JP2001279405A - 微細な結晶粒組織を有するアルミニウム合金板の製造方法および該製造方法により得られるアルミニウム合金板 - Google Patents

微細な結晶粒組織を有するアルミニウム合金板の製造方法および該製造方法により得られるアルミニウム合金板

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Yoshi Sai
祺 崔
Koichi Ohori
紘一 大堀
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Furukawa Electric Co Ltd
Sky Aluminium Co Ltd
Kobe Steel Ltd
Nippon Light Metal Co Ltd
Sumitomo Light Metal Industries Ltd
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Mitsubishi Aluminum Co Ltd
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Sky Aluminium Co Ltd
Kobe Steel Ltd
Nippon Light Metal Co Ltd
Sumitomo Light Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のように、複雑な処理工程や、厳密な制
御を要することなく、低廉なコストで微細な結晶粒組織
を有するアルミニウム合金板を製造することを可能とす
るアルミニウム合金板の製造方法および当該方法により
得られるアルミニウム合金板を提供する。 【解決手段】 長さ方向断面の平均結晶粒径が20μm
以下のアルミニウム合金厚板を、該アルミニウム合金厚
板の回復温度以上再結晶温度未満の温度域に加熱し異周
速圧延機により圧延する工程を包含し、該製造工程によ
り平均結晶粒径3μm以下の微細結晶粒組織を有するア
ルミニウム合金板を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細な結晶粒組織
を有するアルミニウム合金板の製造方法および該製造方
法により得られるアルミニウム合金板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、輸送機器部品や電気・電子機器部
品の小型化、軽量化、高性能化の要求に対応して、部材
を薄肉化するために、優れた強度と成形性を兼ね備えた
アルミニウム合金板の開発が要請されている。この要請
を実現するための一手段として、微細化された結晶粒組
織を有するアルミニウム合金が注目されており、アルミ
ニウム合金のマトリックスを微細結晶粒組織とすること
によって、強度、成形性のみでなく、破壊靱性や、耐食
性、耐応力腐食割れ性なども向上し、超塑性が現れ易く
なるなど、優れた特性が現出する。
【0003】従来、微細な結晶粒組織を有するアルミニ
ウム合金板を製造する方法として、加工熱処理法が行わ
れている。具体的には、鋳塊の均質化処理時の遷移元素
の析出現象を応用する方法、熱間加工時の動的回復また
は再結晶現象を応用する方法、温間加工時や冷間加工時
の中間熱処理および/または加工後の熱処理時の溶質元
素の固溶、析出現象や回復、再結晶現象を応用する方法
であり、出願人らは、これらの方法についていくつかの
提案を行ってきた(特願平10−274555号、特願
平11−268599号、特願平11−27779
号)。
【0004】しかしながら、上記従来の加工熱処理方法
は、複雑な処理工程を必要とし、且つ厳密な制御が要求
されるという難点がある。とくに、合金成分としてMg
およびSiを含有する6000系のアルミニウム合金板
においては、Mg2 Si相の析出による時効硬化を得る
ためには、500℃以上の温度域での溶体化処理を行う
ことが不可欠となるから、この溶体化処理時に結晶粒が
大きく成長してしまい、例えば10μmより小さい結晶
粒組織を得ることは困難である。
【0005】再結晶の核となり得る歪みを多く導入、蓄
積させる手段として、低温圧延を行う方法も、出願人ら
により提案されている(特願平11−277777号)
が、この場合にも、圧延材の冷却のために液体窒素を使
用しなければならず、そのための付帯設備を要するため
コスト高となるとともに、圧延管理にも面倒な面が少な
くない。
【0006】微細結晶粒組織を有するアルミニウム合金
板を製造する場合における上記従来の問題点を解決する
方法として、出願人らは、さらに、上下の回転ロールの
回転周速が異なる異周速圧延機により圧延を行う方法を
提案し、とくに、10μm以下の微細な結晶粒組織を有
するAl−Mg−Si系合金板をコスト的に有利に製造
することを可能とした(特願2000−51174
号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の異周
速圧延機で圧延することによって微細結晶粒組織を有す
るアルミニウム合金板を得る方法について、さらに検討
を重ねた結果としてなされたものであり、その目的は、
3μmより小さい結晶粒組織を有し、強度、靱性、耐食
性に優れたアルミニウム合金板を、複雑な処理工程や厳
密な制御を要することなく、低廉なコストで製造する方
法および該製造方法により得られるアルミニウム合金板
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の請求項1による微細な結晶粒組織を有する
アルミニウム合金板の製造方法は、長さ方向断面の平均
結晶粒径が20μm以下のアルミニウム合金厚板を、該
アルミニウム合金厚板の回復温度以上再結晶温度未満の
温度域に加熱し異周速圧延機により圧延する工程を包含
することを特徴とする。
【0009】請求項2による微細な結晶粒組織を有する
アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1において、
前記アルミニウム合金厚板は、Mg:2.0〜6.0
%、Ti:0.1%以下、Cu:0.4%以下、Fe:
0.4%以下、Si:0.4%以下を含有し、Mn:
0.05〜1.0%およびCr:0.05〜0.25%
のうちの1種または2種を含有し、残部Alおよび不純
物からなる組成を有することを特徴とする。
【0010】請求項3による微細な結晶粒組織を有する
アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1〜2におい
て、前記異周速圧延機による圧延は、上下ロールの回転
周速度比が1.1〜1.6の異周速圧延機により50〜
90%の圧下率で行われることを特徴とする。
【0011】また、請求項4による微細な結晶粒組織を
有するアルミニウム合金板の製造方法は、請求項1〜3
において、前記異周速圧延機による圧延は、240〜3
50℃の温度域で行われることを特徴とする。
【0012】本発明の請求項5による微細な結晶粒組織
を有するアルミニウム合金板は、請求項1〜4のいずれ
かに記載の方法により製造されたアルミニウム合金板で
あって、平均結晶粒径が3μm以下であることを特徴と
する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明においては、長さ方向断面
の平均結晶粒径が20μm以下のアルミニウム合金厚板
を出発材料とする。アルミニウム合金厚板は、マトリッ
クスが結晶粒径を測定し得る結晶粒組織をそなえた厚さ
が例えば2〜4mm以上の展伸材であればよく、合金の
種類、厚板の製造方法はとくに限定されない。アルミニ
ウム合金厚板の平均結晶粒径が20μmを越えると、最
終的に平均結晶粒径3μm以下(長さ方向断面で測定)
の微細な結晶粒組織を有するアルミニウム合金板が得難
くなる。
【0014】アルミニウム合金厚板は、例えば、通常の
DC鋳造による鋳塊を熱間圧延し、または熱間圧延後冷
間圧延し、またはその後中間焼鈍し、または熱間圧延後
中間焼鈍し、またはその後冷間圧延することにより製造
することができる。連続鋳造圧延方式により作製された
厚板や、これを冷間圧延し、または冷間圧延後中間焼鈍
した厚板も対象となる。このように、アルミニウム合金
厚板が圧延工程を経て製造された場合は、アルミニウム
合金厚板の長さ方向とは圧延方向であり、圧延方向断面
の平均結晶粒径20μm以下のものを出発材料とする。
【0015】アルミニウム厚板は、上下の回転ロールの
回転周速が異なる異周速圧延機により圧延される。本発
明においては、上下ロールの回転周速度比が1.1〜
1.6の異周速圧延機により50〜90%の圧下率で圧
延するのが好ましい。なお、この圧下率は、異周速圧延
機による圧延工程のみの圧下率である。
【0016】上下ロールの回転周速度比が1.1未満で
は、充分な剪断変形が得難く、このため微細な結晶粒組
織を有するアルミニウム合金板が得難くなる。上下ロー
ルの回転周速度比が1.6を越えると、剪断変形度が飽
和してそれ以上の剪断変形が得られず、板形状の制御も
困難となって操業に支障が生じ易くなる。
【0017】異周速圧延機による圧延率が50%未満で
は、充分な付加剪断歪みが得難く、結晶粒微細化の効果
が小さくなる。例えば40%程度の場合には、結晶粒微
細化の効果がきわめて小さくなる。圧延率が90%を越
えると、圧延時に割れが生じ易くなり、板厚の確保も難
しくなる。より好ましい圧延率は、75〜85%の範囲
である。
【0018】圧延は、アルミニウム合金厚板の回復温
度、すなわちアルミニウム合金厚板に実質的に回復が生
じる温度以上で再結晶温度未満の温度域、好ましくは2
40〜350℃の温度域で行う。280〜320℃の温
度域で圧延を実施するのがさらに好ましい。圧延は、こ
の温度域内で開始し、この温度域内で終了するのが最も
望ましいが、圧延をこの温度域内で開始し、回復が実質
的に完了した場合には、圧延をこの温度域より低い温度
で終了してもよい。
【0019】圧延温度が240℃未満では、動的回復が
起こらず、微細な結晶粒組織が得難くなり、圧延温度が
350℃を越えると、再結晶が起こり、大きな結晶粒が
生成するおそれがある。
【0020】本発明は、前記のように種々のアルミニウ
ム合金に適用し得るが、Mg:2.0〜6.0%、T
i:0.1%以下(0%を除く、以下同じ)、Cu:
0.4%以下、Fe:0.4%以下、Si:0.4%以
下を含有し、さらにMn:0.05〜1.0%、Cr:
0.05〜0.25%のうちの1種または2種を含有
し、残部Alおよび不純物からなるAl−Mg系合金に
適用した場合、とくに効果的である。
【0021】上記アルミニウム合金の成分元素の意義お
よび限定理由について説明すると、Mgは、合金の強
度、靱性を向上させるよう機能する元素であり、2.0
%未満では、その効果が充分でなく、6.0%を越える
と靱性が低下する。Tiは鋳塊組織の微細化に寄与する
が、0.1%を越えて含有すると、鋳造時に粗大な化合
物が生成し易くなる。
【0022】Cu、FeおよびSiも強度を高めるよう
作用する。Cuの含有量が0.4%を越えると鋳造時に
粗大な化合物が生成し易くなり、また、耐食性が低下す
る。Feが0.4%を越えて含有すると、鋳造時に粗大
な化合物が生じ易くなる。また、Siが0.4%を越え
ると靱性の低下が生じ易くなる。
【0023】MnおよびCrは、強度を向上させ、結晶
粒の微細化にも機能する。それぞれ下限値未満では、そ
の効果が小さく、それぞれ上限を越えると鋳造時に粗大
な化合物が生じ易くなる。また、本発明においては、上
記の成分の他、アルミニウム合金中に通常含まれる0.
1%以下のZn、0.05%以下のBなどが含有してい
ても本発明の効果が害されることはない。
【0024】異周速圧延機での圧延により、例えば厚さ
1mm以下のアルミニウム合金薄板が得られる。異周速
圧延機による圧延後、アルミニウム合金板の用途に応じ
て、好ましくは250℃以下の温度で最終焼鈍を行って
もよい。焼鈍温度が250℃を越えると、焼鈍後のアル
ミニウム合金板の結晶粒径が10μm程度に大きく成長
する場合がある。
【0025】上記の工程により製造されるアルミニウム
合金板は、平均結晶粒径3μm以下のきわめて微細な結
晶粒組織を有し、改善された強度、靱性をそなえ、耐食
性にも優れたものである。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明するとともに、それに基づいてその効果を実証する。
なお、これらの実施例は、本発明の好ましい一実施態様
を説明するためのものであって、これにより本発明が制
限されるものではない。
【0027】実施例1 Mg:4.50%、Ti:0.02%、Cu:0.04
%、Fe:0.28%、Si:0.09%、Mn:0.
53%、Cr:0.09%、残部Alおよび不純物から
なる組成を有するアルミニウム合金(5083合金)の
厚板(厚さ:4mm、長さ方向断面で観察した平均結晶
粒径:12.1μm)を出発材料とし、このアルミニウ
ム合金厚板について、表1に示す条件で異周速圧延機に
よる圧延を行った。
【0028】なお、出発材料として用いたアルミニウム
合金厚板は、上記の組成のアルミニウム合金を通常のD
C鋳造により造塊し、常法に従って均質化処理、熱間圧
延、冷間圧延、中間焼鈍を行う工程を経て製造されたも
のである。
【0029】異周速圧延機により圧延されたアルミニウ
ム合金板について、長さ方向(圧延方向)断面を走査型
電子顕微鏡に取付けた解析装置(通称EBSP)により
観察し、平均結晶粒径を測定した。測定結果を表1に示
す。表1にみられるように、本発明に従う試験材No.
1〜4はいずれも、3μm以下の微細な結晶粒組織をそ
なえたものであった。
【0030】
【表1】
【0031】比較例1 実施例1と同一のアルミニウム合金厚板を出発材料と
し、このアルミニウム合金厚板について、表2に示す条
件で異周速圧延機による圧延を行い、得られたアルミニ
ウム合金板について、実施例1と同様、圧延方向断面を
走査型電子顕微鏡に取付けた解析装置(通称EBSP)
により観察し、平均結晶粒径を測定した。測定結果を表
2に示す。表2に示すように、試験材No.6〜8の平
均結晶粒径は8.7〜11.8μmと大きいものであっ
た。また、試験材No.5は、結晶粒が非常に細長い形
状を呈するものであり、粒径の測定ができなかった。
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、微細な
結晶粒組織をそなえたアルミニウム合金板を得るための
従来の方法のように、複雑な処理工程や、厳密な制御を
要することなく、低廉なコストで微細な結晶粒組織を有
するアルミニウム合金板を製造することが可能となる。
【0034】本発明により得られるアルミニウム合金板
は、平均結晶粒径が3μm以下のきわめて微細な組織を
そなえ、強度、靱性が高く、耐食性にも優れたものとな
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 630 C22F 1/00 630A 630K 685 685A 694 694A 694B 694Z (71)出願人 000004743 日本軽金属株式会社 東京都品川区東品川二丁目2番20号 (71)出願人 000005290 古河電気工業株式会社 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 (71)出願人 000176707 三菱アルミニウム株式会社 東京都港区芝2丁目3番3号 (72)発明者 崔 祺 静岡県裾野市平松85番地 三菱アルミニウ ム株式会社技術開発センター内 (72)発明者 大堀 紘一 静岡県裾野市平松85番地 三菱アルミニウ ム株式会社技術開発センター内 Fターム(参考) 4E002 AA08 AD05 AD06 BB11 BB16 BC05 BC07 CA08 CB01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長さ方向断面の平均結晶粒径が20μm
    以下のアルミニウム合金厚板を、該アルミニウム合金厚
    板の回復温度以上再結晶温度未満の温度域に加熱し異周
    速圧延機により圧延する工程を包含することを特徴とす
    る微細な結晶粒組織を有するアルミニウム合金板の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金厚板は、Mg:
    2.0〜6.0%(質量%、以下同じ)、Ti:0.1
    %以下、Cu:0.4%以下、Fe:0.4%以下、S
    i:0.4%以下を含有し、Mn:0.05〜1.0%
    およびCr:0.05〜0.25%のうちの1種または
    2種を含有し、残部Alおよび不純物からなる組成を有
    することを特徴とする請求項1記載の微細な結晶粒組織
    を有するアルミニウム合金板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記異周速圧延機による圧延は、上下ロ
    ールの回転周速度比が1.1〜1.6の異周速圧延機に
    より50〜90%の圧下率で行われることを特徴とする
    請求項1または2記載の微細な結晶粒組織を有するアル
    ミニウム合金板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記異周速圧延機による圧延は、240
    〜350℃の温度域で行われることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載の微細な結晶粒組織を有するア
    ルミニウム合金板の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の方法に
    より製造されたアルミニウム合金板であって、平均結晶
    粒径が3μm以下であることを特徴とする微細な結晶粒
    組織を有するアルミニウム合金板。
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