JP2008136386A - ホップ潜在ウイルスの検出方法、検出用プライマーセット及び検出用キット - Google Patents
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Abstract
【課題】ホップ潜在ウイルスを検出する抗体の性能(力価及び特異性)、検体数及び評価を行う場所を選ばず、栽培時・収穫時・保管時等のあらゆる季節において、ホップ潜在ウイルスを特異的かつ高感度に検出する方法を提供する。
【解決手段】検体からホップ潜在ウイルスのRNAを抽出する抽出ステップと、特定な塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを用いて、このRNAを鋳型にRT−LAMP法によってcDNAの増幅反応を行う増幅ステップと、特定な塩基配列を含有するcDNAの増幅が増幅ステップで認められた場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断する判断ステップと、を含む検出方法。
【選択図】なし
【解決手段】検体からホップ潜在ウイルスのRNAを抽出する抽出ステップと、特定な塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを用いて、このRNAを鋳型にRT−LAMP法によってcDNAの増幅反応を行う増幅ステップと、特定な塩基配列を含有するcDNAの増幅が増幅ステップで認められた場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断する判断ステップと、を含む検出方法。
【選択図】なし
Description
ホップ潜在ウイルスの検出方法、検出用プライマーセット及び検出用キットに関する。
ホップ潜在ウイルスは、カルラウイルス属に属する植物病原性ウイルスであり、主にホップ(Humulus lupulus L.)に感染する。ホップ潜在ウイルスがホップに一度感染すると、アブラムシの媒介によってホップの感染被害が拡大する。
ドイツ、アメリカ、イギリス及びチェコ等のホップの主要生産国並びに日本では、ホップ潜在ウイルスによる感染被害を防ぐため、茎頂培養によって生産したウイルスフリー苗を用いてホップの栽培が行われている。
ホップを栽培している農場では、ホップ潜在ウイルスの感染調査が定期的に行われ、ホップ潜在ウイルスの二次感染を防いでいる。ホップ潜在ウイルスの感染調査は、ホップに感染しているホップ潜在ウイルスをELISA法で検出するのが一般的である。
ELISA法によるホップ潜在ウイルスの検出方法は、ホップ潜在ウイルスを特異的に認識する一次抗体が固相されたマイクロプレート中で、検体に含まれるホップ潜在ウイルス粒子と一次抗体とを反応させるステップと、一次抗体に結合しなかった検体中の成分を洗浄するステップと、一次抗体と結合したホップ潜在ウイルス粒子と、酵素標識され、かつ、ホップ潜在ウイルスを特異的に認識する二次抗体とを反応させるステップと、ホップ潜在ウイルス粒子に結合しなかった二次抗体を洗浄するステップと、ニ次抗体に標識されている酵素と化学発色基質又は化学発光基質とを酵素反応させるステップと、酵素反応によって得られた発色又は発光の強さからホップ潜在ウイルス粒子の量を見積もるステップと、から構成される。
Adamsら、1982年、Ann. Appl. Biol.、101巻、p.483−494
Hatayaら、2000年、Arch. Virol.、145巻、p.2503−2524
しかしながら、ELISA法で使用するホップ潜在ウイルスを認識する抗体の力価や特異性が不十分な場合には、検体中に存在するホップ潜在ウイルス以外の成分の影響を受けるため、ホップ潜在ウイルスの存在を示すシグナルをバックグラウンドのシグナルとして評価したり、非特異的な結合をホップ潜在ウイルスの存在を示すシグナルとして評価したりすることが生じる。
また、ELISA法によるホップ潜在ウイルスの検出方法は、上記の通り複数のステップから構成されており、各ステップは実験室で反応時間及び洗浄回数等を決めて同じ条件で作業する必要があるが、検体数が増加した場合には、各ステップでの作業は煩雑となり、正確な評価に支障をきたす傾向がある。
さらに、ELISA法は、ウイルス粒子そのものをターゲットとして検出する方法であるため、ウイルスゲノム又は宿主ゲノムに組み込まれたプロウイルスを検出することはできず、例えば、高温のためにホップ潜在ウイルス粒子の含有量が著しく低下することが知られている夏季には、ホップ潜在ウイルスに感染されているホップであっても擬陽性又は未検出と判断される場合がある。
そこで本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、ホップ潜在ウイルスを検出する抗体の性能(力価及び特異性)、検体数及び評価を行う場所を選ばず、栽培時・収穫時・保管時等のあらゆる季節において、ホップ潜在ウイルスを特異的かつ高感度に検出する方法を提供することにある。本発明の目的はまた、この方法に使用するホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセット及び検出用キットを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、ホップ潜在ウイルスの検出方法であって、検体からホップ潜在ウイルスのRNAを抽出する抽出ステップと、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを用いて、このRNAを鋳型にReverse transcription−Loop−mediated isothermal amplification(RT−LAMP)法によってcDNAの増幅反応を行う増幅ステップと、配列表の配列番号8で示される塩基配列を含有するcDNAの増幅が増幅ステップで認められた場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断する判断ステップと、を含む検出方法を提供する。
本発明者らは、等温の遺伝子増幅反応であるReverse transcription−Loop−mediated isothermal amplification法(以下、RT−LAMP法)を利用し、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子の特定の領域を増幅することにより、ホップ潜在ウイルスの検出を簡易かつ高感度に行い得ることを見出した。ここで、「RT−LAMP法」とは、逆転写反応とLAMP法による等温遺伝子増幅反応が組み合わされ、RNAを鋳型にこれに相補的なcDNAを増幅する方法である。原理の詳細部分については、国際公開第00/28082号パンフレットに記載されている。
上記検出方法に従って、ホップ潜在ウイルスの感染の有無を調べたいホップの組織からRNAを抽出し、その抽出液に配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを加えてRT−LAMP法によるcDNAの増幅反応を行えば、ホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの一部配列のcDNAを簡易かつ高感度に検出することが可能となり、ホップ潜在ウイルスの感染の有無を判断できる。
また、配列表の配列番号8で示される塩基配列に相補的なホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの塩基配列及び配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドがそれぞれアニールするホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの塩基配列は、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子の一部配列であり、これらの塩基配列を含有するホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの領域は、RT−LAMP法によってcDNAを増幅するための標的領域として適している。このため、増幅されたcDNAの有無を確認することによって、ホップ潜在ウイルスの有無を特異的に検出できる。
上記プライマーセットは、配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットであることがより好ましい。
配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドに、配列表の配列番号5及び6で示される塩基配列からなる2種類のオリゴヌクレオチドをLoop Primerとして加えてcDNAの増幅反応を行えば、DNA合成の起点を増やすことが可能となるため、増幅時間を短縮でき、より効率的なホップ潜在ウイルスの検出が可能となる。
また本発明は、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチド又は配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチド、を含むホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセットを提供する。
ホップ潜在ウイルスの感染の有無を調べたいホップの組織からRNAを抽出し、その抽出液に上記プライマーセットを加えてRT−LAMP法によるcDNAの増幅反応を行えば、ホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの一部配列のcDNAを簡易かつ高感度に検出することが可能となり、ホップ潜在ウイルスの感染の有無を判断できる。
また本発明は、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチド又は配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチド、からなるホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセット、逆転写酵素、鎖置換型DNA合成酵素、dNTPs及び緩衝液を含むホップ潜在ウイルスの検出用キットを提供する。
上記検出用キットがあれば、RT−LAMP法によるホップ潜在ウイルスの検出に必要な試薬を同時に入手することが可能であり、例えば、野外でホップ潜在ウイルスの検出を行なう場合であっても、試薬の濃度調製等の煩雑な作業が不要となり、簡易にホップ潜在ウイルスの検出を行なうことができる。
本発明によれば、検体数及び評価を行う場所を選ばず、栽培時・収穫時・保管時等のあらゆる季節において、ホップ潜在ウイルスを特異的かつ高感度に検出することができる。また、本発明のホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセット及び検出用キットは、RT−LAMP法に好適に使用でき、ホップ潜在ウイルスの簡易かつ高感度な検出を可能にする。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明のホップ潜在ウイルスの検出方法は、検体からホップ潜在ウイルスのRNAを抽出する抽出ステップと、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを用いて、このRNAを鋳型にReverse transcription−Loop−mediated isothermal amplification(RT−LAMP)法によってcDNAの増幅反応を行う増幅ステップと、配列表の配列番号8で示される塩基配列を含有するcDNAの増幅が増幅ステップで認められた場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断する判断ステップとを含むことを特徴としている。
「ホップ潜在ウイルス」とは、Hop Latent virusのことであって、カルラウイルス(Carlavirus)属に属するRNAウイルスである。ホップ潜在ウイルスの宿主は、ホップ(Humulus lupulus L.)であり、ホップ潜在ウイルスの感染を受けたホップは、毬花の収量が減少することが知られている。
上記検出方法で使用する「検体」としては、例えば、植物の葉、茎、根及び果実等を例示できるが、サンプリングが容易なことより葉及び果実が好ましく、葉がより好ましい。検体をサンプリングする時期としては、例えば、栽培時、収穫時及び保管時等を例示できる。
上記抽出ステップでは、細胞壁で囲まれた植物細胞中に存在しているホップ潜在ウイルスのRNAを抽出するが、例えば、蒸留水又は弱アルカリ性付近のpHを有する緩衝液中で検体を物理的にホモジナイズすることによりホップ潜在ウイルスのRNAを抽出できる。
使用する緩衝液のpHは、例えば、pH8.0〜pH9.5付近が好ましく、使用する緩衝液としては、例えば、トリス/塩酸緩衝液、トリス/酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等が挙げられる。また、検体からホップ潜在ウイルスのRNAをより効率的に抽出するには、植物からRNAを抽出する方法やゲノムDNAを抽出する方法が適しており、これらの方法は、例えば、Molecular cloning(Maniatisら、1989年、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス)等の遺伝子工学プロトコールに記載されている。RNAを抽出する方法では、グアニジンチオシアネートを、ゲノムDNAを抽出する方法では、Cetyl trimethyl ammonium bromide(以下、CTAB)を含有した抽出バッファーを使用するのがより好ましい。
ホモジナイズは、検体の細胞壁を壊し、植物細胞中に存在するホップ潜在ウイルスのRNAを抽出できればよく、例えば、ポリトロンホモジナイザー、テフロンホモジナイザー、乳鉢等を用いて行うことができる。また、検体を凍結した状態でホモジナイズすれば、より効率的に検体の細胞壁を壊し、細胞中に存在するホップ潜在ウイルスのRNAを容易に抽出できる。また、上記したグアニジンチオシアネートを含有するRNA抽出バッファーやCTABを含有するゲノムDNA抽出バッファーを使用する場合には、ボルテックスミキサー等で撹拌を繰り返すだけでも、細胞中に存在するホップ潜在ウイルスのゲノムRNAを抽出することが可能である。
抽出ステップで抽出されたホップ潜在ウイルスのゲノムRNAは、アルコール沈殿を行うことによって沈殿として回収し、RT−LAMP法に適した緩衝液に置換してもよいが、蒸留水又は弱アルカリ性付近のpHを有する緩衝液中でホップ潜在ウイルスのRNAを抽出した場合には、そのまま以下の増幅ステップで使用することも可能である。
増幅ステップでは、配列表の配列番号2及び4で示される塩基配列からなる二種類のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、抽出ステップで抽出されたホップ潜在ウイルスのRNAを鋳型に逆転写反応が行われ、引き続き、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを用いて、逆転写反応で得られたcDNAを鋳型にLoop−mediated isothermal amplification法(以下、LAMP法)による等温遺伝子増幅反応が繰り返し行われる。
増幅ステップで行われるcDNAの増幅方法は、RT−LAMP法と呼ばれ、RNAからcDNAを合成する逆転写反応とLAMP法による等温遺伝子増幅反応とを同時に等温で行うことによって、ホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの標的領域の一部配列のcDNAを増幅できる。
図1は、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットとホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの標的領域との位置関係を示した図である。
配列表の配列番号7は、ホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの標的領域のcDNAの塩基配列を示している。
配列表の配列番号1で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(以下、HLV−FIPプライマー)はFIPプライマーであり、F2c領域と相補的な配列であるF2領域を3’末端側に持ち、5’末端側にF1c領域と同じ配列を持つようにすれば設計できる。
配列表の2で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(以下、HLV−BIPプライマー)はBIPプライマーであり、B2c領域と相補的な配列であるB2領域を3’末端側に持ち、5’末端側にB1c領域と同じ配列を持つようにすれば設計できる。
配列表の配列番号3で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(以下、HLV−F3プライマー)は、F3プライマーであり、F3c領域と相補的な配列であるF3領域を持つようにすれば設計できる。
配列表の配列番号4で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(以下、HLV−B3プライマー)は、B3プライマーであり、B3c領域と相補的な配列であるB3領域を持つようにすれば設計できる。
RT−LAMP法によるcDNAの増幅反応は、抽出ステップで抽出されたホップ潜在ウイルスのRNAと、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットと、逆転写酵素と、鎖置換型DNA合成酵素と、dNTPs(dATP、dTTP、dGTP及びdCTP)と、緩衝液と、を含む反応液を、等温で一定時間静置すればよい。
温度は、50℃以上75℃以下が好ましく、60℃以上65℃以下がより好ましく、65℃がさらに好ましい。静置時間は、15分以上であればcDNAの増幅を検出できるが、15分以上1時間以内が好ましく、20分以上40以内がより好ましい。
逆転写酵素、鎖置換型DNA合成酵素、dNTPs及び緩衝液としては、例えば、Loopamp RNA増幅試薬キット(栄研化学社製)に含まれる各試薬を使用できる。
また、増幅ステップでは、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットの代わりに、配列表の配列番号5及び6で示される塩基配列からなる2種類のオリゴヌクレオチドからなるプライマーを加えた配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のプライマーセットを使用することが好ましい。
配列表の配列番号5で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(以下、HLV−LoopFプライマー)及び配列表の配列番号6で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(以下、HLV−LoopBプライマー)は、増幅反応の起点となるダンベル構造の5’末端側のループの1本鎖部分に相補的な配列を持つLoopプライマーである。HLV−LoopFは、図1中のF1領域とF2領域の間の配列に相補的な配列を持つようにすれば設計でき、HLV−LoopBは、図1中のB1領域とB2領域の間の配列に相補的な配列を持つようにすれば設計できる。HLV−LoopF及びHLV−LoopBを用いることにより、DNA合成の起点を増やすことが可能となり、増幅効率が上がり、増幅に要する時間を1/3〜1/2に短縮することが可能となる。
判断ステップでは、配列表の配列番号8で示される塩基配列を繰り返し含有するcDNAの増幅が上記増幅ステップで認められた場合に、ホップ潜在ウイルスが存在すると判断できる。
配列表の配列番号8で示される塩基配列は、ホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの標的領域の一部配列のcDNAであって、上記プライマーセットを用いたRT−LAMP法で繰り返し増幅されるコア配列である。このコア配列に相補的なホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの塩基配列及び配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドがそれぞれアニールするホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの塩基配列は、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子の一部配列であり、これらの塩基配列を含有するホップ潜在ウイルスのゲノムRNAの領域は、RT−LAMP法によってcDNAを増幅するための標的領域として適している。このため、増幅されたcDNAの有無を確認することによって、ホップ潜在ウイルスの有無を特異的に検出することを可能にしている。
ホップ潜在ウイルスの有無の判断は、例えば、RT−LAMP法によるcDNAの増幅反応を行った後の反応液を肉眼で観察し、反応液の白濁が確認された場合にホップ潜在ウイルスが存在したと判断できる。また、この反応液に蛍光インターカレーターを加え、UV照射下でcDNAの増幅を示す発光が確認された場合にホップ潜在ウイルスが存在したと判断できる。
より詳細にホップ潜在ウイルスの有無を判断するには、例えば、増幅されたcDNAを配列表の配列番号8で示される塩基配列中に存在する制限酵素NaeIで消化して電気泳動を行い、285bpのDNA断片が確認された場合にホップ潜在ウイルスが存在したと判断できる。
本発明のホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセットは、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むこと又は配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチドを含むことを特徴としている。
上記のプライマーセットは、配列表の配列番号1〜6のそれぞれの塩基配列情報をもとに、DNA合成機で合成できる。
また、本発明のホップ潜在ウイルスの検出方法を使用するために必要な各種の試薬類は、予めパッケージングしてキット化することができる。具体的には、配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチド又は配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセット、核酸合成の基質となる4種類のdNTPs(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)、RNAからcDNAを合成する逆転写酵素、鎖置換活性を有する鎖置換型DNA合成酵素、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、補助因子としての塩類(マグネシウム塩又はマンガン塩等)、酵素や鋳型を安定化する保護剤、さらに必要に応じて反応生成物の検出に必要な試薬類をキットとして提供できる。
キットには、本発明のプライマーによってRT−LAMP反応が正常に進行することを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明のプライマーにより増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1) RT−LAMP法によるホップ潜在ウイルスの検出
(ホップ潜在ウイルスの検出に用いるホップ組織サンプルの調製)
ホップ潜在ウイルスに感染したホップの脇芽由来のホップ試験管苗から根を除いたものをホップ潜在ウイルス検出用検体とし、ウイルスフリーのホップ試験管苗から根を除いたものをコントロール検体とし、それぞれの検体からホップ組織サンプルを調製した。
(ホップ潜在ウイルスの検出に用いるホップ組織サンプルの調製)
ホップ潜在ウイルスに感染したホップの脇芽由来のホップ試験管苗から根を除いたものをホップ潜在ウイルス検出用検体とし、ウイルスフリーのホップ試験管苗から根を除いたものをコントロール検体とし、それぞれの検体からホップ組織サンプルを調製した。
ホップ潜在ウイルス検出用検体及びコントロール検体は、それぞれ液体窒素で凍結し、組織がパウダー状になるまで乳鉢で粉砕し、そこに検体重量に対し5倍量の蒸留水を加えて縣濁した。こうして得られたホップ潜在ウイルス検出用検体及びコントロール検体の縣濁液は、それぞれホップ組織サンプルとして以下の実験に用いた。
(RNA試料の調製)
各ホップ組織サンプル(各40μL)に、それぞれ160μLの2×CTAB溶液(2% セチルトリメチルアンモニウムブロミド、20mM EDTA、1.4M NaCl、5% β−メルカプトエタノール、0.1M トリス、pH 9.5)を加え、65℃で20分間保温した。その後、15,000回転で10分間遠心分離して残渣を沈殿として取り除き、その上清を新しいエッペンドルフチューブに移した。そこに200μLのイソプロパノールを加えて混和し、15,000回転で10分間遠心分離することによってRNAを沈殿として回収し、70%エタノールで洗浄後に風乾し、40μLの滅菌水で溶解してRNA試料とした。
各ホップ組織サンプル(各40μL)に、それぞれ160μLの2×CTAB溶液(2% セチルトリメチルアンモニウムブロミド、20mM EDTA、1.4M NaCl、5% β−メルカプトエタノール、0.1M トリス、pH 9.5)を加え、65℃で20分間保温した。その後、15,000回転で10分間遠心分離して残渣を沈殿として取り除き、その上清を新しいエッペンドルフチューブに移した。そこに200μLのイソプロパノールを加えて混和し、15,000回転で10分間遠心分離することによってRNAを沈殿として回収し、70%エタノールで洗浄後に風乾し、40μLの滅菌水で溶解してRNA試料とした。
こうして得られたホップ潜在ウイルス検出用検体のRNA試料及びコントロール検体のRNA試料は、それぞれ滅菌水で103倍、104倍、105倍、106倍及び107倍に段階希釈し、そのうちの2μLをRNA希釈試料としてRT−LAMPに供試した。RNA希釈試料は、ホップ組織サンプルの2×104分の1、2×105分の1、2×106分の1、2×107分の1及び2×108分の1にそれぞれ相当する。
(RT−LAMP法に使用するプライマー)
プライマーには、FIPプライマーとしてHLV−FIPプライマー(配列番号1)、BIPプライマーとしてHLV−BIPプライマー(配列番号2)、F3プライマーとしてHLV−F3プライマー(配列番号3)、B3プライマーとしてHLV−B3プライマー(配列番号4)、LoopプライマーとしてHLV−LoopF(配列番号5)及びHLV−LoopB(配列番号6)を用いた。これらの6種類のプライマーを使用してRT−LAMP法によるcDNAの増幅を行うことで、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子のcDNAの一部配列である配列表の配列番号8で示される塩基配列を繰り返して含有するcDNAを増幅できる。
プライマーには、FIPプライマーとしてHLV−FIPプライマー(配列番号1)、BIPプライマーとしてHLV−BIPプライマー(配列番号2)、F3プライマーとしてHLV−F3プライマー(配列番号3)、B3プライマーとしてHLV−B3プライマー(配列番号4)、LoopプライマーとしてHLV−LoopF(配列番号5)及びHLV−LoopB(配列番号6)を用いた。これらの6種類のプライマーを使用してRT−LAMP法によるcDNAの増幅を行うことで、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子のcDNAの一部配列である配列表の配列番号8で示される塩基配列を繰り返して含有するcDNAを増幅できる。
(RT−LAMP法によるcDNAの増幅)
RT−LAMP法によるcDNAの増幅は、Loopamp RNA増幅試薬キット(栄研化学社製)を用いて行った。具体的には、製造元のプロトコールに従って、反応液に段階希釈した上記RNA希釈試料(2μl)をそれぞれ加え、そこに上記の6種類のプライマー、逆転写酵素、鎖置換型DNA合成酵素、dNTPs及び緩衝液を加え、65℃で、50分間静置した。
RT−LAMP法によるcDNAの増幅は、Loopamp RNA増幅試薬キット(栄研化学社製)を用いて行った。具体的には、製造元のプロトコールに従って、反応液に段階希釈した上記RNA希釈試料(2μl)をそれぞれ加え、そこに上記の6種類のプライマー、逆転写酵素、鎖置換型DNA合成酵素、dNTPs及び緩衝液を加え、65℃で、50分間静置した。
(増幅したcDNAの検出)
RT−LAMP法によるcDNAの増幅が認められる場合には、遊離したピロリン酸がマグネシウムイオンと反応してピロリン酸マグネシウムを形成するため、反応液が白濁した場合にcDNAの増幅が認められたと判定できる。上記のRT−LAMP法によるcDNAの増幅で増幅されるcDNAは、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子のcDNAの一部配列に相当する配列表の配列番号8で示される塩基配列であるため、反応液が白濁した場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断した。
RT−LAMP法によるcDNAの増幅が認められる場合には、遊離したピロリン酸がマグネシウムイオンと反応してピロリン酸マグネシウムを形成するため、反応液が白濁した場合にcDNAの増幅が認められたと判定できる。上記のRT−LAMP法によるcDNAの増幅で増幅されるcDNAは、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子のcDNAの一部配列に相当する配列表の配列番号8で示される塩基配列であるため、反応液が白濁した場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断した。
表1は、ホップ潜在ウイルス検出用検体のRNA希釈試料及びコントロール検体のRNA希釈試料を用いて、RT−LAMP法でホップ潜在ウイルスの検出を行なった結果である。
その結果、コントロール検体のRNA希釈試料では、いずれもホップ潜在ウイルスは検出されなかったが、ホップ潜在ウイルス検出用検体のRNA希釈試料では、ホップ組織サンプルを2×107倍希釈してもホップ潜在ウイルスを検出することができた。以上より、RT−LAMP法による検出では、ホップ潜在ウイルスが感染したホップ潜在ウイルス検出用検体でのみホップ潜在ウイルスが検出されることが判明し、後述するELISA法による検出よりも検出感度がはるかに高いことが示唆された。
しかしながら、RT−LAMP法で、非特異的にcDNAが増幅された場合であっても反応液の白濁は認められるため、以下の実験により確認試験を行った。具体的には、ホップ潜在ウイルス検出用検体のRNA希釈試料を用いたRT−LAMP法によるcDNAの増幅反応で、cDNAの増幅が認められた各反応液の1μLを制限酵素NaeIで消化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分画し、285bpのDNA断片が検出されるか否かを確認した。NaeIは配列表の配列番号8に示される塩基配列中に存在するため、制限酵素NaeIで消化することにより、RT−LAMP法で増幅されたcDNAを285bpのDNA断片として検出することが可能となる。電気泳動後のゲルは、エチジウムブロマイド溶液に10分間浸漬することにより分画されたDNA断片を染色し、紫外線を照射することによりDNAバンドを可視化できる。
図2は、ホップ潜在ウイルス検出用検体のRNA希釈試料を用いてRT−LAMP法で増幅されたcDNAを制限酵素NaeIで消化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動したときのバンドパターンを示すゲル写真である。
その結果、RT−LAMP法によるcDNAの増幅反応で白濁が認められ、表1でホップ潜在ウイルスが検出された各反応液中のcDNAは、いずれも制限酵素NaeIで消化することにより285bpのDNA断片のバンドが検出された。ゲル中には、285bpのメジャーバンドの他に、186bp、142bpのマイナーバンドが確認されるが、LAMP法によるcDNAの増幅反応では、標的領域の一部配列のcDNAがつながった状態で増幅されるため、285bpのメジャーバンドの他に、186bp、142bpのマイナーバンドが確認されることは正しい結果であるといえる。
以上より、上記の実施例1において、RT−LAMP法でcDNAの増幅を示す白濁が認められた場合には、非特異的なcDNAの増幅が起こったのではなく、ホップ潜在ウイルスのコートタンパク質遺伝子の一部が特異的に増幅したものであることが立証され、ホップ潜在ウイルスの検出は、ホップ潜在ウイルスの存在に依存した結果であることが明らかとなった。
したがって、実施例1に示されたRT−LAMP法によるホップ潜在ウイルスの検出方法は、後述するELISA法によるホップ潜在ウイルスの検出と比べて非常に高感度な方法であり、反応液の白濁を視覚的に判断するだけで容易にホップ潜在ウイルスの有無を判定できる方法であることが示唆された。
(比較例1) ELISA法によるホップ潜在ウイルスの検出
(ホップ潜在ウイルスの検出用のELISA用プレートの作成)
ホップ潜在ウイルスを特異的に認識する抗ホップ潜在ウイルス抗体(北海道大学農学部植物ウイルス学研究室より分与)を、0.05M SCBバッファー(1.59g/L Na2CO3、2.93g/L NaHCO3、pH9.6)で1μg/mLに希釈し、96穴マイクロプレートに0.2mLずつ注入し、37℃で4時間静置した。その後、0.02M PBS−T(8.0g/L NaCl、0.2g/L KH2PO4、2.9g/L Na2HPO4・12H2O、0.2g/L KCl、0.5mL/L tween−20、pH7.4)を用いて5分間隔で5回洗浄し、こうして得られた抗体固相プレートをホップ潜在ウイルスの検出用のELISA用プレートとして以下の試験に用いた。
(ホップ潜在ウイルスの検出用のELISA用プレートの作成)
ホップ潜在ウイルスを特異的に認識する抗ホップ潜在ウイルス抗体(北海道大学農学部植物ウイルス学研究室より分与)を、0.05M SCBバッファー(1.59g/L Na2CO3、2.93g/L NaHCO3、pH9.6)で1μg/mLに希釈し、96穴マイクロプレートに0.2mLずつ注入し、37℃で4時間静置した。その後、0.02M PBS−T(8.0g/L NaCl、0.2g/L KH2PO4、2.9g/L Na2HPO4・12H2O、0.2g/L KCl、0.5mL/L tween−20、pH7.4)を用いて5分間隔で5回洗浄し、こうして得られた抗体固相プレートをホップ潜在ウイルスの検出用のELISA用プレートとして以下の試験に用いた。
(ELISA法による検出)
実施例1に記載したホップ潜在ウイルス検出用検体及びコントロール検体の縣濁液から調製した各ホップ組織サンプル(各40μL)に、160μLの蒸留水を加え、さらに200μLのPBS−T/PVP溶液(16.0g/L NaCl、0.4g/L KH2PO4、5.8g/L Na2HPO4・12H2O、0.4g/L KCl、1.0mL/L tween−20、40g/L ポリビニルピロリドン、pH7.4)を加えて混合し、15,000回転で10分間遠心分離し、200μLの上清を回収しタンパク質試料とした。
実施例1に記載したホップ潜在ウイルス検出用検体及びコントロール検体の縣濁液から調製した各ホップ組織サンプル(各40μL)に、160μLの蒸留水を加え、さらに200μLのPBS−T/PVP溶液(16.0g/L NaCl、0.4g/L KH2PO4、5.8g/L Na2HPO4・12H2O、0.4g/L KCl、1.0mL/L tween−20、40g/L ポリビニルピロリドン、pH7.4)を加えて混合し、15,000回転で10分間遠心分離し、200μLの上清を回収しタンパク質試料とした。
こうして得られたホップ潜在ウイルス検出用検体のRNA試料及びコントロール検体のタンパク質試料は、残りの上清を用いて、それぞれPBS−T/PVP溶液で10倍、102倍、103倍に段階希釈し、それぞれ200μLをタンパク質希釈試料としてELISAに供試した。希釈をしていないタンパク質試料は、ホップ組織サンプルの2分の1に相当し、10倍、102倍及び103倍に段階希釈したタンパク質希釈試料は、ホップ組織サンプルの20分の1、2×102分の1、2×103分の1にそれぞれ相当する。
次にタンパク質試料及び各タンパク質希釈試料(各200μL)のそれぞれを上記のELISA用プレートに添加し、一晩静置した。0.02M PBS−Tを用いて5分間隔で5回洗浄し、アルカリフォスファターゼ標識した上記抗ホップ潜在ウイルス抗体を0.02M PBS−Tで1000倍希釈したものを200μLずつ加え、37℃で3時間静置した。その後、ELISA用プレートの各ウェルを0.02M PBS−Tを用いて5分間隔で5回洗浄し、200μLの基質溶液(10% Diethanolamine、1g/L p−ニトロフェニル燐酸二ナトリウム)を加え、室温にて一定時間反応させ、405nmの吸光度を測定した。
表2は、ホップ潜在ウイルス検出用検体のタンパク質試料及び各タンパク質希釈試料並びにコントロール検体のタンパク質試料及び各タンパク質希釈試料を用いて、ELISA法でホップ潜在ウイルスの検出を行なった結果である。
その結果、コントロール検体のRNA希釈試料では、いずれもホップ潜在ウイルスは検出されなかったが、ホップ潜在ウイルス検出用検体のタンパク質試料及び各タンパク質希釈試料では、ホップ組織サンプルを20倍希釈までであればホップ潜在ウイルスを検出することができた。以上より、ELISA法による検出では、ホップ潜在ウイルスが感染したホップ潜在ウイルス検出用検体でのみホップ潜在ウイルスが検出され、ELISAの系は正常にホップ潜在ウイルスを検出していることが確認できたが、上記のRT−LAMP法による検出と比較して、検出感度が少なくとも106倍(100万倍)低いことが明らかとなった。
Claims (5)
- ホップ潜在ウイルスの検出方法であって、
検体からホップ潜在ウイルスのRNAを抽出する抽出ステップと、
配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを用いて、前記RNAを鋳型にReverse transcription−Loop−mediated isothermal amplification(RT−LAMP)法によってcDNAの増幅反応を行う増幅ステップと、
配列表の配列番号8で示される塩基配列を含有するcDNAの増幅が前記増幅ステップで認められた場合にホップ潜在ウイルスが存在すると判断する判断ステップと、
を含む、検出方法。 - 前記プライマーセットは、配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセットである、請求項1記載の検出方法。
- 配列表の配列番号1〜4で示される塩基配列からなる4種類のオリゴヌクレオチドを含む、ホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセット。
- 配列表の配列番号1〜6で示される塩基配列からなる6種類のオリゴヌクレオチドを含む、ホップ潜在ウイルスの検出用プライマーセット。
- 請求項3又は4記載のプライマーセット、逆転写酵素、鎖置換型DNA合成酵素、dNTPs及び緩衝液を含む、ホップ潜在ウイルスの検出用キット。
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