以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
図1は、本発明の実施形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図である。また、図2は、複合機1の内部構成を示す縦断面図である。複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機1が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、プリンタ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
複合機1のプリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。なお、複合機1は、デジタルカメラ等が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録し、或いは、メモリカード等の各種記憶媒体が装填されて、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1に示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口2aの内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、被記録媒体である記録用紙が貯蔵され、例えば、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容される。給紙トレイ20は、図2に示すように、必要に応じてスライドトレイ20aを引き出すことによりトレイ面が拡大され、例えば、リーガルサイズの記録用紙が収容できるようになる。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31には、画像読取りを行う原稿が載置される。プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向(図2の左右方向)を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向(図2の紙面垂直方向)に往復動可能に設けられている。
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、操作パネル4の液晶表示部に表示され、この表示に基づいて、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
以下、複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。図2に示すように、複合機1の底側に給紙トレイ20が設けられ、給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から重送された記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙を上方へ案内する。用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。図3に示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、LFモータ71(図7参照)の駆動が伝達されて回転する。
給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として配設されており、給紙トレイ20に接離可能に上下動する。給紙アーム26は、図3に示すように、自重により又はバネ等に付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動されており、給紙トレイ20の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。給紙アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されることにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の用紙搬送路23の湾曲部17は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが装置フレームに固定されることにより構成されている。用紙搬送路23において、特に用紙搬送路23が曲がっている箇所には、回転コロ16が外側ガイド面へローラ面を露出するようにして、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。回転自在な各回転コロ16により、用紙搬送路23が曲がっている箇所において、ガイド面に摺接する記録用紙が円滑に搬送される。
図3に示すように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。インクジェット記録ヘッド39には、複合機1内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクカートリッジからインクチューブ41(本発明のインク供給管に相当、図4参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。なお、図3及び図4には、各色のインクを貯蔵した各インクカートリッジは図示されていない。
図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成を示すものである。図4に示すように、用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向(図4の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて、一対のガイドレール43,44が記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4の左右方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられて、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能に載置されている。このように、ガイドレール43,44が記録用紙の搬送方向にほぼ水平に並べられることにより、プリンタ部2の高さを低くして、装置の薄型化が実現される。
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(図4の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。ガイドレール43の上面には、搬送方向下流側の縁部に沿って摺動テープ40が貼られている。摺動テープ40は、キャリッジ38との摺動摩擦を低減するものであり、キャリッジ38の搬送方向上流側の端部が摺動テープ40上に載置されて、摺動テープ40の長手方向に摺動される。
記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。ガイドレール44の上面には、搬送方向下流側の縁部に沿って摺動テープ40が貼られている。キャリッジ38の下流側の端部が摺動テープ40上に載置されて、摺動テープ40の長手方向に摺動される。ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、図3に示すように、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と交差(本実施形態では直交)する方向に摺動可能になる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43,44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と交差する方向に往復動する。なお、図3,4には表れていないが、縁部45には、キャリッジ38の摺動を円滑にするためにグリースなどの潤滑剤が塗布されている。
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ73(図7参照)から駆動力が入力され、駆動プーリ47の回転によりタイミングベルト49が周運動する。なお、タイミングベルト49としては、無端環状のもののほか、両端部がキャリッジ38に固着された有端ベルトを用いてもよい。
キャリッジ38の底面側にはタイミングベルト49が固着されている。したがって、タイミングベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、インクジェット記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動される。
ガイドレール44には、リニアエンコーダ77(図7参照)のエンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。図4に示すように、ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38の往復動方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持部33,34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持部33,34に係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、図には表れていないが、支持部33,34の一方には、板バネが設けられており、該板バネによりエンコーダストリップ50の端部が係止されている。この板バネにより、エンコーダストリップ50には、長手方向に張力が作用して弛みが生じることが防止されるとともに、エンコーダストリップ50に外力が作用した場合には、該板バネが弾性変形して、エンコーダストリップ50が撓むようになっている。
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透明な透光部と光を遮断する遮光部とが、所定ピッチで長手方向に交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、キャリッジ38とともにエンコーダストリップ50の長手方向に沿って往復動し、その往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。インクジェット記録ヘッド39には、インクの吐出を制御するヘッド制御基板が設けられている。ヘッド制御基板は、光学センサ35の検知信号に基づくパルス信号を出力し、このパルス信号に基づいてキャリッジ38の位置や速度が判断されて、キャリッジ38の往復動が制御される。なお、図4では、ヘッド制御基板はキャリッジ38のヘッドカバーで覆われており、図に表れていない。
図3及び図4に示すように、用紙搬送路23の下側には、インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅、すなわち搬送方向と直交する方向における記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
図4に示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ84等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53(図5参照)からインクを吸引することによりインクジェット記録ヘッド39内の気泡や異物を除去するものである。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53を覆うキャップ52と、キャップ52を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ52をインクジェット記録ヘッド39のノズル53に接離させるための移動機構とからなる。なお、ポンプ機構及び移動機構はガイドレール44の下方にあるため、これらは図4には表れていない。インクジェット記録ヘッド39から気泡等の吸引除去を行う際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ52上に位置するようにキャリッジ38が移動される。その状態でキャップ52が上方へ移動されて、インクジェット記録ヘッド39の下面にノズル53を密閉するように密着される。ポンプ機構によりキャップ52内が負圧にされることにより、インクジェット記録ヘッド39のノズル53からインクが吸引される。ノズル53内の気泡や異物は、該インクとともに吸引除去される。
廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれるインクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ84は、プラテン42の上面であって、キャリッジ38の往復動範囲内且つ画像記録範囲外に形成されている。なお、廃インクトレイ84内にはフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、該フェルトに吸収されて保持される。これらメンテナンスユニットにより、インクジェット記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止等のメンテナンスが行われる。
図1に示すように、プリンタ部2の筐体の正面には、扉7が開閉自在に設けられている。扉7が開かれると、不図示のカートリッジ装着部が装置正面側に露出され、インクカートリッジが装抜可能になる。カートリッジ装着部は、図示されていないが、インクカートリッジに対応して4つの収容室に区画されており、各収容室に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクを保持するインクカートリッジが収容される。図4に示すように、カートリッジ装着部からキャリッジ38へは、各色インクに対応した4本のインクチューブ41(41a,41b,41c,41d)が引き回されている。キャリッジ38側へ引き回されたインクチューブ41は、キャリッジ38に設けられた後述の管接続部140に接続される。キャリッジ38に搭載されたインクジェット記録ヘッド39には、各インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから各色インクが供給される。なお、カートリッジ及びカートリッジ装着部としては、インクチューブ41によりインクを供給するタイプのものであれば周知の様々な機構を採用することが可能であり、ここではその構成については特に詳述しない。
インクチューブ41は、合成樹脂製のものであり、ストレート形状に形成されたチューブである。このインクチューブ41は、ストレート形状を保持する適度な腰(曲げ剛性)を有し、外力が付加されることにより撓む可撓性と、該外力が解除されたときに元の形状に復元する弾性とを備える。そのため、インクチューブ41は、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化される。カートリッジ装着部から導出された各色のインクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置本体の固定クリップ36に一旦固定されている。各インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分が装置本体等に固定されておらず、当該部分がキャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。なお、図4においては、固定クリップ36から図示しないカートリッジ装着部側へ延びるインクチューブ41が途中で分断されており、その先は省略されている。
図4に示すように、インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分がキャリッジ38の往復動方向に反転する湾曲部を形成して引き回されている。換言すれば、インクチューブ41は、平面視において略U字形状を形成するように引き回されている。キャリッジ38には管接続部140が設けられている。この管接続部140に4本のインクチューブ41が接続される。これにより、4本のインクチューブ41は、キャリッジ38の管接続部140において、記録用紙の搬送方向に沿って水平に配列されて、キャリッジ38の往復動方向に延出されている。なお、管接続部140の構成については、後に詳述される。
管接続部140からキャリッジ38の往復動方向に延出された4本のインクチューブ41は、管接続部140から固定クリップ36に至るまでの所定箇所で、より具体的には、管接続部140から後述する回動支持部材100に至るまでの所定箇所でクランプ170(本発明の制止部材に相当)によって束ねられている。このクランプ170は、各インクチューブ41を束ねてインクチューブ41を整列させるとともに、回動支持部材100の保持部105におけるインクチューブ41の過度な摺動移動を制止する役割を果たす。なお、かかるクランプ170の具体的構成については後に詳述される。
固定クリップ36においては、4本のインクチューブ41が、図4の紙面に垂直な方向に積み重ねられた状態に配列されて固定されている。固定クリップ36は、上側に開口した断面がU字形状の部材である。その開口から各インクチューブ41が挿入されて垂直方向に挿入順に積み重ねられる。これにより、4本のインクチューブ41が、固定クリップ36により一体に狭持される。このようにインクチューブ41が狭持された結果、4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36へ向かって、水平方向の配列が垂直方向の配列になるように捻られながら、4本全体として略U字形状に湾曲されている。
4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36までの長さが略同一にされている。キャリッジ38において、記録用紙搬送方向の最も上流側に配置されたインクチューブ41aが、固定クリップ36において最も上側に配置されている。そして、上記インクチューブ41aよりも下流側に隣接するインクチューブ41bが、固定クリップ36において該インクチューブ41aの次となる下側に配置されている。これを繰り返して、インクチューブ41は、管接続部140において、記録用紙搬送方向の上流側から下流側へ向かって順に配置され、また、固定クリップ36において、上側から下側へ順に配置される。上述したように、各インクチューブ41の長さは略同一に寸法設計されている。そのため、キャリッジ38の記録用紙搬送方向の配列に応じて、各インクチューブ41の略U字形状の湾曲部の中心が記録用紙搬送方向にずらされる。したがって、湾曲部において、4本のインクチューブ41が上側から下側へ向かって斜め方向に整列される。これにより、キャリッジ38に追従して各インクチューブ41が姿勢変化する際に、インクチューブ41同士が干渉することが低減される。なお、本実施形態では、4本のインクチューブ41について示しているが、インクチューブ41の本数が更に増えた場合も同様に配置される。もちろん、インクチューブ41の本数は使用するインク色に応じて適宜変更可能であり、例えば、モノクロ画像記録装置のようにブラックインクが貯留された単一カートリッジのみを使用する場合は、当然ながらインクチューブ41の本数は1本である。
制御部64(図7参照)を構成するメイン基板からインクジェット記録ヘッド39のヘッド制御基板へはフラットケーブル85(本発明の導電線に相当)を通じて記録用信号等の伝送が行われる。なお、メイン基板は装置正面側(図4手前側)に配設されており、図4では示されていない。フラットケーブル85は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、図示しないメイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続している。
フラットケーブル85は、キャリッジ38の往復動に追従して撓む可撓性を有する。図4に示すように、フラットケーブル85は、キャリッジ38から固定クリップ86までの部分がキャリッジ38の往復動方向に反転する湾曲部を形成して引き回されている。換言すれば、フラットケーブル85は、薄帯状の表裏面を垂直方向として、平面視において略U字形状を形成するように引き回されている。つまり、フラットケーブル85の表裏面は、その垂線が水平方向を向いて、その面が垂直方向に拡がっている。また、キャリッジ38からフラットケーブル85が延出される方向と、インクチューブ41が延出される方向とは、キャリッジ38の往復動方向に対して同方向である。
キャリッジ38に固定されたフラットケーブル85の一端側は、前述したとおり、キャリッジ38に搭載された図示しないヘッド制御基板に電気的に接続されている。固定クリップ86に固定されたフラットケーブル85の他端側は、さらにメイン基板へ延出されて電気的に接続されている。フラットケーブル85が略U字形状に湾曲された部分は、いずれの部材にも固定されておらず、インクチューブ41と同様に、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。
キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化するインクチューブ41及びフラットケーブル85は、回動支持部材100によって支持されている。具体的には、回動支持部材100のアーム103(図8参照)でフラットケーブル85が担持され、先端側に設けられた保持部105(図8参照)でインクチューブ41が保持される。この回動支持部材100の構成及びその回動支持機構については、後段で詳述される。
インクチューブ41及びフラットケーブル85の装置正面側には、規制壁37が装置幅方向(図4の左右方向)に延設されている。規制壁37は、インクチューブ41に当接する垂直方向の壁面を有する壁であり、キャリッジ38の往復動方向に沿って直線状に立設されている。規制壁37は、インクチューブ41を固定する固定クリップ36からインクチューブ41の延出方向に設けられており、固定クリップ36により垂直方向に配列された4本のインクチューブ41のすべてが当接可能な高さである。
インクチューブ41は、固定クリップ36から規制壁37に沿って延出されており、規制壁37の装置背面側の壁面に当接することによって、装置正面側、換言すればキャリッジ38から離れる方向へ膨出することが規制される。インクチューブ41が規制壁37に当接した状態では(図17参照)、インクチューブ41の固定クリップ36から湾曲部に至るまでの部分が、固定クリップ36における垂直方向の配列に維持されるので、略U字形状の湾曲部において、インクチューブ41が所望の斜め方向の配置に確実に維持される。
固定クリップ36は、装置の幅方向の略中央付近に設けられており、インクチューブ41が規制壁37へ向かって延出されるように固定している。つまり、規制壁37の垂直方向の壁面と、固定クリップ36がインクチューブ41を延出させる方向は、平面視において90°未満の角度、より具体的には45°未満の角度をなしている。上述したように、インクチューブ41は適度な腰(曲げ剛性)を有し、可撓性及び弾性を有するものである。そのため、固定クリップ36により規制壁37に対して角度をもって延出されることにより、規制壁37の壁面に押し付けられる。これにより、キャリッジ38の往復動範囲において、インクチューブ41が規制壁37に沿って躾けられる範囲が多くなり、インクチューブ41の湾曲部からキャリッジ38までの部分が装置背面側、換言すればキャリッジ38側へ膨出する範囲を小さくすることができる。
固定クリップ86は、装置の幅方向の略中央付近であって固定クリップ36より湾曲内側となる位置に設けられており、フラットケーブル85を規制壁37へ向かって延出させるように該フラットケーブル85を固定している。つまり、規制壁37の垂直方向の壁面と、固定クリップ86がフラットケーブル85を延出させる方向は、平面視において90°未満の角度、より具体的には45°未満の角度をなしている。フラットケーブル85は可撓性を有するものであるが、適度な腰(曲げ剛性)をも有するので、固定クリップ86により規制壁37に対して角度をもって延出されることにより、規制壁37の壁面にインクチューブ41を挟んで間接的に押し付けられる。これにより、キャリッジ38の往復動範囲において、フラットケーブル85が規制壁37に沿って躾けられる範囲が多くなり、フラットケーブル85の湾曲部からキャリッジ38までの部分が装置背面側、換言すればキャリッジ38側へ膨出する範囲を小さくすることができる。なお、規制壁37に直接に押し付けられるか間接に押し付けられるかは、インクチューブ41とフラットケーブル85との相対的な配置関係に依存する。したがって、インクチューブ41とフラットケーブル85との配置関係が逆転すれば、フラットケーブル85が規制壁37に直接押し付けられ、インクチューブ41は間接的に押し付けられる。
図5は、インクジェット記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。図に示すように、インクジェット記録ヘッド39は、その下面にノズル53が、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インク毎に、記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、同図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復動方向である。CMYBkの各色インクのノズル53は、それぞれ記録用紙搬送方向に列をなしており、その各色インクのノズル53の列が、キャリッジ38の往復動方向に並んでいる。各ノズル53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じてノズル53の列数を増減することも可能である。
図6は、インクジェット記録ヘッド39の内部構成を示す概略的な部分拡大断面図である。同図に示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたノズル53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形されてキャビティ55の容積を縮小する。このキャビティ55の容積変化に伴って、キャビティ55内のインクがノズル53からインク滴として吐出される。
キャビティ55は、各ノズル53毎に設けられており、複数のキャビティ55に渡ってマニホールド56が形成されている。マニホールド56は、CMYBkの各色インク毎に設けられている。マニホールド55の上流側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57も、CMYBkの各色インク毎に設けられている。各バッファタンク57には、インクチューブ41を流通するインクがインク供給口58から供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59からポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
このようにして、インクカートリッジからインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク流路が構成される。そして、このインク流路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、圧電素子54の変形によってノズル53からインク滴として記録用紙に吐出される。
図3に示すように、画像記録ユニット24の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。図3では、ピンチローラは、他の部材に隠れて表れていないが、搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。画像記録ユニット24の下流側には、一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71(図7参照)から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転は同期されている。搬送ローラ60に設けられたロータリーエンコーダ76(図7参照)は、搬送ローラ60とともに回転するエンコーダディスク61のパターンを光学センサで検知する。この検知信号に基づいて、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
記録済みの記録用紙は拍車ローラ63によって圧接される。そのため、記録用紙に記録された画像を劣化させないように拍車ローラ63のローラ面には拍車状に凹凸が付けられている。拍車ローラ63は、排紙ローラ62と接離する方向にスライド移動可能に設けられ、コイルバネにより排紙ローラ62に圧接するように付勢されている。排紙ローラ62と拍車ローラ63との間に記録用紙が進入すると、拍車ローラ63は、記録用紙の厚み分だけ付勢力に反して退避し、該記録用紙を排紙ローラ62に圧接するように狭持する。これにより、排紙ローラ62の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。ピンチローラも搬送ローラ60に対して同様に設けられたものであり、記録用紙を搬送ローラ60に圧接するように狭持して、搬送ローラ60の回転力を確実に記録用紙へ伝達させる。
図7は、複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機1の全体動作を統括して制御するものであり、フラットケーブル85が接続されるメイン基板により構成される。なお、スキャナ部3に関する構成は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略する。制御部64は、図に示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LF(搬送)モータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51へ伝達される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
駆動回路74は、CRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されることによりキャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39から所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路75は、ヘッド制御基板に搭載されており、制御部64を構成するメイン基板からヘッド制御基板へは、フラットケーブル85により信号が伝送される。
ASIC70には、搬送ローラ60の回転量を検出するロータリーエンコーダ76、キャリッジ38の位置検知を行うリニアエンコーダ77が接続されている。キャリッジ38は、複合機1の電源オンにより、ガイドレール43,44の一方の端まで移動されて、リニアエンコーダ77による検知位置が初期化される。この初期位置から、キャリッジ38がガイドレール43,44上を移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ35がエンコーダストリップ50のパターンを検知し、これに基づくパルス信号数がキャリッジ38の移動量として制御部64に把握される。制御部64は、この移動量に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ73の回転を制御する。
ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
以下、インクチューブ41及びフラットケーブル85を支持する回動支持部材100について詳述する。図8は、回動支持部材100の正面図であり、図9は、図8における矢視IXの側面図である。また、図10は、図16における切断線X−Xの断面図である。なお、図10において、回動支持部材100の先端側の保持部105は省略されている。
図8に示すように、回動支持部材100は、回動支点となる軸部102と、軸部102から水平方向に延出されたアーム103と、該アーム103の上端と一体に構成された担持部104と、アーム103の先端側に形成された保持部105と、軸部102及びアーム103に対してクランク形状をなすようにアーム103から該アームの延出方向と同方向に延出された補助アーム106とを有する。これらは、線鋼材が曲折されることにより一体に形成されている。
軸部102は、アーム103及び補助アーム106に対して略直角に曲折されている。また、アーム103と補助アーム106とは平行となっている。回動支持部材100の支持機構の詳細は後述するが、装置本体に固定された支持基板110の軸孔111に補助アーム106が挿入されて支持基板110の裏面に通されて、軸部102が軸孔111に収められることにより、回動支持部材100が支持基板110で支持される(図10参照)。図10に示すように、軸部102は略垂直方向に軸支され、アーム103は略水平方向に延出されている。軸部102は、軸孔111に対して該軸部102の周方向に摺動可能に支持されている。すなわち、回動支持部材100は、支持基板110に回動自在に支持されている。したがって、アーム103に水平方向の荷重が加えられると軸部102を回動支点としてアーム103が略水平面を回動する。
水平方向に延出されたアーム103の上端は、フラットケーブル85を担持するための担持部104である。担持部104は、表裏面を垂直方向とするフラットケーブル85の下端と接触する。フラットケーブル85は、キャリッジ38に追従して姿勢変化する際に、担持部104を自在に摺動する。したがって、キャリッジ38の往復動範囲において、担持部104がフラットケーブル85を摺動自在に担持できるように、担持部104を構成するアーム103の長さが設定されている。
アーム103の先端側に形成された保持部105は、インクチューブ41を保持するものである。保持部105は、図8に示すように、上下方向に縦長の矩形となる環107と、環107から先端側に突出された下端部108と、下端部108の先端に形成された湾曲部109とからなる。環107において、内寸の横幅及び高さとインクチューブ41の外径との間には、環107の中でインクチューブ41の配列が入れ替わらず、且つ、インクチューブ41の延出方向に自由に摺動できる寸法関係がある。仮に、インクチューブ41の外径がすべてAとすると、この外径Aと環107の内寸の横幅L1及び環107の内寸の高さH1と間には、A≦L1<2A、4A≦H1の関係が成り立つ。環107は、回動支持部材100を形成する線鋼材がアーム103から起立するように曲折され、さらに縦長矩形となるように曲折されることにより形成される。環107の下端部108は、アーム103の延出方向と略同方向に延出されている。下端部108の先端は、上方へ曲折されてからアーム103の延出方向外側へ円弧状に湾曲された湾曲部109が形成されている。
図9に示すように、環107のアーム103からの起立部分107aの軸線112(線鋼材の中心)は、軸部102の軸線113に対して傾斜されている。つまり、軸部102の軸線113が垂直方向であるのに対し、環107の起立部分107aの軸線112は、垂直方向に対して傾斜している。起立部分107aの傾斜方向は、アーム103に対して下端部108が配置される側と反対側である。環107は、軸線112方向に縦長矩形に形成されているので、軸線112が下端部108と反対側に傾斜されることにより、下端部108が、アーム103の高さ位置以上となる。つまり、下端部108は、アーム103の仮想支持面114より上側に位置する。
4本のインクチューブ41は、保持部105の環107に挿通され、下端部108に担持されることにより、インクチューブ41の長手方向の所定部位が保持部105に摺動可能に保持される。環107は、4本のインクチューブ41を環囲して固定クリップ36に固定された垂直方向の配列を維持した状態で保持する。これにより、4本のインクチューブ41がキャリッジ38に追従して姿勢変化する際に暴れることがなく、上記所定部位において垂直方向の配列が維持された状態で一体に姿勢変化される。インクチューブ41は、環107に環囲された状態で延出方向に摺動可能であり、インクチューブ41の姿勢変化に際してインクチューブ41が環107に対して適度に摺動することにより、インクチューブ41に過剰な負荷が生じない。一方、インクチューブ41の姿勢変化に伴い、インクチューブ41と環107との摩擦により、インクチューブ41の姿勢変化が、回動支持部材100を回動させる回動力として該回動支持部材100に伝達される。これにより、インクチューブ41の姿勢変化に伴って回動支持部材100が回動される。
保持部105がインクチューブ41を保持する位置は、インクチューブ41の姿勢変化に適合するように調整される。図16に示すように、インクチューブ41のU形状の湾曲半径が最も大きくなる位置(キャッピング位置)にキャリッジ38が移動した際に、インクチューブ41が、固定クリップ36から離れる方向へキャリッジ38から延出される場合には、インクチューブ41の最も装置背面側となる所定箇所121より固定クリップ36側(図16左側)を保持部105に保持させればよい。一方、インクチューブ41が、固定クリップ36から離れる方向へキャリッジ38から延出されない場合には、固定クリップ36から記録用紙搬送方向に沿って装置背面側に延びる仮想線122がインクチューブ41に交わる所定箇所123より固定クリップ36側を保持部105に保持させればよい。
保持部105がインクチューブ41を保持する長手方向における所定部位が、インクチューブ41が規制壁37に沿って姿勢変化する範囲である場合は、保持部105の環107に環囲されたインクチューブ41の上記所定部位は、インクチューブ41の姿勢変化により規制壁37に当接し得る。前述したように、環107は、4本のインクチューブ41における垂直方向の配列を維持するので、インクチューブ41は、垂直方向に配列された状態で規制壁37に当接する。これにより、4本のインクチューブ41が均等に規制壁37に当接するため、規制壁37に当接した際の応力が特定のインクチューブ41に集中しないという利点がある。なお、保持部105が当接する規制壁37の所定箇所には凹欠部120(図15参照)が形成されているが、これについては後述される。
環107に環囲された4本のインクチューブ41は、さらに環107より先端側の下端部108に担持される。前述したように、下端部108は、アーム103より高い位置にある。つまり、下端部108に担持された最も下側のインクチューブ41は、担持部104に担持されたフラットケーブル85の下端より高い位置となる。
下端部108に担持されたインクチューブ41は、キャリッジ38に追従した姿勢変化に伴って、環107より先端側の下端部108上を摺動する。つまり、下端部108の環107と湾曲部109との間では、インクチューブ41が摺動自在である。下端部108の先端側は上方に曲折されて湾曲部109が形成されているので、インクチューブ41が下端部108から脱落することが防止される。また、湾曲部109はアーム103の延出方向外側へ円弧状に湾曲されているので、インクチューブ41に線鋼材の先端や尖った部分が接触することがない。これにより、インクチューブ41の損傷が防止される。
以下、回動支持部材100を支持する支持基板110の構成とともに、回動支持部材100を回動可能に支持する支持機構について詳述する。図11は、回動支持部材100の回動中心部の拡大平面図であり、図12から図14は、回動支持部材100の回動中心部の拡大斜視図である。また、図15は、図17における矢視XVの部分拡大図である。
図4に示すように、規制壁37より装置背面側、すなわちキャリッジ38側には支持基板110が装置本体に固定されている。支持基板110は、規制壁37と装置幅方向の長さが略同一の平板であり、装置奥行き方向の幅は、規制壁37からガイドレール44までの空間に収まる幅である。
図4及び図11に示すように、支持基板110には、回動支持部材100の軸部102を軸支する軸孔111が垂直方向に穿設されている。軸孔111は、インクチューブ41及びフラットケーブル85が引き回された平面視U字形状の湾曲内側に配置されている。この軸孔111に回動支持部材100の軸部102が軸支され、アーム103がインクチューブ41及びフラットケーブル85へ向かって略水平方向に延出される。軸孔111から支持基板110の装置奥行き方向の縁部116までの距離は、アーム103の基端(軸部102側)から保持部105(図8参照)までの長さより短いので、アーム103が回動することにより、保持部105を含むアーム103全体が支持基板110の上面内に収容された状態から(図17参照)、保持部105が支持基板110の上面から外れる状態(図16参照)まで姿勢変化する。
図4、図10及び図11に示すように、支持基板110の上面における軸孔111の周囲には、アーム103を支持する第1支持リブ117が形成されている。第1支持リブ117は、軸孔111を中心とした円弧状のものであり、支持基板110の上面から上方に突出している(図10参照)。この第1支持リブ117は、アーム103の回動範囲にわたって形成されている。軸孔111から第1支持リブ117までの距離は特に限定されないが、第1支持リブ117が保持部105に近くなるほど、保持部105の高さ位置が正確に決められるので好適である。第1支持リブ117の上端117aがアーム103の回動範囲においてアーム103の下端に当接する。第1支持リブ117の上端117aの高さ位置がアーム103の回動範囲において変化しないように、第1支持リブ117は支持基板110の上面から一定の高さにされている。第1支持リブ117の高さは、保持部105を、特に下端部108(図8参照)を支持基板110の上面から浮いた状態に維持できる高さである。
図10に示すように、支持基板110の下面における軸孔111の周囲には、補助アーム106を支持する第2支持リブ118が形成されている。図には表れていないが、第2支持リブ118も、第1支持リブ117と同様に、軸孔111を中心とした円弧状のものであり、支持基板110の下面から下方に突出している。また、第2支持リブ118は、アーム103の回動範囲、すなわち、アーム103の回動に伴って回動する補助アーム106の回動範囲にわたって形成されている。軸孔111から第2支持リブ118までの距離は特に限定されないが、第2支持リブ118が軸孔111から遠ければ、補助アーム106の支持力が増す。第2支持リブ118の下端118aがアーム103の回動範囲において補助アーム106に当接する。第2支持リブ118の下端118aの高さ位置がアーム103の回動範囲において変化しないように、第2支持リブ118は支持基板110の下面から一定の高さにされている。第2支持リブ118の高さは、保持部105を、特に下端部108を支持基板110の上面から浮いた状態に維持できる高さである。
支持基板110に形成された第1支持リブ117によりアーム103が所定の高さに支持されて、保持部105が支持基板110の上面から浮いた状態に維持されるので、保持部105の下端部108が支持基板110の上面に当接することがない。さらに、第2支持リブ118により補助アーム106を所定の高さに支持されることによっても、保持部105が支持基板110の上面から浮いた状態に維持される。これにより、第1支持リブ117及び第2支持リブ118と相まって、アーム103の回動範囲において保持部105が支持基板110の上面から確実に浮いた状態に維持される。
図10から図14に示すように、支持基板110の軸孔111付近には、規制壁37からキャリッジ38側に隔てられて、軸孔111を中心とする略円筒状のガイド板130が立設されている。ガイド板130には、回動支持部材100の回動範囲を確保するべく、回動支持部材100の回動範囲にわたって切り欠き131が形成されており、軸孔111から延出されたアーム103は切り欠き131に挿通される。言い換えれば、この切り欠き131によって回動支持部材100の回動範囲が規制される。
ガイド板130には、ネジリコイルバネ132(本発明の付勢手段、バネ部材の一例)が支持される。ネジリコイルバネ132は、鋼などの金属からなる素線が巻回された円筒状のコイル部133と、該コイル部133の両端に設けられたアーム134(本発明の固定端に相当)及びアーム135(本発明の自由端に相当)とを有するものである。このネジリコイルバネ132は、コイル部133の円筒軸の周りにねじりモーメントを受けるものである。アーム134及びアーム135は荷重を受ける部位であり、一方のアーム134はコイル部133から径方向内側へ延出され、他方のアーム135はコイル部133から径方向外側へ延出されている。これらアーム134,135に荷重が加えられることにより、コイル部133の円筒軸の周方向に回転トルクが発生する。なお、本実施形態では、付勢手段の一例としてネジリコイルバネ132を適用した例について説明するが、上記回転トルクを発生させるバネであれば如何なるバネであっても適用可能であり、上記ネジリコイルバネ132に代えて、例えば、トーションバネやゼンマイバネ(渦巻きバネ)、竹の子バネを用いてもよい。
アーム134は、ガイド板130に形成された掛止部129に引っ掛けられることによりガイド板130に掛止されている。掛止部129は、図12及び図13に示すように、ガイド板130における上記切り欠き131側の端面に設けられており、ガイド板130の上端側が水平方向に突出した鍔状に形成されている。
アーム135は、図11及び図12に示すように、コイル部133から径方向外側へ延出されたストレート部136と、ストレート部136の先端が湾曲された湾曲部137とを有する。湾曲部137が回動支持部材100のアーム103に引っ掛けられる。湾曲部137の内径は、アーム103をその内径側に容易に導入し得るように、回動支持部材100のアーム103の径よりも若干大きめに寸法設計されている。この湾曲部137は、ストレート部136の先端を所定の角度だけ折り返すことにより形成することができる。折り返し角度は、湾曲部137からアーム103が外れない程度であれば任意であるが、本実施形態では、略180°となっている。なお、折り返し角度を180°より大きくし、湾曲部137の折り返し先端とストレート部136との離間距離をアーム103の径よりも小さくすることで、アーム103の外れ防止効果を向上させることができる。
上述したネジリコイルバネ132は、図11及び図12に示すように、回動支持部材100のアーム103を矢印139の方向に付勢するようにガイド板130に取り付けられる。詳細には、ネジリコイルバネ132をアーム135側からガイド板130に挿入して、図示するように、アーム135の湾曲部137を回動支持部材100のアーム103に引っ掛ける。そして、アーム135を静止させておいた状態で、矢印139の方向に荷重(付勢力)が生じる方向にコイル部133を所定角度だけ捻じる。例えば、コイル部133が右巻きに巻回されたものである場合は左巻き方向に、コイル部133が左巻きに巻回されたものである場合は右巻き方向に捻る。そのとき生じた周方向の荷重を保持したまま、アーム134をガイド板130の掛止部129に引っ掛ける。このようにしてガイド板130に設けられたネジリコイルバネ132は、主に、図16に示すように、フラットケーブル85のU形状の湾曲部が大きくなる側にキャリッジ38が移動した際に、すなわち、キャリッジ38がキャッピング位置に移動した際に、特有の効果を奏する。なお、ネジリコイルバネ132による作用及び効果については後述する。
本実施形態では、ガイド板130は、ネジリコイルバネ132を支持するだけでなく、インクチューブ41及びフラットケーブル85を規制壁37に沿う方向に案内する役目も担う。上述したように、ガイド板130は、規制壁37からキャリッジ38側に隔てられて設けられている。ガイド板130と規制壁37との間には、インクチューブ41及びフラットケーブル85が挿通されており、これらがガイド板130の壁面に当接することにより、固定クリップ36又は固定クリップ86からキャリッジ38側へ屈曲することが抑えられる。これにより、インクチューブ41及びフラットケーブル85に座屈を生じさせることなく、インクチューブ41及びフラットケーブル85は規制壁37に沿う方向に延出される。また、インクチューブ41及びフラットケーブル85がキャリッジ38側に折り返すように曲げられることにより生じるU字形状の湾曲部の中心を規制壁37側に寄せることができ、インクチューブ41及びフラットケーブル85の湾曲部の拡大が防止されるとともに、固定クリップ36又は固定クリップ86からキャリッジ38までのインクチューブ41及びフラットケーブル85の長さを最短にすることができる。
図15に示すように、規制壁37には、インクチューブ41の長手方向の所定部位を保持する回動支持部材100の保持部105との当接を回避するための凹欠部120が形成されている。本実施形態では、凹欠部120は、規制壁37を厚み方向に貫通する貫通孔として形成されているが、規制壁37が厚い場合には、規制壁37の壁面を凹陥させるように形成されていてもよい。また、規制壁37が凹欠部120を隔てて2つに分離されていてもよい。凹欠部120は、回動支持部材100の保持部105付近の一部、保持部105の環107、下端部108及び湾曲部109に対応した形状であるが、これらが規制壁37に当接しなければ凹欠部120の形状は特に限定されない。これにより、インクチューブ41が規制壁37の壁面に当接した状態で、回動支持部材100の保持部105付近が凹欠部120内に進入して、規制壁37と当接しないことになる。この作用効果は後述される。
続いて、インクチューブ41を束ねるクランプ170について説明する。図18は、図14における要部XVIII(破線で囲まれた部分)の拡大詳細図である。また、図19は、クランプ170の四面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は底面図を示す。
図14、図18及び図19に示すように、クランプ170は、4本のインクチューブ41(41a,41b,41c,41d)を掴み持つようにして束ねるものであり、側面視で略コの字形状の把持部171,172を有する。このクランプ170は合成樹脂製のものであって、適度な弾性を有する。
本実施形態では、クランプ170は、図4、図16及び図17に示すように、保持部105がインクチューブ41を保持する位置よりも管接続部140側に設けられている。また、このクランプ170も保持部105の保持位置と同様に、インクチューブ41の姿勢変化に適合する位置に適宜調整される。すなわち、図16に示すように、インクチューブ41のU形状の湾曲半径が最も大きくなる位置(キャッピング位置)にキャリッジ38が移動した際に、インクチューブ41が、固定クリップ36から離れる方向へキャリッジ38から延出される場合には、インクチューブ41の最も装置背面側となる所定箇所121より固定クリップ36側(図16左側)であって、かつ、保持部105の保持位置よりも管接続部140側に設ければよい。一方、インクチューブ41が、固定クリップ36から離れる方向へキャリッジ38から延出されない場合には、固定クリップ36から記録用紙搬送方向に沿って装置背面側に延びる仮想線122がインクチューブ41に交わる所定箇所123より固定クリップ36側であって、かつ、保持部105の保持位置よりも管接続部140側に設ければよい。
把持部171は、1本のインクチューブ41のみを把持するものであり、本発明の第1把持部に相当する。本実施形態では、回動支持部材100の保持部105によって垂直方向に配列された4本のインクチューブ41のうち最上位のインクチューブ41aだけが把持部171で把持されている。また、把持部172は、3本のインクチューブ41をまとめて把持するものであり、本発明の第2把持部に相当する。本実施形態では、保持部105によって垂直方向に配列された4本のインクチューブ41のうち、インクチューブ41aを除く他のインクチューブ41b,41c,41dが把持部172でまとめて把持されている。
図19に示すように、把持部171は、大別して、略コの字形状の溝部173と、溝部173への挿入口176の縁部に設けられた爪状の突起部174とを有する。溝部173は、1本のインクチューブ41が挿入可能なサイズに形成されている。溝部173の溝幅はインクチューブ41の外径よりも若干狭く、例えば、インクチューブ41の外径寸法の約8割程度に形成されている。したがって、インクチューブ41を溝部173の奥部に挿入すると、インクチューブ41のチューブ壁或いは溝部173の両側壁175が弾性変形される。この弾性変形により生じる復元力によってクランプ170はインクチューブ41を把持する。これにより、クランプ170がインクチューブ41に固着される。
突起部174は、挿入口176の縁部において、溝部173の両側壁175それぞれから互いに近づく方向に突出している。したがって、挿入口176は突起部174によって溝部173の溝幅よりも狭められている。この突起部174が設けられているため、溝部173に一旦挿入されたインクチューブ41の抜け外れが防止される。突起部174の頂部から挿入口176側には、挿入口176の外側へ向けて末広がりとなるように傾斜された傾斜面178が形成されている。この傾斜面178によって、挿入口176に押し付けられたインクチューブ41が溝部173の奥側へ円滑に案内される。これにより、インクチューブ41が溝部173の奥側へ容易に挿入される。また、突起部174の頂部から溝部173の奥側には、溝部173の奥部に向けて末広がりとなるように傾斜された傾斜面177が形成されている。このような傾斜面177が形成されているため、溝部173からインクチューブ41を取り外す作業が容易となる。
把持部172は、大別して、略コの字形状の溝部183と、溝部183への挿入口186の縁部に設けられた爪状の突起部184とを有する。溝部183は、3本のインクチューブ41が挿入可能なサイズに形成されている。溝部183の溝幅は、上記把持部171の溝部173の溝幅と同じサイズに形成されており、すなわち、インクチューブ41の外径よりも若干狭い寸法に形成されている。したがって、インクチューブ41を溝部183の奥部に挿入すると、インクチューブ41のチューブ壁或いは溝部183の両側壁185が弾性変形されて、その弾性変形により生じる復元力によってクランプ170がインクチューブ41を把持する。これにより、クランプ170がインクチューブ41に固着される。
把持部172の突起部184も、把持部171の突起部174と略同形状に形成されており、挿入口186の縁部において、溝部183の両側壁185それぞれから互いに近づく方向に突出している。一方、突起部184の突出量は、把持部171の突起部174の突出量よりも大きく設計されている。したがって、挿入口186は把持部171の挿入口176よりも狭められている。本実施形態では、図14及び図18に示すように、挿入口186を下向きにした状態で3本のインクチューブ41をクランプ170で把持するため、突起部184の突出量を大きくして、溝部183からのインクチューブ41の抜け落ちを防止するとともに、インクチューブ41の保持を確実なものとしている。また、突起部184の頂部から挿入口186側には、挿入口186の外側へ向けて末広がりとなるように傾斜された傾斜面188が形成されている。また、突起部184の頂部から溝部183の奥側には、溝部183の奥部に向けて末広がりとなるように傾斜された傾斜面187が形成されている。これら傾斜面187,188は、把持部171の傾斜面177,178に対応するものであり、傾斜の度合いに多少の相違があるものの、傾斜面177,178と同様の作用効果、すなわち、インクチューブ41の挿入及びインクチューブ41の取り外しを容易にするという効果を奏する。
クランプ170は、回動支持部材100の保持部105における環107を通り抜けることができないサイズに形成されている。例えば、クランプ170の長手方向の寸法(高さ)H2または短手方向の寸法(横幅)L2のいずれかが環107の内寸の高さH1或いは横幅L1よりも大きく形成されていればよい。もちろん、環107を通り抜けることができないものであれば、クランプ170の形状やサイズは限定されない。
上述したように、インクチューブ41は、インクチューブ41の長手方向の所定部位が保持部105に摺動可能に保持されている。すなわち、環107において、インクチューブ41はその延出方向に自由に摺動可能である。このようにインクチューブ41が摺動可能である場合は、以下の問題が生じ得る。すなわち、図20に示すように、プリンタ部2の右端部に移動したキャリッジ38が左方向へ移動した際に、キャリッジ38の往復動に回動支持部材100のアーム103の回動が追い着かず、アーム103がキャリッジ38に追従せずに保持部105でインクチューブ41が摺動する。このとき、同図(b)に示すように、インクチューブ41が過度に湾曲して、インクチューブ41が管接続部140から外れたり、或いはインクチューブ41が挫屈するという問題が生じ得る。また、過度に湾曲したインクチューブ41によってフラットケーブル85が圧迫されて損傷或いは信号電送不良が生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、アーム103がキャリッジ38に追従せずに保持部105でインクチューブ41が摺動した場合でも、クランプ170が相対的に移動されて保持部105に到達し、該保持部105の環107に引っ掛かる。そして、インクチューブ41からクランプ170および保持部105を介してキャリッジ38の往復動に追従する方向の押し付け力がアーム103に作用する。これにより、アーム103が強制的に回動される。したがって、インクチューブ41が過度に湾曲したり、挫屈することはない。また、フラットケーブル85の損傷などが生じることもない。
なお、本実施形態では、クランプ170はインクチューブ41aを把持する把持部171と他のインクチューブ41b,41c,41dを把持する把持部172とを有するものとしたが、もちろんこのような構成のものに限られない。例えば、それぞれ2本のインクチューブ41を把持する2つの把持部を有するものや、全てのインクチューブ41をひとまとめにして把持するものであってもよい。また、ネジリコイルバネ132によって回動支持部材100をコイル部133の周方向に付勢する構成においてクランプ170が適用された実施形態を例示したが、保持部105におけるインクチューブ41の摺動摩擦のみによって回動支持部材100を回動させる構成において上記クランプ170は好適に用いられる。
次に、キャリッジ38の管接続部140について説明する。図21は、図16における切断線XXI−XXIの断面図である。また、図22は、キャッピング位置にあるキャリッジ38の拡大斜視図である。なお、図21ではインクチューブ41を省略している。
カートリッジ装着部から規制壁37の壁面に沿って延出されたインクチューブ41は、その後、折り返されることにより湾曲部を形成しつつキャリッジ38側へ引き回されて、キャリッジ38の管接続部140に接続されている。管接続部140は、図21及び図22に示すように、各色のインクに対応する4つのチューブ継手142(図21参照)と、インクチューブ41を所定方向に規制するガイド141とを有する。
チューブ継手142は、記録用紙搬送方向の上流側から下流側へ向かって所定間隔で水平方向に順に配置されている。インクチューブ142は合成樹脂製の部材からなり、キャリッジ38の往復動方向と同じ方向に突出されている。このチューブ継手142に各インクチューブ41が嵌め込まれることにより、キャリッジ38にインクチューブ42が接続される。
記録用紙搬送方向の最も上流側に配置されたチューブ継手142aにはインクチューブ42a(図22参照)が接続される。チューブ継手142aの記録用紙搬送方向の上流側にガイド141が設けられている。ガイド141は、キャリッジ38の筐体と一体に形成されている。ガイド141は、チューブ継手142aに接続されたインクチューブ41aの引出方向を記録用紙搬送方向の下流側へ偏向させるようにインクチューブ41aを規制するものであり、チューブ継手142aの突出方向と略同方向に延出されている。なお、ガイド141は、チューブ継手142aの突出方向よりも若干、記録用紙搬送方向の下流側へ傾倒するように形成されていてもよい。
キャリッジ38がキャッピング位置へ移動するに従い、インクチューブ41はその弾性によってガイドレール44からキャリッジ38の往復動範囲側へ膨らんで、湾曲部が拡大する。湾曲部の拡大に伴ってチューブ継手142aに接続されたインクチューブ41aが記録用紙搬送方向の上流側へ引っ張られるが、ガイド141によって、インクチューブ41aは、記録用紙搬送方向の下流側へ、すなわち、インクチューブ41の湾曲部の内側へ押し付けられる。これにより、インクチューブ41aの湾曲部の拡大が防止される。また、インクチューブ41aによって、隣接する他のインクチューブ41b、41c、41dの膨出が防止されるため、全てのインクチューブ41の湾曲部の拡大が防止される。
以下、プリンタ部2の画像記録動作におけるインクチューブ41、フラットケーブル85及び回動支持部材100の動作について説明する。インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38は、CRモータ73の駆動力がベルト駆動機構46を介して伝達されることにより、ガイドレール43,44に案内されて記録用紙の搬送方向と交差する方向に往復動する。インクジェット記録ヘッド39は、制御部64からフラットケーブル85を通じて伝送された信号に基づいて、インクチューブ41により供給される各色インクのインク滴を所定のタイミングでプラテン42上の記録用紙に吐出する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62による記録用紙の間欠搬送と、キャリッジ38の往復動とが交互に繰り返されることにより、記録用紙に所望の画像が記録される。
一端側がキャリッジ38に接続されたインクチューブ41及びフラットケーブル85は、キャリッジ38の往復動に追従してU字形状の湾曲部の曲率を変化させながら姿勢変化する。図16は、キャリッジ38がキャップ52上のキャッピング位置(図右側)にある場合を示しており、図17は、キャリッジ38が廃インクトレイ84上のフラッシング位置(図左側)にある場合を示している。本実施形態では、キャッピング位置がキャリッジ38の初期位置である。
図16に示すように、キャリッジ38がキャッピング位置にある場合は、インクチューブ41及びフラットケーブル85は、固定クリップ36,86からキャリッジ38の往復動方向のフラッシング位置側にそれぞれ延出されて直ぐに反転するように湾曲したU形状をなす。インクチューブ41及びフラットケーブル85は可撓性を有するが、ある程度の曲げ剛性も有する。すなわち、インクチューブ41及びフラットケーブル85は、元の形状に復元しようとする弾性を有する。インクチューブ41はその弾性によって、U字形状の湾曲部がガイドレール44上で大きく膨らみ、ガイドレール44の縁部116を越えてキャリッジ38の往復動範囲側へはみ出そうとする。しかしながら、同図に示すように、ネジリコイルバネ132によって矢印139の方向へ回動支持部材100が付勢されているため、インクチューブ41は規制壁37側に引っ張られる。そのため、インクチューブ41の湾曲部の拡大が抑制される。なお、フラットケーブル85はインクチューブ41の湾曲部の内側で、回動支持部材100の担持部104で支持されているため、インクチューブ41よりも外側へ膨出することはない。このように、インクチューブ41及びフラットケーブル85の湾曲部の拡大が防止されるので、その結果、これらを引き回すためのスペースを小さくして装置の小型化を図ることができる。また、固定クリップ36,86からキャリッジ38までのインクチューブ41及びフラットケーブル85の長さを短くすることができる。
また、インクチューブ41及びフラットケーブル85は、ガイド板130の規制壁37側の壁面に当接されているため、固定クリップ36,86からキャリッジ38側へ鋭角に屈曲することが防止されるとともに、U字形状の湾曲部の中心が規制壁37側に寄せられている。これによっても、インクチューブ41及びフラットケーブル85の湾曲部の拡大が防止され、これらを引き回すためのスペースを小さくして装置の小型化を図ることができる。また、固定クリップ36,86からキャリッジ38までのインクチューブ41及びフラットケーブル85の長さを短くすることができる。
図4に示すように、キャリッジ38が、キャッピング位置(図16参照)からフラッシング位置(図17参照)へスライド移動することにより、キャリッジ38から延出されたインクチューブ41はフラッシング位置方向へ押しやられる。このとき、インクチューブ41及びフラットケーブル85は、U字形状の湾曲部の径が小さくなるように姿勢変化しながらキャリッジ38に追従する。保持部105はインクチューブ41を摺動可能に保持するものであるため、キャリッジ38に追従してインクチューブ41が姿勢変化する際に該インクチューブ41は保持部105を摺動する。このとき生じる摺動摩擦は、回動支持部材100を矢印139の方向に回動させるよう作用する。一方、キャリッジ38の移動速度に対して摺動摩擦による回動支持部材100の回動が間に合わない場合は、インクチューブ41の保持位置からキャリッジ38までの間でインクチューブ41がさらに湾曲することが生じ得る。しかしながら、回動支持部材100がネジリコイルバネ132によって矢印139の方向に付勢されているため、インクチューブ41及びフラットケーブル85は規制壁37の壁面側へ強制的に引っ張られる。これにより、キャリッジ38が高速移動する場合でも、余計な湾曲が生じることはない。
また、回動支持部材100がネジリコイルバネ132によって矢印139の方向に付勢されていたとしても、キャリッジ38の往復動に回動支持部材100のアーム103の回動が追い着かず、アーム103がキャリッジ38に追従せずに保持部105でインクチューブ41が過度に摺動する場合が起こり得る。この場合は、保持部105でインクチューブ41が摺動すると、クランプ170が相対的に移動されて保持部105に到達し、該保持部105の環107に引っ掛かる。そして、インクチューブ41からクランプ170および保持部105を介してキャリッジ38の往復動に追従する方向の押し付け力がアーム103に作用する。これにより、回動支持部材100が強制的に回動される。そのため、インクチューブ41が過度に湾曲したり、挫屈することはない。また、フラットケーブル85の損傷などが生じることもない。
図17に示すように、キャリッジ38がフラッシング位置に移動されると、インクチューブ41及びフラットケーブル85のU字形状の湾曲部の径が最も小さくなる。固定クリップ36,86は、インクチューブ41及びフラットケーブル85を規制壁37の壁面に押し付けるように固定しており、さらに、ネジリコイルバネ132によって、インクチューブ41及びフラットケーブル85は規制壁37の壁面に押し付けられるため、キャリッジ38の往復動範囲において、インクチューブ41及びフラットケーブル85が規制壁37に沿って躾けられ、これら規制壁37の壁面に沿って延出する部分が規制壁37から離れることが防止される。これにより、インクチューブ41及びフラットケーブル85がキャリッジ38側へ膨出する範囲が小さくなるとともに、キャリッジ38から離れる方向への膨出は規制壁37により規制されているので、インクチューブ41及びフラットケーブル85を引き回すためのスペースが小さくなる。
図17に示すように、インクチューブ41の湾曲内側に配置されたフラットケーブル85は、キャリッジ38の往復動に追従する際に、インクチューブ41と接触することがある。その際に、フラットケーブル85は、U字形状の湾曲部分において最も上側のインクチューブ41aに当接する。前述したように、4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36までの長さが略同一であり、キャリッジ38において、記録用紙搬送方向の最も上流側に配置されたインクチューブ41aが、固定クリップ36において最も上側に配置され、キャリッジ38においてその直下流側に配置された他のインクチューブ41bが、固定クリップ36においてその直下側に配置され、これが繰り返されて、キャリッジ38において水平方向に配列されたインクチューブ41が固定クリップ36において垂直方向に配列されている。
図23は、図17における切断線XXIII−XXIIIの断面図である。図23に示すように、湾曲部において、4本のインクチューブ41a,41b,41c,41dが上側から下側へ向かって斜め方向に整列される。そのため、キャリッジ38に追従してインクチューブ41が姿勢変化する際に、インクチューブ41同士が干渉することが低減される。また、フラットケーブル85は、回動支持部材100により、その下端が固定クリップ36の最も下側に配置されたインクチューブ41dと略同等の高さに維持されるとともに、その表裏面のいずれかが、固定クリップ36の最も上側に配置されたインクチューブ41aに当接する。したがって、フラットケーブル85が4本のインクチューブ41の下側に潜り込んだり乗り上げたりすることがなく、インクチューブ41とフラットケーブル85との内外の配置が維持され、それぞれがキャリッジ38に追従して姿勢変化する。
このように姿勢変化するインクチューブ41及びフラットケーブル85は、回動支持部材100により所定の高さに支持される。前述したように、インクチューブ41は、保持部105に保持されており、フラットケーブル85は担持部104に担持されている。キャリッジ38の往復動に追従してインクチューブ41が姿勢変化すると、インクチューブ41の姿勢変化が保持部105を介してアーム103に伝達され、アーム103が軸部102を回動支点として回動する。
図4,図16及び図17に示すように、フラットケーブル85は、キャリッジ38の往復動に追従した姿勢変化において、担持部104上を摺動する。仮に、フラットケーブル85が、その所定箇所が掴まれて所定の高さに支持されるとすれば、その所定箇所の回動軌跡が所定の円弧状に限定され、フラットケーブル85の姿勢変化において所定箇所に過剰な負荷が加わるおそれがあるが、担持部104は、フラットケーブル85を摺動自在に担持するので、アーム103の回動軌跡に拘わらず、フラットケーブル85は、担持部104の摺動範囲において自由に姿勢変化することができる。これにより、フラットケーブル85に対して過剰な負荷が生じず、フラットケーブル85の損傷や断線が防止される。
また、前述したように、アーム103が回動することにより、図17に示すように、フラッシング位置では、保持部105を含むアーム103全体が支持基板110の上面内に収容され、図16に示すように、キャッピング位置では、保持部105が支持基板110の上面から外れる。保持部105についてみれば、アーム103が、図4に示す位置からさらにキャッピング位置側へ回動すると支持基板110の上面から外れ、逆に、キャッピング位置側から図4に示す位置へアーム103が回動すると支持基板110の上面内に収容される。
前述したように、保持部105の環107は、アーム103からの起立部分107aの軸線112(図9参照)が、軸部102の軸線113に対して傾斜されており、環107の下端部108は、アーム103の高さ位置以上である。したがって、保持部105が支持基板110の上面内に収容される際に、下端部108が支持基板の縁部116に当接することがないので、保持部105と支持基板110との衝突音が発生しない。
また、保持部105の環107の起立部分107aが軸部102に対して傾斜されることにより、環107の下端部108がアーム103の高さ位置以上にされているので、環107の位置をアーム103より高くする必要がない。仮に、環107の高さ位置をアーム103に対して高くすれば、環107に環囲されるインクチューブ41の位置も高くなる。そうすると、インクチューブ41との干渉を回避するために、インクチューブ41が姿勢変化する範囲の上側に配設されるカバーなどの他の部材の位置も高くする必要があり、装置全体の高さが高くなる。本実施形態のように、保持部105の環107をアーム103より上側に余分に延出させることなく、環107の下端部108が支持基板110の縁部116に当接することが防止されることにより、垂直方向に配列されたインクチューブ41の上端位置を低く抑えることができる。
さらに、前述したように、支持基板110の軸孔111の周囲には、アーム103を支持する第1支持リブ117と、補助アーム106を支持する第2支持リブ118が形成されており、これらによって、アーム103の保持部105側が支持基板110の上面から浮いた状態に維持されているので、保持部105の環107の下端部108が支持基板110の縁部116に衝突することが確実に防止される。
また、図17に示すように、キャリッジ38がフラッシング位置にある場合には、インクチューブ41が規制壁37に当接して躾けられ、回動支持部材100の保持部105も、規制壁37側へ回動される。前述したように、規制壁37には、回動支持部材100の保持部105との当接を回避する凹欠部120が形成されているので、インクチューブ41が規制壁37に当接しても、回動支持部材100の保持部105は規制壁37に当接しないので、保持部105と規制壁37との衝突音の発生が防止される。これにより、回動支持部材100の回動に伴う支持基板110や規制壁37との衝突音の発生が防止され、キャリッジ38の動作音が小さくなる。また、保持部105と規制壁37との衝突が防止されることにより、インクチューブ41が規制壁37の壁面に均等に当接することとなり、保持部105の環107を構成する線鋼材がインクチューブ41に局所的な応力を加えることがない。
このように、複合機1によれば、インクチューブ41及びフラットケーブル85の各U字形状の湾曲部の内側を回動支点として回動する回動支持部材100の担持部104が、フラットケーブル85を摺動自在に担持し、保持部105が、インクチューブ41の長手方向の所定部位を摺動可能に保持するので、インクチューブ41の姿勢変化に伴ってアーム103が回動し、アーム103とともに回動する担持部104及び保持部105により、キャリッジ38の往復動に追従するフラットケーブル85及びインクチューブ41が支持される。これにより、フラットケーブル85の垂れ下がりや、インクチューブ41の暴れ、垂れ下がりが防止され、これらが他の部材に接触することがないので、インクチューブ41及びフラットケーブル85の損傷が防止される。また、インクチューブ41及びフラットケーブル85が他の部材と接触しないことにより、キャリッジ38の往復動が安定する。また、担持部104がフラットケーブル85を摺動自在に担持することにより、フラットケーブル85に過剰な負荷が生じず、フラットケーブル85の損傷が防止される。
更にまた、ネジリコイルバネ132によって回動支持部材100がインクチューブ41の湾曲部の径を小さくする方向に付勢されるため、湾曲部はその曲線カーブがきつくなる方向へ撓まされる。これにより、湾曲部の膨らみが抑制されて、キャリッジ38の往復動範囲への湾曲部の拡大が防止される。また、キャリッジ38の管接続部140において、チューブ継手142aの記録用紙搬送方向の上流側にガイド141が設けられているため、記録用紙搬送方向の最も上流側のインクチューブ41aの引出方向を上記湾曲部の内側へ偏向させることができる。これにより、インクチューブ41aの湾曲部は、その径が小さくなる方向へ躾けられるため、湾曲部の膨らみがより一層抑制される。
また、キャリッジ38の往復動に回動支持部材100のアーム103の回動が追い着かず、アーム103がキャリッジ38に追従せずに保持部105でインクチューブ41が過度に摺動した場合でも、クランプ170が保持部105の環107に引っ掛かってキャリッジ38の往復動に追従する方向の押し付け力をアーム103に作用する。そのため、回動支持部材100が強制的に回動されて、インクチューブ41の過度の湾曲や挫屈、フラットケーブル85の損傷などが防止される。
上述の実施形態では、ネジリコイルバネ132のアーム135を回動支持部材100のアーム103に掛止させて該回動支持部材100に所定方向への付勢力を付与することとしたが、例えば、回動支持部材100の補助アーム106にアーム135を掛止させて該補助アーム106に所定方向への付勢力を付与するようにしてもよい。そのときのネジリコイルバネ132の取り付け位置は、支持基板110の上面に限られず、該支持基板110の下面であってもよい。また、本実施形態では、ネジリコイルバネ132のように、回転トルクを生じさせるバネ部材を適用することとしたが、回動支持部材100を規制壁37側へ、換言すれば、インクチューブ41を規制壁37側へ引き寄せるように回動支持部材100を弾性的に付勢するものであれば、如何なるものでも本発明の付勢手段として適用することができる。
以下、上記実施形態の第1変形例について説明する。上記実施形態では、インクチューブ41のU字形状の湾曲内側にフラットケーブル85が配置されることとしたが、これらの配置を逆にして、インクチューブ41のU字形状の湾曲外側にフラットケーブル85を配置することとしてもよい。このようなインクチューブ41とフラットケーブル85の配置は、撓み易いいずれか一方がU字形状の湾曲内側に配置されることが好適である。一般に、フラットケーブル85は、4本のインクチューブ41より撓みやすいと考えられるが、インクチューブ41の本数が少なかったり、フラットケーブル85を絶縁被覆する素材やフラットケーブル85が複数枚束ねられたものであったりする場合に、フラットケーブル85よりインクチューブ41が撓みやすくなることも考えられる。インクチューブ41及びフラットケーブル85は、キャリッジ38の追従に伴う姿勢変化において、挫屈が生じない程度の径で湾曲部が形成されている。インクチューブ41又はフラットケーブル85のいずれか撓み易い一方は、他方より湾曲部の径が小さくなるように引き回すことが可能である。したがって、インクチューブ41又はフラットケーブル85の撓み易いいずれか一方が湾曲部の内側に配置されることにより、インクチューブ41及びフラットケーブル85の姿勢変化に要するスペース空間が小さくなるので、装置の小型化が実現される。
フラットケーブル85がインクチューブ41の湾曲部より外側に配置された場合には、図24に示すように、回動支持部材100の環107の下端部108に連続して担持部104が形成される。つまり、下端部108から更にアーム103の延出方向に線鋼材が直線状に延ばされて担持部104が形成され、担持部104から上方へ線鋼材が起立されて湾曲部109が形成される。担持部104のアーム103の延出方向の長さは、フラットケーブル85を摺動自在にする範囲に基づいて設定される。これにより、担持部104にフラットケーブル85の下端が摺動自在に担持され、湾曲109により、フラットケーブル85に、線鋼材の先端などが接触することが防止され、フラットケーブル85の損傷や断線が防止される。
また、湾曲部109は、同図に示すように、その上端がフラットケーブル85の高さより高くなるように、上方に延出されている。これにより、フラットケーブル85に線鋼材の先端などが接触することが防止されるとともに、湾曲部109がフラットケーブル85の下端付近の特定部位ではなく、表裏面のいずれか一方の全体に当接するので、フラットケーブル85の損傷や断線がさらに防止される。
上記実施形態及び上記第1変形例では、回動支持部材100は、支持基板110の上面に担持されるようにして回動され、アーム103により、保持部105が保持するインクチューブ41が下側から支持されることとしたが、本発明に係る保持部は、アームから垂下されるように形成されてもよい。
以下、上記実施形態の第2変形例について説明する。図25は、第2変形例に係る回動支持部材150の正面図であり、図26は、図25における矢視XXVIの側面図である。
回動支持部材150は、回動支点となる軸部152と、軸部152から水平方向に延出されたアーム153と、アーム153の先端側に形成された保持部155と、軸部152及びアーム153に対してクランク形状をなすように軸部152から延出された補助アーム156とを有し、これらが線鋼材が曲折されることにより一体に形成されている。軸部152、アーム153、補助アーム156は、上記実施形態の軸部102、アーム103、補助アーム106にそれぞれ対応するものなので、これらの詳細な説明は省略する。
アーム153の先端側に形成された保持部155は、インクチューブ41を環囲するようにして保持するものである。保持部155は、環157と、環157から先端側に突出された下端部158と、下端部158の先端に形成された湾曲部159とからなる。また、第2変形例の回動支持部材150では、上記第1変形例と同様に、インクチューブ41のU字形状の湾曲外側にフラットケーブル85が配置され、回動支持部材150の下端部158に連続して担持部154が形成される。環157において、内寸の横幅及び高さとインクチューブ41の外径との関係は前述と同様であり、環157の中でインクチューブ41の配列が入れ替わらず、且つ、インクチューブ41の延設方向に自由に摺動できる寸法関係である。環157の下端部158は、アーム153の延出方向と交差する方向に隔てられて、アーム153とほぼ同方向に延出されている。下端部158の先端は、上方へ曲折されてからアーム153の延出方向外側へ円弧状に湾曲されて湾曲部159が形成されている。環157の上端を形成する上端部160は、下端部158から上方へ曲折されてからアーム153側へさらに曲折されている。換言すれば、上端部160は、アーム153の延出方向と交差する方向に延出されている。
図26に示すように、環157のアーム153からの垂下部分157aの軸線161(線鋼材の中心)は、軸部152の軸線162に対して傾斜されている。つまり、軸部152の軸線162が垂直方向であるのに対し、環157の垂下部分157aの軸線161は、垂直方向に対して傾斜している。垂下部分157aの傾斜方向は、アーム153に対して上端部160が配置される側と反対側である。環157は、軸線161方向に縦長矩形に形成されているので、軸線161が上端部160と反対側に傾斜されることにより、上端部160が、アーム153より低い位置、すなわちアーム153の回動面163に対して、軸部152を軸支する支持基板164と反対側に位置される。
支持基板164は、軸部152を軸支する軸孔165が形成された平板状の部材であり、装置本体に固定される。アーム153は、支持基板164の下面に沿って回動され、その回動範囲の一部において該下面内に保持部155が収容される。つまり、回動支持部材150は、支持基板164に吊り下げられるようにして回動自在に支持されている。
このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様の作用効果が発揮され、フラットケーブル85の垂れ下がりや、インクチューブ41の暴れ、垂れ下がりが防止され、これらが他の部材に接触することがないので、インクチューブ41及びフラットケーブル85の損傷が防止される。また、インクチューブ41及びフラットケーブル85が他の部材と接触しないことにより、キャリッジ38の往復動が安定する。また、担持部154がフラットケーブル85を摺動自在に担持することにより、フラットケーブル85に過剰な負荷が生じず、フラットケーブル85の損傷が防止される。