JP6370692B2 - Cu−Zr系銅合金板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Cu−Zr系銅合金板及びその製造方法に関し、特に詳しくは、プレス打ち抜き性、耐金型摩耗性に優れ、リサイクル性も良好な電気及び電子部品用Cu−Zr系銅合金板及びその製造方法に関する。
近年、コネクタ、リレー、スイッチ等の電気・電子部品の更なる小型化に伴って、内部に組み込まれている接点部材や擦動部材等に負荷される電流密度が非常に高くなってきており、従来よりも導電性の良好な銅合金材料への要求が高まっている。また、車載用電気・電子部品においては、より高温及び振動での環境下にて、長期間にわたる耐久性が要求されている。
この様な要求に対応可能な銅合金材料として、Cu−Zr系の銅合金板は、80%IACSを超える高い導電率を有することができ、耐熱性も良く、耐応力緩和性にも優れており用途に応じて広く使用されているが、更なる機械的強度、曲げ加工性、伸び易さの向上、そして、電気・電子部品の製造コスト低減のために、プレス打ち抜き性、耐金型摩耗性の改良が求められている。
また、Cu−Zr系の銅合金板のプレス打ち抜き等で発生する機械加工屑は、溶解鋳造温度にてZrが揮散するせいもあり、他のCu−Ni−Si系,Cu−Fe−P系、Cu−Ti系等の銅合金の機械加工屑と比較して、銅又は銅合金の製造用原料として再使用するのに適しているが、溶解鋳造時に支障を来さないためにも、更に脱酸効果の良好なものが求められている。
これらの問題点を解決するCu−Zr系銅合金として、出願人は、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示するCu−Zr系銅合金を開発している。
特許文献1では、重量比率でZrを0.005%〜0.5%、Bを0.2ppm〜400ppmの範囲で含有する銅合金であって、複数の扁平な結晶粒が面方向に連続してなる結晶粒層が板厚方向に積み重なって構成された層状組織を有し、結晶粒層の厚さが20nm〜550nmの範囲であり、層状組織中の結晶粒層の厚さのヒストグラムにおけるピーク値Pが50nm〜300nmの範囲内で、かつ、総度数の22%以上の頻度で存在し、その半値幅Lが200nm以下とする強度と伸びを高いレベルでバランスさせた銅合金を開示している。
特許文献2では、重量比率でZrを0.005%〜0.5%、Coを0.001%〜0.3%の範囲で含有する銅合金であって、複数の扁平な結晶粒が面方向に連続してなる結晶粒層が板厚方向に積み重なって構成された層状組織を有し、結晶粒層の厚さが5nm〜550nmの範囲であり、層状組織中の結晶粒層の厚さのヒストグラムにおけるピーク値Pが50nm〜300nmの範囲内で、かつ、総度数の28%以上の頻度で存在し、その半値幅Lが180nm以下とする強度と伸びを高いレベルでバランスさせた銅合金を開示している。
特許文献3では、少なくともジルコニウムを重量%で、0.005以上0.5以下の範囲で含有する銅合金であって、結晶粒径が1.5μm以下の結晶粒からなる第一粒子群と、結晶粒の形状が一方向に伸びており、結晶粒径が1.5μmより大きく7μmより小さな結晶粒からなる第二粒子群と、結晶粒径が7μm以上の結晶粒からなる第三粒子群とを備え、結晶粒径について集計した単位面積に占める、前記第一粒子群の合計面積比をα、前記第二粒子群の合計面積比をβ、前記第三粒子群の合計面積比をγ、α+β+γ=1と定義したとき、前記αと前記βの和は前記γより大きく、かつ、前記αは前記βより小さいことを特徴とする、強度を増大させると共に、その伸びも向上させることができ、ひいては良好な曲げ加工性を備え、耐熱クリープ特性にも優れた銅合金が開示されている。
また、特許文献4では、0.01質量%以上0.5質量%以下のジルコニウム(Zr)を含有し、残部が銅(Cu)および不可避的不純物からなる銅合金を圧延加工してなる電気・電子部品用銅合金材であって、当該電気・電子部品用銅合金材の集合組織における、Brass方位の方位分布密度が20以下であり、かつBrass方位とS方位とCopper方位との方位分布密度の合計が10以上50以下とする機械的強度と良好な曲げ加工性とを併せ持った電気・電子部品用銅合金材を開示している。
特開2010−215935号公報 特開2010−222624号公報 特開2005−298931号公報 特開2010−242177号公報
従来の電気及び電子部品用Cu−Zr系銅合金板は、機械的強度、導電性、耐熱性等はそれぞれに充分であったが、プレス打ち抜き性、耐金型摩耗性が充分ではなく、また、そのプレス打ち抜き等で発生した機械加工屑を銅又は銅合金の製造用原料として再使用する際に、更に脱酸効果(リサイクル性)の良好なものが求められていた。
本発明では、上述の問題点を解決し、プレス打ち抜き性、耐金型摩耗性に優れ、プレス打ち抜き等で発生した機械加工屑のリサイクル性に優れた電気及び電子部品用Cu−Zr系銅合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、質量%でZrを0.01〜0.11%、質量%でP、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001〜0.1%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金板であって、その圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD(電子線後方散乱回折:Electron Backscatter Diffraction)法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAM(Grain Average Misorientation)の値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフにおいて、前記グラフのピーク値が0.11以上であり、CSL(Coincidence Site Lattice)粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフにおいて、Σ5とΣ7の値がΣ5>Σ7であると、プレス打抜き性、耐金型摩耗性に優れ、更に、そのプレス打ち抜き等の機械加工屑を銅又は銅合金の製造用原料として使用した際に、良好なリサイクル性を発揮することを見出した。
また、上述の銅合金板は、質量%でZrを0.01〜0.11%、質量%でP、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001〜0.1%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金鋳塊を、930〜1030℃で熱間圧延を開始し、600℃以上の温度域から水冷による急冷処理にて溶体化処理を施した後に、冷間圧延を施し、次に320〜460℃にて2〜8時間の時効処理を施し、次に圧延率が5〜15%の調質圧延を施し、更に、380〜550℃にて10〜200秒間の熱処理を施し、熱処理後の銅合金板の表面のビッカース硬さを時効処理後のビッカース硬さより3〜20Hv高くすることにより、最適に製造されることも見出した。
即ち、本発明者のプレス打抜き性、耐金型摩耗性及びリサイクル性に優れた銅合金板は、Zrを0.01質量%〜0.11質量%、P、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001質量%〜0.1質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金板であり、圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフにおいて、前記グラフのピーク値が0.11以上であり、CSL粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフにおいて、Σ5とΣ7の値がΣ5>Σ7であることを特徴とする。
Zr(ジルコニウム)は、銅との化合物を形成して母相中に析出し、その全体的な材料強度を向上させると共に耐熱性を向上させる効果を持つ合金元素である。Zrの含有量は、形成される析出粒子の量や大きさに影響を与えて、導電率と強度とのバランスを変化させるが、上記の範囲内の濃度で含有させることによって、導電率と強度とをともに高い次元でバランスさせた、良好な特性が実現されることとなる。
Zrの含有量が0.01質量%未満であると、Cu−Zrの析出物が不足することにより、時効硬化が不十分になると共に耐応力緩和性も十分な特性を得ることが困難になる。Zrの含有量が0.11質量%を超えると、Cu−Zr析出物の形状が粗大になりやすくなり、強度向上の効果が得られず、曲げ加工性低下の重大な原因ともなる。
P、Ca、Te、B、Mgは、プレス打抜き性、耐金型摩耗性を向上させる共に、プレス打ち抜き等の機械加工屑を銅又は銅合金の製造用原料として使用した際に、溶解鋳造時の脱酸効果を高めリサイクル効果を向上させる効果がある。
これらの元素の1種又は2種以上の合計の含有量が0.001質量%未満であると、プレス打抜き性、耐金型摩耗性、脱酸効果は不足し、0.1質量%を超えると、曲げ加工性が低下すると共に、脱酸効果も飽和する。
そして、圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフにおいて、グラフのピーク値が0.11以上であり、CSL粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフにおいて、Σ5とΣ7の値がΣ5>Σ7であることにより、プレス打抜き性、耐金型摩耗性に優れ、プレス打ち抜き等の機械加工屑を銅又は銅合金の製造用原料として使用した際に良好なリサイクル性を有することになる。
GAMのグラフのピーク値が0.11未満であると、プレス打抜き性、耐金型摩耗性が低下すると共に、脱酸効果も低下する。
CSL粒界のグラフのΣ5とΣ7の値がΣ5>Σ7を満たさないと、プレス打抜き性、耐金型摩耗性が低下する。
本発明のプレス打抜き性、耐金型摩耗性及びリサイクル性に優れた銅合金板の製造方法は、Zrを0.01質量%〜0.11%、P、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001質量%〜0.1質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金鋳塊に対して、930〜1030℃で熱間圧延を開始し、600℃以上の温度域から水冷による急冷処理にて溶体化処理を施した後に、冷間圧延を施し、次に320℃〜460℃にて2時間〜8時間の時効処理を施し、次に圧延率が5%〜15%の調質圧延を施し、更に、380℃〜550℃にて10秒〜200秒間の熱処理を施し、前記熱処理後の銅合金板の表面のビッカース硬さを前記時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くすることを特徴とする。
銅合金鋳塊に対して、930℃〜1030℃で熱間圧延を開始し、600℃以上の温度域から水冷による急冷処理による溶体化処理を施し、好ましくは、製品板厚まで冷間圧延を施すことにより、Zrが過飽和状態に固溶し、結晶組織が均一化された銅合金板が製造される。
この冷間圧延後の銅合金板に、320℃〜460℃にて2時間〜8時間の時効処理を施し、過飽和状態で固溶していたZrを時効処理により徐々に析出させ、圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフにおいて、ピーク値を0.11以上とする素地を作製する。
次に、この時効処理後の銅合金板に、圧延率が5〜15%の調質圧延、380℃〜550℃にて10秒〜200秒間の熱処理を施すことにより、銅合金板の表面のビッカース硬さを、時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くして、GAMのグラフのピーク値を0.11以上とし、CSL粒界のグラフのΣ5とΣ7の値をΣ5>Σ7とし、プレス打抜き性、耐金型摩耗性、脱酸効果をアップさせる。
上述の熱間圧延、溶体化処理、時効処理、調質圧延、熱処理の条件の何れか一つが外れると、熱処理後の銅合金板の表面のビッカース硬さが時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くならず、GAMのグラフのピーク値が0.11以上、CSL粒界のグラフのΣ5とΣ7の値がΣ5>Σ7とはならない。
本発明により、プレス打ち抜き性、耐金型摩耗性に優れ、プレス打ち抜き等で発生した機械加工屑のリサイクル性に優れた電気及び電子部品用Cu−Zr系銅合金板及びその製造方法を提供される。
平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフである。 CSL粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフである。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
[銅合金板の合金組成]
本発明の銅合金板は、Zrを0.01質量%〜0.11質量%、P、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001質量%〜0.1質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有する。
Zr(ジルコニウム)は、銅との化合物を形成して母相中に析出し、その全体的な材料強度を向上させると共に耐熱性を向上させる効果を持つ合金元素である。Zrの含有量は、形成される析出粒子の量や大きさに影響を与えて、導電率と強度とのバランスを変化させるが、上記の範囲内の濃度で含有させることによって、導電率と強度とをともに高い次元でバランスさせた、良好な特性が実現されることとなる。
Zrの含有量が0.01質量%未満であると、Cu−Zrの析出物が不足することにより、時効硬化が不十分になると共に耐応力緩和性も十分な特性を得ることが困難になる。Zrの含有量が0.11質量%を超えると、Cu−Zr析出物の形状が粗大になりやすくなり、強度向上の効果が得られず、曲げ加工性低下の重大な原因ともなる。
P、Ca、Te、B、Mgは、プレス打抜き性、耐金型摩耗性を向上させると共に、プレス打ち抜き等で発生した機械加工屑を銅又は銅合金の製造用原料として使用した際に、溶解鋳造時の脱酸効果を高めリサイクル効果を向上させる効果がある。
これらの元素の1種又は2種以上の合計の含有量が0.001質量%未満であると、プレス打抜き性、耐金型摩耗性、脱酸効果は不足し、0.1質量%を超えると、曲げ加工性が低下すると共に、脱酸効果も飽和する。
[銅合金板の合金組織]
本発明のCu−Zr系銅合金板は、圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比(測定範囲の全面積に対する横軸に示すGAM値を有する結晶粒の面積比)を縦軸としたグラフにおいて、グラフのピーク値が0.11以上であり(図1参照)、CSL粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフにおいて、Σ5とΣ7の値がΣ5>Σ7である(図2参照)。
この合金組織を有することにより、プレス打抜き性、耐金型摩耗性に優れ、プレス打ち抜き等の機械加工屑を銅又は銅合金の製造用原料として使用した際に良好なリサイクル性を有することになる。
GAMのグラフのピーク値が0.11未満であると、プレス打抜き性、耐金型摩耗性が低下すると共に、脱酸効果も低下する。
CSL粒界のグラフのΣ5とΣ7の値がΣ5>Σ7を満たさないと、プレス打抜き性、耐金型摩耗性が低下する。
[EBSD法による平均値GAM、CSL粒界長さの測定]
EBSD法による平均値GAM、CSL粒界長さの測定は次のように実施した。
10mm×10mmの試料を機械研磨、バフ研磨後、日立ハイテクノロジーズ社製イオンミリング装置で加速電圧6kV、入射角10°、照射時間15分として表面を調整し、日立ハイテクノロジーズ社製SEM(型番「S−3400N」)と、TSL社製のEBSD測定・解析システムOIM(OrientationImaging Micrograph)を用い、測定領域を六角形の領域(ピクセル)に区切り、区切られた各領域について、試料表面に入射させた電子線の反射電子から菊地パターンを得てピクセルの方位を測定した。測定した方位データを同システムの解析ソフト(ソフト名「OIMAnalysis」)を用いて解析し、各種パラメータを算出した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積は300μm×300μmとし、隣接するピクセル間の距離(ステップサイズ)は0.5μmとした。隣接するピクセル間の方位差が5°以上を結晶粒界とみなした。
平均値GAMは、結晶粒内のあるピクセルと、結晶粒界を超えない範囲に存在する隣接ピクセルとの方位差の平均値を計算した。
CSL粒界は、結晶粒界を挟んだ隣接した結晶同士の片方を結晶軸の周りに回転したときに、格子点の一部が隣の結晶粒の格子点に位置して、両結晶に共通する副格子を構成するような粒界であり、その分布図および結晶粒方位分布マップを測定した。
[銅合金板製造方法]
本発明の銅合金板の製造方法は、Zrを0.01質量%〜0.11質量%、P、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001質量%〜0.1質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金鋳塊に対して、930℃〜1030℃で熱間圧延を開始し、600℃以上の温度域から水冷による急冷処理にて溶体化処理を施した後に、冷間圧延を施し、次に320℃〜460℃にて2時間〜8時間の時効処理を施し、次に圧延率が5%〜15%の調質圧延を施し、更に、380℃〜550℃にて10秒〜200秒間の熱処理を施し、前記熱処理後の銅合金板の表面のビッカース硬さを前記時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くすることを特徴とする。
銅合金鋳塊に対して、930℃〜1030℃で熱間圧延を開始し、600℃以上の温度域から水冷による急冷処理による溶体化処理を施し、好ましくは、製品板厚まで冷間圧延を施すことにより、Zrが過飽和状態に固溶し、結晶組織が均一化された銅合金板が製造される。
この冷間圧延後の銅合金板に、320℃〜460℃にて2時間〜8時間の時効処理を施し、過飽和状態で固溶していたZrを時効処理により徐々に析出させ、圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフにおいて、ピーク値を0.11以上とする素地を作製する。
次に、この時効処理後の銅合金板に、圧延率が5%〜15%の調質圧延、380℃〜550℃にて10秒〜200秒間の熱処理を施すことにより、銅合金板の表面のビッカース硬さを、時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くして、GAMのグラフのピーク値を0.11以上とし、CSL粒界のグラフのΣ5とΣ7の値をΣ5>Σ7とし、プレス打抜き性、耐金型摩耗性、脱酸効果をアップさせる。
上述の熱間圧延、溶体化処理、時効処理、調質圧延、熱処理の条件の何れか一つが外れると、熱処理後の銅合金板の表面のビッカース硬さが時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くならず、GAMのグラフのピーク値が0.11以上、CSL粒界のグラフのΣ5とΣ7の値がΣ5>Σ7とはならない。
表1に示す組成の溶解・鋳造にて得られた銅合金母材を、表1に示す温度にて熱間圧延を開始し、表1に示す温度から40℃/秒の速度で急水冷して溶体化処理を施し、次に、面削、粗圧延、研磨を施して、所定厚さの銅合金板を作製した。
次に、これらの銅合金板に冷間圧延を施し、板厚を製品厚の0.64mmとし、表1に示す温度及び時間にて時効処理、表1に示す圧延率にて調質圧延、表1に示す温度及び時間にて熱処理を施し、実施例1〜16、比較例1〜12に示す銅合金薄板を作製した。
各試料の時効処理後及び熱処理後の表面のビッカース硬さを測定した。その結果から求めたビッカース硬さの差を表1に示す。
ビッカース硬さは、JIS−Z2244に基づいて測定した。
Figure 0006370692
また、その表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定し、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する横軸に示すGAM値を有する結晶粒の面積比、すなわち測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸とした。GAM値は0°から5°の範囲を0.25°ステップで層別して各区間の面積比を算出したグラフを作成し、面積比のピーク値を求めた。また、CSL粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフを作成しΣ5とΣ7の値を求めた。その結果を表2に示す。
GAM、CSL粒界の測定は、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて、次のように実施した。
10mm×10mmの試料を機械研磨、バフ研磨後、日立ハイテクノロジーズ社製イオンミリング装置で加速電圧6kV、入射角10°、照射時間15分として表面を調整し、日立ハイテクノロジーズ社製SEM(型番「S−3400N」)と、TSL社製のEBSD測定・解析システムOIM(OrientationImaging Micrograph)を用い、測定領域を六角形の領域(ピクセル)に区切り、区切られた各領域について、試料表面に入射させた電子線の反射電子から菊地パターンを得てピクセルの方位を測定した。測定した方位データを同システムの解析ソフト(ソフト名「OIMAnalysis」)を用いて解析し、各種パラメータを算出した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積は300μm×300μmとし、隣接するピクセル間の距離(ステップサイズ)は0.5μmとした。隣接するピクセル間の方位差が5°以上を結晶粒界とみなした。
平均値GAMは、結晶粒内のあるピクセルと、結晶粒界を超えない範囲に存在する隣接ピクセルとの方位差の平均値を計算した。
CSL粒界は、結晶粒界を挟んだ隣接した結晶同士の片方を結晶軸の周りに回転したときに、格子点の一部が隣の結晶粒の格子点に位置して、両結晶に共通する副格子を構成するような粒界であり、その分布図および結晶粒方位分布マップを測定した。
Figure 0006370692
次に、各銅合金薄板につき、引張強さ、導電率、プレス打ち抜き性、金型磨耗性を測定した。その結果を表3に示す。
引張り強度は、JIS5号試験片にて測定した。
導電率は、JIS H0505に基づいて測定した。
プレス打ち抜き性(せん断時におけるバリ長さ)は、日本伸銅協会技術標準JCBA T310の試験方法に従って、インストロン・ジャパン株式会社製4204型万能材料試験機を使用して、パンチ形状を直径10mmφの円形、クリアランスを5%、せん断速度は25mm/minにてせん断加工試験を実施した。バリ長さは打ち抜いた試験片の円周方向90°毎4箇所のバリ高さを測定し、その平均値とした。
金型磨耗性は、日本伸銅協会技術標準JCBA T310の試験方法に従って、インストロン・ジャパン株式会社製4204型万能材料試験機を使用して、パンチ形状を直径10mmφの円形、クリアランスを5%、せん断速度は25mm/minにてせん断加工試験を実施して、そのせん断応力を測定した。金型磨耗性はせん断抵抗率(材料のせん断応力/材料の引張強度)として算出し、その値が低いほど材料強度に対して相対的な金型への負荷を軽減し金型磨耗性を向上するものとして評価した。
材料のリサイクル性の評価は、プレス打ち抜き試験にて発生したプレス屑を原料として用いたCu−Ni−Si合金を溶解鋳造し、熱間圧延後の表面状態から評価した。
具体的には、プレス屑4kgに対して、Ni:2.0wt%、Si:0.5wt%の組成となるよう、Ni、Si原料を添加し、大気溶解鋳造設備にて4kgの鋳塊を作成し、
得られた鋳塊を980℃で1時間加熱後、熱間圧延(加工率80%)を行い熱延板を得た。その熱延板の表面を1mm面削後、その表面を顕微鏡で観察し、幅または長さが0.5μm以上の欠陥部の有無を確認した。また、その欠陥部をSEM−EDXにて詳細に観察したところ、欠陥はZr酸化物やCa酸化物などの介在物であった。
リサイクル性の評価は、観察した熱延板の面積100cm中に0.5μm以上の介在物が全くないものを○、品質には影響を及ぼさ無いが幅または長さが0.5μm以上、1μm未満の介在物があるが1μm以上の介在物はないものを△、品質に影響を及ぼす幅または長さが1μm以上の介在物があるものを×とした。
その結果を表3に示す。
また、参考として、Zrを0.05質量%、Siを0.04質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金板を実施例1と同様の製造方法で作製し、プレス打ち抜きした後の屑につき、同様にリサイクル性を評価したところ×であり、品質に影響を及ぼす表面欠陥が見られた。
Figure 0006370692
これらの結果より、本発明の電気及び電子部品用Cu−Zr系銅合金板は、プレス打ち抜き性、耐金型摩耗性に優れ、プレス打ち抜き等で発生した機械加工屑のリサイクル性にも優れていることがわかる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。

Claims (2)

  1. Zrを0.01質量%〜0.11質量%、P、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を合計で0.001質量%〜0.1質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金板であり、圧延表面を後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて測定した際に、同一結晶粒内における隣接測定点間のミスオリエンテーションの平均値GAMの値を横軸とし、測定範囲の全面積に対する各測定値の面積比を縦軸としたグラフにおいて、前記グラフのピーク値が0.11以上であり、CSL粒界を横軸とし、測定範囲の全CSL粒界長さに対する各CSL粒界長さの比を縦軸としたグラフにおいて、Σ5とΣ7の値がΣ5>Σ7であることを特徴とするプレス打抜き性、耐金型摩耗性及びリサイクル性に優れた銅合金板。
  2. Zrを0.01質量%〜0.11質量%、P、Ca、Te、B、Mgの中から1種又は2種以上を0.001質量%〜0.1質量%含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金鋳塊に対して、930℃〜1030℃で熱間圧延を開始し、600℃以上の温度域から水冷による急冷処理にて溶体化処理を施した後に、冷間圧延を施し、次に320℃〜460℃にて2時間〜8時間の時効処理を施し、次に圧延率が5%〜15%の調質圧延を施し、更に、380℃〜550℃にて10秒〜200秒間の熱処理を施し、前記熱処理後の銅合金板の表面のビッカース硬さを前記時効処理後のビッカース硬さより3Hv〜20Hv高くすることを特徴とする請求項1に記載のプレス打抜き性、耐金型摩耗性及びリサイクル性に優れた銅合金板の製造方法。
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