JP2007057071A - 等速自在継手用ブーツ - Google Patents

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Abstract

【課題】 ブーツの谷部内周面がシャフトに対して接触しても十分な摩耗寿命を有する等速自在継手用ブーツを提供する。
【解決手段】 等速自在継手の外側継手部材の外周とシャフトの中間部外周との間に配設されるブーツ1であって、前記外側継手部材の外周面に固定される筒状の大径部、前記シャフトの外周面に固定される筒状の小径部、および前記大径部と小径部との間を接続する蛇腹部とを備え、前記蛇腹部の谷部3に当該谷部の屈曲性を向上させる環状溝7を形成し、かつ、当該環状溝7の溝底7bと、等速自在継手が作動角を取った状態で外側継手部材に対する前記シャフトの傾斜による前記ブーツの圧縮側の谷部内周面4であって前記シャフトと接触する部位4aとの間の肉厚t1が、前記環状溝を断面左右対称形に形成した場合の前記溝底7bと接触部位4aとの間の肉厚t2よりも、大きくなるように前記環状溝7の溝底7bを左右非対称に形成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車のドライブシャフトなどに使用される等速自在継手を被覆するブーツに係り、特に、ブーツ蛇腹部の谷部の耐摩耗性を向上させたブーツに関する。
等速自在継手用ブーツは、継手内部に封入されたグリースの漏れ出しや継手内部への異物侵入防止を目的として、等速自在継手の外側継手部材の開口端外周と、内側継手部材に連結されるシャフト外周に、それぞれ固定される。等速自在継手は、作動角を取りながら回転したり、軸方向に摺動しながら回転する。このため、ブーツには当該挙動に追従できるだけの柔軟性が要求される。このような柔軟性を有するブーツとして、蛇腹状の屈曲部を有するものが使用されている。
ところで、自動車の高性能化に対応して、等速自在継手用ブーツにコンパクト化が要求されている。コンパクト化を達成するためには、ブーツ全長を短縮したり蛇腹部の内外径を縮小したりすることになるが、その分だけ膜長が短くなってしまう。その結果、蛇腹部が高剛性となって蛇腹部の変位量とそれに伴って発生する応力を従来同様に維持することが困難となる。これにより、ブーツの寿命低下を招来するおそれがある。
等速自在継手用ブーツを、例えば高角度の作動角に対して回転耐久試験を行なった場合、谷部の肉厚が厚いと蛇腹部の折り畳み性が悪化し、谷部に作用する応力が増大して谷部の表面に皺が早期に発生することが確認されている。このような皺は亀裂の発生原因となり、この皺の早期発生はブーツが短寿命となることを意味する。
そこで、図3のブーツ10のように、谷部11に断面U字状の環状溝12を形成して谷部11の屈曲疲労性を向上させるなどの対策がとられている(特許文献1参照)。また、この環状溝12の形状についても、変形・亀裂の防止などの観点から、図4(A)〜(C)の環状溝12a、12b、12cのように種々の形状が提案されている(特許文献1〜3参照)。
特開平7−224935号公報 特開平6−94043号公報 特開2004−60848号公報
しかしながら、蛇腹部の谷部に環状溝を形成することで屈曲疲労性の向上は図れるものの、谷部内周面の摩耗寿命については改善されない。つまり、等速自在継手が大きく作動角を取ることで外側継手部材に対してシャフトが大きく傾斜すると谷部の内周面がシャフトに接触する場合がある。このような高作動角で継手が回転すると、谷部内周面がシャフトと擦れて摩耗する。このため、特に高作動角を取ることが可能な等速自在継手では谷部の摩耗寿命の増大が必要である。しかし、従来のブーツでは摩耗寿命を考慮した谷部ないし環状溝の形状設計は殆ど検討されていないのが実情である。
本発明は、斯かる実情に鑑み創案するに至ったものであって、等速自在継手のシャフトに対してブーツの谷部内周面が接触しても十分な摩耗寿命を有する等速自在継手用ブーツを提供しようとするものである。
請求項1記載の発明は、外側継手部材と内側継手部材との間にトルク伝達部材を収容し、前記内側継手部材に連結されたシャフトが継手外へ延在してなる等速自在継手の、前記外側継手部材の外周と前記シャフトの中間部外周との間に配設されるブーツであって、前記外側継手部材の外周面に固定される筒状の大径部、前記シャフトの外周面に固定される筒状の小径部、および前記大径部と小径部との間を接続する蛇腹部とを備え、前記蛇腹部の谷部に当該谷部の屈曲性を向上させる環状溝を形成し、かつ、当該環状溝の溝底と、等速自在継手が作動角を取った状態で外側継手部材に対する前記シャフトの傾斜による前記ブーツの圧縮側の谷部内周面であって前記シャフトと接触する部位との間の肉厚が、前記環状溝を断面左右対称形に形成した場合の前記溝底と接触部位との間の肉厚よりも、大きくなるように前記環状溝の溝底を左右非対称に形成したことを特徴とするものである。
このように構成することにより、シャフトとの摩擦による摩耗寿命を延長することができ、ブーツの寿命増大を図ることができる。
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、前記谷部から山部に至る左右一対の側壁部のうち、前記シャフトに対する谷部内周面の接触部位に近い方の側壁部外周面を、前記谷部の環状溝の溝底まで直線状に延在させたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1の発明において、前記谷部から山部に至る左右一対の側壁部のうち、前記シャフトに対する谷部内周面の接触部位に近い方の側壁部外周面を、前記谷部の環状溝の縁部で環状溝を拡幅する方向に屈折させて環状溝の溝底まで延在させたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1の発明において、熱可塑性ポリエステル系エラストマーでブーツを構成したことを特徴とする。
本発明の等速自在継手用ブーツによれば、谷部の肉厚をシャフトとの摩擦により摩耗する側をより厚肉に形成したから、従来のブーツに比べて摩耗破損時間を延長することができ、継手寿命を増大させることができる。また、本発明のブーツは、谷部内周面がある程度摩耗しても依然として十分な肉厚を確保することができるため、谷部の亀裂進展を遅らせる効果があり、これにより、山谷部の径を全体的に小さくし、かつ、ブーツ全長を短縮することが可能となり、ブーツの更なるコンパクト化を達成することができる。
以下、本発明の実施の形態を図1および図2に基づき説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る等速自在継手用ブーツ1の蛇腹部の部分断面を示すものである。全体形状は、図3と同様に、図面右側に、等速自在継手の外側継手部材外周面に固定される大径部13が配置され、図面左側に、等速自在継手のシャフト外周面に固定される小径部14が配置される。このブーツ1は熱可塑性ポリエステル系エラストマーを材料として成形したものである。勿論、熱可塑性ポリエステル系エラストマー以外の他の可撓性材料によりブロー成形または他の方法で成形してもよい。蛇腹部は2山から7山程度の山部2と、その山部間の谷部3で構成される。谷部3の内周面4は円弧状を成し、山部2から谷部3に延びる左右一対の側壁部5、6の内周面が、谷部3の円弧状内周面4に対して接線として直線状に延在している。
谷部3に形成された環状溝7は、破線で示す従来の典型的なU字状環状溝8に比べて、谷部3の両側にあって山部2から谷部3に延びる左右一対の側壁部5、6のうち、谷部3の小径部側に位置する側壁部5の外周面が、山部2から谷部3にかけて一直線状に環状溝の溝底まで延在している。一方、谷部3の大径部側に位置する側壁部6の外周面は、環状溝7の縁部7aで環状溝を拡幅する方向にいったん屈折した後、溝底7bまで直線状に延在している。したがって、環状溝7は左右対称形状ではなく、全体として三角形状を呈している。なお、溝底7b形状は図示例では先鋭状に見えるが、実際は所定曲率の円弧で形成する。なお、小径側側壁部5の傾斜角度に応じて、環状溝7の溝底7bがU字状環状溝8の円弧形状の一部を残す状態となったり、U字状環状溝8の円弧形状が完全に消滅する状態となったりする。
第1実施形態のブーツ1は以上のように構成され、等速自在継手が作動角を取ることで外側継手部材に対してシャフトが傾斜すると、当該傾斜に対応してブーツ1も傾斜する。またブーツ1自体が継手軸線方向に引張りまたは圧縮作用を受ける。この際、ブーツ1の圧縮側では通常図5のように側壁部5(6)が傾斜する。側壁部5(6)の傾斜方向は、図5のように谷部が大径部側(山部が小径部側)に接近する方向である。ただし、設計条件によっては、稀に、側壁部5(6)の傾斜方向が前述と反対方向になることもある。ブーツ1の圧縮側では、谷部が図5のようにシャフト15に接触する現象が生じる。この際、側壁部5(6)が図5のように傾斜すると、図1の谷部内周面4のうち符号4aで示す部分がシャフトと接触する。この接触部4aと、側壁部5から溝底7bに延びる直線部との間の肉厚t1は、従来のU字状環状溝での左右対称形溝部を想定した場合の肉厚t2よりも厚くなっている(t2<t1)。このため、従来のU字状環状溝8に比べると、t1−t2の分だけ肉厚を稼ぐことができ、その分、摩耗寿命を増大させることができる。
次に、本発明の第2実施形態を図2に基づき説明する。この実施形態は、谷部3の小径部側に位置する側壁部5の外周面が、山部2から谷部3にかけて環状溝7の縁部7cまでは一直線状に延在するが、環状溝7の縁部7cで環状溝7を拡幅する方向にいったん屈折した後、溝底7bまで直線状に延在している。したがって、環状溝7は図1と同じように左右対称形状ではない。なお、溝底7b形状は図示例では角部を有するように見えるが、実際は所定曲率の円弧で形成する。その他の形状は、図1の第1実施形態と同様である。
第2実施形態のブーツ1は以上のように構成され、側壁部5(6)が図5のように傾斜すると、図2の谷部内周面4のうち符号4aで示す部分がシャフトと接触する。この接触部4aと、側壁部5から溝底7b方向に延びる直線部との間の肉厚t1’は、従来のU字状環状溝での左右対称形溝部を想定した場合の肉厚t2よりも厚くなっている(t2<t1’)。このため、従来のU字状環状溝8に比べると、t1’−t2の分だけ肉厚を稼ぐことができるので、その分、摩耗寿命を増大させることができる。
なお、本発明の等速自在継手用ブーツは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、図1、図2では等速自在継手が作動角を取ることで外側継手部材に対してシャフトが傾斜した時、谷部3が等速自在継手の外側継手部材に近付いてシャフトに接触する前提で説明したが、ブーツの蛇腹部の設計によっては、谷部3が等速自在継手の外側継手部材から離れる方向に移動してシャフトに接触する場合もあり得る。この場合は、前述したブーツ谷部形状を左右反転したものを適用すればよい。すなわち、ブーツの蛇腹部の形状設計に応じて、本発明の谷部形状の向きを選択すればよい。また、本発明の谷部の形状は、ブーツの全谷部に適用してもよいし、作動角を取った際にシャフトと接触する1箇所または数箇所の所望の谷部にのみ適用してもよい。
本発明の等速自在継手用ブーツは、45°以上の大きな作動角を取ることのできるタイプ、例えは、ツェッパ型、バーフィールド型などのボールを用いた固定式等速自在継手や、外側継手部材の軸線方向にスライドする機構を備えたタイプ、例えば、ダブルオフセット型、トリポード型、クロスグルーブ型などの摺動型等速自在継手など、あらゆる等速自在継手に使用するブーツに適用可能である。
本発明は、特に、谷部とシャフトとの干渉摩耗に対して効果的であることから、45°以上の大きな作動角を取ることのできる等速自在継手に好適に用いることができる。また、本形状は、熱可塑性ポリエステル系エラストマー製ブーツにおいてより好適に適用できる。
本発明の第1実施形態に係るブーツの部分断面図。 本発明の第2実施形態に係るブーツの部分断面図。 従来のブーツの縦断面図。 (A)、(B)、(C)は、従来のブーツの谷部に形成する環状溝の断面図。 シャフトが傾斜した時の従来のブーツの変形状態を示す断面図。
符号の説明
1 等速自在継手用ブーツ
2 山部
3 谷部
4 内周面
4a 接触部
5、6 側壁部
7 環状溝
7a、7c 縁部
7b 溝底
8 U字状環状溝
10 ブーツ
11 谷部
12 環状溝
12a 環状溝
13 大径部
14 小径部
15 シャフト

Claims (4)

  1. 外側継手部材と内側継手部材との間にトルク伝達部材を収容し、前記内側継手部材に連結されたシャフトが継手外へ延在してなる等速自在継手の、前記外側継手部材の外周と前記シャフトの中間部外周との間に配設されるブーツであって、前記外側継手部材の外周面に固定される筒状の大径部、前記シャフトの外周面に固定される筒状の小径部、および前記大径部と小径部との間を接続する蛇腹部とを備え、前記蛇腹部の谷部に当該谷部の屈曲性を向上させる環状溝を形成し、かつ、当該環状溝の溝底と、等速自在継手が作動角を取った状態で外側継手部材に対する前記シャフトの傾斜による前記ブーツの圧縮側の谷部内周面であって前記シャフトと接触する部位との間の肉厚が、前記環状溝を断面左右対称形に形成した場合の前記溝底と接触部位との間の肉厚よりも、大きくなるように前記環状溝の溝底を左右非対称に形成したことを特徴とする等速自在継手用ブーツ。
  2. 前記谷部から山部に至る左右一対の側壁部のうち、前記シャフトに対する谷部内周面の接触部位に近い方の側壁部外周面を、前記谷部の環状溝の溝底まで直線状に延在させたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用ブーツ。
  3. 前記谷部から山部に至る左右一対の側壁部のうち、前記シャフトに対する谷部内周面の接触部位に近い方の側壁部外周面を、前記谷部の環状溝の縁部で環状溝を拡幅する方向に屈折させて環状溝の溝底まで延在させたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用ブーツ。
  4. 熱可塑性ポリエステル系エラストマー製であることを特徴とする請求項1の等速自在継手用ブーツ。
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