JP2003159916A - タイヤ特性予測方法、空気入りタイヤおよびプログラム - Google Patents

タイヤ特性予測方法、空気入りタイヤおよびプログラム

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JP2003159916A
JP2003159916A JP2001360405A JP2001360405A JP2003159916A JP 2003159916 A JP2003159916 A JP 2003159916A JP 2001360405 A JP2001360405 A JP 2001360405A JP 2001360405 A JP2001360405 A JP 2001360405A JP 2003159916 A JP2003159916 A JP 2003159916A
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tire
model
calculation
deformation
crack
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JP2001360405A
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Masataka Koishi
正隆 小石
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Yokohama Rubber Co Ltd
Original Assignee
Yokohama Rubber Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】タイヤに発生するき裂に基づくタイヤの耐久性
能を有限要素法を用いて予測するに際し、き裂の先端に
特殊な要素を用いて有限要素モデルを作成する必要がな
く、予測を従来に比べて短時間に行なうことのできるタ
イヤ特性予測方法、空気入りタイヤおよびプログラムを
提供する。 【解決手段】予測対象タイヤを表した有限要素タイヤモ
デルと、このタイヤに発生する欠陥領域の部分を表した
有限要素欠陥モデルとを作成する工程と、タイヤモデル
に境界条件を与えてタイヤモデルの変形計算を行なう工
程と、この計算結果から、タイヤモデル上の欠陥モデル
の対応位置における対応物理量の組を取り出す工程と、
この対応物理量の組を境界条件として欠陥モデルの変形
計算を行なう工程と、この変形計算結果に基づいて、マ
テリアルフォースを算出する工程と、このマテリアルフ
ォースを用いて、タイヤ特性を予測する工程とを有す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タイヤの耐久性能
を、有限要素法(FEM:Finite Element Methd)を用
いて予測するタイヤ特性予測方法、この方法をコンピュ
ータを用いて実施するプログラムおよび空気入りタイヤ
に関する。
【0002】
【従来の技術】車両に装着される空気入りタイヤ(以
降、単にタイヤという)の耐久性能は、タイヤの破損に
よって人命に関わる重大な事故に繋がる可能性があるた
め、種々のタイヤ特性の中でも極めて重要な特性であ
る。タイヤの耐久性能は、例えば、タイヤ単体を室内ド
ラム上で、種々の条件の下に走行させて、破損に至るま
での走行距離やその時のタイヤの破損状況を調べること
によって、あるいは、タイヤを所定距離走行させても破
損しない場合はタイヤ内部に発生するき裂の進展の程度
を調べることによって評価されている。一方において、
タイヤの耐久性能を評価し、さらなる改良のために、き
裂等のタイヤの欠陥の発生が予想される部分に対して、
FEM等の数値解析手法を用いてシミュレートすること
が行なわれている。
【0003】例えば、タイヤの耐久性能のうち、タイヤ
のプライ材の端部とゴム部材の境界近傍に発生するゴム
部材の内部き裂の進展を解析した事例が報告されている
( "An Application of Finite Element-Based Fractur
e Mechanics Analysis to Cord-Rubber Structures",
T.G.Ebbott ,"Tire Science and Technology ",TSTCA,
Vol.24 ,No.3 , July-September,1996,pp220-235) 。こ
の報告によると、タイヤの解析をグローバル−ローカル
法(以降、G−L法という)によるFEM計算を用いる
とともに、き裂におけるエネルギー解放率をJ積分によ
る方法やVCCT法に基づいて算出して、内部き裂の感
度を解析している。
【0004】一方、タイヤ内の2つのベルト補強部材間
に配されるゴム部材の疲労き裂の進展に基づいて、タイ
ヤの耐久性能を解析した事例が報告されている(" Fires
toneTire Failure Analysis", Dr.Sanjay Govindjee, J
anuary 30,2001, URL http://www.bridgestone-firesto
ne.com/news/news _corporate _fr.html ) 。この報
告によると、タイヤモデルのFEM計算を行ない、この
計算結果に基づいて、き裂の先端の進展力を特徴付ける
エネルギー解放率を算出し、疲労き裂の進展を予測して
いる。ここで、エネルギー解放率は、Steinmann の方法
を用いて算出されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの事例
ではいずれも、き裂の先端の有限要素を特殊な要素を用
いてモデル化しなければならないといった問題があり、
FEMのモデルの作成が困難である。すなわち、き裂の
先端近傍は、き裂の先端から距離の(−1/2)乗に比
例する特異場を形成するので、き裂の先端を中心として
放射状に広がる等方的な細かな有限要素を作成しなけれ
ばならない。しかも、有限要素に設けられる節点も特殊
なものとしなければならない。そのため、作成すべき有
限要素数が増大し、計算時間が増大するという問題があ
った。特に、3次元のモデルを用いてき裂の先端周りの
エネルギー解放率を算出する場合、モデルの作成にかか
る時間およびFEMによる計算時間を含めた解析・予測
に要する時間はかなり増大する。また、上記事例はいず
れも、ゴム部材中に発生するき裂をモデル化している
が、タイヤに発生するき裂は、均質部材中に発生するき
裂の他、異なる部材界面(異材界面)、例えばベルト補
強部材とこのベルト補強部材を取り巻くゴム部材との界
面で発生する界面き裂や、タイヤ表面に発生する表面き
裂もある。このようなき裂は、上記J積分による方法や
VCCT法が均質部材におけるき裂を前提として構築さ
れているため、上記J積分による方法やVCCT法から
求められるエネルギー解放率を異材界面におけるき裂の
進展や表面き裂の進展に適用することはできないという
問題もあった。
【0006】そこで、本発明は、き裂の先端について特
殊な要素を用いて有限要素モデルを作成する必要がな
く、き裂の解析、き裂の進展に伴うタイヤの耐久性能の
予測を従来に比べて短時間に行なうことのできるタイヤ
特性予測方法、これを用いて評価された空気入りタイヤ
および上記タイヤ特性予測方法を実施するプログラムを
提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、タイヤ特性を予測するタイヤ特性予測方
法であって、タイヤ特性を予測する予測対象タイヤを表
した、複数の有限要素からなるタイヤモデルと、このタ
イヤに発生する欠陥領域の部分を表した、複数の有限要
素からなる欠陥モデルとを作成するモデル作成工程と、
前記タイヤモデルに境界条件を与えてタイヤモデルの変
形計算を行なうタイヤモデル変形計算工程と、変形後の
前記タイヤモデルの各有限要素に生じる物理量の組の中
から、前記タイヤモデル上のタイヤ断面内の、前記欠陥
モデルに対応する位置における対応物理量の組を取り出
すタイヤ物理量取得工程と、この取り出された対応物理
量の組を前記欠陥モデルの境界条件として、前記欠陥モ
デルの変形計算を行なう欠陥モデル変形計算工程と、こ
の変形計算の結果に基づいて、下記式(1)に従って演
算を行う演算工程と、この演算工程で算出された演算結
果を用いて、タイヤ特性を予測する予測工程とを有する
ことを特徴とするタイヤ特性予測方法を提供する。
【数2】
【0008】ここで、前記演算工程は、少なくとも2成
分以上を有するベクトルを求め、前記予測工程は、この
ベクトルの大きさ、およびベクトルの向きの少なくとも
1つを用いてタイヤ特性を予測するのが好ましい。ま
た、前記欠陥モデルは、き裂を含んだ部分を表したモデ
ルであるのが好ましい。その際、前記き裂は、内部き
裂、表面き裂および界面き裂の少なくともいずれか1つ
であるのが好ましい。さらに、前記モデル作成工程は、
き裂の先端を一次または二次の四角形固体要素、あるい
は、一次または二次の六面体固体要素を用いて、前記欠
陥モデルを作成するのが好ましい。その際、前記モデル
作成工程で作成される前記欠陥モデルは、き裂の先端
に、き裂方向の代表長さがこのき裂方向のき裂長さの1
5分の1以上かつ10分の1以下である前記四角形固体
要素、または、前記六面体固体要素が配されたモデルで
あるのが好ましい。ここで、き裂長さは、前記欠陥モデ
ルが3次元のモデルである場合、き裂面およびき裂前縁
に垂直な平面で切断した切断面におけるき裂面の切断長
さをいう。また、代表長さは、き裂面およびき裂前縁に
垂直な平面で切断した切断面内における長さであって、
き裂面を形成する有限要素の各面におけるき裂前縁(き
裂先端)方向の切断長さのうち最大長さをいう。
【0009】また、前記タイヤモデル変形計算工程は、
少なくとも前記タイヤモデルに内圧充填条件と荷重負荷
条件を与えて変形計算を行うのが好ましく、その際、前
記タイヤモデル変形計算工程は、さらに、キャンバー角
を与えて変形計算を行うものであってもよい。その際、
前記タイヤ物理量取得工程は、前記対応物理量の組を、
前記欠陥モデルが位置する前記タイヤモデル上のタイヤ
周方向の位置に応じて複数組求め、前記欠陥モデル変形
計算工程は、前記タイヤ物理量取得工程で求められた前
記対応物理量の組のそれぞれを境界条件として、前記欠
陥モデルの変形計算を行い、前記演算工程は、変形計算
の結果に基づいて、前記タイヤ周方向の位置に応じた演
算を行い、前記予測工程は、前記タイヤ周方向の位置に
応じて変化する前記演算結果を用いてタイヤ特性を予測
するのが好ましい。
【0010】また、前記タイヤモデル変形計算工程は、
前記タイヤモデルを転動させ、転動の際の変形計算を行
うものであってもよい。その際、前記タイヤモデル変形
計算工程は、前記タイヤモデルにスリップ角を与えて転
動させるものであってもよい。
【0011】また、前記演算工程は、少なくとも2成分
以上を有するベクトルを求め、前記予測工程は、前記タ
イヤ周方向の位置に応じて変化する前記ベクトルの大き
さを求めるとともに、このベクトルの大きさから前記ベ
クトルの大きさの最大値と最小値の差分を求め、この差
分を用いてタイヤ特性を予測するのが好ましい。さら
に、前記予測工程は、エネルギー解放率の変動あるいは
このエネルギー解放率の変動と対応した指標値と、タイ
ヤに発生したき裂のき裂進展速度とを予め対応づけた参
照テーブルを用いて、前記演算工程で算出された前記差
分から、タイヤ特性としてき裂進展速度を予測するのが
好ましい。
【0012】また、前記モデル作成工程は、前記予測対
象タイヤに装着されるホイールモデルを作成し、前記タ
イヤモデル変形計算工程は、前記タイヤモデルを前記ホ
イールモデルに接触させ、前記ホイールモデルに接触す
る前記タイヤモデルの部分の変形を前記ホイールモデル
の形状に合わせて制限するものであってもよい。前記タ
イヤ物理量取得工程は、例えば、前記タイヤモデルの各
節点の変位、各節点の速度、各有限要素における歪み、
各有限要素における歪み速度の少なくとも1つを求め
る。
【0013】さらに、本発明は上記タイヤ特性予測方法
によって得られた予測結果に基づいてタイヤ特性の評価
の与えられたことを特徴とする空気入りタイヤを提供す
る。このようなタイヤは、上記タイヤ特性予測方法によ
って得られた予測結果に基づいてタイヤを設計するタイ
ヤ設計方法を用いることによって実現される。
【0014】また、本発明は、タイヤ特性の予測をコン
ピュータに実行させるタイヤ特性予測プログラムであっ
て、タイヤ特性を予測する予測対象タイヤを表した、複
数の有限要素からなるタイヤモデルと、このタイヤに発
生する欠陥領域の部分を表した、複数の有限要素からな
る欠陥モデルとを、コンピュータの演算手段に作成させ
るモデル作成手順と、前記タイヤモデルに境界条件を与
えてタイヤモデルの変形計算を前記演算手段に行なわ
せ、前記タイヤモデルの変形計算の結果をコンピュータ
の記録手段に記録させるタイヤモデル変形計算手順と、
前記記録手段に記録された前記タイヤモデルの変形計算
の結果を呼び出し、変形後の前記タイヤモデルの各有限
要素に生じる物理量の組の中から、前記タイヤモデル上
のタイヤ断面内の、前記欠陥モデルに対応する位置にお
ける対応物理量の組を、前記演算手段に抽出させるタイ
ヤ物理量取得手順と、この取り出された対応物理量の組
を前記欠陥モデルの境界条件として、前記欠陥モデルの
変形計算を前記演算手段に行なわせ、前記欠陥モデルの
変形計算の結果を前記記録手段に記録させる欠陥モデル
変形計算手順と、前記欠陥モデルの変形計算の結果を前
記記録手段から呼び出し、この変形計算の結果に基づい
て、上記式(1)に従って、前記演算手段に演算を行わ
せる演算手順と、この演算工程で算出された演算結果を
用いて、前記演算手段に、タイヤ特性を予測させる予測
手順とを有することを特徴とするプログラムを提供す
る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明のタイヤ特性予測方
法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳
細に説明する。図1は、本発明のタイヤ特性予測方法を
実施するタイヤ特性予測装置10の概略の構成を示すブ
ロック図である。タイヤ特性予測装置10は、本体装置
12と、本体装置12に接続されたディスプレイ14
と、本体装置12に接続された入力操作系16とを有
し、G−L法を用いたFEMにより、上記式(1)に従
って求まるマテリアルフォースを算出し、このマテリア
ルフォースに基づいて、き裂の進展速度を予測する装置
である。
【0016】本体装置12は、モデル作成部18と、境
界条件設定部20と、モデル変形計算部22と、物理量
選択部24と、マテリアルフォース算出部26と、タイ
ヤ特性予測部28と、これらの部位を制御し、各部位の
処理を実質的につかさどるCPU30と、上記各部位で
得られた計算結果等を記録するメモリ32とを有して構
成される。本体装置12は、プログラムを実行すること
で各部位が機能を発揮するコンピュータによって構成さ
れる。なお、本体装置12は、各部位が独立した専用回
路や専用装置によって構成された専用装置であってもよ
く、一部の部位が専用回路等で構成されるとともに、他
の部位がプログラムを実行することで機能を発揮するコ
ンピュータによって構成されてもよい。
【0017】モデル作成部18は、タイヤ特性を予測す
る予測対象タイヤを表した、複数の有限要素からなるタ
イヤモデルと、このタイヤに発生する欠陥領域の部分を
表した、複数の有限要素からなる欠陥モデルとをCPU
30を用いて作成し、さらにタイヤ構成部材の材料定数
データが付加されて有限要素モデルのファイルを作成す
る部位である。さらに、必要に応じてホイールモデルを
作成する。
【0018】例えば、タイヤモデルの場合、タイヤの耐
久性能を予測する対象タイヤのタイヤ断面(タイヤの回
転軸を含む面で切断したタイヤの断面)の外側形状にタ
イヤ断面におけるゴム部材や補強材の断面形状を再現し
た部材要素を付加することによって2次元タイヤ断面形
状データが予め作成される。この作成された2次元タイ
ヤ断面形状データがモデル作成部18に供給され、タイ
ヤ回転方向(周方向)に展開され3次元タイヤ形状デー
タを得る。さらに、この3次元タイヤ形状データは自動
メッシュ生成プログラム等を用いてメッシュに分割さ
れ、複数の有限要素からなる3次元タイヤモデルが生成
される。
【0019】また、欠陥モデルは、2次元タイヤ断面形
状データや、このデータを用いてタイヤ周方向に展開さ
れた3次元タイヤ形状データから、タイヤ内のき裂の解
析を行う領域を部分的に取り出し、メッシュ分割を細か
くした、複数の有限要素からなるモデルである。このモ
デルは、所定の厚みを有する2次元モデルであってもよ
いし、タイヤ周方向に沿って1周する3次元モデルであ
ってもよい。き裂は、有限要素の辺や面に沿って作成さ
れる。
【0020】なお、本発明では、タイヤモデルのタイヤ
トレッド部分がトレッドパターンを有するか否かは制限
されず、トレッドパターンはあってもなくてもよい。ま
た、タイヤモデルは、タイヤの回転軸と直交し、タイヤ
トレッド中心位置を通るタイヤ中心面に対して片側のみ
の2分の1モデルであってもよいし、タイヤモデルを、
回転によりタイヤの進行する方向の前方側あるいは後方
側の2分の1モデルであってもよい。また、上記タイヤ
中心面に対して片側のモデルであって、かつ、上記前方
側あるいは上記後方側のモデル、すなわち4分の1モデ
ルであってもよい。モデル作成部18におけるタイヤモ
デルの作成方法は上記方法に限定されず、公知の方法に
よって作成してもよい。作成されたタイヤモデルや欠陥
モデルは、各有限要素の節点の座標値と、各節点を番号
化して各有限要素の形状を規定した番号の組とが数値デ
ータからなるファイルとして作成され、さらに、有限要
素によって表されるタイヤ構成部材の材料定数データが
付加されて、有限要素モデルのファイルが作成される。
作成されたファイルは、モデル変形計算部22に供給さ
れる。本実施例ではタイヤ構成部材の材料定数データ
は、予め設定されたものが供給されるが、入力操作系1
6からの入力により設定されてもよい。材料定数データ
として、例えば、一定の温度、湿度あるいは酸素分圧等
の環境条件においてコンテショニング処理されたタイヤ
構成部材やゴムサンプルの材料定数が、あるいは、車両
にて一定距離走行した使用状態におけるタイヤ構成部材
の材料定数が用いられる。
【0021】境界条件設定部20は、少なくともタイヤ
に内圧充填が成されタイヤが地面に接して負荷荷重を受
けるように、少なくとも内圧充填条件および荷重負荷条
件を設定する部位である。すなわち、タイヤモデルの内
面から加える圧力の値、および、タイヤモデルに付与す
る荷重の値を少なくとも設定する。必要に応じて、タイ
ヤモデルに付与するキャンバー角を設定し、また、タイ
ヤモデルを転動させるか否かの転動条件を設定する。転
動を行なう場合、タイヤモデルに付与するスリップ角を
設定することもできる。このような条件の設定は、マウ
スやキーボード等によって構成される入力操作系16を
用いてオペレータがディスプレイ14に表示された設定
画面を見ながら入力することによって行われる。
【0022】モデル変形計算部22は、供給された有限
要素モデルのファイルを用いて、モデル作成部18で作
成されたタイヤモデルに、境界条件設定部20で設定さ
れた境界条件を与えてタイヤモデルの変形計算を行な
い、また、欠陥モデルに所定の境界条件を与えて、欠陥
モデルの変形計算を行なう部位である。このような変形
計算は、与えられた境界条件の下、タイヤ構成部材の材
料定数データを用いて、モデルの剛性マトリクスを作成
し、この剛性マトリクスから有限要素に設けられた各節
点等における変位や歪みを算出するものである。
【0023】タイヤモデルの変形計算は、例えば、所定
の内圧充填が行なわれ所定の荷重が負荷されてタイヤモ
デルが変形するように行なわれる。このような変形計算
の結果は、物理量取得部24に供給される。また、後述
するように、物理量取得部24において求められた対応
物理量の組、すなわち、欠陥モデルが位置するタイヤモ
デル上の位置における各節点の変位や各有限要素におけ
る歪みや表面力等の組が、物理量取得部24から供給さ
れた場合、この対応物理量の組を境界条件として欠陥モ
デルの変形計算を行い、計算結果がマテリアルフォース
算出部26に供給される。なお、後述するように、物理
量取得部24から対応物理量の組がタイヤ周方向の複数
の所定位置に対応して複数供給されるが、供給された複
数組の対応物理量はそれぞれ欠陥モデルの境界条件とし
て用いられ変形計算が行なわれる。タイヤモデルや欠陥
モデルの変形計算を実行するFEMソルバーは、特に制
限されない。市販されるFEMソルバーであってもよ
い。欠陥モデルの変形計算の結果は、マテリアルフォー
ス算出部26に供給される。
【0024】物理量取得部24は、モデル変形計算部2
2でタイヤモデルに対して行なわれて得られた変形計算
の結果がモデル変形計算部22から供給されると、タイ
ヤモデルの有限要素の各節点の変位や各有限要素におけ
る歪みや応力等を物理量として求め、この物理量の組の
中から欠陥モデルが位置するタイヤモデル上の対応位置
における対応物理量の組を選択する部位である。すなわ
ち、欠陥モデルの各節点にかかる変位や各有限要素にお
ける歪みや応力を求めて取得する。あるいは、欠陥モデ
ル表面にかかる表面力等を求めて取得してもよい。
【0025】なお、この対応物理量は、欠陥モデルがタ
イヤモデル上のタイヤ周方向のどの位置に位置するかに
よって変化するため、予め設定されたタイヤ周方向の複
数の所定位置に対応して複数の対応物理量の組を取得す
る。この場合、欠陥モデルが位置するタイヤモデル上の
対応位置を入力操作系16を用いて自在に設定してもよ
い。タイヤモデルを転動させた場合、転動によりタイヤ
周方向の位置が移動するため、タイヤモデルの各節点や
各有限要素における物理量が変動する。物理量取得部2
4は、この変動する物理量の組のうち、上記応物理量の
組を、回転によりタイヤ周方向を移動する欠陥モデルの
位置に対応させて複数組取得する。このように対応物理
量の組をタイヤ周方向の位置に対応させて複数組得るこ
とができ、物理量取得部24は、この複数組の対応物理
量をモデル変形計算部22に供給する。
【0026】なお、物理量取得部24で求められた物理
量の組、例えば、タイヤモデルにおける各節点の変位や
各有限要素における歪みや応力のデータはディスプレイ
14上にグラフとして表示され、あるいは、変形したタ
イヤモデルの鳥瞰図や断面図等が表示される。また、欠
陥モデルに対して変形計算が成され、欠陥モデルにおけ
る各節点の変位や各有限要素における歪みや応力等の値
がグラフとしてディスプレイ14に表示され、変形した
欠陥モデルの鳥瞰図や断面図等も表示される。なお、上
記対応物理量は、回転速度を与えて転動による変形計算
を行なう場合、タイヤモデルの各節点の変位や各有限要
素における歪みや応力等の他、各節点における速度や各
有限要素における歪み速度等であってもよい。
【0027】マテリアルフォース算出部26は、欠陥モ
デルに対して行なわれて得られた変形計算の結果がモデ
ル変形計算部22から供給されると、上記式(1)に従
って計算を行ない、マテリアルフォースFを算出する部
位である。マテリアルフォースFは、後述するように、
3次元の欠陥モデルの場合、3次元ベクトルとして3成
分が算出される。勿論2次の欠陥モデルの場合、2次元
ベクトルとして2成分が算出される。ところで、欠陥モ
デルの変形計算の結果は、欠陥モデルがタイヤ周方向の
異なる位置にある時の計算結果が複数求められ、タイヤ
周方向の異なる位置において大きさが変化する、欠陥モ
デルにおけるマテリアルフォースFが複数算出される。
そして、このマテリアルフォースFの大きさのうち、最
大値と最小値の差Δ|F|が求められる。求められた差
Δ|F|は、タイヤ特性予測部28に供給される。
【0028】タイヤ特性予測部28は、マテリアルフォ
ース算出部26から差Δ|F|が供給されると、この差
Δ|F|から、予め用意されている差Δ|F|とタイヤ
に発生したき裂のき裂進展速度とを対応づけた参照テー
ブルを用いて、タイヤ特性としてき裂進展速度を予測す
る部位である。これによって、き裂進展速度によるタイ
ヤの破損の確率の大小を予測することができ、タイヤの
耐久性能を予測することができる。なお、参照テーブル
は、テストゴム部材やタイヤからとり出されたタイヤ構
成部材のサンプル等によって繰り返し疲労試験を行なっ
て予め対応づけられた参照テーブルである。
【0029】ディスプレイ14は、上記入力操作系16
で入力するための設定画面を表示し、また、モデル変形
計算の結果から取得された所望の位置における歪みや応
力をグラフとして表示したり、変形後のモデルを表示す
る。入力操作系16は、各種入力を行なうための部位
で、キーボードやマウスによって構成される。以上が、
タイヤ特性予測装置10の構成である。
【0030】次に、本発明におけるタイヤ特性予測方法
について、図2に示すフローに従って説明する。
【0031】まず、タイヤ特性を予測する予測対象タイ
ヤを表した、複数の有限要素からなるタイヤモデルの作
成が行なわれる(ステップ100)。一方、タイヤ特性
を予測する予測対象タイヤの一部分で、このタイヤに発
生する欠陥領域の部分を表した、複数の有限要素からな
る欠陥モデルを作成する(ステップ102)。これらの
モデルの作成では、各有限要素の節点の座標値と、各節
点を番号化して各有限要素の形状を規定した番号の組と
からなるファイルに、タイヤ構成部材の材料定数データ
が付加されて、有限要素モデルのファイルが作成され
る。
【0032】タイヤモデルは、例えば、図3(a)に示
すような断面形状を成した2次元タイヤモデルをタイヤ
周方向にフーリエ展開したタイヤモデルや、図3(b)
に示すように、タイヤ周方向に一定間隔で分割した3次
元タイヤモデルや、図3(c)のように、地面に接地し
負荷荷重を受けた場合、最も大きな変形を受ける接地面
近傍の部分を周方向に細かく分割した3次元モデルが例
示される。また、上述したような2分の1タイヤモデル
や4分の1タイヤモデルであってもよい。図3(a)に
示すような断面形状を成した2次元タイヤモデルをタイ
ヤ周方向にフーリエ展開したタイヤモデルは、地面に接
地し負荷荷重を受ける変形計算を短時間に行なうことが
でき、図3(c)に示す3次元タイヤモデルは、地面に
接地し負荷荷重を受ける変形計算を正確に行なうことが
でき、図3(b)に示す3次元タイヤモデルは、地面に
接地し負荷荷重を受けつつ転動する時の変形計算を正確
に行なうことができる。なお、作成するタイヤモデル
は、後述するように、どのような境界条件の下にタイヤ
モデルの変形計算を行なうかを予めオペレータが決定し
て、図3(a)〜(c)に示すようなタイヤモデルの種
類を選択するとよい。
【0033】欠陥モデルは、タイヤに発生する欠陥領域
の部分を再現した欠陥モデルであるが、本発明における
欠陥領域とは、例えば、図4(a)に示すような、タイ
ヤ部材の材料Ma の表面にき裂が発生した表面き裂や、
図4(b)に示すような、材料Ma の内部にき裂が発生
した内部き裂や、図4(c)に示すような、タイヤ部材
である材料Ma とタイヤ部材である材料Mb が界面によ
って接しているが、材料Mb の端部から界面の一部にき
裂が発生した界面き裂や、図4(d)に示すような、界
面の一部にき裂が発生した界面き裂や、図4(e)に示
すような材料M a と材料Mb の界面に、表面からき裂が
発生した表面き裂が挙げられる。また、材料Ma 内に発
生する空隙(ボイド)も、本発明における欠陥領域に含
まれる。なお、図4(a)〜(e)では、理解を容易に
するために、内部き裂や界面き裂のき裂面を開口した状
態で表している。
【0034】欠陥モデルの一例として、図5(a),
(b)に示す例が挙げられる。図5(a)は、タイヤの
ベルト補強材B1 、B2 の端部近傍の部分を表したモデ
ルであり、図5(b)は、図5(a)に示す欠陥モデル
の部分拡大図である。図5(a),(b)は、タイヤ補
強材としてスチール線材からなるベルト補強材B1 、B
2 の間に配置されるゴム部材Gに発生するき裂Cを再現
した欠陥モデルを示している。このゴム部材Gにおける
き裂Cが進行すると最終的にベルト補強材B1 とその上
層に位置するタイヤトレッド部材とが共に、ベルト補強
材B2およびその下層に位置するタイヤ本体から剥離し
てタイヤの破損に繋がることから、このゴム部材Gにお
けるき裂Cの進展を抑制することは極めて重要である。
【0035】なお、欠陥モデルは所定の厚みを持った2
次元モデルであり、ベルト補強材B 1 およびベルト補強
材B2 と、ベルト補強材B1 , 2 の上層側に配される
有機繊維からなる補強材L1 およびL2 は、シェル要素
で作成され、これらの補強材以外のゴム部材は立体要素
で作成される。ここで、立体要素は、四面体固体要素や
六面体固体要素が用いられる。六面体固体要素は、図6
(a),(b)に示すように、各頂点を有限要素の節点
とする一次六面体固体要素(図6(a))や、各頂点お
よび各辺の中点を有限要素の節点とする二次六面体固体
要素(図6(b))を用いる。なお、欠陥モデルが所定
の厚みを持たない平面状の2次元モデルの場合、三角形
固体要素や四角形固体要素が用いられる。四角形固体要
素では、図6(c),(d)に示すように、各頂点を有
限要素の節点とする一次四角形固体要素(図6(c))
や、各頂点および各辺の中点を有限要素の節点とする二
次四角形固体要素(図6(d))を用いる。
【0036】一方、き裂Cは、図5(b)に示すよう
に、六面体固体要素の一辺に沿って作成される。き裂C
におけるき裂面は、き裂Cを挟んで対向する六面体固体
要素の対向面は、境界条件を与えて変形計算を行なうこ
とでき裂Cが開口できるように、お互いに拘束されてお
らず摩擦の無い状態で接している。なお、欠陥モデルに
おけるき裂の先端C1 , 2 の有限要素は、一次または
二次の六面体固体要素を用いてモデル化されている。
【0037】従来のモデルは、き裂の先端が特異場を形
成するので、図7(a)に示すように、き裂の先端を中
心に放射状に広がる細かな有限要素でモデル化しなけれ
ばならなかった。さらに、図7(b)に示すように、き
裂の先端の有限要素は、6面体要素の一辺における節点
を1点に縮退したもので、しかも、縮退した節点を共有
する辺では、き裂における変形を精度よく計算するため
に、縮退した節点側よりの4分の1点の位置に、二次の
六面体固体要素の節点を設けなければならない。このよ
うに、従来のモデルにおけるき裂の先端の有限要素は、
特殊な有限要素でモデル化を行なう必要があった。しか
し、本発明では、図6(a),(b)に示すように、き
裂の先端も、その他の領域と同様に、節点に縮退の無い
一次または二次の六面体固体要素を用いてモデル化する
ことができる。しかも、き裂の先端を中心に放射状に広
がるモデルを作成する必要もない。このため本発明では
モデル作成にかかる時間や変形計算の処理時間を短縮さ
せることができる。
【0038】このようなモデル化を可能とするのは、後
述するように、欠陥モデルの変形計算によって得られた
結果から、J積分による方法やVCCT法によってエネ
ルギー解放率を求めた従来の方法と異なり、本発明で
は、上記式(1)においてマテリアルフォースFを算出
して、き裂の進展速度を予測するからである。なお、マ
テリアルフォースFについては後述する。なお、本発明
では、所定の厚みを持つ平面状の2次元モデルの場合、
一次または二次の六面体固体要素を用いてモデル化する
が、欠陥モデルが厚みを持たない2次元の平面状のモデ
ルの場合、一次または二次の四角形固体要素を用いてモ
デル化される。
【0039】また、欠陥モデル中で作成されるき裂Cの
先端には、き裂方向において、代表長さがき裂長さに対
して15分の1以上かつ10分の1以下の比を持つ六面
体固体要素が配されるのが好ましい。ここで、き裂長さ
は、欠陥モデルが3次元のモデルである場合、き裂面お
よびき裂前縁(き裂先端)に垂直な平面で切断した切断
面におけるき裂面の切断長さをいう。また、代表長さ
は、き裂面およびき裂前縁に垂直な平面で切断した切断
面内における長さであって、き裂面を形成する有限要素
の各面におけるき裂前縁(き裂先端)方向の切断長さの
うち最大長さをいう。欠陥モデルが厚みを持たない2次
元の平面状のモデルの場合、六面体固体要素の替わりに
四角形固体要素を用いるが、この場合も、代表長さがき
裂長さに対して15分の1以上かつ10分の1以下の比
を持つ四角形固体要素をき裂先端に用いるのが好まし
い。代表長さのき裂長さに対する比が小さければ小さい
ほど、変形計算における計算精度は向上するが、その反
面計算時間が増大する。き裂長さに対する代表長さの比
を15分の1以上かつ10分の1以下にすることで、計
算時間を実用に則した所定時間内に抑えるとともに、計
算精度を、タイヤ特性の予測に適したレベル内に確保す
ることができる。
【0040】一方、タイヤモデルで行なう変形計算を行
なうための境界条件が設定される(ステップ104)。
すなわち、タイヤに内圧充填が成されタイヤが地面に接
して負荷荷重を受けるように、内圧充填条件および荷重
負荷条件として、タイヤモデルの内面から加える圧力の
値、および、タイヤモデルに付与する荷重の値が設定さ
れる。また、必要に応じて、タイヤモデルに付与するキ
ャンバー角が設定され、また、タイヤモデルを転動させ
るか否かの転動条件が設定される。転動を行なう場合、
タイヤモデルに付与するスリップ角が設定される。キャ
ンバー角やスリップ角の設定することで、タイヤモデル
の転動をより実際のタイヤ走行に近い状態で再現するこ
とができる。このような条件の設定は入力操作系16に
よってオペレータの入力によって成される。内圧充填条
件および荷重負荷条件のみが与えられた場合、以降で行
うタイヤモデルの変形計算は、地面に対して荷重の負荷
され静止状態にあるタイヤを再現する。
【0041】タイヤモデルの変形計算を行なうための境
界条件が設定されると、次に、有限要素モデルのファイ
ル内の、タイヤ構成部材の材料定数データが用いられ
て、タイヤモデルの変形計算が行なわれる(ステップ1
06)。変形計算は、与えられた境界条件の下、タイヤ
構成部材の材料定数データに基づいてモデルの剛性マト
リクスが作成され、この剛性マトリクスから有限要素の
各節点等における変位や歪みが算出される。
【0042】次に、算出された変形計算の結果から、タ
イヤモデルにおける物理量の組を求め、さらに、欠陥モ
デルの変形計算に必要な境界条件としての対応物理量の
組を取り出して取得する(ステップ108)。タイヤモ
デルにおける各節点の変位や各有限要素における歪みや
応力が物理量の組として求められ、この物理量の組の中
から、欠陥モデルに対応した対応物理量の組が選択され
取得される。この時、対応物理量は、欠陥モデルがタイ
ヤモデル上のタイヤ周方向のどの位置に位置するかによ
って異なるため、予め設定されたタイヤ周方向の複数の
位置に対応して複数組の対応物理量の組を取得する。タ
イヤモデルを転動させた場合も、欠陥モデルはタイヤ周
方向に沿って移動するので、複数の対応物理量の組を取
得する。この際、欠陥モデルの表面にかかる表面力を対
応物理量の組に含ませてもよい。この複数の対応物理量
の組は、各組毎に欠陥モデルにおける変形計算の境界条
件として用いられる。
【0043】次に、取得された複数の対応物理量の組を
それぞれ境界条件として、欠陥モデルの変形計算を行な
う(ステップ110)。変形計算は、与えられた境界条
件の下、欠陥モデルの構成部材の材料定数データに基づ
いてモデルの剛性マトリクスが作成され、この剛性マト
リクスから有限要素の各節点における変位や各有限要素
が受ける歪みが算出される。変形計算は、複数組の対応
物理量の組のそれぞれを境界条件として行なう。
【0044】次に、欠陥モデルの変形計算の結果に基づ
いて、マテリアルフォースFの算出が行なわれる(ステ
ップ112)。マテリアルフォースFは、上記式(1)
に示すように、欠陥モデルに蓄えられる歪みエネルギー
密度Wに単位テンソルIを乗算し、この値を、右コーシ
ー・グリーン変形テンソルCと第2ピオラ・キルヒホッ
フ応力テンソルを乗算した結果から差し引いてテンソル
量を得、このテンソル量を欠陥モデルにおける変形計算
前の材料を参照した発散演算子で演算を行い、この演算
結果を欠陥モデルにおける変形計算前の領域について、
いわゆる体積積分を行なうことによって得られるベクト
ル量である。マテリアルフォースFの大きさは、材料内
部の欠陥(き裂や異なる界面)におけるポテンシャルギ
ャップ(駆動力)を表し、その方向は、ポテンシャルの
最急勾配の方向を表す。このようなマテリアルフォース
Fの各成分値は、式(1)によって求めることができる
ので、このベクトルからベクトルの大きさであるマテリ
アルフォースFの大きさや向きを求め、き裂の先端にか
かる力とその力の方向を求めることができる。欠陥モデ
ルが3次元、あるいは、厚みを持った2次元モデルの場
合、3成分を持つベクトル量であり、欠陥モデルが、厚
みを持たない平面状の2次元モデルの場合、2成分を持
つベクトル量である。
【0045】ここで、右コーシー・グリーン変形テンソ
ルCは、欠陥モデルの有限要素の変形前の基準配置から
変形後の現配置に至る変形変換の変形勾配を表す変形勾
配テンソルの転置テンソルと変形勾配テンソルとを乗算
したテンソルである。一方、第2ピオラ・キルヒホッフ
応力テンソルは、欠陥モデルにおける変形計算後の現配
置における有限要素の面にかかる微小な力を上記変形変
換の逆変換によって基準配置に戻した時の微小な力を求
め、この微小な力を基準配置における有限要素の面の微
小面積で除算して求められた応力とその時の基準配置に
おける有限要素の面の単位法線ベクトルとによって特徴
付けられる応力テンソルである。
【0046】なお、式(1)中の(WI−CS)は、い
わゆるエシェルビーのエネルギー・運動量テンソルとい
われるものである。エシェルビーのエネルギー・運動量
テンソルとは、エシェルビー応力テンソルとも呼ばれ、
欠陥モデルにおける変形計算前の基準配置から変形計算
後の現配置に至る変形変換において、前記現配置を参照
して定義されるコーシー応力テンソルとは相対関係にあ
る物理量である。すなわち、コーシー応力テンソルが、
前記変形変換における変形勾配テンソルを用いて特徴付
けられるのに対し、前記変形変換の逆変換における変形
勾配テンソルを用いて特徴付けられ、前記基準位置を参
照して定義される応力テンソルである。詳細について
は、”Application of Material Foreces to Hyperelas
tic Fracture Mechanics. Part I:Continuum Mechanica
l Setting"(Steinnmann P.,Int.J.Solids Struct.,vol.
37,(2000),pp.7371-7391) 、および、”Application of
Material Foreces to Hyperelastic Fracture Mechani
cs. PartII:Computational Setting" (Steinnmann ,In
t.J.SolidsStruct.,vol.38,No32-33,(2001),pp.5509-55
26) に記載されている。
【0047】このようにマテリアルフォースFは、欠陥
モデルにおける変形計算前の領域についていわゆる体積
積分を行なって求めることができるので、従来の方法、
例えばJ積分による方法が、図7(a)のように有限要
素をき裂先端の周りに細かく配したモデルを用いて変形
後のモデルについて経路積分を行なわなければならない
困難さに比べて、容易にしかも短時間に算出することが
できる。また、マテリアルフォースFは、等方性均質材
中におけるき裂、いわゆる内部き裂の場合、エネルギー
解放率に一致する。さらに、マテリアルフォースFは、
材質の異なる非均質媒体中に発生するき裂、いわゆる界
面き裂においても、式(1)において値を算出すること
ができる。すなわち、マテリアルフォースFは、内部き
裂のみならず表面き裂や界面き裂についても上記式
(1) を用いて算出することができる。
【0048】なお、欠陥モデルによる変形計算は、欠陥
モデルのタイヤ周方向の位置に応じた複数の境界条件の
下に行なわれるため、この計算結果に基づいて得られる
マテリアルフォースFは、欠陥モデルのタイヤ周方向の
位置に応じて複数得られる。例えば、欠陥モデルのタイ
ヤ周方向の位置Qを、図8(a)に示すように、角度θ
で定義すると、マテリアルフォースFの大きさ|F|
は、図8(b)のような角度θに依存した変動を成す。
角度θ=0の近傍、すなわち、地面に最も近づくとタイ
ヤは大きな歪みを受けるため、き裂Cに働くマテリアル
フォースFは大きい。そこで、マテリアルフォースFの
大きさのうち、最大値と最小値との差Δ|F|を求め、
この差Δ|F|をタイヤが1回転する時のマテリアルフ
ォースFの変動とする。
【0049】次に、この差Δ|F|に基づいて、タイヤ
の耐久性能の予測が行なわれる(ステップ114)。す
なわち、この差Δ|F|から、予め用意されている差Δ
|F|とタイヤに発生したき裂のき裂進展速度とを対応
づけた参照テーブルを用いて、タイヤ特性としてき裂進
展速度dLc /dnが予測される(nはタイヤの総回転
数、Lc はき裂長さ)。ステップ106やステップ11
0における変形計算では、タイヤ構成部材の材料定数と
して、上述したように、一定距離走行した使用状態にお
けるタイヤ構成部材の材料定数や、あるいは、一定の温
度、湿度あるいは酸素分圧等の環境条件を与えてコンデ
ィショニング処理し、一定距離走行したタイヤ使用状態
におけるタイヤ構成部材の疲労を再現したタイヤ構成部
材やゴムサンプル等の材料定数が用いられるので、タイ
ヤモデルおよび欠陥モデルの変形計算に基づいて計算さ
れたマテリアルフォースFは、一定距離走行した使用状
態におけるタイヤ内のき裂に働くマテリアルフォースF
を再現している。従って、式(1)を用いて求められる
マテリアルフォースFの大きさの変動である差Δ|F|
に基づいて、図9に示すような差Δ|F|とき裂進展速
度dLc/dnとを対応づけた参照テーブルを用いて、
タイヤに発生するき裂のき裂進展速度dLc /dnを予
測することができる。これによって、タイヤの耐久性を
予測することができる。
【0050】なお、上記参照テーブルは、マテリアルフ
ォースFの大きさの差Δ|F|とき裂進展速度dLc
dnとを対応づけるものであるが、エネルギー解放率の
変動とき裂進展速度とを対応づけた参照テーブルを用い
てもよい。エネルギー解放率の変動とき裂進展速度とを
対応づける参照テーブルを用いる場合、内部き裂のエネ
ルギー解放率とマテリアルフォースFは同一となるの
で、差Δ|F|をエネルギー解放率の変動と見なしてき
裂進展速度を求めることができる。エネルギー解放率の
変動の替わりに応力拡大係数の変動とき裂進展速度とを
対応づけた参照テーブル(パリス則)を用いてもよい。
本発明における参照テーブルは、エネルギー解放率の変
動と対応した指標値でを用いたものであればよく、上記
差Δ|F|や応力拡大係数の変動が例示される。
【0051】また、応力拡大係数の変動とき裂進展速度
とを対応づける参照テーブルを用いる場合、エネルギー
解放率と応力拡大係数との関係に基づいて、差Δ|F|
からき裂進展速度を求めてもよい。また、参照テーブル
は、き裂進展速度の替わりにゴム部材の破断時の伸びと
差Δ|F|やエネルギー解放率の変動等と対応付けた参
照テーブルであってもよい。すなわち、差Δ|F|から
ゴム部材の破断時の伸びを予測してもよい。破断時の伸
びはき裂進展速度と相関が強く、破断時の伸びからき裂
進展速度を予測することができ、タイヤの耐久性能を予
測することができるからである。
【0052】上記例ではいずれも、マテリアルフォース
Fの大きさの最大値と最小値の差Δ|F|を用いてき裂
進展速度を予測するものであるが、マテリアルフォース
Fの向き(ベクトルの向き)を用いて、き裂の進展方向
を求めてもよい。すなわち、マテリアルフォースFの大
きさおよび向きを指標としてき裂進展速度およびき裂の
方向を予測し、タイヤ耐久性能を予測することができ
る。
【0053】上記欠陥モデルは、図5(a)に示すよう
に、ベルト補強材B1 およびB2 間のゴム部材Gのき裂
を再現するものであるが、図10(a)に示すように、
タイヤ補強材として配されるプライ材Pの端部近傍の領
域Rに発生するき裂を含む欠陥モデルを再現する場合、
欠陥モデルに対して変形計算を行なう際の境界条件を正
確に求めるために、ステップ100においてタイヤモデ
ルを作成する際、タイヤモデルに装着される、剛体のホ
イールモデルあるいは複数の有限要素からなるホイール
モデルを同時に作成する。このホイールモデルは、ステ
ップ106におけるタイヤモデルの変形計算を行なう
際、実際のタイヤが図10(b)に示すようにホイール
に装着されて領域Sがホイールと接触して、タイヤの変
形が拘束されるように、タイヤモデルがホイールモデル
に装着され、ホイールモデルに接触するタイヤモデルの
接触部分の変位がホイールモデルの形状に合わせて制限
される。すなわち、タイヤモデルがホイールモデルの面
に沿って接触しながら変位する場合、所定の摩擦係数に
よって変形計算が行なわれる。また、ホイールモデルに
接触するタイヤモデルの部分がホイールモデルから離れ
る場合自由に離れる。一方、タイヤモデルがホイールモ
デルに接触する場合、接触面で力の授受が行なわれる。
このような条件で変形計算が行われる。これによって、
欠陥モデルに付与する境界条件を実際のタイヤに合わせ
て正確に求めることができ、ホイール装着されたタイヤ
の領域Rにおけるき裂に基づいたマテリアルフォースF
を正確に算出することができる。
【0054】このように、タイヤモデルとき裂を再現す
る欠陥モデルとを作成し、タイヤモデルの変形計算で得
られた対応物理量の組を欠陥モデルにおける境界条件と
して欠陥モデルの変形計算を行なうG−L法を用い、さ
らに、この欠陥モデルにおける変形計算に基づいてマテ
リアルフォースを算出するので、従来と同一の計算処理
時間の場合、欠陥モデルの変形を精密かつ高精度に再現
することができる。同一の精度で欠陥モデルの変形を再
現する場合、計算処理時間を短縮することができる。し
かも、き裂の先端の有限要素を従来のように特殊な要素
で配置する必要はなく、き裂の先端を中心として放射状
に有限要素を配置する必要もないので、自動メッシュプ
ログラム等を起動して作成することができ、モデル作成
の負担が低減され、モデル作成にかかる時間を短縮する
ことができる。また、マテリアルフォースを用いてき裂
進展速度を予測するので、従来不可能であった界面き裂
や表面き裂のき裂進展速度も予測することができ、タイ
ヤの耐久性能をより正確に予測することができる。
【0055】このようなタイヤ予測方法によってタイヤ
の耐久性能が予測されるが、この予測結果に基づいて所
定のタイヤの耐久性能を有するタイヤを設計することが
できる。例えば、タイヤモデルの断面形状やタイヤモデ
ルに配置するタイヤの配置位置やタイヤ構成部材の形状
を自在に変更し、また、上記タイヤ構成部材の材料定数
を自在に変更して、き裂の進展速度を所定の値以下に抑
えた最適なタイヤモデルを作成し、このタイヤモデルに
基づいてタイヤモデルを再現したタイヤを設計すること
ができる。こうして設計され生産されたタイヤは、上記
タイヤの予測方法によって予測されたき裂進展速度等
が、タイヤの製品別にあるいは型式別にタイヤの耐久性
能の評価として与えられる。例えば、タイヤが、き裂進
展速度を抑制した優れたタイヤ特性の予測結果に基づい
て設計されたタイヤとして、テレビやラジオ等のマスメ
ディアによってタイヤの製品名や型式に対応させて宣伝
され、あるいは、広告やパンフレット等の各資料に掲載
され、優れたタイヤ特性を持ったタイヤとして消費者や
購入者等に認知させることができる。勿論、この予測結
果とともに、実際のタイヤの耐久性能を掲載し、優れた
タイヤの耐久性能を有することを認知させてもよい。こ
のように予測されたタイヤ特性に基づいて設計され生産
され、上記予測されたタイヤ特性に基づいて評価が与え
られ、消費者や購入者等に提供されるタイヤは本発明に
おける空気入りタイヤに含まれる。
【0056】また、上記タイヤ特性予測方法は、上述し
たようにコンピュータに実行させることによって行なわ
れるが、下記のようなプログラムによってコンピュータ
を実行させることができる。すなわち、プログラムは、
タイヤ特性を予測する予測対象タイヤを表した、複数の
有限要素からなるタイヤモデルと、このタイヤに発生す
る欠陥領域の部分を表した、複数の有限要素からなる欠
陥モデルとを、コンピュータのCPUに作成させるモデ
ル作成手順と、前記タイヤモデルに境界条件を与えてタ
イヤモデルの変形計算をCPUに行なわせ、前記タイヤ
モデルの変形計算の結果をコンピュータ内のメモリーに
記録させるタイヤモデル変形計算手順と、前記記録手段
に記録された前記タイヤモデルの変形計算の結果を呼び
出し、変形後の前記タイヤモデルの各有限要素に生じる
物理量の組の中から、前記タイヤモデル上のタイヤ断面
内の、前記欠陥モデルに対応する位置における対応物理
量の組を、CPUに抽出させるタイヤ物理量取得手順
と、この取り出された対応物理量の組を前記欠陥モデル
の境界条件として、前記欠陥モデルの変形計算をCPU
に行なわせ、前記欠陥モデルの変形計算の結果をメモリ
に記録させる欠陥モデル変形計算手順と、前記欠陥モデ
ルの変形計算の結果をメモリから呼び出し、この変形計
算の結果に基づいて、上記式(1)に従って、前記演算
手段に演算を行わせる演算手順と、この演算工程で算出
された演算結果を用いて、CPUに、タイヤ特性を予測
させる予測手順とを有するプログラムである。
【0057】以上、本発明のタイヤ特性予測方法、空気
入りタイヤおよびプログラムについて詳細に説明した
が、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨
を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行
ってもよいのはもちろんである。
【0058】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、タイヤ特
性であるタイヤの耐久性能をFEMを用いて予測する
際、タイヤに発生するき裂の先端について特殊な要素を
用いて有限要素モデルを作成する必要がなく、き裂の進
展に伴うタイヤの耐久性能の予測を従来に比べて短時間
に、また、高精度に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のタイヤ特性予測方法を実施するタイ
ヤ特性予測装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明のタイヤ特性予測方法の一例を示すフ
ローチャートである。
【図3】 (a)〜(c)は、タイヤモデルの例を示す
図である。
【図4】 (a)〜(f)は、タイヤに発生する欠陥領
域を説明する図である。
【図5】 (a),(b)は、本発明で用いられる欠陥
モデルの一例を示す図である。
【図6】 (a)〜(d)は、本発明で用いられる有限
要素の一例を示す図である。
【図7】 (a)は、従来から用いられる欠陥モデルの
一例を示す図であり、(b)は、従来から用いられる有
限要素の一例を示す図である。
【図8】 (a)は、タイヤ周方向の位置を説明する図
であり、(b)は、本発明で得られるマテリアルフォー
スの変化の一例を示す図である。
【図9】 本発明で用いられる参照テーブルの一例を示
す図である。
【図10】 (a),(b)は、タイヤの欠陥領域の他
の例を説明する図である。
【符号の説明】
10 タイヤ特性予測装置 12 本体装置 14 ディスプレイ 16 入力操作系 18 モデル作成部 20 境界条件設定部 22 モデル変形計算部 24 物理量取得部 26 マテリアルフォース算出部 28 タイヤ特性予測部 30 CPU 32 メモリ

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】タイヤ特性を予測するタイヤ特性予測方法
    であって、 タイヤ特性を予測する予測対象タイヤを表した、複数の
    有限要素からなるタイヤモデルと、このタイヤに発生す
    る欠陥領域の部分を表した、複数の有限要素からなる欠
    陥モデルとを作成するモデル作成工程と、 前記タイヤモデルに境界条件を与えて前記タイヤモデル
    の変形計算を行なうタイヤモデル変形計算工程と、 変形後の前記タイヤモデルの各有限要素に生じる物理量
    の組の中から、前記タイヤモデル上のタイヤ断面内の、
    前記欠陥モデルに対応する位置における対応物理量の組
    を取り出すタイヤ物理量取得工程と、 この取り出された対応物理量の組を前記欠陥モデルの境
    界条件として、前記欠陥モデルの変形計算を行なう欠陥
    モデル変形計算工程と、 この変形計算の結果に基づいて、下記式(1)に従って
    演算を行う演算工程と、 この演算工程で算出された演算結果を用いて、タイヤ特
    性を予測する予測工程とを有することを特徴とするタイ
    ヤ特性予測方法。 【数1】
  2. 【請求項2】前記演算工程は、少なくとも2成分以上を
    有するベクトルを求め、 前記予測工程は、このベクトルの大きさ、およびベクト
    ルの向きの少なくとも1つを用いてタイヤ特性を予測す
    ることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ特性予測方
    法。
  3. 【請求項3】前記欠陥モデルは、き裂を含んだ部分を表
    したモデルであることを特徴とする請求項1または2に
    記載のタイヤ特性予測方法。
  4. 【請求項4】前記き裂は、内部き裂、表面き裂および界
    面き裂の少なくともいずれか1つであることを特徴とす
    る請求項3に記載のタイヤ特性予測方法。
  5. 【請求項5】前記モデル作成工程は、き裂の先端を一次
    または二次の四角形固体要素、あるいは、一次または二
    次の六面体固体要素を用いて、前記欠陥モデルを作成す
    ることを特徴とする請求項3または4に記載のタイヤ特
    性予測方法。
  6. 【請求項6】前記モデル作成工程で作成される前記欠陥
    モデルは、き裂の先端に、き裂方向の代表長さがこのき
    裂方向のき裂長さの15分の1以上かつ10分の1以下
    である前記四角形固体要素、または、前記六面体固体要
    素が配されたモデルであることを特徴とする請求項5に
    記載のタイヤ特性予測方法。
  7. 【請求項7】前記タイヤモデル変形計算工程は、少なく
    とも前記タイヤモデルに内圧充填条件と荷重負荷条件を
    与えて変形計算を行うことを特徴とする請求項1〜6の
    いずれかに記載のタイヤ特性予測方法。
  8. 【請求項8】前記タイヤモデル変形計算工程は、さら
    に、キャンバー角を与えて変形計算を行うことを特徴と
    する請求項7に記載のタイヤ特性予測方法。
  9. 【請求項9】前記タイヤ物理量取得工程は、前記対応物
    理量の組を、前記欠陥モデルが位置する前記タイヤモデ
    ル上のタイヤ周方向の位置に応じて複数組求め、 前記欠陥モデル変形計算工程は、前記タイヤ物理量取得
    工程で求められた前記対応物理量の組のそれぞれを境界
    条件として、前記欠陥モデルの変形計算を行い、 前記演算工程は、変形計算の結果に基づいて、前記タイ
    ヤ周方向の位置に応じた演算を行い、 前記予測工程は、前記タイヤ周方向の位置に応じて変化
    する前記演算結果を用いてタイヤ特性を予測することを
    特徴とする請求項7または8に記載のタイヤ特性予測方
    法。
  10. 【請求項10】前記タイヤモデル変形計算工程は、前記
    タイヤモデルを転動させ、転動の際の変形計算を行うこ
    とを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のタイヤ
    特性予測方法。
  11. 【請求項11】前記タイヤモデル変形計算工程は、前記
    タイヤモデルにスリップ角を与えて転動させることを特
    徴とする請求項10に記載のタイヤ特性予測方法。
  12. 【請求項12】前記演算工程は、少なくとも2成分以上
    を有するベクトルを求め、 前記予測工程は、前記タイヤ周方向の位置に応じて変化
    する前記ベクトルの大きさを求めるとともに、このベク
    トルの大きさから前記ベクトルの大きさの最大値と最小
    値の差分を求め、この差分を用いてタイヤ特性を予測す
    ることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の
    タイヤ特性予測方法。
  13. 【請求項13】前記予測工程は、エネルギー解放率の変
    動あるいはこのエネルギー解放率の変動と対応した指標
    値と、タイヤに発生したき裂のき裂進展速度とを予め対
    応づけた参照テーブルを用いて、前記演算工程で算出さ
    れた前記差分から、タイヤ特性としてき裂進展速度を予
    測することを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記
    載のタイヤ特性予測方法。
  14. 【請求項14】前記モデル作成工程は、前記予測対象タ
    イヤに装着されるホイールモデルを作成し、 前記タイヤモデル変形計算工程は、前記タイヤモデルを
    前記ホイールモデルに接触させ、前記ホイールモデルに
    接触する前記タイヤモデルの部分の変形を前記ホイール
    モデルの形状に合わせて制限することを特徴とする請求
    項1〜13のいずれかに記載のタイヤ特性予測方法。
  15. 【請求項15】前記タイヤ物理量取得工程は、前記タイ
    ヤモデルの各節点の変位、各節点の速度、各有限要素に
    おける歪み、各有限要素における歪み速度の少なくとも
    1つを求めることを特徴とする請求項1〜14のいずれ
    かに記載のタイヤ特性予測方法。
  16. 【請求項16】請求項1〜15のいずれかに記載のタイ
    ヤ特性予測方法によって得られた予測結果に基づいてタ
    イヤ特性の評価の与えられたことを特徴とする空気入り
    タイヤ。
  17. 【請求項17】タイヤ特性の予測をコンピュータに実行
    させるタイヤ特性予測プログラムであって、 タイヤ特性を予測する予測対象タイヤを表した、複数の
    有限要素からなるタイヤモデルと、このタイヤに発生す
    る欠陥領域の部分を表した、複数の有限要素からなる欠
    陥モデルとを、コンピュータの演算手段に作成させるモ
    デル作成手順と、 前記タイヤモデルに境界条件を与えてタイヤモデルの変
    形計算を前記演算手段に行なわせ、前記タイヤモデルの
    変形計算の結果をコンピュータの記録手段に記録させる
    タイヤモデル変形計算手順と、 前記記録手段に記録された前記タイヤモデルの変形計算
    の結果を呼び出し、変形後の前記タイヤモデルの各有限
    要素に生じる物理量の組の中から、前記タイヤモデル上
    のタイヤ断面内の、前記欠陥モデルに対応する位置にお
    ける対応物理量の組を、前記演算手段に抽出させるタイ
    ヤ物理量取得手順と、 この取り出された対応物理量の組を前記欠陥モデルの境
    界条件として、前記欠陥モデルの変形計算を前記演算手
    段に行なわせ、前記欠陥モデルの変形計算の結果を前記
    記録手段に記録させる欠陥モデル変形計算手順と、 前記欠陥モデルの変形計算の結果を前記記録手段から呼
    び出し、この変形計算の結果に基づいて、上記式(1)
    に従って、前記演算手段に演算を行わせる演算手順と、 この演算工程で算出された演算結果を用いて、前記演算
    手段に、タイヤ特性を予測させる予測手順とを有するこ
    とを特徴とするプログラム。
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