JP2008074847A - 弱塩基性イオン交換樹脂を用いた窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシランの安定化 - Google Patents

弱塩基性イオン交換樹脂を用いた窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシランの安定化 Download PDF

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Abstract

【課題】窒素含有オルガノシラン又は酸素含有オルガノシランを、酸により触媒される侵食から安定化させ、そして生ずる分解を妨ぐための方法の提供。
【解決手段】製品の分解の影響を受けやすい、少なくとも一つのSi−H又はN−H基を有する窒素含有オルガノシランを、(a)残余のアニオン又は金属カチオンを除去するための弱塩基性イオン交換媒体と接触させる段階、(b)前記オルガノシランを前記弱塩基性イオン交換樹脂から分離する段階、(c)前記オルガノシランを蒸留する段階よりなる処理を施す。上記Si−H基を侵食するアニオン又は酸が排出され、この分解が妨げられる。これらのアニオンに低濃度で曝露しても、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素及び窒化ケイ素膜の使用に関する半導体の加工において、重大な分解を生じ、そして製品安定性及び長期間の有効期間に重大な影響が生じうる。
【選択図】なし

Description

窒素含有オルガノシラン、例えば、アルキルアミノシラン又はジアルキルアミノシランは、化学気相堆積法(CVD)又は類似の手段により、半導体素子製造に用いることが可能な窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素膜を堆積するための前駆体として用いられている。
アルキルアミノシラン、例えば、ビス(第三級ブチルアミノ)シラン(BTBAS)、並びにジアルキルアミノシラン、例えば、ジエチルアミノシラン(DEAS)及びジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)は、代表的な液相の窒素含有アミノシラン前駆体化学物質であり、そして窒化ケイ素、酸窒化ケイ素及び二酸化ケイ素膜の化学気相堆積法(CVD)又はプラズマ化学気相成長法(PECVD)向けに用いられている。アンモニアと共に、前駆体としてBTBASを用いて得られた堆積膜は、例えば、CVDによりジクロロシラン(DCS)及びアンモニアから堆積させた膜と比較して、塩化アンモニウムを含まず、そして塩素汚染がない。そして上記膜を、比較的低い工程温度、すなわち、500〜600℃において生成させることができる。さらに、これらのアルキルアミノシラン又はジアルキルアミノシランは、それらが、Si−C直接結合を含まない事実のため、炭素を実質的に含まない又は非常に低濃度で含む膜が生成する。
酸素含有オルガノシラン液体、例えば、ジエトキシメチルシランは、酸化ケイ素、炭素ドープ化酸化ケイ素、多孔質酸化ケイ素のプラズマ化学気相成長法向けに用いられている。得られた膜を、銅の相互接続間のクロストークを避けるために、金属間層(inter−metal layer)として用いることができる。
N−H若しくはSi−H断片のいずれか、又はその両方を有する、窒素含有オルガノシラン、例えば、BTBAS、DEASと、Si−H断片を含む一定の酸素含有オルガノシランとは、長期にわたる分解の影響を受け、主生成物の劣化を生ずることが多い。ある場合には、製品の分解は、1日当り20〜450ppm、そしてそれ以上の場合があり、それにより、製品の有効期間を大きく短縮する結果となる。従って、半導体用途に用いられる、少なくとも50ppm/日の分解速度を典型的には有する窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシランを停止させる又は安定化させるために実用的かつ好都合な方法に対する必要性が、当業界に存在する。
次の特許は、窒素含有オルガノシラン又は酸素含有オルガノシランを生成させるための先行技術、並びに窒化ケイ素、酸窒化ケイ素及び二酸化ケイ素膜を堆積させるためのそれらの用途の代表例である。
米国特許第6,963,006号明細書は、無水条件下で、溶媒を排除して、ジクロロシランを、アルキルアミンと反応させることによる、アルキルアミノシラン(そして特に、BTBAS)の製法を開示している。アルキルアミノシラン及びアルキルアミンヒドロクロリド塩が含まれる液体が生成する。上記アルキルアミノシランを、アルキルアミンヒドロクロリド塩から分離し、そして当該アルキルアミノシランを、大気圧下の蒸留又は減圧蒸留のいずれかにより精製する。
米国特許第2,834,648号明細書には、アミン型触媒を用いるクロロシランの不均化反応を実施するための方法が開示されている。不均化反応を実施するために特に適合するアミンは、ジアルキルアミン及びトリアルキルアミンである。
米国特許第3,928,542号明細書には、クロロシリコンヒドリド、例えば、シリコンヒドリドの不均化又は再分布を実施するために、固形のアニオン樹脂の能力を強化するための方法が開示されている。当該方法では、HClを用いてアミノイオン交換樹脂を処理し、そして当該樹脂を不均化反応内で用いた。
欧州特許第0028524号明細書には、酸性触媒の存在下で、次の式:
RSi[SiO43[R’]9
のアルコキシシランクラスター化合物を、アルコールと反応させることにより、次の式:
RSi[SiO43[R’]9-n[R”]n
のアルコキシシランクラスター化合物を製造するための方法が開示されている。
典型的な触媒は、酸性イオン交換樹脂、ルイス酸、酸性アルコール等である。
欧州特許第0206621号明細書には、次の式:
1mSiX4-(1+m)
の、少なくとも1種のSi−H結合を有するシランを、スルホン酸型又は第四級アンモニウム塩型のアニオン交換樹脂触媒の中和付加物と接触させることによる、式:R1mSiX4-(1+m)のシランを不均化させ、モノクロロシラン及びジクロロシランを生成させるための方法が開示されている。
米国特許第4,798,889号明細書は、熱的に誘導される重合を減らすために、ヒドロキシルアミンを用いて、分子内の特有のビニル基を含む不飽和のオルガノシリコーンを安定化させるための方法が開示されている。
米国特許第4,709,067号明細書には、減圧蒸留の際、白金触媒の存在及び少量のアルコールの存在の下、フェノール系禁止剤(例えば、MMHQ、芳香族アミン又は芳香族硫黄化合物)を用いて、メタクリルオキシ及びアクリルオキシ有機ケイ素化合物を安定化させるための方法が開示されている。
米国特許第4,368,313号明細書では、キレート化可能な金属イオンを含む中和剤を添加して、オルガノシランのシラノール加水分解物を安定化し、有効期間を増すことが取り扱われている。
米国特許第3,928,542号明細書では、イオン交換樹脂の能力を強化してクロロシランを再分布させるために、無水塩酸を用いて当該樹脂を調製することが開示されている。
Aylett及びEmsleyの「The Preparation and Properties of Dimethylamino and Diethylamino Silane」J.Chem.Soc.(A)p652−655,1967には、ジメチルアミノ及びジエチルアミノシランの調製が開示されており、当該シランを、それぞれのジアルキルアミンと反応させる。
Anderson及びRankinの「Isopropyldisilylamine and disilyl−t−butylamine:Preparation,Spectroscopic Properties,and Molecular Structure in the Gas Phase,Determined by Electron Diffraction」J.Chem.Soc.Dalton Trans.,p779−783 1989には、イソプロピルジシリルアミン及びジシリル−t−ブチルアミンの合成が開示されており、そして相当するメチルジシリルアミンに対する分光的な比較が提供されている。
本発明は、少なくとも1つの遊離のSi−H基又は少なくとも1つのN−H基を有する、安定な及び不安定な液相の窒素含有オルガノシランからなる群から選択されるオルガノシランの分解を防ぐための方法と、少なくとも1つのSi−H基を有する一定の酸素含有オルガノシランとに関する。それらは、ペンダント型のハロゲン基を有しない。上記オルガノシラン製品の安定化をもたらす方法の改良は、アニオン並びに極微量の酸を除去するためには十分であるが、当該オルガノシラン製品それ自体が分解を受けるには足りない時間の間、液相のオルガノシランを、固相の弱塩基性イオン交換樹脂と接触させることにある。次いで、上記オルガノシランを、典型的にはろ過により、上記イオン交換樹脂から分離して精製する。
上記方法から大きな優位性を得ることができ、そしてこれらの優位性には、下記が含まれる;
オルガノシランの分解速度を遅くし、それにより当該オルガノシランの有効期間を伸ばすことができること:そして
工程効率よく、汚染アニオンを除去させる固相のイオン交換樹脂を用いることができること。
本発明を実施するために適合するオルガノシランは、通常は、室温で液状である窒素含有シラン及び酸素含有シランから成る群から選択される。
浸食されやすくかつ時間と共に不安定化しやすい窒素含有オルガノシランは、次の一般式を有する:
1 (RNH)xSiH4-x
及び
2 (R2N)xSiH4-x
(式中、Rは、C1〜C10のアルキル基、脂環式、又は結合した環式基であり、そしてx=1、2又は3である)。
液状の窒素含有オルガノシランを、種々の方式により製造することができるが、典型的には、それらは、クロロシランが含まれる反応混合物から製造されている。反応方法の一形態では、少なくとも一種の有機アミン試薬を、少なくとも一種のクロロシラン試薬と反応させる。上記有機アミン試薬は、塩化物を、有機アミン塩化物塩、固体の副生成物として除去するために、理論量を超えて反応混合物中に存在する。
本発明の実施形態の一つである、BTBASを製造するためのプロセス化学の例は、第三級ブチルアミン(TBA)をジクロロシラン(DCS)と反応させることにある。4モルのTBAを、各モルのDCSと反応させる。理論量を超えたTBAの量を、溶媒として用いる。BTBASの未精製の液体には、2モルの副生成物、tert−ブチルアミンヒドロクロリド塩(TBA.HCI)が含まれ、それは、各モルのジクロロシラン(DCS)が反応する場合に生成する。当該反応混合物を混合して、アルキルアミン及びクロロシラン試薬の間の接触を増やすことができる。例えば、超音波エネルギー又は機械的撹拌により撹拌することができる。
上記クロロシラン試薬及び窒素含有オルガノシラン製品の加水分解を避けるために、無水条件下で上記反応を実施する。これに関して、上記反応を実施する前に、加熱、減圧又は他の手段を用いて、当該反応装置系を完全に乾燥させる。上記反応を、−10〜50℃、好ましくは0〜35℃の範囲にわたる温度で実施する。一度、上記反応が完了すると、上記反応器内容物をフィルターに通し、未精製の液体から副生成物の塩を実質的に除去する。好適なろ過媒体は、そこに含まれる未精製又は任意の成分と反応しない材料、例えば、セラミック、ガラスフリット、又は一定の金属で構成される。
製品の精製は、上記窒素含有オルガノシランから、未反応の有機アミン試薬を蒸留により除去することから始めるのが一般的である。当該未精製の窒素含有オルガノシラン液体からアミンを取り除くことを助力するために、減圧を適用するのが一般的である。当該未精製物を精製するための温度及び圧力の条件は、用いられる精製法によって変わる。
侵食されやすくかつ時間と共に不安定化しやすい酸素含有オルガノシランは、室温で液状であり、そして少なくとも1つのSi−H基を有するとして特徴付けられる。
上記酸素含有オルガノシランは、次の式により表される:
1 (R1O)xSiH4-x
及び
2 (R1O)x2 ySiH4-x-y
(式中、R1及びR2は、C1〜C10のアルキル基、脂環式、又は結合した環式基から選択され、そして式1においてx=1、2、3であり、そして式2においてx+y<4である)。
上述のように、窒素含有オルガノシラン及び上述の酸素含有オルガノシランに関連する重大な課題の一つは、極微量の不純物の存在により、それらの有効期間が乏しいことである。例えば、ビス(t−ブチルアミノ)シランは、分解して、モノ(t−ブチルアミノ)シラン(MTBAS)、トリス(t−ブチルアミノ)シラン(TTBAS)及び遊離のt−ブチルアミンを遊離させるビス{(tert−ブチル)アミノシラメチル}(tert−ブチル)アミン[S−2と略す]を生成しうる。MTBAS及びTTBASは、極微量の酸により触媒されうるSi−H基の反応性のために、次の反応式(1)に示されるように不均化反応を経由して生成されている。S−2は、反応式(2)に示されるように、不純物を含む極微量のアニオン又はカチオンと恐らく結合する2つのBTBAS分子を縮合させることにより製造されると考えられる。
Figure 2008074847
ジエチルアミノシランはビス−ジエチルアミノジシランに分解することができ、そして反応式(2)のt−ブチルアミンを遊離させるBTBASの分解と同様に、ジエチルアミンを遊離させるであろう。BTBAS製品の一部のロット(batch)は、通常は安定であり、一部分解を経験すると考えられ、典型的には、室温で1日当り5ppm未満のS−2を生成する。一方、BTBASの一部のロットは、本質的に不安定であり、1日当り、50ppm超のS−2を生成する。これらの速い速度で分解する製品は、半導体産業において大量に使用するための前駆体としては、潜在的な問題を有する場合がある。
少なくとも1つのSi−H基を有する酸素含有オルガノシランはまた、次の反応式3に示すように、上記窒素含有オルガノシランと同様の様式で、不均化反応を受けやすいことは周知である。
Figure 2008074847
窒素含有オルガノシラン(特に、不安定なBTBASとDEASとのロット)、並びに一定の酸素含有オルガノシラン(特に、ジエトキシメチルシラン(DEMS))を、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理して改良することができる(用語「弱塩基性」は、製造業者により特徴付けられる用語であり、そして使用の環境を指す)。
本発明の実施において用いるために好適な弱塩基性イオン交換樹脂は、上記窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシラン製品の残余のイオンを除去するため、そして得られた窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシラン製品の安定化を実施するために十分な塩基性を導入するべきである。一方、上記塩基性は、上記窒素含有オルガノシランとの反応を避けるように、十分弱くあるべきである。典型的には、接触持間の際の上記弱塩基性イオン交換樹脂を用いた媒体の好ましいpHは、製造業者の提案によると7〜8である。
上記弱塩基性イオン交換樹脂は、当該樹脂中にアミノ官能基を有することが好ましく、そして当該樹脂構造体に炭素原子を介して結合している第三級アミン基を有することが好ましい。全ての樹脂は、炭素及び水素並びに窒素原子から構成されることが好ましい。上記樹脂中のアニオン不純物は避けるべきである。特に好ましいイオン交換樹脂は、モノオレフィン系(monoolefinically)不飽和の(ハロゲン化されている又はハロゲン化されていない)炭化水素;モノオレフィン系不飽和のヘテロアミン;ポリオレフィン系(polyolefinically)不飽和の炭化水素;又はポリオレフィン系不飽和のヘテロアミンの共重合から製造された樹脂である。上記モノオレフィン系不飽和化合物の実例は、例えば、スチレン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、ビニルトルエン、4−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニル−ピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、2−メチル−3−エチル−5−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルキノリン、4−メチル−4−ビニルキノリン、1−メチル−又は3−メチル−5−ビニルイソキノリン等である。
上記ポリオレフィン系不飽和化合物は、例えば、下記の一つであることができる:1,4−ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、トリビニルナフタレン及びポリビニルアントラセン。
アミン官能性イオン交換樹脂は、概して、2つの形態で用いることができる。一つの形態は、ゲル型樹脂と称され、そして一般的な型の交換体を表す。他の形態は、高度架橋(macroreticular)型イオン交換樹脂と称されている。固体状において、それらは、ろ過により、液体(例えば、BTBAS及びDEAS)から容易に分離される。市販の高度架橋型第三級アミン弱塩基性イオン交換樹脂の実例は、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのRohm and Haas Companyが所有する商標、Amberlyst A−21(当該樹脂は、Rohm and Haas Companyにより製造されている)か、又はミシガン州、ミッドランドのDow Chemical Companyが所有する商標、DOWEX Marathon WBAである(当該樹脂は、Dow Chemical Companyにより製造されている)。
市販のゲルアミンイオン交換樹脂の実例は、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのRohm and Haas Companyが所有する商標であるAmberlyst A−24(当該樹脂は、Rohm and Haas Companyにより製造されている)である。それは、第三級アミン官能基を有する架橋されたアクリル系ゲル構造体である。末端ヒドロキシドを有する高度架橋型強塩基性アニオン性ポリマー樹脂は、この方法に望ましくない。というのは、製品に大きな損失をもたらすオルガノシランの一部を加水分解する可能性があるからである。
上記窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシラン製品の安定化を実施するための方法の他の要素は、上記樹脂並びに上記窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシラン材料が、接触し続ける接触温度及び滞留時間である。上記窒素含有オルガノシラン及びオルガノシランの接触は、熱分解を避けるため、通常は、室温付近の温度で実施される。滞留時間は、1〜24時間であることが多い。場合によっては、上記イオン交換樹脂を用いて製品を長時間処理することにより、一部の分解が生じることがあるので、元に戻す分解(undo decomposition)を生じさせることなく、上記窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシランを安定化させるために十分な時間接触させ、次いで当該樹脂との接触から上記製品を取り出すことが好ましい。
高純度の商用グレードの窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシランの製造において、処理されたイオン交換製品を再蒸留することが推奨される。
次の例は、本発明の種々の実施形態を具体的に説明することを意図し、それらの範囲を制限することを意図するものではない。
比較例1
Cl - がBTBAS内で不安定性を生じさせるか決定するための検討
この検討では、製品の精製においてBTBASの蒸留後に残る残余の塩化物濃度が、BTBAS不安定性の原因であるが決定するために、安定及び不安定なBTBAS試料のCl-の分析をした。イオンクロマトグラフィーにより測定されるように、蒸留後のBTBAS内の典型的なCl-の濃度は、10ppm未満の範囲にわたり、そして大部分のロットは、1〜3ppmを有する。
上記不安定なロット内の塩化物濃度を精密に検査することにより、Cl-は、唯一の原因となる要因として確立されなかった。Cl-濃度が非常に低い一部のロットは不安定であり、その上、塩化物濃度が高い一部のロットは非常に安定であった。他のいくつかの要因が、BTBASの不安定性を引き起こすことが結論付けられた。
比較例2
BTBASの分解を引き起こす酸性化合物の影響を決定するための検討
この例の目的は、少量の酸性化合物を導入して、これがBTBAS内で不安定性を生じさせ、そしてBTBASの分解速度を速めるか決定することである。この試験により、顕著な不安定性の原因についての見識を提供することができると考えられる。
実験:この例では、BTBASの安定なロットを2つの部分に分け、一方は、参照標準であり、そして他方は、約1000ppmの少量の一般的なアニオンに曝露させた。曝露試験を、ドライボックス内部で実施した。6mLのBTBASを、8mLのバイアルに移動させ、そして上記アニオン源を添加した。次いで、上記バイアルにフタをし、そして数分間かき混ぜ、次いで一晩沈殿させた。次の日、1日目の試料を分析した。5日後、上記試料を再度分析し、そして主要な生成物の変化率及びクロマトグラフの相違をモニターした。次いで、上記参照標準及び曝露した試料を、分解速度を決定するために比較した。
アニオン源は、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、塩化アンモニウム、及び硝酸ナトリウムであった。
要約:当該結果は、安定であるBTBAS参照は、1000ppmの上記アニオンに曝露されると不安定になることを示している。当該特有の結果を、以下に示す。
硫酸アンモニウムにより、1日後、2500ppmのS−2が発生した。5日後、S−2濃度は、4850ppmであった(1日目から5日目の1日当り、461ppmのS−2の変化)。同定されていないピークが、約2200ppm生成し、そして試験時間の間安定であったが、対照のBTBAS中には13ppmしか存在していなかった。
炭酸水素アンモニウムにより、BTBASが、最も分解した。1日目において、BTBASの分析結果は、80%のみであり、そして5日目において、BTBASは固体となった。
塩化アンモニウムにより、1日目に900ppmのS−2が生成し、そして5日目に2500ppmに達した。また、硫酸アンモニウムと共に観察される、同定されていないピークは、約1100ppmであった。
硝酸ナトリウムにより、S−2のみが生成し、1日目に1400ppm発生し、そして5日目に7250ppm発生した(1日当り、1165ppmのS−2)。
また、硫酸ナトリウムに曝露することにより、新しいピークを加えることなく、迅速にS−2が発生した。当該濃度は、1日目は約1500ppmであり、そして5日目は7200ppmであった。
亜硫酸ナトリウムへの曝露は、他のアニオンへの曝露と比較して、参照標準の安定性に対する影響が最小であった。1日目において、S−2濃度は151ppmであり、そして5日目には1100ppmであった。これは、1日当り、196ppmのS−2の変化率であった。
特徴的ではないが、上記対照の参照標準は、1日当り、6ppmのS−2の分解を示し、そして1日目から5日目まで増加した。
塩化アンモニウムにより、試験標準に最小量の分解が生じ、1日当り300ppmのS−2の変化が生じた。炭酸ナトリウムは、BTBASと遅延型反応をし、1日目には、S−2濃度は89ppmのみであり、対照と同じであったが、5日目には、7250ppmを生じた。
結論として、全てのアニオンにより、S−2の大きな変化が生じ、かつ公知の安定な参照標準が不安定な様式(manor)で挙動し、大量のS−2を発生させた。
比較例3
BTBASの安定性に対する、ラジカル捕捉剤の添加の影響
この例の目的は、BTBAS試料内にフリーラジカルが存在するか、そしてそれらのフリーラジカルの存在が、不安定なBTBASの分解に任意の方式で寄与するかを決定するためであった。以下を除いて例2の手順に従った:フリーラジカル捕捉剤、トリエチルアミン、リチウムアミド及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、安定なBTBASの試料及び不安定なBTBASの試料(約100ppm/日で、S−2が生成する分解速度を有する)に添加した。
曝露実験を、ドライボックス内で実施した。6mLのBTBASを、8mLのバイアルに移動させ、そして上記捕捉剤源を、2つの固体の場合には約1000ppm、そしてトリエチルアミンの場合には0.5mLで添加した。次いで、上記バイアルにフタをして、そして数分間撹拌し、次いで一晩沈殿させた。次の日、1日目の試料を分析した。4日後、上記試料を、再度分析し、そして主要な生成物の変化率及びクロマトグラフの相違をモニターした。
要約:これらの捕捉剤に曝露した公知の安定なBTBAS試料は、種々の分解速度を示した。対照のBTBAS参照標準は、トリエチルアミンと共に、試験で大きな変化を示さなかった。BHTを有する標準は、中程度の分解を示し、1日当り3.4ppmのS−2を生成した。BHTは、16ppm/日の速度において、ジシロキサンをより顕著に増加させた。
このジシロキサンの増加は、BHTが、立体的に込み合ったヒドロキシル基を有するとの事実に起因すると考えられ、そしてBHTが、酸素孤立電子対の求核攻撃により、BTBASをジシロキサンに加水分解してヒドロキシル中間体を生成させ、次いでt−ブチル基を開裂させ、シロキサンを生成させることができると考えられる。また、上記BHTが、若干水酸化し、そして遊離の水分が分解を生じさせた可能性がある。また、BHTに曝露することにより、200ppm/日の速度において第三級ブチルアミン(TBA)に大きな変化を生じさせ、これは、BHTが最初にBTBASと反応し、そしてフリーラジカルの作用を評価できないことを支持している。
リチウムアミドは、BTBAS参照標準の影響が最小であるが、未処理の参照試料の場合の1ppm/日未満と比較して、リチウムイミドは、3.5ppm/日でS−2を生成する、中程度の不安定な安定材料を生成させた。
トリエチルアミンは、不安定なBTBASに対して適度な安定化効果を示した。トリエチルアミンは、完全にアルキル化したアンモニウム誘導体(R4N)+-種を生成することができる。S−2構造体は、未処理の不安定な試料から減少した(30%の改良)。BHTにより、大量のジシロキサンが生成し、全体的なBTBAS分析物が減った。リチウムアミドは、1日当り、100ppmのS−2分解速度を維持し、安定化作用をほとんど有しなかった。
全体的に、上記捕捉剤は、BTBASの分解を減らす手助けとならず、そして一部(主に、BHT)は、製品の大きな損失を生じさせた。長期間にわたり検討すると、いくつかの安定化効果が観察されるが、他の何かが上記窒素含有オルガノシランを分解させると結論付けられ、そして例2の結果に基づくと、恐らく、極微量のアニオンの存在が原因だと思われる。
例4
BTBASを処理するためにイオン交換カラムの使用
BTBAS樹脂を、Rohm and Haasにより製造されたAmberlyst A−21イオン交換樹脂と接触させることを除いて、例2の手順に従った。上記樹脂は、第三級アミン官能基を有する、高度架橋型弱塩基性樹脂である。上記Amberlyst A−21樹脂を、最初に、10体積当量超の2回脱イオン(DI)水(double de−ionized water)(18.2MΩ/cm)で洗浄し、次いで、3日間、減圧及び温度下で乾燥させた。
汚染するアニオンが存在する場合には、上記樹脂は、次の反応式に従ってアニオンを除去できると考えられる:
M+A−(固形樹脂)+B−(溶液) ←→ M+B−(固形樹脂)+A−(溶液)
(式中、A及びBは対イオンであり、そしてM+は、不溶性の固定されたカチオン性補完物である)。
第一のイオン交換カラム処理を開始させた。BTBAS試料を、1時間当り4ベッド体積の速度で、イオン交換カラムベッドを通して重力送りをした。材料を、1回のみ通過させた。BTBASが加水分解しない限り、当該pHは、7〜8の範囲内に残るであろう。
結果は、安定性に本質的に改良がないことを示していた。恐らく、接触時間が安定性を改良するためには十分でなく、そして恐らく、改良された結果は、曝露時間を延ばすと観察されるであろうと考えられる。
例5
弱塩基性の高度架橋型樹脂の影響
BTBAS安定性に対する長時間の処理
BTBASを、長時間に渡り、Amberlyst A−21イオン交換樹脂と接触させることを除いて、例3の手順に従った。当該試験の実施において、きわめて安定なBTBAS試料の一組の試料と、きわめて不安定なBTBAS試料の一組の試料とを、24時間、乾燥させたA21樹脂を用いて浸漬させ、次いで、BTBASを上記樹脂から静かに移した。別の組では、上記試料を、41日間、この試験を構成する樹脂と連続接触させたままとした。
結果を、安定及び不安定な材料の両方に関して、未処理の試料と比較した。不安定なBTBASブランク又は未処理の試料は、1日当り20.1ppmの速度で、S−2を生成させた。41日間、Amberlyst A−21樹脂を用いてバルク浸漬させたBTBAS試料は、1日当り9.9ppmのS−2を発生させ、ひいては、BTBASの分解を50%減少させた。24時間の曝露においてAmberlyst A−21に曝露させたBTBAS試料は、1日当り5.6ppmのS−2生成速度を有し、最も安定なBTBAS製品を生じさせた。その減少は、41日間にわたる未処理のBTBAS試料を超えて、72.2%の改良であった。
要約:Amberlyst A−21に曝露すると、安定な参照標準において、S−2の生成に関して中程度の不安定化が生じた(ブランクの1.8ppm対浸漬における6.8ppm及び24時間曝露における8.9ppm)。通常は不安定なBTBASでは、Amberlyst A−21への曝露により、不安定性が減った。対照のブランクは、1日当り20.1ppmの速度でS−2を生成した。バルク浸漬により、1日当り、9.9ppmのS−2、50%増加した安定性の割合が生じた。24時間曝露することで、1日当り5.58ppmのS−2生成速度、又は41日間にわたる72.24%の安定性の増加と共に、最も安全なBTBASが生じた。結論として、Amberlyst A−21イオン交換樹脂を用いて不安定なBTBASを処理すると、S−2の生成が減り、そしてBTBAS安定性が増すと思われる。
例6
高度架橋型の弱塩基性樹脂の影響
BTBAS安定性に関する58日間にわたる長時間の処理
安定性を58日間の試験期間にわたり評価し、そして処理を種々の時間にわたり実施したことを除いて、例5の手順に従った。BTBASの2つのロットを検討し、1つは、通常の安定性を有し(1日当り、1.3ppmのS−2の生成)、そして他方は、中程度の不安定性を有していた(1日当り、11ppmのS−2)。
一組の実施において、BTBAS試料を、Amberlyst A−21樹脂と接触させる時間を、3時間の浸漬とし、そして別の組の実施では、試料を、58日間の実験的な実施にわたり、A21樹脂と一定の接触をさせたままとした。これらの実施を、対照の試料と比較し、そこでは、安定及び不安定なBTBAS試料を、未処理のままとした。
不安定なBTBASを3時間接触させることにより、1日当り11から2.2ppmに、S−2の生成が減った。上記不安定なBTBASをバルク浸漬させることにより、1日当り11から9.4ppmに、S−2の生成が減った。
通常の安定性のBTBAS材料は、上記樹脂に連続的に曝露すると、1日当り1.3から3.5ppmに増加するS−2構造を有する、一部不安定性を示すが、Amberlyst A−21と3時間接触させると、S−2の発生が、1日当り1.3から0.5ppmに減少した。
結論として、当該結果は、BTBAS(通常の安定なものであろうと、又は不安定なものであろうと)は、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて、短時間曝露し、そして処理することにより安定性を改良できることを示している。例5及び例6に示す長時間の接触時間と比較して、当該結果は、BTBASの3時間の曝露は、上記対イオンの交換を完了させるために十分であり、そしてこれらの試料は、総合的な安定性に最大の改良を示した。
例7
弱酸を添加したDEASの処理
ジエチルアミノシランをBTBASと置換したことを除いて、例5の手順に従った。BTBASとは異なり、DEASは、1日当り100〜200ppmの典型的な分解速度を有し、極めて不安定であった。
Amberlyst A−21イオン交換樹脂により処理された材料は、処理された材料の純度の初期の減少にもかかわらず、長期にわたり、未処理の材料よりも安定であった。DEASは、1時間、バルク浸漬として上記樹脂と接触したのみであった。長い接触時間を用いる場合、例3〜6から得られた結果に基づいて、DEASの安定性を改良することができると考えられる。この実験に関連する他の課題の一つは、Amberlyst A−21で処理された材料は、分析物が1%減少したことであり、多分、不十分な乾燥、当該反応を、ジシロキサンを生成するようにさせたことのためであろう。
例8
Amberlyst A−21を用いたジエトキシメチルシランの処理
ジエトキシメチルシラン(DEMS)を、Amberlyst A−21イオン交換樹脂と接触させることを除いて、例5の手順に従った。安定性を長時間モニターした。Amberlyst A−21を用いた処理により、DEMSの安定性を改良することができることが見出された。
結論として、窒素含有シラン及び酸素含有オルガノシランを、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理することにより、当該窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシラン分子を侵食することが可能な、当該窒素含有オルガノシラン及び酸素含有オルガノシラン内の残余のイオン又は酸を排出し、分解を防ぐことができる。

Claims (15)

  1. 少なくとも1つのN−H若しくはSi−H又はその両方を有し且つペンダント型のハロゲン原子を有しない窒素含有オルガノシランと、少なくとも1つのSi−Hを有する酸素含有オルガノシランとから成る群から選択されるオルガノシランの安定化する方法であって、
    当該方法は、次の段階を含んで成る;
    (a)前記オルガノシランを顕著に加水分解することなく、当該オルガノシラン中に存在する残余のアニオン又は金属カチオンを除去するための条件の下、前記オルガノシランを、弱塩基性イオン交換樹脂と接触させる段階;
    (b)前記オルガノシランを、前記弱塩基性イオン交換樹脂から分離する段階:そして
    (c)前記オルガノシランを蒸留する段階。
  2. 前記弱塩基性イオン交換樹脂が、アミン官能基で置換されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記オルガノシランが、クロロシラン及び有機アミンの反応により生成した窒素含有オルガノシランである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記オルガノシランが、次の式:
    1 (RNH)xSiH4-x
    及び
    2 (R2N)xSiH4-x
    (式中、Rは、C1〜C10のアルキル基、脂環式基、又は結合した環式基であり、そしてx=1、2又は3である)
    により表される窒素含有シランである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記窒素含有オルガノシランが、ビス(第三級ブチルアミノ)シラン、ジエチルアミノシラン及びジイソプロピルアミノシランから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記窒素含有オルガノシランを、前記イオン交換樹脂と接触させる前に、蒸留により精製する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記イオン交換樹脂が前記窒素含有シランと接触する滞留時間が、1〜50時間である、請求項5に記載の方法。
  8. 接触時間が3〜24時間である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記イオン交換樹脂中のアミノ官能基が、第三級アミンである、請求項5に記載の方法。
  10. 前記イオン交換樹脂が、高度架橋型第三級アミン弱塩基性イオン交換樹脂である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記オルガノシランが、次の式:
    1 (R1O)xSiH4-x
    及び
    2 (R1O)x2 ySiH4-x-y
    (式中、R1及びR2は、C1〜C10のアルキル基、脂環式、又は結合した環式基から選択され、そして式1においてx=1、2、3であり、そして式2においてx+y<4である)。
    により表される酸素含有オルガノシランである、請求項1に記載の方法。
  12. 前記オルガノシランが、前記式2によって表されるジエトキシメチルシラン(式中、R1はエチルであり、そしてR2はメチルである)であり、次の段階を含む、請求項11に記載の方法;
    (a)ジエトキシメチルシランを、弱塩基性イオン交換樹脂と接触させる段階:そして
    (b)前記ジエトキシメチルシランを、前記弱塩基性イオン交換樹脂から分離する段階。
  13. 前記イオン交換樹脂が、高度架橋型第三級アミン弱塩基性イオン交換樹脂である、請求項12に記載の方法。
  14. 少なくとも50ppm/日の分解速度を有する、ビス(第三級ブチルアミノ)シラン、ジエチルアミノシラン(DEAS)及びジイソプロピルアミノシランから成る群から選択されるオルガノシランの不安定なロットを安定化させるための方法であって、
    当該方法は、次の段階を含む;
    前記オルガノシランを、固相の弱塩基性イオン交換樹脂及び当該弱塩基性イオン交換樹脂と接触させる段階;次いで
    前記オルガノシランを、前記弱塩基性イオン交換樹脂から分離する段階;次いで
    前記オルガノシランを蒸留する段階。
  15. 前記イオン交換樹脂が、高度架橋型第三級アミン弱塩基性イオン交換樹脂である、請求項14に記載の方法。
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