以下、第1の実施の形態として、本発明に係る液体吐出ヘッドのノズル部分を形成するための電鋳用型の製造方法について説明する。
図7は、本発明に係る電鋳用型の製造方法の製造工程を示す図である。
図7(a)は、導電性基板101上に第1レジスト層102が形成されたものである。具体的には、ステンレスからなる導電性基板101上にフォトレジストを塗布し、プリベークした後、導電性基板101上で第1金属層が形成される領域以外の領域にフォトレジストが残るよう所定のマスクを用い露光装置により露光し、現像することにより作製される。
尚、第1レジスト層102を形成するために用いられるフォトレジストは、後の工程の関係から耐熱性の高いものを使用する必要がある。具体的には、感光性ソルダレジスト等が好ましい。また、導電性基板101の表面は、第1金属層との密着性を高めるため事前に、表面処理が行われている。具体的には、ステンレスからなる導電性基板101を浸漬脱脂した後、塩酸等に浸漬させ、電解脱脂、約10%の濃度の塩酸により表面を活性化することにより行われる。
これによりステンレスからなる導電性基板101上に、第1金属層が形成される領域を除き、第1レジスト層102により覆われたものが作製される。
この後、図7(b)に示すように、電鋳法によりNi等からなる第1金属層103を形成する。電鋳法では、導電性基板101が露出している導電性領域のみ金属メッキされ、第1レジスト層102に覆われている部分は導電性がないため金属メッキがされない。ここでは、Niのストライクメッキの後、電鋳法により第1金属層103が形成される。
次に、図7(c)に示すように、第1金属層103、フォトレジスト102上に、更にフォトレジストを塗布し、プリベーク、露光、現像を行い、第2レジスト層104を形成した後、電鋳法により第2金属層105を形成する。
尚、第1金属層103と第2金属層105との密着性を向上させるため、第1金属層103を形成した後、先の工程で行った表面処理と同様の表面処理を行ってもよい。また、第2金属層105は、第1金属層103と同様に電鋳法により作製され、用いられる金属としては、Niの他、Cu、Co、Zn等があるが、後の工程で低融点金属を加熱溶解する際、所望の状態に低融点金属が広がるよう、濡れ性を考慮して材料を組み合わせたものを使用する。
この後、第2レジスト層104を有機溶剤等により除去することにより、図7(d)に示すように、導電性基板101上に、第1レジスト層102、第1金属層103、第2金属層105が形成されたものが得られる。
この後、図7(e)に示すように、第1金属層103と第2金属層105とに、ディスペンサーにより低融点金属106を付着させる。ここで用いられる低融点金属は、第1レジスト層102の耐熱温度(約250℃)以下のものを選択する必要がある。具体的には、Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−Cu等の合金からなるハンダやIn或いはInを含む合金等がある。
この後、低融点金属106の融点以上に加熱する熱処理を行うと、図7(f)に示すように、低融点金属106は溶解し低融点金属は第1金属層103の上面と第2金属層105の側面に渡って広がり、略円錐状の傾斜を有するテーパー部107が形成される。よって、第1金属層103上に、テーパー部107、更にその上に、円柱状の第2金属層105によるストレート部が形成されたものが作製される。
この後、図7(g)に示すように、テーパー部107及び第2金属層105の露出した部分の表面について非導電化処理108を行う。非導電化処理の方法としては、樹脂材料の電着コート等が挙げられる。樹脂材料の電着コートでは、導電性をもつテーパー部107及び第2金属層105の露出部分のみ樹脂材料をコーティングできるので望ましい。
具体的に、電着コートには、カチオン電着とアニオン電着とがあり、本実施の形態においては、形成されたテーパー部とストレート部の溶出を防ぐため、カチオン電着が好ましい。カチオン電着のための樹脂材料としては、ポリイミド、エポキシ樹脂系、フッ素樹脂系等が挙げられる。電着コートは、導電性をもつテーパー部107及び第2金属層105の露出部分を電極として印加された電界により、電荷をもった塗料樹脂が電極部分の表面に付着し、その後硬化することにより形成される。
この後、第1レジスト層102を除去し、図7(h)に示すように、導電性基板101表面、第1金属層103側面について、剥離被膜処理109を行う。
以上の工程により、液体吐出ヘッドのノズル部分を作製する電鋳用型が作製される。
次に、図8に基づき液体吐出ヘッドのノズル部分を作製する方法を説明する。
図8(a)は、上記工程により製造された電鋳用型である。この電鋳用型に、図8(b)に示すように電鋳法により金属膜110を堆積させていく。金属膜110の堆積厚は、テーパー部107の上端、即ち、テーパー部107と第2金属層105の境界部分を越え、電鋳用型の第2金属層105の上面を越えない厚さである(金属膜110の上面は、矢印の範囲内となる)。堆積させた後、金属膜110の表面に撥液処理を施してもよい。
この後、電鋳用型と堆積させた金属膜110とを剥離することにより、図8(c)に示す逆テーパー形状とストレート形状を併せ持つ液体吐出ヘッド用のノズルプレートが完成する。この製造方法により製造された金属膜110からなるノズルプレートは、逆テーパー形状を有する部分の両端であるインク吐出する面とつながる部分と、圧力室へとつながる部分の双方にストレート部を有している。
尚、電鋳用型は剥離被膜処理109を行っているので、金属膜110は電鋳用型から容易に剥離することができる。また、電鋳用型はこの後何度でも使用可能であり、上記と同様に工程を繰り返すことにより、液体吐出ヘッドに用いられるノズルプレートを大量に生産することができる。
また、電鋳用型におけるテーパー部107の角度は、円板状の第1金属層103の円の面積と、第1金属層103と第2金属層105に付着させる低融点金属106の量を調整することにより、所望のテーパー角及びストレート部の長さを容易に得ることができる。これについて図9に基づき説明する。低融点金属106は、低融点金属106の融点以上の温度による熱処理を行うことにより、導電性基板101上の第1金属層103の表面と第2金属層105の側面の間で広がる。
図9(a)は、第1金属層103の円板状の円の面積が狭く、付着させる低融点金属106の量が多い場合である。この場合、テーパー部107の角度は急峻になる。一方、図9(b)のように、第1金属層103の円板状の円の面積が広く、付着させる低融点金属106の量を多くすると、テーパー部107の角度は、比較的なだらかなものとなる。
また、図9(c)のように、第1金属層103の円板状の円の面積が狭く、低融点金属106の付着量が少ない場合には、テーパー部107の角度が比較的なだらかなものとなる。一方、図9(d)のように、第1金属層103の円の面積が広く、低融点金属106の付着量が少ない場合には、テーパー部107の角度をより一層なだらかなものとすることができる。
このように、第1金属層103の円板状の円の面積と低融点金属106の付着量により、テーパー部107において所望の角度を得ることができる。また、形成されるノズルプレートの厚さに対応して、低融点金属106の付着量を変えて調整することができる。具体的には、形成されるノズルプレートが比較的薄いものである場合には、少量の低融点金属106を付着させ電鋳用型を作製し、形成されるノズルプレートが比較的厚いものである場合には、低融点金属106の付着量を多くして電鋳用型を作製する。
また、これに伴って、電鋳用型に堆積させる金属膜110の厚さを変えることにより、ノズル先端部分のストレート部の長さを調整することも可能である。更に、第2金属層105の円柱状の円の面積を変えることによりノズル先端径が定まる。
以上より、ノズルプレートの形状が定まれば、それに応じて最適な円板状の第1金属層103の円の面積、低融点金属106の付着量、円柱状の第2金属層105の円の面積及び高さ、金属膜110の膜厚を選定することにより、所望のテーパー部107の形状を有した電鋳用型を得ることができる。尚、第2金属層の側面部で低融点金属106に覆われていないストレート部の長さは、ノズルプレートを形成するために必要な長さ、電鋳時のバラツキを考慮した長さ、余裕分の和により定められる。図9(a)と図9(b)において、LaとLbの値、即ち、ストレート部の長さを同じにすることにより、第1金属層103の円の面積を変えるだけでテーパー部の角度を調整することができる。図9(c)と図9(d)の場合においても同様である。
次に、上記工程により作製したノズルプレートを用い作製したインクジェットヘッドの断面構造を図4に示す。
本発明に係る電鋳用型を用い作製されたノズルプレート150は、圧力室壁面59とノズル51部分での位置合わせをした後はりつけられる。ノズルプレート150は、ノズル部分で圧力室壁面59と接する側においてもストレート部を有しているため、位置合わせがしやすくなるとともに、圧力室壁面59とノズルプレート150のノズル部分での位置が微妙にずれた場合であっても、接続部分のノズル流路に鋭角部分が形成されることはないため、気泡等がノズルの途中に付着することはない。
圧力室ユニット54は、インクを吐出するノズル51と連通する圧力室52によって形成され、供給口53を介してインクを供給する共通液室(不図示)と連通する。圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上部には、振動板56に圧力を付与して振動板56を変形させる圧電素子58が接合されている。圧電素子58の上面には個別電極57が形成される。また、振動板56は共通電極を兼ねている。
圧電素子58は、共通電極(振動板56)と個別電極57によって挟まれており、共通電極(振動板56)と個別電極57との間に駆動電圧を印加することによって変形する。圧電素子58の変形によって振動板56が押され、圧力室52の容積が縮小されてノズル51からインクが吐出されるようになっている。共通電極(振動板56)と個別電極57との間に印加されていた電圧が解除されると圧電素子58がもとに戻り、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通液室(不図示)から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出ヘッド及び画像形成装置について第1の実施の形態として詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)を備えた画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。
図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(液体吐出ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送するベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排出する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、前記カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、前記固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、ベルト搬送部22へと送られる。ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサー面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト搬送部22は、特に限定されるものではなく、ベルト面に設けられた吸引孔より空気を吸引して負圧により記録紙16をベルト33に吸着させて搬送する真空吸着搬送でもよいし、静電吸着による方法でもよい。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、上に述べた真空吸着搬送の場合には、ベルト面には図示を省略した多数の吸引孔が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
図2は、インクジェット記録装置10の印字部12周辺を示す要部平面図である。
図2に示すように、印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサー(ラインセンサー等)を含み、前記イメージセンサーによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサーで構成される。このラインセンサーは、赤(R)の色フィルターが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサー列と、緑(G)の色フィルターが設けられたGセンサー列と、青(B)の色フィルターが設けられたBセンサー列とからなる色分解ラインCCDセンサーで構成されている。なお、ラインセンサーに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサーを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぎ画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、印字ヘッド(液体吐出ヘッド)のノズル(液体吐出口)の配置について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図3では図示を省略した共通液室から圧力室52にインクを供給する供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
図3に示す例においては、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしているが、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではない。圧力室52には、図3に示すように、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端の側に供給口53が設けられている。
また、図示は省略するが、複数の短尺ヘッドを2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
図5は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図5のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図5に示すように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルター62が設けられている。フィルター・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図5には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能である。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄化するようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(積層圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(積層圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって積層圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、積層圧電素子58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
図6は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、前記画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50のアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行うようになっている。
次に、第2の実施の形態として、本発明に係る液体吐出ヘッドのノズル部分を形成するための他の電鋳用型の製造方法について説明する。
図10は、本発明に係る電鋳用型の製造方法の製造工程を示す図である。
図10(a)は、導電性基板111上に第1レジスト層112が形成されたものである。具体的には、ステンレスからなる導電性基板111上にフォトレジストを塗布し、プリベークした後、導電性基板111上で第1金属層が形成される領域以外の領域にフォトレジストが残るよう所定のマスクを用い露光装置により露光し、現像することにより作製される。
尚、第1レジスト層112を形成するために用いられるフォトレジストは、後の工程の関係から耐熱性の高いものを使用する必要がある。具体的には、感光性ソルダレジスト等が好ましい。また、導電性基板111の表面は、第1金属層との密着性を高めるため事前に、表面処理が行われている。具体的には、ステンレスからなる導電性基板111を浸漬脱脂した後、塩酸等に浸漬させ、電解脱脂、約10%の濃度の塩酸により表面を活性化させることにより行われる。
これによりステンレスからなる導電性基板111上に、第1金属層が形成される領域を除き、第1レジスト層112により覆われたものが作製される。
この後、図10(b)に示すように、電鋳法によりNi等からなる第1金属層113を形成する。電鋳法では、導電性基板111が露出している導電性領域のみ金属メッキされ、第1レジスト層112に覆われている部分は導電性がないため金属メッキがされない。ここでは、Niストライクメッキの後、電鋳法により第1金属層113が形成される。
次に、図10(c)に示すように、第1金属層113、フォトレジスト112上に、更にフォトレジストを塗布し、プリベーク、露光、現像を行い、第2レジスト層114を形成した後、電鋳法により第2金属層115を形成する。
尚、第1金属層113と第2金属層115との密着性を向上させるため、第1金属層113を形成した後、先の工程で行った表面処理と同様の表面処理を行ってもよい。第2金属層115は、第1金属層113と同様に電鋳法により作製される。用いられる金属としては、Ni以外には、Cu、Co、Zn等があるが、後の工程で低融点金属を加熱溶解する際、所望の状態に低融点金属が広がるよう、濡れ性を考慮して材料を組み合わせたものを使用する。
この後、第2レジスト層114を有機溶剤等により除去することにより、図10(d)に示すように、導電性基板111上に、第1レジスト層112、第1金属層113、第2金属層115が形成されたものが得られる。
この後、図10(e)に示すように、第1金属層113と第2金属層115との表面に低融点金属116のメッキを行う。メッキの厚さは、作製されるテーパー部の角度等を考慮して定められる。ここで用いられる低融点金属は、第1レジスト層112の耐熱温度(約250℃)以下のものを選択する必要がある。具体的には、Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−Cu等の合金からなるハンダやIn或いはInを含む合金等がある。
この後、低融点金属116の融点以上に加熱すると、図10(f)に示すように、低融点金属116は溶解し低融点金属は第1金属層113の上面と第2金属層115の側面に渡って広がり、略円錐状の傾斜を有するテーパー部117が形成される。
この後、図10(g)に示すように、テーパー部117及び第2金属層115の露出した部分の表面について非導電化処理118を行う。非導電化処理の方法としては、樹脂材料の電着コート等が挙げられる。樹脂材料の電着コートでは、導電性をもつテーパー部117及び第2金属層115の露出部分のみ樹脂材料をコーティングできるので望ましい。
具体的に、電着コートには、カチオン電着とアニオン電着とがあり、本実施の形態においては、形成されたテーパー部とストレート部の溶出を防ぐため、カチオン電着が好ましい。カチオン電着のための樹脂材料としては、ポリイミド、エポキシ樹脂系、フッ素樹脂系等が挙げられる。電着コートは、導電性をもつテーパー部107及び第2金属層105の露出部分を電極として印加された電界により、電荷をもった塗料樹脂が電極部分の表面に付着し、その後硬化することにより形成される。
この後、第1レジスト層112を除去し、図10(h)に示すように、導電性基板111表面、第1金属層112側面について、剥離被膜処理119を行う。
以上の工程により、液体吐出ヘッドのノズル部分を作製する電鋳用型が作製される。
ノズルプレートの製造方法、液体吐出ヘッドに関しては、第1の実施の形態と同様である。
次に、第3の実施の形態として、第1の実施の形態、第2の実施の形態により作製された電鋳用型を用いて作製されたノズルプレートを用いた他の液体吐出ヘッドについて説明する。
上記工程により作製したノズルプレートを用い作製したインクジェットヘッドの断面構造を図11に示す。
本発明に係る電鋳用型を用い作製されたノズルプレート150は、圧力室152の壁面を構成する部材であり、他の部材と組み合わせ接続することにより圧力室152が形成され、液体吐出ヘッドが完成する。ノズルプレート150のノズル部分での微妙な位置合わせが不要となるため、製造時の作業性が向上する。
圧力室ユニット154は、インクを吐出するノズル151と連通する圧力室152によって形成され、供給口153を介してインクを供給する共通液室(不図示)と連通する。圧力室152の一面(図では天面)は振動板156で構成され、その上部には、振動板156に圧力を付与して振動板156を変形させる圧電素子158が接合されている。圧電素子158の上面には個別電極157が形成される。また、振動板156は共通電極を兼ねている。
圧電素子158は、共通電極(振動板156)と個別電極157によって挟まれており、共通電極(振動板156)と個別電極157との間に駆動電圧を印加することによって変形する。圧電素子158の変形によって振動板156が押され、圧力室152の容積が縮小されてノズル151からインクが吐出されるようになっている。共通電極(振動板156)と個別電極157との間に印加されていた電圧が解除されると圧電素子158がもとに戻り、圧力室152の容積が元の大きさに回復し、共通液室(不図示)から供給口153を通って新しいインクが圧力室152に供給されるようになっている。
以上、本発明に係る電鋳用型並びにこの電鋳用型により作製される液体吐出ヘッド、画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
51…ノズル、52…圧力室、53…供給口、54…圧力室ユニット、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58…圧電素子、59…圧力室壁面、101…導電性基板、102…第1レジスト層、103…第1金属層、104…第2レジスト層、105…第2金属層、106…低融点金属、107…テーパー部、108…非導電化処理、109…剥離被膜処理、110…金属膜、150…ノズルプレート