JP2019150000A - 3−ヒドロキシ酪酸の製造方法 - Google Patents

3−ヒドロキシ酪酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】3HBを生物的に安定的に効率よく生産すること。【解決手段】ハロモナス属に属する3−ヒドロキシ酪酸生産菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気発酵工程、好気発酵工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して、ハロモナス属に属する3−ヒドロキシ酪酸生産菌を培養し、培養液にて3−ヒドロキシ酪酸又はその塩を産生する微好気発酵工程、微好気発酵工程で得られる培養液から、3−ヒドロキシ酪酸又はその塩を回収する回収工程、を順に行う3−ヒドロキシ酪酸の製造方法であって、微好気発酵工程に際して、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換する嫌気性ガス置換工程を行う。【選択図】なし

Description

本発明は、3−ヒドロキシ酪酸の製造方法に関する。
3ヒドロキシ酪酸やその塩(以下3HBと称する、また、3HBと称する場合、特にその単量体を指すものとする)は、もともと人の体内に存在する物質であるため生体親和性が高く、糖質に代わる画期的なエネルギー源として期待されている。また、3HBは単なるエネルギー源という役割だけでなく、様々な遺伝子の発現やタンパク質の活性に影響するシグナル伝達物質としての作用があることがわかってきた。3HBは、例えば、遺伝子発現調節作用によって、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することによって認知機能や、長期持続記憶を改善することが知られ、アルツハイマーの予防に有効性が確認されている。例えば、ココナツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸の摂取および体内での代謝により生成される3HBが、脳や体内において糖質をうまく利用できないアルツハイマー病、糖尿病の患者の症状を改善させる効果を持つことが知られている。また、3HBは体内において糖質よりも速やかにエネルギーに変換されること、細胞への脂肪や糖の吸収を抑制する効果を有することから、アスリート向けのエネルギー物質、ダイエット・健康食品分野への応用が期待できる。
また、これらの用途のほか、3HBは生分解性樹脂の原料として用いられることが知られており、工業的用途においても利用価値が高まりつつある物質である。
このような3HBは、各種微生物にポリ3ヒドロキシ酪酸(以下PHBと称する)を生産させたのち、得られたPHBを酵素等により分解することにより得ることができる(特許文献1)。また、このような微生物としてハロモナス菌が、好気条件でPHBを蓄積し、微好気条件に移行することでPHBを分解して生成した3HBを培養液中に分泌産生することが見出されている(特許文献2)。
特開2010−168595号公報 特開2013−081403号公報
ところが、特許文献2のように3HBを生物的に生産する場合に、微好気条件にて培養することが記載されているが、微好気がどの程度の酸素濃度雰囲気であればよいかについては、実験者により、経験的に求められるにとどまる。3HB生産性のハロモナス属菌の場合、概して、培養環境中に酸素供給は行わないものの、積極的に酸素の遮断は行わない程度の環境が求められ、具体的には、好気発酵工程時に培養液に供給する酸素を停止するとともに、培養液を収容した容器の気相に対し、積極的に外気が混入しない程度の環境にて行われる。しかし、3HB生産性のハロモナス属菌を、微好気培養を行う場合の好適条件については、特に見出されているわけではなく、ハロモナス属菌による3HB生産性能力は十分発揮されているとは言い難い状況にあった。
したがって、本発明は上記実状に鑑み、ハロモナス属菌による3HB生産性能力を十分に高めることのできる培養条件を見出し、生物的に安定的に効率よく3HBを生産する技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の3HBの製造方法の特徴構成は、
ハロモナス属に属する3HB生産菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気発酵工程、
好気発酵工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して、前記ハロモナス属に属する3HB生産菌を培養し、培養液にて3HB又はその塩を産生する微好気発酵工程、
微好気発酵工程で得られる培養液から、3HB又はその塩を回収する回収工程、
を順に行う3HBの製造方法であって、
前記微好気発酵工程に際して、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換する嫌気性ガス置換工程を行う点にある。
特許文献2に示される、微好気発酵工程は、好気発酵工程時に培養液に供給する酸素を停止するとともに、培養液を収容した容器の気相に対し、積極的に外気が混入しない程度の環境にて行われる。このような場合、容器の気相中の酸素は、直ちにはなくならず、3HB生産菌の呼吸によって消費されて次第に減少することになる。これに対して、本発明者らは、微好気発酵工程に際して、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換する嫌気性ガス置換工程を行うと、3HB生産菌が高濃度の3HBを生産可能になることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換した場合、気相の気体成分は、より素早く嫌気性ガスに置換されることになる。また、培養液中の溶存酸素についても、3HB生産菌の生育に伴い素早く減少して濃度が低下する。したがって、酸素濃度の低下が急激に行われることによって微好気培養条件が速やかに達成されるため、3HB生産菌の微好気環境への馴化も速やかに行われ、より一層菌体がPHBから3HBを生産可能な性質を発揮でき、3HB生産菌が高濃度の3HBを生産可能になると考えられる。そのため、微好気発酵工程で得られる培養液から、3HB又はその塩を回収する回収工程により、3HBをより高効率に回収することができるようになった。
尚、従来、培養液を収容した容器の液相は、常時撹拌されており、気相中に酸素が含まれる場合、溶存酸素は、気相中の酸素が消費されてある程度低くならなければ微好気条件として適した領域にまで低下しにくいが、気相が嫌気性ガスで置換された後は、液相への嫌気性ガス溶解による液相中の脱酸素も速やかに進むため、素早く溶存酸素濃度の低下がみられるものと考えられる。
また、液相への嫌気性ガス溶解による液相中の脱気が進行すると、気相中に溶存酸素が追い出されるため、気相中の酸素濃度が上昇する。また、積極的に容器の気相を気密に封止していなければ、外気の流入により気相の酸素濃度は経時的に上昇して、数%程度で一定になる。このようにして嫌気性ガス置換工程後にも気相中の酸素濃度は上昇する場合があるが、微好気発酵工程中にさらに嫌気性ガス置換工程を行うと、気相中の酸素濃度を、常時低い値に維持することができ、より一層菌体がPHBから3HBを生産可能な性質を発揮でき、3HB生産菌が高濃度の3HBを生産可能になると考えられる。そのため、微好気発酵工程で得られる培養液から、3HB又はその塩を回収する回収工程により、3HBをより高効率に回収することができるようになった。
なお、前記嫌気性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素から選ばれる少なくとも一種以上を主成分として含有するものとすることができ、このようなガスは汎用性が高く安価で入手容易である。
また、前記嫌気性ガス置換工程は、培養液を収容した容器の液相に嫌気性ガスをバブリングして行ってもよい。
液相に嫌気性ガスをバブリングして嫌気性ガス置換工程を行うと、容器中の気相のみならず液相に含まれる溶存酸素まで速やかに嫌気性ガスに置換することができるので、酸素濃度を、より低い値に維持することができ、菌体がPHBから3HBを生産可能な性質を発揮できる条件を速やかに形成し、3HB生産菌が高濃度の3HBを生産可能になると考えられる。
したがって、3HBを生物的に安定的に効率よく生産できるようになった。
3HB生産性を示すグラフ
以下に、本発明の3HBの製造方法を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
〔3HB製造方法〕
ハロモナス属に属する3HB生産菌を培養して、3HB又はその塩を生産する場合に、ハロモナス属に属する3HB生産菌用の培地に含有させる有機炭素源として、単糖や二糖類を用いる。
具体的には以下の工程に従って、培養を行う。
(1)ハロモナス属に属する3HB生産菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気発酵工程、
(2)好気発酵工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更する嫌気性ガス置換工程を行った後、前記ハロモナス属に属する3HB生産菌を培養し、培養液にて3HB又はその塩を産生する微好気発酵工程、
(3)微好気発酵工程で得られる培養液から、3HB又はその塩を回収する回収工程
<好気発酵工程>
本発明の実施形態に係る3HBの製造方法における好気発酵工程は、ハロモナス属に属する3HB生産菌を、有機炭素源及び無機塩を含有する培地中で好気培養する工程である。
<A:3HB生産菌>
本発明の実施形態に係る3HBの製造方法の好気発酵工程にて用いる3HB生産菌は、下記の(i)又は(ii)のいずれかによって示されるハロモナス属に属する3HB生産菌を用いればよい。
(i)無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地にて好気的に増殖し、3HB又はその塩を菌体外の培地中に生産させることを特徴とする3HB生産菌。
(ii)無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地にて好気的に増殖し、PHBを自らの菌体内にて蓄積した後、pHを調整することで、3HB又はその塩を菌体外の培地に分泌産生することを特徴とする3HB生産菌。
「無機塩」及び「有機炭素源」については、<培地>の欄にて後述する通りにすることができる。
上述のハロモナス属に属する3HB生産菌は、0.1〜1.0Mの塩濃度を適とする好塩性を有し、時には塩を含まない培地においても生育する細菌である。そして、上述のハロモナス属に属する3HB生産菌は、通常はpH5〜12程度の培地にて生育する。
上述のハロモナス属に属する3HB生産菌として、例えば、ハロモナス・エスピー(Halomonas sp.)KM−1株が挙げられる。ハロモナス・エスピーKM−1株は、平成19年7月10日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に受託番号FERM P−21316として寄託されている。また、この菌株は、現在国際寄託に移管されており、その受託番号はFERM BP−10995である。当該ハロモナス・エスピーKM−1株の16S rRNA遺伝子は、DDBJにAccession Number AB477015として登録されている。
また、上述したようなハロモナス属に属する3HB生産菌の生育特性等に鑑みて、本発明の実施形態に係る3HBの製造方法において用いる3HB生産菌として、ハロモナス・エスピーKM−1株以外に、ハロモナス・パンテラリエンシス(Halomonas pantelleriensis:ATCC 700273)、ハロモナス・カンピサリス(Halomonas campisalis:ATCC 700597)等も挙げることができる。
さらに、16SリボゾームRNA配列による分析から、上述のハロモナス属に属する3HB生産菌に限らず、ハロモナス・ニトリトフィルス、ハロモナス・アリメンタリア等も、本発明の実施形態に係る3HBの製造方法にて用いるハロモナス属に属する3HB生産菌として使用してもよい。
なお、上述したハロモナス属に属する3HB生産菌には、遺伝子が導入されていてもよい。導入される遺伝子は、本発明の実施形態に係る3HBの製造方法において、3HB又はその塩の生産効率等を向上させる機能を発現させるものであれば特に限定されない。例えば、PHBの発現量を増大させる遺伝子、PHBの該菌体内への蓄積を上昇させる機能を発現させる遺伝子;3HB又はその塩を培地にて生産する機能を増大させる遺伝子;3HB又はその塩の産生量を増大させる遺伝子;PHBを分解する遺伝子等が挙げられる。組換えDNAの当該菌体への導入方法及びこれによる形質転換方法としては、一般的な各種方法を採用できる。
<B:培地>
好気発酵工程にて用いる培地は、無機塩と及び有機炭素源を含有する。培地のpHは特に限定されないが、上述した3HB生産菌の生育条件を満たすpHであることが好ましく、具体的にはpH5〜12程度にすればよい。より好ましくはpH8.8〜12の培地である。アルカリ性の培地を用いれば、他の菌のコンタミネーションをより効果的に防止することができ、また分泌された3HBがクロトン酸へ変化するのを抑制するので好ましい。
好気発酵工程にて用いる培地に配合する無機塩は、特に限定されることは無く、例えばリン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛、銅、コバルト等の金属塩が挙げられる。
例えば、ナトリウムを無機塩として用いる場合は、NaCl、NaNO、NaHCO、NaCO等を用いればよい。
これらの無機塩は、上述の3HB生産菌にとって窒素源やリン源となるような化合物を用いることが好ましい。
窒素源は、硝酸塩、亜硝酸塩、尿素、アンモニウム塩、グルタミン酸等を用いればよく、特に限定はされないが、例えばNaNO、NaNO、NHCl等の化合物を用いればよい。
窒素源の使用量は、菌体の生育に影響を及ぼすことなく、本発明の実施形態に係る3HB又はその塩の生産目的が達成される範囲において適宜設定すればよく、具体的には、培養初期の培地100ml当たり通常であれば硝酸塩として500mg程度以上とすればよく、より好ましくは1000mg程度以上、更に好ましくは1250mg程度以上である。
リン源は、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩等を用いればよく、特に限定はされないが、例えばKHPO、KHPO等の化合物を用いればよい。
リン源の使用量も、上記の窒素源の使用量と同様の観点から適宜設定すればよく、具体的には、リン酸二水素塩として培地100ml当たり通常は50〜400mg程度とすればよく、より好ましくは100〜200mg程度である。
これらの無機塩は単一で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の化合物等も含めた無機塩は、総量で通常は0.1〜2.5M程度となる濃度で用いればよく、好ましくは0.2〜1.0M程度、より好ましくは0.2〜0.5M程度である。
培地に配合する有機炭素源は、特に限定はされないが、例えばトリプトン、イーストエキストラクト、可溶性デンプン、エタノール、n−プロパノール、酢酸、酢酸ナトリウム、プロピオン酸、廃グリセロール、廃蜜糖、木材糖化液、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース等の六炭糖;リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース等の五炭糖;スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等の二糖;エリスリトール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられる。
本発明の実施形態に係る3HBの製造方法では、塩濃度が比較的高い条件の培地で、ハロモナス属に属する3HB生産菌を培養するので、他の菌体の混入、増殖の恐れ等がほとんどない。従って、上述の培地に対して滅菌処理等を行っても行わなくともよく、且つ、簡便な設備で培養することも可能である。
<C:好気発酵工程>
好気発酵工程における上述のハロモナス属に属する3HB生産菌の培養は、好気培養を採用する。好気発酵工程における好気培養は、当該菌体が増殖し、且つ、該菌体内にPHBが著量蓄積するような条件となる好気培養である限り、特に限定はされない。
具体的には、5ml程度の培地に当該3HB生産菌を植菌し、通常30〜37℃程度、攪拌速度は120〜180rpm程度で1晩振盪しながら前培養を行う。続いて前培養して得られた菌体を、三角フラスコ、発酵槽、ジャーファーメンター等に入った培地中に100倍程度に希釈し本培養する。
本培養は通常20〜45℃程度で可能であるが、30〜37℃程度で行うことが好ましい。この際の攪拌速度は通常は150〜250rpm程度とすればよい。なお、培養環境は培地が空気に触れる環境とすればよく、培地表面に積極的に酸素を含む気体を吹き付ける方法や培地中に係る気体を吹き込む方法を採用してもよい。
好気発酵工程では、このような培養条件でハロモナス属に属する3HB生産菌を好気培養すればよい。具体的に好気培養時の培地中の溶存酸素濃度は、特に限定はされないが、通常は2mg/L以上とすればよく、5mg/L以上が好ましい。
好気発酵工程での培養方法は、回分培養、半回分培養、連続培養等の培養方法が挙げられ、特に限定はされないが、3HB又はその塩又は3HB又はその塩を効率よく製造するには、本発明の実施形態に係る3HBの製造方法によって用いる3HB生産菌が他の菌が混入する可能性が極めて低いことを考慮して長期の連続培養も可能である。そして、培養環境も特に限定はされず、非滅菌環境下であっても滅菌環境下であってもよい。
<D:嫌気性ガス置換工程>
嫌気性ガス置換工程は、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換することにより行う。嫌気性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素から選ばれる少なくとも一種以上を主成分として含有するものが利用できる。また、嫌気性ガス置換工程は、好気発酵工程終了後速やかに行うとともに、後述の微好気発酵工程を行う際にも、数分〜数時間ごとに定期的に行う。
具体的に培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換するには、容器の液相に嫌気性ガスをバブリングする導入部を接続するとともに、排気部を設け、導入部から容器の気相を介して排気部に嫌気性ガスを通気することによって行うことができる。
嫌気性ガス置換工程は、数百mL〜数L程度の培養容器の内部の1/3〜2/3容量程度の気相に対して数L/分の嫌気性ガスを数分程度流通することにより実行することができる。この際、培養容器の培養液が収容される液相は撹拌状態に維持される。
<E:微好気発酵工程>
本発明の実施形態に係る3HBの製造方法における微好気発酵工程は、前記菌体をpH8.0以上のアルカリ性領域に調整および維持して培養し、培養液にて微生物に酸素供給を積極的には行わない条件下で3HB又はその塩を産生する工程である。微生物に積極的に酸素供給を行わずに培養を継続すると、系内の酸素が消費され無酸素に近い状態となるが、絶対嫌気とまではならない酸素濃度数%の環境が維持されるため、微好気培養に適した環境を維持できる。
培養を継続した場合、有機酸の精製により、培地のpHは下がる傾向がある。この様な培地のpHは適宜公知のpH測定用装置又はこれが付随したジャーファーメンター等によって確認することができる。
用語「調整及び維持」とは、上述のようなpHの確認を行いながら、pH調整剤を添加してpHの好適な状態を保つことを意味する。
微好気工程にて調整及び維持するpHは好ましくは8.0以上とする。これにより、3HB生産菌による3HB生産性を高く維持することができる。
pH調整剤としては、特に限定はされないが、例えば水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられる。より具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、アンモニア水等が挙げられる。
pHの調製時期は、菌体内でのPHBの蓄積量がほぼ一定となる時期であれば特に限定されないが、例えば、好気発酵工程によって得られるハロモナス属に属する3HB生産菌体中のPHBの蓄積量が乾燥菌体100重量部当たり15重量部程度以上となる時期等が挙げられる。
また、好気発酵工程によって得られるハロモナス属に属する3HB生産菌体の乾燥菌体重量が培地1L当たり30重量部程度以上となる時期であってもよい。
具体的なハロモナス属に属する3HB生産菌体中のPHBの蓄積量は、下記の実施例に示す方法を採用して測定する。
<F:回収工程>
回収工程において、「培地中に3HBを生産させる」とは、好気発酵工程〜微好気発酵工程にて培養して得られたハロモナス属に属する3HB生産菌体内から、その培地中に3HBを分泌させることを意味する。
そして、「培地中に3HBの塩を生産する」とは、好気発酵工程及び微好気発酵工程にて培養して得られたハロモナス属に属する3HB生産菌体内から、その培地中に3HBの塩を分泌させることのみならず、好気発酵工程及び微好気発酵工程にて培養して得られたハロモナス属に属する3HB生産菌体内から培地中に分泌された3HBが、培地中に存在する陽イオン成分と反応して、3HBの塩を形成することも意味する。
陽イオン成分とは、培地中に含まれているものであれば、特に限定はされないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、モリブデンイオン、アンモニウムイオン、マンガンイオン等が挙げられる。
本発明の実施形態に係る3HBの製造方法における回収工程は、上記微好気発酵工程で得られた培地中から、3HB又はその塩を回収する工程である。ここで、回収とは培地中に3HB又はその塩が存在している時に上述の微好気発酵工程の培養を停止し、3HB又はその塩を含む培地と、上記3HB生産菌体を分離すればよい。
具体的な分離の手法は、遠心操作、濾過等の公知の固液分離の操作を採用すればよい。また、培養の停止方法も特に限定はされず、例えば、上記微好気発酵工程によって得られるハロモナス属に属する3HB生産菌を加熱、酸処理等の方法によって殺菌する方法、遠心操作、濾過等の公知の固液分離手段を用いて培地と前記3HB生産菌体を分離する方法等が挙げられる。
培地中の3HB又はその塩の存在を確認する方法は、菌種、培地成分、培養条件等により変わり得るものであるので、これらの要素を考慮して適宜決定する。例えば、継時的に培地を採取し、これをHPLC等の分析方法を供して、培養を停止する時間を決定することもできる。
なお、回収される3HBの塩は、培地中に含まれる無機塩に基づくナトリウム、カルシウム等のアルカリ金属;アルカリ土類金属陽イオン等と反応したアルカリ金属塩として回収される。従って、3HBを製造するには、回収した培地を塩析等の常法に供すればよい。
また、回収した培地を適切なカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製工程に供してもよい。これら以外の他の方法として、回収した培地のpHを適宜変更して、所望の3HB又はその塩のいずれかを精製工程に供してもよい。また、回収した培地に低級アルコール類を添加し、エステル化反応を経て、3HBエステルとして蒸留等で精製することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明が実施例に限定されないことは言うまでも無い。
ハロモナス属に属する3HB生産菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気発酵工程を行い、培養液を得る。具体的には、糖質を含む培養液を収容した発酵容器に3HB生産性のハロモナス菌を添加して、まず撹拌通気しつつ好気発酵工程を行う。これにより、ハロモナス菌により糖質を資化させ、PHBを生産させることができ、ハロモナス菌体内にPHBを蓄積する。
次に、糖類がほぼ完全に消費されたころに、具体的には発酵液のODが250程度までハロモナス菌が増殖したころに、発酵容器内への通気を空気から窒素に替え、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換する嫌気性ガス置換工程を行う。
その後、通気を停止して菌体をpH9.5程度のアルカリ性領域で培養する微好気発酵工程を行う。これにより、ハロモナス属に属する3HB生産菌は体内に蓄積したPHBを分解消費するとともに、発酵液中に3HBを放出する。その結果、3HB及び菌体を含有する発酵液が得られる。
次に回収工程として、得られた発酵液中の菌体成分や、高分子量のたんぱく質等の夾雑物を濾過して除去する。具体的には、得られた発酵液は限外ろ過膜(UF膜)によりろ過する。すると、簡便に菌体やタンパク質等の大分子量の夾雑物を除去することができ、主に3HBを含有する発酵液とすることができる。ここで得られた発酵液は、3HBを約0.5〜0.8g/L程度含有するものとなっていた。
<嫌気性ガス置換工程の比較試験>
上記実施例における好気発酵工程で得られた培養液のうち、微好気発酵工程に供する直前のものを採取し、下記にしたがって、嫌気性ガス置換工程を行った場合と行わなかった場合の比較試験を行った。
<実施例1>
好気培養によりOD250まで増殖したハロモナス.spKM−1の培養液50mlを300mlのフラスコに入れて、NaOHでpH9.2に調整および維持した。窒素ガスを3L/分の速度で1分間300mlのフラスコに入れた50mlの培養液の中でバブリングして窒素ガスを封入して(密閉した状態)33℃において50rpm(撹拌速度を抑制し、気液接触を制限した状態)の振とう培養を行った。これにより容器内は、酸素濃度0%〜数%程度の微好気条件となり、培養液に対する溶存酸素濃度も、速やかにきわめて低くなっているものと考えられる。そのため、菌体がPHBから3HBを速やかに生産可能な性質を発揮できる条件となって、3HB生産菌が高濃度の3HBを生産可能になると考えられる。
培養液は、開始時と、1時間後、1.5時間後、2.5時間後、5.5時間後に500μLを採取して分析を行った。培養液の採取後は、開始時だけでなく、継時的に培養液を採取した後に、それぞれ1分間同様に窒素ガスのバブリングを行った。分析にあたっては、採取した培養液を13,500rpm遠心して得られた上清を100倍希釈したものを試料とし、HPLCで3HB濃度の分析を行った。
<比較例1>
好気培養によりOD250まで増殖したハロモナス.spKM−1の培養液50mlを300mlのフラスコに入れて、NaOHでpH9.2に調整および維持した。これをそのまま、振とう培養器でフラスコにシリコ栓を付けて(通気が確保できる程度の半密閉状態)33℃において50rpm(撹拌速度を抑制し、気液接触を制限した状態)の振とう培養を行った。これにより容器内の気相は酸素濃度が大気中よりもやや低くなるとともに、培養液に対して酸素溶解が進まなくなり、穏やかに環境が変化して微好気条件に変化していくものと考えられる。そのため、徐々に、菌体がPHBから3HBを生産可能な性質を発揮できる条件となり、3HB生産菌が高濃度の3HBを生産可能になると考えられる。
その結果、図1に示すように、実施例1(図中●)と、比較例1(図中○)を比較すると、実施例1の方がPHBの分解が早く、3HBが速やかに生成していることが分かった。また、3HBの5.5時間後の最終濃度も実施例1のほうが高かった。
したがって、嫌気性ガス置換工程を行うと、ハロモナス属菌による3HB生産性能力を十分に高めることができ、生物的に安定的に効率よく3HBを生産できるようになった。
上記実施の形態では、嫌気性ガス置換工程を窒素ガスにより行ったが、ヘリウムガス、アルゴンガス、炭酸ガス等、他の不活性ガスにより行うこともできる。
また、嫌気性ガス置換工程は、微好気発酵工程に際して、複数回行ったが、少なくとも一回行えばよく、たとえば、途中で培養液をサンプリングしないような場合、最初の一回で足りると考えられる。尚、培養液のサンプリングを複数回行うなど、微好気培養の条件が、好気培養寄りに変化しやすい場合、複数回の嫌気性ガス置換工程を行うことが好ましい。
本発明に係る3HBの製造方法によると3HBを高効率に製造でき、アルツハイマー病、糖尿病の患者の症状を改善させる効果や、ダイエット・健康食品分野への応用が期待できる。

Claims (4)

  1. ハロモナス属に属する3−ヒドロキシ酪酸生産菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気発酵工程、
    好気発酵工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して、前記ハロモナス属に属する3−ヒドロキシ酪酸生産菌を培養し、培養液にて3−ヒドロキシ酪酸又はその塩を産生する微好気発酵工程、
    微好気発酵工程で得られる培養液から、3−ヒドロキシ酪酸又はその塩を回収する回収工程、
    を順に行う3−ヒドロキシ酪酸の製造方法であって、
    前記微好気発酵工程に際して、培養液を収容した容器の気相を嫌気性ガスで置換する嫌気性ガス置換工程を行う3−ヒドロキシ酪酸の製造方法。
  2. 前記微好気発酵工程中にさらに嫌気性ガス置換工程を行う請求項1に記載の3−ヒドロキシ酪酸の製造方法。
  3. 前記嫌気性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素から選ばれる少なくとも一種以上を主成分として含有するものである請求項1または2に記載の3−ヒドロキシ酪酸の製造方法。
  4. 前記嫌気性ガス置換工程は、培養液を収容した容器の液相に嫌気性ガスをバブリングして行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の3−ヒドロキシ酪酸の製造方法。
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Title
TADASHIGE KOBAYASHI, BIOSCI. BIOTECH. BIOCHEM., vol. 59(5), JPN6021034337, 1995, pages 932 - 933, ISSN: 0004587564 *

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