JP2008083422A - カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた硬化性と保存安定性を有し、樹脂硬化物の層が基本性能を備え、密着性、透明電極形成時のプロセス耐性に優れるカラーフィルター保護膜用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜60重量%とアルコキシシリル基を有する構成単位40〜90重量%を含む重合体、
(B)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜90重量%とアクリレート系構成単位10〜90重量%を含む重合体、および
(C)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル
からなり、前記の(エポキシ基またはオキセタニル基)/(アルコキシシリル基)/(カルボキシル基)のモル濃度の比率が0.8〜3.3/0.01〜1.0/1である、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)等に用いられるカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を用いたカラーフィルターに関する。
液晶表示関連装置の部材として用いられるカラーフィルターは、酸・アルカリ溶液への浸漬処理を初め多数の過酷な工程を経て製造される。これらの過酷な工程条件から、カラーフィルターが劣化したり損傷したりすることにによる性能低下や不良を防止するために、カラーフィルター内に保護膜を形成し、種々の耐性を付与することが一般的に行われている。このような保護膜は種々耐性の他、信頼性の観点から、保護膜を形成する基材であるRGBレジスト層と、保護膜上に蒸着(スパッタ)形成される透明電極層との両層への密着性が良好であること、RGBレジストの凹凸を平滑にする能力が優れていること、液晶表示装置の高画質化の性能を低下させないために可視光透過率が良好であること、経日変化において着色、黄変等の外観変化がないこと、およびRGBレジスト層に多く含まれる顔料や染料に由来する不純物の液晶層への移行を抑制したり外部からの水蒸気等のガス成分の透過を抑制したりするバリア機能を有することが求められている。
近年、液晶表示関連装置はその技術の進歩に相まって、要求性能も高度化しており、各部材に対しても、より高度な性能が強く求められるようになってきている。なかでも液晶表示装置の高画質化・高精細化が熱望されており、この要求に伴い、カラーフィルターの透明電極の低抵抗化と薄膜化が必要となってきている。これに伴い、透明電極の形成において、より高温でスパッタリングを行う必要性が出てきており、非常に過酷な製造工程となっている。透明電極の形成工程においては、カラーフィルター内部にある顔料分散レジストの表面が高温状態に曝されるため、保護膜の表面に皺、クラック、および黄変が発生しやすくなり、問題点として認識されている。
一方で従来から様々なカラーフィルター保護膜用の熱硬化性組成物が提案されており、それらに対して、上記の高度化した特性要求に対する適応が求められている。
特許文献1には、アルコキシシリル基とグリシジル基を有する重合体と多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物を使用した保護膜が開示されている。しかしながら、この技術によって得られる保護膜の物性は、アルコキシシリル基同士が反応して生成するシロキシ結合により、耐熱性が向上する一方で、シロキシ結合が耐薬品性に劣る化学結合であるため、透明電極形成時のプロセス耐性が不足する。さらに過剰なアルコキシシリル基が未反応のまま残存して硬化膜が経時的に劣化することも未解決の課題である。
特許文献2には、アルコキシシリル基を有する重合体と飽和脂肪族エポキシ樹脂と無水カルボン酸化合物を使用した樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この硬化系ではもともと十分に高い架橋密度を得ることができず、透明電極形成時のプロセス耐性、すなわち耐薬品性や耐熱性についての要求を満たすことができない。
このように、近年カラーフィルター保護膜に要求されている高い密着性や透明電極形成時のプロセス耐性を満たすカラーフィルター保護膜用の熱硬化性組成物が望まれているのである。
特開昭61−221218号公報 特開2005−213337号公報
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、優れた硬化性と保存安定性を有し、かつ、樹脂硬化物の層が密着性、低熱膨張性、強靭性、バリア性といった基本性能を備えた上で、透明電極形成時のプロセス耐性に優れるカラーフィルター保護膜用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、前記の優れた特性を有する樹脂硬化物の層を有するカラーフィルターを提供することにある。
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を含む重合体(A)およびエポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)および多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)を特定量配合した、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物が上記課題を解決する知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の〔1〕および〔2〕である。
〔1〕下記の、(A)、(B)および(C)の3成分
(A)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜60重量%とアルコキシシリル基を有する構成単位40〜90重量%を含み、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000である重合体
(B)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜90重量%とアクリレート系構成単位10〜90重量%を含み、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000である重合体
(C)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル
からなり、前記の(エポキシ基またはオキセタニル基)/(アルコキシシリル基)/(カルボキシル基)のモル濃度の比率が0.8〜3.3/0.01〜1.0/1である、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
〔2〕 前記の〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するカラーフィルター。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物によって、透明電極の形成プロセスにおいて、酸やアルカリに対する耐薬品性と230〜250℃という非常に高温での耐熱性とに優れるとともに、密着性、低熱膨張性、強靭性、バリア性等の基本性能に優れた硬化物の層、すなわち、カラーフィルター保護膜が得られる。この優れた保護膜によって、光学特性やその信頼性に優れたカラーフィルターが得られる。
以下において本発明を詳しく説明する。
本発明において、カラーフィルター保護膜とは、カラーフィルターを有する表示装置、および固体撮像素子に用いられる保護膜を広く意味し、より詳しくは、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD等)、エレクトロルミネッセンス装置(ELD)等に用いられるカラーフィルター(CF)部分、発光ないし受光の素子部分、電極部分等に直接に接して、これらを保護する保護膜、またはこれら部分を他の材料を介して間接的に保護する保護膜を意味する。
1.カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、下記の、(A)、(B)および(C)の3成分からなる。
(A)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜60重量%とアルコキシシリル基を有する構成単位40〜90重量%を含み、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000である重合体
(B)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜90重量%と炭素数1〜6のアルキル基からなる(メタ)アクリル酸アルキル単量体から誘導される構成単位10〜90重量%を含み、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000である重合体
(C)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル
<重合体(A)>
本発明に用いる重合体(A)は、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を含む。
エポキシ基を有する構成単位は、具体的には式(1)〜(3)のいずれかの式で表され、オキセタニル基を有する構成単位は、具体的には式(4)で表される。
Figure 2008083422
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、kは1〜5の整数を示す。)
Figure 2008083422
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、Rは−CHO−基または−CH−基、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、mは1〜7の整数を示す。)
Figure 2008083422
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、nは1〜8の整数を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R、R、およびRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、jは1〜5の整数を示す。)
また、アルコキシシリル基を有する構成単位は、具体的には式(5)で表される。
Figure 2008083422
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、hは1〜5の整数、R10、R11、R12はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を示す。)
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるエポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を含む重合体(A)は、さらに、下記式(6)〜(8)で表される構成単位を有していても良い。
Figure 2008083422
(式中、R13は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R14は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基、もしくは主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R15は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R16は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、シロキシアルキル基、または芳香族炭化水素基を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R17は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアルカリール基を示す。)
本発明の重合体(A)は、エポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーとアルコキシシリル基含有モノマーを重合することにより、または、これらのモノマーとさらに他のモノマーとを共重合させることにより得ることができる。その分子形態としては、直鎖状であっても、分岐構造を持っていても良く、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれの形態であっても良い。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、エポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を含む重合体(A)は、常法の重合法により重合することができる。すなわち、重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合等の重合法を採ることができ、より具体的には重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法を採ることができる。
前記式(1)〜(4)式で表される構成単位はそれぞれ、下記式(9)〜(12)で表されるエポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、Rおよびkはそれぞれ、式(1)におけるものと同じである。)
Figure 2008083422
(式中、R〜Rおよびmはそれぞれ、式(2)におけるものと同じである。)
Figure 2008083422
(式中、Rおよびnはそれぞれ、式(3)におけるものと同じである。)
Figure 2008083422
(式中、R〜Rおよびjはそれぞれ、式(4)におけるものと同じである。)
前記の式(1)および式(9)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、kは1〜5の整数であり、k=1がより好ましい。kが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記の式(2)および式(10)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、Rは−CHO−基または−CH−基、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、好ましくは−CH−基である。また、mは1〜7の整数であり、好ましくはm=1である。mが7を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記の式(3)および式(11)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、nは1〜8の整数であり、好ましくはn=1である。kが8を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記の式(4)および式(12)において、(RおよびRは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性や反応性の点で不都合となる。また、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、jは1〜5の整数であり、好ましくはj=1である。jが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
これらのエポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーのうち、入手性等の点から、グシシジルメタクリレートが好ましく挙げられる。
前記式(5)で表される構成単位は、下記式(13)で表されるアルコキシシリル基含有モノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R〜R12、およびhは、それぞれ、式(5)におけるものと同じである。)
前記の式(5)および式(13)において、R、R10、R11、およびR12は、それぞれ水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、hは1〜5の整数であり、h=1がより好ましい。hが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記式(6)で表される構成単位は、下記式(14)で表されるモノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R13およびR14はそれぞれ、式(6)におけるものと同じである。)
前記の式(6)および式(14)において、R13は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子またはメチル基である。また、R14は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基、もしくは主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基であり、前記の主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基は、付加的な構造、例えば環内二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。R14として、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基、またはジシクロペンタニル基である。R13の炭素数が5を超えたりR14の炭素数が12を超えたりすると、反応性が低下してしまい不都合となる。
前記式(7)で表される構成単位は、下記式(15)で表されるモノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R13およびR14はそれぞれ、式(7)におけるものと同じである。)
前記式(7)および(15)において、R13は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素またはメチル基であり、R14は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、シロキシアルキル基、またはアリール基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である。R13の炭素数が5を超えたりR14の炭素数が12を超えたりすると、反応性が低下してしまい不都合となる。
前記式(8)で表される構成単位は、下記式(16)で表されるモノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R17は、式(6)におけるものと同じである。)
前記式(8)および(16)において、R17は、水素原子または炭素数1〜12のシクロアルキル基、アリール基、またはアルカリール基、好ましくはシクロヘキシル基、およびフェニル基である。炭素数が12を超えると重合性の点で不都合となる。
上記の式(6)〜(8)で表される構成単位は、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位との性質で定まる重合体(A)の性質を大きく変えることがなく、構成単位を導入するための式(12)〜(14)で表される単量体についても、共重合性が良いため、好適に用いることができる。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を有する重合体(A)は、前記式(1)〜(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位のうち少なくとも1種類以上を重合体(A)中、10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%有する。前記式(1)〜(4)で表されるエポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位が、重合体(A)中10重量%未満では、エポキシ基またはオキセタニル基が少なくなるため望ましい架橋密度が得られず保護膜の物性が低下する場合があり、60重量%を上回ると、保護膜が強靭性を失う場合がある。
エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を有する重合体(A)は、前記式(5)で表されるアルコキシシリル基を有する構成単位を重合体(A)中40〜90重量%、好ましくは60〜80重量%有する。前記式(5)で表されるアルコキシシリル基を有する構成単位が、重合体(A)中40重量%未満では、本発明の効果が得られず、90重量%を上回ると保護膜の基本性能が低下する。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜300,000であり、好ましくは3,000〜30,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が3,000未満であると保護膜の硬度の低下し、300,000を上回ると塗布・硬化後の平坦性が低下する。なお、重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、重合体(A)は、分子量やコモノマー種の異なる重合体を2種類以上混合して用いても良い。
<重合体(B)>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物に用いるエポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)は、重合体(A)以外の化合物であり、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜90重量%とアクリレート系構成単位10〜90重量%とを含む。
エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位は下記式(17)〜(20)で示される。
エポキシ基を有する構成単位は、具体的には式(17)〜(19)のいずれかの式で表され、オキセタニル基を有する構成単位は、具体的には式(20)で表される。
Figure 2008083422
(式中、R18は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、pは1〜5の整数を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R19は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R20は−CHO−基または−CH−基、R21は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、qは1〜7の整数を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R22は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、rは1〜8の整数を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R23、R24、およびR25は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、sは1〜5の整数を示す。)
また、アクリレート系構成単位は、具体的には式(21)で表される。
Figure 2008083422
(式中、R26は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R27は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基、もしくは主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基を示す。)
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるエポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)は、さらに、前記式(22)または(23)で表される構成単位を有していても良い。
Figure 2008083422
(式中、R28は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R29は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、シロキシアルキル基、または芳香族炭化水素基を示す。)
Figure 2008083422
(式中、R30は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアルカリール基を示す。)
本発明の重合体(B)は、エポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーとアクリレート系モノマーを重合することにより、または、これらのモノマーとさらに他のモノマーとを共重合させることにより得ることができる。その分子形態としては、直鎖状であっても、分岐構造を持っていても良く、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれの形態であっても良い。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、エポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)は、常法の重合法により重合することができる。すなわち、重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合等の重合法を採ることができ、より具体的には重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法を採ることができる。
前記式(17)〜(20)式で表される構成単位はそれぞれ、下記式(24)〜(27)で表されるエポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R18およびpはそれぞれ、式(17)におけるものと同じである。)
Figure 2008083422
(式中、R19〜R21およびqはそれぞれ、式(18)におけるものと同じである。)
Figure 2008083422
(式中、R22およびrはそれぞれ、式(19)におけるものと同じである。)
Figure 2008083422
(式中、R23〜R25およびsはそれぞれ、式(20)におけるものと同じである。)
前記の式(17)および式(24)において、R18は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、pは1〜5の整数であり、p=1がより好ましい。pが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記の式(18)および式(25)において、R19は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、R20は−CHO−基または−CH−基、R21は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、好ましくは−CH−基である。また、qは1〜7の整数であり、好ましくはq=1である。qが7を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記の式(19)および式(26)において、R22は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性の点で不都合となる。また、rは1〜8の整数であり、好ましくはr=1である。rが8を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
前記の式(20)および式(27)において、(R23およびR24は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基である。炭素数が5を超えると重合性や反応性の点で不都合となる。また、R25は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子である。炭素数が5を超えると反応性の点で不都合となる。また、sは1〜5の整数であり、好ましくはs=1である。sが5を超えると、硬化後に硬化物のTgをはじめ十分な機械物性を得ることができない。
これらのエポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーのうち、入手性等の点から、グシシジルメタクリレートが好ましく挙げられる。
前記式(21)で表される構成単位は、下記式(28)で表されるアクリレート系モノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R26とR27はそれぞれ、式(21)におけるものと同じである。)
前記の式(21)および式(28)において、R26は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子またはメチル基である。また、R27は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基、もしくは主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基であり、前記の主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基は、付加的な構造、例えば環内二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。R27として、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基、またはジシクロペンタニル基である。R26の炭素数が5を超えたりR27の炭素数が12を超えたりすると、反応性が低下してしまい不都合となる。
前記式(22)で表される構成単位は、下記式(29)で表されるモノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R28とR29はそれぞれ、式(29)におけるものと同じである。)
前記式(22)および(29)において、R28は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは水素またはメチル基であり、R29は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、シロキシアルキル基、またはアリール基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である。R28の炭素数が5を超えたりR29の炭素数が12を超えたりすると、反応性が低下してしまい不都合となる。
前記式(23)で表される構成単位は、下記式(30)で表されるモノマーから誘導される。
Figure 2008083422
(式中、R30は、式(23)におけるものと同じである。)
前記式(23)および(30)において、R30は、水素原子または炭素数1〜12のシクロアルキル基、アリール基、またはアルカリール基、好ましくはシクロヘキシル基、およびフェニル基である。炭素数が12を超えると重合性の点で不都合となる。
上記の式(22)および(23)で表される構成単位は、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位との性質で定まる重合体(B)の性質を大きく変えることがなく、構成単位を導入するための、式(29)および(30)で表される単量体についても、共重合性が良いため、好適に用いることができる。
本発明の重合体(B)は、エポキシ基またはオキセタニル基含有モノマーとアクリレート系構成単位を重合することにより、または、これらのモノマーとさらに他のモノマーとを共重合させることにより得ることができる。その分子形態としては、直鎖状であっても、分岐構造を持っていても良く、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれの形態であっても良い。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位を含む重合体(B)は、常法の重合法により重合することができる。すなわち、重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合等の重合法を採ることができ、より具体的には重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法を採ることができる。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位を含む重合体(B)は、前記式(17)〜(20)で表されるエポキシ基またはオキセタニル基含有構成単位のうち少なくとも1種類以上を重合体(B)中、10〜90重量%、好ましくは25〜70重量%有するものである。前記式(17)〜(20)で表されるエポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位が、重合体(B)中10重量%未満では望ましい架橋密度が得られず保護膜の物性が低下し、90重量%を上回ると保護膜が強靭性を失う。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるエポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位を含む重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜300,000であり、好ましくは3,000〜30,000である。重量平均分子量(Mw)が3,000未満であると保護膜の硬度の低下が観測され、300,000を上回ると塗布・硬化後の平坦性が低下する可能性がある。
また、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるエポキシ基またはオキセタニル基を有する構成単位を含む重合体(B)のエポキシ当量は、140〜1,000g/molであり、好ましくは200〜800g/molである。エポキシ当量が140g/mol未満であると塗布・硬化後の保護膜が強靭性を失う傾向があり、1,000g/molを上回ると硬化膜の硬度の低下が発生する可能性がある。さらに、高い密着性が要求される用途の場合には、保護膜に強靭性が求められるため、200〜550g/molであることが好ましい。エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位を含む重合体(B)のエポキシ当量が200g/mol以下であると、強靭性が低くなり、密着性試験において縁欠けが生じる可能性が高い。この際のエポキシ当量とは樹脂についてのエポキシ基の当量を指し、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に準じて測定される。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位を含む重合体(B)は、分子量やコモノマー種の異なる重合体を2種類以上混合して用いても良い。
<多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)は、多価カルボン酸(c1)のカルボキシル基が下記式(31)で表されるビニルエーテル化合物(c2)(ビニル基およびエーテル基含有化合物)によって潜在化(以降、ブロック化という。)された化合物である。
Figure 2008083422
(ここで、R31は炭素数1〜10の炭化水素基である。)
多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)は、より具体的には、式(32)で表される官能基を2個以上有する化合物である。
Figure 2008083422
(式中、R31は式(31)におけるものと同じである。)
式(31)で表されるビニルエーテル化合物(c2)の具体例としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物が挙げられる。それらの中でも、入手性および硬化温度が保護膜のプロセスに適合する点から、n−プロピルビニルエーテルおよびi−ブチルビニルエーテルが好ましく挙げられる。
ビニルエーテル化合物(c2)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いる多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)に使用する多価カルボン酸(c1)としては、炭素数4〜20で2〜8価のカルボン酸であることが好ましい。平坦性に寄与する流動性の点から、好ましい例としてイタコン酸、マレイン酸、コハク酸、シトラコン酸等の直鎖または分岐を有する脂肪族多価カルボン酸;
テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、メリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。
多価カルボン酸(c1)としては、アルコール化合物と酸無水物との反応により得られるハーフエステル体も使用できる。
この反応の際に用いられるアルコール化合物としては、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、i−プロピルアルコール等の1価のアルコール化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール等の2価のアルコール化合物;グリセリン、ペンタントリオール、へキサントリオール、シクロヘキサントリオール、ベンゼントリオール、トリメチロールプロパン等の3価のアルコール化合物;ペンタエリスリトール等の4価のアルコール化合物が好ましく挙げられ、より好ましくはヘキサノール、i−プロピルアルコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、この反応の際に用いられる酸無水物としては、具体的には、無水フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物(以下、無水トリメリット酸と呼ぶ)、1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸−3,4−無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。なお、以上のハーフエステル体の中では、架橋密度が高く密着性の高い保護膜が得られることから、炭素数3〜6の2価以上の多価アルコールと無水トリメリット酸またはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸との組み合わせにより得られるものが(c1)として好ましく挙げられ、中でも透明性と保存安定性の面から、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を選択することがより好ましく挙げられる。
本発明に用いる多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)は、前記の多価カルボン酸(c1)と、前記のビニルエーテル化合物(c2)とを室温ないし150℃の範囲の温度で反応させることにより得ることができる。ブロック化反応は平衡反応であるため、多価カルボン酸(c1)に対しビニルエーテル化合物(c2)を若干多く使用すると反応が促進され、収率を向上させることができる。具体的には、多価カルボン酸(c1)のカルボキシル基に対するビニルエーテル化合物(c2)のビニル基のモル当量比[(ビニル基/カルボキシル基)のモル当量比]は、1/1〜2/1であることが望ましい。このモル当量比が2/1を越える場合、反応温度を上げることができず、反応速度が著しく低い場合がある。モル当量比が1/1を下回る場合、ブロック化されないカルボキシル基が残存するため、流動性が低下して、本発明の効果が得られない。
ブロック化反応を行う際、反応を促進させる目的で酸触媒を使用することも出来る。そのような触媒としては例えば、下記式(33)で表される酸性リン酸エステル化合物が挙げられる。
Figure 2008083422
(式中、R32は炭素数3〜10のアルキル基またはシクロアルキル基またはアリール基、tは1または2を示す。)
また、ブロック化反応を行う際、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶剤を使用してもよい。この際に使用する有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。より好ましくは、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
前記の有機溶媒は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記の有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、通常、5〜95質量部、好ましくは、20〜80質量部である。
一般に、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、密着性を向上させるためには、重合体中のアルコキシシリル基の濃度を上げればよい。しかしながら、単に重合体のアルコキシシリル基の濃度を高くするだけでは、耐薬品性に劣るシロキシ結合が優先的に生成するので、透明電極形成プロセスにおいて、高温下、高歪下、酸またはアルカリ浸漬下の厳しい条件によって、ガラスまたはRGBレジストに対する密着性が低下してしまう。また、もともとアルコキシシリル基が硬化剤との親和性が悪いために、熱硬化性樹脂組成物中での成分分離が起こり、アルコキシシリル基の濃度を上げること自体が難しかった。
この問題に対して、本発明に用いる多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)は、溶剤または樹脂組成物に対する溶解性が高く、高濃度のアルコキシシリル基を含む重合体に対しても、樹脂組成物中に任意の割合で配合することができる。樹脂組成物中のカルボキシル基のモル濃度をエポキシ基のモル濃度に対して高濃度に配合して得られる保護膜は、架橋密度を高くすることができる。すなわち耐薬品性の向上に求められるバリア性を高くすることができる。重合体(A)のアルコキシシリル基を有する構成単位の濃度が高いと、周囲のアルコキシシリル基の接着面への接触が促進され、接着面と結合するアルコキシシリル基の数が多くなり、接着面との強固な結合が形成され、密着性が効果的に得られるのである。
<(A)、(B)、(C)の各成分の配合割合>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)の総重量に対して、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を有する重合体(A)を5〜70重量%、エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)を20〜60重量%、多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)を10〜80重量%含有する。
エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を有する重合体(A)成分の配合割合は、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは10〜40重量%である。エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアルコキシシリル基を有する構成単位を有する重合体(A)の配合割合が10重量%未満の場合には保護膜の密着性等の性能が低下し、70重量%を上回ると保護膜の基本性能を損なうことがある。
エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)成分の配合割合は、好ましくは25〜50重量%であり、より好ましくは30〜45重量%である。エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位とアクリレート系構成単位を含む重合体(B)の配合割合が20重量%未満の場合には保護膜の密着性等の性能が低下し、60重量%を上回ると保護膜の基本性能を損なうことがある。
多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)の配合割合は、10〜80重量%であるが、好ましくは20〜30重量%である。多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)の配合割合が10重量%未満の場合には本発明の効果を得ることが難しくなり、80重量%を上回るとカルボン酸が過剰となり透明性が低下することがある。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、前記の(A)、(B)、(C)の3成分の配合割合は、多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)に由来するカルボキシル基濃度を基準とした比率で、重合体(A)および(B)に由来するエポキシ基またはオキセタニル基の合計モル濃度が、0.8〜3.3/1、好ましくは0.5〜1.1/1になるように配合する。
カルボキシル基とエポキシ基またはオキセタニル基とのモル濃度比が0.8/1未満であると、カルボキシル基が過剰となり、多くの場合樹脂物性が低下する。また、カルボキシル基とエポキシ基またはオキセタニル基とのモル濃度比が3.3/1を上回ると、硬化後にエポキシ基またはオキセタニル基が多量に残留するため、架橋密度が低くなり、保護膜が基本性能を損なう可能性がある。
また、重合体(A)に由来するアルコキシシリル基のモル濃度については、多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)に由来するカルボキシル基濃度を基準とした比率で、0.01〜1.0/1、好ましくは0.5〜1.1/1、より好ましくは0.1〜0.4/1になるように配合する。0.01/1未満では、アルコキシシリル基が不足するため透明電極形成プロセスにおける耐熱性が不足する。1.0/1以上ではアルコキシシリル基が過剰となるため、透明電極形成プロセスにおける耐薬品性が不足する。
なおここで、カルボキシル基のモル濃度は、簡便には化合物構造式(分子量)と配合量とから算出され、より正確には、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準じて測定された酸当量より算出される。
一般に、ヘミアセタールエステルの反応を利用した熱硬化性組成物においては、硬化時に脱離したビニルエーテル化合物の一部が、酸−エポキシ反応によって生じたヒドロキシル基と再結合してアセタール構造を生成することが知られている。
本発明においては、(A)(B)(C)の3成分を特定の比率で用いることによって、フリーのヒドロキシル基がアルコキシシリル基とビニルエーテル基とのいずれかによって稠密に結合された硬化構造体が生成することにより、上述の耐薬品性と耐熱性の二律背反である透明電極形成時のプロセス耐性を満足することができると考えられる。
すなわち、エポキシ基とカルボキシル基とが反応して副生するヒドロキシル基は、アルコキシシリル基との反応点となって結合を形成するため、架橋密度がさらに高くなってバリア性が向上する。また、ヒドロキシル基とアルコキシシリル基が反応することにより、保護膜の経時変化の原因となる未反応のアルコキシシリル基を低減できる上に、耐薬品性の弱いシロキシ結合をバリアして、透明電極形成時のプロセス耐性を向上することができる。
多価カルボン酸ヘミアセタールエステルは、硬化剤として用いられる難溶性の多価カルボン酸のカルボキシル基をブロック化して溶解性の高い多価カルボン酸ヘミアセタールエステルの形にして用いるため、溶解性に制限されずに配合設計を行うことが可能となった。しかしながら、単にカルボキシル基をエポキシ基またはオキセタニル基と同等にまで配合するだけでは、得られる硬化膜は近年求められる高い耐熱性や透明電極形成時のプロセス耐性を満たすことが出来なくなりつつあった。樹脂組成物中にアルコキシシリル基を有する構成単位を高濃度で含む重合体(A)を導入することによってシロキシ結合を導入して耐熱性を向上させるとともに、多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)はカルボキシル基をエポキシ基またはオキセタニル基と等量にまで配合することができるため高い架橋密度を有する上に、副生するヒドロキシル基が重合体(A)の未反応のアルコキシシリル基の反応点となる。そして耐アルカリ性の低いシロキシ結合をバリアすることによって近年求められる高い耐熱性と透明電極形成時のプロセス耐性を満たすことができる。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤、フィラー、そして添加剤を任意の量を添加して、塗布プロセスの種類に応じて最適な粘度に調整して使用することができる。
<その他の成分>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤、密着性向上助剤、表面調整剤、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂、粘度調整剤、その他の成分を添加して使用することができる。
<有機溶剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、使用に際して粘度等を調整する目的で有機溶剤を添加しても良い。この際に使用する有機溶剤としては、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。
これらの有機溶剤は1種単独または2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
また、これら有機溶剤の添加量については特に制限はされず、所定膜厚、表明の平滑性、および成膜方法等に応じ、任意の量添加し、塗布適性を付与することができる。通常は、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、5〜2000重量部である。
<硬化促進剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物には、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の無色透明性を損なわない範囲において、硬化促進剤を適宜使用することもできる。添加しうる硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物が挙げられる。さらには、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、アミン等エポキシ樹脂等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤;イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤、ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。
硬化促進剤は、硬化物の液晶非汚染性等の観点から、ハロゲンフリーの酸性触媒であることが好ましい。さらに、樹脂組成物の保存安定性の観点を加味すると、ハロゲンフリーの酸性触媒のなかでも、具体的にはルイス酸塩高温解離型の潜在性硬化促進剤がより好ましく、市販品としてはノフキュアーLCAT−1およびノフキュア−LCAT−2(いずれも商品名、日本油脂(株)製)が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。前記の硬化促進剤を添加して使用する場合、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、通常0.01〜10重量%の割合で配合される。
<密着性向上助剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、基材との間により高度な密着性が要求される場合、密着性を向上させるための助剤として金属石鹸を含むチタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミキレート剤等の密着性向上剤を添加することもできる。チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤としては、カルボン酸塩を含む金属石鹸タイプでもよい。これらのカップリング剤は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて添加することができる。
<表面調整剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる保護膜の外観を向上させる目的で、あるいは、各配合成分の相溶性を向上させる目的で、表面調整剤を添加することもできる。表面調整剤は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
前記の表面調整剤を添加して使用する場合、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、通常0.001〜3重量%で配合される。
<エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂>
本発明の本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下で、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂を添加して使用してもよい。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物に対して、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、さらに、粘度調整の目的で、増粘剤、チキソ剤等の粘度調整剤を添加しても良い。また、赤外線や紫外線吸収剤を添加しても良い。
また、線膨張係数の調整、平坦性向上、表面硬度の向上、粘度調整、屈折率の調整、所定波長の光線吸収、密着性の向上等の目的で、本発明の樹脂組成物に任意量フィラーを添加することができる。この際用いられるフィラーとしては、透明性を妨げるものでなければ特に限定されないが、シリカゾル、シリカゲル、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が例として挙げられる。これらのフィラーは1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族ポリオール、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、有機ポリマービーズ、ガラスビーズ、揺変性付与剤、表面張力低下剤、消泡剤、光拡散剤、抗酸化剤、蛍光剤等の添加剤を配合することができる。
<樹脂組成物の製造方法>
以下に本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の配合、攪拌、分散の手法に関して説明する。
本発明の樹脂組成物において、上記(A)〜(C)の成分をはじめとする各成分を一括配合しても良いし、各成分を溶剤に溶解した後に逐次配合しても良い。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じては各成分を適宜2つ以上の溶液としておいて、使用時(塗布時)にこれらの溶液を混合して樹脂組成物として調製してもよい。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)〜(C)の成分をはじめとする各成分混合後の攪拌に関しては、羽根形撹拌機、デソルバー、ニーダー、ボールミル混和機、ロール分散機等を用いて撹拌をおこなってもよいし、各成分をガロン瓶等の容器に配合してから容器ごとミックスローターで回転させて攪拌してもよい。混合および攪拌の温度は、配合成分にもよるが、通常、結露や溶剤の揮散を避けるために、10〜60℃が好ましい。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物に粘度調整剤やフィラーを添加する場合には、モーターミル、シェイカー等の高シェア分散機を用いた分散を行っても良い。この際には、本発明における上記(A)〜(C)の成分をはじめとする各成分をバインダーとしたマスターバッチを予め作製しておき、使用時に配合するなどといった手法も取ることができる。ただし、多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)は熱により脱ブロック反応が進行するため、多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)を含む組成物を分散する際には、80℃以上に加熱しないよう配慮が必要となる。
2.カラーフィルター
本発明のカラーフィルターは、上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有する。
上記カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層は、一般的に保護膜と称されているものに特に限定されず、例えば、カラーフィルターの基板上に形成されたRGB画素と、液晶配向膜、透明電極層、発光体、又は受光体等との間に形成される樹脂硬化物の層をいう。また、RGB画素に直接接していなくても、他の材料を介して間接的に保護する保護膜のような場合も含まれ、例えば、固体撮像素子のマイクロレンズとカラーフィルターの間に用いる中間膜、或いはカラーフィルターと電極の間に用いる中間膜も含まれる。
本発明のカラーフィルターは、上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するので、耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、平坦性の優れた樹脂硬化物の層を有するカラーフィルターを得ることができる。
カラーフィルターは、一例として、透明基板に所定のパターンで形成されたブラックマトリックスと、当該ブラックマトリックスに所定のパターンで形成した画素部と、当該画素部を覆うように形成された保護膜を備えている。保護膜上に必要に応じて液晶駆動用の透明電極が形成される場合もある。また、ブラックマトリックス層が形成された領域に合わせて、透明電極板上若しくは画素部上若しくは保護膜上に柱状スペーサーが形成される場合もある。
上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層は、上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を適宜粘度調整して塗布液とし、まず、それを例えばカラーフィルターの着色層を形成した側の表面に塗布する。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を塗布する方法に関しては、特に限定されるものではなく、通常用いられる塗布手法として、例えば、スピンコーター塗布法、浸漬塗布法、スプレーコーター塗布法、ロールコーター塗布法、スクリーン印刷塗布法、オフセット印刷塗布法、スリットコーター塗布法、ダイコーター塗布法等の単独または組み合わせにより、基材に塗布することができる。
次に、得られた塗膜を乾燥し、さらに必要に応じて予備加熱(以下、プリベーク)を行った後、本硬化加熱(以下、ポストベーク)を経て樹脂硬化物の層を形成する。この際には、プリベーク条件として40〜140℃、0〜1時間、ポストベーク条件として150〜280℃、0.2〜2時間が好ましい条件として挙げられる。また、この際の加熱手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、密閉式硬化炉や連続硬化が可能なトンネル炉等の硬化装置を採用することができる。加熱源は特に制約されることなく、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法で行うことができる。
本発明において、樹脂硬化物の層は、塗布・硬化後の膜厚として0.2〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜4μmである。塗布・硬化後の膜厚が0.2μm未満の場合には、バリア性、平坦性等の保護膜に要求される性能を得ることが難しく、5μmを上回ると透明性等の性能が低下するおそれがあり好ましくない。ただし、高い平坦性が望まれる用途に関しては、塗布・硬化後の膜厚が5〜20μmであっても良い。
本発明において得られるカラーフィルター保護膜用の樹脂硬化物の層は、優れた硬化性と保存安定性を有し、かつ、樹脂硬化物の層が耐熱性や耐薬品性といった基本性能を備えた上で、密着性、透明電極形成時のプロセス耐性に優れる。
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
以下に本実施例および比較例で用いた測定方法、評価方法を示す。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
<固形分>
固形分は、溶液1gを精秤し、熱風オーブンで170℃、1時間乾燥後に乾燥前後の重量変化から算出した残存率より算出した。
<粘度>
粘度は、循環式恒温水浴を装備したB型粘度計(東機産業(株)製)を用いて温度20℃で測定した。
<エポキシ当量>
エポキシ当量は、JIS K 7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」によって規定される方法によって測定した。
<全酸当量>
全酸当量は、JIS K 0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の加水分解酸価測定によって測定した。
透明電極形成時のプロセス耐性は、実際のカラーフィルター製造時の工程条件を模した、次の耐薬品性と耐熱性から評価した。
<耐薬品性>
保護膜を形成したサンプルの保護膜上に、スパッタリング温度が250℃、SiO層膜厚が10〜15nm、ITO層膜厚が250〜300nm、抵抗値が10〜15Ω/□となるようにITO層を形成した後、エッチングレジストをストライプ状に塗布した。エッチングレジストを60℃×10分間で形成させた後、酸処理(HO/HCl/HNO=1/1/0.04〈重量比〉、50℃×8分間)、およびアルカリ処理(5%NaOHaq、60℃×5分間または10分間)した後のサンプルの外観を観察した。
判定基準は次の通りである。
◎:はアルカリ処理10分間後も異常が観測されなかった。
△:はアルカリ処理10分間後は異常が観測されたが、5分後には異常が観測されなかった。
×はアルカリ処理5分間後に異常が観測された。
実用に供するためには、◎以上が要求される。
<耐熱性>
上記ITO後エッチング耐性と同様のITO層を形成した後、230または250℃×1時間処理した後のサンプルの外観を観察した。
判定基準は次の通りである。
◎:250℃処理後も異常が観測されなかった。
△:250℃処理後は異常が観測されたが、230℃処理後には異常が観測されなかった。
×:230℃処理後に異常が観測された。
実用に供するためには、◎以上が要求される。
<保存安定性>
保存安定性は、樹脂組成物の溶液を密閉容器中に5℃および25℃の恒温漕で120間保管し、保存後の粘度の初期粘度に対しての粘度上昇を観測することにより評価した。粘度測定の方法は上記の通りである。
判定基準は次の通りである。
◎:5℃および25℃で120日間貯蔵後の粘度上昇が1.5倍未満
○:5℃で120日間貯蔵後の粘度上昇が1.5倍未満
×:5℃で120日間貯蔵後の粘度上昇が1.5倍以上
実用に供するためには、○以上が要求される。
<密着性>
保護膜を形成したサンプルをPCT(121℃で湿度100%の環境下において8時間放置)の処理を行なった後に、JIS K 5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に準拠し密着性の評価を行った。
判定基準は次の通りである。
○:剥離が無い。
△:は剥離は無いがクロスカット時に縁欠けが生じた。
×:は剥離した。
実用に供するためには、○以上が要求される。
<重合例1 重合体(A−1)の重合>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた容量500mLの4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PMA)を160g仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で大阪有機化学工業(株)製「OXE−30」(;商品名)メタクリル酸3−メチル−3−オキセタン−イルメチルエステル74g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、MPS)126g、日本油脂(株)製の過酸化物系重合開始剤「パーヘキシルO(以下、PHO)(;商品名、純度93%)」7g、およびPMA33gを予め均一混合したもの(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を7時間維持した後、反応を終了した。重量平均分子量(Mw)30,000、固形分52%、粘度1Pa・s(20℃)および溶液のエポキシ当量1,000g/molの重合体溶液(重合体のエポキシ当量500g/mol)を得た。
<重合例2〜8 重合体(A−2〜7およびA’-1〜2の重合)>
重合例1と同様に操作を行い、重合体(A−2〜7およびA’-1〜2)を得た。各原料の仕込み比、滴下温度、重量平均分子量、固形分、粘度およびエポキシ当量を表1に示す。
<加水分解縮合物(A’-3)の反応>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた容量500mLの3つ口フラスコに、ビニルトリメトキシシランを169重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート210重量部を仕込み攪拌した。次いで、蒸留水62重量部、シュウ酸0.02重量部を加え120℃に昇温した。反応によって生成するメタノール、および水を留去しながら、120℃で2時間攪拌した後、反応を終了した。
Figure 2008083422
<重合体(B)の重合)>
重合例1と同様に操作を行い、重合体(B−1〜8)を得た。各原料の仕込み比、滴下温度、重量平均分子量、固形分、粘度およびエポキシ当量を表2に示す。
Figure 2008083422
合成例1
<多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、PMA33g、三菱瓦斯化学(株)製トリメリット酸(以下、TMA)27g、n−プロピルビニルエーテル(以下、nPr−VE)40gを仕込み、攪拌しながら加熱し70℃に昇温した。次いで、温度を保ちながら攪拌し続け、混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、溶液の酸価0.64mgKOH/gのブロック化されたカルボキシル基を2個以上有する多価カルボン酸と多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)の溶液を得た。
合成例2〜6
<多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C−2〜6)の合成>
合成例1と同様に多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C−2〜6)を得た。各原料の仕込み比、反応温度、酸価および全酸当量を表2に示す。
Figure 2008083422
表中に用いた略号の意味は次の通りである。
TMA:無水トリメリット酸
P−TMA:ペンタエリスリトールと無水トリメリット酸のハーフエステル化物。
CHTA:1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸
G−HHPA:プロピレングリコールとメチルヘキサヒドロ無水フタル酸のハーフエステル化物。
n−Pr−VE:n−プロピルビニルエーテル
i−Pr−VE:i−プロピルビニルエーテル
ADA:アジピン酸
MLA:マレイン酸
<実施例1〜7>
表4に示す配合割合で溶解混合したカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の性能を評価した。結果を配合割合とともに表4に示す。
<比較例1〜4>
表5に示す配合割合で溶解混合したカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の溶液から、実施例と同様の手法によって硬化膜を得、試験を行った。結果を配合割合とともに表5に示す。
なお、実施例および比較例の全ての場合において、得られた塗膜の表面は極めて平滑であり、ピンホール等は全く見られなかった。
Figure 2008083422
Figure 2008083422
表中に用いた略号の意味は次の通りである。
LCAT−1:オクチル酸亜鉛とN−メチルモルホリンの反応物(特開2001−350010号公報記載)
BYK−355:表面調整剤(ビッグケミー・ジャパン(株)製)
EXA−7015:水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、大日本インキ化学工業(株)製商品名「エピクロンEXA−7015」、エポキシ当量210g/mol。
表の結果より、実施例1〜7は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、基本性能を満たした上で透明電極形成時のプロセス耐性が極めて優れており、本発明の目的の効果が申し分なく得られていることがわかる。一方、比較例1および2においては、本発明に用いる多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)を用いていないので、充分なバリア性が得られないことから、充分な透明電極形成時のプロセス耐性が得られなかった。比較例3においては、重合体(B)を使用していないので充分な透明電極形成時のプロセス耐性を得られなかった。比較例4においては、重合体(A)を使用しないので、架橋密度が低いことから、充分な透明電極形成時のプロセス耐性および密着性が得られなかった。比較例5および6においては、本発明に用いる重合体(A)とは異なる重合体A’−1を用いているため、充分な透明電極形成時のプロセス耐性が得られなかった。比較例7においては、本発明に用いる重合体(B)とは異なる重合体B’−1を用いているため、充分な密着性が得られなかった。比較例8においては、多価カルボン酸ヘミアセタールエステル(C)を使用しないことによって充分な架橋密度が得られず低いバリア性である上に、A’−3が耐溶剤性に劣るシロキサン結合を多く有することから、透明電極形成時のプロセス耐性が低い結果となった。比較例9においては、(エポキシ基またはオキセタニル基/カルボキシル基)および(カルボキシル基/シリル基)が本発明の熱硬化性樹脂組成物における範囲から外れるために本発明の効果が得られなかった。以上から、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いたときにのみ、本願の目的を達することができることが明らかである。

Claims (2)

  1. 下記の、(A)、(B)および(C)の3成分
    (A)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜60重量%とアルコキシシリル基を有する構成単位40〜90重量%を含み、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000である重合体
    (B)エポキシ基を有する構成単位またはオキセタニル基を有する構成単位10〜90重量%とアクリレート系構成単位10〜90重量%を含み、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000である重合体
    (C)多価カルボン酸化合物のカルボキシル基がビニルエーテル化合物により潜在化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステル
    からなり、前記の(エポキシ基またはオキセタニル基)/(アルコキシシリル基)/(カルボキシル基)のモル濃度の比率が0.8〜3.3/0.01〜1.0/1である、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するカラーフィルター。
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