以下、本発明の好適な実施形態に関し説明する。本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば、以下の説明から、本発明の各種目的及び効果をより鮮明に理解できるであろう。また、以下の説明では、本発明の実施形態を示した図面を参照する。別紙図面に記載したのは本発明の一実施形態であり、本発明には図示の構成以外にも様々な実施形態があり得る。従って、本発明の技術的範囲を判断される際には、別紙特許請求の範囲を参照されたい。
なお、これらの図面は実物を均等縮小したものとは限らない。
一般に知られているサーマルプリンタと同様、本発明に係るサーマルプリンタも、ウェブ状のダイドナー媒体を用いて実施することができる。このウェブ状ダイドナー媒体は、通常、三原色(例えばYMCの三色)各1個ずつ有色部/カラーパッチを組にして繰り返し複数組配されたカラーパッチ群を有している。また、Cカラーパッチの後に透明オーバコートパッチが配される場合もある。
サーマルプリンタを用いてカラー画像を作成する際には、ウェブ状ダイドナー媒体上に組をなし配されているカラーパッチ群のうち同じ組に属するCカラーパッチ、Mカラーパッチ及びYカラーパッチのカラーダイそれぞれを、順次、例えば拡散や昇華によってシート状ダイ受容媒体上に互いに重なり合うように熱転写していく。その後、カラー画像印刷物上に更に透明オーバコートパッチから透明オーバコートを堆積させることもできる。各カラーパッチからシート状受容媒体へのダイ転写は、サーマルプリントヘッド上の指定されたヒータ素子/記録素子のビーズにより、カラーパッチを横切るライン上の複数個の画素について一遍に、行われる。このとき、ヒータ素子ビーズはウェブ状ドナー媒体の全幅に亘りライン状に接触するが、そのうちそのラインにて実際に使用するヒータ素子群だけを、カラーダイをシート状受容媒体に十分転写できる程に発熱させる。シート状受容媒体上に形成される画素の濃度(暗さ)レベルは、対応するヒータ素子をどの程度の温度まで昇温させたかにより比例的に決まる。即ち、ヒータ素子の温度が高ければ高い程、対応する画素の濃度レベル(又は少なくともその色についてのカラーダイ転写量)が増す。なお、ヒータ素子動作モードには様々なモードがあり、それらについては先に1988年5月17日付で発行された米国特許に係る特許文献3に記載がある。
次に、サーマルプリンタを用いた既知のカラー印刷物作成プロセスがどのようなプロセスであるかについて、例示説明する。本発明の動作のうち、有色ダイドナーパッチに相応する寸法を有する印刷物を作成する動作については、次に述べるプロセスから理解することができるであろう。
1.まず、ウェブ状ドナー媒体とシート状ダイ受容媒体を一緒に先送りする。このとき、ウェブ状ドナー媒体上のあるYカラーパッチと、シート状受容媒体とが固定位置にあるヒータ素子ビーズ上で接触し、細長い接触領域が生じ続けるように動かす。これは、Yカラーパッチからシート状受容媒体へとライン単位でYダイを転写するためである。更に、ウェブ巻き取りスプールは、ヒータ素子ビーズ上のウェブ状ドナー媒体を前方に引っ張り、ピンチローラドライブローラ対は、ヒータ素子ビーズ上のシート状ダイ受容媒体を先送りし、プラテンローラは、シート状ダイ受容媒体とウェブ状ドナー媒体の位置関係を、ヒータ素子ビーズの位置にてシート状ダイ受容媒体がウェブ状ドナー媒体からダイを受け取れるような関係に保持する。
2.Yダイ転写が終了したら、プラテンローラを引っ込めてプリントヘッドから遠ざける(或いはプリントヘッドを動かしてプラテンローラから遠ざける;以下同様)。そうした上で、ピンチローラドライブローラ対によってシート状ダイ受容媒体を引き戻し、次の動作即ちヒータ素子ビーズ上に再度通す動作に備える。
3.それが済んだら、プラテンローラを再びプリントヘッドに寄せ、ウェブ状ダイドナー媒体とシート状受容媒体一緒に先送りする。このとき、そのウェブ状ドナー媒体上のあるMカラーパッチと、シート状受容媒体とがヒータ素子ビーズ上で接触し、細長い接触領域が生じ続けるように動かす。これは、そのMカラーパッチからそのシート状受容媒体へとライン単位でMダイを転写するためである。シート状受容媒体上におけるMダイ転写先は、同じシート状受容媒体上で先にYダイを転写した領域と厳密に同じ領域内になるようにし、Yダイが転写された画素位置と同じ画素位置にMダイが転写されるようにする。周知の通り、同一の画素位置にMダイとYダイとを堆積することで別の色を作成することができる。大抵の場合、MダイはYダイ上に直に堆積させればよい。
4.Mダイ転写が終了したら、プラテンローラを引っ込めてプリントヘッドから遠ざける。そうした上で、ピンチローラドライブローラ対によってシート状ダイ受容媒体を引き戻し、次の動作即ちヒータ素子ビーズ上に通す三度目の動作に備える。
5.それが済んだら、プラテンローラを再びプリントヘッドに寄せ、ウェブ状ドナー媒体とシート状受容媒体を一緒に先送りする。このとき、そのウェブ状ドナー媒体上のあるCカラーパッチと、シート状受容媒体とがヒータ素子ビーズ上で接触し、細長い接触領域が生じ続けるように動かす。これは、そのCカラーパッチからそのシート状受容媒体へとライン単位でCダイを転写するためである。シート状受容媒体上におけるCダイ転写先は、同じシート状受容媒体上で先にYダイ及びMダイを転写した領域と厳密に同じ領域内になるようにし、Yダイ及びMダイが転写された画素位置と同じ画素位置にCダイが転写されるようにする。周知の通り、同一の画素位置にCダイとMダイ又はYダイとを堆積させて別の色を作成することができる。大抵の場合、CダイはYダイ上、Mダイ上又はCダイMダイ併存画素位置上に直に堆積させればよい。
6.Cダイ転写が終了したら、プラテンローラを引っ込めてプリントヘッドから遠ざける。そうした上で、ピンチローラドライブローラ対によってシート状ダイ受容媒体を引き戻し、次の動作即ちプリンタから排出する動作に備える。
7.それが済んだら、ピンチローラドライブローラ対によってシート状ダイ受容媒体を先送りし排出トレイへと送り出す。
クアッド単位で組にされたパッチを用いてシート状受容媒体上に透明オーバコートを設ける場合は、ダイ受容媒体を排出トレイに送り出すのに先立ち、もう一工程実行する。その工程においては、透明オーバコートパッチをプリントヘッドとシート状受容媒体の間に位置決めし、プリントヘッド素子を然るべく発熱させて、透明パネルを有するパッチから透明素材を転写させる。
図1にフルカラー(通常は三色)サーマルプリンタ20を模式的に示す。この図に示すサーマルプリンタ20は従来技術に属するものであるが、本願による教示に基づきこれを変形することにより、本発明を実施することができる。このサーマルプリンタ20は、プリントヘッド22と、受容媒体(印刷媒体)28を移送するための移送プラテン24及びクランピングローラ26と、フィルム状ダイドナー媒体34用の巻き取りスプール30及び送り出しスプール32と、フィルム状ダイドナー媒体34用のドライブローラ36及びクランピングローラ38と、プリンタコントローラ40と、第1モータ42及び第2モータ44とを、備えている。モータ42は従来型のステッパモータでよく、モータ44は従来型のトルク制御モータでよい。フィルム状ダイドナー媒体34は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)製の透明フィルム上を、繰り返し現れる複数組のダイドナーパッチにより被覆した構成を有している。それらダイドナーパッチのうち符号50で表されているのはYカラーパッチ、52で表されているのはMカラーパッチ、54で表されているのはCカラーパッチである。サーマルプリントヘッド22は、印刷時メインスキャン方向(ファーストスキャン方向ともいう)に沿って一列に並ぶように配置された一組のヒータ素子を備えている。受容媒体28及びフィルム状ダイドナー媒体34は、印刷時には、ライン単位で漸増的に、スロースキャン方向(印刷方向ともいう)に沿って動かされる。
プリンタコントローラ40の第1出力端はモータ42に、第2出力端はモータ44に、第3出力端はプリントヘッド22に、それぞれ接続されている。モータ42は移送プラテン24を回転させて受容媒体28を先送りし、モータ44はドライブローラ36を回転させてフィルム状又はリボン状ダイドナー媒体34を先送りする。
サーマルプリンタ20は、動作時にはプリンタコントローラ40からの指令の許に機能する。プリンタコントローラ40はマイクロプロセッサをベースとした制御システムであり、従来と同様の画像データ源15例えばコンピュータ、ワークステーション、ディジタルカメラ等のディジタルデータ源から画像データ信号を受け取って、その画像データに基づきプリントヘッド22に対する指令を生成する。プリンタコントローラ40は、更に、サーマルプリンタ20内に設けられている図示しない各種従来型検知器から信号を受け取るため、入力端16を有している。それらの検知器から供給されるのはルーチン管理情報、例えば受容媒体28の位置、フィルム状ダイドナー媒体34の位置、印刷サイクルの開始及び終了等を示す情報である。プリンタコントローラ40は、こうした情報に基づき、モータ42及び44に対する動作指令信号を生成する。
プリントヘッド22は、選択的発熱動作によって印刷動作、即ちフィルム状ダイドナー媒体34から受容媒体28上へのダイのスポット群の転写を実行する。なお、サーマル印刷におけるダイ堆積システムは従来周知であり、上にはその一例を述べたに過ぎない。フルカラー画像を生成するには、所定のトライアードに属するYMC三色のダイを順繰りに使用し、三種類の個別画像を互いに重ね合わせて堆積させる必要がある。
図1に示したサーマルプリンタ20の構成乃至機能のうち幾つかを説明するため、図2に、フィルム状ダイドナー媒体34(部分)と受容媒体28との一連の相対的位置関係を模式的に示す。図中に示されているフィルム状ダイドナー媒体34(部分)の様々な位置A〜Fは、それぞれ、所望画像の各部を印刷するに当たり受容媒体28に対しフィルム状ダイドナー媒体34をどのような位置関係にするのかを、示している。
ダイドナーパッチ50、52及び54は写真プロセスによってフィルム状ダイドナー媒体34上に被着形成されており、各ダイドナーパッチ50,52,54の長さLpは、このサーマルプリンタ20によって作成される標準的な印刷物の規格寸法に基づき、予め定められている。フィルム状ダイドナー媒体34には、YMC各色のダイドナーパッチ50、52及び54が組をなし、各色が順繰りに現れるように設けられている。ダイドナーパッチ50、52及び54は、フィルム状ダイドナー媒体34に設けられている転写不能な無色分離帯34aによって相互分離されている。サーマルプリンタ20によって作成する印刷物の規格寸法が3.5×5インチであるなら、プリントヘッド22の長さ及びパッチ上印刷素材全幅を5インチとし、各パッチの長さLpを3.5インチか又はそれより若干長い程度とする。このような寸法設定下では、受容媒体28の辺のうち短い方の辺がスロースキャン方向に向き長い方の辺がファーストスキャン方向に向くので、スロースキャン方向に沿って受容媒体28を動かしながら印刷を行うことで、印刷物生産性をより高水準にすることができる。
明白なことであるが、大判印刷物作成時には大きな受容媒体28を使用する。例えば5×7インチ寸法の印刷物を作成するときに使用する受容媒体28の規格寸法は、上に例示した受容媒体28の規格寸法の2倍とする。図2に示したのは従来技術による大判印刷物作成手法であり、これは本発明と共通する部分を有している。図中の受容媒体28の長さLr即ちスロースキャン方向の寸法は、フィルム状ダイドナー媒体34上のダイドナーパッチ50、52及び54の長さLpより大きい。この受容媒体28は、領域R1と領域R2とに区分されており、領域R1及びR2それぞれの長さはダイドナーパッチ50、52及び54の1個分の長さLp以下であり、領域R1及びR2のうち図中破線と破線で挟まれている部分は両領域が部分的に重なり合う重複領域である。図中のD1は、領域R1と領域R2の重複領域の寸法を表している。
通常の印刷サイクルにおいては、まず図1中のプリンタコントローラ40から同図中のモータ42に対して、受容媒体28を印刷開始位置まで進めよとの指示を発する。通常、この印刷開始位置は、図示しない光源から発せられた光を検知する図示しないセンサの位置によって決まる。印刷開始位置、即ち光源からの光が受容媒体28の先端辺により遮られてセンサで検知できなくなる位置まで受容媒体28を進めたら、モータ42によってそこから更に所定ステップ分だけ受容媒体28を先送りし、他方で図1中のモータ44によってフィルム状ダイドナー媒体34を先に進めて位置Aとする。図2に模式的に示されているように、位置Aにおいては、Yダイドナーパッチ50のうち先頭にあるものの先端辺位置が、受容媒体28の先端辺の直近にある。受容媒体28及びフィルム状ダイドナー媒体34がこの状態になったら最初のラインの印刷に取りかかり、以降の印刷はライン単位で行う。即ち、あるラインを印刷したらモータ42によって受容媒体28及びフィルム状ダイドナー媒体34を所定増分距離だけ先に進めて次のラインの印刷に取りかかる、という手順を繰り返していく。
受容媒体28及びフィルム状ダイドナー媒体34をモータ42によって所定増分距離ずつ先に進める動作は、受容媒体28の第1領域R1上への第1色(Y)画像の印刷中、継続的に実行する。その間、フィルム状ダイドナー媒体34は、ローラ36及び38並びにモータ44によって、一定の張力で引っ張っておく。第1色画像を印刷し終えたら、モータ42により移送プラテン24を反時計方向に逆転させ、受容媒体28の先端辺を印刷開始位置より前の位置まで引き戻す。次いで、モータ42を前進方向即ち時計方向に回転駆動させて受容媒体28の先端辺を第2色画像印刷開始位置まで進める一方、モータ44によってフィルム状ダイドナー媒体34を先に進めて位置Bとする。位置Bにおいては、Mダイドナーパッチ52のうち先頭のものの先端辺が、受容媒体28の直近にある。次いで印刷プロセスを繰り返すことによって受容媒体28の第1領域R1上に第2色(M)画像を印刷する。受容媒体28の第1領域R1上への第3色(C)画像も、位置Cから同様にして行う。
三色(YMC)画像印刷が終わった段階で受容媒体28の第1領域R1上に印刷されているのは、各色画像の合成によるフルカラーサブ画像である。以下、この画像のことを第1サブ画像と呼ぶ。
領域R1内に第1サブ画像が印刷されたら、その先端辺を印刷開始位置まで引き戻した上で受容媒体28を先に進めて、受容媒体28上の領域R2の先端辺の位置をプリントヘッド22の位置に合わせる。次いで、Yダイドナーパッチ50のうち2個目のものの先端辺をプリントヘッド22の位置まで進める。この時点での受容媒体28とフィルム状ダイドナー媒体34の相対的位置関係は、図中、位置Dとして示されている。
この状態に達したら、領域R2内に第2サブ画像のうち第1色(Y)を印刷する動作を開始する。第2サブ画像印刷開始位置は第1サブ画像印刷済領域内にある。本発明の好適な実施形態に係るサーマルプリンタ20においては、第2サブ画像印刷開始位置に印刷されているのは、第1サブ画像を構成する画素の成分である。言い換えれば、受容媒体28のうち領域R1と領域R2の重複領域上にある同一位置にて、第1サブ画像の成分と第2サブ画像の成分とが重ね合わされる。
残りの二色即ちM及びCについてもこれと同様のプロセスをそれぞれ実行する(位置E及びF参照)。それによって、三色分のダイが堆積して第2サブ画像が印刷され、受容媒体28上には第1サブ画像との合成画像が完成する。なお、視認できるような問題のない画像を形成するには、第1サブ画像と第2サブ画像の位置一致精度を高くする必要がある。
なお、先に掲げた従来技術においては、サブ画像間にはある程度の位置ずれが生じるものと認めた上で、位置ずれが肉眼で捉えられないようにするためにある種の工程を実施していた。即ち、境界ラインからそのラインまでの距離に応じて決めた確率に従い、そのラインの各構成部分に対して画像データを割り当てていた。例えば、第1カラーダイパッチトライアードを用いて印刷を行う際には、重複領域内にあるラインのうち最初のラインについては100%の印刷対象画素数比率を、また後続の各ラインについてはそのラインより前のラインより低い印刷対象画素数比率を、各ラインに持たせていた。そのラインの構成部分のうちどの構成部分をブランクのままにするかは、プリンタコントローラ40がランダムに指定していた。第2カラーダイパッチトライアードを用い重複領域内を印刷する際には、重複領域に係るデータフィールドのうち、第1カラーダイパッチトライアード使用印刷時に使用したデータフィールド中のブランクエリアに対応するデータフィールドに、画像データを割り当てていた。
図3に、本発明にて使用できるサーマルプリントヘッド22の構成を模式的に示す。図中、符号R1〜R1536により示されているのは、サーマルヘッド22に組み込まれている印刷用の1536個のヒータ素子である。これらサーマルヒータ素子R1〜R1536は、通電に応じて発熱する抵抗器によってそれぞれ構成されており、サーマルプリントヘッド22上で一列に並べられている。サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536の配置ラインはメインスキャン方向を向いており、従って用紙送給方向であるスロースキャン方向とは直交している。サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536として設けられている各抵抗器の一端は、電源電圧VHを供給するラインに共通接続されている。
符号Rphで表されているのは用紙28を予熱するヒータであり、これは必須の部材ではない。図中、スイッチSWphは機械式のスイッチであるかのように図示されているが、実際にはトランジスタスイッチとして構成するのが望ましい。このスイッチSWphは予熱用ヒータに対する電流供給を制御する。予熱用ヒータRph及びスイッチSWphは電源VHと電源VLとの間に直列接続されている。なお、予熱用ヒータについては、Sugiyama et al.名義の米国出願に係る特許文献4に記載がある。
符号DR1〜DR24で表されているのはサーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536を駆動するプリンタドライバであり、それぞれICによって構成されている。プリンタドライバDR1〜DR24は、それぞれ、サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536のうち64個ずつを担当している。24×64=1536であるので、24個のプリンタドライバDR1〜DR24によって合計1536個のヒータ素子R1〜R1536を駆動することができる。
これら24個のプリンタドライバDR1〜DR24は、印刷データ/画像データ信号DATA0〜DATA7を各プリンタドライバからその後段のプリンタドライバへとシフトしていくことができるよう、データラインを介してカスケード接続されており、このシフト動作によってプリンタドライバDR1〜DR24に1ライン分の印刷データを送り込むことができる。また、プリンタドライバDR1〜DR24には、対応するサーマルヘッドヒータ素子に対する通電動作を制御できるよう、スイッチが内蔵されている。サーマルヘッドヒータ素子としてはR1〜R1356の1536個が設けられているので、プリンタドライバDR1〜DR24内には合計で1536個のスイッチSW1〜SW1536がある(図4参照)。先にも注記したことであるが、図では機械式スイッチとして模式的に描かれているけれども、これらのスイッチSW1〜SW1536もトランジスタ制御型とするのが望ましい。
プリンタドライバDR1〜DR24への印刷データDATA0〜DATA7の供給に使用される端子は、例えば、それぞれプルダウン抵抗器PR0〜PR7のうち何れかを介して接地端子GNDLに接続される。
図4に示されているスイッチSW1〜SW1536は、各プリンタドライバが64個のスイッチを内蔵することとなるように、プリンタドライバDR1〜DR24内に設けられている。また、サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1356にはそれぞれスイッチSW1〜SW1536のうち対応する1個が直列接続されている。サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1356及びスイッチSW1〜SW1536の対応するもの同士の直列接続体は、電源VHの正端子と負端子(接地GNDH)の間に接続されている。こうした構成の回路においては、スイッチSW1〜SW1536を選択的にターンオンさせることによって、サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1356のうち対応するヒータ素子Rを選択的に電源電圧VHに接続することができる。選ばれて電源電圧VHに接続されたヒータ素子Rの発熱動作はそのヒータ素子Rをイネーブリングする信号によって制御され、またその発熱量はイネーブリング期間によって制御される。サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1356は、各ライン周期にてこのような制御を行うことができるように、接続されている。即ち、1536個設けられているサーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536の何れも、1536個設けられているスイッチSW1〜SW1536のうち対応するものを閉じることにより、選択的にターンオンさせ発熱させることができる。この発熱によってダイが各カラーパッチから受容媒体へと昇華乃至拡散するため、対応するスイッチがターンオンしているヒータ素子Rによってカラースポット/画素が形成されることになる。
ご理解頂けようが、上に示した個数等の数字は一例に過ぎない。例えば、集積度を更に高くし、数千個のスイッチを含むドライバ回路全体を単一の集積回路内に組み込むこともできる。
図5に、各種制御信号及び印刷データ信号を発生させる回路即ちプリンタコントローラ40の回路構成を示す。図中符号100で表されているのはストローブパルステーブルであり、このストローブパルステーブル100によって高レベルストローブ信号HLSTRのパルスパターンが定められている。高レベルストローブ信号HLSTRは、サーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536に対する通電制御を実行する際、基準信号として使用される。また、この通電制御は印刷モードに応じ実行される。即ち、ストローブパルステーブル100は、Y、M及びC(カラーパッチクアッドを使用する場合には更に透明オーバコート)のうち何れかの色を用いた印刷のモードについて、印刷モード信号MODEによる指定を受け、これに応じてパルスパターンを出力する。長尺画像印刷モードにおいては、後に詳述するように印刷するラインの番号(ライン番号)に応じて印刷モード信号MODEも変化する。
符号101で表されているのは各種制御信号を発生させるサーマルヘッドヒータ素子制御信号発生器である。発生させる制御信号には、イネーブル信号ENBb、ロード信号LOADb、セット信号SETb、高レベルストローブ信号HLSTR、低レベルストローブ信号LLSTR及びクロック信号DCLKが含まれている。ストローブパルステーブル100はこのサーマルヘッドヒータ素子制御信号発生器101に内蔵させることができる。ストローブパルステーブル100は、サーマルヘッドヒータ素子制御信号発生器101における信号発生手段、即ち基準信号たる高レベルストローブ信号HLSTRを発生させサーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536への通電を制御する手段となる。この信号発生及び通電制御動作は、印刷色が個々に設定されている複数の印刷モードから選択された印刷モードに従い、実行される。
符号102で表されているのは変換係数テーブルであり、この変換係数テーブル102によって与えられる変換係数は、印刷対象たる画像データPDATAについてグラデーション変換処理を実行する際に使用される。符号103で表されているのは内部グラデーション変換器であり、この内部グラデーション変換器103は、画像データ源15から入力される8ビット画像データPDATAを、変換係数に含まれる各種補正データによって、10ビットの内部グラデーションデータに変換する。補正データは例えば記録素子R間不均一性/ばらつきを補正するのに使用される。例えば、工場段階で予め作成されている校正データの一部を、そのための補正データとして使用することができる。この補正は周知手法に従って行うことができる。符号104で表されているのは、変換により得られた内部グラデーションデータを一時記憶するヘッドデータバッファである。符号105で表されているのはヘッドデータ変換器であり、このヘッドデータ変換器105は、ヘッドデータバッファ104内に記憶されている10ビットの内部グラデーションデータを8ビットの印刷データDATA0〜DATA7に変換し、プリンタドライバDR1〜DR24に送る。ご理解頂けようが、各画素の印刷に使用するデータビット数を8ビットより多くすることもまた少なくすることもできる。
マイクロコンピュータ90は、各種モータの他、プリンタコントローラ40内の各種発生器、変換器及びテーブルを制御する。それらはマイクロコンピュータ90上に集積してもよいし、別体の集積回路部品として構成してもよい。マイクロコンピュータ90に対して適当なプログラミングを施せば、必要に応じ様々な信号を発生させることができる。このプログラミングは、通常のプログラミング能力があれば行える。
図6に示すように、IC化されているプリンタドライバDR1〜DR24はそれぞれ露出時間カウンタ200を内蔵している。露出時間カウンタ200は、記録素子R(図4中のサーマルヘッドヒータ素子R1〜R1536)それぞれに対応して設けられ、その記録素子Rに接続されている。また、露出時間カウンタ200の入力端には、印刷データDATA0〜DATA7に係るデータラインが接続されている。ロード信号LOADbが発生すると、データライン上の画像データ信号DATA0〜DATA7によって与えられる計数目標値が、露出時間カウンタ200内の第1レジスタに格納される。セット信号SETbが発生したら、第1レジスタ内の計数目標値は、第2レジスタ内の計数値、即ちクロックラインから入力されるクロック信号DCLKを計数した値と比較される。クロック信号DCLKが計数されると第2レジスタ内の計数値はインクリメントされいくので、いずれ第1レジスタ内の計数目標値と実質的に等しくなる。両者が実質的に等しくなると、ANDゲート210への入力ライン上に露出時間カウンタ出力信号ECOが出力される。ANDゲート210に入力される信号には他にストローブ信号HLSTR及びLLSTRがある。これらを含め、ANDゲート210への入力信号全てが論理的にハイである場合、対応するヒータスイッチ215(図4中のスイッチSW1〜SW1536のうち1個)が閉じられ、対応するヒータ抵抗素子Rに通電してそれを発熱させる。
図7Aに、画像データ記録制御に用いられる波形の例、特に高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比をデータ転送期間の終期からの遅延時間Xによって変える例を示す。まず、プリンタドライバDR1〜DR24内におけるデータ伝送・ラッチ制御は、周知の如く、データ転送信号群DCLK、SETb及びLOADbを利用して行われている。データ転送信号により与えられるデータ転送期間は十分長く、このデータ転送期間中に全ての計数目標値レジスタに印刷データDATA0〜DATA7をシリアル転送することができる。これによって、各計数目標値レジスタ内には、個々のデータについての計数目標値、即ち現在のライン周期にてその記録素子がその画像データの記録を開始する時刻を表す計数目標値が、ロードされる。このデータ転送期間が終わってから高レベルストローブ信号HLSTRの発生までの間には遅延時間があり、この遅延時間の長さによって露出期間デューティ比が決まる。3.5インチ長印刷物作成モードにおいては、ライン1〜1006から構成されるデータに基づきライン1〜1006から構成される印刷物を作成する際、デューティ比を90%で一定にする(即ちX=0とする)。また、大判画像作成モード例えば7インチ印刷物モードにおいては、第1カラーパッチトライアード使用印刷時、ライン1〜922についてはデューティ比を90%で一定にし、その後のライン923〜1006についてはデューティ比を徐々に(好ましくは直線的に)減らしていく。90%のデューティ比を有する高レベルストローブ信号HLSTR230を図8に、その高レベルストローブ信号HLSTR230の個別組成を図10に、それぞれ示す。高レベルストローブ信号HLSTRは、図10に示す通り一群の低レベルストローブ信号LLSTR240から構成される信号とし、或いはそれらの低レベルストローブ信号LLSTR240を実質的に包絡する信号とする。本実施形態では、低レベルストローブ信号LLSTR240のデューティ比を全ての印刷対象ラインについて一定とし(例えば図10に示した例では60%に固定し)、ラインによって変えるのは高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比だけとしている。例えば低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比が60%であり、そのパルス周期が45μsecであるならば、パルスオン期間は27μsecとなる。90%のデューティ比を有する単一の高レベルストローブ信号HLSTRの中には、パルス状の低レベルストローブ信号LLSTRが数百個程も包含乃至包絡され得る。
重複領域に属するライン923〜1006を第1カラーパッチトライアードを用いて記録する際には、高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比を、図11に示すようにライン番号に応じて直線的に小さくしていく。すると、単一の高レベルストローブ信号HLSTRに包含乃至包絡される低レベルストローブ信号LLSTRの個数も、ライン番号に応じて直線的に減っていく。これは、本実施形態では低レベルストローブ信号LLSTRの周期及びデューティ比がどのラインでも同じであるためである。
大判画像印刷時には第2カラーパッチトライアードも使用される。第2カラーパッチトライアード使用印刷時には、高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比を、ライン1〜922については0%とし、ライン923〜1006を含む重複領域においてはライン番号に応じて直線的に大きくしていく。従って、重複領域内においては、単一の高レベルストローブ信号HLSTRに包含乃至包絡される低レベルストローブ信号LLSTRの個数が、ライン番号に応じて直線的に増えていく。これもまた、本実施形態における低レベルストローブ信号LLSTRの周期及びデューティ比がどのラインでも同じであるためである。
図7Bに、第2カラーパッチトライアードにより重複領域内ラインを記録する際の信号例を示す。同じ記録素子Rにより印刷される同じ番号のラインであれば、その記録素子に対応する露出時間カウンタ200への入力内容は、第1カラーパッチトライアード使用印刷時でも第2カラーパッチトライアード使用印刷時でも変わりがない。第1カラーパッチトライアード使用印刷時と違っているのは、データ転送期間終了後に遅延時間がないことと、高レベルストローブ信号HLSTRの継続時間が第1カラーパッチトライアード使用印刷時の継続時間(第1カラーパッチトライアードに属する同じ色のカラーパッチで同じラインを印刷したときの継続時間)に対して相補的であることである。「相補的」とは、第1カラーパッチトライアードのうち例えばCカラーパッチを用いてあるラインを印刷したときの高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比が90−Xである場合に、第2カラーパッチトライアードに属する同色(例えばC)のカラーパッチを用いて同じラインを印刷する際の高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比をXとする、という意味である。従って、デューティ比Xが先のデューティ比90−Xに比べかなり小さくなると、図7Bから看取できるように、高レベルストローブ信号HLSTRとの論理積演算により決まるヒータ素子オン期間も相応に短くなる。
図15に、トライアード2個分のカラーパッチを用いまたプリントヘッド22により本発明に係る大判記録モードを実行することによって、シート状受容媒体28上に形成された3個の画素を示す。簡明化のため、ここでは、これら三箇所全てにC画素を形成した場合、特に同じ濃度レベル例えば128のC画素を形成した場合を考えている。ご理解頂きたいことに、ここで示した128という値は例えば0〜255の範囲のうちの一例に過ぎない。即ち、プリントヘッド22によって印刷される画素のグレーレベルは記録するデータに応じて0〜255の範囲内で決まるのであって、0〜255のグレーレベル範囲内であれば何れの値とすることもできる。図示されているこれらの画素のうち、符号300で表されている画素は、第1トライアードカラーパッチのうちCカラーパッチ54だけを用いてライン1〜922を含む領域内に形成されている。この画素300を形成する際には、プリントヘッド22上の対応する記録素子Rを、所定のデューティ比例えば90%のデューティ比を有する高レベルストローブ信号HLSTRにより駆動する。先に注記したように、この高レベルストローブ信号HLSTRは、そのデューティ比が60%である一群の低レベルストローブ信号LLSTRを包含乃至包絡している。画素300を形成する際の通電期間の長さは、その色でこの画素位置にどの程度の濃度で印刷を行いたいかにより変わる。画素300を形成する際は第2トライアードカラーパッチを使用しない。
重複領域内にある画素例えば画素305を形成する際には、この画素305の画素成分が第1トライアードのCカラーパッチ54により印刷され、これに引き続いてこの画素305の他の画素成分が第2トライアードのCカラーパッチ54により印刷されるように、プリントヘッド22の記録素子Rを動作させる。画素成分とは画素305に対する各トライアードの濃度的寄与分(portion in terms of density of the pixel)のことであり、各画素成分の濃度をどの程度にするか、即ち画素305の濃度のうちどの程度までを第1トライアードカラーパッチにより実現しどの程度までを第2トライアードカラーパッチにより実現するのかは、その画素305が属するラインの番号によって変わる。この例ではライン923〜1006の範囲を重複領域として定義してあるので、画素305がライン923に近いライン上にある場合は、ライン923から遠いライン上にある場合に比べて、画素305に対する第1トライアードカラーパッチの濃度的寄与分が大きくなり、従って第2トライアードカラーパッチからのダイ転写量が少なくなる。
図16に示すように、画素305が属するラインが下から1006に近づくにつれて、画素305に対する第1トライアードカラーパッチからの濃度的寄与分が減っていき、これを補うように第2トライアードに属する同色のカラーパッチからのダイ転写量が多くなっていく。重複領域においてこのような現象が発生するのは、第1トライアードカラーパッチ使用中も第2トライアードカラーパッチ使用中も、高レベルストローブ信号HLSTRをライン毎に変化させて印刷を行っているためである。また、画素305の形成は2個のカラーパッチを用い2回に分けて行われているが、画素305の形成に寄与する低レベルストローブ信号LLSTRの個数は画素300を形成するときのそれと概ね同じになり、従って画素305も画素300と同じ濃度例えば128になる。
シート状受容媒体28上の非重複領域のうちライン1007〜2001に属する画素例えば図15中の画素310は、第2トライアードのCカラーパッチ54だけで完全に形成される。第1トライアードカラーパッチからの寄与は受けない。
注記すべきことに、以上の例における重複領域は、印刷物の中心を通らないように意図的に設定されている。これは、単一トライアードカラーパッチで画素形成した場合に比べ重複領域内画素形成がややうまくいかない可能性があること、従って重複領域を印刷物の中央におかないようにすることが望ましいこと、による。また、この例における重複領域のシート状受容媒体先送り方向長さは、およそ0.25インチより僅かに長い。
図12〜図14に本発明の第2実施形態を示す。本実施形態は、重複領域内でヒータ素子Rを動作させる際の高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比を非重複領域内でのそれと同じ90%に保つようにする一方(図12参照)、低レベルストローブ信号LLSTRをライン毎に直線的に改変していくこととした実施形態である。非重複領域における低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比は60%であり、第1トライアードカラーパッチ使用印刷時は、ライン1006で0になるよう低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比を小さくしていく。なお、図13に示したのは非重複領域で使用されるデューティ比60%の低レベルストローブ信号LLSTRであり、図14に示したのはデューティ比を30%まで下げた低レベルストローブ信号LLSTRである。また、第2トライアードカラーパッチ使用印刷時は、本実施形態では、低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比をライン923における0%から始めてライン1006における60%まで直線的に増していく。ご理解頂きたいことに、図12〜図14に示した実施形態では、高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比が所定デューティ比であるので、単一の高レベルストローブ信号HLSTRに包含又は包絡される低レベルストローブ信号LLSTRの個数が一定に保たれる。それにもかかわらずヒータ素子Rのオン時間長を制御できるのは、ヒータ素子Rのオン時間長を、低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比と、低レベルストローブ信号LLSTRの個数との積によって、決めるようにしてあるためである。
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照しつつ説明する。まず、先に説明した各実施形態においては、別々のトライアードに属する複数個のカラーパッチを用いて画像を印刷する際、重複領域内の画像に対する各トライアードの濃度的寄与度が、高レベルストローブ信号HLSTR又は低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比を変えることによって、調整されていた。これに対して、本実施形態における寄与度の調整は、プリントヘッド22に供給される画像データの調整によって行われる。即ち、本実施形態においては、重複領域内画像印刷時にも、高レベルストローブ信号HLSTRのデューティ比を例えば90%から変えることなく、また低レベルストローブ信号LLSTRのデューティ比を例えば60%から変えることなく、それらストローブ信号を用いてプリントヘッド22を動作させる。更に、ストローブ信号を変えるストローブパルステーブル100の代わりに、別のルックアップテーブル群を用いて、プリントヘッド22に供給される画像データのグラデーション乃至グレーレベルを制御する。印刷データ用のラインは、図3に記した通り印刷データDATA0〜DATA7用に8本あるので、最大255通りのグレーレベル乃至濃度レベルを定義することができる。また、これらのデータラインを介したデータ伝送を複数回行い、こうして多重伝送される複数個のデータによって1個の画素を形成することとすれば、表現できる濃度レベルの個数はデータ伝送多重度に応じて更に増える。
本実施形態における内部グラデーション変換器103は、第1カラーパッチ群を使用してライン1〜922を印刷する際、所定のセッティングとする。内部グラデーション変換器103に対するセッティングは、変換係数テーブル102から与える変換係数を調整することによって、或いは内部グラデーション変換器103に入力される各種補正データによって、行うことができる。第2トライアードカラーパッチだけを用いてライン1007〜2100を印刷する際も、内部グラデーション変換器103のセッティングは、第1トライアードカラーパッチ使用印刷時と同じでよい。違いといえば、画像内容に応じた違いが画像データPDATAに現れていることくらいであろう。これに対して、重複領域に属するライン923〜1006を印刷する際には、印刷するラインの番号に応じて画像データが改変されるように、別の値のルックアップテーブルを使用する。即ち、第1トライアードカラーパッチによる重複領域内グレーレベル画素形成時には、そのデータによって表される濃度がライン毎に変化していくように、画素形成の基になる画像データを改変する。より詳細には、ライン923に近いラインほど、形成されるグレーレベル画素に対する第1トライアードカラーパッチからの濃度的寄与分が多くなるよう(第2トライアードカラーパッチからの濃度的寄与分が小さくなるよう)、画像データを改変する。同様に、第2トライアードカラーパッチによる重複領域内グレーレベル画素形成時には、ライン1006に近いラインほど、印刷結果として得られる画素に対する第2トライアードカラーパッチからの濃度的寄与分が大きくなるよう、ルックアップテーブル上の値を用いて画像濃度をデータ上で調整する。ライン番号に応じた増減のさせ方は、プリントヘッド22に対するイネーブリング信号の調整を通じて結果が現れるのではなくプリントヘッド22に供給される画像データ上で結果が現れるという点を除けば、先に述べた各実施形態と同様である。
以上述べた三種類の実施形態には、重複領域内画素か重複領域外画素かの別によらず正確なグレーレベル乃至濃度で画素が形成され、また別々のトライアードに属する複数個のカラーパッチからの寄与により重複領域内のあらゆる画素が形成される、といった共通点がある。
また、以上述べた三種類の実施形態の何れに対しても、カラーパッチクアッドを使用するシステム構成となるように、即ち形成された画像上に透明オーバコートを被着形成できるシステム構成となるように、変形を施すことができる。その好適なやり方は、例えば、第1クアッドではダイドナーパッチにより印刷した画像のうちライン1〜922上だけに透明オーバコートを被着させる、というやり方である。ライン1〜922上に透明オーバコートを被着させる際には、第1クアッドを構成する透明パッチをプリントヘッド22とシート状受容媒体28の間に位置決めし、更にプリントヘッド22の記録素子R全てを同一レベルで発熱させて、その第1クアッド透明パッチから透明オーバコートを被着する。最初の922本のラインについてだけ第1クアッド透明パッチによる透明オーバコート被着を行うのは、重複領域内を含む残りの画素について、第2クアッドカラーパッチによる画素形成乃至印刷を行う必要があるためである。第2クアッドを構成する三色のダイドナーパッチによる画像印刷を終えたら、第2クアッドの透明パッチを用いて、ライン923〜2102上に透明オーバコートを被着する。また、同じクアッドを構成する他の三色のダイドナーパッチを用いて形成したサブ画像上に透明素材を転写しシート状受容媒体28を透明素材で覆う際に、プリントヘッド22を構成する記録素子Rを不均一にイネーブリング及び発熱させてもよい。この不均一イネーブリング及び発熱によって、仕上がり印刷物の“つや”や光沢が変わるため、これを利用してつや消し或いは光沢調整を施す等、印刷物の仕上がりを整えることができる。
図17にフローチャート300を示す。このフローチャート300においては、ステップ310にて長尺印刷モードが選択されるとステップ320にて第1色カラーパッチによる印刷動作が開始される。第1セット(第1トライアード又は第1クアッド)カラーパッチによる印刷を開始する際には、ステップ320ではライン1(ライン番号n=1のライン)が印刷開始ラインとして選択される。ステップ320にて印刷開始ラインが指定されるか或いは後述のステップ370にて次の印刷ラインが指定されると、ライン番号nの計数値について判別するステップ330が実行される。この判別は、計数したライン番号nによって表されている現在のラインが現在のサブ画像の最終ラインかどうかどうか、についての判別である。最終ラインを表す計数終了値Nは、第1セット(第1トライアード又は第1クアッド)カラーパッチ印刷時には1006とし、第2セット(第2トライアード又は第2クアッド)カラーパッチ印刷時には2100とする。最終ラインでないと判別された場合は、ステップ340にて、ストローブ信号HLSTR、LLSTR又はその双方のデューティ比が決定される。デューティ比の決定は、現在何組目のカラーパッチか、現在何本目のラインか及び場合によっては色に基づき行う。即ち、二種類のストローブ信号HLSTR及びLLSTRの双方について、またカラーパッチの色に応じて、デューティ比を変化させてもかまわない。ステップ350においては、データ信号DATA0〜DATA7並びにストローブ信号HLSTR及びLLSTRがプリントヘッド22に出力される。ステップ360においては、このデータ信号DATA0〜DATA7に基づきラインnが印刷される。このラインの印刷が終わったら、ステップ370にて、受容媒体28及びウェブ状ドナー媒体34が1ライン分先送りされ、ライン番号nを計数するカウンタも同様にインクリメントされて、次の印刷ラインが指定される。ステップ330、340、350、360及び370は、現在のカラーパッチについてライン番号nの計数値が計数終了値Nに等しくなるまで繰り返される。現在のカラーパッチによる印刷が終了したら、ステップ375にて、次の色のカラーパッチがプリントヘッド22に送り込まれる。ステップ380においては、三色のパッチ又は透明を含め四色のパッチによる印刷が終了したかどうかが判別される。終了していなければステップ320が実行され、同じ組に属する次の色のカラーパッチによる印刷開始ラインとしてライン番号1のラインが選択される。このカラーパッチについても、ライン番号nの計数値が計数終了値Nに等しくなるまで、ステップ330、340、350、360及び370が繰り返し実行される。ステップ380にて、現在のトライアードに属するYMC全色パッチ又は現在のクアッドに属するYMC透明全色のパッチによる印刷が終了したと判別されたら、ステップ385にて、第1セット及び第2セット双方のカラーパッチによる印刷が終了したかどうかが判別される。終了していなければ、ステップ387から第2セットカラーパッチによる印刷へと進む。第2セット(第2トライアード又は第2クアッド)に属する各カラーパッチによるシート状受容媒体28への印刷を開始するときには、印刷開始ラインをライン923、計数終了値Nを2100とし、ライン番号nの計数値が計数終了値Nと等しくなったらそのカラーパッチによる印刷を終了する。第2セットカラーパッチによる印刷も終了したらステップ390にて印刷物がプリンタ20から排出され、ステップ395にてその印刷物についての印刷動作が終了される。
このようにして、2個のサブ画像を印刷することにより合成画像が形成される。形成される合成画像は重複領域内画素を有している。重複領域内画素は、所属先トライアード又はクアッドが異なる複数個のカラーパッチから共通に印刷素材堆積を受けて形成される。即ち、重複領域内グレーレベル画素は、別々のトライアード又はクアッドから印刷素材供給を受け、それらの印刷素材を併用して形成される。重複領域内においては、本願中で説明した通り、高レベルストローブ信号HLSTR、低レベルストローブ信号LLSTR又はその双方をライン毎に改変すること等により、各トライアード又はクアッドから各グレーレベル画素への着色剤(ダイ)転写量、即ち各グレーレベル画素への寄与度が調整される。なお、本願では、「グレーレベル画素」という語を、画像データに従いその濃度が可変決定され得る画素、特に濃度=0を含む3種類以上の濃度レベルがある画素という意味で、使用している。
本願にてシート状受容媒体28として使用できるのは、例えば1枚ずつに分かれている所定寸法のシートや、巻紙状の連続シート等、その上に2個のサブ画像からなる合成画像を形成できるシートである。また、画像エリアを定めるマイクロパーフ(微小貫通孔群/微小ミシン目)を、シート状受容媒体28に設けてもよい。そうすれば、マイクロパーフによって決まる境界線の内側に入るように合成画像を形成することができる。その際、シート状受容媒体28を縁取る辺を当該境界線又はその補助として使用することもできる。更に、マイクロパーフを利用して、シート状受容媒体28上の合成画像印刷箇所から、縁の部分即ち印刷が施されていない部分を取り除くことができる。