JP2008038303A - 手袋及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄い繊維生地をベースとすることにより容易に破損しない強度をもたせつつも、手袋の厚みを薄くして、生地本来の柔らかさも出し、原手を手型に被せてからコーティングする立体成形とあいまって、手にフィットし作業性の良い、また蒸れなくてしかも外部から水が入らない透湿防水性を持たせる事が出来、さらには無理な引張りや外部の力によってもコーティング層が容易に剥離や破損しない、そして洗濯洗浄の再使用が多数回出来る長時間使用しても蒸れなくてクリーンルーム内でのタッチパネル等の細かな作業が出来る手袋、及びその製造方法を提供せんとする。
【解決手段】縦方向の引張伸度が170%以上で、かつ厚さが500μm以下の繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の湿式成膜発泡層を含浸被着させた上に、無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層を被着する。
【選択図】なし

Description

本発明は、クリーンルームにおける作業用及びそれに準ずる作業用として好適な手袋、及びその製造方法に関する。
この種の手袋としては、作業性の点から、よく伸びて手指にフィットし、細かな作業感覚が得られる性能が求められており、従来、薄地でよく伸びる樹脂製又はゴム製の手袋が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、樹脂またはゴムだけで薄く構成された手袋は、脱着時の無理な引っ張りにより破れやすく、使用によっても指先部等のストレスがかかり易い箇所から破損しやすく、クリーン洗浄による再使用が難しかった。また、これら塩化ビニル樹脂やNBRゴムあるいは天然ゴムで作った手袋は蒸れて長時間の連続使用がし難いと云う問題点があった。
一方、薄い繊維生地の上に薄いフィルムを貼り合わせたシートからフィルム同士が相対するように熱融着法で手袋状に仕上げたものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、このように生地の表面に樹脂やゴムフィルムを貼り合わせたものでは繊維とフィルムの密着性が十分でない為に外部からの強い力がかかるとフィルムが破れ易い欠点が有った。
また、手袋状の熱融着部の強度が十分でない為に外部からの強い力に耐えない欠点や、近年とくに求められている多数回の洗浄再使用(リユース)に耐えない欠点が有った。
さらに、手袋状にする方法が、同一形状のシートをフィルムを相対して平面状で熱融着し、後で裏返して手袋に仕上げる方法をとるので、出来上がった手袋はどうしても手にフィットし難い、作業性の悪いものになる欠点が有った。
このように、フィルムの外部よりの力に対する強度を上げる為にフィルムの厚みを厚くすると手袋が硬くなって手にフィットせず作業性が悪くなる。また融着部の強度を上げる為に融着部の巾を広くすると手袋がゴワゴワしてしまい手にフィットしなくなる。
更に、この手袋は立体ではなく平面状の手袋であるので手にはフィットせず作業性が悪い欠点は解決し難いものであった。
特開平11−12823号公報 特開平6−33303号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、薄い繊維生地をベースとすることにより容易に破損しない強度をもたせつつも、手袋の厚みを薄くして、生地本来の柔らかさも出し、原手を手型に被せてからコーティングする立体成形とあいまって、手にフィットし作業性の良い、また蒸れなくてしかも外部から水が入らない透湿防水性を持たせる事が出来、さらには無理な引張りや外部の力によってもコーティング層が容易に剥離や破損しない、そして洗濯洗浄の再使用が多数回出来る長時間使用しても蒸れなくてクリーンルーム内でのタッチパネル等の細かな作業が出来る手袋、及びその製造方法を提供する点にある。
本発明は前述の課題を解決するために、縦方向の引張伸度が170%以上で、かつ厚さが500μm以下の繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の発泡層を含浸被着させてなる手袋を構成した。ここに、引張伸度とは、生地上の2点間を略5mm巾、2.5kgで引張った際の伸び率をいい、たとえば元の距離1cmが引っ張りにより2cmになった場合(元の距離の2倍に伸びた場合)は200%の引張伸度となる。また縦方向とは指の長さ方向に沿った方向とする。また、繊維生地の厚みは、JIS L 1096に準拠して測定した厚さをいう。
ここで、前記発泡層の上に、さらに無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層を被着したものが好ましい。
また、前記繊維生地を、ウーリーポリエステル若しくはウーリーナイロンよりなる生地、又はこれらとウレタン弾性糸とを組み合わせてなる生地としたものが好ましい。
また、指先部分、指股部分および縫製部分を除く大部分の領域において、前記成膜発泡層およびポリウレタン樹脂層を含む手袋の厚みが500μm以下であるものが好ましい。ここに、手袋の厚みは、JIS K 6250に準拠して測定した厚さをいう。
また、本発明は、縦方向の引張伸度が170%以上で、かつ厚さが500μm以下の繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の発泡層を含浸被着させたことを特徴とする手袋の製造方法をも提供する。ここでも、好ましくは前記発泡層の上にさらに無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層を被着する。
以上にしてなる本発明に係る手袋及び製造方法によれば、繊維生地を手袋状に縫製した原手をベースとしていることから薄くても丈夫な手袋とすることができ、さらに、発泡したウレタン樹脂が生地に含浸被着されるので、生地表面近傍にのみ接着していた従来の方法に比べて柔軟性を保ちながら密着性が格段に良くなり、また熱融着部の無い製造方法なので融着強度の問題もない。
また、長繊維の生地で原手を作っているから発塵性も少なく、ミシンの縫い端も樹脂の含浸で固着されているからそこからの発塵も防がれクリーンルーム用手袋として十分使える手袋とする事ができるとともに、耐久性が向上し、近年とくに求められている洗濯洗浄による多数回の再使用が可能となる。
また、含浸層が発泡化しているため、引張伸度170%以上の生地本来の伸び特性が損なわれることなく、全体として伸度に優れた、柔らかい手袋が構成できる。したがって、多少手の大きな人にも小さな人にも、手にピッタリ合って作業性が良好でかつ嵌め心地のよい手袋を提供出来る。また、従来のフィルム手袋に比べて蒸れにくく優れた嵌め心地を維持できる手袋を構成できる。
また、コーティング層(無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層)を形成した場合、該コーティング層が前記含浸層の存在により、生地のみに直接コーティングする従来の方法に比べて、密着度がさらに向上する。従って、コーティング層自体を薄く仕上げる事が出来、全体として薄くて柔らかい嵌め心地の良い手袋が提供できる。具体的には、本発明のコーティング層は10〜30μm程度の薄さで十分な密着性と強度を有し、柔らかく手にフィットした作業性の良い手袋が提供できることが確認されている。
また、コーティング層は含浸層の存在により密着強度が向上するので、手袋を引張っても、外部から力が加わってもコーティング層が容易に剥離せず、又、融着部の剥離もないので耐久性が向上し、洗濯洗浄による多数回の再使用が可能となる。含浸層が発泡化しているとともにコーティング層も親水基を持った無孔質透湿防水樹脂で薄いため、手袋全体として透湿防水性を与えることができ、従来のフィルム手袋に比べて蒸れにくく優れた嵌め心地を維持できる。
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
本発明に係る手袋は、指の長さ方向に沿った縦方向の引張伸度が170%以上で、かつ厚さが500μm以下の繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の発泡層を含浸被着させたものである。発泡層は、ウレタン樹脂の湿式成膜発泡層である。また、好ましくは、前記発泡層の上に、さらに無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層が被着される。なお、以下の実施形態においては、縫製原手を用いた例を説明するが、シームレスの原手を用いることもできる。
原手を構成する繊維生地は、ウーリーポリエステル若しくはウーリーナイロンよりなる生地、又はこれらとウレタン弾性糸とを組み合わせてなる生地が好ましい。
原手生地の縦方向の引張伸度は、170%未満であると特に手袋指部の伸びが悪くなり、指部の屈曲性が悪く嵌め心地が低下する。より好ましくは200%以上に設定される。また、生地の厚みが500μmより厚いと指部の屈曲性が低下し、ゴワゴワ感とともに嵌め心地が低下し、作業性も低下する。より好ましくは400μm以下に設定される。
そして、指先部分、指股部分および縫製部分を除く大部分の領域において、前記成膜発泡層およびポリウレタン樹脂層を含む手袋の厚みは、500μm以下、より好ましくは400μm以下に設定される。
次に、実施例および比較例の手袋について行った各種試験について説明する。
実施例1、2、比較例1、2は、それぞれ表1に示す繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の発泡層を含浸被着させた上に、さらに無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層を被着して作製したものである。
(原手の作製、精練)
手袋状に打ち抜いた生地を縫製して、繊維製手袋を作製し、作製した縫製原手に対して精練処理を行なう。精練は、85℃〜95℃で、原手の30倍の重量の水に精練剤(松本油脂製薬株式会社製「SSK−15」)を1g/L添加量した液を用いて15分間行われる。
精練後は排水処理され、その後、濯ぎ処理が行なわれる。濯ぎは常温で原手の30倍の重量の水を用いて3分間行われ、濯ぎ後は排水処理され、その後、脱水し、110度、10分間の乾燥処理が行なわれる。
(発泡層の含浸被着)
上記原手をアルミニウム製手型に被せ、その原手付きの手型を、DMFとトルエンの混合溶媒に溶解した湿式成膜性ウレタン樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製 「クリスボン8006HVLD」)10wt%溶液(樹脂10wt%,DMF85wt%,トルエン5wt%)に4mm/secで浸漬し、4mm/secで引き上げ、50℃の温水に60分間漬けて、樹脂液の溶剤DMFを水で置換する。その後、水から引き上げ、110℃、10分間乾燥し、ファンにて手型温度50℃付近まで冷却する。
(無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層の被着)
次に、キシレン/IPAの混合溶媒に溶解した乾式加工用ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製 「クリスボンNYT−18」)10wt%溶液(樹脂10wt%,IPA43.6wt%,キシレン30wt%,トルエン13.7wt%,DMF2.7wt%)に12mm/secで浸漬し、4mm/secで引き上げ、110℃、20分間乾燥し、ファンにて離型可能な温度まで冷却した後、離型する。
(嵌め心地試験)
以上のように作成した実施例1,2、比較例1,2の各手袋について、手袋の厚み、縦方向の引張伸度、手袋の嵌め心地(指の屈伸性)について試験した結果を、表2に示す。嵌め心地は、5人のパネラーにより「○」 …良い、「△」・・・やや不満、「×」・・・悪いの三段階で評価した。
表2の結果から分かるように、実施例1、2では、実施例1の方が生地の縦方向の引張伸度が大きく、手袋指部の伸びも175と大きく、嵌め心地の良い手袋となった。これに比べると、実施例2ではやや不満が残ったが、クリーンルーム用としては十分である。比較例1は、生地の縦方向の引張伸度が小さいため、手袋指部の伸びが悪くなり、よって指部の屈曲性が悪く嵌め心地に影響したと考えられる。比較例2は、伸びは十分であるが生地の厚みが680μmと大きく、更に浸透する含浸層のボリュームが増えるため、伸びの割には指部の屈曲感が低下し、ゴワゴワ感とともに嵌め心地が悪くなったと考えられる。
(引っ張り、引き裂き、耐発塵性試験)
また、実施例1および比較例3〜5の各手袋について、引っ張り試験、引き裂き試験、耐発塵性試験を行った結果を、下の表4に示す。
比較例3〜5の手袋は、薄い繊維生地の上に薄いフィルムを貼り合わせたシートからフィルム同士が相対するように熱融着法で手袋状に仕上げた、上記特許文献2で例示される従来のクリーンルーム用融着手袋である。比較例3は、商品名「Profesio non seam gloves」(株式会社ゴールドウィン製)、比較例4は、商品名「MX203」(株式会社マックス製)、比較例5は、商品名「VIOMAC BION II」(近藤工業株式会社)であり、下記表3に
それぞれの手袋の厚み(JIS K 6250A法に準拠して測定)、縦方向の引張伸度の測定結果を示す。
引っ張り試験は、各手袋の縫製又は融着部分を含む試験片(1.0cm×10cm)を用意し、引っ張り速度15cm/min,チャック間距離6cmで縫製又は融着部分に対して垂直方向に引っ張り、試験片が裂け始めるまでの耐力を測定した。
また、引き裂き試験は、各手袋の縫製又は融着部分を含む試験片(5.0cm×10cm)を用意し、縫製又は融着部分に沿って裂け目を入れた後、裂け目を境とした両端部を支持して、引っ張り速度15cm/min,チャック間距離6cmで裂け目に沿って上下に互いに反対側に引っ張り、裂け目を起点とした引き裂きに要する力を測定した。
また、耐発塵性試験は、JIS B 9923に準拠して、各手袋を20枚用意し、洗浄1回目、3回目における0.3μm以上の塵の存在個数を測定した。
表4の結果から分かるように、引っ張り、引き裂きともに実施例1は比較例3〜5の融着手袋に比べて3〜4倍程の耐久性を有している。また、各試験とも、実際には比較例3〜5が融着部に沿って裂けたのに対し、実施例1は縫製部分と異なる部分が裂けた。これにより、実施例1では縫製部分が他の部分よりも高い耐久性を有し、実施例1の縫製部分については、比較例3〜5と比較して上記3〜4倍を遥かに越える耐久性を有していることが分かる。以上のことから、本発明の手袋が、比較例3〜5のような熱融着部がなく、手袋状に縫製した原手に含浸層、コーティング層をそれぞれ設けたものであることから、原手の縫製部分も樹脂の含浸で高い強度を有していることが分かる。
また、耐発塵性試験の結果も、実施例1では比較例3〜5の手袋と比較してかなり小さな値となり、耐発塵性に非常に優れ、クリーン度100のクリーンルームで十分に使用できる手袋であることが分かる。これにより、本発明の手袋がミシンで縫い合わされた縫製部も樹脂の含浸で固着されているから、そこからの発塵が防がれているとともに、縫製原手にウレタン樹脂の湿式成膜発泡層が含浸され、手袋内側からの生地屑などの発生も防止されていることが分かる。
(耐摩耗試験)
また、実施例1および比較例3〜5の各手袋について、耐摩耗試験を行った結果を、図1、2に示す。耐摩耗試験の方法は、CE試験EN388の方法で、試験機器「Nu-Martindale」(James H.Heal&co.Ltd.製)を使用し、研磨用ペーパーは、耐水ペーパー(3Mサンドペーパー(ドライ&ウエット)♯2000)を用いて行った。図1は摩擦回数「100回」の試験後の手袋表面の拡大写真(100倍率)であり、図中(a)は実施例1、(b)は比較例3、(c)は比較例4、(d)は比較例5である。また、図2は実施例1について、摩擦回数「400回」の試験後の手袋表面の拡大写真であり、(a)は25倍率、(b)は100倍率のものである。比較例3〜5については、摩耗回数「100回」で破損箇所が生じたため継続しておらず、摩耗回数「400回」まで行っていない。
実施例1の手袋は、摩擦回数「400回」でも表面コーティングの破損は見当たらなかった。比較例3〜5の手袋は、図1に示すように摩擦回数「100回」ですでに破損箇所がそれぞれ検出された。これにより、生地のみに直接被着される融着手袋に比べて、本発明に係る手袋では、コーティング層が繊維生地に含浸している含浸層に密着し、外部から力が加わってもコーティング層が容易に剥離せず、耐久性が向上し、近年とくに求められている洗濯洗浄による多数回の再使用が可能であることが分かる。
(エアリーク試験)
また、実施例1および比較例3〜5の各手袋について、エアリーク試験を行った結果を、表5に示す。エアリーク試験はCE試験EN374−2に準拠して、各手袋10枚づつ試験した。
表5より、実施例1の手袋は十分な耐水性を有しており、本発明の手袋が、比較例3〜5のような熱融着部がなく、手袋状に縫製した原手に含浸層、コーティング層をそれぞれ設けたものであることから、エアリークの原因となりやすい繋ぎ部分(縫製部分)も樹脂の含浸で高い強度および耐水性を有していることが分かる。
摩擦回数「100回」の試験後の手袋表面の拡大写真であり、(a)は実施例1,(b)は比較例3,(c)は比較例4,(d)は比較例5の写真。 実施例1について摩擦回数「400回」の試験後の手袋表面の拡大写真であり、(a)は25倍率,(b)は100倍率の写真。

Claims (6)

  1. 縦方向の引張伸度が170%以上で、かつ厚さが500μm以下の繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の発泡層を含浸被着させてなる手袋。
  2. 前記発泡層の上に、さらに無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層を被着してなる請求項1記載の手袋。
  3. 前記繊維生地を、ウーリーポリエステル若しくはウーリーナイロンよりなる生地、又はこれらとウレタン弾性糸とを組み合わせてなる生地とした請求項1又は2記載の手袋。
  4. 指先部分、指股部分および縫製部分を除く大部分の領域において、前記成膜発泡層およびポリウレタン樹脂層を含む手袋の厚みが500μm以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の手袋。
  5. 縦方向の引張伸度が170%以上で、かつ厚さが500μm以下の繊維生地より、手袋状に原手を構成し、該原手にウレタン樹脂の発泡層を含浸被着させることを特徴とする手袋の製造方法。
  6. 前記発泡層を含浸被着させた上に、さらに無孔質透湿防水性ポリウレタン樹脂層を被着する請求項5記載の手袋の製造方法。

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