JP2020087554A - 亜鉛電池用電解液及び亜鉛電池 - Google Patents

亜鉛電池用電解液及び亜鉛電池 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた高率放電性能を有し、且つ、充放電時の副反応が抑制された亜鉛電池を提供すること。【解決手段】水酸化カリウムと、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも一種と、を含む水溶液である、亜鉛電池用電解液。【選択図】なし

Description

本発明は、亜鉛電池用電解液及び亜鉛電池に関する。
亜鉛電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が知られている。例えば、ニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有するとともに、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有することが知られている。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストであることから、産業用途(例えば、バックアップ電源等の用途)及び自動車用途(例えば、ハイブリッド自動車等の用途)への適用可能性が検討されている。
ニッケル亜鉛電池の充放電反応は、例えば、下記式に従って進行する(放電反応:右向き、充電反応:左向き)。
(正極)2NiOOH+2HO+2e → 2Ni(OH)+2OH
(負極)Zn+2OH → Zn(OH)+2e
上記式に示されるように、亜鉛電池では、放電反応により水酸化亜鉛(Zn(OH))が生成する。水酸化亜鉛は電解液に可溶であり、水酸化亜鉛が電解液に溶解すると、テトラヒドロキシド亜鉛酸イオン([Zn(OH)2−)が電解液中に拡散する。その結果、負極の形態変化(変形)が進行するとともに充電電流の分布が不均一となること等により、負極上の局所で亜鉛の析出が起こり、デンドライト(樹枝状結晶)が発生する。従来の亜鉛電池では、充放電の繰り返しによりデンドライトが成長した場合、デンドライトがセパレータを貫通し短絡が発生する場合がある。そのため、このようなデンドライトによる短絡を防止し、寿命性能を向上させる種々の試みがなされている。例えば、下記特許文献1には、ニッケルメッキを施した不織布を電極間に介在させることで、デンドライトによる短絡を防止する技術が開示されている。
特開昭58−126665号公報
ニッケル亜鉛電池の充放電時には、電解液の分解反応等の副反応が生じる場合がある。副反応の発生は、寿命性能の低下につながるため、副反応の発生を抑制することが求められる。また、亜鉛電池には、寿命性能を向上させることに加えて、高率放電性能を向上させることが求められている。
そこで、本発明は、優れた高率放電性能を有し、且つ、充放電時の副反応が抑制された亜鉛電池を提供することを目的とする。
本発明の一側面の亜鉛電池用電解液は、水酸化カリウムと、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも一種と、を含む水溶液である。この電解液によれば、亜鉛電池の高率放電性能を向上させることができるとともに、充放電時の副反応の発生を抑制することができる。
本発明の他の一側面の亜鉛電池は、上記電解液を備える。この亜鉛電池によれば、優れた高率放電性能が得られるとともに、充放電時の副反応が起こり難い。
亜鉛電池は、透気度の合計が500〜2500sec/100mLである、一又は複数のセパレータと、当該一又は複数のセパレータを介して隣り合う正極及び負極と、を更に備えることが好ましい。隣り合う正極及び負極間に配置されるセパレータの透気度の合計が上記範囲である場合、デンドライトによる短絡の発生が抑制されやすくなり、より優れた寿命性能(例えばサイクル寿命性能)が得られやすい。また、本発明では、副反応(電解液の分解反応)の結果生じる酸素量が低減されているため、セパレータの透気度の合計が上記範囲であったとしても、負極に吸収されずに系外に排出される酸素の量が少ない。すなわち、電解液の減少が生じ難い。
上記一又は複数のセパレータのうちの少なくとも一つは、0.1〜150sec/100mLの透気度を有することが好ましい。この場合、より優れた高率放電性能及び寿命性能が得られやすい。
本発明によれば、優れた高率放電性能を有し、且つ、充放電時の副反応が抑制された亜鉛電池を提供することができる。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実験例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の使用量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「膜」又は「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
<亜鉛電池用電解液>
[第一実施形態]
第一実施形態の電解液は、電解質として、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを含む水溶液である。水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムは、水溶液中で電離していてよく、塩として存在していてもよい。電解液の溶媒としては、例えば、イオン交換水を用いることができる。
電解液中の水酸化カリウムの濃度(含有量)は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、3質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよい。電解液中の水酸化カリウムの濃度は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化ナトリウムの濃度(含有量)は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上であってよい。電解液中の水酸化ナトリウムの濃度は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、25質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの含有量の合計は、高率放電性能に更に優れる観点及び副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は28質量%以下であってよい。
電解液中の電解質の濃度(含有量)は、高率放電性能に更に優れる観点及び副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は28質量%以下であってよい。
電解液は、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、水酸化リチウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を更に含有してもよい。
[第二実施形態]
第二実施形態の電解液は、電解質として、水酸化カリウム及び水酸化リチウムを含む水溶液である。水酸化カリウム及び水酸化リチウムは、水溶液中で電離していてよく、塩として存在していてもよい。電解液の溶媒としては、例えば、イオン交換水を用いることができる。
電解液中の水酸化カリウムの濃度(含有量)は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、15質量%以上、18質量%以上又は20質量%以上であってよい。電解液中の水酸化カリウムの濃度は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化リチウムの濃度(含有量)は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、0.1質量%以上又は0.2質量%以上であってよい。電解液中の水酸化リチウムの濃度は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、10質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化カリウム及び水酸化リチウムの含有量の合計は、高率放電性能に更に優れる観点及び副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は28質量%以下であってよい。
電解液中の電解質の濃度(含有量)は、高率放電性能に更に優れる観点及び副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は28質量%以下であってよい。
電解液は、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を更に含有してもよい。
[第三実施形態]
第三実施形態の電解液は、電解質として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムを含む水溶液である。水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムは、水溶液中で電離していてよく、塩として存在していてもよい。電解液の溶媒としては、例えば、イオン交換水を用いることができる。
電解液中の水酸化カリウムの濃度(含有量)は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、3質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよい。電解液中の水酸化カリウムの濃度は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化ナトリウムの濃度(含有量)は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上であってよい。電解液中の水酸化ナトリウムの濃度は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、25質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化リチウムの濃度(含有量)は、副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、0.1質量%以上又は0.2質量%以上であってよい。電解液中の水酸化リチウムの濃度は、高率放電性能に更に優れる観点から、電解液の全質量を基準として、10質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下であってよい。
電解液中の水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムの含有量の合計は、高率放電性能に更に優れる観点及び副反応を更に抑制できる観点から、電解液の全質量を基準として、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。
電解液中の電解質の濃度(含有量)は、高率放電性能に更に優れる観点及び副反応を更に抑制できる観点から電解液の全質量を基準として、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であってよく、35質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。
電解液は、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を更に含有してもよい。
上記第一〜第三実施形態の電解液は、亜鉛電池(例えば亜鉛二次電池)に組み込まれる亜鉛電池用電解液である。亜鉛電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池等が挙げられる。亜鉛電池では、亜鉛負極を用いることができる。以下、上記実施形態の電解液が用いられる亜鉛電池の一例として、ニッケル亜鉛電池について説明する。
<ニッケル亜鉛電池>
本実施形態のニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池)は、例えば、電槽と、電槽に収容された電極群(例えば極板群)及び電解液と、を備える。本実施形態の亜鉛電池は化成後又は未化成のいずれであってもよい。
電極群は、例えば、正極(例えば正極板)と、負極(例えば負極板)と、セパレータと、を備える。正極と負極とは、一又は複数のセパレータを介して隣り合っている。すなわち、隣り合う正極と負極との間には、一又は複数のセパレータが設けられてる。電極群は、複数の正極、負極及びセパレータを備えていてよい。電極群が複数の正極及び/又は複数の負極を備える場合、正極と負極は、セパレータを介して交互に積層されてよい。複数の正極同士及び複数の負極同士は、例えば、ストラップで連結されていてよい。本実施形態の正極はニッケル(Ni)電極であり、負極は亜鉛(Zn)電極である。すなわち、以下の説明における「正極」は「ニッケル電極」と置き換えてよく、「負極」は「亜鉛電極」と置き換えてよい。「正極材」、「負極材」等の記載についても同様である。
正極は、例えば、正極集電体と、当該正極集電体に支持された正極材と、を備えている。正極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
正極集電体は、正極材からの電流の導電路を構成する。正極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。正極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。正極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、正極の反応電位でも安定である材料(正極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、正極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し酸素ガスが発生するが、酸素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。正極集電体を構成する材料の具体例としては、白金;ニッケル(発泡ニッケル等);ニッケル等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼等)などが挙げられる。これらの中でも、発泡ニッケルで構成される正極集電体が好ましく用いられる。高率放電性能を更に向上させることができる観点から、少なくとも正極集電体における正極材を支持する部分(正極材支持部)が発泡ニッケルで構成されていることが好ましい。
正極材は、例えば、層状を呈している。すなわち、正極は、正極材層を有していてよい。正極材層は、正極集電体上に形成されていてよい。正極集電体の正極材支持部が3次元網目構造を有する場合、当該集電体の網目の間に正極材が充填されて正極材層が形成されていてもよい。
正極材は、ニッケルを含む正極活物質(電極活物質)を含有する。正極活物質としては、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、水酸化ニッケル等が挙げられる。正極材は、例えば、満充電状態ではオキシ水酸化ニッケルを含有し、放電末状態では水酸化ニッケルを含有する。正極活物質の含有量は、例えば、正極材の全質量を基準として50〜95質量%であってもよい。
正極材は、添加剤として、正極活物質以外の他の成分を更に含有してよい。添加剤としては、バインダー(結着剤)、導電剤、膨張抑制剤等が挙げられる。
バインダーとしては、親水性又は疎水性のポリマー等が挙げられる。具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)などをバインダーとして用いることができる。バインダーの含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01〜5質量部である。
導電剤としては、コバルト化合物(金属コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して1〜20質量部である。
膨張抑制剤としては、酸化亜鉛等が挙げられる。膨張抑制剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量部に対して0.01〜5質量部である。
負極は、負極集電体(集電体)と、該負極集電体に支持された負極材(電極材)と、を備える。負極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
負極集電体は、負極材からの電流の導電路を構成する。負極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状を有している。負極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体などであってもよい。負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、負極の反応電位でも安定である材料(負極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料など)を用いることができる。また、負極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し水素ガスが発生するが、水素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。負極集電体を構成する材料の具体例としては、亜鉛;鉛;スズ;スズ等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼、ニッケル等)などが挙げられる。
負極材は、例えば、層状を呈している。すなわち、負極は、負極材層を有していてよい。負極材層は、負極集電体上に形成されていてよい。負極集電体の負極材を支持する部分が3次元網目構造を有する場合、当該集電体の網目の間に負極材が充填されて負極材層が形成されていてもよい。
負極材は、亜鉛を含む負極活物質(電極活物質)を含有する。負極活物質としては、例えば、金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛が挙げられる。負極活物質は、これらの成分のうちの一種を単独で含んでいてよく、複数種を含んでいてもよい。負極材は、例えば、満充電状態では金属亜鉛を含有し、放電末状態では酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を含有する。負極活物質は例えば粒子状である。すなわち、負極材は、金属亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子及び水酸化亜鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。負極活物質の含有量は、例えば、負極材の全質量を基準として50〜95質量%である。
負極材は、添加剤を含有してよい。添加剤としては、例えば、結着剤、導電剤等が挙げられる。
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。結着剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部であってもよい。
導電剤としては、インジウム化合物(酸化インジウム等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量部に対して1〜20質量部である。
セパレータは、例えば、平板状、シート状等の形状を有するセパレータであってもよい。セパレータとしては、ポリオレフィン系微多孔膜、ナイロン系微多孔膜、耐酸化性のイオン交換樹脂膜、セロハン系再生樹脂膜、無機−有機セパレータ、ポリオレフィン系不織布等が挙げられる。
セパレータの透気度の合計は、高率放電性能に更に優れる観点、及び、寿命性能(例えばサイクル寿命性能)に優れる観点から、500〜2500sec/100mLであることが好ましい。セパレータの透気度の合計は、サイクル寿命性能に更に優れる観点から、より好ましくは1000sec/100mL以上であり、更に好ましくは1200sec/100mL以上であり、特に好ましくは1300sec/100mL以上であり、極めて好ましくは1350sec/100mL以上である。セパレータの透気度の合計は、高率放電性能に更に優れる観点及びサイクル寿命性能に更に優れる観点から、より好ましくは2000sec/100mL以下であり、更に好ましくは1500sec/100mL以下であり、特に好ましくは1400sec/100mL以下である。ここで、上記透気度の合計とは、セパレータが1つである場合には、1つのセパレータの透気度を意味し、セパレータが複数である場合には、各セパレータの透気度の合計を意味する。また、上記透気度の合計は、隣り合う正極と負極との間に設けられるセパレータの透気度の合計である。すなわち、電極群が複数のセパレータを備える場合であっても、隣り合う正極と負極の間に配置されたセパレータが1つである場合には、透気度の合計は1つのセパレータの透気度を意味する。電極群が複数の正極及び/又は複数の負極を備える場合、隣り合う正極と負極との間に形成される空間のうちの少なくとも一つの空間において、当該空間に配置されたセパレータの透気度の合計が上記範囲となることが好ましく、全ての空間において、当該空間に配置されたセパレータの透気度の合計が上記範囲となることがより好ましい。
透気度は、膜に対する空気の透過性の尺度であり、ガーレー試験機法を用いて一定圧力差のもとで一定体積の空気が一定面積の膜を通過する秒数で示すことができる。セパレータの透気度は、ガーレー式デンソメータ(例えば、株式会社安田精機製作所製、商品名:No.323 GURLEY TYPE DENSOMETER、膜の面積:642mm(直径28.6mm))により測定することができる。
セパレータの透気度の合計が500〜2500sec/100mLである場合、当該セパレータのうちの少なくとも一つは、0.1〜150sec/100mLの透気度を有することが好ましい。この場合、より優れた高率放電性能及び寿命性能が得られやすい。上記セパレータの透気度は、より優れた寿命性能が得られやすい点で、より好ましくは5.0sec/100mL以上であり、更に好ましくは40sec/100mL以上であり、特に好ましくは80sec/100mL以上である。上記セパレータの透気度は、より優れた高率放電性能及び寿命性能が得られやすい点で、より好ましくは140sec/100mL以下であり、更に好ましくは130sec/100mL以下であり、特に好ましくは100sec/100mL以下である。
隣り合う正極と負極との間に設けられるセパレータの数は、特に限定されないが、3枚であることが好ましい。3枚のセパレータのうち、正極側に位置するセパレータ及び負極側に位置するセパレータが微多孔膜であり、中間に位置するセパレータが不織布であることが好ましい。3枚のセパレータのうち、中間に位置するセパレータは上述した0.1〜150sec/100mLの透気度を有するセパレータであることがより好ましい。この場合、正極側に位置するセパレータ及び負極側に位置するセパレータの透気度は、例えば、500〜1000sec/100mLであってよい。
以上説明したニッケル亜鉛電池の製造方法は、例えば、亜鉛電池の構成部材を得る構成部材製造工程と、構成部材を組み立てて亜鉛電池を得る組立工程と、を備える。構成部材製造工程では、少なくとも電極(正極及び負極)を得る。
電極は、例えば、電極材(正極材及び負極材)の原料に対して溶媒(例えば水)を加えて混練することにより電極材ペースト(ペースト状の電極材)を得た後、電極材ペーストを用いて電極材層を形成することにより得ることができる。
正極材の原料としては、正極活物質の原料(例えば水酸化ニッケル)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。負極材の原料としては、負極活物質の原料(例えば金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。
電極材層を形成する方法としては、例えば、電極材ペーストを集電体に塗布又は充填した後に乾燥することで電極材層を得る方法が挙げられる。電極材層は、必要に応じて、プレス等によって密度を高めてもよい。
組立工程では、例えば、構成部材製造工程で得られた正極及び負極を、セパレータを介して交互に積層した後、正極同士及び負極同士をストラップで連結させて電極群を作製する。次いで、この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成の亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。
続いて、電解液を未化成の亜鉛電池の電槽内に注入した後、一定時間放置する。次いで、所定の条件にて充電を行うことで化成することにより亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。化成条件は、電極活物質(正極活物質及び負極活物質)の性状に応じて調整することができる。
以上、正極がニッケル電極であるニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池)の例を説明したが、亜鉛電池は、正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池)であってもよく、正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)であってもよい。
空気亜鉛電池の空気極としては、空気亜鉛電池に使用される公知の空気極を用いることができる。空気極は、例えば、空気極触媒、電子伝導性材料等を含む。空気極触媒としては、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いることができる。
空気極触媒としては、空気亜鉛電池における正極として機能するものを用いることが可能であり、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用できる。空気極触媒としては、酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料(黒鉛等)、酸化還元触媒機能を有する金属材料(白金、ニッケル等)、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物材料(ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等)などが挙げられる。空気極触媒の形状は、特に限定されないが、例えば粒子状であってもよい。空気極における空気極触媒の使用量は、空気極の合計量に対して、5〜70体積%であってもよく、5〜60体積%であってもよく、5〜50体積%であってもよい。
電子伝導性材料としては、導電性を有し、かつ、空気極触媒とセパレータとの間の電子伝導を可能とするものを用いることができる。電子伝導性材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類;鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類;銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類;ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料;これらの任意の混合物などが挙げられる。電子伝導性材料の形状は、粒子状であってもよく、その他の形状であってもよい。電子伝導性材料は、空気極において厚さ方向に連続した相をもたらす形態で用いられることが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は、空気極触媒との混合物又は複合体の形態であってもよく、前述したように、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒であってもよい。空気極における電子伝導性材料の使用量は、空気極の合計量に対して、10〜80体積%であってもよく、15〜80体積%であってもよく、20〜80体積%であってもよい。
銀亜鉛電池の酸化銀極としては、銀亜鉛電池に使用される公知の酸化銀極を用いることができる。酸化銀極は、例えば酸化銀(I)を含む。
以下、本発明の内容を実験例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[不織布の準備]
以下の不織布1〜6を用意した。
・不織布1(ニッポン高度紙工業株式会社製、商品名:VL−100、透気度:0.3sec/100mL)
・不織布2(王子エフテックス株式会社製、透気度:5.4sec/100mL)
・不織布3(大王製紙株式会社製、商品名:竜王耐湿、透気度:46.6sec/100mL)
・不織布4(大王製紙株式会社製、商品名:箔用原紙、透気度:84.3sec/100mL)
・不織布5(大王製紙株式会社製、商品名:金鯱、透気度:133.6sec/100mL)
・不織布6(大王製紙株式会社製、商品名:竜王耐湿ST、透気度:146.2sec/100mL)
(実験例1)
[電解液の調製]
イオン交換水に、電解質として、水酸化カリウム(KOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)を加え、混合することにより電解液(水酸化カリウム濃度:17.6質量%、水酸化ナトリウム濃度:6.0質量%)を調製した。
[正極の作製]
空隙率95%の発泡ニッケルからなる格子体を用意し、格子体を加圧成形することで正極集電体を得た。次いで、コバルトコート水酸化ニッケル粉末、金属コバルト、水酸化コバルト、酸化イットリウム、CMC、PTFE、イオン交換水を所定量秤量して混合し、混合液を攪拌することにより、正極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を、「水酸化ニッケル:金属コバルト:酸化イットリウム:水酸化コバルト:CMC:PTFE=88:10.3:1:0.3:0.3:0.1」に調整した。正極材ペーストの水分量は、正極材ペーストの全質量基準で27.5質量%に調整した。次いで、正極材ペーストを正極集電体の正極材支持部に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形し、正極材層を有する未化成の正極を得た。
[負極の作製]
負極集電体として開孔率60%のスズメッキを施した鋼板パンチングメタルを用意した。次いで、酸化亜鉛、金属亜鉛、HEC及びイオン交換水を所定量秤量して混合し、得られた混合液を攪拌することにより負極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を「酸化亜鉛:金属亜鉛:HEC=85:11.5:3.5」に調整した。HECとしては、住友精化株式会社製のAV−15F(商品名)を使用した。負極材ペーストの水分量は、負極材ペーストの全質量基準で32.5質量%に調整した。次いで、負極材ペーストを負極集電体上に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形し、負極材(負極材層)を有する未化成の負極を得た。
<セパレータの準備>
セパレータには、微多孔膜として、UP3355(宇部興産社製、商品名、透気度:638sec/100mL)、不織布として、不織布1を、それぞれ用いた。微多孔膜は、電池組立て前に、界面活性剤Triton−X100(ダウケミカル株式会社製)で、親水化処理した。親水化処理は、Triton−X100が1質量%の量で含まれる水溶液に微多孔膜を24時間浸漬した後、室温で1時間乾燥する方法で行った。なお、微多孔膜の透気度は親水化処理後の値を示す。さらに、微多孔膜は、所定の大きさに裁断し、それを半分に折り、側面を熱溶着することで袋状に加工した。袋状に加工した微多孔膜に、正極(未化成の正極)及び負極(未化成の負極)のそれぞれを1枚収納した。不織布は、所定の大きさに裁断したものを使用した。
<ニッケル亜鉛電池の作製>
袋状の微多孔膜に収納された正極と、袋状の微多孔膜に収納された負極と、不織布とを積層した後、同極性の極板同士をストラップで連結させて電極群(極板群)を作製した。電極群は、正極1枚及び負極2枚で、正極と負極の間(正極側の微多孔膜と負極側の微多孔膜との間)に不織布を1枚ずつ配置した構成とした。この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成のニッケル亜鉛電池を得た。次いで、電解液を未化成のニッケル亜鉛電池の電槽内に注入した後、24時間放置した。その後、60mA、15時間の条件で充電を行い、公称容量が600mAhのニッケル亜鉛電池を作製した。
(実験例2〜5)
電解液の調製において、電解液の組成(電解質の種類及び濃度)が表1に示す組成となるように、電解質の種類及び使用量を変更したこと以外は、実験例1と同様にして電解液を調製した。こうして得られた電解液を用いたこと以外は実験例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
<電池性能評価1>
実験例1〜5のニッケル亜鉛電池のクーロン効率及び放電性能の評価を行った。
(クーロン効率評価)
SOCが0%であるニッケル亜鉛電池に対し、40℃、1.87Vの定電圧で24時間の充電を行い、充電容量(充電電気量)を測定した。次いで、40℃、120mA(0.2C)の定電流で1.1Vまでニッケル亜鉛電池の放電を行い、0.2C時の放電容量を測定した。得られた充電容量及び放電容量より、クーロン効率(放電容量/充電容量×100)を算出した。クーロン効率が高いほど、副反応が抑制されたと判断することができる。
前記「C」とは、満充電状態から定格容量を定電流放電するときの電流の大きさを相対的に表したものである。前記「C」は、“放電電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。例えば、定格容量を1時間で放電させることができる電流を「1C」、2時間で放電させることができる電流を「0.5C」と表現する。
(放電性能評価)
25℃、600mA(1C)、1.9Vの定電圧で、電流値が30mA(0.05C)に減衰するまでニッケル亜鉛電池の充電を行った後、電池電圧が1.1Vに到達するまで30mA(0.05C)及び6000mA(10C)の定電流でニッケル亜鉛電池の放電を行い、放電容量を測定した。0.05C時の放電容量に対する10C時の放電容量の割合(放電容量比(%))を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2020087554
(実験例6)
イオン交換水に、電解質として、水酸化カリウム(KOH)及び水酸化リチウム(LiOH)を加え、混合することにより電解液(水酸化カリウム濃度:30.0質量%、水酸化リチウム濃度:1.0質量%)を調製した。得られた電解液を用いたこと以外は実験例1と同様にしてニッケル亜鉛電池を作製した。
(実験例7〜11)
不織布1に代えて不織布2〜6をそれぞれ用いたこと以外は、実験例6と同様にして、ニッケル亜鉛電池を作製した。
<電池性能評価2>
実験例6〜11のニッケル亜鉛電池のサイクル寿命性能及び放電性能の評価を行った。放電性能の評価は、電池性能評価1と同様にして行った。
(サイクル寿命性能評価)
25℃、600mA(1C)、1.9Vの定電圧で、電流値が30mA(0.05C)に減衰するまでニッケル亜鉛電池の充電を行った後、電池電圧が1.1Vに到達するまで300mA(0.5C)の定電流でニッケル亜鉛電池の放電を行うことを1サイクルとする試験を行った。放電容量が1サイクル目の放電容量に対して50%を下回った場合に試験を終了し、試験終了までに行ったサイクル数によってサイクル寿命性能を評価した。試験終了までに行ったサイクル数を表2に示す。
Figure 2020087554

Claims (4)

  1. 水酸化カリウムと、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも一種と、を含む水溶液である、亜鉛電池用電解液。
  2. 請求項1に記載の電解液を備える、亜鉛電池。
  3. 透気度の合計が500〜2500sec/100mLである、一又は複数のセパレータと、
    前記一又は複数のセパレータを介して隣り合う正極及び負極と、を更に備える、請求項2に記載の亜鉛電池。
  4. 前記一又は複数のセパレータのうちの少なくとも一つは、0.1〜150sec/100mLの透気度を有する、請求項3に記載の亜鉛電池。
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