JP4542004B2 - 成形用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
本発明では、Mgの偏析に起因するβ相の析出を抑制して、高MgのAl-Mg 系合金板における成形性を向上させる。このために、高MgのAl-Mg 系Al合金板の、板厚方向に亙って測定された各Mg濃度と、これらを平均化した平均Mg濃度との関係において、この平均Mg濃度からの前記各Mg濃度のずれ幅の最大値が絶対値で4%以下であるとともに、この平均Mg濃度からの前記各Mg濃度のずれ幅の平均値が絶対値で0.8%以下であることとする。
上記規定において、板厚方向に亙る各Mg濃度の測定は、全板厚の範囲とする。この各Mg濃度の測定には、線分析が可能なEPMA( 電子線プローブマイクロアナライザ) を用い、高MgのAl-Mg 系Al合金板の板幅方向の断面を板厚方向に走査して全板厚の範囲における、各厚み位置部分でのMg濃度を測定する。
本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板は、質量% で、Mg:6.0〜15.0% を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。
MgはAl合金板の強度、延性を高める重要合金元素である。Mg含有量が少な過ぎると、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、プレス成形性が不足する。一方、Mg含有量が多過ぎると、製造方法や条件の制御を行なっても、板厚幅方向に亙ってのMgの偏析度合いを、上記本発明範囲内に抑制することが難しい。この結果、β相の析出が多くなる。この結果プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは6.0 〜15.0% の範囲、好ましくは8%を超え14% 以下の範囲とする。
FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果プレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。
Al合金板表面の平均結晶粒径は100 μm 以下に微細化させることが成形性を向上させる前提条件として好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、プレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、プレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。一方、平均結晶粒径があまり細か過ぎても、5000系Al合金板に特有の、SS (ストレッチャーストレイン) マークがプレス成形時に発生するので、この観点からは、平均結晶粒径は20μm 以上とすることが好ましい。
以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。
本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延、冷間圧延を施す、通常の製造方法では、前記した通り、高Mg量となるほど、Al-Mg 系Al合金板を効率良く鋳造し工業的に製造することが難しい。また、鋳塊の厚みが大きいために、Mgの偏析度合いが大きくなり、Mgの偏析度合いを上記本発明範囲内に抑制することが難しくなる。
連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがある。しかし、高MgのAl-Mg 系Al合金板鋳造の際の冷却速度を後述する通り速くするためには、双ロール式連続鋳造が好ましい。
この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。しかし、これら潤滑剤を用いた場合、冷却速度が遅くなって、必要な冷却速度が得られない。このため、結晶粒が粗大となって、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の成形性が低下する。
例えば、鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化するためには、この双ロールによる鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度 (凝固速度) が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が速くても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に100 ℃/s未満となりやすい。このため、Mgの偏析度合いが大きくなり、Mgの偏析度合いを上記本発明範囲内に抑制することが難しくなり、これに起因するβ相の析出や成形性の低下を抑制できない。更に、高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化できず、プレス成形性が著しく低下する。
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく遅くなり、Mgの偏析度合いが大きくなり、Mgの偏析度合いを上記本発明範囲内に抑制することが難しくなり、これに起因するβ相の析出を抑制できない可能性がある。また、β相全般が粗大化したり、多量に析出する傾向がある。この結果プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。
Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Mgの偏析度合いが大きくなり、Mgの偏析度合いを上記本発明範囲内に抑制することが難しくなり、これに起因するβ相の析出や成形性の低下を抑制できない可能性がある。また、β相全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性がある。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質が低下する可能性がある。
回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は30m/min 以上である。
本発明では、選択的に、あるいは必要に応じて、前記双ロールに注湯後に、双ロール間で凝固しつつある板状鋳塊に対して、双ロールによって、板状鋳塊の長さ1m当たりにつき300 トン以上、即ち、300 トン/m以上の圧下荷重を負荷しつつ鋳造しても良い。
均質化熱処理(均熱処理とも言う)は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊では、Mgの偏析抑制のために、熱間圧延前に必須に施される。また、比較的Mgの偏析が少ない双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊でも、Mgの偏析抑制のためには、冷間圧延前に施されることが好ましい。
DC鋳造などで鋳造した鋳塊は、均質化熱処理後に、熱間圧延温度まで冷却されか、そのまま熱間圧延される。この熱間圧延条件は常法で良い。一方、双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊は、オンラインでもオフラインでも熱間圧延せずに、冷間圧延される。
冷間圧延では、双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊が、また、DC鋳造などで鋳造した鋳塊では、上記熱間圧延された熱延板が、製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて、鋳造組織が加工組織化される。
冷延後のAl合金冷延板は、400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍することが好ましい。この最終焼鈍によって、Mgの偏析度合いが小さくなり、Mgの偏析度合いを、上記本発明範囲内に抑制することができ、これに起因するβ相の析出や成形性の低下を抑制できる。
λ:(d s −d0)/d0 ×100
比較例9 は、Mg含有量が下限を下回って少な過ぎるE の合金を用いている。
比較例10は、Mg含有量が上限を上回って多過ぎるF の合金を用いている。
Claims (3)
- 質量% で、Mg:6.0〜15.0% を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなり、双ロール連続鋳造された板厚が1 〜13mmの薄板を熱間圧延することなしに冷間圧延して製造されたAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、この板の板厚方向に亙って測定された各Mg濃度と、これらを平均化した平均Mg濃度との関係において、この平均Mg濃度からの前記各Mg濃度のずれ幅の最大値が絶対値で4%以下であるとともに、この平均Mg濃度からの前記各Mg濃度のずれ幅の平均値が絶対値で0.8%以下であることを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
- 前記Mg含有量が8%を超え14% 以下である請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、前記Mg以外の元素として、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、に各々抑制した請求項1または2に記載の成形用アルミニウム合金板。
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