JP2773509B2 - トリアルコキシシランの製造方法 - Google Patents

トリアルコキシシランの製造方法

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  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はトリアルコキシシランの
効率的な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルコキシシランは、各種シランカップ
リング剤や、絶縁薄膜の原材料等として有用であり、特
にトリアルコキシシランは分子内にSiH結合を有し、
しかもモノアルコキシシラン、ジアルコキシシランに比
べて化学的に安定であるとことから、その需要性は高
く、安価で効率の良い製造法が求められている。
【0003】従来、トリアルコキシシランの製造法とし
ては、クロロシラン類と低級アルキルアルコールを原料
とする方法が知られているが、クロロシラン類がコスト
高である上、目的とするアルコキシシランの他に塩酸が
副生するため、生成物の精製が困難で、かつ反応装置が
腐食する等の欠点があった。
【0004】一方、金属珪素とアルキルアルコールとを
直接反応させる方法も知られており、この方法は例えば
銅触媒の存在下に気相または液相で行われている。
【0005】液相系で行う場合は、気相系に比べて、反
応器容量当りの反応速度や珪素転化率が低く、また高沸
点の反応溶媒を用いるのでコスト高となり、反応残査は
高沸点生成物等を含むためヘドロ状となり反応残渣の処
理が困難であったり、生成物に反応溶媒が混入して来る
ため反応生成物の精製が煩雑である等の問題があった。
またトリアルコキシシランの選択率を向上させるため
に、ハロゲン化物を添加する技術が知られているが、多
量に用いられる溶媒中にハロゲン化物が溶け込んでしま
い、少量では有効に作用せず、多量を必要とし、このハ
ロゲン化物と溶媒が反応して副生物が生成し、反応生成
物中に混入することにより溶媒が再生不可能となる等、
工業的に適した方法とは言えない。
【0006】そこで、気相法でトリアルコキシシランを
効率良く製造する方法が望まれているが、従来の気相法
ではトリアルコキシシランよりも高次のテトラアルコキ
シシランの生成が優先し、目的物であるトリアルコキシ
シランの選択率が低く、また珪素転化率が低い等の問題
があり、充分満足な方法は見当たらなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は触媒の存在
下、金属珪素とアルキルアルコールを反応させてトリア
ルコキシシランを製造するにあたり、トリアルコキシシ
ランの選択率が高く、金属珪素の転化率が高く、副生物
が抑制され、残渣処理や後処理に問題のないトリアルコ
キシシランの製造方法について鋭意研究した結果、本発
明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、触媒の存在
下、金属珪素と炭素数1〜4のアルキルアルコールとを
反応させてトリアルコキシシランを製造するに際し、気
相でかつ気体状のハロゲン化物の存在下に710〜60
mmHgの減圧下で反応させることを特徴とするトリアルコ
キシシランの製造方法である。
【0009】本発明方法において原料の一つとして使用
される金属珪素は、純度80wt%以上のものが適してお
り、形状は粒状が好適であり、粒径は特に限定されるも
のではないが、通常、平均粒径2mm以下が好ましく、更
に好ましくは平均粒径25〜500μm、特に好ましく
は平均粒径50〜300μmである。
【0010】もう一つの原料である低級アルキルアルコ
ールとしては、直鎖状あるいは分岐状のいずれでもよ
く、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノ
ール、iso −プロパノ−ル、n−ブタノ−ル、sec −ブ
タノ−ル、iso −ブタノール、tert−ブタノールがあ
り、メタノール、エタノールが好ましく、これらの内で
も、後記実施例3と比較例3を対比すれば明らかなよう
に、本発明によるトリアルコキシシランの選択率および
珪素転化率の改善効果はエタノールを原料とするトリエ
トキシシランの製法において特に顕著である。
【0011】低級アルキルアルコールは純度95wt%以
上が好ましく、脱水剤を浸漬することにより水分の含有
量を2000ppm 以下、更に好ましくは500ppm 以下
としたものが好ましい。
【0012】低級アルキルアルコールの反応系への供給
速度は、金属珪素1モルに対し、低級アルキルアルコー
ル10〜1,000ミリモル/hrが好ましく、更に好ま
しくは50〜500ミリモル/hrである。1,000ミ
リモル/hrを超えると未反応の低級アルキルアルコール
が増加し、経済的とは言えず、あまり少ないとトリアル
コキシシランの収率が低下する恐れがある。
【0013】本発明で得られるトリアルコキシシラン
は、原料として使用するアルキルアルコールに対応した
アルコキシ基を有しており、具体的にはトリメトキシシ
ラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラ
ン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシ
ラン、トリ−sec −ブトキシシラン、トリイソブトキシ
シラン、トリ−tert−ブトキシシランがある。
【0014】本発明における触媒としては、銅触媒、亜
鉛触媒、ニッケル触媒のいずれもが使用でき、特に限定
するものではないが、銅触媒が特に好ましい。具体例と
しては塩化第一銅、塩化第二銅、臭化銅、沃化銅、弗化
銅、炭酸銅、硫酸銅、酢酸銅、蓚酸銅、チオシアン酸銅
等の銅塩、あるいは水酸化銅、シアン化銅、硫化銅、酸
化銅等の銅含有無機化合物、メチル銅、エチル銅などの
有機銅化合物、または金属銅が挙げられ、塩化第一銅が
特に好ましい。触媒は、粉末状のものを金属硅素と混合
したり、金属珪素に担持させた後、反応系に供給すれば
よく、必要であれば加熱処理等の活性化処理を行っても
よい。
【0015】本発明における気体状のハロゲン化物とし
ては、分子内にハロゲン原子を有する有機化合物または
無機化合物が挙げられる。有機化合物としては、好まし
くは直鎖状または分岐状の低級アルカンのフッ化物、塩
化物、臭化物等が挙げられ、具体的には塩化メチル、塩
化エチル、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロ
ロエタン等の炭素数1〜2のハロゲン化炭化水素等であ
り、塩化メチル、塩化エチルが特に好ましい。無機化合
物としては、弗化水素、塩化水素、臭化水素、沃化水素
等の水素化物または弗素、塩素、臭素、沃素等のハロゲ
ン分子が挙げられる。
【0016】ハロゲン化物は気体状で反応系に供給され
る。この場合、一方の原料である低級アルコールと共に
反応系に供給してもよい。反応系への供給割合は、低級
アルコール1モルに対して0.01ミリモル〜10ミリ
モルが好ましく、更に好ましくは0.1ミリモル〜1ミ
リモルである。あまり多いとコスト高につながり、0.
01ミリモル未満ではトリアルコキシシランの選択率の
向上につながらない恐れがある。
【0017】本発明は気相系で行う。すなわち金属珪素
および触媒に気体状の低級アルキルアルコールおよびハ
ロゲン化物を接触させて反応させる。反応方式は、金属
珪素および触媒を最初に全量を仕込むバッチ方式でも、
また反応中に連続的に仕込む連続式のどちらでもよく、
また金属珪素および触媒を振動させて反応を行う振動方
式や、振動や物理的な力により金属珪素および触媒を移
動させながら反応を行う移動床方式、あるいは金属珪素
および触媒を固定して反応を行う固定床方式のいずれを
採用してもよい。上記いずれの方式においても、低級ア
ルコールおよびハロゲン化物は気体として反応系に供給
され、その供給は連続して行うのが一般的であるが、断
続的に行うことも出来る。
【0018】本発明の反応温度は100℃〜450℃が
好ましく、特に好ましくは100℃〜300℃である。
100℃未満では反応率の低下につながり、また450
℃を越えると低級アルキルアルコールが金属珪素や触媒
との接触により分解し、触媒の失活につながる恐れがあ
る。
【0019】本発明の反応は減圧で行い、テトラエトキ
シシラン等のテトラアルコキシシランやシリコンの二量
体、三量体等の高沸点生成物の副生成物を系外に円滑に
留出させることにより、反応器内の金属珪素および触媒
を終始乾燥状態に保ち、ガス流のムラを防ぎ、流動化を
円滑にし、反応をより均一で長時間安定して行うことが
出来、珪素転化率やトリアルコキシシランの収率をより
高くすることが出来る。本発明における圧力は、テトラ
アルコキシシラン、その他の高沸点生成物が反応温度に
おいて気化し得る圧力であり、具体的には710mmHg〜
60mmHgであり、好ましくは660〜460mmHgであ
る。710mmHgを超えると高沸点生成物の反応系外への
留出が円滑に行われず、トリアルコキシシランの選択率
が低下、60mmHg未満では低級アルキルアルコールが
希薄となり、反応量が低下して、トリアルコキシシラン
の収量の低下につながる
【0020】反応器の材質としては、石英管、ガラス
管、金属管等を使用することができ、特に限定されるも
のではないが、反応器の構造は低級アルキルアルコール
およびハロゲン化物の導入口、加熱冷却装置、生成物の
出口を具えており、気密構造になっているものが適切で
ある。
【0021】本発明の反応方式による反応生成液は、高
濃度のトリアルコキシシランを含有し、その他にテトラ
アルコキシシランその他の副反応生成物や未反応アルコ
ールを含んでいるが、目的物であるトリアルコキシシラ
ンはこの反応生成液から蒸留その他の常法によって容易
に分離取得することがでる。
【0022】
【実施例】次に、本発明を実施例および比較例を挙げて
説明する。比較 例1 化学的純度98wt%、平均粒径約100μmの金属珪素
3 00g(10.68モル)と、塩化第一銅15gと
を、磁製ポットミルに入れ8時間粉砕混合したものを内
径30mm長さ600mmの石英管に詰めた。この石英管の
入口は、気化器を通して気化した低級アルキルアルコー
ルおよびハロゲン化物を吹き込むための導入管を具えて
おり、出口には冷却器と受器をセットして生成液を受け
るようになっており、排気は大気の逆流を防ぐために流
動パラフィンを充たした洗気瓶を通して大気に開放して
いる。次いで上記反応器内に30ml/min の流量で窒素
ガスを流しながら、反応器を350℃で5時間加熱して
触媒の活性化処理を行った。次に、窒素ガスを止めて反
応器の温度を250℃に保持し、次いで、逆流防止のた
め窒素ガスを20ml/minの流量で流しながら、反応器入
口の導入管から気化したメタノールを50g/hr (1.
56モル/ hr )および塩化メチルを3.5ml/hr
(0.1ミリモル/ hr )の割合で導入して反応させ
た。反応開始後1〜2分して冷却器から生成液が溜出し
始めた。溜出して来る生成液の組成の経時的変化をガス
クロマトグラフィ−により分析し、その組成がアルコー
ル100wt%となった時点を反応終了時とした。反応を
開始してから16時間後に反応は終了し、目的物である
トリメトキシシランを含有する反応生成液を取得した。
取得した全生成液の組成の分析結果およびこれに基づく
トリアルコキシシランの選択率と、珪素転化率を表1に
示す。なお、トリアルコキシシランの選択率および珪素
転化率は下記の式で計算した。 選択率(wt%)=〔(トリアルコキシシランの重量)/
(トリアルコキシシランの重量+テトラアルコキシシラ
ンの重量)〕×100 珪素転化率(wt%)=100−〔(反応残査中の金属珪
素の重量)/(仕込んだ金属珪素の重量)〕×100
【0023】
【表1】
【0024】実施例 排気を減圧調整弁を介してアスピレータにつなぐことに
より、反応系内を任意の減圧度に調整出来るようにした
以外は実施例1と同様の反応器を用い、反応温度を18
0℃とし、アスピレータによって反応器の圧力を660
mmHgとした以外は比較例1と同様にして反応を行った。
反応を開始してから21時間後に反応は終了し、目的物
であるトリメトキシシランを含有する反応生成液を取得
した。取得した全生成液の組成の分析結果およびこれに
基づくトリメトキシシランの選択率と、珪素転化率を表
1に示す。
【0025】比較例 塩化メチルを導入しなかった以外は比較例1と同様にし
て反応を行った。反応開始後、16時間後に反応が終了
した。取得した全生成液の組成の分析結果およびこれに
基づくトリメトキシシランの選択率と、珪素転化率を表
1に示す。
【0026】比較例 塩化メチルを導入しなかった以外は実施例と同様にし
て反応を行った。反応開始後、19時間後に反応が終了
した。取得した全生成液の組成の分析結果およびこれに
基づくトリメトキシシランの選択率と、珪素転化率を表
1に示す。
【0027】比較例4 メタノールに代えて気化したエタノールを50g/hr
(1.09モル/hr )および塩化エチルを2.4ml/hr
(0.1ミリモル/hr )の割合で導入した以外は比較
1と同様にして反応を行った。反応開始後、23時間後
に反応が終了し、目的物であるトリエトキシシランを含
有する反応生成液を取得した。取得した全生成液の組成
の分析結果およびこれに基づくトリエトキシシランの選
択率と、珪素転化率を表1に示す。
【0028】実施例 メタノールに代えて気化したエタノールを50g/hr
(1.09モル)および塩化エチルを2.4ml/hr
(0.1ミリモル)の割合で導入した以外は実施例
同様にして反応を行った。反応開始後、27時間後に反
応が終了し、目的物であるトリエトキシシランを含有す
る反応生成液を取得した。取得した全生成液の組成の分
析結果およびこれに基づくトリエトキシシランの選択率
と、珪素転化率を表1に示す。
【0029】比較例 塩化エチルを導入しなかった以外は比較例4と同様にし
て反応を行った。反応開始後、16時間後に反応が終了
した。取得した全生成液の組成の分析結果およびこれに
基づくトリエトキシシランの選択率と、珪素転化率を表
1に示す。
【0030】比較例 塩化エチルを導入しなかった以外は実施例と同様にし
て反応を行った。反応開始後、31時間後に反応が終了
した。取得した全生成液の組成の分析結果およびこれに
基づくトリエトキシシランの選択率と、珪素転化率を表
1に示す。
【0031】
【発明の効果】本発明は、触媒の存在下、金属珪素と炭
素数1〜4のアルキルアルコールとを反応させてトリア
ルコキシシランを製造する方法において、気相でかつハ
ロゲン化物の存在下に減圧下で反応させることにより、
トリアルコキシシランの選択率が高く、珪素の転化率が
高く、副生物が抑制され、残渣処理や後処理に問題のな
いトリアルコキシシランの製造方法である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07F 7/04 B01J 27/122 C07B 61/00 300 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】触媒の存在下、金属珪素と炭素数1〜4の
    アルキルアルコールとを反応させてトリアルコキシシラ
    ンを製造するに際し、気相でかつ気体状のハロゲン化物
    の存在下に710〜60mmHgの減圧下で反応させること
    を特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
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