JP7284990B2 - チタノシリケートとその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミノシリケートYNU-5の骨格内のアルミニウムの一部を、チタンに置き換えてなるチタノシリケートと、その製造方法に関する。
アルミノシリケートMCM-68は、Mobil社により最初に合成された比較的新しいゼオライトである(特許文献1)。このゼオライトは、大細孔(12員環細孔)や中細孔(10員環細孔)が三次元的に交わった構造を有している。このタイプのゼオライトは、一般に広い表面積と大きな内部空間を有するので、石油精製や石油化学プロセスにおける触媒として、また、比較的嵩高い有機分子を基質とする触媒として、有用とされている。
MCM-68は、Si/Al比が9~12であることから、Al含有量、つまり活性点が比較的多く、さらに安定であるため、酸触媒として検討されている。また、MCM-68は、炭化水素の吸着能力が高く、それが関与する反応、例えば芳香族炭化水素のアルキル化やアルキル芳香族炭化水素のトランスアルキル化、異性化、不均化、脱アルキル化などにおいて高い活性を示す。そのため、MCM-68は、炭化水素転換反応用触媒の基盤材料として期待されている。
一方、チタニウムシリカライト-1(TS-1)は、チタノシリケート系ゼオライトの代表であり、有機化合物の酸化反応等の触媒として、高い活性と選択率を示すことが知られている(特許文献2)。TS-1のような高い触媒活性を有するゼオライトを合成するための手法として、例えば、脱アルミニウムモルデナイトを高温のTiClの蒸気で処理することにより、ゼオライトにチタンを導入する技術が知られている(非特許文献1)。また、MCM-68を構成するアルミニウムをチタンに置き換えることにより、TS-1と同等またはそれ以上の触媒性能を有するチタノシリケートの製造方法も知られている(特許文献3)。
特表2002-535227号公報 特開2004-175801号公報 特許第4923248号公報
J.Phys.Chem.1996,100,10316-10322
しかしながら、特許文献3の製造方法において、チタノシリケートの原料であるMCM-68は、その合成にN,N,N’,N’-tetraethylbicyclo[2.2.2]oct-7-ene-2,3:5,6-dipyrrolidinium〔あるいはN,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム〕(TEBOP2+)イオンを含む有機化合物を構造規定剤として用いる必要がある。TEBOP2+は複雑な構造を有しており、製造コストが高い材料であるため、これを用いたMCM-68の製造効率、ひいては、MCM-68を原料とするチタノシリケートの製造効率を上げることは難しい。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アルミノシリケートMCM-68を基本骨格として用いる場合よりも、チタノシリケートを効率よく製造することを可能とする、チタノシリケートの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、当該製造方法を用いて得られるチタノシリケートであって、MCM-68を基本骨格として用いる場合と、同等の触媒性能を有するチタノシリケートを提供することを目的とする。
YNU-5を基本骨格とするアルミノシリケートは、MCM-68を基本骨格とするものに比べて粒径が10倍程度大きくなる。一般的には、粒径が大きくなるほど、触媒としての活性率が低下すると考えられており、YNU-5を基本骨格としてチタノシリケートを製造することについては、阻害要因が存在していた。
そうした状況下において本発明者が鋭意検討を重ねた結果、YNU-5を用いることにより、MCM―68を用いた場合に匹敵するフェノール酸化活性、パラ選択性が得られることが見出された。
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]アルミノシリケートの骨格内のアルミニウムの一部を、チタンに置き換えてなるチタノシリケートの製造方法であって、第一シリカ源、アルカリ源、水、および構造規定剤の混合物を、攪拌しながら調製する第一工程と、調製した前記混合物を、攪拌しながら加熱する第二工程と、加熱した前記混合物を冷却する第三工程と、冷却した前記混合物に、第二シリカ源およびアルミナ源を加えて攪拌しながら再調製する第四工程と、再調製した前記混合物を加熱する第五工程と、加熱した前記混合物を、洗浄およびろ過した上で乾燥させる第六工程と、前記第六工程を経て得た有機複合体を加熱し、包接されている有機物を取り除き、アルミノシリケートYNU-5を得る第七工程と、前記アルミノシリケートYNU-5を焼成する第八工程と、焼成した前記アルミノシリケートYNU-5を酸処理する第九工程と、酸処理した前記アルミノシリケートYNU-5を、気相の塩化チタンまたはチタンアルコキシドとともに加熱する第十工程と、を順に有することを特徴とするチタノシリケートの製造方法。
[2]前記第一シリカ源としてコロイダルシリカを用い、前記第二シリカ源および前記アルミナ源としてY型ゼオライトを用い、前記構造規定剤として、ジメチルジプロピルアンモニウムを用いることを特徴とする[1]に記載のチタノシリケートの製造方法。
[3]前記酸処理を、前記アルミノシリケートYNU-5に含まれるシリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)が、300以上となるように行うことを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載のチタノシリケートの製造方法。
[4]前記第九工程において、前記アルミノシリケートYNU-5を、硝酸(HNO)が60重量%以上含まれる水溶液に浸漬することを特徴とする[1]~[3]のいずれか一つに記載のチタノシリケートの製造方法。
[5]前記第九工程において、前記アルミノシリケートYNU-5を、100℃以上の温度で加熱することを特徴とする[1]~[4]のいずれか一つにチタノシリケートの製造方法。
[6]前記第一工程において、前記混合物にアルコールを添加することを特徴とする[1]~[5]のいずれか一つに記載のチタノシリケートの製造方法。
[7]前記第一シリカ源に対する前記水のモル比を、6以上8以下とすることを特徴とする請求項[1]~[6]のいずれか一つに記載のチタノシリケートの製造方法。
[8]前記第十工程後に、さらに焼成を行うことを特徴とする[1]~[7]のいずれか一つに記載のチタノシリケートの製造方法。
[9]アルミノシリケートYNU-5の骨格内のアルミニウムの一部が、チタンに置き換えられてなり、粒径が1000nm以上2000nm以下であることを特徴とするチタノシリケート。
[10]アルミノシリケートYNU-5の骨格内に含まれるシリコンとチタンのモル比(Si/Ti)が、60以上であることを特徴とする[9]に記載のチタノシリケート。
本発明のチタノシリケートの製造方法では、アルミノシリケートYNU-5を基本骨格として用いる。YNU-5は、その合成における構造規定剤として、MCM-68を基本骨格とする場合に用いるTEBOPに比べて、よりシンプルな構造のものを用いることができる。したがって、本発明では、基本骨格のアルミノシリケートを容易に合成することができ、その分のチタノシリケートを製造する上での低コスト化、省エネルギー化が可能となる。
このように、本発明のチタノシリケートの製造方法によれば、MCM-68を基本骨格として用いる場合に比べて、チタノシリケートを効率よく製造することが可能となる。本発明のチタノシリケートの製造方法によって合成されるチタノシリケートは、粒径が1000nm以上2000nm以下であり、MCM-68を基本骨格として用いて得られたチタノシリケートより大きいが、これと同等の触媒性能を発揮することができる。
アルミノシリケートYNU-5に対し、チタン処理を行う装置の構成例を示す図である。 製造したチタノシリケートについて、X線回折による分析を行った結果を示すグラフである。 製造したチタノシリケートに対する、DR/UV-vis測定結果を示すグラフである。 (a)~(d)チタノシリケートの製造過程におけるSEM像である。
以下、本発明を適用した実施形態であるチタノシリケートとその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
[第一実施形態]
第一実施形態に係るチタノシリケートの製造方法は、アルミノシリケートYNU-5を構成するAlの一部をTiに同型置換して、チタノシリケート[Ti]-YNU-5を調製するものである。各製造工程の処理について、以下に説明する。
<第一工程(第一調製工程)>
まず、アルミノシリケートYNU-5の原料として、第一シリカ源、アルカリ源、水、および構造規定剤を容器に入れて攪拌しながら、それらの混合物(ゲル)を調製する。アルミノシリケートYNU-5の原料として、さらにエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを添加してもよい。この場合には、粒子径を制御することができる等の効果が得られる。
第一シリカ源としては、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどのうち、1種又は2種以上等が挙げられる。本実施形態においては、コロイダルシリカ((SiOLudox、LUDOX(登録商標))を用いることが好ましい。
アルカリ源としては、特に限定は無いが、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)などのうち、1種、または2種以上を用いるのが好ましく、この中でも水酸化ナトリウム(NaOH)および水酸化カリウム(KOH)を用いるのがより好ましい。
構造規定剤としては、例えば、ジメチルジプロピルアンモニウム塩(化合物)が好ましく、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド(MePrNOH)がより好ましい。Me、Prは、それぞれメチル基(CH)、プロピル基(CHCHCH)を示している。MePrNOHの製造方法については、製造例として後述する。
混合物中の全ての第一シリカ源に対する水の含有比率(モル比)は、6以上8以下とすることが好ましい。水の含有比率をこのように低くすることにより、有機物濃度が高く、細孔容積が大きいゼオライトが得られることになる。
<第二工程(第一加熱工程)>
次に、第一工程で調製した混合物を、攪拌しながら加熱する。具体的には、60℃以上に加熱されたホットプレート上で混合物を攪拌しながら、混合物を所定の量まで濃縮するために水を一部蒸発させる。
<第三工程(冷却工程)>
次に、第一加熱工程で加熱した混合物を、室温程度まで冷却する。なお、第二工程と第三工程とは、セットで省略することも可能である。
<第四工程(第二調製工程)>
次に、第三工程で冷却した混合物を、必要に応じて、第二シリカ源およびアルミナ源を加えて再調製する。第二シリカ源およびアルミナ源としては、Y型ゼオライト(SiOFAU、(AlOFAU)を用いる。Y型ゼオライト中のシリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)は、通常、2.5以上50以下であるが、3以上20以下が好ましく、3.5以上10以下がより好ましく、4以上6以下がさらに好ましく、約5.3が最も好ましい。アルミナ源としては、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウム等のうち、1種又は2種以上を用いることもできる。
なお、再調製した混合物中において、全シリカ源((SiOLudox、(SiO)FAU)に対する(SiOLudoxの含有比率(mol%)は、通常、30から90%であり、50から80%であれば好ましく、より好ましくは60から75%であればより好ましく、74%程度であれば最も好ましい。また、同じ混合物中の全シリカ源に対するアルカリ源(NaOH等)の含有比率(mol%)は、通常、0.05~0.6%であり、好ましくは0.1~0.5%、より好ましくは0.2~0.4%である。NaOHとKOHを両方用いる場合は、NaOH、KOHの含有比率は、いずれも0.15%程度とすることが好ましい。また、同じ混合物中の全シリカ源に対する構造規定剤の含有比率は、通常、0.05~0.5%、好ましくは0.1~0.4%、さらに好ましくは、0.15~0.3%であり、0.17%程度とすることが最も好ましい。また、同じ混合物中の全シリカ源に対する(SiOFAUの含有比率(モル比)は、通常、10~70%であり、15~50%であれば好ましく、20~35%であればより好ましく、25%程度であれば最も好ましい。
上述した組成になるように、(SiOLudox、NaOH、KOH、HOについては、上述した含有比率となるように、第一工程で混合する量を調整する。また、(SiOFAU、(AlOFAUについては、上述した含有比率となるように、第四工程で混合する量を調整するのが好ましい。
さらに、再調製した混合物中において、全シリカ源に対する水(HO)の含有比率(モル比)は、通常、4~50であり、5~30であれば好ましく、5.5~12であればより好ましく、6~8であればさらに好ましく、約7であれば最も好ましい。混合物中のHOの含有比率をこのように低くすることにより、有機物濃度が高く、細孔容積が大きいゼオライトが得られることになる。
<第五工程(第二加熱工程)>
第四工程で再調製した混合物(原料)を、通常、室温で攪拌した上で加熱する。ここでの加熱は、室温の混合物を、オートクレーブに収容した状態で、通常、100~200℃、好ましくは、120~190℃、より好ましくは、140~180℃、さらに好ましくは、150~170℃であり、約160℃が最も好ましい。オーブン中に通常、12時間から10日間程度、好ましくは1日から7日間程度、静置、あるいは撹拌状態で行う。
<第六工程(乾燥工程)>
次に、第2の加熱工程で加熱した混合物を、洗浄およびろ過した上で、さらに乾燥させる。ここでの乾燥の方法には、例えば、洗浄およびろ過した混合物を、約80℃のオーブン中に一晩静置して行う方法、天日で干して行う方法等がある。
以上の工程を経て、ゼオライトの結晶性固体を含有する有機複合体(粉末)を得る。
(第七工程(第三加熱工程))
乾燥工程を経て得た有機複合体に対して、さらに加熱(焼成)を行うことにより、包接されている有機物(構造規定剤として用いたMePrNOH)を除去することができる。ここでの加熱は、得られた結晶性固体を、マッフル炉に収容した状態で約550℃の加熱を行う。具体的には、約1.5℃/minで室温から550℃程度まで昇温し、この温度を約6時間保持し、最後に放冷する。
第一工程から第七工程を経ることにより、アルミニウムを多く含有し、結晶化したゼオライト(アルミノシリケートYNU-5)を得ることができる。
アルミノシリケートYNU-5の構造は、X線回折(XRD)による分析結果から、一義的に特定することができる。後述する実施例おいて、アルミノシリケートYNU-5に対するX線回折の分析結果が得られており、当業者であれば、この分析結果に基づいて、アルミノシリケートYNU-5の実際の構造を推定することができる。
すなわち、本実施形態に係るアルミノシリケートYNU-5は、粉末X線回折法による測定で、少なくとも、表1に示す格子面間隔d(d-spacing)(Å)が検出されるゼオライトである。より具体的には、アルミノシリケートYNU-5は、粉末X線回折法による測定で、少なくとも、表1に示す格子面間隔d(Å)および相対強度を含むX線回折パターンを有するゼオライトである。相対強度は、X線回折パターンに含まれるピークのうち最大のピークの強度を100とし、これに対する他のピークの強度の比率を示している。ここでは、格子面間隔d(Å)が3.43±0.10に対応するピークの強度が最大となっている。
Figure 0007284990000001
アルミノシリケートYNU-5は、単純な構造を有する構造規定剤としてジメチルジプロピルアンモニウム化合物を用い、さらに、原料として用いる水の比率を、同じく原料に用いるシリカ源の約6~8倍程度とすることによって得られる。これにより、アルミノシリケートYNU-5は、水の比率を高くして製造する従来のゼオライトに比べて、容易かつ確実に、高純度で製造することができ、大量生産を実現しやすくなる。また、構造規定剤の合成が簡略化される分、合成プロセスに要するエネルギーを低減することができ、製造コストを大幅に下げることができる。
(第八工程)
次に、結晶化したYNU-5の粉末を焼成する。焼成温度は、400℃以上900℃以下の範囲であれば好ましく、500℃程度であればより好ましい。焼成時間は、3時間以上24時間以下の範囲であれば好ましく、10時間であればより好ましい。
(第九工程)
焼成したYNU-5の粉末(結晶)に対して、硝酸、塩酸、硫酸などの酸性溶液を用いて酸処理(脱アルミ処理)を行う。具体的には、YNU-5の粉末を酸性溶液に混合し、一定時間の攪拌の後に、加熱して乾燥させる。これにより、YNU-5の骨格から、一部のアルミニウムを除去(脱アルミ)することができる。この酸処理に用いる酸性溶液とその濃度、乾燥温度、乾燥時間については、脱アルミ後のYNU-5に含まれるシリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)が、結晶構造の安定性を考慮し、300以上となるように調整して決定する。実際には、酸性溶液として、例えば硝酸、硫酸等の酸処理剤を、約55重量%以上65重量%以下、好ましくは約60重量%の濃度で含む溶液が用いられる。酸処理は、約100℃以上150℃以下の温度で、1~24時間程度行う。これより弱い条件で酸処理を行うと、アルミニウムを十分に除去しきれず、チタンを取り込めないため、アルミニウムのチタンへの置き換え効率が低くなってしまう。また、これより強い条件で酸処理を行うと、アルミニウムが過剰に除去されてしまうため、残った結晶粒子同士のバランスが崩れ、YNU-5の結晶構造が壊れてしまう。
(第十工程)
酸処理したYNU-5の粉末に対して、チタン処理、すなわち、YNU-5の骨格のうちアルミニウムが除去されたサイトに、チタンを導入する処理を行う。具体的には、酸処理したYNU-5を、気相の塩化チタンまたはチタンアルコキシドとともに加熱する。図1は、チタン処理装置10の構成例を示す図である。
チタン処理装置10は、主に、ガラス管11と、ガラス管11の周囲に配された加熱器(ヒーター)12と、加熱器12に接続された温度コントローラー13と、チタン源を収容した容器14と、不活性ガスの供給源15とを備えている。ガラス管11、チタン源の容器14、不活性ガスの供給源15は、四方バルブ16を介して互いにチューブで接続されており、不活性ガスに対し、直接ガラス管11に向かう流路と、チタン源の容器14を経由してガラス管11に向かう流路と、が随時切り替わるように構成されている。
チタン処理の手順について、図1を用いて説明する。まず、酸処理したYNU-5の結晶Sを、石英ウール等の繊維材料(不図示)で囲み、この繊維材料を介してガラス管11の内部に固定する。
続いて、不活性ガスが直接ガラス管11に向かうように流路を切り換え、ガラス管11内にアルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを流通させた状態で、YNU-5結晶Sの加熱を行う。加熱温度は、300℃以上800℃以下であることが好ましく、500℃程度であればより好ましい。加熱時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましく、4時間程度であればより好ましい。
続いて、不活性ガスがチタン源の容器14を経由してガラス管11に向かう流路に切り替え、ガラス管11内に、不活性ガスおよびチタン源となる気相の塩化チタンまたはチタンアルコキシドを流通させた状態で、YNU-5結晶Sの加熱を行う。加熱温度は、300℃以上800℃以下であることが好ましく、600℃程度であればより好ましい。加熱時間は、0.5時間以上6時間以下であることが好ましく、1時間程度であればより好ましい。
ここで用いる塩化チタンとしては、例えば、TiCl、TiClなどが挙げられる。また、ここで用いるチタンアルコキシドとしては、例えば、Ti(OMe)、Ti(OEt)、Ti(OPr)、Ti(OPr-i)、Ti(OBu)などが挙げられる。
続いて、不活性ガスが直接ガラス管11に向かうように流路を切り換え、加熱温度、加熱時間は変えずに、再びガラス管11内に不活性ガスを流通させることにより、YNU-5の結晶S中に残存する未反応のチタン源を除去する。
最後に、チタン処理されたYNU-5の結晶Sを室温まで放冷し、蒸留水で洗浄し、約80℃のオーブン中で乾燥させる。
上述した工程処理によって、アルミノシリケートYNU-5の基本骨格を有し、Alの一部がTiに置き換わったチタノシリケート[Ti]-YNU-5を合成することができる。合成されたチタノシリケートの骨格内において、シリコンとチタンのモル比(Si/Ti)は60以上となる。
触媒機能を向上させる観点から、合成した[Ti]-YNU-5に対しては、さらに焼成を行うことが好ましい(第十一工程)。焼成温度は、300℃以上800℃以下の範囲であれば好ましく、650℃程度であればより好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下の範囲であれば好ましく、4時間程度であればより好ましい。
第十工程後または第十一工程後のチタノシリケートは、粒径が1000nm以上2000nm以下であり、MCM-68を基本骨格として用いて得られたチタノシリケートより大きいが、実施例として後述するように、これと同等の触媒性能を発揮することができる。得られたチタノシリケートの粒径は、例えば、日本工業規格JIS Z8827-1によって定義される、画像解析法等を用いて測定することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るチタノシリケートの製造方法では、アルミノシリケートYNU-5を基本骨格として用いる。YNU-5は、その合成における構造規定剤として、MCM-68を基本骨格とする場合に用いるTEBOPに比べて、よりシンプルな構造のものを用いることができる。したがって、本実施形態では、基本骨格のアルミノシリケートを容易に合成することができ、その分のチタノシリケートを製造する上での低コスト化、省エネルギー化が可能となる。
このように、本実施形態に係るチタノシリケートの製造方法によれば、MCM-68を基本骨格として用いる場合に比べて、チタノシリケートを効率よく製造することが可能となる。
以下、実施例により、本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(構造規定剤の製造例)
本発明のゼオライト([Ti]-YNU-5cal)の構造規定剤として用いる、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシドの製造例を示す。
[ステップ1]
まず、次式で示すように、ジプロピルジメチルアンモニウムを合成した。
Figure 0007284990000002
この合成を、次の手順で行った。まず、ジプロピルアミン(東京化成工業(株)製)60mLと、メタノール(和光純薬工業(株)製)350mLを、1Lナスフラスコ中で混合し、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製)90gを加えて、室温で10分間撹拌した。ここに、ヨードメタン(和光純薬工業(株)製)68mLを、30分間にわたってゆっくり加え、最後に50mLのメタノールを追加した。
次に、室温で72時間攪拌し、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)200mLを加えて、室温でさらに20分間撹拌した。
次に、グラスフィルター(G4)を用いて吸引濾過し、得られた固形物を150mLのクロロホルムで洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせて1Lナスフラスコにとり、エバポレーターを用いて40℃で減圧し、乾固させた。
次に、200mLのクロロホルム(和光純薬工業(株)製)を加えて生成物を抽出し、不溶性の無機塩を吸引ろ過により取り除いた。ろ液は、1Lナスフラスコにとり、再度減圧して乾固させた。200mLのクロロホルムで生成物を抽出し、無機塩を吸引ろ過により取り除いて、透明なろ液を1Lナスフラスコに受けた。ろ液を減圧乾固させ、次いで100mLのベンゼン(和光純薬工業(株)製)を加えて再度乾固させた。
次に、150mLの2-プロパノール(和光純薬工業(株)製)を加え、100℃のオイルバス上で加熱し、粗結晶を溶解させた。放冷後、150mLのジエチルエーテル (和光純薬工業(株)製) をゆっくり加え、結晶を再沈殿させた。これを、グラスフィルター(G3)を用いて吸引ろ過し、固体を、ジエチルエーテル:2-プロパノール=3:2(体積比)の混合液150mLを用いて洗浄した。得られた結晶を真空乾燥した。生成物MePrNI(ジメチルジプロピルアンモニウムヨージド)の収量は、105.5g(収率90%)であった。
生成物のNMR分析値として、H NMR(500MHz、CDCl)で測定した場合と、13C NMR(126MHz、CDCl)で測定した場合に、得られた化学シフトδを、以下に示す。
(i)H NMR(500MHz、CDCl)で測定した場合のδ:
1.07(6H、t、J=7.4Hz、CH-CH-CH
1.82(4H、m、CH-CH-CDCl
3.38(6H、s、N-CH
3.54(4H、m、N-CH-CH
(ii)13C NMR(126MHz、CDCl)で測定した場合のδ:
10.58、16.40、51.52、65.80
[ステップ2]
次に、次式で示すように、ステップ1で得たMePrNIを、MePrNOH(ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド)に変換した。
Figure 0007284990000003
この変換を、次の手順で行った。まず、ステップ1で合成したジメチルジプロピルアンモニウムヨージド75.22gを、1LのPPボトルに入れ、続いて強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 SA10A(OH))325.73gを加えた。次に、HO(Milli-Q)500mLを加え、容器を軽く振り混ぜたのち、120時間冷暗所に静置した。
次に、グラスフィルター(G4)により吸引濾過し、フィルター上の樹脂をHO(Milli-Q)300mLでよく洗浄し、ろ液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた溶液の重量は133.37gであり、0.05Mの塩酸滴定により求めたMePrNOHの濃度は、2.097mmol/g(イオン交換率96%)であった。MePrNIからMePrNOHへの変換は、単なるイオン交換であり、MePrNOHのNMRスペクトルは、MePrNIに対するものと同様である。
(実施例1)
製造例1で得たMePrNOHを構造規定剤として用い、ゼオライト(アルミノシリケートYNU-5)の合成を行った。この合成を、次の手順で行った。まず、内容積150mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、製造例1で得たMePrNOH水溶液(2.097mmol/g)を16.21gとり、9.37gのNaOH水溶液(3.200mmol/g)、9.53gのKOH水溶液(3.153mmol/g)、21.39gのLudox AS-40(アルドリッチ社製)を順次加えた(第一工程)。
次に、80℃以上のホットプレート上で3時間撹拌することにより、20.26gの水を蒸発させた(第二工程)。得られた混合物を室温まで冷やしたのち(第三工程)、4.99gのY型ゼオライト(H30.5Al30.5Si161.5384、東ソー(株)製、HSZ-350HUA)を加え(第四工程)、室温で10分間撹拌した。得られた混合物の組成は、1.0SiO-0.025Al-0.17MePrNOH-0.15NaOH-0.15KOH-7HOとなった。
この混合物を、内容積125mLのフッ素樹脂(PTFE)製内筒つきオートクレーブに移し、これを160℃のオーブン中に165時間静置した(第五工程)。得られた固体生成物は、ろ過で回収し、80℃のオーブン中で一晩乾燥させた(第六工程)。得られた白色粉末の重量は6.84gであった。
このうち5.02gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中の空気雰囲気下で室温から毎分1.5℃の速度で昇温し、550℃で6時間保持し、その後放冷した(第七工程(焼成工程))。こうして白色粉末(焼成後)4.90gを得た。
焼成して得られた[Ti]-YNU-5結晶のサンプル2.023gを、ガラス製のナス型フラスコに入れ、ここに濃硝酸水溶液(市販品・濃度13.4M)83.33gを加えて還流し、148℃の油浴で加熱しながら24時間攪拌した(第八工程)。その後、サンプルを濾過し、濾過されてくる濾液が中性になるまで蒸留水で洗浄し、室温で乾燥して、脱アルミ状態の[Al]-YNU-5結晶(白色粉末1.551g)を得た。この時点で、結晶中の一部のアルミニウムが除去され、試料中のアルミニウムの含有比量は、0.012mmol/gとなった。
図1のチタン処理装置10を用いて、YNU-5の骨格のうち、アルミニウムが除去されたサイトにチタンを導入した(第九工程)。
まず、酸処理したYNU-5の結晶Sを、石英ウールで囲み、石英ウールを介してガラス管11の内部に固定した。
続いて、アルゴンガスが直接ガラス管11に向かうように流路を切り換え、ガラス管11内にアルゴンガスを流通させた状態で、YNU-5結晶Sの加熱を行った。加熱温度を500℃とし、加熱時間を4時間とした。流通させるアルゴンガスの流速は、30mL/minとした。
続いて、アルゴンガスがチタン源の容器14を経由してガラス管11に向かう流路に切り替え、ガラス管11内に、アルゴンガスおよびチタン源となる気相の四塩化チタンを流通させた状態で、YNU-5結晶Sの加熱を行った。加熱温度を600℃とし、加熱時間を1時間とした。流通させるアルゴンガスの流速は、30mL/minとした。また、四塩化チタンの流速は、2.2mL/minとした。
続いて、不活性ガスが直接ガラス管11に向かうように流路を切り換え、加熱温度、加熱時間は変えずに、再びガラス管11内に不活性ガスを流通させることにより、YNU-5結晶S中に残存する未反応のチタン源を除去した。
最後に、結晶Sを室温まで放冷し、蒸留水で洗浄し、約80℃のオーブン中で乾燥させた。
上述した工程処理によって、アルミノシリケートYNU-5の基本骨格を有し、Alの一部がTiに置き換わったチタノシリケート[Ti]-YNU-5を合成することができた。
合成した[Ti]-YNU-5に対して、さらに焼成を行った(第十工程)。具体的には、空気雰囲気下において、室温より約1℃/minで650℃まで昇温し、650℃で4時間保持し、最後に放冷した。焼成されたチタノシリケートの骨格内において、シリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)は375、シリコンとチタンのモル比(Si/Ti)は64.9であった。
(実施例2)
本発明のチタノシリケートの製造方法において、第一工程~第九工程を経た[Ti]-YNU-5粒子サンプルを作製した。具体的な作製手順については、実施例1の第一工程~第九工程と同様とした。合成されたチタノシリケートの骨格内において、シリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)は370、シリコンとチタンのモル比(Si/Ti)は63.1であった。
(比較例1)
第一実施形態のチタノシリケートの製造方法において、第一工程~第八工程を経たYNU-5粒子サンプル(deAl-YNU-5)を作製した。具体的な作製手順については、実施例1の第一工程~第八工程と同様とした。脱アルミ処理後のアルミノシリケートの骨格内において、シリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)は300であった。
(比較例2)
第一実施形態のチタノシリケートの製造方法において、第一工程~第七工程を経たYNU-5粒子サンプル([Al]-YNU-5cal)を作製した。具体的な作製手順については、実施例1の第一工程、第七工程と同様とした。焼成されたアルミノシリケートの骨格内において、シリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)は8.7であった。
(比較例3)
第一実施形態のチタノシリケートの製造方法において、第一工程~第六工程を経たYNU-5粒子サンプル([Al]-YNU-5as)を作製した。具体的な作製手順については、実施例1の第一工程と同様とした。
(比較例4)
触媒学会によって、アジア参照触媒(Asia Reference Catalyst; ARC)として指定され、配布されているチタニウムシリカライト-1(TS-1)を準備した。
[X線回折パターンの評価]
実施例1、2、比較例1~3のサンプルについて、X線回折(XRD)の分析を行った。分析結果を示す回折パターンを、図2のグラフに示す。グラフの横軸は回折角度を示し、縦軸は回折強度を示している。上段側から下段側に向かって順に、実施例1、2、比較例1~3のサンプルの回折パターンが並んでいる。いずれのサンプルにおいても、同様のXRDパターンが得られており、各工程の前後で高い結晶性が維持されていることが分かる。
[Ti配位状態の評価]
実施例1、比較例4のサンプルにおけるTiの含有率は、それぞれ、0.262mmol/g、0.367mmol/gであった。これらのサンプルについて、DR/UV-vis測定を行い、Ti配位状態を評価した。測定したDR/UV-Visスペクトルを、図3のグラフに示す。グラフの横軸は波長(nm)を示し、縦軸はKubelka-Munk関数を示している。グラフ中の(a)、(b)のDR/UV-Visスペクトルは、それぞれ、実施例1、比較例4のサンプルに対応している。
波長が200~230nmの領域は、骨格内の4配位Tiに相当する吸収を示す領域である。波長が250~290nmの領域は、骨格外の5配位ないし6配位Tiに相当する吸収を示す領域である。
実施例1のサンプルに対応するDR/UV-Visスペクトルが、いずれも、比較例4のサンプルと同様に、波長が200~230nmの領域にピークを有している。この結果から、YNU-5を基本骨格としてチタノシリケートを合成した場合であっても、骨格内にチタンが正しく導入されていることが分かる。
(SEM像評価)
図4(a)~(d)は、それぞれ、比較例2、比較例1、実施例2、実施例1として得られたサンプルのSEM像である。4つのSEM像の比較から、サンプルに含まれる粒子の形状、大きさがほぼ変わらないことが分かる。つまり、YNU-5を構成するAlに対するTiによる置き換えが、YNU-5の結晶構造を崩すことなく安定して行われていることが分かる。
[フェノール酸化反応に対する触媒性能の評価]
実施例1、比較例4のサンプルを触媒とする、次の化学反応式に示すフェノール酸化反応の実験を行った。
Figure 0007284990000004
実験の具体的な手順について説明する。初めに、ガラス製耐圧容器中で、触媒20mg、フェノール2.00g(21.3mmol)、過酸化水素水(30wt%)0.48g(4.25mmol)を混合し、70℃で60分間撹拌した。反応終了後、容器を氷冷しつつ、スルホラン2.0g(16.64mmol)で希釈した。内部標準物質として、アニソール0.225g(2.080mmol)を加えてよく混合した後、遠心分離(1000rpm、10分)により、反応液と触媒を分離した。
次いで、上澄み液約100mgに過剰量の無水酢酸(約0.4g)および炭酸カリウム(約0.6g)を加え、反応液全体を約20~30℃に保ちつつ時々振動させながら20分間置くことにより、存在するフェノール系化合物を徹底的にアセチル化した。その後クロロホルムで希釈し、ガスクロマトグラフ装置(島津製作所製GC-2014、検出器:FID、カラム:DB-1 0.25mm×30m×1.00μm)を用いて分析した。また、未反応の過酸化水素を定量するために、2.0mol/L塩酸水溶液50mLに遠心分離の上澄み液0.5gとヨウ化カリウム0.8gを加え、約0.1mol/Lの正確な濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。
上記分析の結果、ヒドロキノン(二価フェノールのパラ異性体)HQ、カテコール(二価フェノールのオルト異性体)CL、HQがさらに酸化されたパラベンゾキノンp-BQが検出された。
この実験における各サンプルのTiの含有量(Ti content)、触媒回転数(TON)、収率(yield)、パラ体の選択率(p-sel.(%))、Hの転化率(H(%)conv.)、Hの有効利用率(H(%)eff.)について、表1に示す。(eff.はEfficiencyの短縮形。)
Figure 0007284990000005
表1では、上段が実施例1のサンプルでの結果を示し、下段が比較例4のサンプルでの結果を示している。実施例1のサンプルにおいては、HQとCLが同程度の割合で生成され、さらに、HQのうち半分程度が反応してp-BQとなっていることが分かる。また、比較例4のサンプルにおいては、HQが主生成物であり、少量が過剰反応でp-BQとなっており、また、CLも少量生成されていることが分かる。
HQ、p-BQ、CLの収率の和を、total(トータル収率)として示している。また、パラ体の選択率(p-sel.)を、HQとp-BQの和をtotalで割ったものとして示している。TON(触媒回転数)は、トータルの生成物の物質量(モル数)を、Ti活性点のモル数で割ったものである。つまり、TONは、反応開始から反応終了まで(ここでは10分間)に、触媒サイクルが何回回転したかの指標となるものである。
(%)eff.(H有効利用率)は、過酸化水素の有効利用率であり、過酸化水素中の酸素が、どの程度の効率でフェノール酸化に関わったかを示す指標となるものである。
表1の結果から、チタノシリケート[Ti]-YNU-5のサンプルは、十分なフェノール酸化活性およびパラ選択性を示しており、TONの比較から、チタニウムシリカライトTS-1を用いた比較例4のサンプルと同等の性能を有していることが分かる。
フェノール酸化の触媒として、実施例1のサンプルとともに、エタノール(EtOH)、n-プロピルアルコール(1-プロパノール;n-PrOH)、イソピロピルアルコール(2-プロパノール;i-PrOH)、n-ブチルアルコール(1-ブタノール;n-BuOH)等の共溶媒を添加した場合について、分析を行った。共溶媒を添加したそれぞれの場合、および共溶媒を添加しなかった場合における、Tiの含有量、触媒回転数、収率、パラ体の選択率、Hの転化率、Hの有効利用率(H(%)eff.)について、表2に示す。
Figure 0007284990000006
表2の結果から、触媒[Ti]-YNU-5に対し、共溶媒を添加しない場合、あるいは共溶媒としてエタノールを添加する場合にはCLが多く生成され、n-PrOHを添加する場合には、HQとCLが同程度生成され、i-PrOH、n-BuOHを添加する場合には、HQが多く生成されることが分かる。したがって、添加する共溶媒の種類を変えることによって、生成される異性体を選択することができる。
[シクロヘキセン酸化反応に対する触媒性能の評価]
実施例1、比較例4のサンプルを触媒とする、次の化学反応式に示すシクロヘキセン酸化反応の実験を行った。
Figure 0007284990000007
実験の具体的な手順について説明する。初めに、ガラス製耐圧容器中で、触媒25mg、シクロヘキセン0.4108g(5.0mmol)、過酸化水素水(30wt%)0.5486g(5.0mmol)、アセトニトリル5mlを混合し、60℃で120分間撹拌した。攪拌後の液体について分析を行った。分析の結果、エポキシド体(Epoxide)、ジオール体(Diol)、ヒドロペルオキシド体(OOH)、アルコ―ル体(1-Ol)、ケトン体(1-One)が検出された。
この実験における各サンプルのTiの含有量(Ti content)、触媒回転数(TON)、収率(yield)、選択率(selectivity(%))について、表3に示す。
Figure 0007284990000008
表3では、上段、中段が実施例1の条件で作製した二つのサンプルでの結果を示し、下段が比較例4の条件で作製したサンプルでの結果を示している。実施例1の二つのサンプルにおいては、Epoxideが主生成物であり、Diol、OOH、1-Olが、少量の副生成物となっていることが分かる。また、比較例4のサンプルにおいては、OOHが主生成物であり、Epoxide、Diol、1-Olが、少量の副生成物となっていることが分かる。
表3の結果から、チタノシリケート[Ti]-YNU-5のサンプルは、十分なシクロヘキセン酸化活性および生成物選択性を示しており、TONの比較から、チタニウムシリカライトTS-1を用いた比較例4のサンプルを、はるかに上回る性能を有していることが分かる。
[1-ヘキセン酸化反応に対する触媒性能の評価]
実施例1、比較例4のサンプルを触媒とする、次の化学反応式に示すシクロヘキセン酸化反応の実験を行った。
Figure 0007284990000009
実験の具体的な手順について説明する。初めに、ガラス製耐圧容器中で、触媒25mg、1-ヘキセン0.4208g(5.0mmol)、過酸化水素水(30wt%)0.5486g(5.0mmol)、アセトニトリル5mlを混合し、60℃で120分間撹拌した。攪拌後の液体について分析を行った。分析の結果、エポキシド(Epoxide)、ジオール(Diol)が検出された。
この実験における各サンプルのTiの含有量(Ti content)、触媒回転数(TON)、収率(yield)、選択率(selectivity(%))について、表4に示す。
Figure 0007284990000010
表4では、上段が実施例1の条件で作製したサンプルでの結果を示し、下段が比較例4の条件で作製したサンプルでの結果を示している。実施例1のサンプルにおいては、Epoxideが主生成物であり、Diolが少量の副生成物となっていることが分かる。また、比較例4のサンプルにおいても、Epoxideが主生成物であり、Diolが少量の副生成物となっていることが分かる。
表4の結果から、チタノシリケート[Ti]-YNU-5のサンプルは、十分な1-ヘキセン酸化活性および生成物選択性を示しており、TONの比較から、チタニウムシリカライトTS-1を用いた比較例4のサンプルを、上回る性能を有していることが分かる。
本発明のチタノシリケートの製造方法は、主要な基礎化学品であるエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・二価フェノール類などの製造プロセスにおける触媒を得る方法として、利用することができる。
10 チタン処理装置
11 ガラス管
12 加熱器
13 温度コントローラー
14 チタン源の容器
15 不活性ガスの供給源
16 四方バルブ

Claims (8)

  1. アルミノシリケートの骨格内のアルミニウムの一部を、チタンに置き換えてなるチタノシリケートの製造方法であって、
    第一シリカ源、アルカリ源、水、および構造規定剤の混合物を、攪拌しながら調製する第一工程と、
    調製した前記混合物を、攪拌しながら加熱する第二工程と、
    加熱した前記混合物を冷却する第三工程と、
    冷却した前記混合物に、第二シリカ源およびアルミナ源を加えて攪拌しながら再調製する第四工程と、
    再調製した前記混合物を加熱する第五工程と、
    加熱した前記混合物を、洗浄およびろ過した上で乾燥させる第六工程と、
    前記第六工程を経て得た有機複合体を加熱し、包接されている有機物を取り除き、アルミノシリケートYNU-5を得る第七工程と、
    前記アルミノシリケートYNU-5を焼成する第八工程と、
    焼成した前記アルミノシリケートYNU-5を酸処理する第九工程と、
    酸処理した前記アルミノシリケートYNU-5を、気相の塩化チタンまたはチタンアルコキシドとともに加熱し、室温まで放冷し、洗浄し、乾燥させる第十工程と、を順に有し、
    前記構造規定剤として、ジメチルジプロピルアンモニウム化合物を用い、
    前記第一シリカ源に対する前記水のモル比を、6以上8以下とし、
    前記焼成の温度を400℃以上900℃以下、前記焼成の時間を3時間以上24時間以下とし、
    前記酸処理に用いる酸性溶液を、硝酸、塩酸、または硫酸を55重量%以上65重量%以下の濃度で含む溶液とし、
    前記酸処理の温度を100℃以上150℃以下とし、前記酸処理の時間を1時間以上24時間以下とし、
    前記酸処理を、前記アルミノシリケートYNU-5に含まれるシリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)が、300以上となるように行い、
    前記第十工程の加熱温度を300℃以上800℃以下、加熱時間を0.5時間以上6時間以下とし、
    最終工程後のチタノシリケートの粒径を1000nm以上2000nm以下とすることを特徴とするチタノシリケートの製造方法。
  2. 前記第一シリカ源としてコロイダルシリカを用い、前記第二シリカ源および前記アルミナ源としてY型ゼオライトを用いることを特徴とする請求項1に記載のチタノシリケートの製造方法。
  3. 前記第九工程において、前記アルミノシリケートYNU-5を、硝酸が60重量%以上含まれる水溶液に浸漬することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のチタノシリケートの製造方法。
  4. 前記第九工程において、前記アルミノシリケートYNU-5を、100℃以上の温度で加熱することを特徴とする請求項1~のいずれか一項チタノシリケートの製造方法。
  5. 前記第一工程において、前記混合物にアルコールを添加することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のチタノシリケートの製造方法。
  6. 前記第十工程後に、さらに焼成を行うことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のチタノシリケートの製造方法。
  7. アルミノシリケートYNU-5の骨格内のアルミニウムの一部が、チタンに置き換えられてなり、粒径が1000nm以上2000nm以下であることを特徴とするチタノシリケート。
  8. アルミノシリケートYNU-5の骨格内に含まれるシリコンとチタンのモル比(Si/Ti)が、60以上であることを特徴とする請求項に記載のチタノシリケート。
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