JP2008043907A - 水素透過複合膜およびその製造方法 - Google Patents

水素透過複合膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】混合ガスから水素を選択的に透過および分離する性能に優れ、燃料電池用の水素ガスの精製および分離のための装置へ適用でき、かつ、水素を多量に透過できる高性能の水素透過複合膜およびその製造方法を安価に提供する。
【解決手段】Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金からなる第1金属相と、Cu、Ag、または、CuおよびAgを含有する合金からなる第2金属相との混合相からなる混合相薄膜をスパッタリング法で形成し、得られた混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、膜厚が1μm以上10μm以下である薄膜多孔質支持体(2)を形成し、得られた薄膜多孔質支持体(2)の上に、膜厚が0.5μm以上5μm以下である水素透過膜(1)をスパッタリング法で形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素を含む混合ガスから水素を選択的に透過および分離する性能を有し、燃料電池用の水素ガスを精製および分離するための装置に適用される水素透過膜およびその製造方法に関する。
Pdに代表される金属膜、あるいはPdを含む合金膜は、水素を選択的に透過させて分離する性質を有するため、水素透過膜として、半導体用シリコン製造用の還元ガスなどを精製する高純度水素精製装置に使用されている。
近年、水素透過膜は、燃料電池の燃料として用いる水素ガスを精製および分離するための装置にも適用されるようになっている。水素透過膜としては、純Pd、あるいはPd−Ag、Pd−YなどのPd合金からなる水素透過膜が知られている。
特開昭46−7562号公報には、Pdと、Yおよびランタノイド(ただし、LaとPrを除く)からなる群から選ばれた1種以上の金属元素との合金からなる水素透過合金膜が開示されている。また、特開平3−271337号公報には、Agを5〜25at%と、YまたはGdを1〜10at%と、残部がPdからなる水素透過膜用の合金が開示されている。さらに、特開2000−247605号公報には、Pdと合金化する金属がAg、Au、Pt、Rh、Ru、Ir、Ce、YまたはGdである合金からなる水素透過合金膜が示されている。しかし、パラジウムを用いた水素透過合金膜は、Pdが貴金属であるため、材料コストが嵩むという問題があった。
これに対して、水素透過膜を薄膜化することが考えられる。薄膜化により、高価なPdの使用量を低減させることができる。さらに、水素透過膜では水素透過流量が膜の材質だけでなく膜厚にも依存することから、水素透過流量を増大させることができる点でも、薄膜化は望ましい。
薄膜の形成には、スパッタリング法が有利である。しかし、膜厚が10μm以下である薄膜になると、膜強度が低下するので、単独では使用することができず、多孔質支持体が必要となる。このような多孔質支持体として、ステンレス鋼の粉末焼結体や陽極酸化法により得られるアルミナからなる多孔質支持体が提案されているが、これらの多孔質支持体は厚さが0.1〜1mm程度あり、透過する水素ガスに対する抵抗となるので、圧力損失が生ずるという問題がある。
また、Pd合金薄膜の場合、膜厚がさらに薄い5μm以下となると、スパッタリング法などにより水素透過膜を形成しても、基板からのはぎ取りや、その後の取り扱いが、極めて困難となる。
これに対して、多孔質支持体の上に、水素透過膜を直接成膜することも考えられるが、ステンレス鋼の粉末焼結体を用いた多孔質支持体の場合、粉末焼結体の細孔径が薄膜形成用材料の粉末径とほぼ同程度で、数μmの大きさがあるため、細孔の上に形成する薄膜にピンホールが発生する。このようなピンホールをなくすためには、水素透過膜に10μm程度の膜厚が必要となり、その薄膜化が困難となる。一方、陽極酸化法により得られるアルミナからなる多孔質支持体では、その細孔は小さいが、アルミナ自身の靭性が低いため、薄肉化することができず、圧力損失が大きくなってしまうという問題がある。
特開昭46−7562号公報 特開平3−271337号公報 特開2000−247605号公報
本発明の目的は、水素を含む混合ガスから水素を選択的に透過および分離する性能に優れ、燃料電池用の水素ガスを精製および分離するための装置へ適用でき、かつ、水素を多量に透過できる高性能の水素透過膜を安価に提供することにある。
本発明に係る水素透過複合膜は、膜厚が1〜10μmである薄膜多孔質支持体の上に、水素透過膜が形成されていることを特徴とする。
前記水素透過膜の膜厚が0.5〜5μmであることが好ましい。
前記薄膜多孔質支持体の平均細孔径が1μm以下であることが好ましい。
前記薄膜多孔質支持体は、Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金からなることが好ましい。また、前記水素透過膜は、PdまたはPd合金からなることが好ましい。
本発明に係る水素透過複合膜の製造方法は、第1金属相と、第1金属相を構成する金属とは互いに固溶しない金属からなる第2金属相との混合相からなる膜厚が1〜10μmである混合相薄膜を形成する工程、該混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、薄膜多孔質支持体を形成する工程、および、前記混合層薄膜または薄膜多孔質支持体の上に、膜厚が0.5〜5μmである水素透過膜を形成する工程を有することを特徴とする。
前記第1金属相をCr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金により形成し、前記第2金属相をCu、Ag、または、CuおよびAgを含有する合金により形成することが好ましい。また、前記水素透過膜をPdまたはPd合金により形成することが好ましい。
なお、工程の順序は、混合相薄膜を形成する工程、水素透過膜を形成する工程、混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、前記薄膜多孔質支持体を形成する工程の順に行うことが好ましい。
また、混合相薄膜を形成する工程および/または水素透過膜を形成する工程をスパッタリング法により行うことが好ましい。
さらに、第2金属相の体積率が40〜70%となるように前記混合層薄膜を形成することが好ましい。
本発明に係る水素透過複合膜の製造方法において、上述の工程のほか、前記混合相薄膜を形成する工程の後に、前記混合相薄膜を400〜1000℃で熱処理をする工程をさらに有することが好ましい。
また、かかる熱処理を2段階として、前記熱処理の後に、酸素を含有する雰囲気中、300〜1000℃で、望ましくは前記熱処理よりも低い温度で、第2の熱処理を行うことが好ましい。代替的に、前記熱処理の後に、該混合相薄膜の表面にバリア膜を形成してもよい。
より好ましくは、前記混合相薄膜を形成し、該混合相薄膜を400〜1000℃で熱処理した後に、前記水素透過膜を形成し、その後、エッチング処理により、混合相薄膜を薄膜多孔質支持体とすることが好ましい。
さらに好ましくは、前記混合相薄膜を形成し、該混合相薄膜に400〜1000℃で熱処理を施し、該混合相薄膜の表面の一部にPdまたはPd合金からなる薄膜を形成し、得られた膜に、酸素を含有する雰囲気中、300〜1000℃で、かつ、前記熱処理の温度よりも低い温度で、第2の熱処理を施し、得られた膜の混合相薄膜および前記PdまたはPd合金からなる薄膜の表面に、PdまたはPd合金からなり、膜厚が0.5〜5μmである水素透過膜を形成し、前記混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、薄膜多孔質支持体を形成する。
なお、前記混合相薄膜中の第2金属相を除去するエッチングには、硝酸または硝酸を含むエッチング液を用いることが好ましい。
本発明の水素透過複合膜は、PdまたはPd合金からなり、水素透過膜の膜厚が5μm以下であるため、水素透過流量を極めて大きくすることが可能である。また、微細な細孔を持つ薄膜多孔質支持体の上に形成されることにより、十分な強度を持ち、かつ、薄膜多孔質支持体の靭性が高く、圧力損失が小さいため、燃料電池用の水素ガスを精製および分離するための装置に適用することが可能であり、工業的価値は極めて大きい。
図1は、本発明の水素透過複合膜の一実施例を示す基本構造断面図である。本発明の水素透過複合膜は、膜厚が1〜10μmである薄膜多孔質支持体(2)の上に、膜厚が0.5〜5μmである水素透過膜(1)が形成されている。薄膜多孔質支持体(2)は、その細孔の平均細孔径を1μm以下とし、Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金で形成され、水素透過膜(1)は、PdまたはPd合金からなる。このように、水素透過膜(1)の膜厚を0.5〜5μmとすることにより、極めて大きな水素透過流量を得ることができる。
薄膜多孔質支持体は、Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金からなり、従来の多孔質アルミナ支持体に比べて靭性に富み、強度、耐久性および信頼性に優れている。薄膜多孔質支持体の膜厚は、1μm〜10μmとする。1μm未満では、強度が十分でなく、10μmを超えると、薄膜多孔質支持体における圧力の損失が大きくなり、また、混合相薄膜を形成する際に長時間を要するため、効率的でなくなる。なお、膜厚は、5μm以下、望ましくは、2μm以下とすることが好ましい。
さらに強度を必要とする場合には、前述のように得られた水素透過複合膜を、さらに粗大な開口を有する多孔質支持体(図示せず)に支持させることにより、圧力損失の増大を抑えることことができる。また、薄膜多孔質支持体の平均細孔径を1μm以下とすることにより、水素透過膜を薄くしても、ピンホールなどを生じにくく、好適である。
水素透過膜は、PdまたはPd合金により形成することが好ましい。Pd合金としては、Pd−Cu、Pd−AgおよびPd−希土類元素などの合金を用いることが可能である。従来、水素透過合金として、Ta、Nbなどの合金も提案されており、それらを用いることも可能であるが、Pdおよび一次固溶体であるPd合金は、延性に富み、薄膜化に適している。
水素透過膜の膜厚が、0.5μm未満では、ピンホールを生じやすく、使用時の粒成長の影響も受ける。また、5μmを超えると、水素透過流量が低下する。なお、膜厚は2μm以下、望ましくは、1μm以下とすることが好ましい。
本発明の水素透過複合膜の製造方法は、Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金からなる第1金属相と、Cu、Ag、または、CuおよびAgを含有する合金からなる第2金属相との混合相からなる混合相薄膜を形成し、得られた混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、膜厚が1〜10μmである薄膜多孔質支持体(2)を形成し、得られた薄膜多孔質支持体(2)の上に、膜厚が0.5〜5μmである水素透過膜(1)を形成する。
水素透過膜の形成には、従来の薄膜形成方法を用いることが可能であるが、薄膜多孔質支持体の形成と合わせて、スパッタリング法により作製する方が、簡便であり、好ましい。メッキなどの湿式法も用いることは可能であるが、膜質の制御に困難な面がある。
薄膜多孔質支持体の第1金属層の形成には、Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金を用いる。特に、Crは耐食性に優れており、好適である。また、第2金属層の形成には、第1金属相に使用される金属に固溶量が極めて小さいCuまたはAgを用いる。かかる第2金属相をエッチングにより除去することにより、薄膜多孔質支持体が形成される。
薄膜多孔質支持体の形成も、スパッタリング法で行うことが好ましい。薄膜多孔質支持体の細孔を微細にすることが、水素透過膜の膜厚を小さくするために重要であるが、平均細孔径が1μm以下の微細孔を有する薄膜多孔質支持体は、従来の粉末焼結法などで作製することは困難であるからである。
また、スパッタリング法を用いることで、互いに固溶しない第1金属相と第2金属相が混合相薄膜中で極めて微細に混在する。したがって、第2金属相を除去することにより、平均細孔径が1μm以下である極めて微細な細孔を持つ薄膜多孔質支持体を得ることができる。
第2金属相の体積率は、40〜70%とする。第2金属相の分率が40%未満となると、第2金属相が連続相とならず、エッチングなどで除去することができない。一方、第2金属相の分率が70%を超えると、残った第1金属相が連続相とならず、薄膜の支持体としての構造が壊れてしまう。
なお、スパッタリング法による形成では、一般に、ナノオーダの微細組織となり、エッチングなどが難しくなるが、混合相薄膜に400〜1000℃で熱処理を施すことにより、結晶粒径を調整でき、よって、エッチングが容易となり、かつ、水素透過膜の支持に適した微細組織を得ることができる。なお、混合相薄膜の形成後に熱処理を施す方が、安定性から有利であるが、たとえば、スパッタリング時の基板加熱によって、スパッタリングと同時に熱処理することも可能である。
水素透過膜を形成する時には、水素透過膜の下地となる混合相薄膜が、まだ多孔質化していないので、その表面は平滑である。そのため、スパッタリングにより平滑であり緻密である水素透過膜を形成することができる。通常の金属粉焼結により得られる多孔質支持体を基板として用いると、数μmの大きさの開口があるため、平滑であり緻密である水素透過膜を得ることは難しく、凹凸やピンホールを生じてしまう。これに対して、本発明では、水素透過膜を形成した後、混合相薄膜をエッチングすることにより、第2金属相を除去し、多孔質化することで、極めて微細な細孔を持つ薄膜多孔質支持体の上に、膜厚の小さい水素透過膜を形成することができるのである。
このように得られる水素透過複合膜は、水素透過膜の膜厚が小さく、大きな水素透過流量を得ることができる上に、金属箔としての強度、延性および靭性を併せ持っており、水素透過ユニットへの取り付けが容易であり、高い信頼性を得ることができる。
混合相薄膜中の第2金属相を除去するには、硝酸または硝酸を含むエッチング液を用いることが望ましい。また、塩酸などの還元性の酸を含んでもよい。
得られた水素透過複合膜は、高い水素透過能を有するが、水素透過膜と薄膜多孔質支持体の界面は、異種金属が接する構造であり、高温長時間の使用時には、合金元素の拡散が起こる場合がある。水素透過膜に異種元素が拡散合金化すると、一般に、水素透過能が大きく低下してしまう。その防止のために、混合相薄膜の上に、水素透過膜を形成する前に、拡散防止のバリア膜を形成するとよい。
図2は、薄膜多孔質支持体(2)の表面にバリア膜(3)を形成した本発明の水素透過複合膜の一実施例を示す断面拡大図である。バリア膜(3)としては、アルミナ、ジルコニアなどの酸化物膜が好適である。
あるいは、合金元素の拡散に対する別の対策として、結晶粒径調整を目的とした熱処理の後に、酸素を含有する雰囲気中、300〜1000℃で第2の熱処理を行うことにより、表面に酸化層を形成してバリア膜(3)とすることができる。この場合も、図2に断面拡大図を示すような水素透過複合膜が得られる。
このような第2の熱処理により、たとえば、CrとCuとの混合相薄膜の場合、双方が酸化されるが、Cuの酸化膜は、エッチングにより母相のCuとともに除去される一方、Crの表面酸化膜は安定で、水素透過膜の形成後にバリア膜として機能する。このように酸化を目的とした第2の熱処理は、結晶粒径調整を目的とした最初の熱処理と兼ねることもできるが、制御性の観点から別個に行うことが好ましい。その場合は、結晶粒径に影響を与えないように、300℃〜1000℃のように、結晶粒径調整のための最初の熱処理よりも低い温度で、第2の熱処理を行うことが望ましい。第2の熱処理を行う雰囲気としては、不活性雰囲気中に酸素を適宜添加すればよいが、温度によっては大気中でも可能である。
このように表面に酸化膜を形成した場合、酸化膜の上にPdまたはPd合金などの水素透過膜を形成すると、水素透過膜と薄膜多孔質支持体との界面における接合強度が低下する場合がある。これを避けるために、混合相薄膜に結晶粒径制御のための最初の熱処理を行った後、混合相薄膜の一部にあらかじめPdまたはPd合金の薄膜をスパッタリング法で形成して、接合強度を確保してもよい。
図3および図4に、混合相薄膜の一部に、あらかじめPdまたはPd合金の薄膜をスパッタリング法で形成することにより、接合強度を確保した水素透過複合膜を示す。図3は、平面図であり、図4は、図3に示した実線円部分の断面拡大図である。
混合相薄膜の一部に、あらかじめ形成したPdまたはPd合金の薄膜(5)は、含酸素雰囲気中の第2の熱処理で酸化しにくいので、その後、水素透過膜(1)を形成したときに、これらの間で高い密着性が得られる。ただし、その部分は薄膜多孔質支持体(2)と合金化して密着強度は向上するものの、水素透過特性を低下させる可能性があるので、かかる接合部は、水素透過部(4)の周囲などに設けるとよい。これは、メタルマスクなどで、水素透過部(4)をマスキングしてから、PdまたはPd合金の薄膜(5)を成膜すればよい。その後、含酸素雰囲気中の第2の熱処理により、混合相薄膜の露出部に酸化膜層を形成し、全面に水素透過膜(1)を形成することにより、水素透過部(4)は、酸化物からなるバリア層(3)を介しているので、拡散合金化が防止され、かつ、周囲は、密着強度に優れた水素透過膜(1)および薄膜多孔質支持体(2)からなる水素透過複合膜を得ることができる。
以上、示したように、本発明は、薄膜多孔質支持体の上に、水素透過膜を積層した構造を有する水素透過複合膜であり、従来よりも高い水素透過能を有し、さらに、金属箔としての強度、延性および靭性を併せ持っているため、水素透過膜としての加工性および信頼性に優れるという効果を得ることができる。
(実施例1)
スパッタリング装置(ULVAC社製、SBH2306RDE)に、Cuターゲット(純度99.9%)およびTaターゲット(純度99.99%)を取り付け、基板ホルダに厚み1mmの石英基板を取り付け、スパッタリング装置内を、5.0×10-4Pa以下まで真空排気した後、Arガス圧を1Paとし、CuターゲットをDCスパッタリングして、石英基板の上にCuを0.2μmの厚さで成膜した。続いて、CuターゲットおよびTaターゲットの同時スパッタリングにより、Ta−Cu混合相薄膜の成膜を行った。Ta−Cu混合相薄膜の組成は、CuターゲットおよびTaターゲットのスパッタリングパワーで任意に調節可能であり、膜厚は成膜時間により任意に調節可能である。本実施例では、混合相薄膜の組成をTa−50vol%Cuとして、膜厚を1.5μmとした。
成膜試料を取り出し、真空中、800℃、1hで熱処理を行った。これを再度スパッタリング装置に装入し、中心部に直径10mmのメタルマスクを載せることにより、水素透過部を被覆した上で、水素透過部の周囲にスパッタリング法でPdを0.08μmの厚さで成膜した。その後、スパッタリング装置から取り出して、メタルマスクを取り外し、大気中、500℃、1hの熱処理を行い、膜表面に酸化層を形成した。
再度、スパッタリング法でPdを0.6μmの厚さで成膜した。得られた試料を、6.7mol/Lの硝酸中に浸漬した。これにより、Cuが溶出し、石英基板から、水素透過膜とTa−Cu混合相薄膜が剥離されるとともに、Ta−Cu混合相薄膜中のCuが除去された。その後、真空中、120℃、6h、乾燥し、水素透過複合膜を得た。得られた複合膜の表面および断面のSEM観察の結果、細孔径は約0.1〜0.2μmであることが確認された。
得られた水素透過複合膜に対し、薄膜多孔質支持体の側に厚さ0.3mm、平均細孔径が0.2mmであるSUS316製多孔質支持体を当てて、水素透過面積0.5cm2(φ8mm)の水素透過測定装置に取り付けて、電気炉で水素透過部を400℃に加熱した。400℃に到達後、まず始めに、上流側(水素透過膜の側)の配管に、窒素ガスで0.1MPaの圧力差をかけ、下流側(薄膜多孔質支持体の側)に設置したマスフローメータ(日本アエラ株式会社製、FM−390)で、漏れ量の有無を確認した。その後、配管内の窒素ガスを除去し、上流側(水素透過膜の側)の配管に、水素ガスで0.1MPaの圧力差をかけ、透過水素流量をマスフローメータで測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2008043907
(実施例2〜4、比較例1〜4)
水素透過膜の膜厚を変えたことと、TaターゲットとCuターゲットの同時スパッタにおいて、それぞれのターゲットのスパッタリングパワーおよび成膜時間を調整することにより、混合相薄膜の組成および膜厚を表1に示した値に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、水素透過複合膜の作製および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5、6、比較例5)
Taターゲットに代えて、Crターゲット(純度99.9%)を使用し、Cuに代えて、Agターゲット(純度99.9%)を使用したことと、水素透過膜の膜厚、混合相薄膜の組成および混合相薄膜の膜厚を、表1に示した値に変えたことと、大気中の熱処理を400℃で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、水素透過複合膜の作製および評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7、8、比較例6、7)
Taターゲットに代えて、Nb−20%Ta合金ターゲットを使用したことと、Pdターゲットに代えて、Pd−21%Ag合金ターゲットを用いたことと、水素透過膜の膜厚、混合相薄膜の組成および混合相薄膜の膜厚を、表1に示した値に変えたことと、大気中の熱処理を400℃で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、水素透過複合膜の作製および評価を行った。結果を表1に示す。
(従来例1)
厚さ20μmのPd箔を実施例1で使用した厚さ0.3mmのSUS316製多孔質支持体を当てて、実施例1と同様にして透過水素流量を測定した。結果を表1に示す。
(評価)
本発明の実施例1〜8では、漏れおよび崩壊を起こすことなく、30〜300sccm/cm2の水素ガスが透過し、膜厚が20μmであるPd箔の従来例1に対して、数倍〜数十倍の透過水素流量が得られた。これにより、本発明の水素透過複合膜は、水素ガスの精製および分離用として有用であることが理解される。
これに対して、比較例1および6では、窒素ガスで圧力差をかけると、数十sccm/cm2の漏れが発生した。比較例1は、実施例2と同じ混合相薄膜の組成および混合相薄膜の膜厚であり、比較例6は、実施例8と同じ混合相薄膜の組成および混合相薄膜の膜厚であるが、それぞれ水素透過膜の膜厚が薄い。このように、比較例1および6は、薄膜多孔質支持体の強度は十分であるが、水素透過膜が0.1μmと薄すぎるため、成膜時に発生したピンホールなどにより、漏れが発生したものと考えられる。
また、比較例2、4、5および7は、窒素ガスで圧力差をかけると、マスフローメータで測定不能な大きな漏れが発生し、冷却後に取り出した水素透過複合膜には、目視で確認できる割れが生じていた。
比較例2、5および7は、混合相薄膜の膜厚が0.8μmと薄すぎたために、薄膜多孔質支持体の強度が低く、窒素ガスの圧力差により水素透過複合膜が破壊したと考えられる。
比較例4は、混合相薄膜の膜厚が3μmと十分に厚いが、混合相薄膜中の第2金属相であるCuの体積率が80%と大きいため、薄膜多孔質支持体の強度が低下し、比較例2、5および7と同様に、水素透過複合膜が破壊したと考えられる。
また、混合相薄膜の組成をTa−30vol%Cuとした比較例3では、窒素ガスで圧力差をかけた時に漏れは発生しなかったものの、水素ガスで圧力差をかけても、水素透過複合膜の下流で透過水素ガスを検出できなかった。これは、混合相薄膜において、第2金属相であるCuの体積率が30%と小さく、硝酸浸漬時にCuが溶け残って、薄膜多孔質支持体が多孔質化しなかったためと考えられる。
したがって、水素透過膜の膜厚、混合相薄膜の組成、および混合相薄膜の膜厚の何れかにおいて、本発明にあたらない比較例1〜7の水素透過複合膜は、いずれも水素ガスの精製および分離用として、使用することができない。
以上に示したように、本発明に係る水素透過複合膜を用いることにより、水素透過膜を薄膜化して水素透過流量を大きくすることが可能である。また、水素透過膜を薄膜化することにより、水素透過流量を大きくすることができ、かつ、高価なPd合金の使用量を減らすことができて、工業的にも極めて価値が大きい。
本発明の水素透過複合膜の一実施例を示す基本構造断面図である。 薄膜多孔質支持体の表面にバリア膜を形成した本発明の水素透過膜の一実施例を示す断面拡大図である。 混合相薄膜の一部にあらかじめPdまたは水素透過合金をスパッタリング法で形成することにより、接合強度を確保した水素透過複合膜を示す平面図である。 図3に示した実線円部分の断面拡大図である。
符号の説明
1 水素透過膜
2 薄膜多孔質支持体
3 バリア膜
4 水素透過部
5 予め形成したPdまたはPd合金の薄膜

Claims (18)

  1. 膜厚が1〜10μmである薄膜多孔質支持体の上に、水素透過膜が形成されていることを特徴とする水素透過複合膜。
  2. 前記水素透過膜の膜厚が0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の水素透過複合膜。
  3. 前記薄膜多孔質支持体の平均細孔径が1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の水素透過複合膜。
  4. 前記薄膜多孔質支持体が、Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水素透過複合膜。
  5. 前記水素透過膜が、PdまたはPd合金からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水素透過複合膜。
  6. 第1金属相と、第1金属相を構成する金属とは互いに固溶しない金属からなる第2金属相との混合相からなる膜厚が1〜10μmである混合相薄膜を形成する工程、該混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、薄膜多孔質支持体を形成する工程、および、前記混合層薄膜または薄膜多孔質支持体の上に、膜厚が0.5〜5μmである水素透過膜を形成する工程を有することを特徴とする水素透過複合膜の製造方法。
  7. 前記第1金属相をCr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金により形成し、前記第2金属相をCu、Ag、または、CuおよびAgを含有する合金により形成することを特徴とする請求項6に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  8. 該水素透過膜をPdまたはPd合金により形成することを特徴とする請求項6または7に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  9. 前記混合相薄膜を形成する工程および/または前記水素透過膜を形成する工程をスパッタリング法により行うことを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の水素透過複合膜の製造方法。
  10. 第2金属相の体積率が40〜70%となるように前記混合層薄膜を形成することを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の水素透過複合膜の製造方法。
  11. 前記混合相薄膜を形成する工程の後に、前記混合相薄膜を400〜1000℃で熱処理をする工程をさらに有することを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の水素透過複合膜の製造方法。
  12. 前記熱処理の後に、酸素を含有する雰囲気中、300〜1000℃で第2の熱処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  13. 前記第2の熱処理を前記熱処理よりも低い温度で行うことを特徴とする請求項12に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  14. 前記熱処理の後に、該混合相薄膜の表面にバリア膜を形成することを特徴とする請求項11に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  15. 前記混合相薄膜を形成する工程、および、前記水素透過膜を形成する工程を行った後に、混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、前記薄膜多孔質支持体を形成する工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  16. 前記混合相薄膜を形成する工程、および、混合相薄膜を400〜1000℃で熱処理する工程を行った後に、前記水素透過膜を形成する工程を行い、その後、混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、前記薄膜多孔質支持体を形成する工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の水素透過複合膜の製造方法。
  17. Cr、Ta、Nb、Mo、W、または、Cr、Ta、Nb、MoおよびWからなる群から選ばれる2種以上を含有する合金からなる第1金属相と、Cu、Ag、または、CuおよびAgを含有する合金からなる第2金属相との混合相からなり、膜厚が1〜10μmである混合相薄膜を形成し、該混合相薄膜に400〜1000℃で熱処理を施し、該混合相薄膜の表面の一部にPdまたはPd合金からなる薄膜を形成し、得られた膜に、酸素を含有する雰囲気中、300〜1000℃で、かつ、前記熱処理の温度よりも低い温度で、第2の熱処理を施し、得られた膜の混合相薄膜および前記PdまたはPd合金からなる薄膜の表面に、PdまたはPd合金からなり、膜厚が0.5〜5μmである水素透過膜を形成し、前記混合相薄膜中の第2金属相をエッチングにより除去することにより、薄膜多孔質支持体を形成することを特徴とする水素透過複合膜の製造方法。
  18. 前記混合相薄膜中の第2金属相を除去するエッチングには、硝酸または硝酸を含むエッチング液を用いることを特徴とする請求項6〜17の何れかに記載の水素透過複合膜の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016172229A (ja) * 2015-03-17 2016-09-29 京セラ株式会社 水素分離膜、水素分離モジュール、水素分離装置および水素製造装置
CN112877663A (zh) * 2021-01-13 2021-06-01 苏州涂冠镀膜科技有限公司 一种应用于燃料电池的柔性正极材料及其制备方法

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