JP2008114783A - 構造体のシミュレーション方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の材料相のそれぞれは異なる材料特性を有し、かつ、これらの材料特性のうち少なくとも1つ以上が時間又は周波数に依存して変化するように前記構造体の一部分を規定して再現した第1の離散化モデルに対して、前記構造体の一部分を均質な特性としたときの、時間又は周波数に依存する均質特性を取得するようにシミュレーションを実行して、前記均質特性を取得する。次に、構造体を再現した第2の離散化モデルの特性として、取得した均質特性を入力して、構造体の粘弾性挙動を再現するシミュレーションを第2の離散化モデルに対して実行し、前記第2の離散化モデルに作用する物理量を算出する。
【選択図】図2
Description
前記第2の離散化モデルで表される前記構造体は、例えばタイヤである。
その際、前記第2の離散化モデルで表される前記構造体はタイヤであり、前記第2の離散化モデルに対して実行するシミュレーションは、タイヤが路面上を転動する転動シミュレーションであり、前記均質特性は前記Prony級数で表されたものであり、前記均質特性における前記指数関数の緩和時定数は、前記転動シミュレーションにおける前記タイヤの転動周期の0.001倍〜5倍の時間範囲の中で算出されることが好ましい。
特に、均質特性をProny級数で表し、指数関数の緩和時定数と指数関数に乗算する弾性係数を均質特性の特性パラメータとして規定する場合、構造体の粘弾性特性に基づく挙動を再現するシミュレーションを迅速に行うことができる。さらに、構造体が路面を転動するタイヤである場合、タイヤの転動周期に応じて前記緩和時定数の範囲を定めて算出することにより、転動周期に応じて規定された緩和時定数に基づいてタイヤの転動シミュレーションを行うので、タイヤ性能を効果的に評価することができる。
処理装置10は、入力操作系12、コンピュータ14及びディスプレイ16を有する。
入力操作系12は、マウスやキーボードであり、各種情報をオペレータの指示により入力するデバイスである。
ディスプレイ16は、入力操作系12を用いてオペレータが指示できるように入力画面を表示し、又後述する有限要素モデル及びシミュレーション演算結果を表示する部分である。
ミクロスケールシミュレーション演算部22、パラメータ設定部23及びマクロスケールシミュレーション演算部24の各部分の機能については後述する。
図2は構造体のシミュレーション方法の一例の流れを示すフローチャートである。図3は本発明のシミュレーションの対象となる構造体中の不均質材料の代表領域のモデルの一例の図である。この不均質材料は、ポリマー相A(図3中灰色領域)と、カーボンブラックやシリカ等の無機化合物充填補強材である粒系フィラー相B(図3中の黒色領域)とからなり、ポリマー相A中にフィラー相Bが不均質に分散配置されている。すなわち、材料特性の異なる複数の材料相が配置されている。この不均質材料のうち、灰色領域のポリマー相Aの材料特性は、時間又は周波数に応じて特性が変化するものであり、超弾性ポテンシャルを用いて規定される超弾性特性と、Prony級数で表された粘弾性特性を組み合わせて規定されている。一方、フィラー相Bの材料特性は、弾性特性で規定されている。
なお、不均質材料を構成する材料相は、エラストマーやフィラー等の固体相であるばかりでなく、気体や液体が満たされた空隙相であってもよい。
このような不均質材料についてシミュレーションモデルが作成される。
不均質材料の代表領域は、例えば直方体形状とし互いに直交する3方向にメッシュ分割することにより、直方体形状の有限要素(ボクセル)を連続的に配置し、例えば256個×256個×256個の有限要素により構成した有限要素モデルを作成する。なお、図3では、32個×32個×32個にメッシュ分割した例が示されている。
なおミクロスケールモデルは、図3に示すように立方体形状のボクセルであるが、本発明においてはこのような一定の形状を成したボクセルに限られない。互いに直交する3方向にメッシュ分割せず、有限要素を材料相の形状に合わせてメッシュ分割して、6面体形状、4面体形状等の有限要素によってミクロスケールモデルを構成してもよい。
この変形は、ミクロスケールモデルで表される構造体の一部分の材料特性を均質材料としたときの粘弾性特性を表わす特性パラメータの値を求めるために行われる。ミクロスケールシミュレーションは、例えば、応力緩和試験を再現するシミュレーションである。このとき、均質特性として図4に示すような緩和弾性率が得られる。この緩和弾性率をProny級数で展開したときの緩和時定数及び緩和係数の値が、特性パラメータとして算出される。
下記には、Prony級数で展開するときの式が示されている。
図4に示す例の場合、N=2のとき、G1=0,7575,τ1=1.94×10-4,G2=0.7575,τ2=0.171が特性データとして算出され、メモリ20に記憶される。
クリープ試験とは、図5(c)に示すように、測定対象材料に時刻0において一定値の応力を与えて時刻0以降保持し、このとき測定材料に発生する、図5(d)に示すような時刻0から時間とともに歪が最大する挙動を調べる試験である。このとき、材料特性として、時刻0以降の歪みε(t)を応力σ(t)で割り算したクリープコンプライアンスを用いる。従って、シミュレーションでは、ミクロスケールモデルに時刻0にて一定値の応力を与えてそれを保持しそのときの歪を求めて、時間に依存して変化するクリープコンプライアンスを求める。
歪みの正弦波をγ0eiωtとし、応力の正弦波をσ0ei(ωt+δ)としたとき、複素せん断弾性率G*は下記式のように表される。
G* =(σ0/γ0)cosδ+i(σ0/γ0)sinδ
ここで、貯蔵弾性率G’は上記式右辺の第1項に該当し、下記式のように表される。
G’= (σ0/γ0)cosδ
又、損失弾性率 G’’は上記式右辺の第1項に該当し、下記式のように表される。
G’’= (σ0/γ0) sinδ
さらに、損失正接tanδは下記式のように表される。
tanδ = G’’/G’
マクロスケールモデルは、例えばトレッドゴム材料を不均質材料として有する図7に示すようなタイヤのタイヤモデル40が例示される。タイヤモデル40は、複数の有限要素によって構成された3次元モデルである。タイヤモデル40のトレッド部分等に用いる粘弾性材料は、ミクロスケールモデルのように、複数の材料相が分散配置されたミクロ構造を再現したものではなく、不均質材料を均質材料と見なして構成される。
なお、本実施形態においては、不均質材料を有する構造体としてトレッドゴム材料を有するタイヤを用いて説明するが、本発明においてはタイヤモデルに限定されない。
マクロスケールシミュレーションの際、ステップS14で設定された均質特性の特性パラメータの値がメモリ20から呼び出されてタイヤモデル40に付与されて、マクロスケールシミュレーションが行われる。例えば、別途作成された図示されないリムモデルにタイヤモデル40が結合されて、内圧充填処理が施され、さらに別途作成された剛体路面モデル42に対して接地処理が施され、所定の荷重が負荷される。さらに、タイヤモデル42に転動処理が施される。
こうしてマクロスケールシミュレーションによって転動状態におけるタイヤモデル40に作用する物理量が算出される。例えば、タイヤモデル40の各有限要素におけるエネルギーロスが合算されて算出され、このエネルギーロスから転動中の転がり抵抗がタイヤ性能として算出される(ステップS20)。
図8は、転動周期が720m秒のときの弾性係数及び緩和時定数が、マクロスケールシミュレーションにおいて算出される転がり抵抗の性能にどの程度影響を与えるかを表している。この場合、緩和時定数τの領域Rの時間範囲にて転がり抵抗に影響を与えていることがわかる。
この領域Rは、転動周期の0.001倍〜5倍に対応する。したがって、タイヤの転動中の性能を評価する場合、緩和時定数が転動周期の0.001倍〜5倍の時間範囲の中で緩和時定数を算出することが好ましい。
上記マクロスケールシミュレーションでは、路面上をタイヤが転動する状態を再現する例を説明したが、この他に、路面上をタイヤが、定常あるいは非定常の状態でコーナリングする挙動を再現するシミュレーションであってもよく、このときのタイヤ軸力に作用する軸力の過渡応答値を性能として求めることもできる。
また、上述したミクロスケールモデルは、ゴム材料と、このゴム材料を補強するために配されるカーボンやシリカ等の無機化合物充填補強材を含む部材を例としたが、この他にゴム材料を含み、このゴム材料中に配されるスチール線材等の金属材やナイロンやポリエステル等の繊維材を補強材とする部材であってもよい。
12 入力操作系
14 コンピュータ
16 ディスプレイ
18 CPU
20 メモリ
22 ミクロスケールシミュレーション演算部
23 パラメータ設定部
24 マクロスケールシミュレーション演算部
40 タイヤモデル
Claims (6)
- 複数の材料相を有し、粘弾性特性を備えた構造体のシミュレーション方法であって、
複数の材料相のそれぞれは異なる材料特性を有し、かつ、これらの材料特性のうち少なくとも1つ以上が時間又は周波数に依存して変化するように前記構造体の一部分を規定して再現した第1の離散化モデルに対して、前記構造体の一部分を均質な特性としたときの、時間又は周波数に依存する均質特性を取得するようにシミュレーションを実行して、前記均質特性を取得するステップと、
取得した前記均質特性を、前記構造体を再現した第2の離散化モデルの特性として前記第2の離散化モデルに付与して、前記構造体の粘弾性挙動を再現するシミュレーションを前記第2の離散化モデルに対して実行し、前記第2の離散化モデルに作用する物理量を算出するステップと、を有することを特徴とする構造体のシミュレーション方法。 - 前記第1の離散化モデルに対してシミュレーションを実行するとき、前記第1の離散化モデルの境界面に対して周期境界条件を付与する請求項1に記載の構造体のシミュレーション方法。
- 前記第1の離散化モデルで再現される前記構造体の一部分は、ゴム材料と、このゴム材料を補強するために前記ゴム材料中に配される、無機化合物充填材、金属材及び繊維材の少なくともいずれか1つの補強材とを含む請求項1又は2に記載の構造体のシミュレーション方法。
- 前記第2の離散化モデルで表される前記構造体はタイヤである請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体のシミュレーション方法。
- 前記均質特性及び前記第1の離散化モデルの材料特性の少なくとも一方の特性は、時間に依存して値が変化するように時間の指数関数の和で表したProny級数で表されたものであり、前記均質特性及び前記第1の離散化モデルの材料特性の少なくとも一方の前記特性は、前記指数関数の緩和時定数と前記指数関数に乗算する弾性係数を特性パラメータとして規定したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造体のシミュレーション方法。
- 前記第2の離散化モデルで表される前記構造体はタイヤであり、前記第2の離散化モデルに対して実行するシミュレーションは、タイヤが路面上を転動するタイヤの転動シミュレーションであり、前記均質特性は前記Prony級数で表されたものであり、前記均質特性における前記指数関数の緩和時定数は、前記転動シミュレーションにおける前記タイヤの転動周期の0.001倍〜5倍の時間範囲の中で算出される請求項5に記載の構造体のシミュレーション方法。
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