JP2010033427A - 粘弾性体のシミュレーション方法およびシミュレーション装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】まず、変形中の前記モデルに作用する第1の物理量と第2の物理量を定め、さらに、代表モデルに粘性特性を表す粘性パラメータの値を定める。次に、粘性パラメータの値を代表モデルに与え、周期的な変形を代表モデルに与えることによりシミュレーションを行う。その際、代表モデルにおける第1の物理量の時間履歴データを、周期ごとに取り出し、この取り出した時間履歴データと、1つ前の周期における第1の物理量の時間履歴データについて、少なくとも対応する2箇所以上の特徴点における値の差分または比率を求める。求めた特徴点毎の差分または比率が、いずれも予め定められた閾値より小さい場合、シミュレーションを終了し、第2の物理量を取り出す。
【選択図】図2
Description
粘弾性特性を有する部材や構造物のシミュレーションでは、予め設定された解析時間になるまで、モデルを用いたシミュレーション計算を続けた後、計算終了後、モデルに作用する物理量を取り出し、解析を行なう。
ここで、定常状態とは、周期的な変形をモデルに付与したとき、算出する物理量の時間波形が周期によって変動しない状態をいう。
これによると、粘弾性材料からなる製品の実使用状態を想定した測定条件下で、上記粘弾性材料に生じるひずみ、ひずみ速度、応力の時々刻々の値を測定し、上記ひずみ、ひずみ速度、応力の時刻歴データと、上記粘弾性材料の粘性を考慮した粘弾性モデルとから、粘弾性材料の粘性抵抗の時刻歴データを導出する。一方、上記粘弾性材料からなる製品を解析対象の製品モデルとして設定し、該製品モデルに上記ひずみ、ひずみ速度、粘性抵抗の関係を入力し、上記ひずみ、ひずみ速度の違いによる粘性抵抗の変化を考慮したシミュレーションを行い、上記粘弾性材料からなる製品モデルの性能を予測する。
また、下記非特許文献1には、数値解析可能なモデルを用いて周期的な変形をモデルに与えて行うシミュレーションが記載されている。
また、上記非特許文献1においては、モデルの定常状態を示しているが、どのようにして、定常状態が得られたのか示されていない。
その際、前記部位を、定められたタイヤの各部分に繰り返し適用し、この適用を繰り返すたびに、前記変形による単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間積算値を求め、各部分について求めた粘弾性損失エネルギの時間積算値を累積し、この累積結果を前記タイヤの周長で除算することにより、前記タイヤの転がり抵抗を算出することが好ましい。
シミュレーション装置10は、CPU12、メモリ14、ROM16、I/Oボード18を備えたコンピュータであり、メモリ14あるいはROM16に記憶されたアプリケーションソフトウェアを読み出して、条件設定部20、モデル作成部22、静解析演算部24、動解析演算部26、時間変換部28、周期境界条件設定部30、及び、物理量算出部32のそれぞれのサブルーチンを生成するように構成される。
なお、シミュレーション装置10は、ディスプレイ34、プリンタ36及びマウス・キーボード等の入力操作系38と接続されている。有限要素モデルに必要な情報やシミュレーション演算に必要な条件は、ディスプレイ34に表示された入力画面をオペレータが見ながら、入力操作系38にてシミュレーション装置10に入力指示される。また、シミュレーション演算結果がディスプレイ34やプリンタ36に数値、グラフあるいは図によって出力される。
第1の物理量として、例えば、応力や歪みや、応力や歪みの時間微分値(速度)や、単位時間あたりの粘弾性損失エネルギ等が好適に設定される。
第2の物理量として、例えば、単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間積算値が好適に設定される。この他に、応力や歪みが設定されてもよい。設定された条件は、メモリ14に記憶される。
G(t)= C10×[1−g(1−e-t/τ)]
動解析演算部26に用いる変位のデータはタイヤ1回転分の変位の時間変化情報なので、動解析のシミュレーションでは、代表モデルの各節点に変位のデータが周期的に与えられる。このシミュレーションは、モデルに作用する第1の物理量が、予め設定された定常状態か否かを判定する判定条件を満たすまで、周期的な変形が係属して繰り返され、第1の物理量が判定条件を満たすとき、そのときのシミュレーション結果は、メモリ14に記憶される。
部鶴量算出部32は、タイヤの断面における設定された各部分に、代表モデルを適用し、適用の度に、第2の物理量を算出する。
すべてのタイヤモデルの要素を代表モデルに対応させて単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間履歴データと、その時間積算値(粘弾性損失エネルギ)が算出されると、単位時間当たりの粘弾性損失エネルギのすべての時間履歴データの累積と時間積算値(粘弾性損失エネルギ)の累積が行なわれる。なお、時間履歴データの累積および時間積算値の累積は、タイヤを構成するトレッド部材やサイド部材のように部材別に行って、各部材における時間履歴データの時間積算値((粘弾性損失エネルギ))の累積値を算出してもよい。時間履歴データの累積結果や時間積算値の累積結果は、ディスプレイ34やプリンタ36に出力される。さらに、物理量算出部32は、1周期毎の時間積算値の累積結果の値を、静解析演算部24で得られた結果から算出されるタイヤモデルの1回転による進む距離(タイヤの周長)の値で除算することにより、転がり抵抗値を算出する。
まず、条件設定部20において、シミュレーションに必要な各種条件が入力操作系38を用いて設定される(ステップS100)。シミュレーションの条件は、例えば、代表モデルに作用する物理量として取り出す第1の物理量及び第2の物理量の情報、有限要素モデルの構造(節点や要素形状)の情報、有限要素に材料パラメータとして用いる弾性パラメータの値や粘性パラメータの値や緩和時定数の値、静解析や動解析のシミュレーションのためのタイヤ内圧条件、荷重条件、転動速度条件、さらには、回転体モデルに接地処理を施すためのシミュレーション条件等が含まれる。第1の物理量として、例えば、単位時間当たりの粘弾性損失エネルギが設定され、第2の物理量として、1周期における粘弾性損失エネルギが設定される。以降では、第1の物理量として、単位時間当たりの粘弾性損失エネルギが設定され、第2の物理量として、1周期における粘弾性損失エネルギが設定された場合を例として説明する。
なお、代表モデルは、1つの要素で構成されたモデルに限定されず、6面体要素を複数隣接配置したモデルであってもよい。
タイヤ変形解析では、まず、図4に示すようなタイヤモデル50に対して、内圧充填処理が施される。内圧充填処理は、タイヤモデル50の空洞領域に接する節点に所定の力を付与する処理である。次に、路面を再現した剛体モデル56に対して、設定された荷重条件で、内圧充填処理の施されたタイヤモデル50を、シミュレーション条件に基づいて接地する接地処理が施される。接地処理の結果はメモリ14に記憶される。
図3(a)では、要素54を注目要素としている。どの要素を注目要素とするかの情報は、ステップ100における条件設定においてオペレータから入力されている。なお、後述するように、注目要素は、図3(a)に示される要素全てを対象とするので、条件設定においてオペレータが注目要素の順番を入力してもよいし、注目要素の順番を入力することなく、予め定められた順番で自動的に注目要素を定めてもよい。
注目要素の周方向経路は、図3(a)に示すショルダー部の要素54が注目要素の対象とされた場合、ショルダー部の要素54が1回転するときの軌跡に対応する。この軌跡は、メモリ14に記憶されている接地処理により変形したタイヤの変形形状における経路である。
さらに、時間変換部28において、変位勾配の周方向分布が、変位勾配の時間変化情報に変換され、さらに、この変位勾配から、代表モデル52の各節点1〜8の変位が算出される。節点の変位は、3次元の2階非対称テンソルで表されるので、9成分で表されている。図5には、各節点の変位の時間履歴のデータが示されている。図5に示す例では、1周期の時間は1秒である。
具体的には、変位の時間履歴のデータと、周期境界条件が与えられて、代表モデル52を用いた一定の時間刻み幅による陽解法により、動解析のシミュレーションが行われる。
代表モデル52に用いる材料パラメータは、粘弾性特性を再現するモデルを用いて表され、粘弾性損失エネルギを算出できるものが用いられる。例えば、neo-Hookean弾性モデルの係数に、時間依存性を示す係数としてProny級数の第1項を乗算して表したモデルが用いられる。
動解析のシミュレーションは、タイヤ1回転分の変位の時間履歴のデータを代表モデル52に周期的に与えて、力学的変形を再現するシミュレーションである。
単位時間当たりの粘弾性損失エネルギは、代表モデル52に発生する周期的な変形に対する位相情報を含んだ応力あるいは歪みに関する時間変動データから算出される物理量であり、例えば、緩和弾性率と歪み速度を乗算した値から求められる。
図6(a)に示す例は、第1の物理量(単位時間当たりの粘弾性損失エネルギ)の時間履歴データが1周期に2つのピークを有するデータである。この場合、判定条件を満足するとは、2つのピークの特徴点(図6(a)中のA,Bにおける点)における第1の物理量(単位時間当たりの粘弾性損失エネルギ)の値を取り出し、この2つの値に対応する、1つ前の周期における第1の物理量の値を取り出して、2つのピークのそれぞれにおける値の差分の絶対値を求め、この2つの差分の絶対値が、予め設定された閾値に対していずれも低下することをいう。この場合、モデルは定常状態となっているとして、動的解析のシミュレーションを終了する。一方、判定条件を満足しない場合、周期的な変形を与えるシミュレーションがさらに1周期分、継続して行なわれる。
なお、本発明では、1つ前の周期における値の差分に替えて比率を用いることもできる。この場合、差分に対して用いる閾値は当然異なる。
シミュレーション結果は、メモリ14に記憶される。
この代表モデル52に関する情報をタイヤモデル50の注目要素における情報とするために、代表モデル52に関する単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間履歴のデータに対して注目要素のサイズに応じた修正が行われる。例えば注目要素の体積の、代表モデル54の体積に対する比率を、代表モデル52を用いて算出された単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間履歴のデータに乗算する修正を行う。
修正された単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間履歴のデータから、このデータの時間積算値である粘弾性損失エネルギが求められ、時間履歴のデータと粘弾性損失エネルギがメモリ14に記憶される。
ステップS170において否定される場合、別の要素、すなわちタイヤの別の部分を代表モデル52に適用する(ステップS280)。上記別の部分の適用は、予め設定された順番で変更してもよいし、タイヤモデルの隣接する要素を別の部分として変更してもよく、変更方法は特に制限されない。
こうして、ステップS170において肯定されるまで、ステップ130〜160、ステップ180が繰り返される。
L = 2π{k(R1−R)+R}
図7(a)は、各周期毎の単位時間当たりの粘弾性損失エネルギを積算したときの変化を示している。図6(a)中のA、Bが図7(a)中のA,Bに対応する。このようなA,Bにおける単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの値を、1つ前の周期における対応する値の差分または比率の差分または比率を算出し、この差分または比率を閾値と比較することにより、図7(b)に示す周期5のように、粘弾性損失エネルギの変化率を1%以下にすることができる。粘弾性損失エネルギの変化率が1%以下であれば、定常状態であると見做すことができる。したがって、粘弾性損失エネルギの変化率が1%以下になるように。上記閾値を定めるとよい。
12 CPU
14 メモリ
16 ROM
18 入出力ポート
20 条件設定部
22 モデル作成部
24 静解析演算部
26 動解析演算部
28 時間変換部
30 周期境界条件設定部
32 物理量算出部
34 ディスプレイ
36 プリンタ
38 入力操作系
Claims (9)
- 変形を与えたとき、時間に依存してエネルギが散逸する数値解析可能なモデルに周期的な変形を与えてシミュレーションを行なう粘弾性体のシミュレーション方法であって、
変形中の前記モデルに作用する第1の物理量と第2の物理量を定め、さらに、前記モデルに粘性特性を表す粘性パラメータの値を定めるステップと、
前記粘性パラメータの値を前記モデルに与え、周期的な変形を前記モデルに与えることによりシミュレーションを行うステップと、
前記変形中の前記モデルにおける前記第1の物理量の時間履歴データを、周期ごとに取り出し、この取り出した時間履歴データと、1つ前の周期における前記第1の物理量の時間履歴データから、2つの時間履歴データの中の、少なくとも対応する2箇所以上の特徴点における値の差分の絶対値または比率を求めるステップと、
前記求めた特徴点毎の差分の絶対値または比率が、いずれも予め定められた閾値より小さい場合、前記シミュレーションを終了し、前記第2の物理量を取り出すステップと、を有することを特徴とする粘弾性体のシミュレーション方法。 - 前記第1の物理量の前記時間履歴データが1周期に2つのピークを有するデータである場合、これらの2つのピークの点を、前記特徴点として用いる請求項1に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記第1の物理量の前記時間履歴データの時間微分データが2箇所で極大および極小となる場合、この極大および極小となる点を、前記特徴点として用いる請求項1に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記第1の物理量は、前記モデルに発生する前記周期的な変形に対する位相の情報を含んだ応力または歪みに関する情報から算出される物理量である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記第1の物理量は、前記応力あるいは前記歪みに関する情報から算出される単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの大小を示す量である請求項4に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記第2の物理量は、前記モデルに作用する前記応力あるいは前記歪みに関する情報から算出される単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間積算値である請求項5に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 前記モデルは、タイヤの一部分の部位を表すモデルであり、
前記モデルに与える周期的な変形は、タイヤが転動して1回転するときのタイヤの設定された部位に作用する変形履歴の情報を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。 - 前記部位を、定められたタイヤの各部分に繰り返し適用し、この適用を繰り返すたびに、前記変形による単位時間当たりの粘弾性損失エネルギの時間積算値を求め、各部分について求めた粘弾性損失エネルギの時間積算値を累積し、この累積結果を前記タイヤの周長で除算することにより、前記タイヤの転がり抵抗を算出する請求項7に記載の粘弾性体のシミュレーション方法。
- 変形を与えたとき、時間に依存してエネルギが散逸する数値解析可能なモデルに周期的な変形を与えてシミュレーションを行なう粘弾性体のシミュレーション装置であって、
変形中の前記モデルに作用する第1の物理量と第2の物理量を定め、前記モデルに粘性特性を表す粘性パラメータの値を定める手段と、
前記粘性パラメータの値を前記モデルに与え、周期的な変形を前記モデルに与えることによりシミュレーションを行う手段と、
前記変形中の前記モデルにおける前記第1の物理量の時間履歴データを、周期ごとに取り出し、この取り出した時間履歴データと、1つ前の周期における前記第1の物理量の時間履歴データから、2つの時間履歴データの中の、少なくとも対応する2箇所以上の特徴点における値の差分の絶対値または比率を求める手段と、
前記求めた特徴点毎の差分の絶対値または比率が、いずれも予め定められた閾値より小さい場合、前記シミュレーションを終了し、前記モデルの前記第2の物理量を取り出す手段と、を有することを特徴とする粘弾性体のシミュレーション装置。
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