JP2007327099A - 大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板 - Google Patents

大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】15〜100mmの厚みと325〜500MPa級の降伏強度を有し、20〜150kJ/mmの溶接入熱量で溶接されたHAZにおいて、−20℃〜0℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー平均値が100J以上である厚鋼板を安価に提供すること。
【解決手段】本発明は、質量%で、C:0.08〜0.2%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.001〜0.005%、Al:0.001〜0.1%、V:0.01〜0.1%、N:0.001〜0.006%、O:0.004%以下を含有し残部鉄および不可避的不純物からなる靭性に優れた厚鋼板である。
【選択図】なし

Description

本発明は、大入熱溶接継手における溶接熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)の靭性に優れた厚鋼板に関するものである。本発明は、鉄鋼業において製造される厚鋼板に主に適用される。本発明は厚鋼板以外のH形鋼や鋼管などの鉄鋼製品へ適用することも可能である。本発明を適用した厚鋼板は、鉄鋼業において安価に製造することが可能であり、造船をはじめ建築、橋梁、タンク、海洋構造物、ラインパイプなどの溶接構造物に使用され、溶接施工能率の高い大入熱溶接を施され、かつ、溶接部靭性の要求レベルが高い場合に好適である。
近年、造船や建築などの溶接構造物に対する主要な要求は、構造の大型化、建造の高能率化、破壊に対する安全性向上である。このような動向を受け、溶接構造用の厚鋼板には、高能率な大入熱溶接を適用した場合に、より一層の高いHAZ靭性が求められる。その反面、このような厚鋼板の製造者ならびに使用者の両方において、経済性がますます重要視されており、従来よりも安価な技術が求められている。
厚鋼板の大入熱溶接HAZ靭性を高める従来技術は、溶融線近傍HAZの組織微細化を目指したものが一般的である。HAZ組織微細化の方法として大別して二つある。一つ目の方法は、オーステナイト(γ)粒の成長をピン止め効果で抑制して細粒γを維持し、フェライト(α)変態核であるγ粒界の面積をできるだけ多くして、HAZ組織を微細化する方法である。二つ目の方法は、γの粒界や粒内に存在する析出物をα変態核として活用してHAZ組織を微細化する方法である。この技術の要点は、α変態の核生成能の高い析出物をできるだけ数多く分散させることである。
二つ目のHAZ組織微細化方法において、α変態の核生成能の高い析出物としてVNの効果が知られている。VNはαとの格子整合性が良好なので、γ粒界やγ粒内に析出したVNを変態核として数多くのαが生成し、組織が微細化してHAZ靭性が向上する。このようなVN効果を利用した従来の大入熱溶接HAZ靭性技術として、例えば特許文献1が知られている。
この特許文献1に記載の技術は、VNを微細分散させるために、Ti添加によってTiNを微細分散させ、このTiNを優先的な析出サイトとしてMnSを複合析出させ、このMnSを優先的な析出サイトとしてVNを複合析出させる。つまり、Ti添加を必須としてTiN−MnS−VNを析出させる。実施例におけるV量とN量は、表1から0.0041〜0.077%Vと0.0081〜0.0156%Nである。VN効果が発揮されても、V炭化物が低温で析出すると靭性を劣化させることからC量を低減する必要がある。実施例の表1におけるC量は0.04〜0.07%Cである。実施例の溶接熱サイクルの条件は、加熱温度が1400℃で800℃から500℃までの冷却時間が750秒(0.4℃/s)である。
VNをα変態核として利用した類似技術はH形鋼母材でも発明されている。特許文献2に記載の技術によれば、実施例の表1から0.07〜0.14%C、0.038〜0.097%V、0.0072〜0.0118%Nであり、表2−1から冷却条件は3.5〜18.6℃/sである。特許文献3に記載の技術によれば、実施例の表1から0.10〜0.13%C、0.038〜0.072%V、0.0092〜0.0099%Nであり、表2−1から冷却条件は5.1〜5.5℃/sである。特許文献4に記載の技術によれば、実施例の表2から0.05〜0.19%C、0.06〜0.19%V、0.007〜0.014%Nであり、冷却条件は不明である。
以上の従来技術では、加熱されたHAZや母材が冷却する過程のγ域で十分な量のVNを析出させるために、N量を意図的に高めていることが特徴である。上述した四つの特許文献に記載の発明で実施されているN量の範囲は0.007〜0.0156%Nである。 ところが、このようなN量の高い鋼を連続鋳造すると鋳片表面が割れやすい問題がある。その理由は、連続鋳造機の曲げ部あるいは曲げ戻し部で鋳片表面に外力が作用したときに、γ粒界に多量に析出した窒化物が脆化を促すからである。N量の高い鋼を大量生産すると、鋳造工程の生産性が阻害されたり、鋳片の歩留まりが低下したり、圧延後の厚鋼板表面に割れが残存して手入れ負荷が増大するなどの問題がある。これらの問題は製造コストの上昇を招くから、厚鋼板の経済性が低下して、価格競争力を阻害する。従って、このような問題の生じない低いN量を前提に、VN効果(α変態核効果)を引き出す安価な技術が求められている。
また、発明者らは特許文献5において、大入熱溶接HAZ靭性の向上を目的に、CaやMgの添加によるピン止め効果にVN効果を複合させる技術を開発した。この技術は、製鋼工程で溶鋼の脱酸、脱硫手順の制御が必要であり、最初にSi、Mn、Alを溶鋼に添加して予備脱酸を行った後、CaやMgを添加して最終の脱酸と脱硫を行う。このような製造方法は、製鋼工程での操業負荷が高いため、処理時間が長くなって生産性が低下する問題がある。また、CaやMgの溶鋼への添加歩留は40%以下と低いため、合金コストが上昇する問題がある。このように、特許文献5の技術は製造コストが嵩むため、要求特性が著しく高い場合(たとえば、大入熱溶接HAZ靭性が−40℃で100J以上のシャルピー衝撃吸収エネルギーを満たす)や、製造コストを賄える高い価格で売買される場合などに限って工業的な価値を有する。しかし、そうではない多くの場合には、製鋼工程の生産性が高くて合金コストの低い、安価な技術が求められている。具体的には、大入熱溶接HAZに対して、−20℃〜0℃の比較的高い温度で100J以上のシャルピー衝撃吸収エネルギーを満たす要求に対しては、CaやMgを使用しない安価に提供可能な技術が求められている。
特開平05−186848号公報 特開平10−060576号公報 特開2003−268498号公報 特開平04−131356号公報 特開2005−298900号公報
本発明の課題は、15〜100mmの厚みと325〜500MPa級の降伏強度を有し、20〜150kJ/mmの溶接入熱量で溶接されたHAZにおいて、−20℃〜0℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー平均値が100J以上である厚鋼板を、安価に提供することである。
本発明を適用した厚鋼板は、造船や建築やそれ以外の大型溶接構造物に使用が可能であり、溶接施工能率の高い大入熱溶接を施した場合でも、良好なHAZ靭性を確保できることを目指す。
上記課題を解決するための本発明の要旨は、下記のとおりである。
「1」 本発明の靭性に優れた厚手高強度鋼板は、質量%で、C:0.08〜0.2%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.001〜0.005%、Al:0.001〜0.1%、V:0.01〜0.1%、N:0.001〜0.006%、O:0.004%以下を含有し、残部鉄および不可避不純物からなることを特徴とし、溶接入熱量が20〜150kJ/mmの大入熱溶接熱影響部の靭性に優れたことを特徴とする。
「2」 本発明の靭性に優れた厚手高強度鋼板は、さらに、質量%で、Cu:0.05〜1%、Ni:0.05〜3%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.05〜1%、B:0.0003〜0.003%、Nb:0.003〜0.03%、Ti:0.003〜0.03%、の一種または二種以上を含有することを特徴とする、「1」に記載の大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板である。
本発明によって、15〜100mmの厚みと325〜500MPa級の降伏強度を有し、20〜150kJ/mmの溶接入熱量で溶接されたHAZにおいて、−20℃〜0℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー平均値が100J以上である厚鋼板を、安価に提供することが可能となる。
本発明を適用した厚鋼板は、造船や建築やそれ以外の溶接構造物に使用され、構造物の建造における高い溶接施工能率と、構造物の高い安全性・信頼性を両立することができる。
本発明の狙いは、VNによるα変態核効果を大入熱溶接HAZで利用するに際して、連続鋳造鋳片の表面割れを回避するために、0.007%より低いN量のもとでVN効果を引き出すことである。この技術的課題に対して、発明者らはC量と冷却速度の観点から基礎研究を行い、以下の新しい知見を得た。
0.006%以下の低いN量を前提に、C量とγ域での冷却速度に着眼してVN効果を検討した。その結果、C量が高くてγ域の冷却速度が小さい場合に、V炭窒化物であるV(C,N)のα変態核効果によってHAZ組織が安定的に微細化し、良好な靭性が得られることがわかった。具体的には、特許文献1の実施例の上限である0.07%より高い0.08%以上のC量のもとで、かつ、800℃から500℃の平均冷却速度が1.5℃/s以下の場合にV(C,N)がγ粒界やγ粒内のMnSなどに安定的に析出し、α変態核として機能することを突き止めた。特許文献1などの従来技術に対して、鋳片表面割れを回避するために単純にN量だけ低くすると、γ域でのVN析出が抑制されてVN効果が低下してしまう。
しかしながら、N量の低減と同時にC量を増加して、かつ、冷却速度が小さい場合に限定すると、VNに代わってV(C,N)の析出が促進し、これがVNと同様にα変態核として有効に機能することを見出したのである。VNとVCは結晶構造が同じで格子定数もほぼ同じであるから、これらの固溶体であるV(C,N)の格子定数はVNとほぼ同じとみなせる。従って、V(C,N)のαに対する格子整合性はVNのそれに比較して遜色なく、V(C,N)はVNと同様に高いα変態能を有すると考えられる。V(C,N)は冷却過程の800℃〜700℃のγ域で析出し、引き続く700℃〜500℃の冷却過程でV(C,N)を核にしてα変態が生じるから、この800℃〜500℃の冷却速度が冶金的に重要である。800℃〜500℃の平均冷却速度が1.5℃/sより大きいとγ域でV(C,N)が十分に析出せず、V(C,N)のα変態核効果は小さくなる。一方、この平均冷却速度が0.3℃/sより小さくなると、V(C,N)から変態したαの成長が促進されて、α組織が粗大化してしまう。従って、HAZにおける800℃〜500℃の平均冷却速度が1.5〜0.3℃/sとなる溶接条件を目安に本知見を適用することが重要である。溶接時の冷却速度の大小は、工業的には溶接入熱量の大小を用いて表現する慣例がある。そこで、上記の1.5〜0.3℃/sの平均冷却速度を溶接入熱量に対応させると、概ね20〜150kJ/mmとみなせる。
次に、HAZ靭性に及ぼすC量増加の有害性とN量低減の有益性を説明する。
本発明のようにC量を高めると、硬質第二相であるパーライトやセメンタイトが増えたり、α域において析出した炭化物で硬化して、一般的にHAZ靭性は脆化する。しかし、本発明では、C量を高めると同時にN量を低めることが特徴なので、固溶Nによる脆化が軽減されて、C量増加の有害性を相殺する。先の特許文献2〜4のようなH形鋼母材では、実施例に示されるように高いN量のもとで0.08%以上の高いC量が適用され、良好な靭性が得られている。これはH形鋼母材の熱間圧延によってγ粒が再結晶で細粒化するため、変態後のα組織が微細化するため、N量とC量の両方が高い場合でも良好な母材靭性が得られるのである。一方、特許文献1のような大入熱溶接HAZでは、H形鋼母材に比べるとγ粒が著しく大きくなるから、H形鋼母材に比べると変態後のα組織は相対的に粗大になる。特許文献1の実施例に示されるように、高いN量のもとで0.08%以上の高いC量を適用すると(表1の鋼B;N=0.010%、C=0.14%、V=0.072%)良好なHAZ靭性を確保することは難しい。
従って、本発明が対象とする大入熱溶接HAZでは、V(C,N)析出促進のために0.08%以上の高いC量を適用するが、同時にN量を0.006%以下に低減してその有害性を相殺することが重要である。つまり、本発明における0.006%以下の低いN量の意義は、一つは連続鋳片表面割れの回避であり、もう一つは高いC量の有害性を相殺することである。
本発明では、製造コストの観点からCaやMgを添加しないことが特徴である。
そこで、HAZにおけるV(C,N)の析出に及ぼすCaやMgの影響を基礎的に検討した。CaやMgは強力な脱硫元素であるから、Mnに優先して硫化物を形成する。V(C,N)の優先析出サイトとして、MnS、CaS、MgSの能力を検討した結果、HAZに分散するこれら硫化物の大きさと個数が同等ならば、MnSが最も有効なV(C,N)の析出サイトとして機能することが判明した。従って、CaやMgを添加しない本発明では、MnSをできるだけ有効に活用してV(C,N)の析出を促す観点から、MnとSの添加量を適正に制御することを重視した。
以下に本発明の鋼板における化学成分の限定理由について詳細に説明する。
Cは、本発明で重要な元素である。母材の強度を確保し、さらにHAZにおいてV(C,N)を析出させるために0.08%以上必要であり、これが下限である。HAZの冷却速度が比較的に速い条件のもとで安定的にV(C,N)を析出させるためには、0.10%を超える高いC量が好ましい。ただし、Cが0.2%を超えると母材やHAZの靭性を損なうため、これが上限である。
Siは、脱酸元素および強化元素として有効であるが、0.5%を超えるとHAZ靭性を損なうためこれが上限である。SiはMA生成を助長して大入熱溶接HAZ靭性を劣化させる傾向があるため、本発明ではできるだけ少ないほうが好ましい。
Mnは、母材の強度と靭性を経済的に確保し、さらにHAZにおいてV(C,N)の優先析出サイトとなるMnSを安定的に生成させるため0.5%以上必要である。ただし、2%を超えてMnを添加すると、中心偏析の有害性が顕著となって母材とHAZの靭性を損なうため、これが上限である。
Pは、不純物元素であり、HAZ靭性を安定的に確保するために0.02%以下に低減
する必要がある。
Sは、HAZにおいてV(C,N)の優先析出サイトとなるMnSを安定的に生成させるため0.001%以上必要である。ただし、Sが0.005%を超えて含まれると粗大な硫化物が生成して母材やHAZの靭性を損なうため、これが上限である。
Alは、脱酸を担い、不純物元素であるOを0.004%以下に低減するために必要である。Al以外にSiも脱酸に寄与するが、たとえSiが添加される場合でも0.001%以上のAlがないと安定的にOを0.004%以下に抑えることは難しい。ただし、Alが0.1%を超えると、アルミナ系の粗大酸化物やそのクラスターが生成し、母材とHAZの靭性を損なうため、これが上限である。
Vは、本発明で最も重要な元素である。大入熱溶接の冷却過程における800℃から500℃の平均冷却速度が1.5〜0.3℃/s(溶接入熱量20〜150kJ/mmに概ね対応)の場合に、γ粒界とγ粒内にV(C,N)として析出し、これがα変態核として機能することでα組織の微細化をもたらす。そのために必要な下限のVは0.01%である。Vが0.1%を超えるとα変態後のHAZにおいてV炭化物による析出硬化が顕著となってHAZ靭性が劣化する。したがって、これが上限である。
Nは、本発明で重要な元素である。連続鋳造鋳片の表面割れを安定的に回避するため、0.006%以下に抑える必要があり、これが上限である。このような低いN量は、HAZの固溶N脆化を軽減するため、0.08%以上の高いC量を適用する際の有害性を相殺する効果がある。ただし、HAZにおいてV(C,N)を析出させるために0.001%以上必要であり、これが下限である。
Oは、酸化物を構成し、一部の粗大酸化物が脆性破壊の発生起点として作用する有害性が懸念されるため、0.004%以下に抑える必要がある。
Cu、Ni、Cr、Mo、Bは、要求される母材の強度を確保するために添加される。いずれ元素も厚板圧延後の冷却過程でγ→α変態時の焼入性を高め、母材強度を高める効果がある。これらの元素が効果を発揮する下限は、Cu、Ni、Cr、Moについては0.05%であり、Bについては0.0003%である。ただし、これらの元素が多すぎるとHAZ靭性や溶接性が劣化するため、上限をもうける必要がある。Cu、Cr、Moの上限は1%であり、Niの上限は3%であり、Bの上限は0.003%である。
Nbは、母材の強度と靭性の両方を確保するために添加される。Nbは圧延γ組織を微細化し、γ→α変態時に焼入性を高め、α変態後に析出することで母材の強靭化に寄与する。この効果を発揮する下限は0.003%である。ただし、Nbが0.03%を超えて添加されるとHAZが硬化して脆化するので、これが上限である。
Tiは、母材とHAZの靭性を高めるために添加される。TiNを形成して鋳片加熱時やHAZ(最高加熱温度≦1350℃となる領域)のγ粒成長を抑制し、変態後のα組織を微細化して靭性を高める効果がある。この効果を発揮する下限は0.003%である。ただし、Tiが0.03%を超えて添加されるとHAZ靭性が硬化して脆化するので、これが上限である。
次に、本発明を適用した厚鋼板の製造方法の一例を説明する。
鉄鋼業の製鋼工程において、溶鋼の不純物元素を低減するとともに必要な合金元素を適正に添加し、連続鋳造によって鋳片を造る。この際、脱酸や脱硫の手順を考慮せず、CaやMgなどの低歩留元素を添加せず、鋳片の表面割れ感受性が低いため、製造コストが安価であることが本発明の特徴である。鋳造時の冷却途中あるいは冷却後に鋼片を再加熱し、厚板圧延によって15〜100mmの厚みの鋼板を造り、圧延後に空冷あるいは水冷する。水冷途中で水冷を停止して空冷することもある。必要に応じて各種の熱処理を行うことで母材の強度と靭性を調整することもある。
以上の如く製造された厚鋼板は、添加元素としてN量を0.006%以下の量として連続鋳造鋳片の表面割れを回避した上で、VとNの規定量の複合添加によりα変態核効果を得、N量の低下に伴うVN効果の低減をC量の増加でV(C,N)効果として補うと、溶接時の平均冷却速度が低い(0.3〜1.5℃/sec)場合に、換言すると、溶接入熱量が概ね20〜150kJ/mmとなる範囲において、高価なCaやMgを添加しなくとも、良好な靭性を確保できるので、−20℃〜0℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー平均値が100J以上である厚鋼板を、安価に提供することが可能となる。
即ち前述の厚鋼板であれば、造船や建築やそれ以外の溶接構造物に使用され、構造物の建造における高い溶接施工能率と、構造物の高い安全性・信頼性を両立することができる。
また、以上説明の厚鋼板において、CaやMgの積極的な添加を行わない安価な厚鋼板とし、V(C,N)のα変態核効果を活かすために、V(C,N)の析出を促進する観点から、MnSを有効活用するために、MnとSの範囲を前述の範囲に規定することにより、良好な靭性を確保できる厚鋼板を提供できる。
製鋼工程で溶鋼の化学成分を制御して連続鋳造によって鋼片を作製し、これを再加熱して厚板圧延によって15〜100mm厚みの鋼板とし、圧延後に空冷あるいは水冷を行った。必要に応じて熱処理を施し、降伏強度が325〜500MPa級である厚鋼板を製造した。製鋼工程において、脱酸や脱硫の手順は特に考慮せず、CaやMgは添加しなかった。
表1に鋼の化学成分と連続鋳造鋳片の表面われ有無を、表2に厚鋼板の機械的性質と1パス溶接継手のHAZ靭性を示す。
エレクトロガス溶接法(Electrogas Welding:EGW)では図1に示すような突合せ継手を、エレクトロスラグ溶接法(Electroslag Welding:ESW)では図2に示すようなT字継手を作製し、溶接入熱量が20〜150kJ/mmの1パス大入熱溶接を適用した。
図1に突き合わせ溶接部を示すが、厚鋼板の母材1、2とそれらを突き合わせ溶接した溶接金属部3を有し、板厚中心線Sに沿って溶接金属部3から溶接線(FL)を超えて溶接熱影響部(HAZ)4を通過する部位から試験片5を採取した。
図2にT字継手溶接部を示すが、厚鋼板からなるスキンプレート7に間隙をあけて厚鋼板からなるダイヤフラム8をT字状に配置し、前記間隙を挟むように沿わせて配置した裏当金9、10により溶接時の溶融スラグと溶融金属が溶接部から流れ出ないように囲み、溶融したスラグ浴の中に溶接ワイヤを供給し、主として溶融スラグの抵抗熱によって溶接ワイヤを溶融させ、溶着金属部12を形成してなる溶接部である。この溶接部においてダイヤフラム8の板厚中心線に沿って溶接金属部12から溶解融線(FL)を超えてスキンプレート側の溶接熱影響部13を通過してスキンプレート7の内部側に至る部位から試験片15を採取した。
図1と図2に示す要領で、溶解融線(Fusion Line:FL)から1mm離れた各試験片5、15のHAZ部分、あるいはFL上にノッチを入れ、EGW継手の試験片5は−20℃で、ESW継手の試験片15は0℃でシャルピー衝撃試験を行った。一つのノッチ位置と一つの試験温度について3本の試験を行い、平均の吸収エネルギーを採用した。シャルピー衝撃試験はJIS Z 2242に準拠し、JIS Z 2202のVノッチ試験片を用いた。
Figure 2007327099
Figure 2007327099
表1と表2に示す鋼1〜18は本発明鋼であり、鋼の化学成分は0.006%以下の低いN量のもとで適正にV量とC量が調整された鋼であり、連続鋳造鋳片の表面われは発生せず、0℃あるいは−20℃で100Jを超える良好なHAZ靭性が達成された。一方、表1と表2に示す鋼19〜29は比較鋼であり、鋼の化学成分が適正でないために、HAZ靭性が不十分であったり、連続鋳造鋳片の表面われが発生した。鋼19はCが少ないために、鋼25はVが少ないために、鋼27はNが少ないために、HAZのγ域でV(C,N)が十分に析出せず、V(C,N)のα変態核効果が十分に引き出せないため、HAZ組織の微細化が不十分となって良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼20はCが多いために硬化第二相(セメンタイト、パーライト、MA)の増加とV炭化物による析出硬化が生じて、良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼21はMnが少ないために、鋼22はSが少ないために、HAZのγ粒内においてV(C,N)の優先析出サイトであるMnSの個数が不足し、V(C,N)の析出が抑制され、V(C,N)のα変態核効果が十分に引き出せず、HAZ組織の微細化が不十分となって良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼23はSが多いために脆性破壊の発生起点として作用する粗大なMnSが増加して、良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼24はAlが少ないために脱酸が不十分なためにOを適正レベルまで低減できず、脆性破壊の発生起点として作用する粗大な酸化物が増加して、良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼26はVが多いために析出硬化が生じて、良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼28はNが多いために連続鋳造鋳片の表面われが発生した。さらに、固溶N脆化の助長によって0.14%の高Cに起因する有害性(硬化第二相の増加、V炭化物による析出硬化)を相殺することが難しく、良好なHAZ靭性が得られなかった。鋼29はMnが多いためにHAZ靭性が低下した。表2の比較鋼4’と比較鋼11’は、本発明鋼4、11と同じ母材を使用した試料であるが、溶接入熱量が少な過ぎるか、多過ぎるために、HAZ靭性が低下した。
エレクトロガス溶接突合せ継手におけるシャルピー試験片の採取要領を示す図である。 エレクトロスラグ溶接T字継手におけるシャルピー試験片の採取要領を示す図である。
符号の説明
3 溶接金属部、
4 溶接熱影響部(HAZ)、
5 試験片、
12 溶接金属部、
13 溶接熱影響部(HAZ)、
15 試験片、

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C :0.08〜0.2%、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.5〜2.0%、
    P :0.02%以下、
    S :0.001〜0.005%、
    Al:0.001〜0.1%、
    V :0.01〜0.1%、
    N :0.001〜0.006%、
    O :0.004%以下
    を含有し、残部鉄および不可避的不純物からなることを特徴とする、溶接入熱量が20〜150kJ/mmの大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
  2. さらに、質量%で、
    Cu:0.05〜1%、
    Ni:0.05〜3%、
    Cr:0.05〜1%、
    Mo:0.05〜1%、
    B :0.0003〜0.003%、
    Nb:0.003〜0.03%、
    Ti:0.003〜0.03%、
    の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。





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