JP2003305503A

JP2003305503A - 高成形性アルミニウム合金板およびその製造方法

Info

Publication number: JP2003305503A
Application number: JP2002106556A
Authority: JP
Inventors: Ki Sai; ▲祺▼ 崔; Koichi Ohori; 紘一大堀
Original assignee: Mitsubishi Aluminum Co Ltd
Current assignee: MA Aluminum Corp
Priority date: 2002-04-09
Filing date: 2002-04-09
Publication date: 2003-10-28

Abstract

(57)【要約】【課題】深絞り性に優れたアルミニウム合金板およ
びその製造方法を提供する。【解決手段】通常の溶解・鋳造工程、均質化処理工
程、熱間圧延工程によって製造されたアルミニウム合金
原板を、上下ロールの周速度比が１．２〜２．０の異周
速圧延機により５０〜９５％の圧下率で異周速圧延した
後に、該アルミニウム合金の回復温度以上に加熱して焼
鈍する。得られたアルミニウム合金板は、＜１１１＞結
晶方位が板の法線方向と平行または１５度の角度差内に
ある結晶方位関係をもつ結晶粒が、面積占有率で１割以
上となる。【効果】高い成形性と優れた機械的特性を発揮する
アルミニウム合金板が得られ、深絞り成形性にも優れて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、特に＜１１１＞方
位が板の法線方向と平行する結晶方位関係をもつ結晶粒
占有率の高いアルミニウム合金板およびその製造方法に
関する。

【０００２】

【従来の技術】アルミニウム合金板の深絞り性は軟鋼板
と比べるとかなり劣ることが知られている。この原因の
一つは、ｆｃｃ結晶構造のアルミニウムでは、鋼板のよ
うに通常の圧延方法で＜１１１＞結晶方位が板の法線方
向と平行する結晶方位関係（以下＜１１１＞／／ＮＤ方
位関係と記する）をもつ結晶粒の占有率を高めることが
できないためとされている。ところで、ｆｃｃ金属の場
合、せん断変形を施すことにより、＜１１１＞／／ＮＤ
方位関係をもつ結晶粒が出現することが知られている。
これを有効に利用すれば、深絞り性を改善できる可能性
がある。一方、通常圧延法でも、板表層近傍では、板と
ロール表面との間に生じる摩擦力に起因するせん断変形
が存在するが、板厚中心層まで浸透せず、極表層近傍を
除けば、＜１１１＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒の生
成は非常に難しかった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このように、アルミニ
ウム合金板においては、＜１１１＞／／ＮＤ方位関係を
もつ結晶粒を多く生成させる製造方法は実質的にまだ確
立されていない。従って、本発明が解決しようとする課
題は、＜１１１＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒が多く
存在し、高成形性、高強度などの特性に優れたアルミニ
ウム合金板を低廉なコストで提供することである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、発明の請求項１記載の高成形性アルミニウム合金
板の製造方法の発明は、通常の溶解・鋳造工程、均質化
処理工程、熱間圧延工程によって製造されたアルミニウ
ム合金原板を、上下ロールの周速度比が１．２〜２．０
の異周速圧延機により５０〜９５％の圧下率で庄延する
異周速圧延工程で圧延した後に、該アルミニウム合金の
回復温度以上に加熱して焼鈍する焼鈍工程を行ってアル
ミニウム合金板を得ることを特徴とする。

【０００５】請求項２記載の高成形性アルミニウム合金
板の製造方法の発明は、請求項１記載の発明において、
前記アルミニウム合金板は、＜１１１＞結晶方位が板の
法線方向と平行または１５度の角度差内にある結晶方位
関係をもつ結晶粒が、面積占有率で１割以上であること
を特徴とする。

【０００６】請求項３記載の高成形性アルミニウム合金
板は、熱間圧延アルミニウム合金板を異周速圧延により
圧延し焼鈍した高成形性アルミニウム合金板であって、
＜１１１＞結晶方位が板の法線方向と平行または１５度
の角度差内にある結晶方位関係をもつ結晶粒が、面積占
有率で１割以上であることを特徴とする。

【０００７】

【作用】すなわち本発明によれば、異周速圧延工程によ
りアルミニウム合金原板に十分なせん断変形が与えられ
る。さらに上記異周速圧延後の焼鈍において材料の回復
作用を果たすことができ、上記異周速圧延で与えられた
残留歪みを回復させて＜１１１＞／／ＮＤ方位関係をも
つ結晶粒を多く生成させて、アルミニウム合金板の成形
性を向上させる。ここで、＜１１１＞結晶方位が板の法
線方向と１５度の角度差内にある結晶方位関係をもつ結
晶粒も＜１１１＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒とす
る。これらの工程を経たアルミニウム合金は高い成形性
を有しており、深絞り性にも優れている。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明では、熱間圧延材であるア
ルミニウム合金原板が用いられる。該アルミニウム合金
原板は、溶解、鋳造、熱間圧延の工程により得る。これ
らの溶解、鋳造、熱間圧延工程については、本発明とし
ては特に限定されるものではなく、常法によりこれら工
程を行うことができる。なお、本発明ではアルミニウム
合金の成分が、特定のものに限定されるものではなく、
種々のアルミニウム合金を用いることができる。

【０００９】上記アルミニウム合金板は、上下ロールの
周速度比が１．２〜２．０の異周速圧延機により５０〜
９５％の圧下率で異周速圧延することが好ましい。上下
ロールの回転周速度比が１．２より小さい場合には、充
分なせん断変形が得られ難く、このため後続焼鈍工程を
行っても＜１１１＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒の生
成は少ない。逆に、上下ロールの回転周速度比が２．０
を超えると、それ以上のせん断変形は得られず、板形状
の制御が困難となって操業に支障が生じ易くなる。した
がって異周速圧延では１．２〜２．０の周速度比で圧延
するのが望ましい。なお、異周速圧延機の構造は、本発
明としては特に限定されるものではなく、結果として上
記周速比での異周速圧延を行えるものであればよい。

【００１０】また、異周速圧延機による圧下率は５０〜
９５％の範囲とするのが好ましく、６０％〜９０％とす
るのがより好ましい。異周速圧延での圧下率が５０％未
満であると、充分な付加せん断ひずみが得られ難く、＜
１１１＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒の生成は少な
い。逆に、圧下率が９５％を越えると、圧延時に割れが
起き易く、板厚も確保し難くなる。したがって上記圧下
率が望ましいことになる。なお、上記した異周速圧延
は、熱間圧延、温間圧延、冷間圧延のいずれであっても
よい。

【００１１】さらに本発明では、上記異周速圧延後に、
焼鈍工程を行う。該焼鈍工程では、該アルミニウム合金
原板の回復温度、すなわち実質的に回復が生じる温度以
上で行うことが好ましい。焼鈍温度が回復温度より低い
と、圧延時に試料中に導入された残留ひずみが回復でき
ず、アルミニウム合金板の成形性は大幅に低下する恐れ
がある。焼鈍温度、回復温度はアルミニウム合金の成分
により定められる、また、本発明は焼鈍工程の昇温速
度、保持時間、上限温度、保持後の冷却速度などの詳細
な条件については特に規定していない。概ねの焼鈍温度
としては３００〜５８０℃が示される。

【００１２】一般には、すべてのアルミニウム合金は熱
処理型合金と非熱処理型合金の２種類に大別できる。熱
処理型合金は溶体化処理・焼入れ、時効処理によって強
度が大幅に増加するので、時効硬化型合金と呼ばれるこ
ともある。ＪＩＳ２０００系、ＪＩＳ６０００系、ＪＩ
Ｓ７０００系およびＪＩＳ４０００系とＪＩＳ８０００
系の一部はこのタイプのものである。これに対して非熱
処理型合金はいずれの熱処理を施しても強度は増加しな
い。ＪＩＳ１０００系、ＪＩＳ３０００系、ＪＩＳ５０
００系およびＪＩＳ４０００系とＪＩＳ８０００系の一
部はこのタイプのものである。本発明の請求項１の焼鈍
条件はこのような合金特徴を考慮して定めることが好ま
しい。

【００１３】例えば、熱処理型合金の場合、焼鈍工程の
条件は通常の溶体化処理条件のように設定することが好
ましい。すなわち、高温保持により溶質元素を十分固溶
させた後に析出がほとんど生じない速度で室温まで冷却
する。非熱処理型合金の場合、再結晶温度以上に加熱し
て再結晶を完了させれば良い。

【００１４】本発明によって製造されたアルミニウム合
金板は、＜１１１＞結晶方位が板の法線方向と平行また
は１５度以内の角度差にある結晶方位関係（＜１１１＞
／／ＮＤ方位関係）をもつ結晶粒の面積占有率が１割以
上であることが好ましい。この＜１１１＞／／ＮＤ方位
関係をもつ結晶粒の割合が１割より低いと、成形性改善
の効果は弱い。また、成形性向上の観点から、＜１１１
＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒の割合は高いほど良い
ので、本発明はその上限値を定めていない。しかし、現
状では単結晶を除けば、１０割まで高くすることは実質
上不可能である。

【００１５】

【実施例】以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ
説明する。通常の溶解・鋳造、均質化処理、熱間圧延工
程で製造された板厚６・５〜７．８ｍｍのＪＩＳ１０
５０、３００４、５１８２、６０６１、７Ｎ０１合金板
を表１に示す条件で１ｍｍまで異周速圧延した後に、表
２に示す条件で焼鈍または溶体化処理・焼入れを施し
た。また、比較のために、同様な合金板を用いて通常圧
延（異周速比１）による通常圧延板も作製した。

【００１６】＜１１１＞／／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒
の割合は、ＳＥＭ（ＳｃａｎｎｉｎｇＥｌｅｃｔｒｏ
ｎＭｉｃｒｏｓｃｏｐｅ、走査型電子顕微鏡）につけ
た結晶方位観察装置（通称ＥＢＳＰ（Ｅｌｅｃｔｒｏｎ
Ｂａｃｋ−Ｓｃａｔｔｅｒｄｉｆｆｒａｃｔｉｏｎ
Ｐａｔｔｅｒｎ、反射電子菊池線回折パターン））によ
って結晶粒方位を測定したデータをもとに、ＴＳＬ社製
解析ソフトＯＩＭ（商標）により求めた。また、＜１１
１＞方位をもつ結晶粒を計測する際に＜１１１＞方位か
ら１５°以内の結晶粒を＜１１１＞方位粒とした。ＥＢ
ＳＰは、軽金属学会誌５０券２０００年２月号８６頁に
「ＳＥＭ−ＥＢＳＰの使い方」としても紹介されてい
る。結晶方位の測定は、全観察領域を縦横に数万〜数十
万のポイントに分割して、１ポイントずつ行う。

【００１７】成形性は主に深絞り性によって評価した。
具体的には、８４ｍｍ径の円板を４０ｍｍ径×Ｒ８のポ
ンチと４２．５ｍｍ径×Ｒ８のダイスで深絞りし、破断
時の成形高さを評価指標とした。機械的性質は、得られ
た板材からＪＩＳ５号試験片を採取し、ＪＩＳＺ２
２４１に定めた方法による引張試験を行った。

【００１８】表３に製造された各合金板の＜１１１＞／
／ＮＤ方位関係をもつ結晶粒の割合、深絞り限界高さお
よび機械的性質の測定結果を示す。同じ合金で比べる
と、本発明の異周速圧延法で製造された合金板の深絞り
性は、通常圧延法で製造されたものより高いことが分か
る。また、機械的性質も通常圧延法で製造されたものと
同等以上に維持されている。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【表２】

【００２１】

【表３】

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の高成形性
アルミニウム合金板の製造方法によれば、通常の溶解・
鋳造工程、均質化処理工程、熱間圧延工程によって製造
されたアルミニウム合金原板を、上下ロールの周速度比
が１．２〜２．０の異周速圧延機により５０〜９５％の
圧下率で庄延する異周速圧延工程で圧延した後に、該ア
ルミニウム合金の回復温度以上に加熱して焼鈍する焼鈍
工程を行うので、アルミニウム合金板の結晶方位が制御
されて高い成形性を示す効果がある。

【００２３】特に、＜１１１＞結晶方位が板の法線方向
と平行または１５度の角度差内にある結晶方位関係をも
つ結晶粒が、面積占有率で１割以上であれば、成形性の
向上効果は顕著となり、深絞り性にも優れる効果が得ら
れる。

【００２４】本発明の成形性アルミニウム合金板は、＜
１１１＞結晶方位が板の法線方向と平行または１５度の
角度差内にある結晶方位関係をもつ結晶粒が、面積占有
率で１割以上であるので、上記のように成形性が高い特
性を有しており、その他、機械的性質にも優れている。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】通常の溶解・鋳造工程、均質化処理工
程、熱間圧延工程によって製造されたアルミニウム合金
原板を、上下ロールの周速度比が１．２〜２．０の異周
速圧延機により５０〜９５％の圧下率で庄延する異周速
圧延工程で圧延した後に、該アルミニウム合金の回復温
度以上に加熱して焼鈍する焼鈍工程を行ってアルミニウ
ム合金板を得ることを特徴とする高成形性アルミニウム
合金板の製造方法。
【請求項２】前記アルミニウム合金板は、＜１１１＞
結晶方位が板の法線方向と平行または１５度の角度差内
にある結晶方位関係をもつ結晶粒が、面積占有率で１割
以上であることを特徴とする請求項１記載の高成形性ア
ルミニウム合金板の製造方法。
【請求項３】＜１１１＞結晶方位が板の法線方向と平
行または１５度の角度差内にある結晶方位関係をもつ結
晶粒が、面積占有率で１割以上であることを特徴とする
高成形性アルミニウム合金板。