最近、半導体素子製造工程のデザインルール(design rule)が0.1μm以下に超微細化及び高集積化しつつあり、シリコンウェーハも300mm以上のウェーハに大口径化しつつある。これにより、シリコンウェーハも半導体素子の活性領域に完全な無欠陥層が要求される。また、活性領域下のバルク領域には酸素析出物とバルク積層欠陥(Bulkstacking Fault)からなるBMD(Bulk Micro Defect)の密度を増加させ、半導体素子製造工程中に発生しうる金属などの不純物を効率よく除去することが可能なシリコンウェーハが要求されている。
一般に、シリコンウェーハにおいて酸化膜の耐圧に最も影響を与える欠陥としては、COP(Crystal Originated Particle)、FPD(FlowPattern Defect)及びLSTD(Laser Scattering Tomography Defect)などが知られている。
ウェーハの表面層に現れるCOPは、アンモニアと過酸化水素とが混合された溶液(Standard Cleaning 1溶液)で繰り返し処理することにより観察することが可能な0.09乃至0.12μm程度の欠陥であって、ウェーハの表面にピット(Pit)の形で現れる。COPは結晶を引き上げるときに導入される結晶欠陥の一種として知られている。
酸化膜の耐圧と関係のあるFPDは、フッ酸、重クロム酸カリウム系のエッチング液を用いて選択エッチングすることにおり、小波状の形で現れる欠陥として知られている。
LSTDはレーザ散乱トモグラフィ法(Laser Scattering Tomography)によって検出される欠陥であって、結晶成長中に現れる微細欠陥として知られている。
COPは、一般にSP1−TBIで測定するときに0.09乃至0.12μmの特定サイズを有する結晶欠陥(すなわち、インゴットを作る時から発生する欠陥)であり、FPDは、このようなCOPを肉眼で直接容易に確認するために、エッチングを行って顕微鏡で確認する欠陥である。したがって、FPDの場合、0.09乃至0.12μmよりさらに小さいサイズの0.09μm以下の欠陥まで現れる虞がある。また、LSTDの場合、ウェーハ表面の結晶欠陥だけでなく、微細パーティクル(particle)まで含んで測定する。すなわち、表面がパーティクルによって汚染していると、COPの個数は少なくてもLSTDの個数は増加することが可能である。そして、LSTDの場合、0.4乃至0.5μm以上の欠陥を測定するため、同様にCOPよりはその個数が増加する。要するに、一般にデバイスの酸化膜の耐圧に最も影響を与える要素がCOPであるが、このようなCOPを直接或いは間接に確認することがFPDの密度とLSTDである。
例えば、特定の顧客の場合、COPが表面から約10μmまでは存在してはならないとspec.を提示するが、この場合、前述した装備であるSP1−TBI又はエッチングによる方法は、単に表面のみを確認することであり、LSTDの場合、最大5μmまで測定可能である。したがって、ウェーハの製造会社では、前記三つの方法で間接的に確認し、実際10μmまで研磨(polishing)してSP1−TBI又はLSTDを測定する。
チョコラルスキー(Czochralski;CZ)法で引上成長されたシリコン単結晶を加工して製作されたシリコンウェーハは、酸素不純物をたくさん含んでおり、この酸素不純物は、転位又は欠陥などを発生させる酸素析出物になる。この酸素析出物が素子の形成される表面に存在する場合、漏洩電流の増大及び酸化膜の耐圧の低下などの原因になって半導体素子の特性に大きい影響を及ぼす。
また、一般的なシリコンウェーハは、ウェーハの前面から後方に至るまで転位、積層欠陥及び酸素析出物などが存在しないデニューデッドゾ―ン(Denuded Zone,以下DZという)が表面から所定の深さまで確保されなければならない。ところが、一般に、シリコンウェーハは表面領域に酸素析出物が発生して漏洩電流のソースとして作用する。
したがって、このような半導体素子の要求条件に応えるために、幾つの方法でシリコンウェーハを製造することができる。
第1方法は、シリコンウェーハを製造するためのシリコンインゴット(ingot)を製造するとき、無欠陥の純粋シリコン単結晶を製作して素子の活性領域に完全な無欠陥領域を作ることである。ところが、この場合、バルク領域には相対的に酸素析出物が少なくてBMDの密度が低いという短所があり、純粋シリコン単結晶の製造には非常に高い水準のインゴット成長技術力が要求されて製造コストが高いという短所もある。
半導体素子の活性領域に完全な無欠陥領域を作る第2方法は、シリコンウェーハ上にシリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)方法を用いてエピタキシャル層を成長させたエピウェーハを作ることである。純粋シリコン単結晶製造方法及びアニールウェーハ製造方法に比べて多くの技術が蓄積されており、量産にも容易であるが、アニールウェーハに比べて価格が高いため、メモリ素子よりは非メモリ素子に適用している実情である。
半導体素子の活性領域に完全な無欠陥領域を作る第3方法は、ウェーハをアニーリングすることである。これは結晶成長中に発生する欠陥であるCOP(Crystaloriginated particle)を熱処理によって除去することにより、半導体素子の活性領域からCOPを除去し、且つ表面領域で酸素の外方拡散(Out-Diffusion)によって酸素析出物のないDZ領域を一定の深さまで確保することができる。そして、バルク領域には酸素析出物であるBMDの密度を増加させて金属等の不純物を効果的に除去することができる。しかし、熱処理によって前記の特性を有するアニールウェーハを製造するためには、熱処理工程中のガス雰囲気、昇温及び降温速度、そして熱処理の温度と時間などを適切に調節しなければならない。そうでなければ、高温工程中にスリップが発生し、或いは均一且つ充分な無欠陥領域とBMDの密度を有するアニールウェーハを製造することができないなどの問題点がある。
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施例を詳細に説明する。ところが、これらの実施例は様々な形に変形できるが、本発明の範囲を限定するものではない。これらの実施例は当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明を充分理解させるために提供されるものである。図面上において、同一の符号は同一の要素を意味する。
図1は本実施例に係るシリコンウェーハを製造するための工程を説明するために示した図である。
図1を参照すると、まず、チョコラルスキー法を用いて所定の引上装置内でシリコン単結晶を成長させる(S10)。すなわち、シード結晶(seed crystal)を溶融シリコンに浸した後、徐々に引き上げながら結晶を成長させる。結晶成長時に窒素イオンをドーピングして窒素がシリコン単結晶インゴットにドープされるようにする。窒素ドーピング濃度は1E12atoms/cm3乃至1E14atoms/cm3程度にすることが好ましい。
次に、成長したインゴットをウェーハの形でスライスする(S20)。
その後、スライスするときに発生したスライシングダメージを除去し、スライスされたウェーハの側面をラウンドし或いは表面をエッチングするためにエッチング工程を行う(S30)。
次いで、シリコンウェーハ内に含まれた結晶成長時に発生した酸素がデバイス製作のための後続の熱処理過程で電子を放出してドナーの役割を果たすことを防止するために、熱処理による酸素析出物に作る工程としてのドナーキリング(donorkilling)工程を行う(S40)。すなわち、シリコンウェーハ内に結晶成長時に含まれる約1018atoms/cm3の酸素原子のうち約1016atoms/cm3の程度が単結晶棒冷却過程で複数の酸素原子が集まって電子を放出しドナー化するが、ウェーハの抵抗率を合わせるためにドーパントを添加しても、このようなドナーによって目標とする抵抗率を得ることができなくなる。したがって、結晶成長時に発生する酸素がドナーの役割をすることを防止するために、酸素析出物に作る工程としてのドナーキリングを行うが、本実施例の熱処理工程は前記ドナーキリング工程段階で行うことが好ましい。
次に、シリコンウェーハの表面をポリシングする段階(S50)、シリコンウェーハの表面を鏡面化するための鏡面研磨段階(S60)及び洗浄段階(S70)を行う。前記の工程を経たシリコンウェーハはパッキングされて製品化される。
前記シリコン単結晶を成長させる段階(S10)について簡略に説明すると、まず、シード結晶から細長い結晶を成長させるネッキング(necking)段階を経た後、シリコン単結晶を直径方向に成長させて目標の直径に作るショルダーリング(shouldering)段階を経る。前記ショルダーリング段階を経た以後には、一定の直径を有する結晶が成長するが、この過程をボディグロイング(bodygrowing)段階と呼ぶ。一定の深さだけボディグロイングが行われた後には、結晶の直径を徐々に減少させて結局溶融シリコンと分離するテーリング(tailing)工程段階を経て結晶成長段階を仕上げる。このような結晶成長工程はホットゾーン(HotZone)という空間で行われるが、ホットゾーンは結晶成長装置(Grower)で溶融シリコンが単結晶インゴットに成長するときの溶融シリコンとインゴット接触周囲の空間を意味する。前記結晶成長装置は溶融炉、加熱装置、保温構造物、インゴット引上装置、回転軸などを含む装備から構成される。
上述したように一定濃度以下に窒素がドープされたシリコンインゴットを切断、研磨、洗浄などの工程を行ってシリコンウェーハに作る。
図2は本実施例の好適な熱処理工程を説明するために示した図である。本実施例に係る熱処理装備は一般に常用化された装備を使用することができる。
図2を参照すると、まず、チョコラルスキー法で結晶成長されたインゴットをスライスして作られたシリコンウェーハを不活性ガス雰囲気、たとえばアルゴン(Ar)ガス雰囲気の熱処理装備(拡散炉)にロードする。この際、熱処理装備の温度は第1温度(約500℃)に設定されている。熱処理装備の設定温度はウェーハエッジと中心部との温度差による熱応力によってスリップが発生する可能性があるので、極めて高温に設定することは好ましくない。シリコンウェーハを熱処理装備で第1温度に所定時間予熱して維持する。
次に、熱処理装備内のガス雰囲気を水素(H2)ガス雰囲気に変え、熱処理装備内の温度を第2温度(たとえば、950℃)まで第1温度上昇率(ramp-uprate)(たとえば、約10℃/min)で昇温させる。
熱処理装備内の温度が目標の第2温度まで上昇すると、熱処理装備内の温度を第3温度(たとえば、1100℃)まで第2温度上昇率(たとえば、約5℃/min)で昇温させる。前記第2温度上昇率は、第1温度上昇率よりは小さくすることが好ましい。ウェーハの中心部と周囲縁の温度差が大きくなるほど熱応力によるスリップ(slip)が発生するが、温度を上昇(heatup)させるときに温度が上がるほど、ウェーハ内でスリップが発生しない温度偏差は減少し、ウェーハの降伏応力(yield stress)は減少する。したがって、温度を上昇させるとき、温度が上がりながら昇温速度を一定速度以下に減少させなければならないが、与えられた特定の温度でウェーハの中心部と周囲縁との間に温度偏差によるスリップ発生を抑制するために、第2温度上昇率は第1温度上昇率より小さくする。
熱処理装備内の温度が目標の第3温度まで上昇すると、熱処理装備内のガス雰囲気を不活性ガス雰囲気、たとえばアルゴン(Ar)ガス雰囲気に変え、熱処理装備内の温度を第4温度(たとえば、1200℃)まで第3温度上昇率(たとえば、0.1乃至5℃/min)に昇温させる。
熱処理装備内の温度が目標の第4温度まで上昇すると、第4温度で1乃至120分間維持して高温熱処理を行う。一定水準のDZの深さとBMDの密度を確保するために、好ましくは60分程度維持し、120分を超過して維持すると、COPが存在しない領域の深さは深くなるが、拡散炉の寿命は短くなる可能性がある。
次に、熱処理装備内の温度を第1温度下降率(ramp-down rate)(たとえば、0.1乃至5℃/min)で第5温度まで下降させる。前記第5温度は第3温度と同一の温度であることが好ましい。
熱処理装備内の温度が第5温度まで下降すると、熱処理装備内の温度を第2温度下降率(たとえば、5℃/min)で第6温度まで下降させる。前記第6温度は第2温度と同一の温度であることが好ましい。
熱処理装備内の温度が第6温度まで下降すると、熱処理装備内の温度を第3温度下降率(たとえば、10℃/min)で第7温度まで下降させる。前記第7温度はローディング時に設定された第1温度と同一であることが好ましい。前記第3温度下降率は第2温度下降率よりは大きくすることが好ましい。前記のような過程によって熱処理工程が行われる。
図2を参照して説明した本実施例による場合、シリコンウェーハのBMD(Bulk Micro Defect)濃度プロファイルは、ウェーハの前面及び後面から一定の深さによる表面領域にはCOP及びBMDが存在せず、バルク領域にはゲッタリングの役割を行うことが可能な十分なBMDが全体バルク領域にわたって一定に維持される。BMDは酸素析出物とバルク積層欠陥(BulkStacking Fault)を含む欠陥をいう。一般に、バルク積層欠陥の核は数乃至数百nmの大きさであって、非常に不均一な大きさで存在するが、臨界サイズ以上の核は本実施例の熱処理工程を経て成長し、バルク積層欠陥を形成する。
図16は好適な本実施例によって製造されたシリコンウェーハの欠陥濃度プロファイルを示した図である。
図16を参照すると、ウェーハ前面の表面から所定の深さまではCOP(Crystal Originated Particle)欠陥のない第1DZ(たとえば、ウェーハの表面から5μm乃至40μmの深さ)が形成される。ウェーハの後面の表面から所定の深さまでは、COP欠陥のない第2DZ(たとえば、ウェーハの表面から5μm乃至40μmの深さ)が形成される。前記第1DZと第2DZ間の間にはBMDの濃度プロファイルがウェーハの前面から後面方向へ一定に維持される分布を有するバルク領域が形成される。前記第1DZと前記第2DZ間の領域において、前記BMDの濃度は、1.0×108乃至1.0×1010ea/cm3範囲であり、バルク領域にわたってゲッタリングサイト(getteringsite)としての役割を果たすことが可能な十分且つ均一な濃度を有する。
上述した実施例で言及した熱処理工程によって、図16を参照して説明したシリコンウェーハの欠陥濃度プロファイルが得られるが、熱処理装備、熱処理温度、熱処理時間、温度上昇率、温度下降率、雰囲気ガスの種類、流量、混合比などによって若干の差がありうるが、窒素ドーピング及び熱処理を用いてバルク領域で十分且つ均一な欠陥濃度プロファイルを得た全ての技術的思想は本実施例に含められるものである。
図3a及び図3bは窒素ドーピング有無によるLLS(localized light scattering)大きさ別のLLS個数を示した図面である。図3aは一定のプリング速度(pullingspeed)(1.4mm/min)でインゴットを成長させながら窒素をド―ピングしない場合であり, 図3bは 一定のプリング速度(pulling speed)(1.4mm/minでインゴットを成長させながら窒素を5E13atoms/cm3の濃度でドーピングした場合である。LLS個数はKLA−TencorSurface SP1装備を用いて測定した。図3bに示すように、シリコン単結晶に窒素をドープすることにより、0.12μm以下の微細なパーティクル(particle)の数は増加し、0.12μm以上の大きいパーティクルの数は却って減少している。これはホモジーニアス(homogeneous)なシリコン単結晶にヘテロジーニアス(heterogeneous)な窒素原子が添加されることにより、シリコンマトリックス(matrix)内で核生成に必要なエネルギーを減少させることにより、微細な酸素析出核の増加に起因したものである。このようにシリコン単結晶に不純物としての窒素を添加することにより、微細なパーティクルの数が増加し、大きいパーティクルの個数が減少することにより、高温熱処理時にパーティクルを容易に除去することができる。したがって、ウェーハで十分なDZ(DenudedZone)を確保し、COP(Crystal Originated Particle)のない領域を確保するためにはシリコン結晶成長時に窒素を添加することが好ましい。
図4は窒素ドーピング濃度によるFPD(Flow Pattern Defect)平均値を示した図である。この際、プリング速度を1.4mm/minにしてインゴットを成長させた。FPDとは、結晶成長時に発生する欠陥であるCOPのある箇所にSECCOエッチング(たとえば、K2Cr2O7及びHFを所定の割合で混合した溶液を使用)を30分間行い、顕微鏡(microscope)で観察することが可能な欠陥をいう。図4に示すように、特定の窒素濃度以下では、窒素ドーピング濃度が減少するほど、ウェーハ当たり平均FPD密度が増加する。すなわち、この区間では窒素濃度が増加するにつれてFPDが減少し、たとえば1E14atoms/cm3程度の窒素濃度ではFPD密度が100個以下に減少し、窒素が添加されることにより発生する結晶欠陥であるNiLD(NitrogenInduced Large Defect)が発生する。また、5E14atoms/cm3以上の濃度ではFPDが殆ど発生せず、且つウェーハの前面に窒素による結晶欠陥であるNiLDが発生する。
したがって、シリコンインゴットの製造時に1E14 atoms/cm3濃度以上に窒素濃度を増加させて窒素による結晶欠陥を引き起こすことは好ましくない。アーニルウェーハを製造するためにシリコン単結晶に窒素を添加することは1E14atoms/cm3濃度以下に制御することが好ましい。
図5は窒素がドープされたウェーハの熱処理温度によるGOI(Gate Oxide Integrity)評価結果を示す図である。GOI評価は、半導体素子のフェール率(failrate)を間接的に確認するものである。Aモードフェール(A-mode fail)は0乃至6MV/cmの電界を加えたときに起こるフェールであり、Bモードフェールは6乃至8MV/cmの電界を加えたときに起こるフェールであり、Cモードフェールは8乃至10MV/cmの電界を加えたときに起こるフェールであり、Cモードフェールは10乃至13MV/cmの電界を加えたときに起こるフェールをいう。一般に、BモードフェールはCOPによって発生するものと知られている。シリコンウェーハに対して熱処理工程を行った後、表面から6μmの深さまで研磨した後、GOIを評価した。好適な本実施例によって熱処理を行った。熱処理条件は、拡散炉内の雰囲気をアルゴン(Ar)ガス雰囲気に作り、シリコンウェーハを拡散炉に装入して500℃で予熱して維持する段階と、拡散路内のガス雰囲気を水素(H2)雰囲気に変えた後、950℃まで10℃/minの速度で昇温させる段階と、1100℃まで5℃/minの速度で昇温させる段階と、拡散路内のガス雰囲気をアルゴン(Ar)雰囲気に変えた後、1200℃まで1℃/minの速度に昇温させる段階と、1200℃で60分間維持する段階と、1100℃まで1℃/minの速度で降温させる段階と、950℃まで5℃/minの速度で降温させる段階と、500℃まで10℃/minの速度で降温させる段階とからなった。GOI評価条件は、酸化膜の厚さを120Å、ポリシリコンの厚さを1000Å、トランジスタ面積を0.2cm2にした後、降伏電圧測定装備としてはHP4156Aを使用した。図5の(a)から分かるように、熱処理前ベアウェーハ(barewafer)の場合、ウェーハの全領域にわたってフェールが発生した。これは、熱処理を行っていないベアウェーハの結晶特性上、表面にあるCOPによってフェールが発生したが、図5の(b)乃至(f)の如く、熱処理温度が増加するほど、ウェーハの表面のCOPは容易に除去されるので、フェール率は段々減少し、1200℃の熱処理温度では殆ど発生しないことを示している。すなわち、熱処理を行っていないベアウェーハのボイド性欠陥であるCOPが高温熱処理によって完全消滅し、表面の酸素析出物も高温で分解(dissolution)されたことを示している。
図6は熱処理温度によるNSMD(Near Surface Micro Defect)測定結果を示した図である。図6の(a)は1μmの深さに研磨してNSMDを測定した結果であり、図6の(b)は5μmの深さに研磨してNSMDを測定した結果である。NSMDは日本の三井鉱山社製のMO601装備で測定した。図6の(a)に示すように、表面から1μmの深さに研磨した場合、1100℃以上の温度でパーティクルを除いたCOPが微量除去され、表面にはCOPが殆ど発見されなかったが、図6の(b)に示すように、表面から5μmの深さに研磨した場合、1150℃の温度までは熱処理後にCOPが完全消滅せず、1175℃以上の温度でのみCOPが完全除去された。すなわち、表面から5μmまでCOPのない深さを確保するためには、少なくとも1175℃以上の温度で熱処理を行うことが好ましい。一方、図5に示すように、COPによるGOIのフェール率を最小化するためには、1200℃で熱処理することがさらに好ましい。
図7a及び図7bは窒素がドープされたウェーハの熱処理時間によるCOPのない領域の深さの変化をLLSの変化で測定した結果を示した図である。図7aにおいて、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はアルゴン(Ar)ガス雰囲気でそれぞれ15分、30分、60分、90分、120分間熱処理を行った場合であり、(f)は水素雰囲気で60分間熱処理を行った場合を示す。図7bにおいて、(a)はウェーハの表面から8μmを研磨した場合、(b)は10μmを研磨した場合、(c)は12μmを研磨した場合、(d)は14μmを研磨した場合のLPDN分布をそれぞれ示した図である。熱処理温度は1200℃に固定した後測定した。熱処理は図5を参照して説明した場合と同一の条件で行った。図7aと図7bに示すように、アニールウェーハを研磨する場合、表面から特定の深さでLLSが急激に増加するが、これはウェーハの表面から特定の深さまでは高温熱処理によってCOPが消滅するが、特定の深さ以上ではこれ以上消滅せずベアウェーハの結晶特性をそのまま反映している。図7aに示すように、1200℃の熱処理温度で熱処理時間が増加するほど、LLSが急激に増加する地点は段々深くなり、よって、COPのない領域の深さは増加するといえる。また、同一の熱処理時間の場合、水素雰囲気で熱処理する場合がアルゴン(Ar)雰囲気で熱処理する場合より優れたCOP除去効率を示す。これは水素熱処理時にCOPの内壁にある酸素がアルゴン(Ar)で熱処理する場合より容易に除去されるので、以後、ボイド性欠陥であるCOPが容易に除去(shrink)できる。ところが、水素ガスを用いる場合、COPのない領域の深さの面ではArガスより優れるが、熱処理工程で使用する石英チューブ(Quartztube)などのエッチングによって金属汚染の面ではArガスを使用することが好ましい。
また、図7a及び図7bから分るように、少なくとも10μm以上のCOPのない領域の深さを確保するためには、1200℃で熱処理時間を60分以上とすることが好ましく、それ以上のCOPのない領域の深さを確保するためには60分以上の熱処理を行うことが好ましいが、拡散炉の寿命が短くなる可能性があるので、これを考慮すべきである。
図8aは図2を参照して説明した第1温度(500℃)乃至第2温度(950℃)区間で昇温速度(第1温度上昇率)によるDZの深さ(図8aの(a)に該当)とBMDの密度(図8aの(b)に該当)を示した図である。この際、その他の熱処理条件は図5を参照して説明した場合と同一にした。酸素濃度を12.5ppma、図2を参照して説明した第2温度(950℃)乃至第3温度(1100℃)区間で昇温速度(第2温度上昇率)を5℃/minに固定した後、それぞれのDZの深さとBMDの密度を測定した。DZの深さとBMDの密度測定は、1200℃、アルゴン雰囲気で熱処理を行った後、さらに酸素雰囲気で2段階熱処理(800℃で4時間熱処理し、1000℃で16時間熱処理する)を行ってSECCOエッチングをした後、顕微鏡で確認する方法を使用した。酸素雰囲気で図8aに示したように昇温速度(第1温度上昇率)が増加するほど、DZの深さは増加し、昇温速度(第1温度上昇率)が18℃/min以上ではDZの深さが殆ど増加しなかった。反面、18℃/minまでは昇温速度に比例してBMD密度が増加した。また、与えられた昇温区間で、DZは25μm以上、BMD密度は5E5ea/cm2以上充分確保された。これは昇温速度が速いほど相対的に酸素析出物の核生成が可能な充分な時間が確保されないので、核生成密度が低く、1200℃高温熱処理時に酸素析出物が表面から相対的に容易に消滅する。
図8bは図2を参照して説明した第1温度(500℃)乃至第2温度(950℃)区間における昇温速度(第1温度上昇率)を10℃/minに固定させた後、第2温度(950℃)乃至第3温度(1100℃)区間で昇温速度(第2温度上昇率)の変化によるDZの深さ(図8bの(b)に該当)とBMDの密度(図8bの(a)に該当)を示す。この際、その他の熱処理条件は図5を参照して説明した場合と同一にした。図8aとほぼ同様の結果を示すが、5℃/min以上では殆ど飽和される形を示している。
図9は酸素濃度によるDZの深さとBMDの密度の変化を示す。熱処理条件は図5を参照して説明した場合と同一にした。図2を参照して説明した第1温度(500℃)乃至第2温度(950℃)区間における昇温速度(第1温度上昇率)を10℃/min、第2温度(950℃)乃至第3温度(1100℃)区間で昇温速度(第2温度上昇率)を5℃/minに固定した後、DZの深さとBMDの密度の変化を測定した。図9から分かるように、酸素濃度が増加するほど、DZの深さ(図9の(a))は増加し、BMDの密度(図9の(b))は減少する傾向を示し、固定因子として作用した昇温速度より酸素濃度がDZの深さ及びBMDの密度にさらに大きい影響を与える。したがって、低い酸素濃度で高いDZの深さとBMDの密度を確保しなければならない場合と、高い酸素濃度で低いDZの深さとBMDの密度を確保しなければならない場合と、高い酸素濃度で低いDZの深さとBMDの密度を確保しなければならない場合、昇温速度(第1温度上昇率及び第2温度上昇率)の適切な調節によって達成可能である。すなわち、半導体素子において要求される酸素濃度に応じてDZの深さとBMDの密度を調節するために昇温速度(第1温度上昇率及び第2温度上昇率)を加減することができる。
図10は窒素がドープされたシリコンウェーハの酸素濃度によるCOPのない領域の深さを示している。図10は図5を参照して説明した熱処理条件と同一にし、5E13atoms/cm3の濃度で窒素をドープした場合を示す。図10に示すように、酸素濃度が増加するほど、COPのない領域の深さは線形的に減少し、酸素濃度が14ppmaの場合には6μm内外に大幅減少する。ところが、図5から分かるように、COPのない領域の深さは熱処理時間が増加するほど増加するので、低い酸素濃度では熱処理時間を調節して、半導体素子で要求されるCOPのない領域の深さを充足させることができる。
図11a及び図11bは昇温速度による全体スリップ長さ(slip length)を示したグラフである。図11aは図2を参照して説明した第2温度上昇率を5℃/minに固定し、第1温度上昇率の変化によるスリップ長さの変化であり、図11bは図2を参照して説明した第1温度上昇率を10℃/minに固定し、第2温度上昇率の変化によるスリップ長さの変化である。図11a及び図11bは熱処理温度を1200℃とし、熱処理時間を60分とし、酸素濃度を12.5ppmaに固定して熱処理を行った場合である。その他、熱処理条件は図5を参照して説明した場合と同一にした。一般に、拡散炉で昇温速度が増加するほどウェーハ内の中心部と周囲縁の温度偏差が大きくなり、これによる熱応力(thermalstress)によってスリップ(slip)が激しく発生し、熱処理中にシリコンウェーハとシリコン珪素(SiC)ボートに接触した部分からシリコンとシリコン珪素(SiC)の熱膨張係数の差によって応力が発生し、それによるスリップが発生する。すなわち、昇温速度が増加するほど、それによるスリップ長さが増加する。図11aと図11bの全てにおいて昇温速度が増加するにつれて、スリップ長さは長くなることが分かる。
一般に、ある外部応力がシリコン単結晶格子に生じ、このような応力がシリコンの降伏応力以上に加えられるとき、それによる変形をストレイン(strain)或いは転位(dislocation)と定義することができる。もしこのような外部応力が持続的に加えられる場合、このような転位は格子間を移動しながら動くが、これをスリップ(slip)という。このようなスリップはシリコンウェーハ内の析出物が増加して析出物間の間隔が少ないほど、転位の移動が妨げられるので、スリップが容易に発生しない。したがって、ウェーハ内析出物の密度を増加させてスリップ発生を減少させることができ、このような現象を転位ピンニング(dislocationpinning)現象という。図12ではシリコンウェーハ内で前記酸素析出によってスリップが抑制される過程を示している。
一方、図9から分かるように、酸素濃度が増加するほど、バルク内部の酸素析出物であるBMDの密度は増加する。すなわち、酸素濃度が高いほど、酸素析出物の密度増加によってスリップの発生が抑制される。このような結果は図2を参照して説明した第2温度上昇率を5℃/minに固定し、図2を参照して説明した第1温度上昇率を10℃/minに固定した後、酸素濃度によるスリップ長さを図13に示している。図13に示すように、酸素濃度が増加するほど、スリップ発生が著しく減少し、14ppmaでは1mm内外であって、殆ど発生しなかった。しかし、酸素濃度が増加すると、相対的にDZの深さが減少して充分なDZの深さの確保面では好ましくない。
したがって、充分なDZの深さ及びCOPのない領域の深さを確保するためには、酸素濃度が低いほど有利であり、それによるスリップ発生の増加は熱処理条件を適切に調節して解決することができ、これによりスリップ発生を減少させることができる。本実施例においてテストした結果、11ppmaの低い酸素濃度でも第1温度上昇率及び第2温度上昇率を同時に5℃/min以下にする場合、1mm以下のスリップが発生した。これをXRTで測定した結果を図14bに示した。
アニールウェーハを製造するためには、熱処理中にウェーハとボートの接触による通常1mm以下のポイント(point)で表れる損傷(Damage)の場合、完璧に制御することは不可能である。従って、最小の損傷を2段階素子熱処理(800℃で4時間、1000℃で16時間)した後、損傷発生部位から半導体素子駆動領域までスリップが転位されるかを確認しようとした。図14cに示すように、素子熱処理後に表面から約144μまでのみスリップが転位され、素子の駆動領域までは転位されなかった。このような結果は、図14cに示すように、バルク内の高いBMD密度による前述したピンニング効果によってスリップが素子駆動領域まで転位されることを防いでいる。
図15a及び図15bはガス雰囲気による比抵抗の変化を示したグラフである。図15aは、図2を参照して説明した第1温度乃至第3温度区間でも、アルゴンガス雰囲気で熱処理した場合の比抵抗の変化を示したグラフ、図15bは第1温度乃至第3温度区間で水素雰囲気で熱処理する場合の比抵抗の変化を示したグラフである。一般に、アルゴン(Ar)雰囲気で熱処理する場合、クリーンルーム内のボロン原子がウェーハの表面上に吸着され、熱処理途中で内部に拡散される。したがって、図15aに示すように、表面にボロン原子の密度が増加し、ボロン原子が熱処理途中で内部に拡散して比抵抗値が減少する。このような現象は素子に致命的な影響を及ぼす。したがって、かかる問題点を解決するために、アルゴン(Ar)アニール途中でガス雰囲気を水素雰囲気に変えることにより、ボロン原子を含んだウェーハ上の自然酸化膜(nativeoxide)を完全除去することにより、高温でボロン原子が拡散することを防ぎ、図15bに示すように非常に均一な比抵抗を得ることができる。
このようにガス雰囲気を不活性ガス雰囲気から水素雰囲気に変える場合、水素雰囲気で熱処理される温度区間が重要である。なぜなら、水素は自然酸化膜のみが完全除去できる程度で水素を添加しなければならない。ところが、それ以上水素を添加すると、表面の自然酸化膜を除去した後、ウェーハの表面にあるボロン原子をウェーハの表面の外に拡散させ、却って表面において比抵抗が増加する現象が発生する。また、1100℃以上で長い間水素雰囲気で熱処理する場合、ウェーハの金属汚染を増加させる。一般に、アルゴン(Ar)雰囲気でのみ熱処理する場合が水素雰囲気で熱処理する場合より石英などの主要消耗品の寿命を増加させ、ウェーハの汚染の面で有利であると知られている。したがって、このような面を総合的に検討したが、水素雰囲気で熱処理する区間を適切に選定して調節することが好ましいことが分かる。
実験した結果、熱処理途中で第1温度(500℃)乃至第3温度(1100℃)間の温度区間では水素雰囲気で熱処理し、残りの温度区間ではアルゴン(Ar)雰囲気で熱処理する場合、表面にボロン原子を含んだ自然酸化膜のみを除去して図15bのような非常に均一な比抵抗プロファイル(profile)を得ることができる。
以上、好適な本実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当分野で通常の知識を有する者によって多様な変形が可能である。