム温度;40℃
検出波長;210nm
保持時間;4−ピリジンアルドキシム=2.7分、2−ヒドロキシ−4−ピリジンアルドキシム=6.6分
実施例1の反応経過を反応時間における各成分の基質濃度又は生成濃度で示したグラフである。

Claims (3)

  1. 一般式(1):
    Figure 2008136450
    (式中、Rはカルバモイル基又はヒドロキシイミノメチル基を示す。)
    で表される4−置換ピリジンに、その2位にヒドロキシル基を導入する能力を有するクレブトレラ属の微生物又はその処理物を作用させることを特徴とする、一般式(2):
    Figure 2008136450
    (式中、Rはカルバモイル基又はヒドロキシイミノメチル基を示す。)
    で表される2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンを製造する方法。
  2. 前記微生物がクラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443(FERM P−20939)である、請求項1記載の2−ヒドロキシ−4−置換ピリジンの製造方法。
  3. 受託番号FERM P−20939である、クラブトレラ・スピーシーズ YGK−A443。
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WO2006030909A1 (ja) * 2004-09-17 2006-03-23 Yuki Gosei Kogyo Co., Ltd. 2-ヒドロキシ-4置換ピリジンの製造方法

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