JP2008006483A - 高成形性Al−Mg系合金板の製造方法 - Google Patents

高成形性Al−Mg系合金板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 Al−Mg系合金について、異周速圧延による集合組織制御を行なって、r値および深絞り性を向上させると同時に表面欠陥の発生を防止して、工業的な製造で健全な板材を得る。
【解決手段】 Al−Mg系合金素材板に潤滑剤を付与して150〜300℃でロール周速比が1.2〜2.5の範囲内、85%を越える圧下率で温間異周速圧延を行ない、再結晶熱処理を行なって、平均r値が0.9以上のAl−Mg系合金板を得る。またその潤滑剤として、常温動粘度が10〜350mm2/s、引火点305℃以上の潤滑油を用い、付着量が100〜700mg/m2となるように素材板に付着させて温間異周速圧延を行なう。その素材板として、Mg2.0〜6.5%を含有し、残部が実質的にAlよりなるもの、あるいはさらにCu0.05〜0.5%を添加したもの、もしくはCu0.5%超1.8%以下を添加したもの、さらにはAg0.05〜0.6%添加したものを用いる。
【選択図】 なし

Description

この発明は、自動車のボディシート、その他各種車両用部品や、電子・電気機器のシャーシやパネルなどの各種電子・電気機器部品等に使用される成形加工用のアルミニウム合金板の製造方法に関し、特に強度のみならず、優れた成形性を有するAl−Mg系合金からなる高成形性アルミニウム合金板の製造方法に関するものである。
自動車のボディシートには、従来は冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では地球温暖化抑制やエネルギコスト低減などのために、自動車を軽量化して燃費を向上させる要望が強まっており、そこで従来の冷延鋼板に代えて、冷延鋼板とほぼ同等の強度で比重が約1/3であるアルミニウム合金板を自動車のボディシートに使用する傾向が増大しつつある。また自動車以外の電子・電気機器等のパネル、シャーシの如き成形加工部品についても、最近ではアルミニウム合金板を用いることが多くなっている。
ところでこのような成形加工用素材としてのアルミニウム合金板としては、従来はAl−Mg系のJIS 5052合金やJIS 5182合金のO材等が最も広く使用されている。このようなAl−Mg系アルミニウム合金からなる成形加工用素材の製造方法としては、従来一般にはDC鋳造法によって鋳造して均質化処理を施し、続いて熱間圧延してからさらに冷間圧延を行ない、再結晶熱処理を行なう方法が適用されている。しかしながら従来の一般的な方法により製造されたAl−Mg系の成形加工用アルミニウム合金板は、強度は冷延鋼板とほぼ同等ではあるものの、成形加工性、とりわけ深絞り性が冷延鋼板と比較して劣っているのが実情である。
ところで、冷延鋼板においては、成形加工性、とりわけ深絞り性の指標としてランクフォード値(r値)が従来から広く使用されている。そしてランクフォード値、特に平均ランクフォード値(平均r値)が高いほど深絞り性が優れている。ここで平均r値とは、圧延方向に対して0°、45°、90°の各方向で測定したr値(r、r45、r90)の平均値であり、平均r値=(r+2×r45+r90)/4で表わされる値である。
一方、一般に成形加工用素材では、深絞り性が集合組織によって大きな影響を受けることが良く知られている。そして体心立方格子構造を有する冷延鋼板では、圧延集合組織の板面に平行な主方位面が{111}面となり、その{111}面の方位集積密度を高めることによって、平均r値が上がり、深絞り性が向上することが知られている。そして冷延鋼板では、冷間圧延・再結晶熱処理によって得られる結晶方位が前述のように{111}面であることから、{111}面の方位集積密度を高めて深絞り性を向上させることが容易であり、そのための方法も既に充分に確立している。
これに対して面心立方格子構造を有するアルミニウム合金の場合は、従来の一般的な方法により加工熱処理を行なえば、成形性向上に有効な{111}面が形成されないばかりでなく、むしろ成形性を阻害する{100}面の方位密度が主方位となってしまって、平均r値を充分に上げることができず、成形性、特に深絞り性を向上させることが困難であった。
そこで最近に至り、アルミニウム合金に剪断変形を与えることにより{111}集合組織を形成させて、平均r値および深絞り性を向上させる技術が、例えば非特許文献1において提唱されている。この非特許文献1では、{111}集合組織の材料でr値が高くなることの理論解析が開示されており、さらに{111}集合組織を形成するための具体的手法として、熱間圧延と冷間圧延の中間的な温度で圧延する温間圧延や、圧延時における上下の圧延ロールの回転周速を異ならしめる異周速圧延を適用して剪断変形を導入する方法が提案されている。
一方特許文献としては、特許文献1では異周速圧延を、また特許文献2では温間異周速圧延を適用することにより、それぞれ{111}集合組織を形成して深絞り性を向上させる技術が提案されている。また特許文献1の発明者らは、同様に異周速圧延によりアルミニウム合金に剪断変形を与える技術について、非特許文献2、3においても開示している。
特開2003−305503号公報 特開2005−139494号公報 軽金属学会第50回シンポジウムテキスト、「再結晶・集合組織の解析と制御」(1996)、P18 軽金属、第50巻第7号(2000)、P335〜340 軽金属、第52巻第4号(2002)、P185〜189
ところで上述のような従来技術では、異周速圧延により剪断変形を与えることがAl合金における集合組織制御に有効であることが示されてはいるが、これを実際に行なう際の問題点について未だ充分な考慮がなされていない。すなわち、例えば特許文献1の発明者らは、他の非特許文献2、3において、剪断変形を材料に付与するための異周速圧延を、無潤滑状態で実施することとしており、このように無潤滑状態で圧延することは、剪断変形導入の効率の面では有効ではあるが、表面品質の優れたプレス成形素材を実際に製造するには適していない。すなわち異周速圧延では、材料表面がロールとの摩擦を受けるため、無潤滑状態で圧延すれば、表面欠陥(表面荒れや割れ)が生じやすく、極端な場合には圧延そのものが不可能となってしまう。また無潤滑状態での異周速圧延では、圧延ロールにアルミ凝着が起こりやすく、このことも安定的な圧延を困難としてしまう。
異周速圧延は、未だアルミニウム合金の一般的な圧延方法としては確立されていないのが実情であり、一方前述の特許文献1、2では、実際の量産的規模での圧延において重要な表面の潤滑に関しては全く言及しておらず、したがってこれらの従来技術も無潤滑での実施を想定していると考えざるを得ず、その点から、特許文献1、2の提案は、少なくとも工業的な量産規模での製造において健全な板材を得るための技術として完成しているとは言えないのである。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、異周速圧延を適用して集合組織制御を行なって、Al−Mg系合金のr値および深絞り性を向上させると同時に、板の表面欠陥(微小割れなど)の発生や材料のロールへの凝着を防止して、量産的規模での工業的な製造で健全な板材を得るという課題を解決しようとするものである。
本発明者等は、Al−Mg系合金を素材として用いて、適切な潤滑剤の使用により、表面の割れや表面欠陥の発生を防止しながら異周速圧延を行なって充分な剪断変形を与える方法および条件を見出すべく、種々実験・検討を重ねた結果、基本的には、Al−Mg系合金素材板について、表面に潤滑剤を付与した状態で、150〜300℃の範囲内の温度でロール周速比が1.2〜2.5の範囲内で、85%を越える圧下率の条件で温間異周速圧延を行ない、その後焼鈍もしくは溶体化処理により再結晶させることにより、割れや表面欠陥の発生を防止しながら、平均r値が0.9以上となる高成形性Al−Mg系合金板が得られることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法は、Al−Mg系合金素材板について、表面に潤滑剤を付与した状態で、150〜300℃の範囲内の温度で、ロール周速比が1.2〜2.5の範囲内でしかも85%を越える圧下率の条件で温間異周速圧延を行ない、その後再結晶熱処理を行なって、平均r値が0.9以上のAl−Mg系合金板を得ることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、請求項1に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、前記潤滑剤として、常温での動粘度が10〜350mm/sでしかも引火点が305℃以上の潤滑油を用い、その潤滑油の付着量が100〜700mg/mの範囲内となるようにAl−Mg系合金素材板に付着させて温間異周速圧延を行なうことを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、前記Al−Mg系合金素材板として、Mg2.0〜6.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金板を用い、その表面に潤滑剤を付与した状態で温間異周速圧延を行なった後、前記再結晶熱処理として、310〜570℃の範囲内の温度で焼鈍して再結晶させることを特徴とするものである。
また請求項4の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、前記Al−Mg系合金素材板として、Mg2.0〜6.5%およびCu0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金板を用い、その表面に潤滑剤を付与した状態で温間異周速圧延を行なった後、前記再結晶熱処理として、310〜570℃の範囲内の温度で焼鈍して再結晶させることを特徴とするものである。
そしてまた請求項5の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、前記Al−Mg系合金素材板として、Mg2.0〜6.5%およびCu0.5%を越え1.8%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金板を用い、その表面に潤滑剤を付与した状態での温間異周速圧延を行なった後、前記再結晶熱処理として、510〜570℃の温度に加熱する溶体化処理を行なって再結晶させることを特徴とするものである。
また請求項6の発明は、請求項5に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、前記Al−Mg系合金素材板として、前記各成分のほか、さらにAg0.05〜0.6%を含有するAl−Mg系合金素材板を用いることを特徴とするものである。
さらに請求項7の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、前記Al−Mg系合金素材板として、前記各成分のほか、さらにMn0.03〜0.5%、Cr0.03〜0.3%、Zr0.03〜0.3%、およびV0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有するAl−Mg系合金素材板を用いることを特徴とするものである。
この発明の製造方法によれば、潤滑剤を使用した温間異周速圧延を、適切な条件下で適用することによって、割れ等の表面欠陥やアルミの凝着などの発生を招くことなく、r値が高くて成形性、特に深絞り性に優れた健全なAl−Mg系合金板を、量産的規模での工業的な製造において確実かつ安定して得ることができる。そしてまた合金成分組成を適切に選択することによって、ベークハード性を付与した高成形性Al−Mg系合金板をも製造することができる。
先ずこの発明で対象とするAl−Mg系合金の成分組成およびその限定理由について説明する。
この発明の方法で使用するAl−Mg系合金は、基本的にはMgを必須成分として含有するものであれば、特にその具体的な成分組成は問わないが、望ましいAl−Mg系合金の第1の態様としては、先ず請求項3で規定するように、Mg2.0〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金がある。ここで、Mgは強度、伸び、深絞り性の向上に寄与する添加元素であるが、その添加量が2.0%未満では、強度、伸びおよび成形性が不充分となり、一方6.5%を越えれば圧延性が劣り、安定的に温間異周速圧延を行なうことが困難となる。なおこのようなAl−Mg系合金を用いた場合、後に改めて説明するように、温間異周速圧延の後の再結晶熱処理として、310〜570℃の範囲内の温度で焼鈍して再結晶組織とすることが適当であり、またこの再結晶処理としての焼鈍をバッチ炉で行なう場合、310〜450℃で0.5〜24h保持することが好ましく、一方連続焼鈍装置(CAL)で行なう場合には、400〜570℃で保持5min以下の条件が好ましい。
さらにこの発明の方法で対象とするAl−Mg系合金の第2の態様としては、請求項4で規定しているようなMg2.0〜6.5%、Cu0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金があり、また第3の態様としては、請求項5において規定しているようなMg2.0〜6.5%、Cu0.5%を越え1.8%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金がある。これらの請求項4、請求項5のいずれ合金も、Al−2.0〜6.5%Mg合金に対して、強度向上に寄与する元素であるCuを添加したものである。
これらのうち、請求項4で規定するようなAl−2.0〜6.5%Mg合金に対する0.05〜0.5%のCuの添加は、成形後の塗装焼付け加熱時における材料の軟化を低減して、塗装焼付け加熱後の強度を向上させる効果を有する。ここで、Cu量が0.05%未満では、充分な強度向上の効果が図れない。
このような請求項4で規定するCu量0.05〜0.5%のAl−Mg系合金を使用する場合、温間異周速圧延の後の再結晶処理としては、後に改めて説明するように、310〜570℃の範囲内の温度での焼鈍を適用すれば良く、またその場合バッチ焼鈍(310〜450℃で0.5〜24h保持)もしくはCAL焼鈍(400〜570℃で保持5min以下)のいずれを適用しても良い。
一方請求項5で規定するようなAl−2.0〜6.5%Mg合金に対してCu0.5%を越え1.8%以下を添加した合金は、適切な溶体化処理を施しておくことによって、成形後の塗装焼付け加熱時(ベーク時)に、析出硬化の効果が回復軟化を上廻ってベーク前よりも温度が上昇するベークハード性を付与することができ、Cu添加による強度向上の効果が一層大きくなる。ここで、Cu量の添加量が0.5%以下では、ベークハード性は充分に付与されなくなり、一方Cu添加量が1.8%を越えれば、圧延割れが生じやすくなって、最終的に健全な製品板が得られなくなる。なお、ベークハード性を充分に付与するためには、Cu量は1.0%以上とすることが望ましい。
ここで、請求項5で規定するようにCu0.5%を越え1.8%以下を添加してベークハード性を付与する場合には、添加したCuを一旦充分に固溶させ、その状態から急冷して析出硬化能を持たせるための熱処理、すなわち溶体化処理を行うことが必要であり、そこで温間異周速圧延後の再結晶処理を溶体化処理と兼ねて行なうことが適当であり、その再結晶熱処理を兼ねた溶体化処理としては、後に改めて説明するように、5℃/sec以上の加熱速度で510〜580℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは5分以内の保持後、5℃/sec以下の冷却速度で冷却することが適切である。
さらにこの発明で対象とするAl−Mg系合金の第4の態様としては、請求項5で規定する2.0〜6.5%のMgと0.5%を越え1.8%以下のCuを含有する合金に対して、さらにAgを0.05〜0.6%添加した合金(請求項6で規定する合金)がある。ここで、Agは0.5%を越え1.8%以下のCuとともに添加されることによって強度向上に寄与する元素である。Ag添加量が0.05%未満では強度向上の効果が乏しく、一方0.6%より多くAgを添加しても、それ以上の強度上昇効果は得られず、コスト上昇を招くだけであり、そこでAg添加量は0.05〜0.6%の範囲内とした。なおこのように0.5%を越え1.8%以下のCuとともに0.05〜0.6%のAgを添加した合金では、温間異周速圧延の後の再結晶熱処理としては、ベークハード性を付与するために請求項5に関して説明したと同様な溶体化処理と兼ねて行なうことが適切である。
さらにこの発明で対象とするAl−Mg系合金の第5の態様としては、以上のような各Al−Mg系合金に対して、Mn0.03〜0.5%、Cr0.03〜0.3%、Zr0.03〜0.3%、およびV0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を添加した合金(請求項7で規定する合金)がある。これらのMn、Cr、Zr、Vは、いずれも強度の向上と再結晶粒の安定化に寄与する元素であり、それぞれの下限より低い添加量ではその効果が乏しく、一方それぞれの上限を越えて添加すれば、組織中に粗大な晶出物が形成されやすくなって不適当となる。なお上記のMn、Cr、Zr、Vの添加量範囲は、強度向上等のために積極的に添加される場合の規定であり、これらの合金元素が不純物としてそれぞれの下限より低い濃度で含有される場合も、特段の影響がないだけで、この発明の対象合金から排除されることはない。
なお一般的なアルミニウム合金の鋳造時には、結晶微細化材としてTiが添加されることが多く、またTiは強度の向上と再結晶粒の安定化にも寄与するものであり、そこでこの発明の場合も0.2%以下のTiを添加することは許容される。また鋳塊結晶粒微細化の目的でTiを添加する場合、500ppm以下のBまたはCを、Tiと合せて添加することも差し支えない。さらに、Mgを含有する合金については、鋳造時の溶湯酸化防止のためBeを添加することも一般的であり、この発明の場合も500ppm以下のBeであれば添加して差し支えない。
そのほかアルミニウム合金の不可避的不純物元素としては、FeおよびSiが挙げられるが、これらが過剰に存在すれば延性や成形性が低下するから、いずれも0.25%以下に規制することが望ましい。
この発明の方法において、温間異周速圧延に供するAl−Mg系合金からなる素材板としては、熱間圧延板を用いることが好適であるが、それに限らず、薄いDC鋳塊(スラブ状鋳塊)、あるいは連続鋳造板を用いても良い。
温間異周速圧延に供するAl−Mg系合金熱間圧延板は、常法に従って半連続鋳造(DC鋳造)法による鋳塊を熱間圧延する方法で作製することができる。この場合、鋳塊の面削は、通常の方法に従って実施すれば良く、また熱間圧延前には、450〜570℃で0.5〜24hの均質化処理を行なうことが好ましい。熱間圧延の条件は特に限定されるものではないが、熱間圧延開始温度は350〜500℃とすることが好ましく、また熱間圧延板の上がり板厚は、その後の温間異周速圧延の条件および最終板製品板厚によって異なるが、通常は5〜120mmとすることが好ましい。熱間圧延後には、室温まで冷却した後に改めて再加熱して温間異周速圧延を行なっても良い。あるいは熱間圧延に引続いて150〜300℃の範囲内に材料温度を調整して、温間異周速圧延を直ちに行なっても良い。すなわち、従来の一般的な熱間圧延工程においても粗熱間圧延と仕上圧延とを引続いて実施するのが通常であり、この仕上熱間圧延の代わりに温間異周速圧延を実施すればよいことを意味する。
一方、前述のように、薄型のDC鋳塊や連続鋳造板などを、そのまま素材板として温間異周速圧延に供することも可能である。ここで薄型のDC鋳塊の場合は、板厚50〜120mmが好適であり、またこの場合、温間異周速圧延前に450〜570℃で0.5〜24hの均質化処理を行なうことが好ましい。また連続鋳造板を用いる場合、双ロール式連続鋳造、あるいはベルト式もしくはブロック式の連続鋳造によるものが利用可能である。双ロール式の連続鋳造板としては板厚5〜10mmのものが好適で、ベルト式もしくはブロック式の連続鋳造板としては、板厚15〜60mmのものが好適である。これらの連続鋳造板の場合も、温間異周速圧延前に450〜570℃で0.5〜24hの均質化処理を行なっても良い。さらに、厚い鋳造板が得られるベルト式もしくはブロック式の連続鋳造板の場合、改めて熱間圧延を施して、板厚5〜30mmとしてから温間異周速圧延に供しても差し支えない。
この発明のAl−Mg系合金板の製造方法においては、前述のような熱間圧延板、あるいは薄型のDC鋳塊もしくは連続鋳造板を素材板として、それに温間異周速圧延を施す。この温間異周速圧延においては、割れや表面欠陥の発生を防止して健全な板を得る目的で潤滑剤を用いる。このような目的の潤滑剤としては、具体的には、常温25℃での動粘度が10〜350mm/sの範囲内でしかも引火点が305℃以上である潤滑油が適当である。潤滑剤の動粘度が10mm/s未満では表面欠陥の防止効果が不充分となり、一方動粘度が350mm/sを越えれば、材料に対するロールのスリップを引き起こして温間異周速圧延時に引火して安定的に剪断変形を付与することが困難となる。なお粘度に関しては、温度による粘度変化が小さいことが望ましく、具体的には粘度温度係数が0.8以下であることが望ましい。また潤滑油の引火点が305℃未満では、温間異周速圧延時に引火して安全に温間異周速圧延を行なうことが不可能となる。前述のような粘度条件、引火点条件を満たす潤滑剤としては、シリコーン系の油が好適であり、その代表的なものとしては、ジメチルシリコーン油がある。
上述のような潤滑油を素材板表面に付着量が100〜700mg/mの範囲内となるように付着させて温間異周速圧延を行なう。潤滑油付着手段としては、素材板表面に直接スプレー等により塗布することが好ましく、また静電塗布などの自動塗布方法も使用することができる。また場合によっては、ロール表面にスプレーすることにより、規定範囲内の量の潤滑油が材料表面に付着される方式を採用しても差し支えない。ここで潤滑油の付着量が100mg/mより少なければ、表面欠陥の発生やロールへのアルミの凝着を防ぐ効果が不充分となり、一方700mg/mを越えれば、材料に対するロールのスリップを引き起こして、安定的に剪断変形を付与する目的が果たせなくなる。
さらに温間異周速圧延時における材料温度は150〜300℃の範囲内とする。温間異周速圧延時の温度が150℃より低ければ、材料の変形抵抗が大きくなるため、高圧下での異周速圧延を行なう際に割れが起こりやすくなり、その結果材料内に均質に剪断変形を導入することが困難となる。一方、異周速圧延時の温度が300℃を越えれば、圧延中に再結晶が生じて、剪断変形を充分に導入することができなくなり、そのため目的とする集合組織制御が不可能となり、またこの発明の方法で用いる潤滑油では300℃を越えれば引火の危険があり、安定的な圧延作業が実施できなくなる。なお合金の成分組成や素材板の組織状態によっては、270〜300℃程度の温度でも局部的に再結晶が生じる場合があるが、この場合には、個々の素材板の再結晶温度が温間異周速圧延時の温度の上限を越えるように成分調整するか、または温間異周速圧延の温度を270℃より低い温度とすることが望ましい。
さらに温間異周速圧延におけるロール周速比、すなわち一対の圧延ロールのうち、周速が小さい側のロールの周速に対する、周速が大きい側の周速比は、1.2〜2.5の範囲内とする。ここで、周速比が1.2未満であれば、充分な剪断変形の付与が不可能となり、一方2.5を越えれば、ロールと材料との間のスリップが生じるか、または材料の局部的な変形が生じて、正常な板が得られなくなってしまう。
またこの発明の方法では、温間異周速圧延における圧下率を85%超の高圧下率とする必要がある。すなわち、この発明の方法の場合、温間異周速圧延時に表面欠陥や割れの発生防止のために潤滑剤を使用しており、このように潤滑剤を使用した圧延では、高圧下率で圧延しなければ剪断歪みの付与が不充分となってしまう。逆に言えば、より高圧下率の温間異周速圧延でも、潤滑剤の使用によって割れを生じることなく圧延が可能となるのである。ここで、温間異周速圧延における圧下率が85%未満では、充分に剪断変形を付与することができなくなって、集合組織制御によるr値および深絞り性の向上が達成されなくなる。なお、より一層の成形性の向上のためには、圧下率は90%を越えることが望ましく、さらに95%を越える圧下率がより望ましい。なおまた、温間異周速圧延における圧下率の上限については特に限定しないが、割れの無い健全な板材を得るためには、通常は99.5%以下であることが望ましい。また最終板厚(温間異周速圧延上がり板厚)も特に限定しないが、成形用としては、0.3〜2mm程度が適当である。
なお温間異周速圧延で使用する圧延機は、上下の圧延ロールを異なる周速度で駆動させ得る機構を有する必要があることはもちろんである。その形式は特に問わないが、上下ロールが速度可変モーターにより別駆動されるもの、あるいはギアなどの機械的機構で周速の比を変化させ得るものが好適である。また温間異周速圧延を安定的に行うためには、ロールの加熱機構を有する圧延機を使用することが望ましい。この場合、ロール内にヒーターを内包させるか、あるいはロール加熱用のヒーターをロールに近接した外部に設置するかのいずれでも差し支えない。
以上のようにして温間異周速圧延を行なって所定の板厚としたAl−Mg合金板については、その後に再結晶熱処理(焼鈍もしくは溶体化処理と兼ねて)を行なって再結晶させることにより、高r値と良好な深絞り性となる集合組織状態が得られる。すなわち、この発明で最終的な目的とする高成形性、特に優れた深絞り性を得るためには、平均r値を上げる作用のある板面において結晶方位{111}の面およびそれに近い面の方位集積密度が高いことが必要であり、具体的には、{111}、{332}および{221}が板面に平行となる結晶方位のうちの一つ以上が、方位集積密度としてランダムの1.2倍以上であることが望ましく、さらには1.5倍以上であることが望ましく、またこれに加えて、平均r値を下げる傾向のある{100}方位の面の集積密度が低い状態とする必要があるが、この{100}方位の方位集積密度がランダムの0.9倍以下であることが望ましく、このような結晶組織を安定的に得るために、温間異周速圧延後に再結晶させる必要がある。なお結晶組織の方位集積密度は、X線回折法あるいはEBSP法のいずれの解析法で求めても構わない。但しこの解析時には、材料全体として適切な集合組織状態となっていることを確認するため、板厚全域の平均で上記の基準を満たすことを確認する必要がある。
上述のような再結晶熱処理は、対象とするAl−Mg系合金の成分組成に応じて、回復・再結晶のみを目的とする焼鈍として行なう場合と、Cu、Ag等の析出硬化に寄与する元素を固溶させる溶体化処理と兼ねて行なう場合とがある。すなわち、先ず請求項3で規定するようなMg2.0〜6.5%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金、および請求項4で規定するようにMg2.0〜6.5%、Cu0.05〜0.5%、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金の場合は、再結晶熱処理としては回復・再結晶のみを主目的とした焼鈍を行なう。この場合の焼鈍の加熱温度は、310〜570℃の範囲内とする。焼鈍温度が310℃より低ければ、再結晶が不充分となるため不適当となり、570℃を越えれば局部的に融解が起こるため不適当となる。またこの焼鈍をバッチ炉で行う場合は、310〜450℃で0.5〜24h保持の条件が好ましい。一方この焼鈍を連続焼鈍装置(CAL)で行う場合には、400〜570℃で保持なしもしくは5min以下の保持の条件が好ましい。なお、CALによる焼鈍は、5℃/sec以上の加熱昇温速度、冷却速度による急速加熱および急速冷却を特徴とするものであって、実験室的にはソルトバスによる焼鈍で代替して実施することができる。
一方、請求項5で規定するように、2.0〜6.5%のMgに加えて、0.5%を越え1.8%以下のCuを添加した場合、あるいは請求項6で規定するように0.5%を越え1.8%以下のCuと0.05〜0.5%のAgとを添加した場合、すなわちベークハード性を持たせた場合には、再結晶と兼ねて、添加したCu等を充分に固溶させた後、その状態から急冷して、析出硬化能を持たせるための熱処理、すなわち溶体化処理を行うことが必要である。この溶体化処理における加熱温度は、510〜570℃の範囲内の温度、望ましくは535〜570℃の範囲内の温度とする。溶体化処理はCALにより実施可能で、保持時間は0min(すなわち温度到達後直ちに冷却)〜5minとし、5℃/sec以上の急速加熱および急速冷却で実施する。このような急速加熱、急速冷却は、ソルトバス加熱および水焼入れあるいは強制空冷によっても実施することができる。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに示す。
表1の合金符号A〜Qに示す各成分組成の合金を常法に従って溶解し、厚さ80mm、幅200mmの断面を有するDC鋳塊とした。なお請求項7で規定するMn、Cr、ZrおよびVの添加量上限を越えたPおよびQの合金組成の鋳塊では、組織中に粗大な金属間化合物が形成されているのが確認されたため、不適当と判断して、その後の工程および試験対象から外した。そのほかA〜Oの各合金のDC鋳塊については、500℃×10hの均質化処理を施した後、温間異周速圧延の元材(素材板)とするように準備加工を行なった。すなわち元材として熱間圧延板を用いる場合(異周速圧延の圧延条件を示す表2における圧延条件R1〜R4、R7〜R18の場合)には、両面を面削して厚さ72mmとしてから、430℃で2hの予備加熱の後、表2中に記載された圧延開始板厚(異周速圧延の開始時の板厚を示す)まで熱間圧延した。一方DC鋳塊をそのまま元材とする場合(表2の圧延条件R5)には、鋳塊を厚さ72mmに面削加工したものを元板として用いた。そのほか、表2の圧延条件R6では、双ロール法で作製した厚さ7.2mmの連続鋳造板を元板として用いたが、これには予め460℃で10hの均質化処理を施しておいた。
以上のような各合金からなる元板について、表2のR1〜R18に示す条件で温間異周速圧延を行った。なお温間異周速圧延前には、各元材をそれぞれ所定の圧延温度で2h保持する予備加熱を行った。用いた圧延機はロール内にヒーターを内包したものであり、温間異周速圧延時にはこのヒーターによりロールを所定の圧延温度に対して−15℃〜+0℃の範囲内となるように温度制御を行なった。この圧延では、片方のロールの周速を20m/minに固定し、もう一つのロールの周速を変化させて所定の周速比とした。圧延の潤滑剤としては数種類のシリコーン油(ジメチルシリコーンオイル)を用いたが、これらの引火点はすべて310℃〜320℃の範囲内にあり、また常温での動粘度はそれぞれ表2中に示す通りであり、さらに粘度温度係数は0.55〜0.65の範囲内にある。この潤滑油は、静電塗布装置により温間圧延直前の元材表面に表2の量を塗布し、圧延パス間に適宜、消耗分を補充塗布した。温間異周速圧延後には、再結晶熱処理を行なった。この再結晶熱処理としては、表3の熱処理条件HT1〜HT5に示すように、バッチ焼鈍、およびCAL連続焼鈍に相当するソルトバス焼鈍(溶体化処理)のいずれかで行なった。
以上のようにして温間異周速圧延を施して得られた各圧延板について、その健全性を調べるとともに、機械的性質として引張強さ、耐力、伸び、さらにベークハード(BH)性評価として、ストレッチ後の耐力およびベークハード(BH)後の耐力を調べたので、その結果を表4、表5に示す。なおこれらの評価方法、試験方法は次の通りである。
圧延板の健全性は、外観および断面観察により評価した。すなわち、圧延あるいはその後の熱処理で割れや形状不良、膨れなどを生じて、その後の特性評価が不可能な場合は××とした。また材料の圧延方向に平行な100mm長さの断面を5箇所観察して、深さ30μm以上(板厚に対して3%以上)の表面割れ欠陥が生じていた場合には×とし、これが認められない場合は良好と判断し○とした。機械的性質は、圧延方向(0°)にJIS5号試験片を切出し、引張試験により引張強さ、耐力および伸びを評価した。ベークハード(BH)性の評価では、引張試験片に通常の成形での加工ひずみに相当する2%の引張変形(ストレッチ)を与えた後、170℃で20min保持するBH処理を行い、ストレッチ後(BH処理前)の耐力とBH処理後の耐力を求めた。
さらに、前述のようにして得られた各圧延板について、再結晶熱処理後の材料のr値に影響する各結晶面の方位集積密度を調べるとともに、平均r値と深絞り性を調べたので、その結果を表6、表7に示す。各測定方法、評価方法は次の通りである。
各結晶面の方位集積密度は、SEM−EBSPにより測定した。EBSPでは圧延方向断面で各測定点での結晶方位と圧延板面に平行な結晶面を解析し、すべての測定点についての情報から、各方位の集積密度(ランダムに対する倍率)を算出できる。この手法により、板厚全体での集合組織状態が捉えられる。具体的には、板厚(1000μm)×長さ(400μm)の観察領域10箇所について、解析間隔2.5μmにてEBSP測定を行い、これらを平均して面方位{111}、{332}、{221}および{100}の方位集積密度を求めた。平均r値は、引張試験によりJIS5号試験片を圧延方向に対して0°、45°、および95°方向に引張り、15%ひずみでの各方向r値から算出した。さらに深絞り性は、限界絞り比(LDR)を測定して評価した。
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表4に示すように、本発明例1〜21のいずれも、適正な条件で潤滑剤を塗布して温間異周速圧延を行っており、問題となる割れや形状不良が生じることなく所定の板厚まで圧延が可能で、板の表面欠陥の問題も生じなかった。またこれらの本発明例1〜21では、表6に示すように、適切な条件の温間異周速圧延と再結晶熱処理により、平均r値の向上に有効な{111}、{332}、{221}の面方位のいずれかの方位集積密度がランダムの1.5倍以上になっており、かつ平均r値を下げる傾向のある{100}面の方位集積密度が0.9倍以下になっていた。その結果、いずれも平均r値が0.9以上となり、LDRで表わされる深絞り性も良好であることが判明した。そしてこれらのうちでも、温間異周速圧延の圧下率が95%を越えれば、安定して平均r値1.0以上が得られ、より望ましい状態となった(合金Eでは発明例7〜10)。なお文献等で言われている高r値に有効とされる板面{111}方位の集積が比較的弱くても、それに近い{332}、{221}などの方位の集積が高く、{100}面の集積が低い状態であれば、高r値が達成されることが確認されている(例えば発明例14)。
ここで、発明例1〜21のうち、発明例1〜3および20〜21は、素材合金としてCuを添加しないか、またはCu添加量が0.5%以下と少ない場合であり、これらの例ではBH性は有していない(ストレッチ後の耐力=BH前の耐力が、BH処理後より高い)。一方発明例4〜19は、0.5%を越えるCuを添加したベークハード性を有するAl−Mg系合金を素材とした例であり、これらのうちでも発明例7(E合金、Cu1.07%)では、BH処理後の強度が発明例4(D合金、Cu0.68%)より高くなっており、したがってより良好なBH性を求める場合には、1%を越えるCu添加量が望ましいことが明らかである。特にAgを添加した発明例16〜18では、高いBH性を示し、高r値・高成形性とを充分に両立させることができた。
一方、表5、表7に示すように、比較例1〜18の場合は、いずれかの性能が本発明例より劣っていた。
すなわち、比較例1は、Mgの添加量が少ない例であり、この場合はその他の条件を本発明範囲内としても強度が低くなるため、自動車用外板用などの成形用板として不適当となった。さらに比較例2は、合金のMg量が高すぎる例であり、温間異周速圧延時に著しい割れが生じて圧延が不可能となった。さらに比較例3はCu添加量が多すぎる例で、この場合も温間異周速圧延時に著しい割れが生じて圧延が不可能となった。
一方比較例4は、本発明成分組成範囲内の合金に対し、等周速の冷間圧延を適用した例である。この場合、平均r値の向上に有効な{111}、{332}、{221}の面方位の方位集積密度が低い一方、平均r値を低下させる作用のある{100}面の方位集積密度が高くなり、そのため平均r値が0.7以下と低く、LDRも発明例より低くなった。また比較例5は温間で等周速圧延した例であり、この場合も方位集積密度が不適当となり、結果として平均r値が低く、LDRも発明例より低くなった。
さらに比較例6は、温間異周速圧延の圧下率が低い例で、この場合も{100}面の方位集積密度が高く、結果として平均r値とLDRが発明例より低くなった。また比較例7は、温間異周速圧延の周速比が低い例で、この場合も{100}面の方位集積密度が高くなり、平均r値とLDRが発明例より低くなった。さらに比較例8は、温間異周速圧延の周速比が高い例であるが、この場合は圧延時に材料のそり変形が大きく、均一で安定して圧延ができず、局部的に大きな割れが起きて圧延を完了できなかった。また比較例9は、温間異周速圧延の温度が低い例であるが、割れのため圧延を完了できなかった。
また比較例10は、温間異周速圧延の潤滑油の動粘度が低い例であり、ロールへの凝着を充分に抑えられず、結果として板表面に微小な割れ欠陥を生じた。一方比較例11は、温間異周速圧延の潤滑油の動粘度が高い例で、この場合は圧延時にロールのスリップが生じ、材料の変形が不均一になり、圧延を完了できなかった。
さらに比較例12は、温間異周速圧延を無潤滑で行った例である。B合金(Al−3.02%Mg)を圧下率87.8%で所定板厚まで圧延することはできたが、表面欠陥を生じており、同合金の発明例より延性も低くなってしまった。また比較例13も、温間異周速圧延を無潤滑で行った例であり、この例では比較例12の場合よりも合金添加量の多いJ合金を用いており、その場合圧延割れのため圧下率87.8%の圧延が完了できなかった。さらに比較例14も、圧下率96.3%の温間異周速圧延を無潤滑の条件で試みたが、圧延割れ発生のため、所定板厚まで圧延を継続できなかった。
一方比較例15は、温間異周速圧延の潤滑油の塗布量が少ない例であり、この場合は表面欠陥(表面割れ)を防ぐことができなかった。また比較例16は、温間異周速圧延の潤滑油塗布量が多い例であるが、この場合は圧延時にロールと材料との間でスリップが起こり、そのため材料の変形が不均一になり、著しい材料の曲がりが生じて圧延を完了できなかった。
また比較例17は、再結晶熱処理(溶体化処理)の温度が580℃と高過ぎた例であり、この場合は処理時に局部融解が生じ、そのため表面膨れが発生してしまった。一方比較例18は、溶体化処理の温度が低い470℃の例であり、同様のE合金の発明例と比べてBH処理後の耐力が低くなった。なおこの処理温度を280℃にした場合には、未再結晶部が残る組織になることが別途確認されている。

Claims (7)

  1. Al−Mg系合金素材板について、表面に潤滑剤を付与した状態で、150〜300℃の範囲内の温度で、ロール周速比が1.2〜2.5の範囲内でしかも85%を越える圧下率の条件で温間異周速圧延を行ない、その後再結晶熱処理を行なって、平均r値が0.9以上のAl−Mg系合金板を得ることを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、
    前記潤滑剤として、常温での動粘度が10〜350mm/sでしかも引火点が305℃以上の潤滑油を用い、その潤滑油の付着量が100〜700mg/mの範囲内となるようにAl−Mg系合金素材板に付着させて温間異周速圧延を行なうことを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、
    前記Al−Mg系合金素材板として、Mg2.0〜6.5%(mass%、以下同じ)を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金板を用い、その表面に潤滑剤を付与した状態で温間異周速圧延を行なった後、前記再結晶熱処理として、310〜570℃の範囲内の温度で焼鈍して再結晶させることを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
  4. 請求項1もしくは請求項2に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、
    前記Al−Mg系合金素材板として、Mg2.0〜6.5%およびCu0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金板を用い、その表面に潤滑剤を付与した状態で温間異周速圧延を行なった後、前記再結晶熱処理として、310〜570℃の範囲内の温度で焼鈍して再結晶させることを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
  5. 請求項1もしくは請求項2に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、
    前記Al−Mg系合金素材板として、Mg2.0〜6.5%およびCu0.5%を越え1.8%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系合金板を用い、その表面に潤滑剤を付与した状態で温間異周速圧延を行なった後、前記再結晶熱処理として、510〜570℃の温度に加熱する溶体化処理を行なって再結晶させることを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
  6. 請求項5に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、
    前記Al−Mg系合金素材板として、前記各成分のほか、さらにAg0.05〜0.6%を含有するAl−Mg系合金素材板を用いることを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の高成形性Al−Mg系合金板の製造方法において、
    前記Al−Mg系合金素材板として、前記各成分のほか、さらにMn0.03〜0.5%、Cr0.03〜0.3%、Zr0.03〜0.3%、およびV0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有するAl−Mg系合金素材板を用いることを特徴とする、高成形性Al−Mg系合金板の製造方法。
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