JP2008050186A - チタノシリケート及びその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アルミノシリケートMCM−68(特表2002-535227(WO00/43316))のAlをTiに置き換えることによりチタノシリケートを合成する。従来アルミノシリケートMCM−68のAlを外の元素に置き換えた例は無かった。
【解決手段】 MCM−68に酸処理を行い、その後気相の塩化チタンやチタンアルコキシドで処理することにより、アルミノシリケートMCM−68のAlをTiに置き換えてチタノシリケートを製造する。このチタノシリケートは酸化触媒としてチタノシリケートTS−1と同等以上の触媒性能を持つ。
【選択図】 なし

Description

この発明は、アルミノシリケートMCM−68の骨格を有するチタノシリケートに関し、より詳細には、アルミノシリケートMCM−68からAlを除去し、その代わりにTiを導入して得られたチタノシリケートに関する。
アルミノシリケートMCM−68は2000年にMobil社により合成された比較的新しいゼオライトである(特許文献1)。このゼオライトは、大細孔(12員環細孔)や中細孔(10員環細孔)が三次元的に交わった構造をもつ。このタイプのゼオライトは一般に広い表面積と大きな内部空間を持つので、石油精製や石油化学プロセスにおける触媒として有用であり、比較的嵩高い有機分子を基質とする触媒として有用と期待されている。MCM−68はSi/Al比が9〜12であることから比較的Al含有量、つまり活性点が多く、さらに安定なため酸触媒として検討され、中でも、炭化水素の吸着能力が高いため、それが関与する反応、例えば芳香族炭化水素のアルキル化やアルキル芳香族炭化水素のトランスアルキル化、異性化、不均化、脱アルキル化などにおいて高い活性を示すため、炭化水素プロセシング触媒の基盤材料として期待されている。
一方、チタンシリカライトTS−1は、チタノシリケート系ゼオライトの代表として、有機化合物の酸化反応等の触媒として高い活性と選択率を示すことが知られている(特許文献2)。
TS−1のような高い触媒活性を持つゼオライトを合成するための手法として、例えば、脱アルミニウムモルデナイトを高温のTiClの蒸気で処理することによりTiを導入する技術が知られている(非特許文献1)。
特表2002-535227(WO00/43316) 特開2004-175801 J. Phys. Chem. 1996, 100, 10316-10322
本発明者らは、アルミノシリケートMCM−68のAlをTiに置き換えることにより、チタンシリカライトTS−1と同等又はそれ以上の触媒性能を持つチタノシリケートを合成することを考えた。しかし、従来アルミノシリケートMCM−68のAlを外の元素に置き換えた例は無かった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、MCM−68に酸処理を行い、その後気相の塩化チタンやチタンアルコキシドで処理することにより、アルミノシリケートMCM−68のAlをTiに置き換えてチタノシリケートを製造できることを見出し、さらにこのチタノシリケートが酸化触媒として機能することを確認し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、組成式
4n−3m−4lTiAlSi112−n224
(式中、lは1.11〜12、mは0〜0.74、nは7〜12、但し、l+m≦nである。)で表され、Si/Tiが100以下かつSi/Alが150以上であり、下記の値
2θ=6.50±0.10、6.80±0.10、8.10±0.10、8.72±0.10、9.64±0.10、19.40±0.10、21.70±0.10、22.56±0.10、23.08±0.10
を含むX線回折パターンを示すチタノシリケートである。
また本発明は、このチタノシリケートを製造するための方法であって、アルミノシリケートMCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行い、その後この酸処理されたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することから成るチタノシリケートの製法である。
本発明のチタノシリケートは、アルミノシリケートMCM−68と同じ骨格を持ち、導入したTiによる活性を持つ。その活性は、Al量が少なくまたTi量が多いほどよい。実施例で作製したチタノシリケートは、ある程度Alが残存し、除去したAlの空隙にTiが完全に充填したものではないが、本発明で提示した条件を最適化すれば、アルミノシリケートMCM−68のAlを全てTiに置き換えることは可能である。
本発明のチタノシリケートは、酸化触媒として優れていると認識されているチタノシリケートTS−1と同等以上の触媒性能を持つ。
本発明のチタノシリケートは、アルミノシリケートMCM−68の基本骨格を有し、MCM−68の有するAlの代わりにTiを導入したものである。
このチタノシリケートは、(1)脱Al処理(酸処理)段階:MCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行う工程、及び(2)チタン処理段階:その後この酸処理されたMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン(TiCl)又はチタンアルコキシドで処理する工程から成る製法により得ることができる。
なお、本発明に於て、Si/金属(Ti、Al)比(モル比)は、誘導結合プラズマ原子発光スペクトル(ICP-AES)分析を用いて定量した値をいう。即ち、ICP-AES測定により得られる金属(Ti、Al)の重さ(mg/L)からSiのモル数と金属のモル数を計算し、これらから算出されるSi/金属(Ti、Al)モル比をいう。
通常は、処理時間や温度などの条件に対するSi/金属(Ti、Al)モル比について予め検量線を作成しておき、その条件を管理することにより所望のSi/金属(Ti、Al)モル比のシリケートを得ることができる。
以下、本発明のチタノシリケートの製法を順に説明する。
(1)まず、アルミノシリケートMCM-68を用意する。
MCM-68は、12員環及び10員環のチャンネルが三次元的に交わった構造をもつアルミノシリケートである。ユニットセル(単位胞)はSi100.6All11.4O224という組成の正方晶系である。MCM-68構造についてはInternational Zeolite Association Structure Commission (IZA-SC)により三文字コードはまだ与えられていないが、表1に示す原子座標で一義的に決まる骨格トポロジーをもつ。c軸方向にまっすぐな12員環チャンネル(直径0.67 nm)、a軸及びb軸方向に2つのうねった10員環チャンネル(直径0.50-0.55 nm)が存在する。また、10員環を通ることによってのみアクセス可能な空洞(ケージ)(0.65(1.73 nm)を有する(J. Phys. Chem. B, 2006, 110, 2045-2050)。
Figure 2008050186
注)空間群 P42/mnm (International Union of Crystallography (IUCr)の定めるNo. 136の空間群)格子定数 a (=b) = 18.286(1) A, c = 20.208(2) A
アルミノシリケートMCM−68は、以下の組成式で表される。
AlSi112−n224
(式中、nは7〜12を表す。)
Si/Alは約8.3〜15である。
また、X線回折データは以下の値を含む。
2θ=6.56±0.10、6.88±0.10、8.16±0.10、8.80±0.10、9.70±0.10、19.50±0.10、21.76±0.10、22.56±0.10、23.10±0.10
このゼオライトMCM-68は次のようにして作製することができる。
1.MCM-68作成のための鋳型として、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物から3工程でN,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム 二ヨウ化物を合成する。
2.上記ヨウ化物、コロイダルシリカ、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水を混合して得たゲルを、オートクレーブ中160℃で16日間加熱する。
3.ろ過して得られた結晶(as-synthesized sample)を600℃で5時間焼成する。
(2)脱Al処理(酸処理)段階
この段階では、アルミノシリケートMCM−68を、Si/Al(モル比)が約150以上となるように、酸処理を行う。
酸処理は以下の条件で行う。
酸としては、硝酸、塩酸及び硫酸が挙げられる。この酸を約1〜6Mの水溶液で用いることが好ましい。
この水溶液中でアルミノシリケートMCM−68を通常約80〜100℃で約24時間以上、好ましくは約24〜36時間加熱する。
この処理はSi/Al(モル比)が約150以上となるように行うが、Alができるだけ全量除去されることが好ましい。
この段階で得られる脱アルミニウムしたアルミノシリケートMCM−68は、以下の組成式で表される。
4n−3mAlSi112−n224
(式中、mは0〜0.74、nは7〜12を表す。)
Si/Alは約150以上である。
また、X線回折データは以下の値を含む。
2θ=6.56±0.10、6.86±0.10、8.16±0.10、8.80±0.10、9.68±0.10、19.48±0.10、21.76±0.10、22.66±0.10、23.18±0.10
(2)チタン処理段階
この段階では、上記で得られた脱アルミニウムしたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが約100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することにより、本発明のチタノシリケートを得る。
塩化チタンとしては、TiCl、TiCl、が挙げられ、チタンアルコキシドとしては、Ti(OMe)、Ti(OEt)、Ti(OPr)、Ti(OPr−i)、Ti(OBu)が挙げられる。
これらを用いて、約400〜700℃で約1〜4時間処理する。
この処理はAr、N、He等の不活性な乾燥気体雰囲気で行われることが好ましい。
塩化チタン又はチタンアルコキシドの気相中での使用濃度は約1×10−3〜5×10−3モル/Lである。
このようにして得られるチタノシリケートは、以下の組成式で表される。
4n−3m−4lTiAlSi112−n224
(式中、lは1.11〜12、mは0〜0.74、nは7〜12、但し、l+m≦n)
Si/Tiは100以下である。但し、Tiが最も多く骨格に導入されたとしたらSi/Ti=9〜12、即ちTi量6.6〜8.9wt%程度まで可能と考えられる。
Si/Alは、このチタン処理前と同様であり、即ち、150以上である。
また、X線回折データは以下の値を含む。
2θ=6.50±0.10、6.80±0.10、8.10±0.10、8.72±0.10、9.64±0.10、19.40±0.10、21.70±0.10、22.56±0.10、23.08±0.10
このチタノシリケートは、上述のMCM−68構造を持ち、上記表1の空間群と原子座標で特定される骨格トポロジーを有する。
このようにして得られたチタノシリケートは、過酸化水素を酸化剤とした芳香族及びアルカンの水酸化、アルケンのエポキシ化、アルコールの酸化など、各種有機化合物の酸化反応の触媒として有用である。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
本実施例において、Si/Ti及びSi/Alは誘導結合プラズマ原子発光分析計(島津製作所製 ICP-8000E)を用いて検量線法(水溶液モード)により決定した。
また、X線回折は以下の条件で測定した。
使用装置 : MAC Science社製MX-Labo粉末X線解析装置
X線源 : CuKα = 1.5405A, 印加電圧 : 40 kV, 管電流: 20 mA
測定範囲 : 2θ = 2.040〜52.000deg
スキャン速度 : 2.000 deg. / min, サンプリング間隔 : 0.040 deg.
発散スリット: 1.00 deg, 散乱スリット: 1.00 deg, 受光スリット: 0.30 mm
縦型ゴニオメータ, モノクロメータ使用
測定方法 連続法, 通常法
製造例1
本合成例では、後記の実施例で用いる鋳型を合成した。
まず、下式で示すようにN,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを合成した。
Figure 2008050186
ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物(アルドリッチ)15.7 g (63 mmol)を500 mL二口フラスコに入れ、続いてエチルアミン(関東化学)(70wt% in water) 100 mL(1.26 mol)を加えて室温で2時間攪拌した。ここに蒸留水(46 mL)を加え、その後還流し、70℃で24時間、次いで100℃で20時間攪拌した。放冷後、濃塩酸(11mL)をpHが約2になるまでゆっくり滴下した。これをブフナーロートを用いて吸引濾過し、洗液のpHがほぼ中性になるまで蒸留水(500 mL)で洗浄して得られた固体を40℃で乾燥した。生成物(N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミド)の収量は17.1 g(収率 90%)であった。
次に、N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジンを合成した。
Figure 2008050186
N2雰囲気の1000 mL 二口フラスコに水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4、和光純薬製)6.2g(164mmol)を入れ、続いてテトラヒドロフラン(THF) 300 mLを加えながら還流し、攪拌を開始した。ここに上記で得たジイミド16.0 g(53 mmol)を少しずつ加え、THF(240 mL)で洗い入れた。その後68時間還流下攪拌した。放冷後、過剰のLiAlH4を分解するために、よく撹拌しながら蒸留水(6.2 g)、15wt% NaOH(6.2 g)、蒸留水(18.7 g)を約30分間隔で順次ゆっくり加え、加え終わってから2時間攪拌した。次にグラスフィルター(G3)を用いて吸引濾過後、フィルター上の固形物をTHF(120 mL)でよく洗浄し、濾液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた油状物質から水分を完全に除去し、油状の生成物(N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジン)を得た。収量は12.1 g (収率 93%)であった。
次に、N,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物(鋳型)を合成した。
Figure 2008050186
上記で合成したジピロリジン12.1 g (49 mmol)をエタノール(EtOH) 90 mLに溶解し、攪拌しつつヨウ化エチル(EtI) 17 mL(212 mmol)を滴下ロートより滴下した。滴下終了後、内壁に付着したヨウ化エチルをEtOH(50 mL)とともに反応液に加え、系内を無水状態に保ちつつ157時間還流下攪拌した。放冷後、アセトン100 mLを加え、これをグラスフィルター(G3)で吸引濾過して結晶生成物を得た。この結晶生成物をアセトン約80 mLずつを用いて二度加熱洗浄して放冷後、アセトン(50 mL)及びベンゼン(40 mL)で順次洗浄し、真空乾燥した。生成物(N,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物)の収量は19.4 g(収率 71%)であった。
生成物の分析値を以下に示す。
1H NMR(400 MHz, D2O) δ: 1.25 (12H, t, J=7.2Hz, -CH3), 2.82 (8H, s, CH-CH 2-N+), 2.89 (2H, s, -CH=CH-), 3.28 (8H, q, J=7.5Hz, CH3-CH 2-N+), 3.78 (4H,d, CH-CH-CH2), 6.42 (2H, t, J=3.8 Hz, -CH-CH=)
13C NMR(100 MHz, D2O) δ: 8.14, 8.99, 33.71, 40.59, 53.32, 56.24, 65.05, 134.75
製造例2
本実施例ではMCM-68を合成した。
90 mL フッ素樹脂(PFA)製容器にコロイダルシリカ(デュポン社、LUDOX(登録商標)HS-40、SiO2: 40wt%)を6.01 g (40 mmol)入れ、Al(OH)3 312 mg (4.0 mmol)を溶かして10分間攪拌した。次にKOH(8 mol/l、6.05 mmol/g) 2.48g(15 mmol)を加え、30分間攪拌し、最後に製造例1で合成した鋳型であるN,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物2.23 g (4.0 mmol)を加え3時間攪拌した。調製したゲルを125 mLオートクレーブに移し、160℃のオーブン中で16日間静置した。得られた生成物を遠心分離し、その後80℃オーブン中で乾燥して白色粉末2.55 gを得た。このうち2.46 gをアルミナ製のシャーレに入れ、マッフル炉を用いて空気雰囲気下室温より2℃/minで600℃まで昇温、600℃で5時間保持した。放冷してMCM-68結晶(白色粉末、2.21 g)を得た。Si/Al=12であった。この結晶のX線回折分析結果を表2に示す。
実施例1
まず、MCM-68に酸処理を行った。製造例2で得たMCM-68結晶1.00 gをガラス製のナス型フラスコに入れ、次に濃度を6 Mに調整した硝酸水溶液を加えて、還流し、24時間攪拌した。その後、この混合液を濾過し、洗液が中性になるまで蒸留水でフィルター上の固体を洗浄し、80℃のオーブンで乾燥して白色結晶 820 mgを得た。Si/Al=560であった。
脱アルミニウムの程度は硝酸の濃度、処理温度及び処理時間により制御した。また、脱アルミの程度はICP-AES分析によりモニターした。
次に、チタン処理を行った。用いた装置図を図1に示す。上記で得た結晶500mgを両端を石英ウールで囲むことにより、ガラス管に固定し、500℃、4時間Arガスを流通させた。次に、温度コントローラーでヒーターを600℃に調節した。その後、Arガスを四塩化チタン(和光純薬製、TiCl4、99.0%)に通し、そのTiCl4の蒸気を含んだArガスをサンプルに2時間流通させた。サンプル中に残存する未反応のTiCl4を除くため、同温度で1時間Arガスを流通させた。室温まで放冷後、得られたサンプルを蒸留水で十分に洗浄し、80℃オーブン中で乾燥して、白色粉末497 mgを得た(以下「Cat-A」という。)。Si/Al=638、Si/Ti=82であった。
Ti導入及び挿入の程度は、TiCl4、Arの流量、温度、時間などにより制御できる。また、Ti挿入の程度はICP-AES分析によりモニターした。
得られた結晶のX線回折をMac Science社製MX-Labo X線回折装置を用いて測定した。
本実施例で行った処理によるMCM-68結晶のX線回折パターンの変化を図2に示す。また、本実施例で得た結晶のX線回折結果を下表に示す。
Figure 2008050186
実施例2
製造例2で得たMCM-68結晶1.00 gをガラス製のナス型フラスコに入れ、次に濃度を4Mに調整した硝酸水溶液を加えて還流し、24時間攪拌した。その後、この混合液を濾過し、洗液が中性になるまで蒸留水でフィルター上の固体を洗浄し、80℃のオーブンで乾燥して白色結晶800 mgを得た。Si/Al=488であった。
上記で得た結晶500 mgを両端を石英ウールで囲むことにより、ガラス管に固定し、500℃、4時間Arガスを流通させた。次に、温度コントローラーでヒーターを600℃に調節した。その後、Arガスを四塩化チタン(和光純薬製)に通し、そのTiCl4の蒸気を含んだArガスをサンプルに2時間流通させた。サンプル中に残存する未反応のTiCl4を除くため、同温度で1時間Arガスを流通させた。室温まで放冷後、得られたサンプルを蒸留水で十分に洗浄し、80℃オーブン中で乾燥して、白色粉末490 mgを得た(以下「Cat-B」という。)。Si/Al=520、Si/Ti=83であった。
実施例3
製造例2で得たMCM-68結晶1.00 gをガラス製のナス型フラスコに入れ、次に濃度を2Mに調整した硝酸水溶液を加えて、還流し、24時間攪拌した。その後、この混合液を濾過し、洗液が中性になるまで蒸留水でフィルター上の固体を洗浄し、80℃のオーブンで乾燥して白色結晶840 mg を得た。Si/Al=160であった。
上記で得た結晶0.50gを両端を石英ウールで囲むことにより、ガラス管に固定し、500℃、4時間Arガスを流通させた。次に、温度コントローラーでヒーターを600℃に調節した。その後、Arガスを四塩化チタン(和光純薬製)に通し、そのTiCl4の蒸気を含んだArガスをサンプルに2時間流通させた。サンプル中に残存する未反応のTiCl4を除くため、同温度で1時間Arガスを流通させた。室温まで放冷後、得られたサンプルを蒸留水で十分に洗浄し、80℃オーブン中で乾燥して、白色粉末([Ti]-MCM-68)0.48gを得た(以下「Cat-C」という。)。Si/Al=170、Si/Ti=72であった。
実施例2及び3で得た結晶のX線回折結果を下表に示す。
Figure 2008050186
また、実施例1〜3で得た結晶のX線回折パターンを図3に示す。
酸処理後(実施例1〜3)、チタン処理後(実施例1〜3)ともにほぼ等しいX線回折パターンを示しており、処理によって別の物質に変化することなく、構造が保たれていることがわかる。
また、骨格に導入したTiの存在状態を調べるため、紫外・可視吸収スペクトルを拡散反射法により測定した。試料に紫外・可視光線を照射し、得られた反射率をKubelka-Munk変換によって吸光度相当の無次元数に変換した。測定装置は日本分光製 V-550分光器、測定範囲 200〜500nm、走査速度 100 nm/min、サンプリング間隔1.0 nmである。得られたスペクトルを図4に示す。
すべての場合において、骨格内の4配位Tiに相当する210〜230 nmの吸収が主ピークとして観測されている。骨格外の6配位Tiに相当する250〜280 nmのピークはほとんど認められず、Cat-Bの場合のみアナターゼ型TiO2に相当する320 nm付近の吸収がわずかに観測されている。
実施例4
本実施例では、実施例1〜3で得たCatA〜Cを用いて1-ヘキセンのエポキシ化反応を行った。反応式を下式に示す。
Figure 2008050186
20 mlナス型フラスコ中、実施例1〜3で得たCatA〜Cを触媒としてそれぞれ25 mg、溶媒としてアセトニトリル5.0 mL、1-ヘキセン5.0 mmol、過酸化水素(31 wt%) 5.0 mmolを混合し、60℃で2時間攪拌した。反応終了後、内部標準物質としてシクロへプタノンを加え、遠心分離で反応液と触媒を分離した。反応溶液をガスクロマトグラフで定量分析し、未反応の過酸化水素はセリウム塩滴定法により分析した。結果を下表に示す。TONはチタン1モルあたりの生成物のモル数を表す。
Figure 2008050186
比較のため載せたチタノシリケートTS-1のデータは文献値(P. Wu and T. Tatsumi, Catalysis Surveys from Asia, 2004, 8, 137-148)である。このTS-1は以下の合成法により得られている。
1.必要量のオルトチタン酸n-ブチル Ti(OBu)4 (TBOT)をテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)の水溶液に溶解させ、オルトケイ酸エチル(TEOS)を加えて1時間撹拌する。
2.発生するエタノールを除去し、得られた無色透明のゲルをオートクレーブ中170℃で6日間加熱する。
3.ろ過して得られた結晶(as-synthesized sample)を550℃で10時間焼成し、2M塩酸で処理する。
Cat-Aは、TS-1と比較すると転化率(Conversion)と触媒回転数(TON)が優れており、優れた酸化触媒であることを示している。
また、Cat-A〜CのSi/Ti比はほぼ等しいにもかかわらず、転化率(Conversion)とTONがCat-A、Cat-B、Cat-Cの順に低くなっている。Cat-Aは、より濃度の高いHNO3(6 M)で脱Al処理したものにTiを導入したものであり、Al含有量が少ない程(Si/Al比が大きい程)、活性が高いことを示している。
実施例5
本実施例では、実施例1〜3で得たCatA〜Cを用いてシクロヘキセンのエポキシ化反応を行った。反応式を下式に示す。
Figure 2008050186
20 mlナス型フラスコ中、実施例1〜3で得たCatA〜Cを触媒としてそれぞれ25 mg、溶媒としてアセトニトリル5.0 mL、シクロヘキセン5.0 mmol、過酸化水素(31 wt%) 5.0 mmolを混合し、60℃で2時間攪拌した。反応終了後、内部標準物質としてシクロへプタノンを加え、遠心分離で反応液と触媒を分離した。反応溶液をガスクロマトグラフで定量分析し、未反応の過酸化水素はセリウム塩滴定法により分析した。結果を下表に示す。
Figure 2008050186
比較のため載せたチタノシリケートTS-1のデータは文献値(W. Fan et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 236-240)であり、TS-1は実施例4に記載した合成法と仕込みのTBOT量が異なる以外は同じ方法で合成されている。
Cat-A〜Cは、TS-1と比較すると転化率(Conversion)、エポキシドの選択率及びTONが優れており、優れた酸化触媒であることを示している。
実施例1のチタン処理で用いた装置示す図である。 実施例1で行った処理によるMCM-68結晶のX線回折スペクトルの変化を示す図である。 実施例1〜3で得た結晶のX線回折スペクトルを示す図である。 実施例1〜3で得た結晶の紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。

Claims (3)

  1. 組成式
    4n−3m−4lTiAlSi112−n224
    (式中、lは1.11〜12、mは0〜0.74、nは7〜12、但し、l+m≦nである。)で表され、Si/Tiが100以下かつSi/Alが150以上であり、下記の値
    2θ=6.50±0.10、6.80±0.10、8.10±0.10、8.72±0.10、9.64±0.10、19.40±0.10、21.70±0.10、22.56±0.10、23.08±0.10
    を含むX線回折パターンを示すチタノシリケート。
  2. アルミノシリケートMCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行い、その後この酸処理されたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することにより得られた請求項1に記載のチタノシリケート。
  3. 請求項1に記載のチタノシリケートを製造するための方法であって、アルミノシリケートMCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行い、その後この酸処理されたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することから成るチタノシリケートの製法。
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