JP4092746B2 - アルコキシシランの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコキシシランの製造方法に関し、特に、工業的に安価に得られる汎用の触媒を用いても高い硅素転化率および反応速度が得られる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テトラエトキシシランやトリエトキシシラン等のアルコキシシランは合成石英やセラミックスの原料として、また、半導体や液晶用の絶縁膜や保護膜の原料として、あるいはSi−H官能基を利用したヒドロシリル化反応によるシランカップリング剤や架橋剤の原料として、近年ますます多く使用されている。
アルコキシシランの従来の製造方法としては、金属珪素に塩素や塩酸を反応させてトリクロルシランやテトラクロルシラン等のクロルシラン類を作り、それを更に低級アルコールとエステル化反応させる方法が多く行われてきた。しかし、この方法は本質的に2段階の反応であって複雑であり経済的に有利な方法でなく、エステル化では大量の塩酸が副生するため装置の腐食の問題があり、また、目的物であるアルコキシシランとその塩素置換不純物との沸点が近いため目的物の分離精製が困難である等の問題があった。
【0003】
これに対して、不活性反応溶媒(以下、単に「反応溶媒」と称する。)中で銅系触媒を用いて金属珪素と低級アルコールとを直接反応させる方法が提案された(特開昭63-41919号)。この反応は1段階であり塩酸も副生しないために、経済的で工業的に良好に実施できる方法である。
この方法で用いる反応溶媒のうち、アルキルベンゼンは、沸点が高く、かつ合成洗剤の主原料として大規模に生産されているので、大量に極めて安価に得ることができるという長所があり広く用いられていた。
【0004】
また、銅系触媒のうち、塩化第一銅は最も一般的に用いられるものであるが、その製法には大きく分けて製造工程で水溶液からの晶析を用いる湿式法と、水を用いずに直接金属銅と塩素とを反応させて塩化第一銅を製造する乾式法の2つが知られている。アルコキシシランの合成反応においては、湿式法塩化第一銅を触媒に用いた場合は、乾式法塩化第一銅を用いた場合に比べて珪素転化率や反応速度が高くなることを本発明者等は見出している(特開平6-312993号)。しかし、乾式法塩化第一銅は湿式法に比べて製造工程が単純で大量生産に適するため、大量にかつ安価に得ることができるという長所を持つため、乾式塩化第一銅を用いても湿式塩化第一銅と同程度の珪素転化率や反応速度が得られる方法が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかゝる現状に鑑み、当該アルコキシシランの製造方法において、特定の溶媒を用いることにより、触媒活性化反応を速やかに進行させることができ、工業的に安価で得られる触媒を用いて、高い反応速度と合成収率でアルコキシシランを製造する方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題に対して鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、反応溶媒中、触媒の存在下で金属硅素と炭素数1〜4のアルキルアルコールとを反応させてアルコキシシランを製造する方法において、前記触媒として直鎖アルキルベンゼン中で金属珪素と共に加熱することにより活性化された触媒を用いることを特徴とするアルコキシシランの製造方法である。
【0007】
本発明の具体的方法としては、例えば反応器に直鎖アルキルベンゼン、金属珪素および触媒を仕込み加熱攪拌して触媒を活性化させ、該活性化した触媒を用いて、反応溶媒として直鎖アルキルベンゼンをそのまま使用し低級アルコールを反応器内に吹き込んで金属珪素と反応させ、アルコキシシランを製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において原料の一つとして使用される金属珪素は純度80%以上のものが適しており、形状は粒状が好適である。粒径は平均粒径2mm以下が珪素の転化率および反応速度が高くなるので好ましく、更に好ましくは平均粒径25〜500μm、特に好ましくは平均粒径50〜300μmである。一般的に粉末の金属珪素はそれほど吸湿性が高くはなく、工業的に製造されたものでも吸着水分は3000ppm程度であり本発明に使用するには差し支えないが、適当な方法で乾燥してから使用することもできる。
【0009】
もう一つの原料である炭素数1〜4のアルキルアルコール(以下単に「アルコール」と称する。)におけるアルキル基は、直鎖状あるいは分技状のいずれでも良い。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、 iso−プロパノール、n−ブタノール、 sec−ブタノール、 iso−ブタノール、t−ブタノールが挙げられるが、このうち安価で反応性が高く、生成するアルコキシシランの有用性が高いという理由で炭素数1〜3のアルキルアルコールが好ましく、特に反応性が高いメタノールおよびエタノールが更に好ましい。
【0010】
これらの原料アルコールは、それぞれ単独でも異種のアルコールを混合して用いても良く、混合した場合には、異種のアルコキシ基を持つアルコキシシランが生成する。いずれの場合でも原料アルコールの不純物濃度は5重量%以下である事が好ましく、特に水分は1重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下に抑えたものが良い。アルコール中の水分は蒸留やゼオライト等を浸漬する事によって容易に減少させることができ、こうして水分を減少させたアルコールは当該発明に好ましく用いる事ができる。
【0011】
本発明における触媒としては、銅触媒、亜鉛触媒またはニッケル触媒等の通常用いられる触媒が使用できるが、反応性が優れているとの理由から銅系触媒が好ましい。
具体的には、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化銅、ヨウ化銅、フッ化銅、炭酸銅、硫酸銅、酢酸銅、蓚酸銅、チオシアン酸銅等の銅塩;酸化第一銅、酸化第二銅、水酸化第一銅、水酸化第二銅、シアン化銅、硫化銅等の銅含有無機化合物;メチル銅、エチル銅などの有機銅化合物が挙げられる。その純度は一般的に市販されている工業用薬品程度以上であれば使用できる。
【0012】
これらの触媒の内で塩化第一銅は最も一般的に用いられるものであるが、前述のとおりその製法は乾式法と湿式法の2種類があり、従来は、乾式法で製造されたものは湿式法で製造されたものよりも珪素転化率や反応速度の点で劣るとされていた。しかし、本発明の方法を用いると、乾式法の塩化第一銅でも湿式法と同程度の結果を得ることができることを本発明者等は見出した。
また、上に挙げた触媒の内で、酸化銅、炭酸銅または水酸化第一銅等は、従来は珪素転化率や反応速度の点で塩化第一銅に劣るとされていた。しかし、本発明の方法を用いると、これら触媒を用いる場合でも触媒活性化が速やかに進行し、珪素転化率や反応速度が高くなることも本発明者等は見出した。
【0013】
触媒の形状として、本発明に適するのは粒径が0.1〜50μmの粒度を持つ粉末であり、更に好ましくは0.5〜10μmである。触媒は金属珪素の表面に付着して触媒活性を発現するという機構のため、粒径が大きすぎると比表面積が小さくなり触媒としての効率が悪くなるが、一方であまり小さな粒径のものは固結したり流動性が悪くなり粉体として取扱い難くなる上、アルコキシシランの合成反応が進行するにつれて珪素表面から遊離し易く、遊離した触媒はアルコールの分解等の副反応を起こすので好ましくない。
望みの粒度を持つ珪素や触媒の粉末を得る方法としては、通常の粉砕法および分級法を利用する事ができる。より具体的には、ボールミル、ジェットミル、振動ミル等の粉砕方法や、ふるい、サイクロン等の分級方法が挙げられる。
【0014】
触媒の使用量は、金属珪素100重量部に対して0.5〜50重量部が好ましく、更に好ましくは5〜30重量部である。この範囲外では金属珪素の転化率および反応速度が著しく低くなってしまう恐れがある。
触媒は、金属珪素とは別個に活性化反応用反応器に供給するのが一般的であるが、予め金属珪素と混合しても、あるいは金属珪素を担持させた触媒を供給してもよい。
【0015】
本発明で用いる触媒は、直鎖アルキルベンゼンを溶媒(以下「活性化反応溶媒」と称する。)として用い、該溶媒中で金属硅素と共に加熱することにより活性化されたものである。
該活性化反応における加熱温度は、100〜350℃が好ましい。100℃未満では活性化するのに時間を要し効率的とは言えず、一方350℃を超える高温では、使用する活性化反応溶媒の蒸発が激しくなり過ぎるため、オートクレーブを使用するなど不経済な方法を取る必要が発生する。より好ましくは150℃から300℃である。
【0016】
触媒の活性化時間は、短かすぎては活性化が不十分になるので好ましくないが、必要以上に長く行なっても活性化度は頭打ちになってしまうので無駄であり、不経済となる。好ましい活性化時間は金属珪素と触媒の粒度、組成、反応温度等により大きく異なるが、前記の主として経済的な理由から、10分〜48時間が好ましく、より好ましくは、1時間〜24時間である。触媒活性化が十分に完結したことは、下記のような分析により触媒活性化度を求めることで知ることができる。
【0017】
触媒として塩化銅を用いる場合の触媒活性化反応では、硅素−銅の間に化学結合を生じて触媒活性中心を生じ、同時に四塩化硅素が副生して、ガスとして脱離してくることが知られている。塩化銅以外の触媒を用いる場合でも、触媒活性化反応では硅素−触媒金属の結合ができるために、それまで触媒金属と化合物を作っていた置換基は、金属硅素と反応するか、あるいは分解し、あるいはそのままの形で分離して副生物となる。該副生物が揮発性の場合はガスとして脱離してくるので、反応器内に流通または充填した不活性ガスを採取してガスクロマト法により、あるいはガスを水に抽出して中和滴定法、イオンクロマト法等の分析方法で分析することにより、活性化度100%の場合の理論的副生物量と比較することにより該触媒の活性度を定量的に測定することができる。
【0018】
より具体的には、塩化第一銅および塩化第二銅では、前記副生物として四塩化硅素ガスが発生し、フッ化銅では四フッ化硅素ガスが発生する。いずれも水には非常によく吸収されて塩酸やフッ酸を生じるので中和滴定により発生量すなわち触媒活性化反応の進行度を算出することができる。炭酸銅からは炭酸ガスが、水酸化第一銅および水酸化第二銅では水蒸気が発生するので、ガスクロマト法を用いて定量的に測定することにより触媒活性化度を算出できる。酢酸銅、メチル銅およびエチル銅等からは置換基に対応する酢酸、メタン、エタンの他に分解生成物が発生するので、ガスクロマト法による副生ガスの測定結果から触媒活性化度を定量的に求めることが可能である。
【0019】
触媒活性化反応の副生物に揮発性がない場合でも、活性化反応溶媒中に溶出してくる副生物をガスクロマト法等の方法で分析すれば良く、更に、副生物が固体で活性化反応溶媒に溶出しない場合には、金属珪素−触媒混合物を粉末X線回折装置で分析して副生物の生成量を測定する事により触媒活性化度を求める事ができる。
【0020】
本発明で用いる触媒の好ましい活性化度は、金属珪素および触媒の配合比によって異なるが、例えば金属珪素:触媒=10:1(重量比)の場合は、触媒の活性化度は10%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明は、前述のとおり活性化反応溶媒として、直鎖アルキルベンゼンを用いることを特徴とするものである。アルキルベンゼンには、アルキル基に多数の枝分かれ異性体を有するタイプと、アルキル基に枝分かれのないタイプの2種類があることは広く知られており、一般的に前者は、分岐アルキルベンゼンまたはハード型アルキルベンゼン、後者は直鎖アルキルベンゼンまたはソフト型アルキルベンゼンと呼ばれている。分岐アルキルベンゼンと直鎖アルキルベンゼンとでは、融点、沸点、粘度等の物理的性質や生分解性等に差があることは知られていたが、アルコキシシラン合成のための触媒の活性化反応溶媒として用いるときに分岐アルキルベンゼンと直鎖アルキルベンゼンとで結果に差があることはいまだかって知られてはいなかった。
【0022】
しかし当該触媒活性化反応の進行度を測定してみると、直鎖アルキルベンゼンを用いたときは分岐アルキルベンゼンに比べて著しく速く進み、特に従来アルコキシシランの合成反応で珪素転化率や反応速度が劣るとされていた乾式法塩化第一銅や酸化銅、炭酸銅、水酸化銅等の触媒の活性化反応では著しい差が生じ、常識的な時間の活性化反応を行った触媒を用いたアルコキシシラン合成反応の結果では分岐アルキルベンゼンを活性化反応溶媒として用いた場合よりも珪素転化率、反応速度共に格段に良くなった。
【0023】
触媒活性化反応に続く、触媒の存在下で金属硅素と炭素数1〜4のアルキルアルコールとを反応させてアルコキシシランを製造するアルコキシシラン合成反応で使用する反応溶媒としては、該反応に不活性でかつ比較的高沸点のものであれば使用可能であるが、触媒活性化反応で用いた活性化反応溶媒をそのまま使用すれば、反応器中の溶媒を入れ替える必要がなく、操作が簡略化され経済的で好ましい。
【0024】
直鎖アルキルベンゼンの工業的な製法としては、石油留分や石油ワックスを熱分解したものとベンゼンとを反応させる方法が一般的であり、できたアルキルベンゼンはアルキル鎖長が様々な分子の混合物である。このことからその沸点範囲も比較的広くなるため、製品規格としては沸点として単一の温度を示す代わりに、蒸留試験を行ったときの留出温度と留出量との関係を示すことが多い。
当該発明に用いられるアルキルベンゼンの好ましい沸点範囲としては、触媒活性化やアルコキシシラン合成を行う温度では蒸発分が少ないのが良いが、あまり沸点が高い物は粘度が高すぎるので好ましくない。好ましい沸点範囲として、常圧下で蒸留試験を行ったときに重量で50%が蒸留される温度を沸点と考えると、該沸点が300〜400℃の間になるものである。
300℃未満では、触媒活性化時の溶媒蒸発量が多くなるため、還流冷却装置等が必要になり、経済的に好ましくなく、また製品と沸点が近くなるので、製品の不純物として混入する可能性が高くなる。一方、400℃を超えると、アルキル鎖がかなり長いため、アルキル鎖の切断が起き易くなって化学的に不安定になる上、粘度が高くなったり固化したりして工業的に取扱い難くなる。
【0025】
直鎖アルキルベンゼンの具体的な例としては、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ドデシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼンまたはペンタデシルベンゼン等であり、これらの内の一種でも多種類の混合物でも同じ様に使用できる。
【0026】
触媒の活性化反応溶媒としては、主成分として直鎖アルキルベンゼンを用い、副成分として不活性で沸点があまり低すぎない溶媒を併用できる。その場合の直鎖アルキルベンゼンの使用量は、使用する溶媒中の60重量%以上であればよい。
副成分として混合できる溶媒の具体例としては、分枝型ドデシルベンゼン等のハード型アルキルベンゼンや、シクロオクタデカン、シクロノナデカン、シクロエイコサン等の脂肪族系炭化水素、ジフェニル、ジフェニルエーテル、モノエチルジフェニル、ジエチルジフェニル、トリエチルジフェニル等のジフェニル系炭化水素またはその水素化物、アルキルナフタレン系炭化水素またはその水素化物、トリフェニル系炭化水素またはその水素化物等が挙げられる。
【0027】
触媒の活性化反応およびアルコキシシラン合成反応における溶媒の使用量としては、金属硅素や触媒粉末を分散させて流動化させるだけの量があればよく、多くすれば反応熱の除去が容易になる効果はあるもののあまり多く使用する事は経済的でないため、好ましくは金属硅素100重量部に対して80〜400重量部である。
【0028】
アルコキシシラン合成反応におけるアルコールの反応系への供給速度は、あまり高くすると生成物中の未反応アルコール濃度が高くなりすぎるし、一方あまり低すぎると反応器容量当たりおよび時間当たりのアルコキシシランの生成速度が小さくなるため反応に長時間かかる事になり経済的に好ましくない。
また、適量の未反応アルコールが生成物に含まれる事は、反応液中で気泡となって反応液中の高沸点生成物を遅滞無く系外に送り出す働きもある。このため、アルコールの供給速度を低くし過ぎると、反応時間が長くなる他に、生成物が反応液中に滞留して副反応を起こし易くなり、生成するアルコキシシランのうち、より有用なトリ体(トリアルコキシシラン)の選択率を下げたり、珪素転化率を下げるなどの悪影響がある。
アルコールの反応系への好ましい供給速度は、金属珪素1モルに対してアルコール10〜1000ミリモル/時間であり、更に好ましくは50〜500ミリモル/時間である。未反応アルコールは蒸留等の一般的な方法で回収し再利用する事ができる。
【0029】
アルコキシシラン合成反応の反応温度は、高い方が反応速度が上がるが、高過ぎるとアルコールの分解反応に伴う副反応により、触媒が失活する恐れがあり、また、低過ぎると生成するアルコキシシランのうち、より有用なトリアルコキシシランの選択率が高くなるが、低過ぎると反応速度が低くなりすぎて効率が悪くなる。好ましい反応温度は100℃〜250℃で、更に好ましくは160〜220℃である。
【0030】
反応器は金属珪素が良好な分散状態に保たれれば形状は問わない。反応器の外部に冷却または加熱用外部ジャケットを備えていても良く、また、伝熱を良くするために反応器内部にフィン、コイル等を備えた物でも良い。通常、反応器は反応原料である珪素原料およびアルコールを供給する管、生成したアルコキシシランを主成分とし、その他の副生した珪素化合物や未反応アルコールを含有する反応液の排出する管、並びに反応後の残査の排出口を備えている。また、反応器の材質としては、石英、ガラスまたは金属等が挙げられる。
【0031】
アルコキシシラン合成反応において反応溶媒中で金属珪素と低級アルコールを直接反応させる際は、反応混合物が発泡を起こし易く、フルオロシリコーンポリマーを添加することにより反応混合物の発泡を抑制する事ができる。フルオロシリコーンポリマーとしてはポリアルキルフルオロアルキルシロキサン類が好ましく、その添加量としてはあまり少なすぎては効果がなく、またあまり多すぎると経済的でないことから、当該反応に用いる反応溶媒の100重量部に対して0.003〜0.5重量部、更に好ましくは0.01〜0.2重量部である。反応溶媒をリサイクルして用いる場合には、再度添加する必要はないが少量を追添加してもよい。
【0032】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明におけるトリアルコキシシランの選択率および金属珪素の転化率は下記の式で算出される値である。
・トリアルコキシシラン選択率(モル%)=[(トリアルコキシシランのモル数)/(トリアルコキシシランのモル数+テトラアルコキシシランのモル数)]×100
・金属珪素転化率(重量%)=100−[(反応残査中の金属珪素の重量)/(仕込んだ金属珪素の重量)×100]
【0033】
(実施例1)
窒素とアルコ−ルの導入管、反応液温度計、攪拌器、反応生成物の出口管および反応生成物の冷却器と受器を備えたガラス製の1リットルフラスコに活性化反応溶媒兼反応溶媒として直鎖アルキルベンゼン(直鎖C12H25・C6 H5 を主成分とし、常圧下の蒸留試験で50重量%が蒸留される温度が366℃)600ml、金属珪素(純度98%、平均粒径100μm)300g、乾式法で製造された塩化第一銅(平均粒径0.7μm)25gとを仕込んだ。次いで反応液に窒素を供給しながら(300ml/分)攪拌混合下、250℃で触媒の活性化処理を行った。この時、反応器を流通した窒素を100mlの蒸留水に通して触媒活性化反応で発生する四塩化硅素を吸収させた。
この吸収液を0.1規定の水酸化ナトリウム液でフェノールフタレインを指示薬として中和滴定した結果から、経過時間毎に発生した四塩化硅素量を算出し、仕込んだ塩化銅に含まれる塩素量に対する収率を算出したところ、触媒活性化時間−触媒活性化率に関して図1の曲線が得られた。この図の結果から、250℃での触媒活性化時間は曲線が頭打ちになる3時間が最低限必要であると判断された。
【0034】
こうして触媒活性化反応の条件を定め、250℃で3時間触媒活性化を行った反応液を200℃にしてから、消泡剤として、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンを0.1g反応液に添加した。そして、エタノール(純度99%)を反応液中に120g/時で供給して金属珪素と反応させた。
エタノールの供給を開始してから5分後に生成物出口の冷却器から受器に生成液が流下し始めた。この生成液の組成をガスクロマトグラフ法により分析してその組成の経時変化を観察し、生成液のエタノール組成が100%になった時点で反応終了とみなした。そして受器に溜まった生成液をガスクロマトグラフ法により分析し、生成物の生成量を求めた結果からトリアルコキシシランの選択率および珪素転化率を算出した。これらの結果は表1に示す。
【0035】
(実施例2)
実施例1と同じ条件で、乾式の塩化第一銅を用い実施例1に基づいて250℃で3時間触媒活性化を行った反応液を用い、低級アルコールとしてメタノールを使用する以外はすべて実施例1と同じ実験を行った。その結果を表1に示す。エタノールを使用した実施例1の結果に比べて若干金属珪素転化率が向上し、逆にトリ体の選択率が低下したが、これは金属珪素からトリ体ができる主反応と、トリ体がテトラ体に変わる副反応の両方でエタノールよりもメタノールの方が反応性が高いためであると思われる。
【0036】
(比較例1)
活性化反応溶媒兼反応溶媒として分岐アルキルベンゼン(分岐C12H25・C6 H5 を主成分とし、常圧下の蒸留試験で50重量%が蒸留される温度が356℃)を使用して、実施例1と同じく乾式の塩化第一銅を用いて250℃で触媒活性化処理を行い、触媒活性化反応で発生した四塩化硅素量を測定し、実施例1と同様に触媒活性化時間−触媒活性化率に関して図2の曲線が得られた。分岐アルキルベンゼンを使用した場合、触媒活性化反応が著しく遅いため、実施例1で3時間触媒活性化反応を行ったのと同レベルまで触媒活性化を進めるためには14時間と実に5倍近い時間が必要な事が判った。実施例1と条件を同じにするため、触媒活性化は3時間で止めたものに消泡剤を加え、エタノールを供給してアルコキシシランの合成を行ったところ表1の結果になった。この結果は、直鎖アルキルベンゼンを使用した実施例1、2に比べて、金属珪素転化率が著しく低くなることを示している。
【0037】
【表1】
*1:アルコールに対応するトリアルコキシシラン
*2:アルコールに対応するテトラアルコキシシラン
*3:主にジアルコキシシラン
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、反応溶媒を用いてアルコキシシランを合成する反応において、短時間に触媒活性化反応を完結させることができ、比較的活性の低い触媒を用いても、高い珪素転化率および反応速度でアルコキシシランを製造する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の触媒活性化反応における、活性化時間−活性化率を示したグラフ
【図2】 比較例1の触媒活性化反応における、活性化時間−活性化率を示したグラフ
Claims (1)
- 不活性反応溶媒中、触媒の存在下で金属硅素と炭素数1〜4のアルキルアルコールとを反応させてアルコキシシランを製造する方法において、前記触媒が直鎖ドデシルベンゼン中で金属硅素と共に1時間〜24時間加熱することにより活性化度10%以上に活性化された乾式塩化第一銅触媒であることを特徴とするアルコキシシランの製造方法。
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