JP7401225B2 - 嚥下シミュレーション装置及び嚥下シミュレーション方法 - Google Patents

嚥下シミュレーション装置及び嚥下シミュレーション方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会 アプリ版抄録集 JSDR2018 平成30年8月31日 第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会 仙台国際センター(宮城県仙台市青葉区青葉山無番地)平成30年9月8日(開催期間:平成30年9月8日~平成30年9月9日) 第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会 アプリ版抄録集 JSDR2018 平成30年8月31日 第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会 仙台国際センター(宮城県仙台市青葉区青葉山無番地)平成30年9月9日(開催期間:平成30年9月8日~平成30年9月9日) 日本機械学会第31回計算力学講演会 講演論文集 CD-ROM 平成30年11月23日 日本機械学会第31回計算力学講演会 徳島大学常三島キャンパス(徳島県徳島市南常三島町2丁目1番地)平成30年11月24日(開催期間:平成30年11月23日~平成30年11月25日) http://www2.nagare.or.jp/cfd/cfd32/paper/cfd32papers.zip 平成30年12月11日 第32回数値流体力学シンポジウム 機械振興会館(東京都港区芝公園3-5-8)平成30年12月11日(開催期間:平成30年12月11日~平成30年12月13日) 第4回嚥下シミュレーション研究会 武蔵野赤十字病院 山▲崎▼記念講堂(東京都武蔵野市境南町1-26-1)平成30年12月15日 第42回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会 プログラム予稿集平成31年3月7日 第42回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会 久留米シティプラザ(福岡県久留米市六ツ門町8-1)平成31年3月9日(開催期間:平成31年3月8日~平成31年3月9日)
本発明は、嚥下シミュレーション装置及び嚥下シミュレーション方法に関する。
嚥下時の食品物性と頭頸部器官の運動との関係は複雑であり、現象そのものを正確に把握することは非常に困難である。ここで、嚥下とは、口腔内に取り込まれた食品(飲料を含む)を、咽頭・食道を経て胃に送り込む運動である。嚥下時には、口腔、咽頭、喉頭、食道の筋が、短時間のうちに決められた順序で活動し、複雑な運動を遂行している。
従来、嚥下時の食塊の挙動を模擬するために、コンピュータを用いた嚥下シミュレーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この嚥下シミュレーション装置では、口腔器官の運動や、飲食品等の物性値を設定し、三次元画像において、粒子法を用いて飲食品の挙動を解析することができる。このような嚥下シミュレーション装置は、嚥下に関する実現象を近似的に再現でき、嚥下現象を可視化することが可能であり、例えば、誤嚥を抑制し得る食品や医薬品、飲料等の経口摂取品を開発する際に役立てることができると考えられている。
特許第6022789号公報
しかしながら、誤嚥を抑制し得る経口摂取品の開発や、誤嚥のメカニズム解明による効果的な診断、治療法の確立を目指すには、特許文献1に示すような嚥下現象の単なる可視化では不十分であり、擬似経口摂取品の嚥下時における頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品の挙動などを従来よりも一段と正確に再現することが望まれている。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、擬似経口摂取品の嚥下時における頭頸部器官の運動や擬似経口摂取品の挙動などを従来よりも一段と正確に再現することができる嚥下シミュレーション装置及び嚥下シミュレーション方法を提供することを目的とする。
本発明に係る嚥下シミュレーション装置は、複数の粒子によって三次元画像でモデル化した複数の頭頸部器官を作製し、前記複数の頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部粒子モデルを前記三次元画像により作製する頭頸部モデリング部と、前記動的三次元頭頸部粒子モデルにおける前記複数の頭頸部器官の運動を設定する器官運動設定部と、経口摂取品を複数の粒子によって前記三次元画像でモデル化した擬似経口摂取品を、前記動的三次元頭頸部粒子モデルで嚥下させたときの前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動と、を粒子法に基づいて前記三次元画像で解析する運動解析部と、前記運動解析部により前記三次元画像で解析された、前記擬似経口摂取品の嚥下時の前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動との解析結果を、動画像で表示する表示部と、を備え、前記器官運動設定部は、前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記擬似経口摂取品の嚥下時に前記頭頸部器官で強制的に移動する粒子を強制移動粒子とし、前記嚥下時における前記強制移動粒子の運動を設定する強制運動設定部と、前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記頭頸部器官の収縮筋ごとに前記三次元画像内で筋線維方向が特定され、かつ前記筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる粒子を筋粒子とし、前記嚥下時における前記筋粒子の運動を設定する筋収縮運動設定部と、を備える。
また、本発明に係る嚥下シミュレーション方法は、複数の粒子によって三次元画像でモデル化した複数の頭頸部器官を作製し、前記複数の頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部粒子モデルを前記三次元画像により作製する頭頸部モデリングステップと、前記動的三次元頭頸部粒子モデルにおける前記複数の頭頸部器官の運動を設定する器官運動設定ステップと、経口摂取品を複数の粒子によって前記三次元画像でモデル化した擬似経口摂取品を、前記動的三次元頭頸部粒子モデルで嚥下させたときの前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動と、を粒子法に基づいて前記三次元画像で解析する運動解析ステップと、前記運動解析ステップにより前記三次元画像で解析された、前記擬似経口摂取品の嚥下時の前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動との解析結果を、動画像で表示する表示ステップと、を備え、前記器官運動設定ステップは、前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記擬似経口摂取品の嚥下時に前記頭頸部器官で強制的に移動する粒子を強制移動粒子とし、前記嚥下時における前記強制移動粒子の運動を設定する強制運動設定ステップと、前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記頭頸部器官の収縮筋ごとに前記三次元画像内で筋線維方向が特定され、かつ前記筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる粒子を筋粒子とし、前記嚥下時における前記筋粒子の運動を設定する筋収縮運動設定ステップと、を備える。
本発明の方法によれば、頭頸部器官を粒子で作製し、所定の粒子を強制移動粒子と筋粒子とし、収縮筋ごとに筋線維方向に基づく収縮応力が筋粒子に与えられるように設定したことで、擬似経口摂取品の嚥下時における頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品の挙動などを従来よりも一段と正確に再現することができる嚥下シミュレーション装置及び嚥下シミュレーション方法を実現できる。
嚥下シミュレーション装置の回路構成を示すブロック図である。 動的三次元頭頸部モデルの構成を示す概略図である。 CT画像及びVF画像に基づいて作製した静的三次元頭頸部モデルの構成を示す概略図である。 動的三次元頭頸部粒子モデルの構成を示す概略図である。 図4に示した動的三次元頭頸部粒子モデルの正中面における断面構成を示した断面図である。 動的三次元頭頸部粒子モデルの舌と、擬似経口摂取品との構成を簡略化して示した概略図である。 嚥下時に強制移動粒子が移動するときの軌跡の一部を移動軌跡線で表した概略図である。 移動軌跡線に従って強制移動粒子を移動させたときの動的三次元頭頸部粒子モデルの状態変化を示した概略図である。 筋粒子について説明するための概略図である。 筋粒子の筋線維方向を説明するための概略図である。 上咽頭収縮筋舌咽頭部において収縮筋が走行する方向を示す概略図である。 上咽頭収縮筋舌咽頭部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための側面図である。 上咽頭収縮筋舌咽頭部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための背面図である。 中咽頭収縮筋小角咽頭上部及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部において収縮筋が走行する方向を示す概略図である。 中咽頭収縮筋小角咽頭上部及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための側面図である。 中咽頭収縮筋小角咽頭上部及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための背面図である。 中咽頭収縮筋大角咽頭上部及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部の筋粒子において収縮筋が走行する方向を示す概略図である。 中咽頭収縮筋大角咽頭上部及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための側面図である。 中咽頭収縮筋大角咽頭上部及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための背面図である。 下咽頭収縮筋甲状咽頭上部、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部及び下咽頭収縮筋輪状咽頭部において収縮筋が走行する方向を示す概略図である。 下咽頭収縮筋甲状咽頭上部、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部及び下咽頭収縮筋輪状咽頭部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための側面図である。 下咽頭収縮筋甲状咽頭上部、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部及び下咽頭収縮筋輪状咽頭部において筋粒子ごとに設定する筋線維方向を説明するための背面図である。 上咽頭収縮筋舌咽頭部、中咽頭収縮筋小角咽頭上部、中咽頭収縮筋小角咽頭下部、中咽頭収縮筋大角咽頭上部、中咽頭収縮筋大角咽頭下部、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部及び下咽頭収縮筋輪状咽頭部における嚥下時の各活性化レベルの時間的変化を示したグラフである。 動的三次元頭頸部粒子モデルにおける筋粒子に加わる接触力を説明するための概略図である。 ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)を用いて動的三次元頭頸部粒子モデルで嚥下シミュレーションを行う際の演算処理手順を示すフローチャートである。 本発明による動的三次元頭頸部モデルと、比較例である強制変移のみの動的三次元頭頸部モデルとについて、それぞれシミュレーションを行ったときの結果を対比した概略図である。 本発明による動的三次元頭頸部モデルと、比較例の動的三次元頭頸部モデルとについて、それぞれシミュレーションを行った際の上咽頭収縮筋舌咽頭部の中間辺りにおける水平断面構成(1)を示した概略図である。 本発明による動的三次元頭頸部モデルと、比較例の動的三次元頭頸部モデルとについて、それぞれシミュレーションを行った際の上咽頭収縮筋舌咽頭部の中間辺りにおける水平断面構成(2)を示した概略図である。 本発明による動的三次元頭頸部モデルと、比較例の動的三次元頭頸部モデルとについて、それぞれシミュレーションを行った際の上咽頭収縮筋舌咽頭部の中間辺りにおける水平断面構成(3)を示した概略図である。 本発明による動的三次元頭頸部モデルについてシミュレーションを行った際の下咽頭収縮筋甲状咽頭下部辺りにおける水平断面構成(1)を示した概略図である。 本発明による動的三次元頭頸部モデルについてシミュレーションを行った際の下咽頭収縮筋甲状咽頭下部辺りにおける水平断面構成(2)を示した概略図である。 嚥下時におけるVF画像と、嚥下時における表面表示の動的三次元頭頸部モデルと、嚥下時における粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデルとについて比較した比較結果(1)を示す概略図である。 嚥下時におけるVF画像と、嚥下時における表面表示の動的三次元頭頸部モデルと、嚥下時における粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデルとについて比較した比較結果(2)を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(1)<本発明の概略について>
図1は本発明の嚥下シミュレーション装置1の全体構成を示したブロック図である。嚥下シミュレーション装置1は、パーソナルコンピュータ(PCとも称する)2と、入力部81と、表示部4と、記憶部83とを備えている。入力部81は、マウス、キーボード等の入力機器であり、開発者からの操作命令をパーソナルコンピュータ2に出力し、パーソナルコンピュータ2において操作命令に応じた各種演算処理を実行させる。記憶部83は、パーソナルコンピュータ2にて形成した粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデル(後述する)や、この動的三次元頭頸部粒子モデルから作製した表面表示の動的三次元頭頸部モデル(後述する)、設定条件、解析結果等を記憶する。
パーソナルコンピュータ2は、例えば、頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部モデル(図2において後述する)を三次元画像により形成し、経口摂取品を三次元画像内で擬似経口摂取品(図2において後述する)としてモデル化する。パーソナルコンピュータ2は、動的三次元頭頸部モデルにおける各頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品の嚥下時の挙動とを、粒子法を用いて三次元画像内で解析することができる。
このような動的三次元頭頸部モデルは、例えば、誤嚥をし易い嚥下障害者の頭頸部、又は、誤嚥をし難い健常者の頭頸部等を模倣して形成する。例えば、誤嚥をし易い嚥下障害者の頭頸部をモデル化した動的三次元頭頸部モデルでは、嚥下障害者の嚥下時における各頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品の嚥下時の挙動を解析することができる。一方、誤嚥をし難い健常者の頭頸部をモデル化した動的三次元頭頸部モデルでは、健常者の嚥下時における各頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品の嚥下時の挙動を解析することができる。
パーソナルコンピュータ2で得られた解析結果は、表示部4に出力され、表示部4の表示画面に表示される。表示部4は、例えばディスプレイ等であり、パーソナルコンピュータ2から出力された動的三次元頭頸部モデルの三次元画像や、擬似経口摂取品、解析結果等を表示画面に表示する。これにより、表示部4は、動的三次元頭頸部モデルにおける各頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品の嚥下時の挙動、解析結果等を、開発者に対し視認させることができる。
このようにして、嚥下シミュレーション装置1において、擬似経口摂取品の食塊量や粘度、比重等の物性値を変えて、動的三次元頭頸部モデルによる嚥下シミュレーションを行うことができ、動的三次元頭頸部モデルによる誤嚥の有無等も確認することができる。
本実施形態では、液面の変形や飛沫等の表現が可能な解析方法として、解析対象の液体や固体を粒子として扱う粒子法を用い、この粒子法によって、動的三次元頭頸部モデルにおける頭頸部器官の動作や、経口摂取品の挙動を、三次元画像内に表して嚥下シミュレーションを行なう。粒子法としては、特にMPS(Moving Particle Semi-implicit)法(Koshizuka et al,Comput.Fluid Dynamics J,4,29-46,1995)を適用することが望ましい。嚥下シミュレーションによって嚥下時における擬似経口摂取品100の挙動を解析する際の粒子法としては、MPS法又はハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法:HMPS法)を適用することが望ましい。また、嚥下シミュレーションによって動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける各粒子の運動を解析する際の粒子法としては、ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)を適用することが望ましい。本実施形態では、嚥下シミュレーションによって動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける各粒子の運動を解析する粒子法として、ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)を適用した場合について以下説明する。
本実施形態の粒子法では、擬似経口摂取品を粒子に置き換えるだけでなく、動的三次元頭頸部モデルにおける頭頸部器官についても粒子に置き換え、粒子ごとに物理量を計算する。その結果、動的三次元頭頸部モデルにおける頭頸部器官や、擬似経口摂取品の嚥下時における微妙な変化の解析が可能となる。
本実施形態における嚥下シミュレーション装置1では、動的三次元頭頸部モデルにおける頭頸部器官についても粒子に置き換えるだけでなく、さらに、医学的知見に基づいて、口腔、咽頭部、喉頭部等の頭頸部器官における収縮筋の正確な構造や、嚥下時における当該収縮筋の挙動(筋線維方向及び収縮応力)を再現している。これにより、嚥下シミュレーション装置1では、擬似経口摂取品の嚥下時における頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品の挙動を、従来よりも一段と正確に再現することができる。
(2)<嚥下シミュレーション装置におけるパーソナルコンピュータの回路構成>
図1に示すように、パーソナルコンピュータ2は、頭頸部モデリング部10、器官運動設定部30、経口摂取品物性設定部40、運動解析部50、物性特定部70及び制御部90を備えている。頭頸部モデリング部10は、図2に示すような頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部モデル10a(後述する)や、図4に示すような動的三次元頭頸部粒子モデル10cを三次元画像により形成する。
なお、動的三次元頭頸部モデル10aは、図4に示すような粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデル10cからマーチングキューブ法などを用いて作製され、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの粒子1つ1つを表示せずに、単に頭頸部器官の表面を表示したものである。動的三次元頭頸部粒子モデル10c及び擬似経口摂取品100を構成する粒子1つ1つを全て表示させた状態で嚥下シミュレーションの解析結果を提示した場合、粒子1つ1つが描画されていることで表示形態が複雑化し、各頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品100の挙動等の確認が難しい。
そこで、各頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品100の挙動等が目視により確認し易いように、嚥下シミュレーションの解析結果を提示する際には、粒子1つ1つを表示させずに頭頸部器官の表面のみを表示した動的三次元頭頸部モデル10aを用いている。なお、擬似経口摂取品100についても、表示部4に表示させる際、擬似経口摂取品100を形成している粒子1つ1つは表示させずに、マーチングキューブ法などにより擬似経口摂取品100の表面形状が生成され表示される。なお、ここでは、後述する動的三次元頭頸部粒子モデル10cに着目して以下説明する。
器官運動設定部30は、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける各頭頸部器官の運動を設定する。本実施形態における器官運動設定部30は、強制運動設定部31と、筋収縮運動設定部32とを備える。強制運動設定部31は、動的三次元頭頸部粒子モデル10cによる擬似経口摂取品100の嚥下時に、頭頸部器官で強制的に移動する粒子を強制移動粒子(後述する)として設定し、これら複数の強制移動粒子の運動を設定する。筋収縮運動設定部32は、医学的知見に基づき頭頸部器官の収縮筋ごとに三次元画像内で筋線維方向が特定され、かつ筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる粒子を筋粒子(後述する)として設定し、擬似経口摂取品100の嚥下時における当該収縮応力に基づいて筋粒子の運動を設定する。これにより、動的三次元頭頸部粒子モデル10cを形成する粒子は、強制移動粒子と、筋粒子と、これら強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子と、の3種類のいずれかに定義される。動的三次元頭頸部粒子モデル10cは、器官運動設定部30による設定状態を基に、各頭頸部器官が動いた嚥下シミュレーションを実行することができる。なお、強制移動粒子と、筋粒子と、これら強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子とについて、特に区別する必要がない場合には、以下、強制移動粒子と、筋粒子と、これら強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子とをまとめて、単に粒子と称する。
経口摂取品物性設定部40は、解析対象としての飲食品、医薬品又は医薬部外品等の経口摂取品の物性値を設定し、経口摂取品をモデル化した擬似経口摂取品を三次元画像内に形成する。なお、経口摂取品物性設定部40は、解析対象として異なる物性の液体、半固体又は固体の複数の擬似経口摂取品を設定することができる。なお、半固体としては例えばゼリー等を含み、固体としては例えば錠剤等も含む。
本実施形態の場合、経口摂取品物性設定部40は、経口摂取品の物性値として、例えば、経口摂取品となる食塊の密度[g/mL]と、動的三次元頭頸部粒子モデル10cに嚥下させる食塊量[mL]と、表面張力[N/m]と、各頭頸部器官における接触角と、各頭頸部器官におけるスリップ係数と、を設定する。なお、ここでスリップ係数とは、生体表面と食塊(経口摂取品)の表面の濡れ性、撥水性を制御するパラメータであり、接触面における見かけの粘度として考えることができる。スリップ係数が大きい場合は界面での摩擦が大きくなり、結果的に食塊の動きにブレーキをかける効果がる。スリップ係数が小さい場合は界面での摩擦が小さくなり、0の場合は鏡面のような状態となる。スリップ係数1は流体の粘度と同等程度の摩擦効果を界面に与えることを意味する。スリップ係数は、想定する経口摂取品が有する濡れ性や撥水性等を解析して決定する。
この場合、経口摂取品物性設定部40は、各頭頸部器官における接触角として、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける咽頭、喉頭、舌、軟口蓋での接触角をそれぞれ設定する。また、経口摂取品物性設定部40は、各頭頸部器官におけるスリップ係数として、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの咽頭、喉頭、舌、軟口蓋でのスリップ係数をそれぞれ設定する。
なお、本実施形態においては、経口摂取品の物性値として上述した物性値のみだけでなく、例えば、経口摂取品が液体のときは、液量・粘度・表面張力・比重・熱伝導率・比熱等の物性値を設定するようにしてもよい。また、経口摂取品が固体のときには、形状・寸法・弾性係数・引っ張り強さ・降伏点・降伏応力・粘度のずり速度依存性・動的粘弾性・静的粘弾性・圧縮応力・破断応力・破断ひずみ・硬度・付着性・凝集性・熱伝導率・比熱等の物性値を設定するようにしてもよい。さらに、経口摂取品が半固体(可塑性があるが、流動性はない)であるときには、量・粘度・比重・降伏点・降伏点応力・粘度のずり速度依存性・動的粘弾性・静的粘弾性・圧縮応力・付着性・凝集性等の物性値を設定するようにしてもよい。
運動解析部50では、動的三次元頭頸部粒子モデル10cで擬似経口摂取品100を嚥下させたときの頭頸部器官の運動と、頭頸部器官の運動に伴う擬似経口摂取品100の嚥下時の挙動と、を解析する。図4に示す動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて、粒子法による解析によって、舌12の進行波的波動運動、喉頭蓋15aの回転運動、喉頭15の往復運動、咽頭部14の筋収縮運動等の動きが再現され、頭頸部内部に投入された擬似経口摂取品100を動かす。擬似経口摂取品100の動きも粒子法により解析される。擬似経口摂取品100は固体・半固体・液体のいずれでも粒子として取り扱われる。
運動解析部50は、経口摂取品物性設定部40により擬似経口摂取品100の物性値が変更されることで、当該物性値の影響により、舌12の進行波的波動運動、軟口蓋13bの挙上運動、喉頭蓋15aの反転運動、喉頭15の挙上運動、声帯15cの内転運動、披裂部15bの前方運動、咽頭部14の収縮と挙上運動等により、擬似経口摂取品100が嚥下される際の経路を変化させる。
物性特定部70は、運動解析部50の解析結果を基に、誤嚥を回避できる擬似経口摂取品100の食塊量、粘度及びせん断速度を推測する。このうち擬似経口摂取品100の食塊量及び粘度は、経口摂取品物性設定部40により設定される物性値である。
制御部90は、パーソナルコンピュータ2の各部を制御して、嚥下シミュレーション装置1の諸機能を実行させる。制御部90は内蔵メモリに嚥下シミュレーター(解析用ソフトウェア)を保有する。
(3)<動的三次元頭頸部モデル(動的三次元頭頸部粒子モデル)の構成>
次に、頭頸部モデリング部10により形成される動的三次元頭頸部モデル10a及び動的三次元頭頸部粒子モデル10cについて説明する。図2は、頭頸部モデリング部10により形成された動的三次元頭頸部モデル10aの構成を示した概略図である。
上述したように、表示部4には、例えば、図2に示すような表面表示の動的三次元頭頸部モデル10a及び擬似経口摂取品100が表示され、運動解析部50による解析結果として、動的三次元頭頸部モデル10aにおいて擬似経口摂取品100を嚥下したときの頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の挙動と、が動画像により表示される。
なお、本実施形態においては、表面表示の動的三次元頭頸部モデル10a及び擬似経口摂取品100を用いて、頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の挙動と、を動画像により提示する場合について説明するが、本発明はこれに限らず、粒子1つ1つが表示された粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデル10c及び擬似経口摂取品100を用いて、頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の挙動と、を動画像により提示するようにしてもよい。
表面表示の動的三次元頭頸部モデル10aと、粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデル10cとは、表示形態が異なるだけで、頭頸部器官の構成(頭頸部器官の粒子によるモデル化、強制移動粒子の設定、及び、筋粒子の設定)は同じであるため、ここでは、図2に示した表面表示の動的三次元頭頸部モデル10aを用いて、その構成を説明する。なお、図2では、喉頭15等を説明するため軟骨等は図示していない。嚥下シミュレーションの解析結果を動画像で提示する際には、図2に示すように、軟骨等を有しない表面表示の動的三次元頭頸部モデル10aであってもよく、また、軟骨等その他の生体部位を有する動的三次元頭頸部モデルを適用してもよい。また、粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデル10cで嚥下シミュレーションの解析結果を動画像で提示する場合も同様に、軟骨等その他の生体部位についての有無は問わない。
ここで、図2において、X軸は、動的三次元頭頸部モデル10aの正中面と直交する身体左右方向(正中面の面法線方向)を示し、Y軸は、X軸と直交し、かつ動的三次元頭頸部モデル10aの正中面と平行な身体前後方向を示し、Z軸は、X軸及びY軸と直交する身体上下方向を示す。
動的三次元頭頸部モデル10aは、頭頸部器官として、オトガイ舌筋を含む舌12と、喉頭15と、声帯15cと、披裂部15bと、喉頭蓋15aと、気管16と、咽頭部14(咽頭の管壁18a、咽頭の粘膜18bを含む)と、口蓋13(硬口蓋13a及び軟口蓋13bを含む)と、食道17(食道入口部17a、食道の管壁17bを含む)とを有している。本実施形態では、主に、上述した舌12、喉頭15、声帯15c、披裂部15b、喉頭蓋15a、気管16、咽頭部14、口蓋13及び食道17等をまとめて頭頸部器官と称するが、これら1つ1つについても単に頭頸部器官とも称する。なお、図2では、擬似経口摂取品100の一例として流体状の食塊を示す。
本実施形態では、擬似経口摂取品100を粒子により表現するとともに、動的三次元頭頸部モデル10aにおける頭頸部器官(本実施形態では、舌12、喉頭15、声帯15c、披裂部15b、喉頭蓋15a、気管16、咽頭部14、口蓋13及び食道17)を粒子により表現する。
ただし、上述したように、動的三次元頭頸部モデル10aによる擬似経口摂取品100の嚥下シミュレーションの解析結果を、動画像により開発者等に視認させる際には、動的三次元頭頸部モデル10aの頭頸部器官と、擬似経口摂取品100との表面形状を表示させることが望ましい。これにより、頭頸部器官及び擬似経口摂取品100を形成している粒子1つ1つを表示させる場合に比して、頭頸部器官及び擬似経口摂取品100の表示形態を簡略化でき、開発者等に対して、頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品100の挙動を容易に確認させることができる。
(4)<動的三次元頭頸部粒子モデルの作製>
(4-1)<静的三次元頭頸部モデルの作製>
ここで、粒子表示の動的三次元頭頸部粒子モデル10cの作製方法について以下説明する。まずは、医学的知見により理解されている頭頸部の構造、及び、CT(コンピュータ断層撮影:Computed Tomography)画像により大まかに読み取ることのできる口蓋13、舌12、気管16の形態から、咽頭部14と食道入口部17aの位置を推定する。舌12、口蓋13、咽頭部14、喉頭蓋15a、喉頭15、食道17の構造を、CG(コンピュータグラフィックス:Computer Graphics)用ソフトウェア(Autodesk 3ds Max等)を用いてモデリングし、嚥下に関わる頭頸部器官を三次元(立体構造)で表した静的初期形状モデル(図示せず)を作製する。
得られた静的初期形状モデルに対して、VF(嚥下造影検査:Videofluoroscopic examination of swallowing)による嚥下時の造影画像(正面及び側面図)を重ね合わせて、立体構造を修正し、図3に示すように、被験者の安静時における頭頸部器官の立体的形状をCGによって描画した静的三次元頭頸部モデル10bを作製する。または、嚥下中の4次元CT(Computed Tomography)画像(4DCT画像)をもとにして静的三次元頭頸部モデルを作成することもできる。なお、図3に示す11aは舌骨であり、11bは甲状軟骨である。このような静的三次元頭頸部モデル10bは、頭頸部モデリング部10により作製される。
(4-2)<静的三次元頭頸部モデルの粒子によるモデル化>
次に、この静的三次元頭頸部モデル10bに基づいて、図4及び図5に示すような動的三次元頭頸部粒子モデル10cを作製する。図5は、図4に示した動的三次元頭頸部粒子モデル10cの正中面における断面構成を示した断面図である。以下、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの作製方法について説明する。
この場合、CGで作製した静的三次元頭頸部モデル10b(図3)における頭頸部器官(舌12、口蓋13、咽頭部14、喉頭蓋15a、喉頭15、食道17)の表面を特定し、図4及び図5に示すように、頭頸部器官の表面を境界として、頭頸部器官ごとにそれぞれの領域内に粒子を配置する。
本実施形態における粒子は、三次元画像内で立体的形状を有した、三次元の球状粒子(本実施形態では単に粒子と称する)であり、例えば、乳児又は成人男性の平均的な大きさの頭頸部の原寸大モデルを三次元画像で作製する際には粒子の直径を0.1mm~3.0mm程度とすることが望ましく、そのうち、より好ましくは直径が0.6mm~1.5mm程度であることが望ましい。また、三次元画像内において作製した静的三次元頭頸部モデル10bにおいて、喉頭蓋の厚さ(例えば、成人では約3.0mm程度の厚さであり、乳児では約1.5mm程度の厚さである)方向に対して粒子が、少なくとも2個以上形成されることが望ましい。粒子の直径が小さすぎるとパーソナルコンピュータ2の計算処理負担が大きくなりすぎるため好ましくなく、一方、粒子の直径が大きすぎると、頭頸部器官について細かな運動を再現できないため、粒子の直径は上記の範囲とすることが望ましい。本実施形態においては、頭頸部器官を形成する粒子として、三次元の球状粒子を適用した場合について述べるが、本発明はこれに限らず、直方体形状の粒子、多角形状の粒子等その他種々の形状でなる粒子により頭頸部器官を形成するようにしてもよい。
ここで、図6は、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの舌12と擬似経口摂取品100との構成を簡略化して示した概略図である。図6に示すように、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの舌12は、CT画像及びVF画像に基づいてCGにより作製した静的三次元頭頸部モデル10b(図3)の舌12の表面12aが特定された後に、当該表面12aに囲まれた領域内に、隣接する粒子20a同士が接するように粒子20aが隙間なく配置されることで、粒子によるモデル化が行われている。
また、動的三次元頭頸部粒子モデル10cで使用する擬似経口摂取品100についても、CGにより作製した擬似経口摂取品100の表面100aが特定された後に、当該表面100aに囲まれた領域内に、隣接する粒子100b同士が接するように粒子100bが隙間なく配置されることで、粒子によるモデル化が行われている。
動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、上述した舌12と同様に、口蓋13も複数の粒子20bで形成され、咽頭部14も複数の粒子20cで形成され、喉頭蓋15a及び喉頭15も複数の粒子20dで形成され、食道17も複数の粒子20eで形成されている。このように、静的三次元頭頸部モデル10bの各頭頸部器官をそれぞれ粒子により作製する処理は、頭頸部モデリング部10により行われる。
ここで、本実施形態における動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、複数の粒子のうち、所定領域にある粒子を、擬似経口摂取品100の嚥下時に頭頸部器官で強制的に移動する強制移動粒子として設定している。また、本実施形態における動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、複数の粒子のうち、強制移動粒子とした粒子以外で所定領域にある粒子を、筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる筋粒子として設定している。
なお、強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子は、嚥下時に頭頸部器官で強制的に移動する位置(すなわち、嚥下時に三次元画像内で移動する座標)が規定されておらず、かつ、筋粒子のような筋線維方向への収縮応力についても規定されていない粒子である。このような強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子は、動的三次元頭頸部粒子モデル10cで擬似経口摂取品100を嚥下させるシミュレーションを行う際、従来の粒子法により移動位置等の解析が行われる。なお、強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子の従来の嚥下シミュレーションの詳細については、文献「Kikuchi, T., Michiwaki, Y., Koshizuka, S., Kamiya, T., and Toyama Y., “Numerical simulation of interaction between organs and food bolus during swallowing and aspiration,” Computers in Biology and Medicine, 80, (2017), pp. 114‐123.」に開示されていることから、ここではその説明は省略し、以下、強制移動粒子と筋粒子とに着目して以下説明する。なお、次に説明する強制移動粒子に関し、粒子法を用いたシミュレーションについては、文献「Kikuchi, T., Michiwaki, Y., Kamiya, T. et al. Comp. Part. Mech. (2015) 2: 247. “Human swallowing simulation based on videofluorography images using Hamiltonian MPS method”」にも開示されている。
(4-3)<動的三次元頭頸部粒子モデルにおける強制移動粒子の設定>
動的三次元頭頸部粒子モデル10cは、頭頸部器官を形成する粒子の中に、強制移動粒子と筋粒子とを有している。まずは、動的三次元頭頸部粒子モデルにおける強制移動粒子の設定について説明する。
動的三次元頭頸部粒子モデル10cは、頭頸部器官の一部の粒子を強制移動粒子として設定し、この強制移動粒子によって、嚥下時に主活動筋と考えられる筋の運動をモデル化している。この場合、動的三次元頭頸部粒子モデル10cで擬似経口摂取品100を嚥下した際における舌12、口蓋13、咽頭部14、喉頭蓋15a、喉頭15及び食道17等を形成している粒子の中から、擬似経口摂取品100の嚥下時に、剛体的な強制変位を与える粒子を選定してこれを強制移動粒子19として設定する。
強制移動粒子19は、実際に被験者が経口摂取品を嚥下する際における頭頸部器官の筋の運動が反映されるように、解剖学的知見や、医用画像の分析研究の知見から選定する。本実施形態では、所定の経口摂取品を被験者に嚥下させたときに得られたVF画像や4DCT画像において頭頸部器官をトレースし、動的三次元頭頸部粒子モデル10c内で強制的に移動させる強制移動粒子19を選定している。
また、所定の経口摂取品を被験者に嚥下させたときに得られたVF画像や4DCT画像に基づいて、嚥下開始から嚥下終了までの間、所定時間(例えば、0.1S)ごとに各強制移動粒子19が三次元画像内で移動する位置を決定し、各強制移動粒子19について、嚥下時における時間と位置とを設定する。
すなわち、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて、例えば、嚥下開始時である0.0Sのとき、三次元画像内のX軸、Y軸及びZ軸での座標が(0.0、0.2、-0.2)にある強制移動粒子19について、嚥下開始時から0.1Sのとき座標(0.0、0.2、0.0)に移動し、0.2Sのとき座標(0.0、0.3、0.3)に移動することを設定する。
ここで、図4及び図5において黒丸で示した粒子は、本実施形態における強制移動粒子19を示しており、例えば、舌12、口蓋13及び喉頭15等の一部に設定されている。本実施形態の舌12では、図5に示すように、複数の強制移動粒子19が集まった島状の粒子群19aが、下縦舌筋に沿って所定間隔で設定されている。口蓋13では、軟口蓋の口腔側に位置する箇所に、複数の強制移動粒子19が集まった島状の粒子群19bが設定されている。
また、本実施形態の喉頭15では、喉頭蓋谷付近に位置する箇所に、複数の強制移動粒子19が集まった島状の粒子群19cが設定され、喉頭隆起付近に位置する箇所にも、複数の強制移動粒子19が集まった島状の粒子群19dが設定され、後輪状披裂筋付近にも、複数の強制移動粒子19が集まった粒子群19eが設定されている。さらに、食道17にも、複数の強制移動粒子19が集まった島状の粒子群19fが、気道側の管壁に沿って所定間隔に設定されている。
ここで、図7は、図5に示した動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて、嚥下時に強制移動粒子19が移動するときの軌跡の一部を、移動軌跡線22a,22b,22c,22dで表した概略図である。例えば、22aは、舌12に設定した強制移動粒子19の移動軌跡線を示し、22bは、口蓋13の軟口蓋に設定した強制移動粒子19の移動軌跡線を示し、22cは、喉頭15に設定した強制移動粒子19の移動軌跡線を示し、22dは、食道17の菅壁に設定した強制移動粒子19の移動軌跡線を示す。
図8は、移動軌跡線22a,22b,22c,22d(以下、これらをまとめて移動軌跡線22とする)に従って、強制移動粒子19を移動させたときの動的三次元頭頸部粒子モデル10c1,10c2,10c3,10c4の状態変化を示した概略図である。図8では、約12Sで所定の擬似経口摂取品100を嚥下する動的三次元頭頸部粒子モデル10cを一例とし、嚥下開始時である0Sの動的三次元頭頸部粒子モデル10c1と、嚥下開始から約7S後の動的三次元頭頸部粒子モデル10c2と、嚥下開始から約9S後の動的三次元頭頸部粒子モデル10c3と、嚥下開始から約11S後の動的三次元頭頸部粒子モデル10c4とを示す。
このように、動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、頭頸部器官の所定位置に強制移動粒子19を設け、各強制移動粒子19が嚥下時に移動する位置と時間とを予め設定することで、嚥下時における頭頸部器官の基本的な運動(進行波的波動運動、回転運動、上下運動、前後運動、収縮運動等)を再現させている。なお、このような動的三次元頭頸部粒子モデル10cの強制移動粒子19の運動は、器官運動設定部30の強制運動設定部31で設定する。
(4-4)<動的三次元頭頸部粒子モデルにおける筋粒子の設定>
動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて嚥下時の咽頭部14等の挙動を精度よく再現するためには、嚥下時に咽頭部14等の壁面の長さが短縮する運動を再現することが望ましい。そこで、本実施形態における動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、咽頭部14等の粒子に対して単に剛体的な強制変位を与えるだけでなく、咽頭部14等の筋種ごとに三次元画像内で各筋粒子に筋線維方向を設定し、かつ筋線維方向に基づく最適な収縮応力を筋粒子に与え、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける嚥下時の挙動を精度よく再現している。なお、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて筋線維方向に基づく収縮応力を与える粒子を筋粒子と称する。
動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて、例えば、舌12を形成する粒子20aの中から筋粒子を設定する場合、図9に示すように、解剖学的知見やVF画像、4DCT画像等に基づき、嚥下時に舌12が短縮する筋体領域ER,ER等を三次元画像内で特定し、各筋体領域ER,ER内に存在している粒子20aを探索する。例えば、筋体領域ER内にある粒子20aを、舌12の筋粒子とし、三次元画像の仮想空間内において、筋粒子ごとに筋線維方向を定義する。
筋粒子に設定する筋線維方向の詳細については後述するが、解剖学的知見やVF画像、4DCT画像等に基づき、舌12の筋体領域ER内の空間内に、嚥下時に筋収縮が生じている方向を線分Aとして複数設定し、筋粒子ごとに、近傍にある各線分Aの方向の重み付け平均を筋線維方向としている。本実施形態においては、例えば、筋粒子から最も近い第1線分と、筋粒子に対して2番目に近い第2線分との2つの線分を特定し、筋粒子から第1線分までの距離と、筋粒子から第2線分までの距離とについて、筋粒子からの距離の近さに応じた重みを付けて第1線分の方向と第2線分の方向とを平均して筋線維方向を求めている。ただし、筋線維方向の求め方は、この手法である必要はなく、例えば、筋体領域ER内に定義した全線分を用いて、放射基底関数(Radial Basis Function)補間を行うことでも、より滑らかに空間分布する、筋線維方向を得ることができる。
また、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおいて、擬似経口摂取品100を嚥下させたときに、頭頸部器官の収縮筋の筋種ごとに生じる、筋粒子の収縮応力の時間的変化を、活性化レベルとして設定し、活性化レベルにより嚥下時の収縮応力の大きさを設定している。なお、この活性化レベルについては後述する。
ここでは、始めに、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける咽頭部14に着目し、咽頭部14における収縮筋ごとに設定する筋線維方向について以下説明する。図10の左図は、図3に示した静的三次元頭頸部モデル10bに、咽頭部14の収縮筋が走行する方向Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ahを示した筋線維モデル10dの概略図である。図10の右図は、左図の筋線維モデル10dに示した咽頭収縮筋が走行する方向Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ahを基に、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける咽頭部14において筋粒子1つ1つの筋線維方向を示した動的三次元頭頸部粒子モデル10eの概略図である。
本実施形態では、筋線維モデル10d及び動的三次元頭頸部粒子モデル10eに示すように、解剖学的知見に基づき、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとに、咽頭部14を区分けしている。
上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとについては、それぞれの領域内に筋粒子となる粒子が隙間なく配置され、粒子によるモデル化が行われている。
そして、これら上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとについて、それぞれ収縮筋が走行する方向Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ahは、図6で説明したように、解剖学的知見やVF画像等に基づき、嚥下時に、各筋収縮筋の部位ごとにそれぞれ生じる細かな筋収縮方向を線分として設定した後、筋粒子ごとに、近傍にある各線分の方向の重み付け平均をして求めたものである。なお、図10の左側に示した、収縮筋が走行する方向Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ahは、説明の便宜上、筋線維方向のおおよその方向を示したものである。咽頭部14の各筋粒子1つ1つは、このような収縮筋が走行する方向Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ahに従って筋線維方向を定義している。
以下、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとについてそれぞれ順番に説明する。
なお、最終的に作製された動的三次元頭頸部粒子モデル10cは、マーチングキューブ法などにより頭頸部器官の表面形状が形成され、図2に示すように、頭頸部器官の粒子1つ1つは表示しないで頭頸部器官の表面形状を表示した動的三次元頭頸部モデル10aが作製される。
<上咽頭収縮筋舌咽頭部>
上咽頭収縮筋舌咽頭部14aは、咽頭部14の最上部に位置する。図11は、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Aaとして示した概略図である。図12は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した上咽頭収縮筋舌咽頭部14aの側面構成を示した概略図であり、図13は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した上咽頭収縮筋舌咽頭部14aの背面構成を示した概略図である。なお、ここで、図12及び図13は、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aを細かな円柱で図示しており、各円柱1つ1つは、筋線維方向を示した筋粒子を表している。
上咽頭収縮筋舌咽頭部14aは、嚥下時に上から順に収縮して、擬似経口摂取品100を下方に移動させる方向Aaに沿って筋線維方向が規定されている。また、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aの上部は、咽頭後壁を上方に引き上げて、軟口蓋とともに咽頭鼻部を口腔から遮断する方向Aaに筋線維方向が規定されている。
<中咽頭収縮筋小角咽頭上部と中咽頭収縮筋小角咽頭下部>
中咽頭収縮筋小角咽頭上部14b及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cは、咽頭部14の中間に位置している。図14は、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Abとして示し、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Acとして示した概略図である。
図15は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した中咽頭収縮筋小角咽頭上部14b及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cの側面構成を示した概略図であり、図16は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した中咽頭収縮筋小角咽頭上部14b及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cの背面構成を示した概略図である。なお、ここでも、図15及び図16は、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14b及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cをそれぞれ細かな円柱で図示しており、各円柱1つ1つは、筋線維方向を示した筋粒子を表している。
中咽頭収縮筋小角咽頭上部14b及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cは、舌骨の小角(小角咽頭部)から設けられており、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aの下部を下方から覆いながら内側上方に進み咽頭縫線に向かう方向Ab,Acに沿って筋線維方向が設定されており、嚥下時に上から順に収縮して、擬似経口摂取品100を下方に移動させる。
<中咽頭収縮筋大角咽頭上部と中咽頭収縮筋大角咽頭下部>
中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eは、咽頭部14の中間に位置している。図17は、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Adとして示し、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Aeとして示した概略図である。
図18は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eの側面構成を示した概略図であり、図19は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eの背面構成を示した概略図である。なお、ここでも、図18及び図19は、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eをそれぞれ細かな円柱で図示しており、各円柱1つ1つは、筋線維方向を示した筋粒子を表している。
中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eは、舌骨の大角(大角咽頭部)から設けられており、上咽頭収縮筋舌咽頭部14a、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14b及び中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cを下方から覆いながら内側上方に進み咽頭縫線に向かう方向Ad,Aeに沿って筋線維方向が設定されており、嚥下時に上から順に収縮して、擬似経口摂取品100を下方に移動させる。
<下咽頭収縮筋甲状咽頭上部と下咽頭収縮筋甲状咽頭下部と下咽頭収縮筋輪状咽頭部>
下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hは、咽頭部14の最下部に位置している。図20は、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Afとして示し、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Agとして示し、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hに設定された筋粒子の全体的な筋線維方向の概略を方向Ahとして示した概略図である。
図21は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hの側面構成を示した概略図であり、図22は、筋粒子ごとに筋線維方向を定義した下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hの背面構成を示した概略図である。なお、ここでも、図21及び図22は、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hをそれぞれ細かな円柱で図示しており、各円柱1つ1つは、筋線維方向を示した筋粒子を表している。
下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gは、甲状軟骨の斜線から咽頭縫線にかけて設けられており、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cを下方から覆いながら内側上方に進み咽頭縫線に向かう方向Af,Agに沿って筋線維方向が設定されており、嚥下時に上から順に収縮して、擬似経口摂取品100を下方に移動させる。
下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hは、食道入口部括約筋として機能するものであり、食道入口部17aを下方から覆いながら内側上方に進み咽頭縫線に向かう方向Ahに沿って筋線維方向が設定されており、嚥下時に擬似経口摂取品100を咽頭部14から食道17に移動させる。
(5)<動的三次元頭頸部粒子モデルにおける構造解析手法>
ここで、嚥下シミュレーション装置1では、擬似経口摂取品100を動的三次元頭頸部粒子モデル10cで嚥下させたときの各頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の嚥下時の挙動と、を粒子法に基づいて三次元画像でシミュレーション解析する。
なお、このような嚥下シミュレーションの解析結果を表示部4に表示させる際は、上述したように、動的三次元頭頸部粒子モデル10cを形成している粒子1つ1つは表示せずに、頭頸部器官の表面のみを表示して構成を簡略化し、見易くした動的三次元頭頸部モデル10aが用いられる。なお、擬似経口摂取品100も同様に、表示部4には、擬似経口摂取品100の表面形状のみが表示される。ここでは、粒子1つ1つを表記した動的三次元頭頸部粒子モデル10cに着目して、嚥下シミュレーションについて以下説明する。
本実施形態では、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける頭頸部器官の動作や、擬似経口摂取品100の挙動を三次元画像内に表して嚥下シミュレーションを行なう際、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける頭頸部器官の筋粒子を、ムーニー・リブリン(Mooney‐Rivlin)体として粒子法(例えば、ハミルトニアン粒子法:Hamiltonian MPS法)により運動解析部50で解析する。なお、ここでは、動的三次元頭頸部粒子モデル10cを形成する粒子のうち、主に筋粒子に着目して以下説明する。
この際、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける各筋粒子の運動を決定する支配方程式は次の(4)式となる。
Figure 0007401225000001
ρは、筋粒子iの密度、vは、筋粒子iの速度ベクトル、添え字のiは、筋粒子iを識別するための識別子、tは時間、∂v/∂tは、現在時刻における筋粒子iの加速度である。
i,elasticは、粒子法により筋粒子iに加わる弾性力である。fi,artificialは、筋粒子iに加わる人工ポテンシャル力である。fi,viscousは、筋粒子iに加わる粘性力である。fi,contactは、筋粒子iが他の筋粒子と接触した際に筋粒子iに加わる接触力である。fi,interactionは、筋粒子iに加わる擬似経口摂取品からの流体力である。以下、これらについて順番に説明する。なお、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの各筋粒子は、嚥下シミュレーション時、上記の(4)式から、各筋粒子の三次元画像内の位置や速度が求められ、得られた位置や速度に基づいて移動する。すなわち、各筋粒子は、嚥下シミュレーション時、単に筋線維方向に移動するわけではなく、上記の(4)式に基づいて求められた位置や速度に従って三次元画像内を移動する。
<筋粒子iに加わる弾性力fi,elastic
ここで、ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)では、筋粒子i及び他の筋粒子j間の現在時刻における相対位置ベクトルをrijとし、筋粒子i及び筋粒子j間の初期時刻0における相対位置ベクトルをr i,jとした場合、相対位置ベクトルをrij,r i,jを用いて、筋粒子iの変形勾配テンソルFを次の(5)式で求めることができる。なお、初期時刻0とは嚥下シミュレーションの開始時である0Sを示す。
Figure 0007401225000002
上記の円の中に×を設けた記号はテンソル積を示し、w ijは、筋粒子i及び筋粒子j間の初期時刻0における重み関数である。Aは、下記の(6)式で表される。
Figure 0007401225000003
また、筋粒子iに加わる弾性力fi,elasticは、弾性ひずみポテンシャルエネルギーの総和W=Π:Fを微分することで求めることができ、下記の(7)式で表される。
Figure 0007401225000004
すなわち、筋粒子iに加わる弾性力fi,elasticは下記の(8)式で表される。
Figure 0007401225000005
上記の(7)式のΠは、筋粒子jにおける第1ピオラ-キルヒホッフ(Piola‐Kirchhoff)応力テンソルである。Fは、筋粒子jの変形勾配テンソルである。Aは、筋粒子jに関する上記の(6)式である。
は、筋粒子iにおける第2ピオラ-キルヒホッフ(Piola‐Kirchhoff)応力テンソルであり、筋粒子iに与えられる、筋収縮方向に基づく収縮応力を示す。なお、Sは、筋粒子jにおける第2ピオラ‐キルヒホッフ(Piola‐Kirchhoff)応力テンソルである。ここで、第2ピオラ‐キルヒホッフ応力テンソルSは下記の(9)式で表される。
Figure 0007401225000006
passiveは、他の筋粒子及び強制移動粒子の移動により受ける受動的な応力である受動的応力を表し、Sactiveは、筋線維方向に基づく能動的な収縮応力である能動的収縮応力を表す。
i,activeは、筋粒子iにおける能動的収縮応力Sactiveを示しており、下記の(10)式で表される。
Figure 0007401225000007
i,mは、下記の(11)式の演算式で表される。添え字のiは、筋粒子iを識別する識別子、添え字のmは、頭頸部器官の収縮筋の筋種ごとに規定された識別子である。本実施形態における頭頸部器官の収縮筋の筋種とは、咽頭部14における筋種であり、添え字のmは、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとのうちいずれかを示す。
Figure 0007401225000008
αは、動的三次元頭頸部粒子モデル10cによる擬似経口摂取品100の嚥下時に、頭頸部器官の筋種mにおける筋粒子の活性化レベルの時間的変化を示すものである。
活性化レベルαは、解剖学的知見やVF画像等に基づき、咽頭部14の筋種mごとに予め設定される。本実施形態では、図23に示すように、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとについて、それぞれ嚥下時の時間経過に合わせて活性化レベルαが設定されている。
なお、本実施形態では、図23に示すように、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとにおける、嚥下時の活性化レベルαの最大値が、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eとにおける、嚥下時の活性化レベルαの最大値よりも、大きく選定されている。
また、本実施形態では、図23に示すように、嚥下時、まず、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aの活性化レベルαが最大となった後、次に、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bの活性化レベルαが最大となり、その後、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14f及び下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gの活性化レベルαが最大となり、最後に、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hの活性化レベルαが最大となっている。
また、本実施形態では、図23に示すように、嚥下時、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bの活性化レベルαが立ち上がった後に、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14c、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eの順に活性化レベルαが順次立ち上がり、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14f及び下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gの活性化レベルαが最大値になる前に、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14c、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14d及び中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eの活性化レベルαが最大となっている。
maxは、活性化レベルαが最大値のときの最大の能動的収縮応力であり、fは、現在時刻における筋線維長に基づく能動的収縮応力の補正係数である。a i,mは、筋種mの筋粒子iに設定した初期時刻0の筋線維方向を示す。
本実施形態では、活性化レベルαが0≦α≦1とし、最大の能動的収縮応力fmaxは、α=1のときfmax=700kPaとしている。補正係数fは下記の(12)式により表される。
Figure 0007401225000009
なお、上記の(12)式において、Iは下記の(13)式で表され、CI は至適長状態を示す定数である。なお、Cは筋粒子iの右コーシー・グリーン(Cauchy‐Green)変形テンソルである。
Figure 0007401225000010
次に受動的応力Spassiveについて説明する。受動的応力Spassiveは次の(14)式で表される。
Figure 0007401225000011
Wは下記の(15)式で表される。Cは、右コーシー・グリーン(Cauchy‐Green)変形テンソルであり、C=FFで表される。Fは変形勾配テンソルであり、FはFの転置行列を示す。
Figure 0007401225000012
上記の(15)式において、C、C及びDはムーニー・リブリン(Mooney‐Rivlin)体の材料定数であり、I はCの第1低減不変量であり、Jは、J=det Fである。
<筋粒子iに加わる人工ポテンシャル力fi,artificial
筋粒子iの人工ポテンシャル力fi,artificialは、ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)による特異性のある変位モードとそれによる振動を抑制するものであり、変形勾配テンソルFの誤差を打ち消す方向に働くものである。この筋粒子iの人工ポテンシャル力fi,artificialは下記の(16)式で表される。この(16)式のC artは下記の(17)式で表される。
Figure 0007401225000013
Figure 0007401225000014
なお、この人工ポテンシャル力fi,artificialの計算方法の詳細は、文献「Kikuchi, T., Michiwaki, Y., Koshizuka, S., Kamiya, T., and Toyama Y., “Numerical simulation of interaction between organs and food bolus during swallowing and aspiration,” Computers in Biology and Medicine, 80, (2017), pp. 114‐123.」と、文献「「Kikuchi, T., Michiwaki, Y., Kamiya, T. et al. Comp. Part. Mech. (2015) 2: 247. “Human swallowing simulation based on videofluorography images using Hamiltonian MPS method”」とに開示されていることから、ここではその説明は省略する。
<筋粒子iに加わる粘性力fi,viscous
筋粒子iに加わる粘性力fi,viscousは、筋粒子iの速度を減衰させ、計算を安定化させるものであり、下記の(18)式で表される。
Figure 0007401225000015
ρは、筋粒子iの密度である。νelaは弾性体の粘度である。dは次元数である。λ及びnはハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)の定数である。
この粘性力fi,viscousの計算方法の詳細は、上記と同様の文献「Kikuchi, T., Michiwaki, Y., Koshizuka, S., Kamiya, T., and Toyama Y., “Numerical simulation of interaction between organs and food bolus during swallowing and aspiration,” Computers in Biology and Medicine, 80, (2017), pp. 114‐123.」に開示されていることから、ここではその説明は省略する。
<筋粒子iに加わる接触力fi,contact
筋粒子iに加わる接触力fi,contactは、筋粒子同士の接触力であり、垂直抗力fi,norと摩擦力fi,tanとを合わせたものとなる。ここでは、ペナルティ法によって壁面(接触する他の筋粒子jから決定した壁面)にめり込んだ筋粒子iに接触力を与える。他の物体との接触境界条件として適用されるペナルティ法では、他の物体に接触した筋粒子iに対してペナルティ力、すなわち反発力として下記の(19)式で表される垂直抗力fi,norが筋粒子iに与えられる。
Figure 0007401225000016
kは、ペナルティ係数であり、pは、めり込み量であり、nは、垂直抗力fi,norの単位方向ベクトルである。図24に示すように、垂直抗力fi,norは、壁面とめり込み量pに比例した大きさの力を、壁面の法線ベクトルnの方向へ与えるものである。
また、摩擦力fi,tanは、下記の(20)式で表される。
Figure 0007401225000017
ρは、筋粒子iの密度であり、μtanは、摩擦係数であり、viw,tanは、筋粒子iと壁面の相対速度のうち、壁面の法線ベクトルnに垂直な成分である。
このような接触力fi,contactの計算方法の詳細は、文献「菊地貴博, 道脇幸博, 越塚誠一, 神谷哲, 長田尭, 神野暢子, 外山義雄. 壁境界条件としてペナルティ法を導入したHamiltonian MPS 法による超弾性体モデルの単軸圧縮シミュレーション. 日本計算工学会論文集, 2014:20140010, 2014」に開示されていることから、ここではその説明は省略する。
<筋粒子iに加わる擬似経口摂取品からの流体力fi,interaction
ここでは、構造粒子(筋粒子)を壁粒子として流体解析を行い、構造粒子が流体粒子(擬似経口摂取品100の粒子)に与える力の反作用力を、筋粒子iが流体粒子から受ける流体力fi,interactionとして与える。非圧縮性流体の支配方程式は、下記の(21)式で表すことができる。ここでは、嚥下させる擬似経口摂取品100はニュートン流体としてE-MPS法(Explicit MPS法)を用いて解析する。
筋粒子iに加わる擬似経口摂取品からの流体力fi,interactionの支配方程式は下記の(21)式となる。
Figure 0007401225000018
ここで、上記の(21)式の右辺第1項は圧力勾配項であり、右辺第2項は粘性項であり、右辺第3項は重力項であり、右辺第4項は表面張力項である。
vは流体(擬似経口摂取品100)の速度、ρは流体の密度、Pは流体の圧力、νは流体の動粘性係数、gは重力加速度、fsurface tensionは表面張力である。上記の(21)式の右辺の重力加速度以外の各項は、流体粒子が壁粒子から受ける壁境界条件の影響を含んだ形で定式化されている。
このような非圧縮性流体の支配方程式に関する計算方法の詳細は、その詳細については、文献「大地雅俊, 越塚誠一, 酒井幹夫. 自由表面流れ解析のためのMPS 陽的アルゴリズムの開発. 日本計算工学会論文集, 2010:20100013, 2010.」や、文献「鈴木幸人. 粒子法の高精度化とマルチフィジクスシミュレータに関する研究. 博士論文, 2007.」、文献「近藤雅裕, 越塚誠一, 滝本正人. MPS 法における粒子間ポテンシャル力を用いた表面張力モデル. 日本計算工学会論文集, 2007:20070021, 2007.」に開示されていることから、ここではその説明は省略する。
なお、上記の(21)式の流体の圧力Pについて、流体から筋粒子iに加わる圧力Pは下記の(22)式で表される。
Figure 0007401225000019
cは流体の音速、nは筋粒子iに対して他の全ての筋粒子及び流体粒子との間で重み関数の和をとったもので筋粒子iの粒子数密度と称するものである。nは筋粒子iの初期時刻0での粒子数密度である。▽Pは下記の(23)式で表される。Pは流体から筋粒子jに加わる圧力である。
Figure 0007401225000020
表面張力fsurface tensionは、下記の(24)式で表される。
Figure 0007401225000021
ST ijはポテンシャル力の係数である。φは下記の(25)で表される。
Figure 0007401225000022
は初期最近接粒子間距離であり、rはポテンシャル力の影響半径である。
(6)<ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)による演算処理手順>
本実施形態における嚥下シミュレーション装置1では、上述した「(5)<動的三次元頭頸部粒子モデルにおける構造解析手法>」で説明した各式が、運動解析部50に記憶されている。嚥下シミュレーション装置1は、経口摂取品物性設定部40によって擬似経口摂取品100の物性値が設定されると、運動解析部50に記憶されている各式に基づいて動的三次元頭頸部粒子モデル10cの筋粒子の運動(筋粒子が移動する位置r及び速度v)や、擬似経口摂取品100の挙動を算出することができる。
嚥下シミュレーション装置1は、このような算出結果に基づいて、動的三次元頭頸部粒子モデル10cや動的三次元頭頸部モデル10aが擬似経口摂取品100を嚥下する嚥下シミュレーションを動画像により提示することができる。
ここで、図25は、ハミルトニアン粒子法(Hamiltonian MPS法)を用いて動的三次元頭頸部粒子モデル10cでの嚥下シミュレーションを行う際の演算処理手順を示したフローチャートである。なお、ここでは、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの咽頭部14における所定の筋粒子iに着目して以下説明するが、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの各筋粒子に対してそれぞれ以下の演算処理が行われる。
なお、動的三次元頭頸部粒子モデル10cに設定した強制移動粒子については、嚥下開始から嚥下終了までの間に移動する位置(三次元画像内の座標)が予め決められていることから、嚥下シミュレーション時における強制移動粒子の三次元画像内での移動は、下記の演算処理では特定されない。しかしながら、強制移動粒子についても下記の演算処理は行われる。その理由は、強制移動粒子において算出した応力等が、筋粒子や、他の粒子(強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子)に影響を与えるためである。すなわち、強制移動粒子において算出した第2ピオラ-キルヒホッフ応力テンソルが、例えば、筋粒子iの演算処理を行う際に、ステップS3の弾性力(上記の(8)式)の算出に影響を与える。また、強制移動粒子において算出した変形勾配テンソルが、例えば、筋粒子iの演算処理を行う際に、ステップS3の人工ポテンシャル力(上記の(16)式)の算出、及び、ステップS4の接触力の解析(上記の(19)式と(20)式)に影響を与える。
また、動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける、強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子についても、下記の演算処理が行われるが、この際は、筋粒子で演算が行われる能動的収縮応力Sactiveの演算は行われない。すなわち、強制移動粒子及び筋粒子以外の粒子では、ステップS3において「弾性力」を求める際に、上述した能動的収縮応力Sactiveが存在しない演算が行われる。
動的三次元頭頸部粒子モデル10cの筋粒子iの場合、始めに、ステップS1において、運動解析部50は、タイムステップtにおける動的三次元頭頸部粒子モデル10cの筋粒子iの位置rと、速度vとを仮定し、次のステップS2に移る。初期のステップS1では、位置r=rとなり、これは動的三次元頭頸部粒子モデル10cの初期形状そのものであり、速度v=vは0となる。なお、ステップS10から戻った2回目以降のステップS1は、前のステップS9で求められた位置r´と速度v´を、位置r及び速度vとして用いる。
ステップS2において、運動解析部50は、筋粒子iに加わる擬似経口摂取品100からの流体力fi,interactionについて、上記の(21)式における右辺第2項の粘性項と、右辺第3項の重力項と、右辺第4項の表面張力項とを求め、次のステップS3に移る。なお、本運動解析は上記の(21)式の右辺を同時に求めず、ステップS2とS7に分離して求める解法であるため、上記の(21)式における右辺第1項の勾配圧力項はS7において求める。
ステップS3において、運動解析部50は、構造解析として、筋粒子iに加わる弾性力fi,elasticを上記の(8)式に基づき算出し、筋粒子iに加わる人工ポテンシャル力fi,artificialを上記の(16)式に基づき算出し、筋粒子iに加わる粘性力fi,viscousを上記の(18)式に基づき算出して、次にステップS4に移る。
ここで、本実施形態では、筋粒子iに加わる弾性力fi,elasticを算出する際に、上記の(9)式に基づいて受動的応力Spassiveと、筋線維方向に基づく能動的な収縮応力である能動的収縮応力Sactiveとが筋粒子iに反映させることでき、擬似経口摂取品100の嚥下時における頭頸部器官の筋粒子iの運動を従来よりも一段と正確に再現することができる。
ステップS4において、運動解析部50は、接触解析として、筋粒子iに加わる接触力fi,contactを上記の(19)式及び(20)式に基づき算出し、次のステップS5に移る。
ステップS5において、運動解析部50は、筋粒子iに加わる弾性力fi,elasticと、筋粒子iに加わる人工ポテンシャル力fi,artificialと、筋粒子iに加わる粘性力fi,viscousと、筋粒子iに加わる接触力fi,contactと、さらに、筋粒子iに加わる擬似経口摂取品100からの流体力fi,interactionのうち(21)式の右辺第2項の粘性項と、右辺第3項の重力項と、右辺第4項の表面張力項と、から、上記の(4)式を基に筋粒子iの仮の加速度∂v/∂t´を算出し、得られた算出結果から筋粒子iの仮の位置r´と速度v´とを求め、次のステップS6に移る。
ステップS6において、運動解析部50は、仮の位置r´を利用して上記の(22)式から圧力Pを求め、次のステップS7に移る。ステップS7において、運動解析部50は、ステップS6で求めた圧力P及び上記の(23)式を用いて、上記の(21)式における右辺第1項の勾配圧力項を求め、次のステップS8に移る。
これにより、運動解析部50は、ステップS7で上記の(21)式における右辺第1項の勾配圧力項を用いることで、上記の(21)式で表された、筋粒子iに加わる擬似経口摂取品100からの流体力fi,interactionを求めることができる。
ステップS8において、運動解析部50は、剛体計算として、筋粒子iに加わる弾性力fi,elasticと、筋粒子iに加わる人工ポテンシャル力fi,artificialと、筋粒子iに加わる粘性力fi,viscousと、筋粒子iに加わる接触力fi,contactと、筋粒子iに加わる擬似経口摂取品100からの流体力fi,interactionとを用い、上記の(4)式から筋粒子iの加速度∂v/∂tを算出し、次のステップS9に移る。
ステップS9において、運動解析部50は、上記の(4)式から算出した筋粒子iの加速度∂v/∂tを基に、筋粒子iの位置r´と速度v´を算出し、ステップS5で算出した仮の位置r´と速度v´とを、このステップS9で算出した位置r´と速度v´とに修正して、次のステップS10に移る。
ステップS10において、運動解析部50は、タイムステップtを進めt=t+1として再びステップS1に戻り、上述した処理を行い、次の時刻であるタイムステップ(t+1)のときの筋粒子iの位置rt+1´と速度vt+1´とを求める。このようにして、嚥下シミュレーション装置1では、動的三次元頭頸部モデル10aにおける各頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の嚥下に係る挙動とを、粒子法を用いて三次元画像内で解析することができ、動的三次元頭頸部モデル10aにおける嚥下の様子を表示部4の表示画面に動画像として提示できる。
(7)<検証結果>
次に、比較例として、筋線維方向への収縮応力を規定した筋粒子を設けずに、強制移動粒子を設けて粒子法による嚥下シミュレーションを行える動的三次元頭頸部モデルを作製した。そして、強制移動粒子に加えて、筋線維方向に収縮応力により移動する筋粒子を設けた、本実施形態の動的三次元頭頸部モデル10aと、比較例の動的三次元頭頸部モデルとについて、同じ擬似経口摂取品100を嚥下させる嚥下シミュレーションを行い、その動作の違いについて確認した。
ここで、図26の左側は、本実施形態における動的三次元頭頸部モデル10a1,10a2を示しており、左上側に嚥下開始から1.583S後の動的三次元頭頸部モデル10a1を示し、左下側に嚥下開始から1.800S後の動的三次元頭頸部モデル10a2を示している。
一方、図26の右側は、比較例の動的三次元頭頸部モデル10f1,10f2を示しており、右上側に嚥下開始から1.583S後の動的三次元頭頸部モデル10f1を示し、右下側に嚥下開始から1.800S後の動的三次元頭頸部モデル10f2を示している。
図26から、強制移動粒子に加えて、筋線維方向に収縮応力で移動する筋粒子を設けた本実施形態の動的三次元頭頸部モデル10a1,10a2と、比較例の動的三次元頭頸部モデル10f1,10f2とでは、咽頭部14の壁面の運動に違いが確認され、これに伴い擬似経口摂取品100の流れ方にも違いが生じることが確認できた。
また、図27、図28及び図29に示すように、本実施形態の動的三次元頭頸部モデル10aにおいて、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aの中間辺りの高さZ1の位置で水平断面をとり、この水平断面で粒子表示させた動的三次元頭頸部粒子モデル10cの形状変化を確認した。ここでは、図27、図28及び図29の中央には、動的三次元頭頸部モデル10aを粒子で表示させた動的三次元頭頸部粒子モデル10cについて、高さZ1で粒子表示させた水平断面構成を示す。
図27、図28及び図29の右側には、比較例として、強制移動粒子により動作する動的三次元頭頸部粒子モデル10gについて、高さZ1で粒子表示させた水平断面構成を示す。
図27は、嚥下開始から1.45S後の状態を示し、図28は、嚥下開始から1.62S後の状態を示し、図29は、嚥下開始から1.77S後の状態を示したものである。本実施形態の動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、図27、図28及び図29に示すような一連の動作から、咽頭表面14jの壁面長さ(周長)が短縮し、咽頭後壁の隆起も生じ、咽頭表面14j自体が筋として能動的に収縮するような動作を実現できていることが分かった。
一方、比較例である動的三次元頭頸部粒子モデル10gでは、咽頭部14の板状に配置させた強制移動粒子19を強制移動させて咽頭表面14jを押し潰すように動作し、咽頭表面14jの壁面長さ(周長)が短縮しておらず、自然な嚥下動作が再現されていなかった。
次に、図30及び図31に示すように、本実施形態の動的三次元頭頸部モデル10aにおいて、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14g辺りの高さZ2の位置で水平断面をとり、この水平断面で粒子表示させた動的三次元頭頸部粒子モデル10cの形状変化を確認した。なお、11bは甲状軟骨である。図30は、嚥下開始から1.57S後の状態を示し、図31は、嚥下開始から1.88S後の状態を示したものである。本実施形態の動的三次元頭頸部粒子モデル10cでは、図30及び図31に示すような一連の動作から、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gでも壁面長さ(周長)が短縮し、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14g自体が筋として能動的に収縮するような動作を実現できていることが分かった。
次に、被験者の嚥下動作を撮像したVF画像と、粒子1つ1つは表示せずに頭頸部器官の表面形状を表示した本実施形態の動的三次元頭頸部モデル10aと、粒子1つ1つを表示した本実施形態の動的三次元頭頸部粒子モデル10cとについて嚥下の動作を対比した。この場合、VF画像は、造影剤を添加した水5mlを経口摂取品100cとして被験者に嚥下させたときのVF画像である。
なお、動的三次元頭頸部モデル10aは、マーチングキューブ法により動的三次元頭頸部粒子モデル10cから作製した。図32の上段には、嚥下開始から1.50S後の様子を撮像したVF画像IM1と、嚥下開始から1.58S後の様子を撮像したVF画像IM2とを示す。また、図33の上段には、嚥下開始から1.65S後の様子を撮像したVF画像IM3と、嚥下開始から1.75S後の様子を撮像したVF画像IM4とを示す。
図32の中段には、嚥下開始から1.50S後の様子を示した動的三次元頭頸部モデル10a5と、嚥下開始から1.58S後の様子を示した動的三次元頭頸部モデル10a6とを示す。また、図33の中段には、嚥下開始から1.65S後の様子を示した動的三次元頭頸部モデル10a7と、嚥下開始から1.75S後の様子を示した動的三次元頭頸部モデル10a8とを示す。
図32の下段には、嚥下開始から1.50S後の様子を示した動的三次元頭頸部粒子モデル10c5と、嚥下開始から1.58S後の様子を示した動的三次元頭頸部粒子モデル10c6とを示す。また、図33の下段には、嚥下開始から1.65S後の様子を示した動的三次元頭頸部粒子モデル10c7と、嚥下開始から1.75S後の様子を示した動的三次元頭頸部粒子モデル10c8とを示す。
図32及び図33に示した、動的三次元頭頸部モデル10a5,10a6,10a7と、動的三次元頭頸部粒子モデル10c5,10c6,10c7とから、解析開始時に舌上にあった擬似経口摂取品100は舌の進行波的波動運動によって咽頭部に送られること、このとき、上咽頭収縮筋の収縮により喉頭蓋谷の空間が狭くなっていること、擬似経口摂取品100が梨状窩に流入していること、が再現できていることを確認した。
また、図33に示した、動的三次元頭頸部モデル10a7,10a8と、動的三次元頭頸部粒子モデル10c7,10c8とでは、その後に、擬似経口摂取品100を咽頭から食道に送る際は、咽頭収縮筋を順に収縮させることで、咽頭部の壁面の長さを短縮しながら、咽頭部側壁を中央へ、咽頭部後壁を前方へそれぞれ移動させながら、中咽頭収縮筋が閉鎖するような動作が再現できることを確認した。
(8)<作用及び効果>
以上の構成において、嚥下シミュレーション装置1では、複数の粒子によって三次元画像でモデル化した複数の頭頸部器官を作製し、複数の頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部粒子モデル10cを三次元画像により作製し(頭頸部モデリングステップ)、この動的三次元頭頸部粒子モデル10cにおける複数の頭頸部器官の運動を設定する(器官運動設定ステップ)。
この際、嚥下シミュレーション装置1は、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの複数の粒子のうち、擬似経口摂取品100の嚥下時に頭頸部器官で強制的に移動する粒子を強制移動粒子とし、嚥下時における強制移動粒子の運動を設定する(強制運動設定ステップ)。また、嚥下シミュレーション装置1は、動的三次元頭頸部粒子モデル10cの複数の粒子のうち、医学的知見に基づき頭頸部器官の収縮筋ごとに三次元画像内で筋線維方向を特定し、かつ筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる粒子を筋粒子とし、嚥下時における筋粒子の運動を設定する(筋収縮運動設定ステップ)。
嚥下シミュレーション装置1では、運動解析部50によって、擬似経口摂取品100を動的三次元頭頸部粒子モデル10cで嚥下させたときの頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の嚥下時の挙動と、を粒子法に基づいて三次元画像で解析する(運動解析ステップ)。
そして、嚥下シミュレーション装置1は、運動解析部50により三次元画像で解析された、擬似経口摂取品100の嚥下時の頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の嚥下時の挙動との解析結果を、動画像で表示する(表示ステップ)。
なお、本実施形態では、複数の粒子によって三次元画像でモデル化した動的三次元頭頸部粒子モデル10cから、マーチングキューブ法などにより各頭頸部器官の表面形状を作製し、粒子1つ1つが表示されずに頭頸部器官の表面形状のみが表示される動的三次元頭頸部モデル10aする。そして、動的三次元頭頸部粒子モデル10cによる擬似経口摂取品100の嚥下時の頭頸部器官の運動と、擬似経口摂取品100の嚥下時の挙動との解析結果を、表面表示の動的三次元頭頸部モデル10aにより動画像で表示する。
このように、嚥下シミュレーション装置1では、頭頸部器官を粒子で作製し、所定の粒子を強制移動粒子と筋粒子とし、収縮筋ごとに筋線維方向に基づく収縮応力を筋粒子に与えるように設定したことで、擬似経口摂取品100の嚥下時における頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品100の挙動などを従来よりも一段と正確に再現することができる。
また、本実施形態では、頭頸部器官の収縮筋の筋種mごとに設定した活性化レベルαの時間的変化を反映させて、粒子法により、動的三次元頭頸部粒子モデル10cによる擬似経口摂取品100の嚥下時における筋粒子iの運動を、三次元画像で解析するようにした。これにより、嚥下シミュレーション装置1では、嚥下時における時間経過に応じて活発的に動く収縮筋を再現することができ、擬似経口摂取品100の嚥下時における頭頸部器官の運動や、擬似経口摂取品100の挙動などを従来よりも一段と正確に再現することができる。
(9)<他の実施形態>
上述した実施形態においては、嚥下障害者又は健常者の頭頸部器官を再現した動的三次元頭頸部粒子モデル10cを三次元画像により形成する他にも、例えば、乳幼児又は高齢者等の頭頸部器官を再現した動的三次元頭頸部粒子モデルを三次元画像により形成してもよい。
また、上述した実施形態においては、粒子法として、本実施形態で採用したMPS法以外に、SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法などを適用してもよい。
また、上述した実施形態においては、上記に(11)式の演算式を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、上記の(11)式の演算式における補正係数fは常に1としてもよい。また、例えば、筋線維長の変化速度に応じた補正係数fvを、上記の(11)式の演算式にさらに掛け算で追加してもよい。
また、上述した実施形態においては、咽頭部14における収縮筋を、上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hの8つに分けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、上咽頭収縮筋と中咽頭収縮筋と下咽頭収縮筋とに少なくとも分けられていればよい。上咽頭収縮筋と中咽頭収縮筋と下咽頭収縮筋とに分けた場合には、上咽頭収縮筋と中咽頭収縮筋と下咽頭収縮筋とにそれぞれ異なる筋線維方向が設定されるとともに、活性化レベルが設定される。
なお、上述した実施形態においては、筋粒子を設定する頭頸部器官の具体的な収縮筋として、咽頭部14にある上咽頭収縮筋舌咽頭部14aと、中咽頭収縮筋小角咽頭上部14bと、中咽頭収縮筋小角咽頭下部14cと、中咽頭収縮筋大角咽頭上部14dと、中咽頭収縮筋大角咽頭下部14eと、下咽頭収縮筋甲状咽頭上部14fと、下咽頭収縮筋甲状咽頭下部14gと、下咽頭収縮筋輪状咽頭部14hとについて例を挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。動的三次元頭頸部粒子モデルにおいて、頭頸部器官の収縮筋として、例えば、その他、咽頭挙筋群や、舌筋、軟口蓋の筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群、喉頭の筋、等に筋粒子を設定し、嚥下時に、三次元画像内で特定した筋線維方向に基づいて収縮応力により当該筋粒子を運動させるようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、受動的応力Spassiveとして、等方性材料であるムーニー・リブリン体の超弾性体での応力算出の方法を利用し、上記の(10)式に基づいて受動的応力Spassiveを求める場合について述べたが、本発明はこれに限らない。他の受動的応力Spassiveの算出方法としては、例えば、ムーニー・リブリン体の代わりにオグデン(Ogden)体という超弾性体構成則を適用したり、或いは、等方性材料の構成則だけでなく、筋線維による異方性材料の構成則を適用することもできる。
1 嚥下シミュレーション装置
4 表示部
10a 動的三次元頭頸部モデル
10c 動的三次元頭頸部粒子モデル
10 頭頸部モデリング部
30 器官運動設定部
31 強制運動設定部
32 筋収縮運動設定部
50 運動解析部

Claims (9)

  1. 複数の粒子によって三次元画像でモデル化した複数の頭頸部器官を作製し、前記複数の頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部粒子モデルを前記三次元画像により作製する頭頸部モデリング部と、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルにおける前記複数の頭頸部器官の運動を設定する器官運動設定部と、
    経口摂取品を複数の粒子によって前記三次元画像でモデル化した擬似経口摂取品を、前記動的三次元頭頸部粒子モデルで嚥下させたときの前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動と、を粒子法に基づいて前記三次元画像で解析する運動解析部と、
    前記運動解析部により前記三次元画像で解析された、前記擬似経口摂取品の嚥下時の前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動との解析結果を、動画像で表示する表示部と、
    を備え、
    前記器官運動設定部は、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記擬似経口摂取品の嚥下時に前記頭頸部器官で強制的に移動する粒子を強制移動粒子とし、前記嚥下時における前記強制移動粒子の運動を設定する強制運動設定部と、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記頭頸部器官の収縮筋ごとに前記三次元画像内で筋線維方向が特定され、かつ前記筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる粒子を筋粒子とし、前記嚥下時における前記筋粒子の運動を設定する筋収縮運動設定部と、
    を備える、嚥下シミュレーション装置。
  2. 前記筋収縮運動設定部は、
    前記筋線維方向に基づく前記収縮応力には、前記筋線維方向に基づく能動的な収縮応力である能動的収縮応力が設定されている、
    請求項1に記載の嚥下シミュレーション装置。
  3. 前記筋収縮運動設定部は、
    前記筋線維方向に基づく前記収縮応力には、他の筋粒子及び前記強制移動粒子の移動により受ける受動的な応力である受動的応力が設定されている、
    請求項2に記載の嚥下シミュレーション装置。
  4. 前記筋収縮運動設定部は、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルによる前記擬似経口摂取品の嚥下時に、前記頭頸部器官の前記収縮筋の筋種ごとに前記筋粒子に与えられる前記収縮応力の時間的変化を、活性化レベルとして設定し、
    前記運動解析部は、
    前記頭頸部器官の前記収縮筋の筋種ごとに設定した前記活性化レベルの時間的変化を反映させて、前記粒子法により、前記動的三次元頭頸部粒子モデルによる前記擬似経口摂取品の嚥下時における前記筋粒子の運動を、前記三次元画像で解析する、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の嚥下シミュレーション装置。
  5. 前記筋収縮運動設定部は、
    前記頭頸部器官における前記収縮筋が、少なくとも上咽頭収縮筋と中咽頭収縮筋と下咽頭収縮筋とに分けられている、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の嚥下シミュレーション装置。
  6. 前記運動解析部は、
    前記粒子法により前記筋粒子に加わる弾性力と、前記筋粒子に加わる人工ポテンシャル力と、前記筋粒子に加わる粘性力と、他の粒子と接触した際に粒子に加わる接触力と、前記筋粒子に加わる前記擬似経口摂取品からの流体力とを解析し、
    前記弾性力を解析する際に、前記筋粒子への前記収縮応力の付与として、下記の(1)式で表す第2ピオラ-キルヒホッフ(Piola-Kirchhoff)応力テンソルを含めて解析する、
    請求項1に記載の嚥下シミュレーション装置。
    Figure 0007401225000023
    passive、他の筋粒子及び前記強制移動粒子の移動により受ける受動的な応力である受動的応力を表し、Sactiveは、前記筋線維方向に基づく能動的な収縮応力である能動的収縮応力を表す。
  7. 能動的収縮応力Sactiveは、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルによる前記擬似経口摂取品の嚥下時に、前記頭頸部器官の筋種mにおける筋粒子iの前記収縮応力の時間的変化を示す活性化レベルαと、
    筋種mの筋粒子iに設定した初期時刻0の筋線維方向a i,mと、
    を含んだ演算式により算出される、
    請求項6に記載の嚥下シミュレーション装置。
  8. 所定の筋粒子iにおけるSactiveを示すSi,activeは、下記の(2)式で表される、
    請求項6に記載の嚥下シミュレーション装置。
    Figure 0007401225000024
    i,mは、下記の(3)式で表される。添え字のiは、筋粒子iを識別する識別子、添え字のmは、前記頭頸部器官の筋種ごとに規定された識別子である。
    Figure 0007401225000025
    αは、前記動的三次元頭頸部粒子モデルによる前記擬似経口摂取品の嚥下時に、前記頭頸部器官の筋種mにおける筋粒子iの前記収縮応力の時間的変化を示す活性化レベルである。
    maxは、活性化レベルαが最大値のときの最大の能動的収縮応力、fは、現在時刻における筋線維長の基づく能動的収縮応力の補正係数、a i,mは、筋種mの筋粒子iに設定した初期時刻0の筋線維方向を示す。
  9. 複数の粒子によって三次元画像でモデル化した複数の頭頸部器官を作製し、前記複数の頭頸部器官からなる動的三次元頭頸部粒子モデルを前記三次元画像により作製する頭頸部モデリングステップと、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルにおける前記複数の頭頸部器官の運動を設定する器官運動設定ステップと、
    経口摂取品を複数の粒子によって前記三次元画像でモデル化した擬似経口摂取品を、前記動的三次元頭頸部粒子モデルで嚥下させたときの前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動と、を粒子法に基づいて前記三次元画像で解析する運動解析ステップと、
    前記運動解析ステップにより前記三次元画像で解析された、前記擬似経口摂取品の嚥下時の前記頭頸部器官の運動と、前記擬似経口摂取品の嚥下時の挙動との解析結果を、動画像で表示する表示ステップと、
    を備え、
    前記器官運動設定ステップは、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記擬似経口摂取品の嚥下時に前記頭頸部器官で強制的に移動する粒子を強制移動粒子とし、前記嚥下時における前記強制移動粒子の運動を設定する強制運動設定ステップと、
    前記動的三次元頭頸部粒子モデルの前記複数の粒子のうち、前記頭頸部器官の収縮筋ごとに前記三次元画像内で筋線維方向が特定され、かつ前記筋線維方向に基づく収縮応力が与えられる粒子を筋粒子とし、前記嚥下時における前記筋粒子の運動を設定する筋収縮運動設定ステップと、
    を備える、嚥下シミュレーション方法。
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