JP4742610B2 - フマル酸の製造方法 - Google Patents
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積させていた。このような培養液からフマル酸を得るにはアルカリを除く操作が必要であると共に、副生物の発生を伴うため、コストの上昇をもたらすものであった。また、アルカリ性のpH調節物質などで中和せずに発酵させることも考えられるが、発酵が進むに従
って培養液のpHが低下するため、発酵速度の著しい低下がおこり、実用的ではなく、よ
り優れた方法の確立が望まれていた(非特許文献1〜3)。
Ningjun CAO, Jianxin DU, C.S.Gong, G. T. Tasano: Applied and Environmental Microbiology, Vol.62, pp.2926-2931 (1996) E, Riscaldai., M, Moresi., F, Federici., M, Petruccioli.: Journal of Chemical Technology & Biotechnology, Vol.77, No.9, pp.1013-1024 (2002) Se-Kwon, Moon., Young-Jung, Wee., Jung-sun, Yun., Hwa-won, Ryu.: Applied Biochemistry and Biotechnology, Vol.115, pp.843-856 (2004)
pHに制御しながら培養し、微生物菌体が十分に生育した後はアルカリ性pH調節物質の
添加を行わずにフマル酸生成反応させることにより、培養液へのアルカリ性のpH調節物
質の添加を最小限に抑えつつフマル酸を効率的に生成することが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
調節物質の添加を減らす、あるいは、停止することにより、培養液のpHが2〜4の範囲になるように制御してフマル酸生成反応を行わせることを特徴とするフマル酸の製造方法に存する。
(1)糖質を含有する培養液中でリゾプス属に属する微生物又はその処理物を反応させてフマル酸を生成させる工程と、該フマル酸を回収する工程を含むフマル酸の製造方法であって、該微生物が、微生物を生育させるのに必要な時間、培地のpHが5〜8の範囲になるようにアルカリ性のpH調節物質により制御して微生物を培養し、次いで、該微生物又はその処理物を反応させる培養液のpHが2〜4の範囲になるように制御してフマル酸の生成反応させることを特徴とするフマル酸の製造方法。
(2)微生物を生育させるのに必要な時間が、6時間以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフマル酸の製造方法。
(3)糖質が、グルコースである(1)又は(2)に記載のフマル酸の製造方法。
本願発明の要旨は、糖質を含有する培養液中で微生物又はその処理物を反応させてフマル酸を生成させ、該フマル酸を回収する工程を含むフマル酸の製造方法であって、該微生物が、微生物を生育させるのに必要な時間、培養する培地のpHが4〜8の範囲になるように制御して培養された微生物であって、かつ、該微生物又はその処理物を反応させる培養液のpHが2〜4の範囲になるように制御して反応させることを特徴とするフマル酸の製造方法である。
本発明に使用される微生物は、糖質を原料としてフマル酸を生成する能力を有する微生物であれば特に限定されないが、通常はカビが好ましく、このうち、リゾプス属、又は、アスペルギルス属に属する糸状菌が好ましい。
上記糸状菌のうち、好ましくはリゾプス属に属する糸状菌であり、更に好ましくはリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)に属する糸状菌が挙げられ、特に好ましい具体例と
してはリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)ATCC9363株(ATCC9363株は、American Type Culture Collectionに寄託されている。)が挙げられる。
本発明の製造方法において用いられる微生物は、野生株だけでなく、UV照射やNTG処理等の通常の変異処理により得られる変異株、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。尚、上記遺伝子組み換え株の宿主としては、形質転換可能な微生物であれば、親株と同じ属種であっても良いし、属種の異なるものであっても良いが、上述のような糸状菌を宿主とするのが好ましい。
本発明のフマル酸生成反応に用いる微生物は、微生物を生育させるのに必要な時間、培地のpHが4〜8の範囲になるように制御して培養することによって調製する。
本発明のフマル酸生成反応に用いる微生物の培養に当たっては、微生物を寒天培地等の固体培地で斜面培養等することにより調製したものを直接培養液に植菌して培養しても良いが、上記微生物を予め少量の液体培地で培養(種培養)したものを大量の培地に植菌して培養(本培養)することが好ましい。本培養の培地は液体培地であっても固体培地であってもよいが、pH調節が容易であることから液体培地(培養液)であることが好ましい。
培地のpH制御は、アルカリ性のpH調節物質を添加すること等によりpH4以上、好ま
しくはpH5以上に調製し、また、pH8以下、好ましくはpH7以下に調整する。アルカリ性のpH調節物質としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム)の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属(バリウム、マグネシウム、カルシウム)の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、アンモニア水、炭酸アンモニア塩、尿素等を用いることができる。
、12時間以上であり、さらに好ましくは、本培養の開始時点から6時間以上、特に好まし
くは、12時間以上である。
上記炭素源の培養液への添加濃度は特に限定されないが、微生物の増殖を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利であり、通常、5〜30%(W/V)、好ましくは10〜20%(W/V)の範囲内で反応が行われる。
培養液に添加される窒素源としては、本願発明に用いる微生物が資化しうる炭素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。
また、ビオチン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて培養液に添加することができる。
微生物を用いて本反応を行う場合、菌体の生育に酸素が必要となる。本反応においては、培養液と菌体を接触させた後、まず菌体が対数増殖した後に定常期を迎える。従って、対数増殖期か定常期かで必要とする酸素量も変化するので、反応のスケールや羽形状の違いによる攪拌効率の違いを考慮した上で、通気量や攪拌量を調整する必要がある。
上記(2)で調製した微生物又はその処理物を、糖質を含有する培養液中で反応させてフマル酸を生成する。
本発明のフマル酸生成反応に用いる培養液は上記(2)で説明したものと同様の培地組成からなる培養液を用いることができる。
上記(2)で調製した微生物は、液体培養液で調製した場合は、そのままフマル酸生成反応に用いることもできるし、一度、遠心分離、ろ過等により集菌した後、あらたに培養液を加えフマル酸生成反応に用いることもできる。固体培地で調製した場合は、そのまま培養液に添加して反応に用いることもできるし、菌体を掻き取る等して集菌した後、培養液に添加して反応に用いることもできる。
培養液の主炭素源としては、本願発明に用いる微生物が資化しうる炭素源であれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、グリセロール、シュークロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、グリセロールが好ましく、特にグルコースが好ましく用いられる。
上記炭素源の培養液への添加濃度は特に限定されないが、微生物によるフマル酸の生成を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利であり、通常、5〜30%(W/V)、
好ましくは10〜20%(W/V)の範囲内で反応が行われる。
培養液に添加される窒素源としては、本願発明に用いるカビが資化しうる炭素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。
また、ビオチン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて培養液に添加することができる。
微生物を用いて本反応を行う場合、菌体の生育に酸素が必要となる。本反応においては、培養液と菌体を接触させた後、まず菌体が対数増殖した後に定常期を迎える。従って、対数増殖期か定常期かで必要とする酸素量も変化するので、反応のスケールや羽形状の違いによる攪拌効率の違いを考慮した上で、通気量や攪拌量を調整する必要がある。
本発明の方法においては、フマル酸生成反応する温度は、好ましくは20℃〜40℃、より好ましくは25℃〜35℃である。
このようにして培養液中に蓄積したフマル酸は常法に従って、培養液より分離・精製される。具体的には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、イオン交換樹脂等で脱塩し、その溶液から結晶化あるいはカラムクロマトグラフィーにより有機酸を分離・精製することができる。
< 実施例1 >
グルコース:10g、硫酸アンモニウム: 2.2g 、リン酸1カリウム: 0.3g 、硫酸マグネシウム・7 水和物: 0.25g、硫酸亜鉛・7水和物: 66mg、寒天: 1g、コーンスティープリカー: 3ml、コーンスターチ: 30gを蒸留水に溶かし900mlとし、この培地90mLを500mLの三角フラスコにいれ、1 20℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ除菌フィルターを通した0.05M炭酸カリウム溶液を10ml添加し、リゾプス・オリザエATCC9363株を植菌した。これを32℃、220rpmの条件で18時間培養し、種とした(種培養)。グルコース: 200g、硫酸アンモニウム: 2.6g、リン酸1 カリウム: 0.6g、硫酸マグネシウム・7水和物: 0.4g、硫酸亜鉛・7水和物: 80mgを蒸留水に溶かし2Lとし、この培地2Lを3Lのエアーリフト方バイオリアクターにいれ、120℃、20分加熱殺菌した。これを室温まで冷やし、先述の種を植菌し、32℃の温度、通気1VVMの条件で培養した。初期pHは6に設定し、培養開始後、27時間までは2N−水酸化ナトリウム溶液でpH6以下にならないよう調整し、pH5以下にならないように制御した。その後はアルカリの添加を止め培養を続けた。培養開始後、84時間でフマル酸が28g/L蓄積していた。そのときのpHは3であった。本実施例の培養経過を図1に示す。
<比較例1>
培養開始後27時間までの2N−水酸化ナトリウム溶液でのpH調整を行わない以外は実施例1と同じように培養した。培養開始後、84時間でフマル酸の蓄積は見られなかった。本比較例の培養経過を図2に示す。
Claims (3)
- 糖質を含有する培養液中でリゾプス属に属する微生物又はその処理物を反応させてフマル酸を生成させる工程と、該フマル酸を回収する工程を含むフマル酸の製造方法であって、該微生物が、微生物を生育させるのに必要な時間、培地のpHが5〜8の範囲になるようにアルカリ性のpH調節物質により制御して微生物を培養し、次いで、該微生物又はその処理物を反応させる培養液のpHが2〜4の範囲になるように制御してフマル酸の生成反応させることを特徴とするフマル酸の製造方法。
- 微生物を生育させるのに必要な時間が、6時間以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフマル酸の製造方法。
- 糖質が、グルコースである請求項1又は2に記載のフマル酸の製造方法。
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