JP4224435B2 - 自動車用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造により得られた高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板であって、優れた成形性を有する自動車用アルミニウム合金板を提供するものである。
近年、自動車などの輸送機の車体分野では、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材など、より軽量なAl合金材適用が増加しつつある。
この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの自動車ボディパネル (パネル構造体) の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、Al-Mg 系のAA乃至JIS 5000系 (以下、単に5000系、あるいはAl-Mg 系と言う) アルミニウム合金板や Al-Mg-Si 系のAA乃至JIS 6000系アルミニウム合金板の使用が検討されている。
前記自動車ボディパネル用のアルミニウム合金板 (以下、アルミニウムをAlとも言う) には、高プレス成形性が要求される。この成形性の点からは、前記Al合金のなかでも、強度・延性バランスに優れたAl-Mg 系Al合金が有利である。
このため、従来から、Al-Mg 系Al合金板に関して、成分系の検討や製造条件の最適化検討が行われている。このAl-Mg 系Al合金としては、例えばJIS A 5052、5182等が代表的な合金成分系である。しかし、このAl-Mg 系Al合金でも冷延鋼板と比較すると延性に劣り、成形性に劣っている。
これに対し、Al-Mg 系Al合金は、Mg含有量を増加させて、8%を超える高Mg化させると、強度・延性が向上する。しかし、このような高MgのAl-Mg 系合金は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。この理由は、鋳造の際に鋳塊にMgが偏析したり、通常の熱間圧延では、Al-Mg 系合金の延性が著しく低下するために、割れが発生し易くなるからである。
一方、高MgのAl-Mg 系合金を、上記割れの発生する温度域を避けて、低温での熱間圧延を行うことも困難である。このような低温圧延では、高MgのAl-Mg 系合金の材料の変形抵抗が著しく高くなり、現状の圧延機の能力では製造できる製品サイズが極端に限定されるためである。
また、高MgのAl-Mg 系合金のMg含有許容量を増加させるために、FeやSi等の第三元素を添加する方法等も提案されている。しかし、これら第三元素の含有量が増えると、粗大な金属間化合物を形成しやすく、アルミニウム合金板の延性を低下させる。このため、Mg含有許容量の増加には限界があり、Mgが8%を超える量を含有させることは困難であった。
このため、従来から、高MgのAl-Mg 系合金板を、双ロール式などの連続鋳造法で製造することが種々提案されている。双ロール式連続鋳造法は、回転する一対の水冷銅鋳型 (双ロール) 間に、耐火物製の給湯ノズルからアルミニウム合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、アルミニウム合金薄板とする方法である。この双ロール式連続鋳造法はハンター法や3C法などが知られている。
双ロール式連続鋳造法の冷却速度は、従来のDC鋳造法やベルト式連続鋳造法に較べて1〜3桁大きい。このため、得られるアルミニウム合金板は非常に微細な組織となり、プレス成形性などの加工性に優れる。また、鋳造によって、アルミニウム合金板の板厚も比較的薄い1〜4mmのものが得られる。このため、従来のDC鋳塊(厚さ200 〜 500mm)のように、熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延等の工程が省略できる。さらに鋳塊の均質化処理も省略出来る場合がある。
このような双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板の、成形性向上を意図して組織を規定した例は、従来においてもある。例えば、Al-Mg 系の金属間化合物の平均サイズを10μm 以下とした、機械的性質に優れた自動車用アルミニウム合金板が提案されている (特許文献1参照) 。また、10μm 以上のAl-Mg 系金属間化合物の個数を300 個/mm2以下とし、平均結晶粒径が10〜70μm とした自動車ボディーシート用アルミニウム合金板なども提案されている (特許文献2参照) 。
特開平7 −252571号公報 (請求項、1 〜2 頁) 特開平8 −165538号公報 (請求項、1 〜2 頁)
これら特許文献1 、2 の通り、鋳造の際に晶出するAl-Mg 系金属間化合物は、プレス成形の際に破壊の起点となりやすい。したがって、双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させるためには、これらAl-Mg 系金属間化合物(Al-Mg 系化合物とも言う)を、特許文献1 、2 の通り、微細化させる、あるいは粗大なものを少なくすることが有効である。また、板の結晶粒を微細化させることもプレス成形性向上に有効である。
しかし、これらAl-Mg 系金属間化合物を微細化させる、あるいは粗大なものを少なくするだけでは、結晶粒を微細化させても、自動車パネルへの適用が難しくなっている。自動車用パネルの中でも、特に、前記した自動車ボディパネルのアウタパネルやインナパネルなどへの適用が難しい。これらのアウタパネルやインナパネルは、自動車の設計上、より大型化や、より複雑形状化する傾向にあり、成形がより難しくなっているからである。
そして、このような自動車パネルでは、通常の材料の成形性評価のための試験結果と、実際のアウタパネルやインナパネルへのプレス成形結果などとが、対応しないことが多い。通常の材料の成形性評価とは、例えば、JIS Z 2204や、JIS Z 2248に規定される曲げ試験(180度曲げによる最小内側半径で評価) や、JIS Z 2248に規定されるエリクセン試験 (エリクセン値で評価) などである。即ち、これら通常の材料の成形性評価の試験結果が良くても、上記実際のアウタパネルやインナパネルへのプレス成形性が良くない、という事態も往々にして生じる。
したがって、双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板の上記実際のアウタパネルやインナパネルへのプレス成形性を向上させるためには、前記特許文献1 、2 のような、結晶粒を微細化させる、更には、Al-Mg 系金属間化合物を微細化させる、あるいは粗大なものを少なくすることだけでは不十分である。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、自動車のアウタパネルやインナパネルへの適用が可能な、プレス成形性を向上させた高MgのAl-Mg 系合金板を提供することである。
この目的を達成するために、本発明高MgのAl-Mg 系合金板の要旨は、連続鋳造後に冷間圧延および焼鈍された板厚0.5 〜3mm のAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなり、250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて組織観察した際の、Al-Mg 系化合物の平均粒径が10μm 以下であるとともに、この平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率が5%以下であり、かつ、板表面の平均結晶粒径が50μm 以下であることとする。
また、上記目的を達成するために、本発明高MgのAl-Mg 系合金板の製造方法の要旨は、双ロール式連続鋳造法によりAl-Mg 系アルミニウム合金板を製造する方法であって、質量% で、Mg:8〜14% 、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなるアルミニウム合金溶湯を、回転する一対の双ロールに液相線温度+30℃以下で注湯して、双ロールの周速を30m/min 以上および冷却速度を100 ℃/s以上として、板厚1 〜5mm のアルミニウム合金板を連続的に鋳造し、鋳造されたアルミニウム合金板を板厚0.5 〜3mm に冷間圧延後、400 ℃〜液相線温度で焼鈍し、この焼鈍後に500 〜300 ℃の温度範囲を5 ℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、得られたアルミニウム合金板を250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて組織観察した際の、Al-Mg 系化合物の平均粒径を10μm 以下とするとともに、この平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率を5%以下とし、かつ、板表面の平均結晶粒径を50μm 以下としたことである。
本発明では、前記特許文献1 、2 のように、高MgのAl-Mg 系合金板の結晶粒を微細化させ、更には、Al-Mg 系金属間化合物を微細化させる、あるいは粗大なものを少なくする点は踏襲する。
ただ、本発明では、これらに加えて、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板組織における、平均粒径が10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率を5%以下に規制する。これによって、高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させ、特に、前記した、フード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの自動車ボディパネルへの適用を可能とする。なお、本発明で言うプレス成形性とは、プレスによる、張出成形、絞り成形、曲げ加工などの成形を含む。
そして、このようなAl-Mg 系化合物自体が少ない (他の化合物も少ない) 本発明組織を得るためには、成分組成だけではなく、後述する通り、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの、製造方法や条件の制御が必要である。
このAl-Mg 系化合物 (晶出物) の平均粒径と平均面積率とは、250 倍の走査型電子顕微鏡(SEM) を用いて測定する。これは、測定方法を規定しない場合、他のTEM や光学顕微鏡などの測定方法、あるいは、同じSEM でも測定倍率が違った場合に、数値に再現性が無くなる可能性があるからである。
(Al-Mg 系化合物)
本発明で言うAl-Mg 系化合物とは、基本組成がAl-Mg 、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成る金属間化合物 (金属間化合物の晶析出物) である。このようなAl-Mg 系化合物は、双ロール式などの連続鋳造の際に晶出して、そのまま板組織中に残存するか、焼鈍の際にも析出する。本発明では、連続鋳造後に冷間圧延および焼鈍された板厚0.5 〜3mm のAl-Mg 系Al合金板につき、これらAl-Mg 系化合物の平均粒径と平均面積率とを規定する。
(Al-Mg 系化合物平均粒径)
先ず、Al-Mg 系化合物の平均粒径は、成形性向上の点から、10μm 以下に微細化させる。Al-Mg 系化合物の平均粒径が10μm を超えて大きくなった場合、Al-Mg 系化合物が成形の際の応力集中によって、破壊の起点となりやすくなり、プレス成形性が著しく低下する。
(Al-Mg 系化合物平均面積率)
次に、Al-Mg 系化合物を上記のように微細化させても、組織中に存在する微細なAl-Mg 系化合物が多ければ、Al-Mg 系化合物を介して、成形の際の亀裂伝播が起こり易くなる。このため、プレス成形性が著しく低下する。したがって、本発明では、上記平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率を5%以下とし、Al-Mg 系化合物自体を少なくする。このようなAl-Mg 系化合物自体が少ない (他の化合物も少ない) 組織を得るためには、後述する通り、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの、製造方法や条件の制御が必要である。
これらAl-Mg 系化合物の平均粒径は、250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて、観察視野内の各Al-Mg 系化合物の粒径 (最大の長辺長さ) を平均化して測定する。そして、観察視野のN 数を例えば10個とし、これら各視野の平均粒径を平均化する。
また、Al-Mg 系化合物の平均面積率は、同じく250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて、観察視野内のAl-Mg 系化合物の合計面積を、視野面積に対する百分率で算出する。そして、観察視野のN 数を例えば10個とし、これら各視野の面積率を平均化する。
なお、上記走査型電子顕微鏡による組織観察において、Al-Mg 系以外の化合物とAl-Mg 系化合物との区別は、組織中の形態的特徴などで目視により識別可能である。また、本発明の合金組成からして、例えば、Al-Fe 、Al-Si 系など、Al-Mg 系以外の化合物量は少なく、この点からも上記識別は可能である。しかし、更に正確さを期す場合には、EPMA(X線マイクロアナリシス) を用いて、組織中の晶出物や他の析出物を構成する元素と元素量を同定して識別しても良い。
(平均結晶粒径)
Al合金板表面の平均結晶粒径は50μm 以下に微細化させる。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、プレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が50μm を越えて粗大化した場合、プレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。
なお、本発明で言うAl合金板表面とは、後述する通り、平均結晶粒径のために、Al合金板表面を機械研磨した後電解エッチングした後の表面を言う。
また、本発明で言う結晶粒径とは板の長手(L) 方向の結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、Al合金板を0.05〜0.1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向にラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。
(化学成分組成)
本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板は、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなる化学成分組成とする。
(Mg:8%を超え14% 以下)
MgはAl合金板の強度、延性、そして強度・延性バランスを高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、特に本発明が意図する、自動車用パネルへのプレス成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの、製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果、上記Al-Mg 系化合物の面積率の上限規定を満足できず、プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。
(Fe:1.0%以下、Si:0.5% 以下)
FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果、上記Al-Mg 系化合物の面積率の上限規定を満足できないか、また、Al-Mg 系化合物の面積率の上限規定を満足したとしても、プレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。
(残部の内のAl量)
これに関連して、本発明では、上記規定のMgおよびFeとSiを除く合金組成の残部を97% 以上のAlからなるものとする。言い換えると、合金組成の残部に含まれる、溶解原料や鋳造工程などから含まれる不可避的不純物元素を合計で3%未満に規制する。合金組成の残部の内のAlが97% 未満では、Al-Mg 系以外の化合物量が多く生成し、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果、上記Al-Mg 系化合物の面積率の上限規定を満足したとしても、プレス成形性が著しく低下する。
因みに、上記不可避的不純物元素としては、Mn、Cu、Cr、Zr、Zn、V 、Ti、B などが例示される。
(製造方法)
以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。
本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、前記した通り、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。したがって、本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、双ロール式などの連続鋳造と、冷間圧延、焼鈍とを組み合わせて製造する。
Al合金薄板の連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがあるが、後述する鋳造の際の冷却速度を高くするためには、双ロール式が好ましい。
(双ロール式)
双ロール式連続鋳造法の要旨は、前記した通り、回転する一対の水冷銅鋳型などの双ロール間に、耐火物製の給湯ノズルから、上記成分組成のAl合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、Al合金薄板とする。
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜5mm の範囲とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が5mm を超えた場合、鋳造の冷却速度が遅くなり、Al-Mg 系化合物が平均粒径が10μm を超えて粗大化したり、例え微細であっても、Al-Mg 系化合物が平均面積率5%を超えて、多量に晶出する。この結果、プレス成形性が著しく低下する。
この際、Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とする。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Al-Mg 系化合物が平均粒径が10μm を超えて粗大化したり、例え微細であっても、Al-Mg 系化合物が平均面積率5%を超えて、多量に晶出する。この結果、プレス成形性が著しく低下する。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質自体が低下する。
回転する一対の双ロールの周速は30m /min以上とする。双ロールの周速が30m/min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は90m/min 以上である。
鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度とする。冷却速度が100 ℃/s未満の場合、平均結晶粒が50μm を超えて粗大化するとともに、Al-Mg 系化合物が平均粒径が10μm を超えて粗大化する。また、例えAl-Mg 系化合物が微細であっても、平均面積率5%を超えて、多量に晶出する。更に、Mg以外の合金元素が比較的多い場合には、Al合金組成が例え本発明範囲内であっても、Al-Mg 系化合物以外の他の化合物も、粗大に、あるいは微細であっても、多量に晶出する可能性がある。この結果、プレス成形性が著しく低下する。
(冷間圧延)
このように鋳造されたAl合金板は、自動車パネル用の製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて鋳造組織が加工組織化される。この加工組織化の程度は冷間圧延の圧下量にもより、鋳造組織が残留する場合もあるが、プレス成形性や機械的な特性を阻害しない範囲で許容される。なお、冷間圧延に先立つ、あるいは冷間圧延の途中に、通常の条件で、中間焼鈍を施しても良い。
(最終焼鈍)
Al合金冷延板は、400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍する。焼鈍温度が400 ℃未満では、溶体化効果が得られない。そして、この最終焼鈍後には、500 〜300 ℃の温度範囲を5 ℃/s以上の、できるだけ速い平均冷却速度で冷却する必要がある。最終焼鈍後の平均冷却速度が遅く、5 ℃/s未満であれば、冷却過程で、Al-Mg 系化合物や、それ以外の他の化合物が、微細であっても、多量に晶出する。この結果、プレス成形性が著しく低下する。
以下に本発明の実施例を説明する。表1 に示す種々の化学成分組成のAl-Mg 系Al合金溶湯を、前記した双ロール連続鋳造法により、表2 に示す条件で鋳造した。これら各Al合金鋳造薄板を表2 に示す各板厚まで冷間圧延した。これら各冷延板を、表2 に示す条件で、連続焼鈍炉で最終焼鈍および冷却を行った。
なお、表1 において、A 〜H は発明例、I 〜M は比較例である。
このように得られた高Mgの Al-Mg系Al合金板から試験片を採取して、表3 に示すように、250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて組織観察した際の、Al-Mg 系化合物の平均粒径 (μm)、平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率(%) 、および板表面の平均結晶粒径 (μm)を測定した。
更に、前記各試験片の機械的性質、成形性を評価した。これらの結果を表3 に示す。引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
成形性の材料試験評価としては、JIS Z 2247に準拠してエリクセン試験(mm)を行った。
そして、実際の自動車アウタパネルとしての成形性を評価するために、前記得られた高Mgの各 Al-Mg系Al合金板をプレス成形およびフラットヘム加工した。これらの結果も表3 に示す。
プレス成形試験は、前記得られた高Mgの各 Al-Mg系Al合金板から一辺が500mm の正方形の供試板 (ブランク) を複数枚切り出し、中央部に一辺が300mm で、高さが30mmと高い角筒状の張出部と、この張出部の四周囲に平坦なフランジ部 (幅30mm) を有するハット型のパネルに、メカプレスにより、ビード付き金型を用いて張出成形した。しわ押さえ力は49kN、潤滑油は一般防錆油、成形速度は20mm/ 分の同じ条件で、5 回行った。
そして、5 回のプレス成形ともに、前記張出部の四周囲や平坦なフランジ部に割れが生じなかったものを○、5 回のプレス成形ともに割れは無いが肌荒れが生じているものを△、1 回でも割れが生じたものを×と評価した。
曲げ加工性は、自動車アウタパネルとして、前記プレス成形後にフラットヘム加工されることを模擬して、常温にて、試験片に10% のストレッチを行った後、曲げ試験を行い評価した。試験片条件は、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるVブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に、180 度に曲げた。この際、例えば、アウタパネルのヘム加工ではインナパネルが曲げ部内に挟み込まれるが、条件を厳しくするために、このようなのAl合金板を挟み込まないで180 度に曲げた。
そして、曲げ試験後の曲げ部 (湾曲部) の割れの発生状況を観察し、曲げ部表面に割れや肌荒れなどの以上が無いものを○、割れは無いが肌荒れが生じているものを△、割れがあるものを×と評価した。
表1 〜3 の通り、表1 のA 〜H の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例であって、本発明範囲内の条件で、双ロール連続鋳造、冷延、最終焼鈍された発明例1 〜8 は、自動車アウタパネルとしてのプレス成形性に優れている。
これに対して、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例であるが、本発明範囲外の条件で、双ロール連続鋳造、冷延、最終焼鈍された比較例9 〜13は、自動車アウタパネルとしてのプレス成形性が、発明例に比して著しく劣っている。なお、比較例12は冷延板の割れがひどく、引張試験や成形性を含めて評価しなかった。
また、表1 のI 〜M の発明範囲外の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例である比較例14〜18は、本発明範囲内の条件で、双ロール連続鋳造、冷延、最終焼鈍されているにもかかわらず、自動車アウタパネルとしてのプレス成形性が、発明例に比して著しく劣っている。
これらの結果から、Al-Mg 系化合物の平均粒径が10μm 以下であるとともに、この平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率が5%以下であり、かつ、板表面の平均結晶粒径が50μm 以下であるための、本発明で規定の双ロール連続鋳造の各制御条件、冷延、最終焼鈍条件の臨界的な意義が分かる。
更に、Mg含有量が比較的少ないA の合金を用いた発明例1 は、Mg含有量が多い発明例2 、3 に比して、強度、延性、プレス成形性が比較的劣る。また、Mg含有量が下限値未満の合金I を用いた比較例14は、発明例2 、3 に比して、強度、延性、プレス成形性が著しく劣る。したがって、Mg含有量の強度、延性、プレス成形性に対する臨界的な意義が分かる。
Fe含有量が比較的高いE の合金を用いた発明例5 は、Fe含有量が少ない発明例2 に比して、延性、プレス成形性が比較的劣る。また、Fe含有量が上限値を超えるK の合金を用いた比較例16は、発明例2 に比して、延性、プレス成形性が著しく劣る。したがって、Fe含有量の延性、プレス成形性に対する臨界的な意義が分かる。
Si含有量が比較的高いG の合金を用いた発明例7 は、Si含有量が少ない発明例2 に比して、延性、プレス成形性が比較的劣る。また、Si含有量が上限値を超えるL の合金を用いた比較例17は、発明例2 に比して、延性、プレス成形性が著しく劣る。したがって、Si含有量の延性、プレス成形性に対する臨界的な意義が分かる。
残部の内のAl含有量が比較的低いH の合金を用いた発明例8 は、残部の内のAl含有量が比較的多い発明例2 に比して、延性、プレス成形性が比較的劣る。また、残部の内のAl含有量下限値を下回るM の合金を用いた比較例18は、発明例2 に比して、延性、プレス成形性が著しく劣る。したがって、残部の内のAl含有量Si含有量の延性、プレス成形性に対する臨界的な意義が分かる。
以上説明したように、本発明によれば、自動車のアウタパネルやインナパネルへの適用が可能な、プレス成形性を向上させた高MgのAl-Mg 系合金板を提供することができる。この結果、自動車パネルとしてのAl-Mg 系アルミニウム合金板の適用を拡大できるものである。

Claims (2)

  1. 連続鋳造後に冷間圧延および焼鈍された板厚0.5 〜3mm のAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなり、250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて組織観察した際の、Al-Mg 系化合物の平均粒径が10μm 以下であるとともに、この平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率が5%以下であり、かつ、板表面の平均結晶粒径が50μm 以下であることを特徴とする成形性に優れた自動車用アルミニウム合金板。
  2. 双ロール式連続鋳造法によりAl-Mg 系アルミニウム合金板を製造する方法であって、質量% で、Mg:8〜14% 、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなるアルミニウム合金溶湯を、回転する一対の双ロールに液相線温度+30℃以下で注湯して、双ロールの周速を30m /min以上および冷却速度を100 ℃/s以上として、板厚1 〜5mm のアルミニウム合金板を連続的に鋳造し、鋳造されたアルミニウム合金板を板厚0.5 〜3mm に冷間圧延後、400 ℃〜液相線温度で焼鈍し、この焼鈍後に500 〜300 ℃の温度範囲を5 ℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、得られたアルミニウム合金板を250 倍の走査型電子顕微鏡を用いて組織観察した際の、Al-Mg 系化合物の平均粒径を10μm 以下とするとともに、この平均粒径10μm 以下のAl-Mg 系化合物の平均面積率を5%以下とし、かつ、板表面の平均結晶粒径を50μm 以下としたことを特徴とする成形性に優れた自動車用アルミニウム合金板の製造方法。
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