JP2008049615A - インクジェットヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層構造のインクジェットヘッドにおいて、樹脂部材の耐インク性を向上させ寸法精度を確保する。
【解決手段】薄膜基板を積層して形成されたインクジェットヘッドであって、金属粒子160を混ぜた樹脂接着剤156によって接合され積層された薄膜基板と、前記積層された薄膜基板によって形成される流路内に露出した前記樹脂接着剤156の部分に形成された金属膜158と、を有することを特徴とするインクジェットヘッドを提供することにより前記課題を解決する。
【選択図】図9
【解決手段】薄膜基板を積層して形成されたインクジェットヘッドであって、金属粒子160を混ぜた樹脂接着剤156によって接合され積層された薄膜基板と、前記積層された薄膜基板によって形成される流路内に露出した前記樹脂接着剤156の部分に形成された金属膜158と、を有することを特徴とするインクジェットヘッドを提供することにより前記課題を解決する。
【選択図】図9
Description
本発明は、インクジェットヘッド及びその製造方法に係り、特に、ヘッド内面の樹脂部分のインクによる腐食を防止する技術に関する。
従来より、画像形成装置として、インクを吐出する多数のノズルを配列させたインクジェットヘッドを備え、このインクジェットヘッドと記録媒体を相対的に移動させながら、記録媒体に向けてノズルからインクを吐出することにより記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が知られている。
インクジェットヘッドは、インクタンクからインク流路を介して、ノズルと連通するインク室にインクを導き、例えばインク室内に圧力を発生させる等、様々な方法でノズルからインクを吐出する。
このときインクジェットヘッドのインク流路やインク室等を構成する部材のインクに接する部分がインクによって腐食するという問題があり、従来からこれに対する様々な対策が提案されて来た。
例えば、感光性樹脂により形成されるインクジェット記録ヘッドのインク流路、キャビティーの表面を、オゾン等の反応性ガスと接触させることにより、反応性ガスが感光性樹脂の重合反応を進行させ、耐インク性を向上させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
また例えば、インクジェットヘッドのインクと接触する金属部材の一部又は全部に、腐食防止処理を施して、耐インク性を向上させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2等参照)。なお、特許文献2には、具体的な腐食防止処理として、有機被膜としてシランカップリング剤、液状フォトレジストや感光性ポリイミド等を塗布したり、あるいは無機被膜や不導体膜を形成したり、または金属部分そのものに耐インク性を持たせることが開示されており、特に、金属部分そのものに耐インク性を持たせるためには、金属部分をNi合金で形成したり、あるいは金属部分が電鋳で表面の結晶性が高い電鋳部材から成るようにしたり、あるいは金属部分が電鋳で表面がNi合金電鋳である電鋳部材とすることが記載されている。
また例えば、薄板積層構造プリントヘッドを有するインクジェットプリンタにおいて、前記薄板積層構造を構成する各薄板とそれらを接合する接合層からなるインク流路部の全周にわたって耐食層が被覆されている耐食インクジェットプリントヘッドが知られている(例えば、特許文献3等参照)。また、特許文献3には、具体的には、部材に金属を用い、有機系の接着剤を使わず、ハンダめっきを接着剤代わりに使って接合し、ヘッドをめっき液につけて流路のめっきを行ったり、あるいはヘッド内部にめっき液を流すことで流路のめっきを行うことが記載されている。
特開平6−71895号公報
特開平8−80610号公報
特開平8−187867号公報
しかしながら、樹脂を使用してインクジェットヘッドを製造した場合に、インクに接触した樹脂の部分がインクにより腐食するという問題がある。
具体的には、接着剤を用いて部材を接合しインクジェットヘッドを形成した場合、インク流路等を形成する接合部分で露出した接着剤がインクに接触することにより溶解し、あるいは接着剤と部材の界面にインクが入り込むことで接着力が落ち、接合した部材が剥離してしまうという問題がある。
この問題に対して、例えば上記特許文献1に記載のものでは、反応性ガスを用いることで感光性樹脂の架橋が進むこともあるが、いわゆるUVオゾン洗浄のように有機物が分解されることもあるという問題がある。
また上記特許文献2に記載のものは、金属の腐食防止方法であり、接着剤など樹脂の腐食防止は考えられておらず、また接合前に部材に処理を行うため、接着剤による接合後における接着剤の腐食防止は行うことができないという問題がある。
また上記特許文献3に記載のものは、インクジェットヘッド製造後にヘッド内部にめっきを行う方法であるが、金属の腐食防止方法であり、接着剤など樹脂の腐食防止は考えられていない。また、部材接合後に流路にめっき液を流して流路全面にめっきする方法が開示されているが、全面にめっきをする場合、めっき液の流速が場所によって異なるなどめっき液の流れがヘッド内部で一様ではないことから、めっきの膜厚のバラツキが生じる。この厚さのバラツキは流路の径のバラツキになるため、特に精度が必要なインク供給口などの径がバラつき、その結果、吐出量や吐出速度のバラツキになるという問題がある。
また、上述したインクにより接着剤が溶解し部材が剥離するという問題に対しては、耐インク性の高い接着剤を用いることで改善は可能ではあるが、どのようなインクに対しても完全に腐食防止が可能とは言えず根本的な解決とは言えない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、接着剤によって接合して形成された積層構造のインクジェットヘッドにおいて、樹脂部材の耐インク性を向上させ、寸法精度を確保することのできるインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、薄膜基板を積層して形成されたインクジェットヘッドであって、金属粒子を混ぜた樹脂接着剤によって接合され積層された薄膜基板と、前記積層された薄膜基板によって形成される流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に形成された金属膜と、を有することを特徴とするインクジェットヘッドを提供する。
これにより、樹脂にのみ耐インク膜が形成可能であり、樹脂接着剤の熱膨張係数を小さくすることができ、樹脂のインクによる腐食を防止するとともに、寸法精度を確保することができる。
また、請求項2に示すように、前記金属膜はニッケル合金であることを特徴とする。これにより、金属膜の耐インク性を高くすることができる。
また、同様に前記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、薄膜基板を積層してインクジェットヘッドを形成するインクジェットヘッド製造方法であって、金属粒子を混ぜた樹脂接着剤によって前記薄膜基板を接合し積層して流路を形成する工程と、前記形成された流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に金属膜を形成する工程と、を含むことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法を提供する。
これにより、樹脂のインクによる腐食を防止するとともに、寸法精度を確保することができる。
また、請求項4に示すように、前記形成された流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に金属膜を形成する工程は、前記流路内にメッキ液を流す工程を含むことを特徴とする。
これにより、ヘッドの接合に使用した接着剤表面に耐インク膜を形成することができる。
また、請求項5に示すように、前記形成された流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に金属膜を形成する工程は、前記流路内にメッキ液を流す工程の前に樹脂のエッチング液を流す工程を有することを特徴とする。
これにより、樹脂の表面に金属粒子が出やすくなり、確実に樹脂部分に対してメッキを施すことができる。
また、同様に前記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、薄膜基板を積層してインクジェットヘッドを形成するインクジェットヘッド製造方法であって、樹脂接着剤によって前記薄膜基板を接合し積層して流路を形成する工程と、前記形成された流路に樹脂の表面改質剤を流す工程と、前記流路に金属膜形成のための処理液を流す工程と、を含むことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法を提供する。
これにより、簡単かつ安価に樹脂のみにメッキを成膜することができる。
また、請求項7に示すように、前記樹脂接着剤をポリイミド系接着剤とし、前記表面改質剤をアルカリ水溶液としたことを特徴とする。
これにより、耐熱性の高いポリイミド系接着剤を使用でき、さらにポリイミド上にのみ耐インク膜を形成することができる。
また、同様に前記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド、あるいは請求項3〜7に記載の方法で製造されたインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタを提供する。
これにより、使用するインクの種類の選択肢が広がり、耐久性のあるプリンタを提供することができる。
以上説明したように、本発明によれば、樹脂にのみ耐インク膜が形成可能であり、樹脂のインクによる腐食を防止するとともに、寸法精度を確保することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るインクジェットヘッド及びその製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドを有する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、印字ヘッドと言う。)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
図2に示すように、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、印字ヘッド(インクジェットヘッド)のノズル(液体吐出口)の配置について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図3では図示を省略した共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
このような印字ヘッド50上のノズル配置のサイズは特に限定されるものではないが、一例として、ノズル51を横48行(21mm)、縦600列(305mm)に配列することにより2400npiを達成する。
図3に示す例においては、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしているが、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではない。圧力室52には、図3に示すように、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。
また、図4は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図4に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
図5はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図5のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図5に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図5には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄化するようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧力発生手段(図示省略、後述)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧力発生手段の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧力発生手段を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、上述したような吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧力発生手段を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
図6はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50の圧力発生手段を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行うようになっている。
次に、本発明の特徴である、接着剤によって接合して形成された積層構造における樹脂部材(特に接着剤)に選択的に耐インク膜を形成したインクジェットヘッドについて詳しく説明する。
図7は、図3中の7−7線に沿った断面図である。
図7に示すように、圧力室ユニット54は、ノズルプレート151、複数の流路プレート152、振動板56、ピエゾカバー153等の複数の薄板プレートが積層されて形成されている。ノズルプレート152にはインクを吐出するノズル51が形成され、複数枚の流路プレート152には、圧力室52や共通流路55、圧力室52にインクを供給する供給口(絞り)53、圧力室52とノズル51を連通するノズル流路51a等が形成されている。
圧力室52は、一方でノズル流路51aを介してノズル51と連通するとともに、他方で供給口(絞り)53を介して共通流路55と連通している。圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上面には振動板56に圧力を付与して振動板56を変形させる圧電素子58が接合されている。圧電素子58の上面には個別電極57が形成されている。振動板56は共通電極を兼ねており、圧電素子58は、共通電極(振動板56)と個別電極によって挟まれている。
これら2つの電極(共通電極56、個別電極57)に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形するようになっている。圧電素子58の変形によって振動板56が圧力室52側に押され、圧力室52の容積が縮小されてノズル51からインクが吐出されるようになっている。2つの電極56、57間への電圧印加が解除されると圧電素子58がもとに戻り、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通流路55から供給口53を介して新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
振動板56(及び圧電素子58)の上側にはピエゾカバー153が形成され、圧電素子58を保護するとともに、圧電素子58の上側の部分には空間153aが形成され圧電素子58の駆動を妨げないようになっている。
なお、図7では省略したが、ピエゾカバー153の上側には、これらの電極56、57に電気を供給するための配線が形成されたフレキシブル配線基板あるいはリジッド基板等の配線部が形成されている。
図8に、図7に円で囲んだノズル51の周辺を拡大して示す。
図8に示すように、ノズルプレート151に形成されたノズル51は、流路プレート152に形成されたノズル流路51aと連通しており、さらにノズル流路51aは図8には示されていないが圧力室52へと連通している(図7参照)。
ノズルプレート151の表面(インク吐出側、図8ではノズルプレート151の下側)には撥液層154が形成されている。このように、ノズルプレート表面に撥液層154を形成することで、ノズル51の汚れを除去し易くしたり、ノズル51からのインクの滲み出しを小さくして、インクの吐出方向や吐出量を安定化するようにしている。
また、流路プレート152とノズルプレート151は樹脂の接着剤156によって接合されており、接着剤156がノズル流路51a側に露出した部分にはメッキによって耐インク膜158が形成されている。
このように、本実施形態は、ヘッド内面の樹脂部分(ヘッドを構成する各プレートを樹脂の接着剤により接合して積層する際、流路等のヘッド内のインクが流れる部分に露出した接着剤部分)にメッキによる保護膜(耐インク膜)を形成するものである。
図8に示すようなヘッド内の樹脂部分に金属膜(耐インク膜)を形成する方法はいろいろあるが、図9にその第1実施形態を示す。
まず図9(a)に示すように、本第1実施形態の金属膜形成方法では、積層構造のヘッドにおいて、使用する接着剤(樹脂材料)156にメッキ析出の核となる金属粒子160を混ぜておく。
ここで樹脂接着剤156としては、材質がエポキシやポリイミド等である。また、接着剤156に混ぜる金属粒子160としては、Pd(パラジウム)、Au、Agなどが用いられる。詳しくは後述するが、どのような金属粒子160を用いるかは、各プレートの材質、使用するメッキ液、つけたい金属膜などに応じて選択する。
接着剤156中に混ぜる金属粒子160の密度は、メッキを行うためには高密度であることが望ましいが、密度を高くするにつれ接着力が落ちるため、必要な接着力を得ることができる範囲内で高密度にするとよい。なお、必要な接着力は用いる材料、ヘッドの用途により異なる。
次に図9(b)に示すように、ヘッド製造後にヘッドをメッキ液につけたりあるいはヘッド内部にメッキ液を流すことにより、ヘッド内に露出した接着剤156の樹脂材料表面にメッキ膜を形成することにより、耐インク膜158を形成する。耐インク膜158としては、特に耐インク性が高いため、例えばNi合金などが好適に例示される。
なお、ヘッド内部にメッキ液を流し耐インク膜158を形成した後に、流路内に洗浄液を流して流路の洗浄を行う。洗浄液としては、純水、あるいは濡れ性を良くするために界面活性剤を混ぜた液またはインクから染料もしくは顔料成分などの色材成分を除いたものなどが用いられる。
洗浄液は、通常はインクの流れと同様にインク供給側からノズル側に向かって流される。しかし、流路の狭い部分にゴミが詰まっているような場合には、逆にノズル側からインク供給側に向かって洗浄液を流してゴミを除去するようにすることが好ましい。
金属粒子160のサイズDは、図9(b)に示すように接着層(接着剤156)の厚さをtとすると、0.1≦D/t≦1であることが望ましい。これは、金属粒子160のサイズDが接着層の厚さtよりも大きいと、接着層が所望の厚さよりも厚くなってしまい、接着時に問題が生じるため、少なくともDはt以下であり、また逆に金属粒子160のサイズDがあまり小さいと金属粒子160が接着層から脱落しやすくなり、メッキ膜の密着性が悪くなるため、少なくともDは接着層の厚さtの1/10以上である必要があるからである。
また、金属粒子160の形状は特に限定されるものではなく、図9に示したような球状の他に、図10に示す金属粒子160’のように針状であってもよいし、あるいは図示は省略するがフレーク状であってもよい。針状あるいはフレーク状の場合には樹脂部分の接着層から脱落しにくくなる。
なお、金属粒子160のサイズDは、金属粒子160が球状の場合はその直径、針状の場合にはその長さとする。
また、図9に示すように、接着剤156中に金属粒子160を混ぜておき、後からメッキ液を流すなどするようにしても、必ずしも金属粒子160が接着層の表面に露出しているとは限らない。例えば、図11(a)に示すように、せっかく金属粒子160を接着剤156中に混ぜておいても金属粒子160が全く表面に出ない場合もある。これではメッキ液を流してもきちんと金属膜(耐インク膜158)が形成されない。
そこで、図11(b)に示すように、メッキ液を流す前に、樹脂のエッチング液を流して金属粒子160が表面に出るようにしてもよい。この樹脂のエッチング液としては、硫酸−クロム酸の混合液や硫酸−硝酸−塩酸の混合液あるいはヒドロキノン−ピロカテキン−アセトンの混合液などが考えられる。樹脂以外の部分がエッチングされないように、液やエッチング条件を選択することが好ましい。
また、流路プレート152やノズルプレート151等の各プレートをSUS等の金属部材とし、これら金属部材を接着剤で接合する場合、接着剤に金属粒子を混ぜることで接着剤の熱膨張係数が金属に近くなる。そのため、接着剤硬化時の加熱やプリンタとして使用する際の温度変化によるヘッドの反りや部材の剥がれ等を低減することができる。また、接着剤の熱伝導率も高くなるため、ヘッドの温度均一性も良くなる。
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図12に第2実施形態における耐インク膜形成方法を示す。これは、各プレート等の部材接合後にヘッド内の流路に表面改質剤を流し、樹脂材料の表面改質を行い、その後樹脂表面に金属膜(耐インク膜)を形成するものである。
まず図12(a)に示すように、ノズルプレート151と流路プレート152を樹脂接着剤156で接合する。ここで、例えばノズルプレート151と流路プレート152は材質がSUSであり、接着剤156はポリイミドあるいはエポキシである。
次に図12(b)に示すように、各プレート接合後、流路内に表面改質剤を流す。表面改質剤としては、上で述べた樹脂のエッチング液や樹脂材料がポリイミドの場合はアルカリ水溶液、例えば水酸化カリウム水溶液が使用できる。なお、本願に言うアルカリ水溶液は、主にアルカリ金属水酸化物水溶液およびアルカリ土類金属水酸化物水溶液を指す。好ましくは、アルカリ金属水酸化物水溶液であり、特に好ましくは、水酸化カリウム水溶液である。ポリイミドの反応では、水酸化カリウムにより樹脂の加水分解反応とともに溶液が樹脂中に拡散し、樹脂材料の表面156aに改質層が形成される。
次に図12(c)に示すように、流路内に硫酸銅や硫酸ニッケルなどの金属塩水溶液を流すことによりイオン交換反応により表面156aに金属イオンを導入する。
その後図12(d)に示すように、流路内に還元剤を流し、還元反応により表面156aに銅(Cu)やニッケル(Ni)等の金属を析出させて、金属膜(耐インク膜)158を形成する。
なお、還元反応による金属膜158では耐インク膜として薄い場合には、図12(e)に示すように、さらに流路内にメッキ液を流して、メッキを行い、所望の厚さの金属膜158を得るようにする。例えば、この金属膜158の厚さとしては2〜3μmは必要である。
また、樹脂材料がエポキシの場合には、樹脂のエッチング液で表面156aの改質を行い、その後触媒化処理を行ってからメッキ液を流し樹脂材料表面156aに金属膜158を形成するようにする。
この場合にも、上述した例と同様に、ヘッド内部にメッキ液を流して耐インク膜158を形成した後、流路内に洗浄液を流して流路の洗浄を行う。
以上説明した実施形態においては、流路内に露出している樹脂の表面にのみ耐インク膜を形成するようにしたため、樹脂の腐食を防ぐとともに、耐インク膜を流路すべてにつけるのではないため、流路の寸法精度を保つことができる。
またこのとき、樹脂中に金属粒子を混ぜるようにした場合には、この金属粒子がメッキ成長の触媒となり、樹脂にのみメッキが成長するようにできる。このため樹脂の熱膨張係数を小さくすることができる。
次に基板及びメッキ膜の材料の組み合わせについて説明する。
メッキ時に使用する還元剤などの薬品やpHにもよるが、具体的に以下のような材料の組み合わせが考えられる。なお、以下示す例において、メッキ金属として単体でNi、Cuなどと書いているが、Ni合金やCu合金もメッキ可能である。
まず、接着剤中に金属粒子を混ぜる場合の例としては以下のような組み合わせが考えられる。
(1)メッキ:Ni、Cu、Au
流路基板:SUS、Si、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹脂も含む)
ノズルプレート:SUS、Si、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹脂も含 む)
これらの組み合わせ。
流路基板:SUS、Si、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹脂も含む)
ノズルプレート:SUS、Si、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹脂も含 む)
これらの組み合わせ。
また、メッキ膜にCuを用いる場合は周辺材料としてNiも使用できるため、次のような組み合わせでもよい。
(2)メッキ:Cu
流路基板:SUS、Si、Ni、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹脂も含 む)
ノズルプレート:SUS、Si、Ni、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹 脂も含む)
これらの組み合わせ。
流路基板:SUS、Si、Ni、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹脂も含 む)
ノズルプレート:SUS、Si、Ni、樹脂(ポリイミド、エポキシ、感光性樹 脂も含む)
これらの組み合わせ。
なお、実際に使用される可能性が高い組み合わせとしては、次の(3)あるいは(4)のような例が考えられる。
(3)メッキ:Ni
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:ポリイミド
(4)メッキ:Cu
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:Ni
次に、流路に樹脂の表面改質剤を流す場合には、次のような例が考えられる。
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:ポリイミド
(4)メッキ:Cu
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:Ni
次に、流路に樹脂の表面改質剤を流す場合には、次のような例が考えられる。
(5)メッキ:Ni、Cu、Au
流路基板:SUS、Si
ノズルプレート:SUS、Si
これらの組み合わせ。
流路基板:SUS、Si
ノズルプレート:SUS、Si
これらの組み合わせ。
また、メッキ膜にCuを用いる場合には周辺材料としてNiも使用できるため、次のような組み合わせでもよい。
(6)メッキ:Cu
流路基板:SUS、Si、Ni
ノズルプレート:SUS、Si、Ni
これらの組み合わせ。
流路基板:SUS、Si、Ni
ノズルプレート:SUS、Si、Ni
これらの組み合わせ。
実際に使用する可能性の高い組み合わせとしては、次の(7)あるいは(8)などがある。
(7)メッキ:Cu
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:Ni
(8)メッキ:Ni
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:Si
以上、本発明のインクジェットヘッド及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:Ni
(8)メッキ:Ni
流路基板:SUS、もしくはSi
ノズルプレート:Si
以上、本発明のインクジェットヘッド及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、51a…ノズル流路、52…圧力室、53…インク供給口、54…圧力室ユニット、55…共通液室、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58a…圧電体、58…圧電素子、59…電極パッド、60…インクタンク、62…フィルタ、64…キャップ、66…ブレード、67…吸引ポンプ、68…回収タンク、70…通信インターフェース、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータドライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…ヘッドドライバ、86…ホストコンピュータ、88…モータ、89…ヒータ、151…ノズルプレート、152…流路プレート、153…ピエゾカバー、156…接着剤、158…金属膜(耐インク膜)、160…金属粒子
Claims (8)
- 薄膜基板を積層して形成されたインクジェットヘッドであって、
金属粒子を混ぜた樹脂接着剤によって接合され積層された薄膜基板と、
前記積層された薄膜基板によって形成される流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に形成された金属膜と、を有することを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記金属膜はニッケル合金であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 薄膜基板を積層してインクジェットヘッドを形成するインクジェットヘッド形成方法であって、
金属粒子を混ぜた樹脂接着剤によって前記薄膜基板を接合し積層して流路を形成する工程と、
前記形成された流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に金属膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。 - 前記形成された流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に金属膜を形成する工程は、前記流路内にメッキ液を流す工程を含むことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド製造方法。
- 前記形成された流路内に露出した前記樹脂接着剤の部分に金属膜を形成する工程は、前記流路内にメッキ液を流す工程の前に樹脂のエッチング液を流す工程を有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド製造方法。
- 薄膜基板を積層してインクジェットヘッドを形成するインクジェットヘッド製造方法であって、
樹脂接着剤によって前記薄膜基板を接合し積層して流路を形成する工程と、
前記形成された流路に樹脂の表面改質剤を流す工程と、
前記流路に金属膜形成のための処理液を流す工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。 - 前記樹脂接着剤をポリイミド系接着剤とし、前記表面改質剤をアルカリ水溶液としたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド製造方法。
- 請求項1または2に記載のインクジェットヘッド、あるいは請求項3〜7に記載の方法で製造されたインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006229473A JP2008049615A (ja) | 2006-08-25 | 2006-08-25 | インクジェットヘッド及びその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019147378A (ja) * | 2018-02-27 | 2019-09-05 | 京セラ株式会社 | 流路部材 |
-
2006
- 2006-08-25 JP JP2006229473A patent/JP2008049615A/ja active Pending
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JP2019147378A (ja) * | 2018-02-27 | 2019-09-05 | 京セラ株式会社 | 流路部材 |
JP7197401B2 (ja) | 2018-02-27 | 2022-12-27 | 京セラ株式会社 | 流路部材 |
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