JP4456505B2 - 成形用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Mg含有量が8%を超えた高Mg含有の成形用Al-Mg 系アルミニウム合金板の製造方法に関するものである。本発明において、アルミニウム合金板素材とは、冷間圧延を施される前の鋳塊、板、あるいは冷間圧延されている途中の板、などの冷間圧延用の板状の素材を意味する。そして、本発明では、冷間圧延後の製品板を、アルミニウム合金板、あるいは成形用アルミニウム合金板と言う。なお、冷間圧延などの説明においては、前記板素材を、あるいは板素材と製品板とを合わせて、単に板と言う場合もある。
近年、自動車などの輸送機の車体分野では、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材など、より軽量なAl合金材適用が増加しつつある。
この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの自動車ボディパネル (パネル構造体) の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、Al-Mg 系のAA乃至JIS 5000系 (以下、単に5000系、あるいはAl-Mg 系と言う) アルミニウム合金板や Al-Mg-Si 系のAA乃至JIS 6000系アルミニウム合金板の使用が検討されている。
前記自動車ボディパネル用のアルミニウム合金板 (以下、アルミニウムをAlとも言う) には、高プレス成形性が要求される。この成形性の点からは、前記Al合金のなかでも、強度・延性バランスに優れたAl-Mg 系Al合金が有利である。
このため、従来から、Al-Mg 系Al合金板に関して、成分系の検討や製造条件の最適化検討が行われている。このAl-Mg 系Al合金としては、例えばJIS A 5052、5182等が代表的な合金成分系である。しかし、このAl-Mg 系Al合金でも冷延鋼板と比較すると延性に劣り、成形性に劣っている。
これに対し、Al-Mg 系Al合金は、Mg含有量を増加させて、8%を超える高Mg化させると、強度延性バランスが向上する。しかし、このような高MgのAl-Mg 系合金は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。この理由は、鋳造の際に鋳塊にMgが偏析したり、通常の熱間圧延では、Al-Mg 系合金の延性が著しく低下するために、割れが発生し易くなるからである。
このような熱間圧延性の問題を改善する策としては、これまでには、Feの含有量を増量し、これによって第2 相化合物量を増大させ、それらにひずみを分担させて粒界へのひずみ集中、粒界破壊を抑制し、熱間圧延性を改善することが提案されている (特許文献1参照) 。また、圧延温度と圧延圧下量を制御して、熱間圧延性を改善することも提案されている (特許文献2参照) 。更に、Na含有量を抑制して、熱間圧延性を改善する方策も提案されている (特許文献3参照) 。
特開昭61-073856 号公報 (特許請求の範囲) 特開平06-158248 号公報 (特許請求の範囲) 特開平08-134580 号公報 (特許請求の範囲)
しかしながら、これらは全て熱間圧延性に関する改善策であり、冷間圧延性に関しては、これまで実質的には検討されていない。
この点、前記したような高MgのAl-Mg 系合金では、冷間圧延時に板の幅方向の両端部での割れが特に発生しやすく、歩留まりが低下する傾向がある。
これに対して、一方では、特に自動車の車体軽量化のために適用・検討が進められているボディパネル用としての、成形用アルミニウム合金板には、従来から用いられている冷延鋼板並の高品質が要求されるだけでなく、製造コストの低減に対する要求もますます高まってきている。
更に、最近では、冷間圧延工程の高効率化に伴い、冷間圧延が高速化されるとともに、高圧下率化される傾向にあり、ますます生産性向上、歩留まり向上による製造コスト低減が必要とされてきている。
しかしながら、このような状況下において、機械的特性だけでなく、冷間圧延性に対する要求を満たす、冷間圧延用アルミニウム合金板素材は、これまでに提案されていないのが現状である。
しかも、前記したような高MgのAl-Mg 系合金では、β相(Al-Mg 系金属間化合物、Al-Mg 系化合物とも言う)が発生しやすい問題もある。このβ相が多量に発生した場合には、前記した、冷間圧延時における板幅方向両端部での割れ発生が特に強まる傾向にある。
この傾向は、前記した冷間圧延工程の高効率化に伴い強まる。即ち、それまでの冷間圧延工程に比して、高効率化された冷間圧延工程では、高MgのAl-Mg 系合金板の温度が、β相発生の温度領域内や、この温度領域近くまで上昇しやすくなる。このため冷間圧延工程におけるβ相発生の可能性が高くなる傾向にある。
言い換えると、最近では、冷間圧延工程において板に付与される高圧下 (高歪み) と、高加工発熱との作用によって、400 ℃未満の低い温度でも、冷間圧延工程において、β相が発生する場合がある。このように、冷間圧延工程において、β相が発生した場合、冷間圧延性が劣化して、特に、板の幅方向の両端部での割れが発生して、歩留りが低下するとともに、冷間圧延による圧延板製品化が困難となる。
このような冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向は、Al-Mg 系合金板のMg含有量が多くなるほど強くなり、特に8%を超えた高Mgレベルでは、5 〜6%の通常のAl-Mg 系合金板のMg含有レベルの場合に比して、β相発生の傾向は一段と強くなる。
また、近年では、溶解原料として、純度の高いAl地金だけの使用ではなく、資源のリサイクルでの活用のために、Al-Mg 系合金材や他のAl合金材などのスクラップを使用するなどした場合には、不純物であるFeやSiの含有量が必然的に多くなる。そして、この高MgのAl-Mg 系合金板の不純物であるFeやSiの含有量が多くなるほど晶出物が増大し、冷間圧延工程での晶出物へのひずみ集中によって、クラックが発生しやすくなり、冷間圧延時の板の幅方向の両端部での割れが顕著になる。更に、冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向は強くなり、脆くて硬いβ相へのひずみ集中によるせん断帯発生、あるいはβ相でのクラック発生によって冷間圧延時の板の幅方向の両端部での割れが顕著になる。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、上記した冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向が複合化して強くなる傾向に対し、これを抑制して冷間圧延性を向上させた、高Mgの成形用アルミニウム合金板の製造方法を提供することである。
この目的を達成するために、本発明成形用アルミニウム合金板の製造方法の要旨は、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなり、DC鋳造による鋳塊を均熱、熱延されたか、または、双ロール式連続鋳造法により鋳造された、板厚が1 〜13mmのAl-Mg 系アルミニウム合金板状素材であり、平均導電率が20IACS% 以上、26IACS% 未満で、平均結晶粒径が100 μm 以下である前記Al-Mg 系アルミニウム合金板素材を冷間圧延して、成形用アルミニウム合金板を製造するに際し、冷間圧延を複数の圧延パスで行うとともに、各冷間圧延時に前記アルミニウム板素材を冷却し、更に、前記各圧延パスの圧下率を30% 以下にするとともに、前記各圧延パス間における前記アルミニウム板素材の温度を150 ℃以下にすることである。
なお、本発明において、各冷間圧延時にアルミニウム板素材を冷却するとは、各圧延パス間における前記アルミニウム板素材の温度を150 ℃以下にするために、冷間圧延中および/ または冷間圧延直後に、アルミニウム板素材を強制的に冷却することを言う。
前記した通り、冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向は、Al-Mg 系合金板のMg含有量が8%を超えた高Mgになるにつれて、あるいは不純物であるFeやSiの含有量が多くなるほど、更に、冷間圧延工程の高速化と高圧下率化によっても、強くなる。
これに対して、本発明では、冷間圧延工程における板素材の冷却を強めて、圧延中や圧延パス間の高MgのAl-Mg 系合金板素材の温度が、β相発生の温度領域内や、この温度領域近くまで上昇しないようにする。
また、これとともに、冷間圧延工程を複数の圧延パスで行うとともに、各圧延パスの圧下率を抑制して、圧延中や圧延パス間の高MgのAl-Mg 系合金板素材の温度が、β相発生の温度領域内や、この温度領域近くまで上昇しないようにする。
これによって、本発明では、冷間圧延工程におけるβ相発生を抑制して、高MgのAl-Mg 系合金板素材の冷間圧延性を向上させる。
(化学成分組成)
本発明Al合金板素材における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板素材は、成形用Al合金板における強度−延性バランス、曲げ加工性、プレス成形性を確保するために、基本的には、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。
(Mg:8%を超え14% 以下)
MgはAl合金板の強度、延性を高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、特に本発明が意図する自動車用パネルへのプレス成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。
(Fe:1.0%以下、Si:0.5% 以下)
FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果、冷間圧延時の板の幅方向の両端部での割れが顕著になり、また製品板のプレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。
この他、Mn、Cu、Cr、Zr、Zn、V 、Ti、B なども不純物元素であり、含有量は少ない方が良い。しかし、例えば、Mn、Cr、Zr、V には圧延板組織の微細化効果、Ti、B には鋳造板 (板状鋳塊) 組織の微細化効果などの効果もある。また、Cu、Znには、強度を向上させる効果もある。このため、これら効果を狙って、敢えて含有させる場合もあり、板の特性である成形性を阻害しない範囲で、これら元素を一種または二種以上含有させることは許容される。これらの許容量は、各々、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、B:0.05% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、である。
(アルミニウム合金板状鋳塊)
ここで、本発明に係る冷間圧延用のアルミニウム合金板素材としては、上記組成を有するとともに、後述する如く、DC鋳造による通常の鋳造、均熱、熱延されるか、双ロール式連続鋳造法により鋳造された、板厚が1 〜13mmの板状素材であって、組織的には、平均導電率が20IACS% 以上、26IACS% 未満であり、平均結晶粒径が100 μm 以下とする。
(平均結晶粒径)
冷間圧延前のAl合金板素材、例えば、DC鋳造法では熱延材或いは熱延後の中間焼鈍材、連続鋳造法では板状鋳塊、などの平均結晶粒径は、冷間圧延性を向上させるために、100 μm 以下に微細化させる。冷間圧延前の組織として、結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、冷間圧延時の不均一ひずみの発生を抑制し、不均一変形によって導入されるせん断帯の形成が抑制され、不均一なひずみ分布が抑制される。その結果、粒界や晶出物、β相へのひずみ集中が抑制され、破壊の起点が減少し、冷間圧延性が確保乃至向上される。これに対して、結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、冷間圧延性が著しく低下しする。この点、結晶粒径は、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下がよい。
ここで、本発明で言う結晶粒径とはAl合金板素材の長手(L) 方向の結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、Al合金板素材を0.05〜0.1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、100 倍の光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向にラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。
(平均導電率)
また、Al合金板状鋳塊の平均導電率は20IACS% 以上、26IACS% 未満の範囲として、冷間圧延性確保に必要なβ相の析出量の低減を保障する。好ましくは22IACS%以上がよい。
8%を超える高MgのAl合金板状鋳塊の平均導電率が20IACS% 未満では、Mgなどの固溶が進んで、金属間化合物の析出量が少な過ぎる。このため、冷延後のAl-Mg 系合金板において、アルミニウム合金板の延性は高くなるものの、強度が低くなり、強度延性バランス(引張強度×全伸び)は低くなる。このため、プレス成形性が低下する。また、板の均質性も低下する。
一方、8%を超える高MgのAl合金板状鋳塊の平均導電率が26IACS% 以上(26.0IACS%以上) となった場合、金属間化合物 (β相) の析出量が多過ぎる。このため、冷間圧延時に脆いβ相にひずみが集中、クラックが発生して、板の幅方向の両端部での割れが発生する。
導電率の測定は、市販の渦流導電率測定装置によって、アルミニウム合金板素材表面の導電率が測定可能である。これによって、板素材の互いの間隔を100mm 以上開けた任意の測定箇所、5 箇所における各導電率を計測して、これを平均化し、平均導電率を求める。測定対象のアルミニウム合金板素材は、冷間圧延前の板素材とする。
(製造方法)
以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。
本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法でも良いが、この通常の製造方法では、高MgのAl-Mg 系Al合金板を製造するためには熱延条件を特に以下の条件で行うことでも可能である。ただし、本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板を工業的に効率良く製造するためには、双ロール式などの連続鋳造と、熱間圧延を省略した、冷間圧延、焼鈍とを組み合わせて製造することが好ましい。
先ず、DC鋳造法においては、本発明範囲の成分組成を有する合金を常法に従って溶解し、鋳造する。均質化熱処理も通常の条件範囲でよい。ただ、熱延に関しては、開始温度が350℃以下で行う。これは、冷延前組織として微細な再結晶粒を得るためであり、熱延時の蓄積ひずみを増大させて微細な再結晶粒が得られ、冷間圧延性が向上するためである。好ましくは320℃以下、さらに好ましくは300℃以下で行う。
更に、熱延後の中間焼鈍も必須であり、昇温速度は5℃/s以上、焼鈍温度は400℃以上、冷却速度は5℃/s以上で行う必要がある。昇温速度が5℃/s未満であれば昇温中の再結晶組織が粗大化し、冷間圧延性を劣化させる。焼鈍温度が400℃未満であれば、熱延中に析出したβ相が固溶せずに残存し、冷間圧延性を劣化させる。冷却速度が5℃/s未満であればβ相が冷却中に析出し、冷間圧延性を劣化させる。好ましくは昇温速度は10℃/s以上、焼鈍温度は450℃以上、冷却速度は10℃/s以上がよい。
(双ロール式連続鋳造)
次ぎに、連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがある。しかし、高MgのAl-Mg 系Al合金板鋳造の際の冷却速度を後述する通り速くするためには、双ロール式連続鋳造が好ましい。
この双ロール式連続鋳造は、前記した通り、回転する一対の水冷銅鋳型などの双ロール間に、耐火物製の給湯ノズルから、上記成分組成のAl合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、Al合金薄板とする。
(ロール潤滑)
この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。しかし、これら潤滑剤を用いた場合、冷却速度が遅くなって、必要な冷却速度が得られない。このため、結晶粒が粗大となって、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の成形性が低下する。また、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の平均導電率が上記規定範囲から外れる可能性が高くなる。
また、これら潤滑剤を用いた場合、双ロール表面において、潤滑剤の濃度や厚みの不均一によって、冷却のムラが生じやすく、板の部位によっては凝固速度が不十分となりやすい。このため、Mg含有量が高くなるほど、マクロ偏析やミクロ偏析が大きくなり、Al-Mg 系合金板の成形性を均一にすることが困難となる可能性が高くなる。
因みに、特開平1-202345号公報でも、3.5%以上のMgを含むAl-Mg 系合金板の双ロール式連続鋳造において、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いて、冷却ムラによる、シミ欠陥 (表面偏析) を防止して、表面品質を向上させることが開示されている。しかし、その実施例で開示されているのは、5%までのMg量であり、本発明のようなMgが8%を超える高Mg量のAl-Mg 系合金板の開示は無い。即ち、本発明のようなMgが8%を超える高Mg量のAl-Mg 系合金板の領域での双ロール式連続鋳造において、潤滑剤を使用した方が良いのか、悪いのかは、その効果を含めて、全く不明であり、前記した通り、潤滑剤を使用する方が一般的であった。
(冷却速度)
例えば、鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化するためには、この双ロールによる鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が速くても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に100 ℃/s未満となりやすい。このため、このため、平均結晶粒が50μm を超えて粗大化するとともに、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化するか、多量に晶出する。この結果、導電率が前記範囲から外れる可能性が高い。このため、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。また、板の均質性も低下する。
なお、この冷却速度は、直接の計測は難しいので、鋳造された板 (鋳塊) のデンドライトアームスペーシング (デンドライト二次枝間隔、:DAS) から公知の方法(例えば、軽金属学会、昭和63年8.20発行、「アルミニウムデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定方法」などに記載)により求める。即ち、鋳造された板の鋳造組織における、互いに隣接するデンドライト二次アーム (二次枝) の平均間隔d を交線法を用いて計測し (視野数3 以上、交点数は10以上) 、このd を用いて次式、d = 62×C -0.337 (但し、d:デンドライト二次アーム間隔mm、C : 冷却速度℃/s) から求める。
(鋳造板厚)
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく遅くなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する傾向がある。この結果、導電率が前記範囲から外れる可能性が高い。このため、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。
(注湯温度)
Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性がある。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質自体が低下する可能性がある。
(双ロール周速)
回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は30m/min 以上である。
(冷間圧延)
このように鋳造されたAl合金板は、オンラインでもオフラインでも熱間圧延せずに、自動車パネル用などの製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて、鋳造組織が加工組織化される。
この際、本発明では、冷間圧延工程におけるβ相発生を抑制するために、冷間圧延を複数の圧延パスで行うとともに、各冷間圧延時に前記アルミニウム板を冷却する。これによって、更に、前記各圧延パスの圧下率を30% 以下に緩和させて冷延するとともに、前記各圧延パス間における前記アルミニウム板の温度を150 ℃以下にする。
この複数の圧延パス化に伴い、冷延途中に中間焼鈍を入れても良い。但し、その際には、この熱履歴工程でのβ相発生を抑制するために、400 ℃未満から400 ℃以上の温度領域への昇温と冷却の速度はできるだけ速い速度とする。
各圧延パスの圧下率緩和によって、圧延中や圧延パス間の高MgのAl-Mg 系合金板の温度が、β相発生の温度領域内や、この温度領域近くまで上昇しないようにする。これとともに、冷間圧延工程における板の冷却を強めて、前記各圧延パス間における前記アルミニウム板の温度を150 ℃以下にし、圧延パス間の高MgのAl-Mg 系合金板の温度が、β相発生の温度領域内や、この温度領域近くまで上昇しないようにする。これによって、冷間圧延工程におけるβ相発生を抑制して、冷間圧延性を向上させる。
各圧延パス間における前記アルミニウム板の温度は、冷間圧延後のアルミニウム板の下記条件での温度測定にて行なう。なお、温度測定自体は、市販の接触式温度測定装置で測定が可能である。
(冷延後コイルに巻き取らない場合)
測定場所:板端部より10mm内側の圧延面にて、圧延方向に間隔100mm以上あけた任意の測定箇所、3箇所における温度を接触温度計で測定し、その平均値を平均圧延温度とする。
測定のタイミング:圧延終了後、1分以内に上記温度測定を行う
(冷延後コイルに巻き取る場合)
測定場所:コイル最外周面の圧延面の、板端部より10mm内側の圧延面にて、圧延方向に間隔100mm以上あけた任意の測定箇所3箇所における温度を接触温度計で測定する。圧延面の測定が困難な場合(コイルの曲率によって圧延面にて正確に温度測定できない場合)、幅方向端部のコイル側面の最外周部(最外周部からコイル半径で1/5の割合だけ半径方向中心側までの範囲)にて、任意の場所3箇所における温度を接触温度計で測定し、その平均値を平均圧延温度とする。
測定のタイミング:コイルに巻き取り後、10分以内に上記温度測定を行う。
各圧延パスの圧下率が30% を超えた場合、冷間圧延時に、アルミニウム板を強制的に冷却しても、冷間圧延後のアルミニウム板の温度が上昇して、β相発生の温度領域内や、この温度領域近くまでなる可能性が高くなる。このため、Al-Mg 系合金板のMg含有量が8%を超えた高Mgになるにつれて、あるいは不純物であるFeやSiの含有量が多くなるほど、β相発生の可能性が高くなる。
また、前記各圧延パス間におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えた場合、冷間圧延工程において板に付与される圧下 (歪み) と、加工発熱との作用によって、400 ℃未満の十分低い温度でも、β相が発生する可能性が高くなる。この傾向は、前記した通り、Al-Mg 系合金板のMg含有量が8%を超えた高Mgになるにつれて、あるいは不純物であるFeやSiの含有量が多くなるほど強くなる。そして、各圧延パス間におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えて、β相が発生した場合、冷間圧延性が劣化して、板の幅方向端部での割れが発生して、歩留りが低下するとともに、圧延製品化が困難となる。
各冷間圧延時に前記アルミニウム板を冷却して、各圧延パス間における前記アルミニウム板の温度を150 ℃以下にするために、最も効果的な方法は、冷間圧延直後のアルミニウム板の温度が最も上昇する際に、アルミニウム板を強制的に冷却することである。例えば、冷間圧延開始時や冷間圧延途中などの冷間圧延中にアルミニウム板を強制的に冷却しても良いが、これらの冷却手段のみで、冷間圧延直後に冷却しないと、冷間圧延直後のアルミニウム板の温度がβ相発生の温度領域内や、この温度領域近くまで上昇する可能性がある。
冷間圧延時のアルミニウム板の強制的な冷却手段としては、通常使用される水を含まない圧延油を、水溶性油や水溶性潤滑剤などのエマルジョンタイプに変えて、このエマルジョン水溶液を用いて、ロールに対する塗布や吹き付けだけでなく、アルミニウム板に直接、噴霧あるいは吹き付け、潤滑性能を低下させずに、冷却性能を強化させることが好ましい。この他、腐食しにくい生産環境下であれば、冷却水などを用いることも可能である。
以下に本発明の実施例を説明する。表1 に示す種々の化学成分組成のAl-Mg 系Al合金板状鋳塊(発明例A〜M、比較例N〜Q)を、前記した双ロール連続鋳造法により、表2 に示す条件で各板厚(3〜5mm)に鋳造した。そして、これら各Al合金鋳造薄板を板素材として、表3 に示す条件で1 パスから3 パスの各パス回数で冷間圧延を行い、表3 に示す各板厚 (最終板厚) で、板幅300mm 以上の板とした。その後、共通して、連続焼鈍炉で温度450 ℃、昇温速度と冷却速度とをともに15.0℃/s以上で最終焼鈍を行い、供試材とした。
双ロール連続鋳造の際の、双ロールの周速は70m /min、Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+20℃と、各例とも一定とした。SiC およびアルミナの粉末を水に懸濁させた潤滑剤による双ロール表面の潤滑は、表2 の比較例18のみ行い、他の例は全て双ロール表面の潤滑無し(無潤滑)で、連続鋳造した。
このような冷間圧延用のアルミニウム合金板状鋳塊の平均導電率(IACS%) と、平均結晶粒径 (μm)とを前記した各測定方法で各々測定した。これらを表2に示す。
また、上記冷間圧延においては、表3 に示すように、各圧延パスにおける圧下率を変えて、圧延を行なった。更に、各圧延パスにおける圧延潤滑を、水溶性油のエマルジョンにて行った。即ち、圧延ロールに対する吹き付けだけでなく、冷間圧延直後のアルミニウム板に直接吹き付けて、冷間圧延直後のアルミニウム板の強制冷却を行なった。そして、このエマルジョンの冷間圧延直後のアルミニウム板への吹き付け量を変えて、冷間圧延直後の (圧延パス間の板温) アルミニウム板の温度を変えた。
冷間圧延後にコイルに巻き取られたアルミニウム板 (幅方向端部) の温度を、コイル巻き取り後10分以内に、コイル側面の最外周部(最外周部からコイル半径で1/5の割合だけ半径方向中心側までの範囲)にて側からコイル内側、コイル中側、コイル外側の3 点、両端において計6 点、接触温度計にて測温し、平均温度を求めた。これを、圧延パス間の板温として表3 に示す。
(冷延性)
各圧延パスにおけるアルミニウム板幅方向両端部の割れ (耳割れ) の発生の有無を目視にて観察し、冷延性を評価した。ここで、耳割れが生じていない場合を、冷間圧延時にβ相が冷延性を低下させる実質量は生成していないとみなし、耳割れが生じている場合を、冷間圧延時のβ相生成によるものとみなした。50mmの幅 (長さ) を超える割れが発生した場合を粗大割れ(×)とし、50mm以内の幅の割れが発生した場合を微小割れとし、微小割れでも程度の悪いもの(30mm以上50mm未満:△)と割れが小さいもの(5mm以上30mm未満:○)に分け、さらに割れがほとんどないもの(5mm未満:◎)に分けて評価した。
なお、上記粗大割れが生じたものは、続く冷間圧延は中止し、以下に記載する供試材の特性評価も行なわなかった。
(板特性)
粗大割れが生じた比較例を除き、発明例の中から選択した、発明例1 、3 、5 、6 、8 、9 の前記各供試材から試験片を採取し、各試験片の機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値を求め、また、プレス成形される板部位から、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の各試験片を各試験毎に5 枚採取して、成形性などの特性も計測、評価した。これらの結果を表4 に示す。
引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
成形性の材料試験評価としては、JIS Z 2247に準拠してエリクセン試験(mm)を行った。
そして、実際の自動車アウタパネルとしての成形性を評価するために、前記得られた高Mgの各 Al-Mg系Al合金板をプレス成形および曲げ加工した。これらの結果も表3 に示す。
プレス成形試験は、前記採取試験片 (一辺が200mm の正方形のブランク)5枚を、中央部に一辺が60mmで、高さが30mmの角筒状の張出部と、この張出部の四周囲に平坦なフランジ部を有するハット型のパネルに、メカプレスにより張出成形した。しわ押さえ力は49kN、潤滑油は一般防錆油、成形速度は20mm/ 分の同じ条件で行った。
そして、5 回(5枚) のプレス成形ともに、前記張出部の四周囲や平坦なフランジ部に割れが生じなかったものを○、5 回のプレス成形ともに割れは無いが、SSマークや肌荒れが生じたものを△、1 回でも前記割れが生じたものを×と評価した。
曲げ加工性は、前記採取試験片を、自動車アウタパネルとして、プレス成形後にフラットヘム加工されることを模擬して、常温にて、試験片に10% のストレッチを行った後、曲げ試験を行い評価した。試験片条件は、前記採取試験片を、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるVブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に180 度に曲げた。この際、例えば、アウタパネルのヘム加工ではインナパネルが曲げ部内に挟み込まれるが、条件を厳しくするために、このようなのAl合金板を挟み込まないで180 度に曲げた。
そして、曲げ試験後の曲げ部 (湾曲部) の割れの発生状況を観察し、5 回(5枚) の試験共に、曲げ部表面に割れや肌荒れなどの以上が無いものを○、5 回の試験共に割れは無いが肌荒れが生じているものを△、1 回でも割れがあるものを×と評価した。
表1 〜3 の通り、発明例1 〜19は、表1 のA 〜O の本発明範囲内の組成を有し、かつ、本発明範囲内の平均導電率(IACS%) と平均結晶粒径 (μm)とを有する高Mgのアルミニウム合金板状鋳塊を冷間圧延している。そして、冷延においては、冷間圧延を2 〜3 回の複数の圧延パスで行うとともに、各圧延パスの圧下率を30% 以下に抑えている。また、各冷間圧延 (各パス) 時に、冷間圧延直後のアルミニウム板に、冷却のためのエマルジョンを十分な量直接吹き付けられて強制冷却され、各圧延パス間におけるアルミニウム板の温度を150 ℃以下にされている。
この結果、先ず、発明例1 〜19は、各圧延パスにおけるアルミニウム板幅方向両端部の割れ (耳割れ) の発生が無いか、発生があっても微小な割れに抑制されている。更に、強度延性バランスが高く、プレス成形性や曲げ加工性にも優れている。この結果から、冷間圧延時と最終板製品におけるβ相生成が抑制されているものと推測される。
そして、表4 の通り、発明例は、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスや、プレス成形性、曲げ加工性にも優れている。
発明例の中で、圧延パスにおける微小な割れが発生している例について説明する。発明例2 、4 、5 、6 、7 、16〜19は、いずれかのパスの圧下率が比較的高いか、圧下率は小さいものの、いずれかのパス時の、冷間圧延直後のアルミニウム板の強制冷却が比較的弱くなっている。
このため、これら圧延パス間におけるアルミニウム板の温度は、150 ℃以下ではあるが、比較的高くなって、これら発明例は、冷間圧延時におけるβ相生成が、他の発明例ほどには抑制されておらず、圧延パスにおける微小な割れが発生したものと推測される。
Mg含有量の観点からみると、下限近傍の8.1%Mg量であるA の合金を用いた発明例1 は、10.5Mg量であるB の合金を用いた発明例2 と同様に、1 パス目の圧下率が比較的高く、圧延パス間におけるアルミニウム板の温度が比較的高いにもかかわらず、圧延パスにおける耳割れは発生していない。また、下限を低めに外れた7.0%Mg量であるP の合金を用いた比較例29も、圧延パスにおける圧下率が比較的高く、圧延パス間におけるアルミニウム板の温度が比較的高いにもかかわらず、微小な割れに抑制されている。
これらの結果から、冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向は、Al-Mg 系合金板のMg含有量が多くなるほど強くなり、特に8%を超えた高Mgレベルでは、8%以下の通常のAl-Mg 系合金板のMg含有レベルの場合に比して、β相発生の傾向は一段と強くなることが裏付けられる。
更に、不純物である、Fe、Si含有量の観点からみると、Fe、Si含有量が比較的高い合金D 、E を用いている発明例6 〜8 は、Fe、Si含有量が比較的低い合金F 、G を用いている発明例9 、10に比して、圧延パスにおける耳割れ発生状況は劣っている。
これらの結果から、冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向は、高MgのAl-Mg 系合金板の不純物であるFeやSiの含有量が多くなるほど、冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向は強くなることが裏付けられる。
一方、比較例20は、表1 のB の本発明範囲内の組成例ではあるが、双ロールの潤滑を行ない、冷却速度が100 ℃/s未満となった好ましい製造条件の範囲外で板状鋳塊が製造されている。このため、得られた板状鋳塊表面の平均結晶粒径が100 μm を超えている。比較例20は、冷延条件 (各圧延パスの圧下率を30% 以下、各圧延パス間におけるアルミニウム板の温度を150 ℃以下) は本発明条件を満足する。しかしながら、結晶粒径が請求範囲外であるため、粗大な耳割れが発生している。
比較例21、23は、表1 のB や Dの合金例を用いた本発明範囲内の組成例ではあるが、1 パス目の圧下率が通常の圧下率程度の50% と高過ぎる。このため、圧延パス間 (圧延直後) におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えて高くなり過ぎている。この結果、比較例21、23は、粗大な耳割れが生じている。
比較例22は、表1 のB の本発明範囲内の組成例ではあるが、圧延パス間 (圧延直後) におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えて高くなり過ぎている。この結果、比較例22も、粗大な耳割れが生じている。
比較例24、25、26は、表1 のD の本発明範囲内の組成例ではあるが、圧延パス間 (圧延直後) におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えて高くなり過ぎている。この結果、粗大な耳割れが生じている。
比較例27、28は、表1 のG の本発明範囲内の組成例ではあるが、圧延パス間 (圧延直後) におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えて高くなり過ぎている。この結果、粗大な耳割れが生じている。
比較例30は、Mg含有量が上限を上回って多過ぎるQ の合金を用いている。比較例31は、Fe含有量が上限を上回って多過ぎるR の合金を用いている。比較例32は、Si含有量が上限を上回って多過ぎるS の合金を用いている。そして、これら比較例は、冷間圧延を複数の圧延パスで行うとともに、各圧延パスの圧下率を30% 以下に抑えている。また、各パス時に、冷間圧延直後のアルミニウム板に、冷却のためのエマルジョンを十分な量直接吹き付けられて強制冷却され、各圧延パス間におけるアルミニウム板の温度を150 ℃以下にされている。にもかかわらず、粗大な耳割れが生じている。
したがって、これらの結果から、本発明冷延条件の、各圧延パスの圧下率を抑制するとともに、冷間圧延工程における板の冷却を強めて、圧延パス間の高MgのAl-Mg 系合金板の温度を制御し、冷間圧延工程におけるβ相発生を抑制して、冷間圧延性を向上させ、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスや、プレス成形性、曲げ加工性を向上させる臨界的な意味が裏付けられる。
Figure 0004456505
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前記表1 に示した化学成分組成のAl-Mg 系Al合金板状鋳塊(発明例A、B、C、F、G)を、DC鋳造法により溶解、鋳造し、板厚100mmの鋳塊を得た。この鋳塊に480℃×10hrの均質化熱処理を施した後、表5に示す条件で熱延を行って各板厚(3〜5mm)にし、さらに表5に示す昇温速度、焼鈍温度、冷却速度で中間焼鈍を施し、冷間圧延用の板素材 (中間材) とした。なお、中間焼鈍時の保持時間は1分で行った。
このような冷間圧延用の板素材 (中間材) の平均導電率(IACS%) と、平均結晶粒径 (μm)とを前記した各測定方法で各々測定した。これらを表5 に示す。
そして、これら各Al合金板素材を、表6 に示す条件で、1 パスから3 パスの各パス回数で冷間圧延を行い、表6 に示す各板厚 (最終板厚)の板とした。その後、共通して、連続焼鈍炉で温度450 ℃、昇温速度と冷却速度とをともに15.0℃/s以上で最終焼鈍を行い、供試材とした。
上記冷間圧延における冷却や、パス間における板の測温は、実施例1 と同様に行なった。また、冷延性についても実施例1 と同様に評価した。
(板特性)
粗大割れが生じた比較例を除き、発明例の各供試材から試験片を採取し、各試験片の機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値を求め、また、成形性などの特性も評価した。これらの評価、試験方法は、実施例1 と同様にした。これらの結果を表7 に示す。
表4 〜7 の通り、発明例33〜42は、表1 のA 〜O の本発明範囲内の組成を有し、かつ、本発明範囲内の平均導電率(IACS%) と平均結晶粒径 (μm)とを有する高Mgのアルミニウム合金熱延板素材を冷間圧延している。そして、冷延においては、冷間圧延を2 〜3 回の複数の圧延パスで行うとともに、各圧延パスの圧下率を30% 以下に抑えている。また、各冷間圧延 (各パス) 時に、冷間圧延直後のアルミニウム板に、冷却のためのエマルジョンを十分な量直接吹き付けられて強制冷却され、各圧延パス間におけるアルミニウム板の温度を150 ℃以下にされている。
この結果、先ず、発明例33〜42は、各圧延パスにおけるアルミニウム板幅方向両端部の割れ (耳割れ) の発生が無いか、発生があっても微小な割れに抑制されている。更に、強度延性バランスが高く、プレス成形性や曲げ加工性にも優れている。この結果から、冷間圧延時と最終板製品におけるβ相生成が抑制されているものと推測される。
そして、表7 の通り、発明例は、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスや、プレス成形性、曲げ加工性にも優れている。
一方、比較例43〜49は、表1 のB の本発明範囲内の組成例ではあるが、各々下記理由により、冷延時に粗大な耳割れが発生している。
比較例43、44は、熱延・中間焼鈍条件が範囲外のため、中間材 (素材) の結晶粒が粗大化している。
比較例45、46は、中間焼鈍条件が範囲外のため、中間材の導電率が高すぎ、β相の析出量が多くなっている。
比較例47は、中間焼鈍条件が範囲外のため、中間材の結晶粒が粗大化し、導電率も高すぎる。
比較例48、49は、圧下率が高過ぎるか、圧下率が低くても冷却が弱いために、圧延パス間 (圧延直後) におけるアルミニウム板の温度が150 ℃を超えて高くなり過ぎている。
したがって、これらの結果から、本発明冷延条件の、各圧延パスの圧下率を抑制するとともに、冷間圧延工程における板の冷却を強めて、圧延パス間の高MgのAl-Mg 系合金板の温度を制御し、冷間圧延工程におけるβ相発生を抑制して、冷間圧延性を向上させる臨界的な意味が裏付けられる。
Figure 0004456505
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以上説明したように、本発明によれば、冷間圧延工程におけるβ相発生の傾向が複合化して強くなる傾向に対し、これを抑制して、自動車のアウタパネルやインナパネルなどへの適用が可能な、高い曲げ加工性やプレス成形性を有するアルミニウム合金板の製造方法を提供することができる。また、この冷間圧延用に好適なアルミニウム合金板状鋳塊を提供することができる。この結果、自動車パネルなど、プレス成形用としての高MgのAl-Mg 系アルミニウム合金連続鋳造板の適用を拡大できるものである。

Claims (2)

  1. 質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなり、DC鋳造による鋳塊を均熱、熱延されたか、または、双ロール式連続鋳造法により鋳造された、板厚が1 〜13mmのAl-Mg 系アルミニウム合金板状素材であり、平均導電率が20IACS% 以上、26IACS% 未満で、平均結晶粒径が100 μm 以下である前記Al-Mg 系アルミニウム合金板素材を冷間圧延して、成形用アルミニウム合金板を製造するに際し、冷間圧延を複数の圧延パスで行うとともに、各冷間圧延時に前記アルミニウム板素材を冷却し、更に、前記各圧延パスの圧下率を30% 以下にするとともに、前記各圧延パス間における前記アルミニウム板素材の温度を150 ℃以下にすることを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 前記アルミニウム合金板が、更に、質量% で、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、の一種または二種以上を含む、請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板の製造方法。
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