JP2008039136A - 等速自在継手用ブーツ及び等速自在継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブーツの山部同士の摩耗性や谷部とシャフトとの摩耗性、山谷部の疲労性の良好なバランスを保つことが可能となって、耐久性が向上する等速自在継手用ブーツ及び等速自在継手を提供する。
【解決手段】等速自在継手用ブーツ10は、等速自在継手の外側継手部材1に装着される大径部13と、等速自在継手の内側継手部材2に連結されたシャフト9に装着される小径部14と、大径部13と小径部14との間に配置される蛇腹部15とを備える。自由状態におけるブーツ全長よりも、装着状態におけるブーツ全長を大とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、等速自在継手用ブーツ及び等速自在継手に関するものである。
自動車や各種産業機械における動力の伝達に用いられる等速自在継手には、継手内部への塵埃等の異物侵入防止や継手内部に封入されたグリースの漏れ防止を目的とし、蛇腹状のブーツが装着される。
この種のブーツは、図3に示すように、等速自在継手の外側継手部材としての外輪に固定される大径部101と、内側継手部材としての内輪から延びるシャフトに固定される小径部102と、大径部101と小径部102との間に設けられ、谷部103と山部104とが交互に形成された蛇腹部105とを有する。そして、大径部101と小径部102とはそれぞれブーツバンドが装着されることによって固定される。
すなわち、等速自在継手には、作動角を取りながら回転したり、軸線方向に摺動したりしながら回転する機能が備わっており、その挙動に追従できるブーツの柔軟性を確保するために蛇腹形状をしている。
ところで、蛇腹状のブーツは、等速自在継手が作動角をとったり摺動したりする動きに追従するために変形する。また、等速自在継手用ブーツには、クロロプレンゴム等を使用したゴム製ブーツや熱可塑性エラストマー材を使用した樹脂製ブーツがあるが、樹脂製ブーツはゴム製ブーツに比べて耐久性に優れるため、適用が拡大している。
樹脂製ブーツを使用するものに、例えば、特許文献1に記載されたようなものがある。すなわち、特許文献1に記載のようなブーツでは、一般的には、ブーツを等速自在継手に装着する際、谷部の疲労性を考慮して、ある程度圧縮して(圧縮変形して)装着される。このため、図3に示すように、ブーツの装着状態におけるブーツ全長L3は、自由状態(自然長)でのブーツ全長L2よりも短くなる。そして、等速自在継手が作動角をとった際に引き伸ばされる側の位相の蛇腹展開長が引き伸ばされ過ぎることによる谷部変形(応力集中)を防止している。
実開平7−38758号公報
ところで、等速自在継手用ブーツは、等速自在継手が作動角をとったり、摺動したりする動きに追従するために変形する。その変化に伴い、隣接する山部が干渉することで摩耗を生じたり、谷部内面とシャフトとが干渉することで摩耗を生じたり、あるいは、山部や谷部に繰返し応力が発生することで疲労亀裂が生じたりする。それらが進行するとブーツが破損に至る場合がある。このため、これらの摩耗性や疲労性などの耐久性をより向上できる設計がブーツには求められる。
しかし、特許文献1に記載のものは、等速自在継手が作動角を取った場合の蛇腹の展開長が引き伸ばされ過ぎないように配慮したものであり、延いては谷部の疲労性を向上させるための手段であった。従って、等速自在継手が作動角をとった場合や、摺動式等速自在継手が内部側のスライドイン方向(ブーツが圧縮される側)へ摺動した場合に、ブーツの隣合う山部が干渉することで、その摩耗を促進して、十分な摩耗性を発揮することができない。また、谷部がシャフトと干渉する際の干渉力(接触圧力)を増大させることになる。
本発明は、上記課題に鑑みて、ブーツの山部同士の摩耗性や谷部とシャフトとの摩耗性、山谷部の疲労性の良好なバランスを保つことが可能となって、耐久性が向上する等速自在継手用ブーツ及び等速自在継手を提供する。
本発明の等速自在継手用ブーツは、等速自在継手の外側継手部材に装着される大径部と、等速自在継手の内側継手部材に連結されたシャフトに装着される小径部と、大径部と小径部との間に配置される蛇腹部とを備えた等速自在継手用ブーツにおいて、自由状態におけるブーツ全長よりも、装着状態におけるブーツ全長を大としたものである。
本発明の等速自在継手用ブーツでは、自由状態におけるブーツ全長よりも、装着状態におけるブーツ全長を大としているので、等速自在継手が作動角をとった場合や、ブーツが圧縮する方向へ摺動した場合に、隣合う山部同士の接触圧を小さくすることが可能となる。さらには、山部同士の接触圧を小さくしたことで、ブーツ小径部への山部からの押圧力(圧力)の付加が少なくなって、ブーツ小径部近傍にかかる応力を軽減することが可能となる。
前記装着状態でのブーツ全長を、自由状態のブーツ全長の1.01〜1.20倍にすることができる。これにより、作動時にブーツが凹んだり、谷部応力や小径部応力が高くなり過ぎることを回避できる。
ブーツ材料を熱可塑性エラストマーとしたので、等速自在継手用ブーツは、疲労性や摩耗性、高速回転性(回転時振れ廻り性)に優れる。
硬さが、JIS K6253によるデュロメータDで35以上50以下である熱可塑性ポリエステル系エラストマーとすることができる。これにより、谷部疲労性が向上する。
軸線方向の変位と作動角の変位とを許容する摺動式等速自在継手とすることや、作動角の変位のみを許容する固定式等速自在継手とすることができる。すなわち、θ=45deg以上の高作動角を取ることのできるタイプ(例えば、ツェッパ型、バーフィールド型等の固定式等速自在継手)や、外側継手部材の軸線方向にスライドする機構を備えたタイプ(例えば、ダブルオフセット型、トリポード型、クロスグルーブ型等の摺動式等速自在継手)など、あらゆる等速自在継手に適用できる。これにより、疲労性や摩耗性に優れた等速自在継手用ブーツを装着した、耐久性に優れる等速自在継手を構成することができる。
本発明は、隣合う山部同士の接触圧及び谷部とシャフトとの接触圧を小さくすることが可能となるので、この部位の摩耗性を向上することができる。さらには、山部同士の接触圧を小さくしたことで、ブーツ小径部近傍にかかる応力を軽減することが可能となり、この部位の疲労性を向上することができる。その結果、各山谷部の摩耗性、疲労性のバランスが良くなり、より優れた耐久性を有する等速自在継手用ブーツを得ることが可能となる。
作動時にブーツが凹んだり、谷部応力や小径部応力が高くなり過ぎることがない。これにより、各山谷部の摩耗性と疲労性とのバランスを保つことが可能となる。
ブーツ材料を熱可塑性エラストマーとしたので、等速自在継手用ブーツは、疲労性や摩耗性、高速回転性(回転時振れ廻り性)に優れ、ブーツとして安定した機能を長期に亘って発揮することができる。
硬さが、JIS K6253によるデュロメータDで35以上50以下である熱可塑性ポリエステル系エラストマーとすることにより、谷部疲労性が向上し、さらに自由状態におけるブーツ全長よりも装着状態におけるブーツ全長を大としたことで、山部摩耗性と谷部疲労性とのバランスを効果的に取ることを可能とした。
摺動式等速自在継手のように、軸線方向に摺動するがあまり高作動角を取らない場合、谷部疲労性の重要度もさることながら、ブーツ圧縮側へ摺動した際の隣合う山部同士が干渉することによる摩耗性が重要となる。この摩耗性と疲労性とのバランスを保つために、自由状態におけるブーツ全長よりも装着状態におけるブーツ全長を大とすることが効果的である。また、固定式等速自在継手においても、従来は山部摩耗性向上よりも谷部疲労性の向上を重点的に図ったが、デュロメータDによる硬さが50を超える従来の材料から35以上50以下の熱可塑性ポリエステル系エラストマーに変更されることで谷部疲労性が向上したことも功を奏し、山部摩耗性を向上することがこのバランスを保つために効果的である。
以下本発明の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。
図1は本発明の等速自在継手用ブーツ10が使用された等速自在継手を示し、この等速自在継手は、内周面に複数の案内溝(トラック溝)4を軸方向に形成した外側継手部材としての外輪1と、外周面に複数の案内溝(トラック溝)5を形成した内側継手部材としての内輪2と、外輪1の案内溝4と内輪2の案内溝5とで協働して形成されるボールトラックに配される複数のボール3と、ボール3を収容するためのポケット8aを有するケージ8等から構成される。また、内輪2の内周にセレーションやスプライン等のトルク伝達手段を介してシャフト9を結合している。なお、この図1では、アンダーカットフリー型(UJ)の等速自在継手である。本説明の実施の形態として固定式等速自在継手を用いて説明しているが、これに限られるものではなく、摺動式等速自在継手を用いても良い。
等速自在継手用ブーツ10は、例えば、エステル系、オレフィン系、ウレタン系、アミド系、スチレン系等の熱可塑性エラストマーにて形成される。熱可塑性エラストマーは樹脂とゴムの中間の性質を持っている。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂の通常の成形機にて加工することができる。
また、等速自在継手用ブーツ10は、硬さが、JIS K6253によるデュロメータDで35以上50以下である熱可塑性ポリエステル系エラストマーとすることができる。熱可塑性ポリエステル系エラストマーは、加硫ゴムのような非常に柔軟な材料と、ポリスチレン、ポリアミドやポリブチレンテレフタレートのような高剛性な熱可塑性樹脂との中間の弾性率を持つ材料である。この熱可塑性ポリエステル系エラストマーは、加硫ゴムと高剛性な熱可塑性樹脂の両者の特徴を有し、変形を受けても、元の形状に復元するゴム弾性、加硫ゴムより高い機械的強度、一般的な熱可塑性樹脂に適用できる全ての成形加工法が適用できる熱可塑性などの特徴を示す材料である。
等速自在継手用ブーツ10は、等速自在継手の外側継手部材(外輪1)の開口端部に装着される大径部13と、等速自在継手の内側継手部材(内輪2)に連結されたシャフト9に装着される小径部14と、大径部13と小径部14との間に設けられ、軸方向に沿って交互に配設される山部7と谷部6とを有する蛇腹部15とを備える。山部7と谷部6とは傾斜部12にて連結されている。なお、この等速自在継手用ブーツ10の自由状態でのブーツ全長は、図2の上半分で示すようにLとなる。
外輪1の開口部側の外周面には、周方向に沿った溝からなるブーツ取付部16が設けられ、このブーツ取付部16に大径部13が外嵌される。そして、ブーツ10の大径部13の外周面に形成された嵌合溝17にブーツバンド18を嵌着することによって、大径部13を外輪1に固定している。但し、この形状は一例であり、これに限定されるものではない。
シャフト9には、外輪1から所定量突出した位置に、周方向に沿ったブーツ取付用溝20を有するブーツ取付部22が設けられ、小径部14がブーツ取付部22に外嵌される。そして、ブーツ10の小径部14の外周面に形成された嵌合溝19にブーツバンド18を嵌着することによって、小径部14をシャフト9に固定している。なお、ブーツ取付用溝20の開口端(軸方向端)に、小径部14の内径面に食い込む周方向突起部(突起)23、24が設けられている。但し、この形状は一例であり、これに限定されるものではない。
本発明のような等速自在継手用ブーツ10を装着する場合、装着状態でのブーツ全長を、自由状態のブーツ全長よりも長くする。すなわち、ブーツ10の自由状態でのブーツ全長を図2の上半分に示すようにLとした場合、装着状態でのブーツ全長を図2の下半分に示すようにLよりも長いL1とする。この場合、L1をLの1.01倍〜1.20倍の範囲とするのが好ましく、1.05倍〜1.15倍の範囲とするのがより好ましい。
図2に示すように、ブーツ装着前において、小径部側に向かって縮径する傾斜部12の傾き(α)は、ブーツ装着後において、小径部側に向かって縮径する傾斜部12の傾き(α1)よりも大きい。また、ブーツ10装着前において、小径部側に向かって拡径する傾斜部12の傾き(β)は、ブーツ10装着後において、小径部側に向かって拡径する傾斜部12の傾き(β1)よりも大きい。すなわち、山部7がなす角θ1及び谷部6がなす角θ2は、装着前よりも装着後が大きくなっている。
このように、本発明の等速自在継手用ブーツでは、自由状態におけるブーツ全長よりも、装着状態におけるブーツ全長を大としている(山部7がなす角θ1及び谷部6がなす角θ2は装着前よりも装着後が大きい)ので、等速自在継手が作動角をとった場合や、ブーツ10が圧縮する方向へ摺動した場合に、隣合う山部同士の接触圧及び谷部とシャフトとの接触圧を小さくすることが可能となる。このため、この部位の摩耗性を向上することができる。さらには、山部同士の接触圧を小さくしたことで、ブーツ小径部への山部7からの押圧力(圧力)の付加が少なくなって、ブーツ小径部近傍にかかる応力を軽減することが可能となり、この部位の疲労性を向上することができる。その結果、各山谷部の摩耗性、疲労性のバランスが良くなり、より優れた耐久性を有する等速自在継手用ブーツを得ることが可能となる。
前記装着状態でのブーツ全長を、自由状態のブーツ全長の1.01〜1.20倍にすることができる。これにより、作動時にブーツ10が凹んだり、谷部応力や小径部応力が高くなり過ぎることがなく、各山谷部の摩耗性と疲労性とのバランスを保つことが可能となる。なお、1.20倍を超えると、作動時にブーツが凹んだり、谷部応力や小径部応力が高くなり過ぎて、摩耗性と疲労性とのバランスが悪くなる。一方、1.01倍より小さいと、L1がLとほぼ同じとなるか、Lよりも小さくなる。このため、隣合う山部同士の接触等にて摩耗が促進するおそれがある。
ブーツ材料を熱可塑性エラストマーとしたので、等速自在継手用ブーツは、疲労性や摩耗性、高速回転性(回転時振れ廻り性)に優れ、ブーツ10として安定した機能を長期に亘って発揮することができる。
硬さが、JIS K6253によるデュロメータDで35以上50以下である熱可塑性ポリエステル系エラストマーとすることにより、谷部疲労性が向上し、さらに自由状態におけるブーツ全長よりも装着状態におけるブーツ全長を大としたことで、山部摩耗性と谷部疲労性とのバランスを効果的に取ることを可能とした。特に、デュロメータDによる硬さが35以上50以下の熱可塑性ポリエステル系エラストマーを使用することで、より山部摩耗性を向上させるように、つまりは、自由状態のブーツ全長よりも装着状態のブーツ全長を大きくすることが可能となった。なお、硬さが、JIS K6253によるデュロメータDで35未満の場合や、50を超える場合は、山部摩耗性と谷部疲労性とのバランスをとることが困難である。
このように、本発明のブーツは、θ=45deg以上の高作動角を取ることのできるタイプ(例えば、ツェッパ型、バーフィールド型等の固定式等速自在継手)や、外側継手部材の軸線方向にスライドする機構を備えたタイプ(例えば、ダブルオフセット型、トリポード型、クロスグルーブ型等の摺動式等速自在継手)など、あらゆる等速自在継手に適用できる。これにより、疲労性や摩耗性に優れた等速自在継手用ブーツを装着した、耐久性に優れる等速自在継手を構成することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、摺動式等速自在継手の場合は、固定式等速自在継手よりも作動角が大きくないことから、デュロメータDによる硬さが50を超える熱可塑性ポリエステル系エラストマーを使用することができる。あるいは、固定式等速自在継手においても、後輪用駆動軸に適用する場合は、作動角が大きくないことから、デュロメータDによる硬さが50を超える熱可塑性ポリエステル系エラストマーを使用することができる。また、蛇腹部15の山部7と谷部6の数も前記実施例に限定されるものではなく、種々の全長のブーツ10を使用することができる。
ブーツ材料は、疲労性や摩耗性等の耐久性、耐熱老化性、耐油性等に優れる熱可塑性エラストマーが好ましいが、クロロプレン等のゴム材料であってもよい。
本発明の実施形態を示す等速自在継手用ブーツを使用した等速自在継手の断面図である。 前記等速自在継手用ブーツを示し、上半分は装着前の断面図、下半分は装着後の断面図である。 従来の等速自在継手用ブーツを示し、上半分は装着前の断面図、下半分は装着後の断面図である。
符号の説明
1 外側継手部材
2 内輪
9 シャフト
10 ブーツ
13 大径部
14 小径部
15 蛇腹部

Claims (6)

  1. 等速自在継手の外側継手部材に装着される大径部と、等速自在継手の内側継手部材に連結されたシャフトに装着される小径部と、大径部と小径部との間に配置される蛇腹部とを備えた等速自在継手用ブーツにおいて、
    自由状態におけるブーツ全長よりも、装着状態におけるブーツ全長を大としたことを特徴とする等速自在継手用ブーツ。
  2. 前記装着状態でのブーツ全長を、自由状態のブーツ全長の1.01〜1.20倍にしたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用ブーツ。
  3. ブーツ材料が熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項1又は請求項2の等速自在継手用ブーツ。
  4. 硬さが、JIS K6253によるデュロメータDで35以上50以下である熱可塑性ポリエステル系エラストマーからなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの等速自在継手用ブーツ。
  5. 軸線方向の変位と作動角の変位とを許容する摺動式等速自在継手であって、前記請求項1〜請求項4のいずれかの等速自在継手用ブーツを装着したことを特徴とする等速自在継手。
  6. 作動角の変位のみを許容する固定式等速自在継手であって、前記請求項1〜請求項4のいずれかの等速自在継手用ブーツを装着したことを特徴とする等速自在継手。
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