JP2008066145A - 電池用電極基板、電池用電極、及びそれを用いたアルカリ二次電池 - Google Patents

電池用電極基板、電池用電極、及びそれを用いたアルカリ二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的強度や柔軟性に優れるとともに、正極活物質の充填密度を高くすることが可能であり、その結果、電池の高容量化を達成できる電池用電極基板、この電池用電極基板より形成される電池用電極、及び該電池用電極を用いたアルカリ二次電池を提供する。
【解決手段】織布又は不織布、及びこれらを構成する繊維を被覆するニッケルからなる電池用電極基板であって、前記織布又は不織布の目付量が15g/m以上、60g/m以下であり、かつ前記織布又は不織布の厚さが1.3mm以上、3.0mm以下であることを特徴とする電池用電極基板、この電池用電極基板より形成される電池用電極、及び該電池用電極を用いたアルカリ二次電池。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アルカリ二次電池の正極等に用いられる電池用電極基板、該電池用電極基板より形成される電池用電極、及び該電池用電極を用いたアルカリ二次電池に関する。
近年、ハイブリッド自動車や電動工具等の高出力が必要な機器での、アルカリ二次電池の使用が増加してきており、その高容量化が強く望まれている。このアルカリ二次電池の正極として広く使用されている水酸化ニッケル電極は、電池反応を生起させるための正極活物質を電池用電極基板に担持させた構造を有する。
この電池用電極基板としては、ニッケル粉末を焼結した焼結ニッケル板や、パンチングニッケル板等が広く用いられてきた。しかし、この電池用電極基板では活物質の充填密度を高めることは困難であり、その結果電池の容量を高くすることができないとの問題があった。
そこで、活物質の充填密度を高めることができる電池用電極基板として、空隙率が大きい三次元網状構造体からなる電池用電極基板が考えられている。例えば、発泡状ウレタン樹脂や不織布等の多孔質網状構造体にニッケルメッキを施し、その後還元性雰囲気下でウレタンや不織布繊維を焼成、除去して得られる三次元発泡状ニッケルが用いられている。
しかし、この三次元発泡状ニッケルは機械的強度が小さくかつ柔軟性に乏しい。その結果、活物質合成ペーストを電池用電極基板の表面から圧入して活物質を充填する際に、充填密度を高めるために圧入の圧力を高めると網状構造体の折損等を生じ、一方圧力が低いと高い充填密度が得られないとの問題があった。そこでこの問題を解決するために、不織布と、この不織布を構成する繊維上に形成されたニッケルメッキ膜とを備えた電池用電極基板が、特開2001−313038号公報(特許文献1)、特開2003−109600号公報(特許文献2)、特開2005−347177号公報(特許文献3)等に提案されている。
特開2001−313038号公報 特開2003−109600号公報 特開2005−347177号公報
しかし、特許文献1〜3に記載された電池用電極基板でも、活物質の充填密度をなお充分に高めることは困難であり、その結果、電池のより高容量化を図ることが困難であるという問題があった。
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、機械的強度や柔軟性に優れるとともに、活物質の充填密度を高くすることが可能であり、その結果、電池の高容量化を達成できる電池用電極基板を提供することを目的とする。本発明は、さらにこの電池用電極基板より形成される電池用電極、及び該電池用電極を用いたアルカリ二次電池を提供する。
本発明者は、上記課題につき鋭意検討の結果、不織布等の布及びこの布を構成する繊維上に形成されたニッケルメッキ膜よりなる電池用電極基板であって、前記布の目付量を特定の範囲とし、かつ電池用電極基板の厚さを特定の範囲とすることにより、三次元発泡状ニッケルに匹敵する空隙率を有し、充分な量の活物質を充填でき、電池の高容量化を達成できるとともに、優れた機械的強度や柔軟性を有する電池用電極基板が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、その請求項1として、織布又は不織布、及びこれらを構成する繊維を被覆するニッケルからなる電池用電極基板であって、前記織布又は不織布の目付量が15g/m以上、60g/m以下であり、かつ前記織布又は不織布の厚さが1.3mm以上、3.0mm以下であることを特徴とする電池用電極基板を提供する。
本発明に使用する織布又は不織布は、その目付量が15g/m以上、60g/m以下であり、かつその厚さが1.3mm以上、3.0mm以下であることを特徴とする。厚さが1.3〜3.0mmの範囲で目付量が60g/m以下であるので、この織布又は不織布の空隙率は高く、これを用いることにより発泡ニッケル並みの空隙率を有する電池用電極基板を得ることができる。そして、空隙率が高いとともに厚さが1.3mm以上であるので、高容量化を達成するために充分な量の活物質を充填することが可能となる。すなわちこの電池用電極基板を用いることにより、電池の高容量化が可能になる。
一方、厚さが1.3〜3.0mmの範囲で15g/m以上の目付量を有するので、織布又は不織布としての充分な強度を有し、優れた機械的強度や柔軟性を有する電池用電極基板が得られる。
織布又は不織布を構成する繊維は、耐アルカリ性の繊維であれば特に限定されないが、ポリオレフィン系繊維やポリアミド樹脂系繊維が好ましい例として挙げられる。これらの繊維は、すでに電池のセパレーターとして使用されている実績があり、20〜35重量%KOH水溶液と接触しても繊維が溶解しないため物性の変化がなく、耐アルカリ性に優れるとともに安価であり汎用性が高いものである。
ポリオレフィン系繊維を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー等が挙げられる。ポリオレフィン系繊維としては、これらの樹脂の一種からなるもの又は2種以上からなる複合繊維を挙げることができる。ポリアミド樹脂系繊維を構成する樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6とナイロン12との共重合体等が挙げられる。ポリアミド樹脂系繊維としては、これらの樹脂の一種からなるもの又は2種以上からなる複合繊維を挙げることができる。
織布又は不織布がポリオレフィン系繊維からなる場合、前記の例示の中でも、耐アルカリ性及び耐酸性に優れるポリエチレン又はポリプロピレンからなる繊維、又はポリエチレン及びポリプロピレンを組合せた複合繊維が好ましい(請求項2)。
特に、ポリプロピレンからなる芯の周囲をポリエチレンからなる鞘で覆った芯鞘型複合繊維は、耐アルカリ性と強度特性を同時に満たすことができるので好適である。この場合、ポリプロピレン/ポリエチレンの比が高い程繊維の弾力が向上する。特に、ポリプロピレンのポリエチレンに対する重量比を0.25以上とすると、厚さを保ったまま目付量を減少することができるので好ましい。請求項3はこの好ましい態様に該当する。
不織布を形成するためには、ポリプロピレン/ポリエチレン比(重量比)は95/5が好ましい。
さらに不織布を使用する場合、繊度が1.0〜30dTexくらいまでの繊維を用いることができるが、繊維の繊度が大きいほど繊維の弾力が増加するので好ましく、特に1.5dTex以上であることが好ましい(請求項4)。繊度を1.5dTex以上とすることにより、電池用電極基板の厚さを保ったままで目付量を減少させることができる。ただし、繊度が大きすぎると不織布の形成が困難になるので、通常繊度は10dTex以下である。
不織布は、例えば、不織布を構成する繊維のウエブを形成した後、繊維同士を結合することにより製造することができる。繊維のウエブは、カード法やエアレイ法、又は紡糸状態から連続的にシート化するメルトブロー法やスパンボンド法のような乾式法、或いは繊維を水に分散し、それを抄きとる湿式法等により製造することができる。中でも乾式法による作成が、繊維の目付量をより減らすことができるので好ましい(請求項5)。
繊維同士の結合方法としては、非常に細かい高圧の水ジェットを衝撃的に与える水流交絡処理、ニードルパンチによる交絡処理、繊維をその軟化点以上、熱分解温度未満に加熱して、繊維を互いの接触点で局部的に融着させる熱処理等の方法を例示できる。前記交絡処理及び熱処理の一方のみでもよいが、交絡処理を行った後に熱処理を行うと、得られる不織布の強度特性が向上するので好適である。又、前記交絡処理及び熱処理により、空隙率を適正な値に調整することもできる。なお、繊維としてポリプロピレンの周囲がポリエチレンで覆われている前記の芯鞘型複合繊維を用いた場合、熱処理の温度は110〜140℃であることが好ましい。
織布又は不織布とニッケルの被覆層との密着度を向上するために、繊維表面の親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、フッ素処理、コロナ放電処理、スルホン化処理、ビニルモノマーのグラフト重合、親水性樹脂による処理、又は界面活性剤処理等を挙げることができる。
本発明の電池用電極基板は、前記織布又は不織布を構成する繊維表面にニッケルを被覆することにより、得ることができる。被覆の方法としては、無電解メッキやスパッタリング法により織布又は不織布の繊維の表面にニッケルの層を形成し表面を導電化した後電解メッキを行う方法等が挙げられる。
スパッタリングや無電解メッキは、一般的なスパッタリングや無電解メッキと同様な条件により行うことができる。例えば、無電解メッキは、織布又は不織布を触媒付与槽に浸漬して触媒付与を行い、次いでメッキ槽へ浸漬してメッキする(無電解メッキ工程)方法により行うことができる。触媒付与は、例えば、塩化第一錫の塩酸水溶液で織布又は不織布を処理した後に塩化パラジウムの塩酸水溶液で触媒化する方法により行うことができる。無電解メッキ工程は、例えば、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩を含有する水溶液に織布又は不織布を浸し、ニッケルをヒドラジン誘導体等の還元剤にて還元する方法により行うことができる。
電解メッキは、例えば、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴等のメッキ浴を用いて行われる。前記の無電解メッキやスパッタリングにより繊維の表面が導電化された織布又は不織布をメッキ浴に浸し、織布又は不織布を陰極に、ニッケル対極板を陽極に接続して直流或いはパルス断続電流を通電させることにより、無電解メッキやスパッタリングにより形成されたニッケル層上に、さらにニッケルの被覆を形成することができる。
ニッケルの目付量としては、20g/m〜350g/mの範囲が好ましい(請求項6)。ここで、ニッケルの目付量とは、無電解メッキやスパッタリング、電解メッキ等により被覆されるニッケルの重量(g)を電池用電極基板の面積で除したものであり、電池用電極基板の単位面積当たりのニッケル被覆量を意味する。ニッケルの目付量が20g未満であると、この電池用電極基板の電気伝導度が低下してこれを用いて製造された電極の集電特性が低下する傾向がある。集電特性が低下すると利用率が低下しやすくなり、特に電池の放電時の電流率が高い場合(ハイレート放電)この問題が顕著である。又、ニッケル量の目付量を20g/m以上とすることにより、繊維量に対するニッケル量が多くなるので、得られた電池用電極基板は溶接性に優れこの点でも好ましい。
電池用電極基板の電気伝導度はニッケル量の目付量が増大する程向上する傾向があるが、350g/mを越えると電池用電極基板の空隙率が低下し、活物質の充填量を充分にすることが困難になり電池が高容量化しにくくなる傾向がある。又、不織布の目付量が15g/m以上、60g/m以下の場合は、350g/mを越えてニッケル量の目付量を増大しても電気伝導度は向上しないのでコストメリットの点からも350g/m以下が好ましい。
前記のようにしてニッケルを被覆した後、好ましくは、織布又は不織布の調厚が行われる。調厚は、ローラープレス等を用いて織布又は不織布を圧縮することにより行われる。調厚により、表面が平滑化されるとともに、厚さや空隙率が調整される。このようにして、厚さと空隙率を調整することができるので、活物質の充填量のばらつきを低減できるとともに、さまざまな容量の電極に対応することが可能となる。従って、調厚の程度の目安は、織布や不織布の厚さや空隙率、電極基板の所望の厚さや空隙率により変動し、さらに活物質の充填に用いられる活物質ペーストの水分量等により変動し、特に限定されない。
調厚後の空隙率は、95%以上、98%以下の範囲が好ましい。この範囲とすることにより、優れた機械的強度が得られるとともに、活物質の充填が容易になり、高い充填密度を得ることができる。又、調厚は、調厚後の空隙率をこの範囲とするような条件で行うことが好ましい。
本発明は、前記の電池用電極基板に加えて、この電池用電極基板に、活物質を充填してなることを特徴とする電池用電極を提供する(請求項7)。
活物質としては水酸化ニッケルを主体とするものを用いることができるが、この活物質は、主成分の水酸化ニッケルの他に、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、一酸化コバルト、水酸化亜鉛等の他の成分を含むものでもよい。活物質の充填は、水酸化ニッケルを主体とする成分を含むペーストに、前記のようにして調厚した電池用電極基板を浸漬して圧力を加え、電池用電極基板の表面よりペーストを圧入する方法や、該ペーストを電池用電極基板の表面に吹き付ける方法等により行うことができる。このようにして、電池用電極基板の空隙に活物質を含むペーストを充填した後、通常、乾燥及びロール圧延を行い、電池用電極(正極)を得ることができる。この電池用電極(正極)には、さらに必要により、集電用外部端子が設けられる。
電池用電極の製造において、電池用電極基板は、切り揃え等により電池用電極の形状とされるが、この工程は、ペーストの圧入前に行ってもよく、乾燥及びロール圧延後に行ってもよく、両方において行ってもよい。
ロール圧延はローラープレス等を用いて行われる。ロール圧延により電池用電極はさらに所定の厚さに圧縮されて平滑化した電極平面を有する電池用電極を得ることができる。
本発明は、さらに、この電池用電極を用いることを特徴とするアルカリ二次電池を提供する(請求項8)。
本発明のアルカリ二次電池は、前記の電池用電極からなる正極、負極及びセパレーターよりなる発電体、並びに電解質を、電池容器に密封して形成することができる。
負極、電解質や電池容器としては、従来のアルカリ二次電池に使用されているものと同様なものを用いることができる。例えば、負極としては、水素を含んだ水素吸蔵合金を用いた電極が例示され、電解質としては水酸化カリウム水溶液を例示することができる。セパレーターは、負極と正極間の短絡を防止しかつ電解質を保持するものであるが、このセパレーターとしても、従来のアルカリ二次電池に使用されているものと同様なもの、例えば、親水化処理したポリオレフィン繊維製の不織布を用いることができる。
本発明のアルカリ二次電池の構造も、従来のアルカリ二次電池と同様なものとすることができる。例えば、前記の正極、負極及びセパレーターを帯状の形状とし、これらを重ね合わせた後、ロール状に捲回してロール状の発電体を形成し、このロール状の発電体を円筒状の電池容器に収納した構造を挙げることができる。角柱状の電池容器を用い、正極、負極及びセパレーターを重ね合わせた帯を、電池容器の断面形状に適合するように捲回した発電体からなるもの、角柱状の電池容器を用い、正極、負極及びセパレーターを重ね合わせた帯を蛇腹状に重ね合わせた発電体からなるものも、例示することができる。本発明の電池用電極基板は、機械的強度や柔軟性に優れるので、捲回や蛇腹状の重ね合せの際に破損して電池の特性を低下する問題が生じにくい。
本発明の電池用電極基板は、機械的強度や柔軟性に優れるとともに、活物質の充填密度を高くすることが可能であり、その結果電池の高容量化を達成できる。従って、この電池用電極基板より形成される本発明の電池用電極は、電池の高容量化を可能とするものであり、この電池用電極を用いた本発明のアルカリ二次電池は、ハイブリッド自動車や電動工具等の高出力が必要な機器に、好適に用いられる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明するが、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜3)(比較例1〜3)
〈不織布の作成〉
芯成分がポリプロピレン(PP)、鞘成分がポリエチレン(PE)からなり、かつ、そのPP/PE比が3/7である芯鞘型複合繊維(繊度6.6dTex)を用い、乾式スパンレース法により、表1に示す目付量の不織布を作成した。なお、繊維目付量を10g/mまで下げると、安定して不織布を作成することができなかった。
〈電池用電極基板の作成〉
得られた各不織布を構成する繊維上に、スパッタリング法にてニッケルを8g/m付け不織布に導電性を付与した後、電気ニッケルメッキによりニッケルの総目付量が200g/mになるようにニッケルを繊維上に被覆して、電池用電極基板(調厚前)を作成した。電気ニッケルメッキは、前記の導電性を付与した不織布を、キャリアーに巻き付け、硫酸ニッケル330g/L、塩化ニッケル50g/L、硼酸40g/Lを主成分として含むワット浴中に送り込む方法により行なった。
この電池用電極基板を、その厚さが1.5mmとなるようにローラープレスにて調厚した。ニッケルめっき後の調厚前及び調厚後の各不織布の厚さ及び空隙率を表1に示す。なお、空隙率は、不織布の見かけ体積及び繊維量、被覆されたニッケルの総量を測定し、次の式により求めた。
空隙率(%)=[{見かけ体積−(繊維量/繊維密度)−(ニッケル量/ニッケル密度)}/見かけ体積]×100
〈電池用電極の作成〉
次いで、調厚後の各電池用電極基板に、主たる成分として水酸化ニッケル92重量%及び水酸化コバルト2重量%を含む、ペースト状のニッケル水素電池用の正極活物質合材を充填した。充填は、活物質合剤ペーストを基材に圧入する方法で、ローラープレスを用いた圧縮後の厚さが0.7mmとなり、電極の容量密度が750mAh/ccとなることを目安に行った。ただし実際には、比較例においては、容量密度が750mAh/ccとすることはできず、低い容量密度しか得られなかった。又、比較例1、2では、厚さ0.7mmまで圧縮することができなかった。充填後に基材表面に付着している余分なペーストをそぎ落とし電極表面を平滑化して乾燥させ、その後ローラープレスを用いて圧縮しニッケル水素電池用正極を作成した。この電極の詳細を表1に示す。
〈アルカリ二次電池の作製、容量密度〉
前記のようにして得られたニッケル水素電池用正極、第1セパレーター、公知の水素吸蔵合金負極、及び第2セパレーターを同形状の帯状とし、これらを前記の順序で積層したものをロール状に捲回してロール状発電体を得た。このロール状発電体、及び30wt%の水酸化カリウム水溶液に30g/lの水酸化リチウムを溶解してなる負極活物質(電解液)を、円筒状の電池容器に密封してアルカリ二次電池を得た。なお、得られたアルカリ二次電池の容量密度を表1に示す。容量密度は、正極活物質合材の充填前後の重量差から水酸化ニッケル(289mAh/g)の充填量を求め、この充填量から得られる電池容量と電池の体積から計算された値である。
Figure 2008066145
表1から、実施例1〜3では、所望の厚さ(0.7mm)及び容量密度(750mAh/cc)を有する電極が作成できたことが分かる。しかし、比較例1、2では、所望の容量密度(750mAh/cc)が得られず、容量密度が低いものしか得られなかった。さらに、ローラープレスを用いて0.7mmの厚さまで圧縮することはできず、0.8mmを越える厚さの電極しか得られなかった。
これは、不織布の繊維目付量が大きいためその空隙率が小さく、充分な活物質を充填するために必要な空隙や、加圧により圧縮可能な空隙がなかったことが原因と推測される。さらに、得られた電極(正極)が厚いので、正極、セパレーター及び負極の積層体の捲回数が減り、電池としての容量が小さくなったことも原因と考えられる。
また、比較例3でも、所望の容量密度(750mAh/cc)が得られず、容量密度が低いものしか得られなかった。比較例3では、不織布の繊維目付量は小さいが厚さも小さいので、不織布の空隙率は実施例の場合に比べて小さく、容量密度が小さくなったと考えられる。さらに、電極(正極)の厚さは0.6mmと小さく、その分捲回数は増すが、一方、正極、セパレーター及び負極全体の中の正極の厚さの割合が減り、その結果、電池内に占める正極の割合は低くなるので、電池の容量が小さくなったことが原因と考えられる。
〈電極の放電容量の測定〉
前記の実施例1〜3で作製されたアルカリ二次電池について、化成処理として初期の充放電を数回行った後、表2に示す電流率で充電/放電を行って利用率を調べた。表2中のC/Dレートとは、それぞれ充電(C)及び放電(D)の電流率を表し、具体的には、電池の容量に相当する電気量を1時間で充電又は放電するときの電流に対する、充電(C)及び放電(D)の電流の比を表す。又、利用率とは、計算容量(容量密度×電池の内容積)に対する実際に放電された電気量の比を%表示したものである。なお、充電は電池容量の120%まで、放電終止電圧は0.8Vとした。利用率(%)の測定結果を表2に示す。
Figure 2008066145
表2から、いずれの電極も高い利用率を示し、特に、放電(D)レートが1.0の場合であっても90%を越える利用率を示した。いわゆるハイレート充放電でも高い利用率を示す優れた電極であることが示されている。


Claims (8)

  1. 織布又は不織布、及びこれらを構成する繊維を被覆するニッケルからなる電池用電極基板であって、前記織布又は不織布の目付量が15g/m以上、60g/m以下であり、かつ前記織布又は不織布の厚さが1.3mm以上、3.0mm以下であることを特徴とする電池用電極基板。
  2. 前記織布又は不織布を構成する繊維が、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる樹脂、又はポリエチレン及びポリプロピレンの複合樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電池用電極基板。
  3. 前記織布又は不織布を構成する繊維が、ポリプロピレンの周囲をポリエチレンで覆った芯鞘型複合繊維であり、そのポリプロピレンのポリエチレンに対する重量比が0.25以上であることを特徴とする請求項2に記載の電池用電極基板。
  4. 前記織布又は不織布が、繊度1.5dTex以上の繊維から構成される不織布であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電池用電極基板。
  5. 前記織布又は不織布が、乾式法で作成された不織布であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電池用電極基板。
  6. ニッケルの目付量が、20g/m以上、350g/m以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電池用電極基板。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電池用電極基板に、活物質を充填してなることを特徴とする電池用電極。
  8. 請求項7に記載の電池用電極を用いることを特徴とするアルカリ二次電池。
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