JP2020172692A - 電子材料用銅合金、電子材料用銅合金の製造方法及び電子部品 - Google Patents
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(1)Coを0.5〜3.0質量%含有し、かつSiを質量割合でCo/Siが3.0〜5.0となるように含有し、残部が銅および不可避的不純物からなり、圧延面についてEBSD測定により確認される結晶粒のうち、双晶の存在する結晶粒の数の割合が30%以上であり、かつ、圧延直角方向(TD)との角度θが20°以下である双晶境界の全双晶境界に占める割合が40%以上である電子材料用銅合金。
(2)さらにCr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnから選択される少なくとも一種類以上の合計が1.0質量%以下である(1)に記載の電子材料用銅合金。
(3)さらにNiを0.1質量%未満で含有する(1)又は(2)に記載の電子材料用銅合金。
(3)(1)〜(3)いずれか一項に記載の電子材料用銅合金を備えた電子部品。
(4)Coを0.5〜3.0質量%含有し、かつSiを質量割合でCo/Siが3.0〜5.0となるように含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる銅合金のインゴットを熱間圧延した後、冷間圧延工程及びその後の溶体化処理工程を行う電子材料用銅合金の製造方法であって、溶体化処理工程において、溶体化処理を第1溶体化処理と第2溶体化処理に分けて行い、第1溶体化処理における処理温度を750〜900℃、冷却速度を20℃/sec以上とし、第2溶体化処理における処理温度を850〜1000℃とし、炉内張力の値を5〜10MPaとし、第1溶体化処理と第2溶体化処理との間に、テンションレベラーにより1.5〜3.0%の予歪みの付加を行うことを特徴とする電子材料用銅合金の製造方法。
この発明の一の実施形態の電子材料用銅合金は、Coを0.5〜3.0質量%含有し、かつSiを質量割合でCo/Siが3.0〜5.0となるように含有し、残部が銅および不可避的不純物からなり、圧延面についてEBSD測定により確認される結晶粒のうち、双晶の存在する結晶粒の数の割合が30%以上であり、かつ、圧延直角方向(TD)との角度θが20°以下である双晶境界の全双晶境界に占める割合が40%以上である。
Co及びSiは、適当な熱処理を施すことによりCo2Siとして母相中に析出し、導電率を劣化させずに高強度化が図れる。ただし、Co濃度が0.5%未満の場合は析出硬化が不十分となり、他方の成分を添加しても所望とする強度が得られない。また、Co濃度が3.0質量%を超える場合は十分な強度が得られるものの、導電性や曲げ加工性、熱間加工性が低下する。
Siは質量割合でCo/Siが3.0〜5.0となるように調整する。上記割合とすれば、析出硬化後の強度と導電率を共に向上させることができる。上記割合が5.0を超えると、時効処理でのCo2Siの析出が不十分になり、強度が低下する。上記割合が3.0未満であると、Co2Siとして析出しないSiが母相中に固溶し、導電率が低下する。
銅合金の圧延面についてEBSD測定により確認される結晶粒のうち、双晶の存在する結晶粒の数の割合が30%以上であることが必要である。好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上とする。同時に、圧延直角方向(TD)との角度θが20°以下である双晶境界の全双晶境界に占める割合を40%以上とする。好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上とする。
Cr、Mn、Sn、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnは、微量の添加で、導電率を損なわずに強度、応力緩和特性等の製品特性を改善する。Pは脱酸効果を有し、Bは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性を向上させる効果を有する。添加の効果は主に母相への固溶により発揮されるが、第二相粒子に含有されることで一層の効果を発揮させることもできる。しかしながら、Cr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnの濃度が合計1.0質量%を超えると曲げ特性及び応力緩和特性が低下するうえ、製造性も損なわれる。
Niは適当な熱処理を施すことでNi2Siとして母相中に析出し、合金の強度を向上させる。ただしNiの濃度が0.1質量%以上になると導電率が損なわれるため、Niの添加量は0.1質量%未満とし、好ましくは0.02〜0.08質量%とする。
コネクタ等の所定の電子材料で要求される特性を満たすため、圧延平行方向の0.2%耐力は好ましくは575MPa以上、より好ましくは590MPa以上とする。0.2%耐力の上限値は、特に規制されないが、55%IACS以上の導電率となるには、典型的には850MPa以下である。0.2%耐力は、引張試験機を用いてJIS Z2241に準拠して測定する。
導電率は好ましくは55%IACS以上とする。これにより、電子材料として有効に用いることができる。導電率はJIS H0505に準拠して4端子法で測定することができる。導電率は、60%IACS以上であることが好ましい。
上述したようなCu−Co−Si系合金は、まず大気溶解炉等を用いて電気銅、Co、Si等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得た後これをインゴットに鋳造する。その後均質化焼鈍、熱間圧延、第1中間冷間圧延、第1溶体化処理、第2中間冷間圧延、テンションレベラー処理、第2溶体化処理、時効処理、最終冷間圧延、歪取焼鈍をこの順に行うことで上述したようなCu−Co−Si系合金を製造することができる。なお熱間圧延後、必要に応じて面削を行うことが可能である。また上記各工程の合間には、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗等が適宜行われる。
溶解鋳造は一般的には大気溶解炉で行うが、真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことも可能である。電気銅を溶解した後に、Co、Si等各試料の組成に応じて原料を添加し、撹拌後一定時間保持して、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯を1250℃以上に調整した後、インゴットに鋳造する。Co、Si以外、Cr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnから選択される少なくとも一種類以上を合計1.0質量%以下になるように添加することもできる。またNiを0.1質量%未満添加することもできる。
鋳造時の凝固過程では粗大な晶出物が、その冷却過程では粗大な析出物が生成する。均質化焼鈍を適切な温度・時間で行った後に熱間圧延を行うことで、これらの第二相粒子を母相に再固溶させる。均質化焼鈍温度が低すぎる場合は粗大な第二相粒子を母相に再固溶させることができず、製品強度や曲げ加工性が損なわれる。均質化焼鈍温度が高すぎる場合は材料が溶解する可能性があるため好ましくない。具体的には均質化温度は950〜1025℃が、時間は1〜24hが好ましい。
熱間圧延後のインゴットについて中間冷間圧延を行う。ここで、十分な加工ひずみを蓄積するため、第1中間冷間圧延の加工度は95%以上が望ましい。
第1溶体化処理において母相にCo、Siを固溶させ合金の積層欠陥エネルギーを低下させる。この第1溶体化処理を所定の条件で行うことにより、続く中間圧延、テンションレベラー処理後の第2溶体化処理における焼鈍双晶の形成が促進される。第1溶体化処理の処理温度は750〜900℃とする。温度が低すぎる場合は、Co、Siの固溶量が不足するため、製品において双晶の存在する結晶粒の比率を所定の範囲に制御することができない。温度が高すぎる場合には、Co、Siの固溶が進みすぎることになり、双晶の存在する結晶粒の比率は大きくなるものの、θ≦20°の双晶境界の割合を所定の割合に制御することができない。
第1溶体化処理後に引き続いて第2の中間冷間圧延を行う。ここで、第2中間冷間圧延の加工度を15〜50%とすることで、製品の双晶の割合、方向を所定の範囲に制御しやすくなる。
テンションレベラーに材料を通板することで、材料に更なる歪が付与され、これがその後の第2溶体化処理で所定の状態の焼鈍双晶を発生させるための駆動力となる。圧延加工によってもテンションレベラー加工と同程度の歪を付与することは可能であるが、この場合は製品において所定の状態の焼鈍双晶を得ることができない。理由は定かではないが、テンションレベラーを用いた場合には材料は繰り返し曲げ、曲げ戻し加工されるため、材料表層部に圧縮歪が集中的に付与され、圧延加工時とは異なる歪分布となっており、この歪分布が焼鈍双晶の形成に好都合と考えられる。
テンションレベラー処理後に、第2の溶体化処理を行う。第2溶体化処理の目的は、母相にCo、Siを固溶させることによる時効硬化能の向上、および焼鈍双晶の形成である。第2溶体化処理の処理温度は850〜1000℃とする。この範囲外の場合には、所定の状態の焼鈍双晶を得ることができない。また温度が低すぎる場合には十分な時効硬化量が得られないため製品強度が不足し、温度が高すぎると析出物による粒界のピン止め効果がなくなり、結晶粒が粗大化して同様に製品強度が低下する。加えて第2溶体化処理時の炉内張力を制御することも重要であり、炉内張力の値を5〜10MPaとすることで、所定の状態の焼鈍双晶を得ることができる。
適切な大きさの析出物が均一に分布するように第2時効処理を行うことで、所望の強度および導電率が得られる。第2時効処理の温度は、450℃より低いと導電率が低くなり、550℃より高いと強度が低下するので、450〜550℃とすることが好ましい。また時効処理の時間は1〜24hが好ましい。第2時効処理は、酸化被膜の発生を抑制するためにAr、N2、H2等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
時効処理後に引き続いて最終の冷間圧延を行うことで、転位を導入し強度上昇をはかる。圧延加工度が高いほど高強度の材料が得られるが、圧延加工度が高すぎる場合には曲げ加工性が損なわれる。強度と曲げ加工性の良好なバランスを得るために、圧延加工度を10〜50%、好ましくは20〜40%とする。
最終の冷間圧延の後、電子部品に適用するのに必要な応力緩和特性を得るため、歪取焼鈍を行う。歪取焼鈍の条件は慣用の条件でよいが、具体的には350〜550℃で0.5〜60minとする。
引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS13B号試験片を作製し、JIS Z 2241に準拠して、引張試験機により圧延方向と平行に引張試験を行い、0.2%耐力を測定した。
試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H0505に準拠し、4端子法で導電率(EC:%IACS)を測定した。
双晶の存在する結晶粒の比率、およびθ≦20°の双晶境界の割合は、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction:電子後方散乱回折)測定を用いて算出した。まず試験片を20mm四方に切り出し、圧延面表面をリン酸67%+硫酸10%溶液中において、電圧15Vで60sec電解研磨した。測定には日本電子株式会社製JXA8500Fを用い、試験片の圧延面法線方向(ND:Normal Direction)を入射電子線に対して70°傾け、圧延平行方向(RD:Rolling Direction)を試料ホルダーの傾斜方向に合わせて設置し、その傾斜面にフォーカスした電子線を照射した。加速電圧:20kV、照射電流量:5×10-8A、ワーキングディスタンス25mmとし、観察視野500μm×500μm(ステップ幅1μm)でn=5で測定を行った。ここではEBSDによって得られた隣接する測定点間の方位差が15°以上の領域を結晶粒界と定義し、また各対応粒界のうちΣ3対応粒界を双晶粒界と定義して、双晶の存在する結晶粒の比率およびθ≦20°である双晶境界の全双晶境界に占める割合を求めた。測定プログラムはTSL OIM data collection、解析プログラムはTSL OIM Analysisを用いた。
JIS−B2712(2006)に従い応力緩和率を測定した。幅10mm×長さ100mmの試験片を切り出し、標点距離25mmにおいて0.2耐力の80%の値の負荷応力が加わるように試料高さy1を決定した。これを温度150℃および250℃で1000h加熱した後に除荷し、その永久変形量yから応力緩和率を算出した。ここで応力緩和率は以下の式で与えられる。
式中、y0:初期そり(mm)、y1:試料高さ(mm)、y:永久変形量(mm)である。
温度150℃における1000h後の応力緩和率が25%以下であり、かつ250℃における1000h後の応力緩和率が60%以下の時、電子材料として有効に用いることができる。
JIS H3130(2012)に従いW曲げ試験をBadway(曲げ軸が圧延方向と直交)、R/t=1.0(t=0.1mm)で実施し、この試験片の曲げ部の外周表面を観察した。観察方法はレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いて曲げ部の外周表面を撮影し、付属のソフトウェアを用いて平均粗さRa(JIS−B0601:2013に準拠)を測定し、比較した。なお、曲げ加工前の試料表面はコンフォーカル顕微鏡を用いて観察したところ凹凸は確認できず、平均粗さRaはいずれも0.2μm以下であった。曲げ加工後の表面平均粗さRaが1.0μm以下の場合を○、Raが1.0μmを超える場合を×と評価した。
比較例11〜15は、本実施形態に係る銅合金の組成を満たさないので、0.2%耐力、導電率、曲げ加工性及び応力緩和特性のいずれかが悪化した。
Claims (5)
- Coを0.5〜3.0質量%含有し、かつSiを質量割合でCo/Siが3.0〜5.0となるように含有し、残部が銅および不可避的不純物からなり、圧延面についてEBSD測定により確認される結晶粒のうち、双晶の存在する結晶粒の数の割合が30%以上であり、かつ、圧延直角方向(TD)との角度θが20°以下である双晶境界の全双晶境界に占める割合が40%以上である電子材料用銅合金。
- さらにCr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnから選択される少なくとも一種類以上の合計が1.0質量%以下である請求項1に記載の電子材料用銅合金。
- さらにNiを0.1質量%未満で含有する請求項1又は2に記載の電子材料用銅合金。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子材料用銅合金を備えた電子部品。
- Coを0.5〜3.0質量%含有し、かつSiを質量割合でCo/Siが3.0〜5.0となるように含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる銅合金のインゴットを熱間圧延した後、冷間圧延工程及びその後の溶体化処理工程を行う電子材料用銅合金の製造方法であって、
前記溶体化処理工程において、溶体化処理を第1溶体化処理と第2溶体化処理に分けて行い、前記第1溶体化処理における処理温度を750〜900℃、冷却速度を20℃/sec以上とし、前記第2溶体化処理における処理温度を850〜1000℃とし、炉内張力の値を5〜10MPaとし、前記第1溶体化処理と前記第2溶体化処理との間に、テンションレベラーにより1.5〜3.0%の予歪みの付加を行うことを特徴とする電子材料用銅合金の製造方法。
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