JP2008081833A - 銅合金箔 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧延平行方向の断面から見たときに粒界が存在し、前記粒界に囲まれる結晶粒が圧延平行方向に伸びる厚み0.2μm以下のリボン状であり、かつ箔表面におけるJIS-B0601に規定する最大山高さをRz、箔の厚みをtとしたとき、(Rz/t)≦0.05の関係を満たす。
【選択図】図2
Description
一方、本発明者らは、冷間圧延加工を行うと材料の表面粗さが増大し、外力が作用した際に材料の凹部に応力が集中して破断しやすくなるため、高い伸びが得られないことを見出した。特に厚み20μm以下の箔の場合、表面粗さが大きいと伸びの低下が顕著に現れる。しかしながら、上記特許文献1、2には表面粗さについては開示されていない。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、強度と伸びに優れた銅合金箔の提供を目的とする。
すなわち、本発明の銅合金箔は、圧延平行方向の断面から見たときに粒界が存在し、前記粒界に囲まれる結晶粒が圧延平行方向に伸びる厚み0.2μm以下のリボン状であり、かつ箔表面におけるJIS-B0601に規定する最大山高さをRz、箔の厚みをtとしたとき、(Rz/t)≦0.05の関係を満たす。
Ag:500〜1500ppmを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなることが好ましい。
厚みtが20μm以下であることが好ましい。
但し、箔の場合、伸びや引張強さの低下が顕著になるため、本発明においては、(1)添加元素を規定して組織制御をさらに進めると共に、(2)表面粗さによる伸びへの影響を考慮し、伸びや引張強さを改善している。
[添加元素]
特許文献1に記載されているように、ε≧3とすると伸びが増加する。これは、加工によって導入された転位がセル壁を形成し、微細な亜結晶粒が生成するためと考えられる。ここで、伸びを向上させるためには加工による転位が充分に蓄積される必要がある。そこで、加工によって生じた転位の移動を妨げ、転位密度を上昇させるために、銅母材に添加元素を添加することができる。添加元素としては、転位の移動を妨げるものであれば特に限定されず、添加元素の含有量も転位密度を上昇させる目的に応じて適宜調整することができる。
添加元素としては、Sn及びMgのうち1種または2種を挙げることができる。この場合、これらの添加元素を合計300〜2000ppm含有させればよい。Sn及びMgから選ばれる添加元素の合計含有量が300ppm未満であると、転位が動きやすいために必要な転位密度を得ることができず、強度や伸びが向上しない傾向がある。一方、添加元素の合計含有量が2000ppmを超えると、圧延に伴って加工硬化が進み変形抵抗が増加するため、圧延による表面粗さの増加が進み、充分な伸びを得られ難い傾向がある。
又、添加元素としてAg:500〜1500ppmを含有させてもよく、Agの含有量の上限と下限の規定理由はSn及びMgの場合と同様である。
又、添加元素としてSn及びMgのうち1種または2種を合計300〜2000ppm含有し、かつAg:500〜1500ppmを含有させてもよい。
[不可避的不純物]
銅合金箔中の不可避的不純物の含有量は、例えば、JIS H2123に規格する無酸素型銅C1011と同様とすることができるが、銅合金の導電率を著しく低下させない範囲で、例えば、炉材や原料などから通常混入する範囲の成分を含有してもよい。
本発明において、圧延平行方向の断面から見たときに粒界が存在し、この粒界で囲まれる結晶粒が圧延平行方向に延びる厚み0.2μm以下のリボン状である。
ここで、圧延平行方向とは、材料が圧延によって引き伸ばされる方向であり、圧延平行方向の断面とは、圧延平行方向に沿い箔表面に垂直な面で箔を切断した時の断面をいう。圧延平行方向は、例えば銅箔表面に形成された圧延ロールの目の延びる方向として定めればよい。
なお、通常の加工度であるη=2.3程度でSnを含む銅箔を加工した場合、亜結晶粒を生成するまでの転位が導入されないため、亜粒界が形成されず、粒界は実質的に存在しない。
但し、EBSPは測定が簡便ではないため、簡便法としてSEMやSIMを用いて粒界を判定してもよい。例えば、試料が多数存在する場合、全試料をSEMで測定し、そのうち代表的な試料をEBSPで詳細に測定することができる。つまり、SEMの電子ビームやSIMのイオンビームで試料表面を走査した時に放出される二次電子の強度は結晶方位によって異なるため、二次電子の強度を明度の差として表示すると、結晶方位と対応したコントラストが現れ、粒界を判定できる。
図1は、EBSPとSEMによる組織の観察像を比較したものを示す。EBSP像(図1(a))とSEM像(図1(b))の境界がほぼ対応して形状になっていることがわかる。結晶粒界は境界の両側で結晶方位が異なるため、明瞭なコントラストが生じるが、境界の両側の結晶方位に差がない場合は、二次電子の強度にも差がないために、明瞭なコントラストは現れない。このことを利用し、粒界間の角度の大小をSIM観察でのコントラストによって判定し、粒界を判定できる。
一方、結晶粒がリボン状でない場合、結晶粒の厚みが大きくなり、箔厚に占める一つの結晶粒の割合が高くなるため、延性のない結晶方位の粒で発生した亀裂が箔全体の破断に直結するようになり、伸びが低下する。
又、本発明において、組織と結晶粒とは特に区別せず、SIMにより観察された境界を粒界とみなすことができる。
本発明者らは図2に示す予備的実験を行い、銅合金箔の表面粗さRz(JIS-B0601に規定する最大山高さ)が大きくなると、伸びが低下することを見出した。これは、冷間圧延加工を行うと材料の表面粗さが増大し、外力が作用した際に材料の凹部に応力が集中して破断しやすくなるため、高い伸びが得られないと考えられる。特に厚み20μm以下の箔の場合、表面粗さが大きいと伸びの低下が顕著に現れる。
なお、この予備的実験では、後述の実施例及び比較例の試料をそれぞれ用い、実施例と同様な評価方法を採用した。
表面粗さRzは、JIS-B0601に規定する方法に準拠し、箔表面を圧延平行方向に沿って測定することができる。
又、 (Rz/t)<0.05に管理する方法としては、箔の圧延時の圧延ロールの粗度、圧延油の粘度、圧延速度、圧延加重、張力等の条件を調整することが挙げられる。
本発明の銅合金箔は、銅インゴットに上記各成分を溶解鋳造した後、適宜熱処理や加工を施して製造することができる。通常、溶解、鋳造後、均質化熱処理を行い、熱間圧延を行った後、冷間圧延を行う。冷間圧延の間に適宜熱処理を行ってもかまわないが、最終の冷間圧延の加工度は上記したようにη=3〜7の強加工とするのが望ましい。
銅インゴットに、表1に示す量の添加元素を添加し、インゴットを鋳造した。得られたインゴットを均質化熱処理、熱間圧延後、焼鈍と冷間圧延を行った後に表1に示す加工度で冷間圧延し、箔を製造した。
それぞれの試料を実施例1〜24、比較例1〜15とした。
この試料の表面粗さRzを、JIS-B0601に規定する方法に準拠して箔表面を圧延平行方向に沿って測定した。測定は、接触式表面粗さ計(小坂研究所製 SE-3400)を用い、n≧3で測定した平均値を求めた。
(結晶粒の厚み、アスペクト比)
試料をFIB(Focused Ion Beam)によって薄片加工し、圧延平行方向の断面片を得た後、この断面片の走査イオン(SIM:Scanning Ion Microscope)像を倍率10000倍で得た。この像の圧延平行方向及び厚み方向の粒長さを、JISに規定する切断法でn≧5で測定し、厚み方向の粒長さの平均値を結晶粒の厚みとして求め、圧延平行方向及び厚み方向の粒長さの平均値をもとにアスペクト比を算出した。
(強度、伸び)
各試料から12.7mm幅の短冊状試験片を作製し、JIS−Z2241に規定された引張試験法に従って引張強さ(TS)、破断伸び(EL)をそれぞれ測定した。
特に、Sn及びMgのうち1種または2種を合計300〜2000ppmとなるように含有した実施例9〜19の場合、3.5%以上の伸びが得られた。
また、Agを500〜1500ppm添加した実施例20〜24の場合、3.5%以上の伸びが得られた。又、実施例20〜24の場合、Agの添加による導電率の低下は小さかった。そのため、Sn及びMgのうち1種または2種を合計300〜2000ppmとなるように含有し、さらにAgを500〜1500ppm添加してもかまわない。
Claims (5)
- 圧延平行方向の断面から見たときに粒界が存在し、前記粒界に囲まれる結晶粒が圧延平行方向に伸びる厚み0.2μm以下のリボン状であり、かつ箔表面におけるJIS-B0601に規定する最大山高さをRz、箔の厚みをtとしたとき、(Rz/t)<0.05の関係を満たす銅合金箔。
- Sn及びMgのうち1種または2種を合計300〜2000ppm含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる請求項1に記載の銅合金箔。
- Ag:500〜1500ppmを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる請求項1に記載の銅合金箔。
- Sn及びMgのうち1種または2種を合計300〜2000ppm含有し、かつAg:500〜1500ppmを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる請求項1に記載の銅合金箔。
- 厚みtが20μm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の銅合金箔。
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