JP2008090327A - 紫外線吸収性プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Takeaki Iryo
毅明 井領
Toru Saito
徹 斉藤
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聡 久保田
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Abstract

【課題】全波長の紫外線をほとんど完全に吸収できる紫外線吸収性プラスチックレンズを
得る。生産性良くかかるレンズを得る。
【解決手段】分子量が360以下の紫外線吸収剤を、原料モノマー100重量部に対して
0.7〜5重量部の割合で含有するプラスチックレンズとする。重合触媒を入れる前に紫
外線吸収剤を原料モノマーに混合する。
【選択図】図1

Description

本発明は、眼を紫外線から守る紫外線吸収性プラスチックレンズ及びその製造方法に関
する。
プラスチックは、光、特に紫外線によって劣化し、黄変などが生じることが知られてい
る。太陽光に直接当たるプラスチックレンズの紫外線による劣化を防止するために、モノ
マー中に紫外線吸収剤を添加して重合を行い、プラスチックレンズ中に紫外線吸収剤を含
有させることが従来よりごく普通に行われている。
この場合の紫外線吸収剤の含有量は、プラスチックレンズの劣化防止の観点から短波長
の紫外線を吸収できれば十分であり、あまり高濃度にするとプラスチックレンズが黄色化
するため、原料モノマー100重量部に対して0.05〜0.2重量部程度と微量である
(特開平1−230003号公報、特開平5−164902号公報等参照)。
しかしながら、近年、オゾン層の破壊により地上に到達する紫外線量の増加が問題とさ
れ、人体に対する有害性が叫ばれるようになった。
人体の中でも眼は特に紫外線の影響を受けやすい部位であり、長期にわたって必要以上
に紫外線を浴びると白内障になり易いと言われている。
紫外線は約180〜400nmの電磁波である。このうち、380nm以下の波長の紫
外線は、上述したプラスチックレンズへの紫外線吸収剤の微量の添加で十分吸収できてい
るが、380〜400nmの長波長の紫外線に対しては吸収性能が低かった。しかし、3
80〜400nmの紫外線は透過性が高く、眼に有害であるため、現在では、更にこのよ
うな長波長を含む紫外線全部をほとんど完全に吸収することが要望されている。
本発明は、上記要望に鑑みなされたもので、全ての紫外線を有効に吸収できる紫外線吸
収性プラスチックレンズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた。
プラスチックレンズに紫外線吸収能を付与するためには、主として次の含浸方法と練り
込み法とがある。
含浸方法は、例えば特開平1−230003号公報、特開平9−269401号公報に
記載されているように、紫外線吸収剤を水あるいは有機溶媒に溶解し、この紫外線吸収剤
を含有する液中に成形されたプラスチックレンズを浸漬し、紫外線吸収剤をプラスチック
レンズ表面に含浸させる方法である。特開平9−269401号公報には、この方法で4
00nmでの紫外線透過率が2.75%のプラスチックレンズが得られたと報告されてい
る。
しかし、本発明者が検討したところ、この含浸方法は、紫外線吸収剤によってレンズ表
面の物性が変化するため、レンズ表面に後から形成するハードコート層やプライマー層と
の密着性が低下するという問題がある。また、染色可能なハードコート層を用いて、ハー
ドコート層の表面に紫外線吸収剤を塗布、あるいは含浸させることが可能であるが、その
場合はハードコート層の耐擦傷性や耐久性が低下するという問題がある。更に、(メタ)
アクリレート、チオウレタン系の高屈折率で現在主流のプラスチックは、染色性が悪い。
そのため、これらのレンズ表面に紫外線吸収剤を含浸させようとすると、時間がかかるた
め作業性が低下したり、均一に含浸させることが難しいため、歩留まりが低下するという
問題がある。そのため、含浸方法は、品質面、コスト面で満足のいくものではなかった。
一方、練り込み法は、特開平1−230003号公報、特開平5−164902号公報
等に記載されているように、プラスチックレンズ基材となる原料モノマーに紫外線吸収剤
を添加して混合した後、ガラス型の中で重合を行って紫外線吸収剤が練り込まれたプラス
チックレンズを得る方法である。
しかし、この練り込み法で380〜400nmの波長の紫外線を十分に吸収させるため
には、かなり高濃度の紫外線吸収剤を原料モノマーに混合しなければならない。そのため
、上述したようにレンズとして使えない程黄色に着色するという問題がある。また、紫外
線吸収剤の種類によっては、成形時に紫外線吸収剤が表面に析出するという問題がある。
また、モノマーの種類によってはガラス型との密着性が悪くなって、重合中のハガレによ
って型の転写ができず、外観不良や度数不良などが生じるという問題がある。更に、モノ
マーの種類と紫外線吸収剤との組み合わせによっては、モノマーが硬化しなくなったり、
重合反応が不均一になることが知られている。
そのため、特開平9−269401号公報には、練り込み法によりプラスチックレンズ
に400nm以下の波長光を吸収する紫外線吸収能力を付与することは、非常に困難であ
ることがわかった、と記載されているように、従来、練り込み法でプラスチックレンズ内
に紫外線吸収剤を多量に含有させることは困難であると考えられていた。
これに対し、本発明者は、かかる練り込み法で紫外線吸収剤をプラスチックレンズに多
量に含有させるために、紫外線吸収剤の分子量に着目した。即ち、同じ量を含有させる場
合に、紫外線吸収剤の分子量が小さければ原料モノマーに対する溶解性が高くなり、かつ
、モル比換算では多くなり、紫外線吸収能が向上するという見地から検討した結果、紫外
線吸収剤の分子量が360以下であれば、原料モノマーによっては380〜400nmの
波長の紫外線を十分に吸収できる量の紫外線吸収剤をプラスチックレンズに析出等の問題
点なく練り込めることを確認して、本発明をなすに至った。
従って、請求項1記載の発明は、分子量が360以下の紫外線吸収剤を、原料モノマー
100重量部に対して0.7〜5重量部の割合で含有することを特徴とする紫外線吸収性
プラスチックレンズを提供する。
また、紫外線吸収剤の中でも、ベンゾトリアゾール系の化合物は、原料モノマーと相溶
性が良く、かつプラスチックレンズを黄色に着色することが少ないため、好ましい紫外線
吸収剤である。
従って、請求項2記載の発明は、前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物で
ある請求項1記載の紫外線吸収性プラスチックレンズを提供する。
また、前記原料モノマーのなかでも、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物
の混合物を主成分とするものが、紫外線吸収剤を多く含有させても、問題が生じないこと
が認められ、好ましいことがわかった。
従って、請求項3記載の発明は、前記原料モノマーが、ポリイソシアネート化合物とポ
リチオール化合物の混合物を主成分とする請求項1又は2記載の紫外線吸収性プラスチッ
クレンズを提供する。
また、紫外線吸収剤を多量に原料モノマーに配合すると、原料モノマーに紫外線吸収剤
を均一に溶解させるには、紫外線吸収剤を原料モノマーに添加した後、混合、攪拌する時
間がある程度必要である。一方、原料モノマーに重合触媒を添加すると常温でも徐々に重
合反応が進行して増粘する。そのため、重合触媒と紫外線吸収剤を同時に添加するのでは
なく、重合触媒を添加する前に原料モノマーに紫外線吸収剤を添加して混合することによ
り、紫外線吸収剤を溶解させるための混合時間が短くなり、生産性が良好になることがわ
かった。
従って、請求項4記載の発明は、原料モノマー100重量部に対して分子量が360以
下の紫外線吸収剤を0.7〜5重量部の割合で混合する第1混合工程と、前記第1混合工
程後、重合触媒を添加する第2混合工程と、前記第2混合工程後、前記原料モノマーを重
合させる重合工程とを有することを特徴とする紫外線吸収性プラスチックレンズの製造方
法を提供する。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に限定され
るものではない。
本発明の紫外線吸収性プラスチックレンズは、上述したように、分子量が360以下の
紫外線吸収剤を、原料モノマー100重量部に対して0.7〜5重量部の割合で含有する
ここで、本発明で用いることができる原料モノマーとしては、特に制限されないが、例
えばチオウレタン系樹脂となるポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合物
を主成分とするもの、(メタ)アクリレート系化合物、ジエチレングリコールビスアリル
カーボネート等を例示できる。
チオウレタン系樹脂の一方の原料であるポリイソシアネート化合物としては、例えばト
リレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック型ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシア
ネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テ
トラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシク
ロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.
1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6
]−デカン、3,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6
−デカン、4,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−
デカン、4,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デ
カン、ダイマー酸ジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物及びそれらの化合物の
アロファネート変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体が挙げられ、これら
の化合物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのポリイソシアネ
ート化合物の中では、紫外線吸収剤との相溶性から、芳香族系の化合物が好ましい。
チオウレタン系樹脂のもう一方の原料であるポリチオール化合物としては、特に制限さ
れないが、例えば下記式(1)で示される4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,
8−オクタンジチオール、下記式(2)で示されるペンタエリスリトールテトラ(3−メ
ルカプトプロピオネート)、及び下記一般式(3)で示されるメルカプト基を4個以上有
するポリチオール化合物を例示することができる。
Figure 2008090327
Figure 2008090327
Figure 2008090327
この一般式(3)で示されるポリチオール化合物の具体例としては、例えば次のような
構造式の化合物を挙げることができる。
Figure 2008090327
ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合割合は、イソシアネート基とチ
オール基の官能基の割合がNCO/SH(モル比)=0.5〜3.0、特に0.5〜1.
5の範囲が好ましい。
チオウレタン系樹脂の原料モノマーは、これらのポリイソシアネート化合物とポリチオ
ール化合物を主成分とするが、その他の成分としては、後述する紫外線吸収剤以外に、例
えば内部離型剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、分散染料,油溶染料,顔料
などの着色剤、反応触媒などを原料モノマー中に配合することができる。
チオウレタン系樹脂は、屈折率、アッベ数が高く、衝撃強度も高いという特性を備え、
プラスチックレンズの材料として優れている。また、紫外線吸収剤を良く溶解し、成形時
に紫外線吸収剤が表面に析出することが少ない。また、内部離型剤を必要とするほどガラ
スとの密着性が良好であり、紫外線吸収剤を高濃度で含有させても、ガラス型で重合させ
たときにガラス型との密着性が悪くなるという現象も発生せず、しかも、重合が紫外線吸
収剤によって阻害されるおそれもほとんどないという特性を有するため、本発明の紫外線
吸収性プラスチックレンズの素材として最も優れている。
また、原料モノマーの(メタ)アクリレート系化合物としては、下記一般式(4)で示
される(メタ)アクリレート系モノマーを例示でき、他の重合性モノマーと共重合させる
ことにより、プラスチックレンズを得ることができる。
Figure 2008090327
(但し、式中、R13は水素原子又はメチル基を示し、R14は−CH2CH2−基又は−C
2CH(OH)CH2−基を示し、Xは水素原子又はフッ素を除くハロゲン原子を示し、
m+nは、0〜8の整数を示す。)
一般式(4)の(メタ)アクリレート系モノマーの具体例としては、2,2−ビス(3
,5−ジブロム−4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2
−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[
4−(β−ヒドロキシ−γ−(メタ)アクリロイルオキシ)プロポキシフェニル]プロパ
ン等があげられる。
また、(メタ)アクリレート系化合物と共重合させる他の重合性モノマーとしてはスチ
レン、クロロスチレン、ブロモスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族単官能性ビニル
モノマー、ジビニルベンゼン又はその塩素・臭素置換された誘導体等の芳香族多官能性ビ
ニルモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート
、フェノキシメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の単官能性(メタ)アク
リレート系モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールのジ(メタ)アク
リレート、各種イソシアネート化合物と水酸基又はメルカプト基含有(メタ)アクリレー
トから得られるウレタン(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリル系モノマー
、さらには前記式(1)、式(2)及び式(3)のチオール化合物、ペンタエリスリトー
ル テトラ(メルカプトアセテート)等のチオール化合物を用いることができる。これら
のモノマーは、1種を単独で又は2種以上を同時に使用することも可能である。
前記一般式(4)の(メタ)アクリレート系モノマーとその他の重合性モノマーの配合
割合は、(メタ)アクリレート系モノマーが20〜80重量%、その他の重合性モノマー
が80〜20重量%の範囲が好ましい。また、これらの原料モノマー以外の成分としては
、後述する紫外線吸収剤以外に、例えば有機過酸化物、アゾ化合物等の一般的な熱重合開
始剤及び/又はアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系等の一般的な光重合
開始剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、分散染料・油溶染料・顔料などの着色剤等を適
宜添加することができる。
(メタ)アクリレート系のプラスチックレンズは、屈折率が高く曲げ強度に優れる。
また、原料モノマーとして、硫黄原子と芳香族環を分子構造中に有する(メタ)アクリ
レート系及び/又はビニル系モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体を得る配合を挙
げることができる。ここで硫黄原子と芳香族環を分子構造中に有する(メタ)アクリレー
ト系及び/又はビニル系モノマーとしては下記式(5)、一般式(6)で表される化合物
等があげられる。
Figure 2008090327
Figure 2008090327
(式中、R23は水素原子又はメチル基を示し、R21及びR22はそれぞれ炭素数1〜8の
アルキレン基を示す。)
その他の重合性モノマーとしては上述した芳香族単官能性ビニルモノマー、芳香族多官
能性ビニルモノマー、単官能性(メタ)アクリレート系モノマー、多官能性(メタ)アク
リレート系モノマー、チオール化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
硫黄原子と芳香族環を分子構造中に有する(メタ)アクリレート系及び/又はビニル系
モノマーとその他の重合性モノマーとの配合比は、硫黄原子と芳香族環を分子構造中に有
する(メタ)アクリレート系及び/又はビニル系モノマーが20〜80重量%、その他の
重合性モノマーが80〜20重量%の範囲が好ましく、これらの原料モノマーから屈折率
が高く耐熱性に優れる共重合体を得ることができる。後述する紫外線吸収剤以外に配合で
きる原料としては、例えば有機過酸化物、アゾ化合物等の一般的な熱重合開始剤及び/又
はアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系等の一般的な光重合開始剤、架橋
剤、光安定剤、酸化防止剤、分散染料・油溶染料・顔料などの着色剤等を適宜添加するこ
とができる。
また、紫外線吸収剤として、本発明においては、分子量が360以下の化合物を用いる
。分子量が360を超える紫外線吸収剤を用いると、原料モノマー中への溶解度が低下し
、後述する5重量部以下の配合量でもプラスチックレンズ表面に析出し、かつ析出しない
限界量では十分な紫外線吸収能力がなく、380〜400nmの波長の紫外線を十分に吸
収できるプラスチックレンズを得ることができず、本発明の目的を達成することができな
い。
分子量が360以下の紫外線吸収剤としては、シアノアクリレート系、サリチル酸系、
ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等がある。シアノアクリレート系の紫外線吸収
剤としては、例えばエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(分子量27
7)を例示することができる。サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレー
ト(分子量214)、4−tert−ブチルフェニルサリシレート(分子量270)、p
−オクチルフェニルサリシレート(分子量326)等を例示できる。ベンゾフェノン系紫
外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(分子量214)、2−ヒド
ロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(分子量228)、2−ヒドロキシ−4−オクチロ
キシベンゾフェノン(分子量326)、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフ
ェノン(分子量224)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノ
ン(分子量274)、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(分子量2
46)等を例示することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−5−メチ
ルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量225)、2−(2−ヒドロキシ−5
−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(分子量250)、2−(2−ヒドロ
キシ−3,5−ジ・tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(分子量323)、
2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子
量339)、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ・tert−アミルフェニル)ベンゾト
リアゾール(分子量351)、5−クロロ−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−
ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量358)、2−(3−ter
t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリア
ゾール(分子量316)、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェ
ニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量352)、2−(3,5−ジ−tert−ブ
チル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量323)、2−(
2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子
量323)等を例示することができる。
これらの紫外線吸収剤の中では、ベンゾトリアゾール系が、原料モノマーに対する溶解
性が良好であり、紫外線吸収能力が高く、しかも化合物単体での色が淡色か白色でレンズ
が着色しにくいという特徴を備えているため、好ましい。とりわけチオウレタン系樹脂の
原料モノマーに対しては溶解性が良好であり、しかも理由は不明であるが、分光分布曲線
の立ち上がりがシャープになり、可視光域の波長の吸収率が低下するため、レンズの黄色
味が少なくなるという効果も得られる。ベンゾトリアゾール系の中でも2−(2−ヒドロ
キシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量225)は、置換基が
短く、分子量が小さいため、原料モノマーに対する溶解性が良好であり、黄色になること
が少ないため、好ましい紫外線吸収剤である。
従って、原料モノマーと紫外線吸収剤の好ましい組み合わせとしては、ポリイソシアネ
ート化合物とポリチオール化合物の混合物を主成分とするチオウレタン系樹脂の原料モノ
マーとベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、特に2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェ
ニル)−2H−ベンゾトリアゾールを挙げることができる。中でも芳香族系のポリイソシ
アネート化合物を使う場合には、相溶性に優れているため、この2−(2−ヒドロキシ−
5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとの組み合わせが特に好ましい。
紫外線吸収剤の配合量は、原料モノマー100重量部に対して0.7〜5重量部、好ま
しくは1〜3重量部である。紫外線吸収剤をこの範囲で配合したプラスチックレンズは、
380〜400nmの波長の紫外線を十分に吸収し、全ての紫外線をほとんど吸収できる
ため、眼を紫外線から保護することができる。具体的には、厚さ1mmのレンズの400
nmでの紫外線の透過率を15%未満、300〜400nmの波長域での平均光線透過率
を1%未満とすることができる。紫外線吸収剤の配合量が多すぎると、原料モノマーへの
溶解が困難になり、成形時にプラスチックレンジ表面に紫外線吸収剤が析出したり、ガラ
ス型との密着性が低下したり、重合反応が阻害されるという不都合が生じる。
次に、本発明の紫外線吸収性プラスチックレンズの製造方法は、上述したように、原料
モノマー100重量部に対して分子量が360以下の紫外線吸収剤を0.7〜5重量部の
割合で混合する第1混合工程と、この第1混合工程後、重合触媒を添加する第2混合工程
と、第2混合工程後、前記原料モノマーを重合させる重合工程とを有する。
即ち、重合触媒の添加の前に紫外線吸収剤を原料モノマーと十分に混合させるものであ
る。紫外線吸収剤を原料モノマーに上述した割合で添加すると、十分均一に溶解させるた
めには、攪拌、混合時間が例えば1時間程度必要である。この紫外線吸収剤を攪拌、混合
するための所用時間は、紫外線吸収剤を従来より原料モノマーに多量に配合する本発明方
法に特有の工程である。原料モノマーに重合触媒を添加すると常温でも重合が徐々に進行
するため原料モノマー溶液が徐々に増粘する。そのため、原料モノマーに重合触媒と紫外
線吸収剤を添加すると、攪拌時間がかかればそれだけ増粘のために更に溶解のための時間
がかかる悪循環のために、紫外線吸収剤を均一に溶解させるにはかなりの攪拌、混合時間
が必要で、生産性が悪くなると共に、原料モノマーの可使時間が短くなり、生産に支障が
ある。
従って、本発明の紫外線吸収性プラスチックレンズの製造方法によれば、生産性良く原
料の混合を行うことができる。
本発明の製造方法は、重合触媒を添加する前に紫外線吸収剤を原料モノマーに均一に溶
解させる工程以外は、通常のプラスチックレンズの製造方法に準じて行うことができる。
第1混合工程は、通常、0.5〜2時間程度の時間をかけて原料モノマー中に紫外線吸
収剤を十分に混合、攪拌して均一に溶解させる工程である。この時に、原料モノマーと紫
外線吸収剤以外の成分も紫外線吸収剤と共に添加して混合することが好ましい。
第2混合工程では、原料モノマーに紫外線吸収剤が十分に溶解した溶液に、重合触媒を
添加し、混合攪拌して重合触媒を溶液に溶解させる。
この重合触媒の種類は、原料モノマーの種類、重合方法によって適宜選択され、特に制
限されない。
第2工程後、好ましくは真空下で重合原料溶液を脱気する。次に、例えば所定の間隔を
もって対向している上下2枚のガラスモールドの側面を粘着テープで封止して保持した重
合型のモールド間の隙間に重合原料溶液を注入し、加熱により熱重合又は紫外線照射によ
り光重合させる。
重合後、型を分解してレンズ形状のプラスチックを取り出し、その後アニーリングを行
って重合歪みを除去し、プラスチックレンズ基材を得ることができる。
このようにして得られた紫外線吸収性プラスチックレンズは、全波長の紫外線の吸収性
能に優れ、眼を紫外線から保護できる。また、紫外線吸収剤が表面に析出していないため
、その後形成するハードコート膜、プライマー層、反射防止膜等のレンズとの密着性を阻
害することがなく、優れた性能を有する。
以下、本発明の実施例について説明する。
〔実施例1〕
ポリチオール化合物として4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタン
ジチオール87g、ポリイソシアネート化合物としてm−キシリレンジイソシアネート9
4g、内部離型剤0.15g、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフ
ェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量225)2.72g(原料モノマー100
重量部に対して1.5重量部)を混合し、1時間ほど十分に攪拌した。この後、重合触媒
としてジブチルスズジクロライド0.03gを添加し、溶解させた後、5mmHgの真空
下で60分脱気を行った。
その後、中心厚1.0mmで−3.00Dのレンズ成形用のガラス型とテープよりなる
モールド型中に注入し、40℃で7時間保持し、その後40℃から120℃まで10時間
かけて昇温する加熱炉中で重合を行い、冷却後ガラス型とテープを除去し、含硫ウレタン
系レンズを得た。更に、120℃で2時間アニールを行い、内部歪みを除去した。
このプラスチックレンズの紫外線吸収剤の含有量は、1.48重量%である。
得られたプラスチックレンズは屈折率1.66、アッベ数32であり、着色もなく、レ
ンズとして優れた性能であった。
このプラスチックレンズの紫外線の分光透過率曲線を図1のAに示す。この分光透過率
曲線Aによれば、400nmでの紫外線の透過率は8%程度であり、十分な紫外線吸収能
を有していることが認められる。また、可視光の吸収も少なく、420nmでの透過率は
約80%であり、着色が少ないことが認められる。
〔実施例2〕
ポリイソシアネート化合物としてm−キシリレンジイソシアネート103gと下記構造
式(A)、(B)、(C)で表される3種の4官能メルカプト化合物(A成分、B成分、
C成分の混合比はモル比でA/B/C=85/5/10)
Figure 2008090327
100g、内部離型剤0.15g、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メ
チルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール3.45g(原料モノマー100重量部に対
して1.7重量部)を混合し、1時間ほど十分に攪拌した。この後、重合触媒としてジブ
チルスズジクロライド0.06gを添加し、溶解させた後、5mmHgの真空下で60分
脱気を行った。
その後、中心厚1.0mmで−3.00Dのレンズ成形用のガラス型とテープよりなる
モールド型中に注入し、40℃で7時間保持し、その後40℃から120℃まで10時間
かけて昇温する加熱炉中で重合を行い、冷却後ガラス型とテープを除去し、含硫ウレタン
系レンズを得た。更に、120℃で2時間アニールを行い、内部歪みを除去した。
このプラスチックレンズの紫外線吸収剤の含有量は、1.67重量%である。
得られたプラスチックレンズは屈折率1.66、アッベ数32であり、分光透過率は実
施例1とほぼ同じであり、全波長の紫外線の吸収性に優れていると共に、着色もほとんど
なかった。
〔実施例3〕
ポリチオール化合物として4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタン
ジチオール40g、ポリイソシアネート化合物として水添ジフェニルメタンジイソシアネ
ート60g、内部離型剤0.15g、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−t
ert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(分子量323)3.0g(原
料モノマー100重量部に対して3重量部)を混合し、1時間ほど十分に攪拌した。この
後、重合触媒としてジメチルスズジクロライド0.05gを添加し、溶解させた後、5m
mHgの真空下で60分脱気を行った。
その後、中心厚1.0mmで−3.00Dのレンズ成形用のガラス型とテープよりなる
モールド型中に注入し、40℃で7時間保持し、その後40℃から120℃まで10時間
かけて昇温する加熱炉中で重合を行い、冷却後ガラス型とテープを除去し、含硫ウレタン
系レンズを得た。更に、120℃で2時間アニールを行い、内部歪みを除去した。
このプラスチックレンズの紫外線吸収剤の含有量は、2.9重量%である。得られたプ
ラスチックレンズは屈折率1.60、アッベ数42であり、紫外線吸収剤の析出がなく、
ハードコート膜、反射防止膜の密着性も良好であった。
〔比較例1〕
実施例1で紫外線吸収剤2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾ
トリアゾールの量を0.09g(原料モノマー100重量部に対して0.05重量部)に
変更した以外は実施例1と同様にしてプラスチックレンズを得た。
得られたプラスチックレンズの紫外線の分光透過率の曲線を図1のBに示す。
この分光透過率曲線Bから、380nm以下の紫外線は完全に吸収しているが、400
nmでの紫外線の透過率は約70%であり、眼の保護には不十分であった。
〔比較例2〕
実施例1で紫外線吸収剤を4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン(分子量
383)7.24gに変更する以外は実施例1と同様にしてプラスチックレンズを得た。
得られたプラスチックレンズ表面に紫外線吸収剤がかなり析出していた。
〔比較例3〕
実施例1で、4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタンジチオール8
7g、m−キシリレンジイソシアネート94g、内部離型剤0.15gの混合液に、重合
触媒としてジブチルスズジクロライド0.03gを添加し、溶解させた後、紫外線吸収剤
として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール2.7
2gを混合、攪拌した。溶液が増粘し、1時間の攪拌、混合では紫外線吸収剤が溶解しな
かった。結局通常の2倍以上の攪拌、混合の時間をかけて紫外線吸収剤が溶解した。
本発明の紫外線吸収性プラスチックレンズは、全波長の紫外線を有効に吸収でき、眼を
紫外線から保護できる。
また、本発明の紫外線吸収性プラスチックレンズの製造方法によれば、かかる紫外線吸
収性プラスチックレンズを生産性良く製造できる。
実施例1(A)及び比較例1(B)で製造されたプラスチックレンズの分光分布曲線を示すグラフである。
符号の説明
A,B…分光透過率曲線。

Claims (4)

  1. 分子量が360以下の紫外線吸収剤を、原料モノマー100重量部に対して0.7〜5
    重量部の割合で含有することを特徴とする紫外線吸収性プラスチックレンズ。
  2. 前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物である請求項1記載の紫外線吸収性
    プラスチックレンズ。
  3. 前記原料モノマーが、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合物を主成
    分とする請求項1又は2記載の紫外線吸収性プラスチックレンズ。
  4. 原料モノマー100重量部に対して分子量が360以下の紫外線吸収剤を0.7〜5重
    量部の割合で混合する第1混合工程と、
    前記第1混合工程後、重合触媒を添加する第2混合工程と、
    前記第2混合工程後、前記原料モノマーを重合させる重合工程とを有することを特徴と
    する紫外線吸収性プラスチックレンズの製造方法。
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