JP2008050186A - チタノシリケート及びその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 MCM−68に酸処理を行い、その後気相の塩化チタンやチタンアルコキシドで処理することにより、アルミノシリケートMCM−68のAlをTiに置き換えてチタノシリケートを製造する。このチタノシリケートは酸化触媒としてチタノシリケートTS−1と同等以上の触媒性能を持つ。
【選択図】 なし
Description
一方、チタンシリカライトTS−1は、チタノシリケート系ゼオライトの代表として、有機化合物の酸化反応等の触媒として高い活性と選択率を示すことが知られている(特許文献2)。
TS−1のような高い触媒活性を持つゼオライトを合成するための手法として、例えば、脱アルミニウムモルデナイトを高温のTiCl4の蒸気で処理することによりTiを導入する技術が知られている(非特許文献1)。
即ち、本発明は、組成式
H4n−3m−4lTilAlmSi112−nO224
(式中、lは1.11〜12、mは0〜0.74、nは7〜12、但し、l+m≦nである。)で表され、Si/Tiが100以下かつSi/Alが150以上であり、下記の値
2θ=6.50±0.10、6.80±0.10、8.10±0.10、8.72±0.10、9.64±0.10、19.40±0.10、21.70±0.10、22.56±0.10、23.08±0.10
を含むX線回折パターンを示すチタノシリケートである。
また本発明は、このチタノシリケートを製造するための方法であって、アルミノシリケートMCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行い、その後この酸処理されたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することから成るチタノシリケートの製法である。
本発明のチタノシリケートは、酸化触媒として優れていると認識されているチタノシリケートTS−1と同等以上の触媒性能を持つ。
このチタノシリケートは、(1)脱Al処理(酸処理)段階:MCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行う工程、及び(2)チタン処理段階:その後この酸処理されたMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン(TiCl4)又はチタンアルコキシドで処理する工程から成る製法により得ることができる。
通常は、処理時間や温度などの条件に対するSi/金属(Ti、Al)モル比について予め検量線を作成しておき、その条件を管理することにより所望のSi/金属(Ti、Al)モル比のシリケートを得ることができる。
(1)まず、アルミノシリケートMCM-68を用意する。
MCM-68は、12員環及び10員環のチャンネルが三次元的に交わった構造をもつアルミノシリケートである。ユニットセル(単位胞)はSi100.6All11.4O224という組成の正方晶系である。MCM-68構造についてはInternational Zeolite Association Structure Commission (IZA-SC)により三文字コードはまだ与えられていないが、表1に示す原子座標で一義的に決まる骨格トポロジーをもつ。c軸方向にまっすぐな12員環チャンネル(直径0.67 nm)、a軸及びb軸方向に2つのうねった10員環チャンネル(直径0.50-0.55 nm)が存在する。また、10員環を通ることによってのみアクセス可能な空洞(ケージ)(0.65(1.73 nm)を有する(J. Phys. Chem. B, 2006, 110, 2045-2050)。
HnAlnSi112−nO224
(式中、nは7〜12を表す。)
Si/Alは約8.3〜15である。
また、X線回折データは以下の値を含む。
2θ=6.56±0.10、6.88±0.10、8.16±0.10、8.80±0.10、9.70±0.10、19.50±0.10、21.76±0.10、22.56±0.10、23.10±0.10
1.MCM-68作成のための鋳型として、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物から3工程でN,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム 二ヨウ化物を合成する。
2.上記ヨウ化物、コロイダルシリカ、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水を混合して得たゲルを、オートクレーブ中160℃で16日間加熱する。
3.ろ過して得られた結晶(as-synthesized sample)を600℃で5時間焼成する。
この段階では、アルミノシリケートMCM−68を、Si/Al(モル比)が約150以上となるように、酸処理を行う。
酸処理は以下の条件で行う。
酸としては、硝酸、塩酸及び硫酸が挙げられる。この酸を約1〜6Mの水溶液で用いることが好ましい。
この水溶液中でアルミノシリケートMCM−68を通常約80〜100℃で約24時間以上、好ましくは約24〜36時間加熱する。
この処理はSi/Al(モル比)が約150以上となるように行うが、Alができるだけ全量除去されることが好ましい。
H4n−3mAlmSi112−nO224
(式中、mは0〜0.74、nは7〜12を表す。)
Si/Alは約150以上である。
また、X線回折データは以下の値を含む。
2θ=6.56±0.10、6.86±0.10、8.16±0.10、8.80±0.10、9.68±0.10、19.48±0.10、21.76±0.10、22.66±0.10、23.18±0.10
この段階では、上記で得られた脱アルミニウムしたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが約100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することにより、本発明のチタノシリケートを得る。
塩化チタンとしては、TiCl4、TiCl3、が挙げられ、チタンアルコキシドとしては、Ti(OMe)4、Ti(OEt)4、Ti(OPr)4、Ti(OPr−i)4、Ti(OBu)4が挙げられる。
これらを用いて、約400〜700℃で約1〜4時間処理する。
この処理はAr、N2、He等の不活性な乾燥気体雰囲気で行われることが好ましい。
塩化チタン又はチタンアルコキシドの気相中での使用濃度は約1×10−3〜5×10−3モル/Lである。
H4n−3m−4lTilAlmSi112−nO224
(式中、lは1.11〜12、mは0〜0.74、nは7〜12、但し、l+m≦n)
Si/Tiは100以下である。但し、Tiが最も多く骨格に導入されたとしたらSi/Ti=9〜12、即ちTi量6.6〜8.9wt%程度まで可能と考えられる。
Si/Alは、このチタン処理前と同様であり、即ち、150以上である。
また、X線回折データは以下の値を含む。
2θ=6.50±0.10、6.80±0.10、8.10±0.10、8.72±0.10、9.64±0.10、19.40±0.10、21.70±0.10、22.56±0.10、23.08±0.10
このチタノシリケートは、上述のMCM−68構造を持ち、上記表1の空間群と原子座標で特定される骨格トポロジーを有する。
本実施例において、Si/Ti及びSi/Alは誘導結合プラズマ原子発光分析計(島津製作所製 ICP-8000E)を用いて検量線法(水溶液モード)により決定した。
また、X線回折は以下の条件で測定した。
使用装置 : MAC Science社製MX-Labo粉末X線解析装置
X線源 : CuKα = 1.5405A, 印加電圧 : 40 kV, 管電流: 20 mA
測定範囲 : 2θ = 2.040〜52.000deg
スキャン速度 : 2.000 deg. / min, サンプリング間隔 : 0.040 deg.
発散スリット: 1.00 deg, 散乱スリット: 1.00 deg, 受光スリット: 0.30 mm
縦型ゴニオメータ, モノクロメータ使用
測定方法 連続法, 通常法
本合成例では、後記の実施例で用いる鋳型を合成した。
まず、下式で示すようにN,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを合成した。
生成物の分析値を以下に示す。
1H NMR(400 MHz, D2O) δ: 1.25 (12H, t, J=7.2Hz, -CH3), 2.82 (8H, s, CH-CH 2-N+), 2.89 (2H, s, -CH=CH-), 3.28 (8H, q, J=7.5Hz, CH3-CH 2-N+), 3.78 (4H,d, CH-CH-CH2), 6.42 (2H, t, J=3.8 Hz, -CH-CH=)
13C NMR(100 MHz, D2O) δ: 8.14, 8.99, 33.71, 40.59, 53.32, 56.24, 65.05, 134.75
本実施例ではMCM-68を合成した。
90 mL フッ素樹脂(PFA)製容器にコロイダルシリカ(デュポン社、LUDOX(登録商標)HS-40、SiO2: 40wt%)を6.01 g (40 mmol)入れ、Al(OH)3 312 mg (4.0 mmol)を溶かして10分間攪拌した。次にKOH(8 mol/l、6.05 mmol/g) 2.48g(15 mmol)を加え、30分間攪拌し、最後に製造例1で合成した鋳型であるN,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物2.23 g (4.0 mmol)を加え3時間攪拌した。調製したゲルを125 mLオートクレーブに移し、160℃のオーブン中で16日間静置した。得られた生成物を遠心分離し、その後80℃オーブン中で乾燥して白色粉末2.55 gを得た。このうち2.46 gをアルミナ製のシャーレに入れ、マッフル炉を用いて空気雰囲気下室温より2℃/minで600℃まで昇温、600℃で5時間保持した。放冷してMCM-68結晶(白色粉末、2.21 g)を得た。Si/Al=12であった。この結晶のX線回折分析結果を表2に示す。
まず、MCM-68に酸処理を行った。製造例2で得たMCM-68結晶1.00 gをガラス製のナス型フラスコに入れ、次に濃度を6 Mに調整した硝酸水溶液を加えて、還流し、24時間攪拌した。その後、この混合液を濾過し、洗液が中性になるまで蒸留水でフィルター上の固体を洗浄し、80℃のオーブンで乾燥して白色結晶 820 mgを得た。Si/Al=560であった。
脱アルミニウムの程度は硝酸の濃度、処理温度及び処理時間により制御した。また、脱アルミの程度はICP-AES分析によりモニターした。
Ti導入及び挿入の程度は、TiCl4、Arの流量、温度、時間などにより制御できる。また、Ti挿入の程度はICP-AES分析によりモニターした。
本実施例で行った処理によるMCM-68結晶のX線回折パターンの変化を図2に示す。また、本実施例で得た結晶のX線回折結果を下表に示す。
製造例2で得たMCM-68結晶1.00 gをガラス製のナス型フラスコに入れ、次に濃度を4Mに調整した硝酸水溶液を加えて還流し、24時間攪拌した。その後、この混合液を濾過し、洗液が中性になるまで蒸留水でフィルター上の固体を洗浄し、80℃のオーブンで乾燥して白色結晶800 mgを得た。Si/Al=488であった。
上記で得た結晶500 mgを両端を石英ウールで囲むことにより、ガラス管に固定し、500℃、4時間Arガスを流通させた。次に、温度コントローラーでヒーターを600℃に調節した。その後、Arガスを四塩化チタン(和光純薬製)に通し、そのTiCl4の蒸気を含んだArガスをサンプルに2時間流通させた。サンプル中に残存する未反応のTiCl4を除くため、同温度で1時間Arガスを流通させた。室温まで放冷後、得られたサンプルを蒸留水で十分に洗浄し、80℃オーブン中で乾燥して、白色粉末490 mgを得た(以下「Cat-B」という。)。Si/Al=520、Si/Ti=83であった。
製造例2で得たMCM-68結晶1.00 gをガラス製のナス型フラスコに入れ、次に濃度を2Mに調整した硝酸水溶液を加えて、還流し、24時間攪拌した。その後、この混合液を濾過し、洗液が中性になるまで蒸留水でフィルター上の固体を洗浄し、80℃のオーブンで乾燥して白色結晶840 mg を得た。Si/Al=160であった。
上記で得た結晶0.50gを両端を石英ウールで囲むことにより、ガラス管に固定し、500℃、4時間Arガスを流通させた。次に、温度コントローラーでヒーターを600℃に調節した。その後、Arガスを四塩化チタン(和光純薬製)に通し、そのTiCl4の蒸気を含んだArガスをサンプルに2時間流通させた。サンプル中に残存する未反応のTiCl4を除くため、同温度で1時間Arガスを流通させた。室温まで放冷後、得られたサンプルを蒸留水で十分に洗浄し、80℃オーブン中で乾燥して、白色粉末([Ti]-MCM-68)0.48gを得た(以下「Cat-C」という。)。Si/Al=170、Si/Ti=72であった。
酸処理後(実施例1〜3)、チタン処理後(実施例1〜3)ともにほぼ等しいX線回折パターンを示しており、処理によって別の物質に変化することなく、構造が保たれていることがわかる。
すべての場合において、骨格内の4配位Tiに相当する210〜230 nmの吸収が主ピークとして観測されている。骨格外の6配位Tiに相当する250〜280 nmのピークはほとんど認められず、Cat-Bの場合のみアナターゼ型TiO2に相当する320 nm付近の吸収がわずかに観測されている。
本実施例では、実施例1〜3で得たCatA〜Cを用いて1-ヘキセンのエポキシ化反応を行った。反応式を下式に示す。
1.必要量のオルトチタン酸n-ブチル Ti(OBu)4 (TBOT)をテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)の水溶液に溶解させ、オルトケイ酸エチル(TEOS)を加えて1時間撹拌する。
2.発生するエタノールを除去し、得られた無色透明のゲルをオートクレーブ中170℃で6日間加熱する。
3.ろ過して得られた結晶(as-synthesized sample)を550℃で10時間焼成し、2M塩酸で処理する。
また、Cat-A〜CのSi/Ti比はほぼ等しいにもかかわらず、転化率(Conversion)とTONがCat-A、Cat-B、Cat-Cの順に低くなっている。Cat-Aは、より濃度の高いHNO3(6 M)で脱Al処理したものにTiを導入したものであり、Al含有量が少ない程(Si/Al比が大きい程)、活性が高いことを示している。
本実施例では、実施例1〜3で得たCatA〜Cを用いてシクロヘキセンのエポキシ化反応を行った。反応式を下式に示す。
Claims (3)
- 組成式
H4n−3m−4lTilAlmSi112−nO224
(式中、lは1.11〜12、mは0〜0.74、nは7〜12、但し、l+m≦nである。)で表され、Si/Tiが100以下かつSi/Alが150以上であり、下記の値
2θ=6.50±0.10、6.80±0.10、8.10±0.10、8.72±0.10、9.64±0.10、19.40±0.10、21.70±0.10、22.56±0.10、23.08±0.10
を含むX線回折パターンを示すチタノシリケート。 - アルミノシリケートMCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行い、その後この酸処理されたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することにより得られた請求項1に記載のチタノシリケート。
- 請求項1に記載のチタノシリケートを製造するための方法であって、アルミノシリケートMCM−68を、Si/Alが150以上となるように、酸処理を行い、その後この酸処理されたアルミノシリケートMCM−68を、Si/Tiが100以下となるように、気相の塩化チタン又はチタンアルコキシドで処理することから成るチタノシリケートの製法。
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