以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る複合機1(画像記録装置)の外観構成を示すものである。本複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能を有する。該複合機1のうちプリンタ部2が本発明に係る画像記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタであってもよい。また、さらに通信部を備えてファクシミリ機能等を有するものであってもよい。
また、本発明に係る画像記録装置を多機能装置として実施する場合には、本実施の形態に示す複合機1のような小型のものであっても、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えた大型のものであってもよいが、本発明は、薄型化された画像記録装置において特に有用である。また、複合機1は、主に不図示のコンピュータと接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録するものであるが、その他、デジタルカメラ等の外部機器と接続されてデジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記録媒体を装填して、該記録媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1に示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されており、該開口2aから一部が露呈するようにして給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20は、被記録媒体である記録用紙を貯蔵するためのものであり、A4サイズ以下の、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。また、給紙トレイ20は、図2に示すように、必要に応じてスライドトレイ20aを引き出してトレイ面を拡大することができる。該給紙トレイ20に収容された記録用紙(不図示)がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31は画像読取りを行う原稿を載置するためのものである。該プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向に走査可能に設けられている。
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、該操作パネル4からの操作指示に基づいて動作し、また、コンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバを介して送信される指示に基づいても動作する。また、複合機1の正面の左上部には、記録媒体である各種小型メモリカードを装填可能なスロット部5が設けられている。該スロット部5に装填された小型メモリカードに記録された画像データを読み出して液晶表示部に表示させ、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させるための入力を、上記操作パネル4から行うことができる。
以下、図2〜図8を参照して複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。図2に示すように、複合機1の底側に設けられた給紙トレイ20の奥側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を分離して上方へ案内するための分離傾斜板22が配設されている。また、搬送路23は、該分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録部24を通過して排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録部24に至り、該画像記録部24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3に示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路23へ供給するための給紙ローラ25が設けられている。該給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の先端に軸支されており、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、モータ(不図示)の駆動が伝達されて回転する。
給紙アーム26は、基端側を軸として上下方向に揺動可能に配設されている。該給紙アーム26は、待機状態では、不図示の給紙クラッチやバネ等により図に示すように上側へ跳ね上げられており、記録用紙を供給する際に下側へ揺動する。給紙アーム26が下側へ揺動することにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力で最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。該記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、搬送路23へ送り込まれる。また、給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22に当接することによって制止される。
搬送路23は、画像記録部24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の搬送路23は、外側ガイド面は複合機1のフレームと一体に形成され、内側ガイド面がガイド部材28がフレーム内に固定されることにより構成されている。また、搬送路23において、特に搬送路23が曲がっている箇所には、各搬送コロ29が外側ガイド面又は内側ガイド面へローラ面を露出するようにして、搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。これら各搬送コロ29によって、搬送路23が曲がっている箇所においてガイド面に接触する記録用紙の搬送が円滑となる。
図3に示すように、搬送路23が下方から上方へUターンした後の下流側には、画像記録部24が設けられている。該画像記録部24は、記録ヘッド41を搭載して主走査方向へ往復移動する記録キャリッジ40を備えている。記録ヘッド41は、複合機1内に記録ヘッド41とは別途に設置されたインクタンク42(図4参照)からインク供給管43を通じてシアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として吐出するものである。該記録ヘッド41が搭載された記録キャリッジ40が走査されることにより、プラテン44上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
詳細には、図4に示すように、搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向へ所定間隔で、搬送路23の幅方向に一対のガイドレール45,46が延設されている。上記記録キャリッジ40は、ガイドレール45,46を跨ぐようにして摺動可能に設けられている。記録用紙の搬送方向の上流側に配設されたガイドレール45は、搬送路23の幅方向の長さが記録キャリッジ40の走査幅より長い平板状のものであり、該ガイドレール45の上面が、上記記録キャリッジ40の上流側の端部を摺動自在に担持している。
記録用紙の搬送方向の下流側に配設されたガイドレール46は、搬送路23の幅方向の長さが上記ガイドレール45とほぼ同じ長さの平板状のものであり、図5に示すように、上記記録キャリッジ40の下流側の端部を支持する縁部46aが、上方へ向かって略直角に曲折されている。記録キャリッジ40は、ガイドレール46の上面に摺動自在に担持されており、且つ、上記縁部46aを不図示のローラ等により狭持している。したがって、記録キャリッジ40は、ガイドレール45,46上に摺動自在に担持され、ガイドレール46の縁部46aを基準として、搬送路23の幅方向に往復移動する。なお、図には示していないが、記録キャリッジ40がガイドレール45,46の上面と接触する部位には、摩擦を低減するための摺動部材が適宜設けられる。
また、図4に示すように、ガイドレール46の上面には、ベルト駆動機構47が配設されている。該ベルト駆動機構47は、搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動ローラ48と従動ローラ49間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト50が張架されてなるものである。駆動ローラ48の軸には不図示のCRモータから駆動力が入力され、該駆動ローラ48の回転によりタイミングベルト50が周運動する。なお、タイミングベルト50は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部を記録キャリッジ40に固着するようにしてもよい。
上記記録キャリッジ40は、上記タイミングベルト50に固着されており、該タイミングベルト50の周運動により、記録キャリッジ40が縁部46aを基準としてガイドレール45,46間で往復移動する。このような記録キャリッジ40に記録ヘッド41が搭載されて、該記録ヘッド41が、搬送路23の幅方向を主走査方向として往復移動可能となっている。また、図には示していないが、上記縁部46aに沿ってストリップ状の記録キャリッジ用エンコーダが配設されており、該記録キャリッジ用エンコーダを位置決め標識として記録キャリッジ40の往復移動が制御される。
図3に示すように、搬送路23の下側には、上記記録ヘッド41と対向してプラテン44が配設されている。該プラテン44は、記録キャリッジ40の往復移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。また、図4に示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド41による画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ(不図示)等のメンテナンスユニットが配設されている。
パージ機構51は、記録ヘッド41のノズル53等から気泡や異物を吸引除去するためのものである。該パージ機構51は、記録ヘッド41のノズル面を覆うキャップ52と、該キャップ52を通じて記録ヘッド41に接続されるポンプ機構(不図示)と、該キャップ52を記録ヘッド41のノズル面に接離させるための移動機構(不図示)とからなる。記録ヘッド41の気泡等の吸引除去を行う際には、記録ヘッド41がキャップ52上に位置するように記録キャリッジ40が移動され、その状態でキャップ52が上方へ移動して記録ヘッド41の下面のインク吐出口53a(図6参照)を密閉するように密着し、該キャップ52と連結されたポンプにより記録ヘッド41のノズル53等からインクが吸引される。
一方、図には示していないが、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド41からのインクの空吐出を受けるための廃インクトレイも、記録キャリッジ40の往復移動範囲内であって画像記録範囲外に設けられる。これらメンテナンスユニットにより、記録ヘッド41内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。なお、パージ機構51や廃インクトレイ等のメンテナンスユニットは本発明において任意の構成である。
記録ヘッド41は、図6に示すように、その下面にインク吐出口53aが、CMYBkの各色インク毎に記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図においては左右方向が記録用紙の搬送方向である。各インク吐出口53aの搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定されるものである。また、カラーインクの種類数に応じてインク吐出口53aの列数を増減することも可能である。
図に示すように、記録ヘッド41の下部に列設されたノズル53の下端が記録ヘッド41の下面に開口して上記インク吐出口53aを形成している。該ノズル53の上端側には、各色インク毎の複数のノズル53に渡ってマニホールド54が形成されている。該マニホールド54は、列設されたノズル53の一端側に形成された供給管55と、各ノズル53の上端に渡って形成されたマニホールド室56とから構成されて、供給管55から供給されたインクをマニホールド室56を通じて各ノズル53に分配する。
上記マニホールド室56の各ノズル53と対向する面は、インクが流れる下流側へ向かって下降するように傾斜されており、マニホールド室56の断面積が下流側へ向かって小さくなるように構成されている。マニホールド54により分配されたインクを各ノズル53がインク吐出口53aからインク滴として吐出する機構は、例えばノズル53の側壁を圧電材料で構成して、該圧電材料の変形によりインク滴を噴出させるものや、その他の公知の機構を採用することができる。
さらに、上記マニホールド54の上側にはバッファタンク57が配設されている。該バッファタンク57は、上記ノズル53及びマニホールド54と同様にCMYBkの各色インク毎に設けられている。各バッファタンク57には、不図示のインクタンク42からインク供給管43を通じてインク供給口58からインクが供給される。このように、インクタンク42から直接ノズル53へインクを供給せずに、バッファタンク57に一旦貯留することにより、インク供給管43等でインク内に発生した気泡を捕捉することができ、ノズル53に気泡が進入することが防止される。また、バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59から不図示のポンプ機構により吸引除去される。
また、バッファタンク57は、上記供給管55を通じて上記マニホールド室56と連通している。これにより、インクタンク42から供給された各色インクがバッファタンク57、マニホールド54を介してノズル53へ流れるように流路が構成される。このような流路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、インク吐出口53aからインク滴として記録用紙に吐出される。
図3に示すように、上記画像記録部24の上流側には、搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持して、プラテン44上へ搬送する一対の搬送ローラ60及び押さえローラ61が設けられている。一方、画像記録部24の下流側には、記録済みの記録用紙を狭持して搬送する一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、不図示のLFモータから駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。
一方、押さえローラ61は搬送ローラ60に所定の押圧力で押圧するように付勢されて回転自在に設けられている。搬送ローラ60と押さえローラ61との間に記録用紙が進入した場合には、押さえローラ61は記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ60とともに狭持する。これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。拍車ローラ63も排紙ローラ62に対して同様に設けられたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸したものとなっている。
搬送ローラ60及び押さえローラ61に狭持された記録用紙は、所定の改行幅でプラテン44上を間欠して搬送される。その改行毎に記録ヘッド41が走査されて、記録用紙の先端側から画像記録が行われる。画像記録が行われた記録用紙の先端側は、その後、排紙ローラ62及び拍車ローラ63に狭持される。したがって、該記録用紙は先端側を排紙ローラ62及び拍車ローラ63に狭持され、後端側を搬送ローラ60及び押さえローラ61に狭持された状態で所定の改行幅で間欠して搬送され、同様に記録ヘッド41により画像記録が行われる。さらに記録用紙が搬送されると、記録用紙の後端が搬送ローラ60及び押さえローラ61を通過して、これらによる狭持が開放される。したがって、記録用紙は排紙ローラ62及び拍車ローラ63に狭持されて所定の改行幅で間欠して搬送され、同様に記録ヘッド41により画像記録が行われる。記録用紙の所定領域に画像記録を行った後は、排紙ローラ62が連続的に回転駆動される。これにより、排紙ローラ62及び拍車ローラ63により狭持された記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
図7は、本複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。
図に示すように、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)で構成された中央処理部65が、バス66及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)67を介して、プリンタ部の各種モータや各種センサ、スキャナ部3、操作パネル4等とデータ送受信可能に接続されている。
中央処理部65は、各種センサの検知信号に基づいて記録キャリッジ40を走査するCRモータの回転制御や搬送ローラ60の駆動源であるLFモータの回転制御の他、パージ機構51やスキャナ部3等の制御を統括して行う。例えば、記録キャリッジ40の走査では、記録キャリッジ用エンコーダストリップをセンサで検知し、該検知信号が中央処理部65に送信され、中央処理部65は該検知信号に基づいてCRモータの回転制御を行うことにより、記録キャリッジ40を所望の位置へ移動する。
また、本複合機1は、操作パネル4からの入力に基づいてスタンドアロンで画像記録を行う他、コンピュータ(PC)68と接続されて、該コンピュータ68から送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録することができる。そのために、コンピュータ68とデータを送受信するためのインタフェース(I/F)も備えている。なお、本実施の形態で示した制御部64の構成は一例であり、本発明の制御装置は当該制御部64の構成に限定されないことは当然である。
以下、上記インクタンク42からインク供給管43を通じて記録キャリッジ40へインクを供給する構成について詳述する。
インクタンク42は、図1に示すように、プリンタ部2の正面側であって左側方(図右側)の筐体内に設けられたインクタンク収容部6に収容されている。図4に示すように、該インクタンク42は、装置内において、記録ヘッド41を搭載する記録キャリッジ40とは別途に設けられており、該記録キャリッジ40へはインク供給管43を通じてインクが供給されるようになっている。このように記録キャリッジ40とインクタンク42とを別途に配置することにより、記録キャリッジ40が小型化されるとともに、該記録キャリッジ40に駆動力を付与するCRモータも小型化されるので、装置全体の小型化が実現される。
インクタンク42は、シアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクを貯蔵する4個のインクタンク42C,42M,42Y,42Kからなり、装置筐体内に設けられたインク収容部6内の所定の位置にそれぞれ装填されている。図には詳細に示していないが、各インクタンク42C,42M,42Y,42Kは、合成樹脂製の筐体内に各色インクが充填されたカートリッジ式のものであり、インク収容部6の上方から着脱可能となっている。各インクタンク42C,42M,42Y,42Kの筐体の底部には、それぞれ貯蔵している各色インクを供給するための開口が形成され、該開口は逆止弁により封止されている。インク収容部6には、該逆止弁を開放する接合部が設けられており、各インクタンク42C,42M,42Y,42Kがインク収容部6に装填されることにより、上記開口の逆止弁が開放され、該開口からインク供給が可能となる。
なお、本実施の形態では、4色のインクで画像記録を行う複合機1について説明しているが、本発明に係る画像記録装置においてインク色の数は特に限定されず、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行う場合には、インクタンクを増やすことが可能であることは勿論である。また、インクタンク42は、カートリッジ式のものに限定されず、装置筐体内に据え置きされてインクが適宜補充されるものであってもよい。
インク収容部6に装填された各インクタンク42C,42M,42Y,42Kから上記記録ヘッド41へは、各色毎に独立したインク供給管43により各色インクが供給される。すなわち、インク収容部6には、各インクタンク42C,42M,42Y,42Kに対応して4本のインク供給管43C,43M,43Y,43Kが相互に独立して配設されており、該インク供給管43C,43M,43Y,43Kが記録キャリッジ40に接続されている。
各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、合成樹脂製のチューブであり、記録ヘッド41の走査に応じて撓むような可撓性を有するものである。図には詳細に示していないが、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、上記インク収容部6の各インクタンク収容位置に設けられた上記各接合部に、その一端側の開口がそれぞれ接続されている。インク供給管43Cは、上記インクタンク42Cに対応しておりシアン(C)のインクを供給するためのものである。同様に、インク供給管43M,43Y,43Kは、それぞれ上記インクタンク42M,42Y,42Kに対応しており、それぞれマゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のインクを供給するためのものである。
上記各インク供給管43C,43M,43Y,43Kのうち、ブラックインクを供給するためのインク供給管43Kは、他のインク供給管43C,43M,43Yより径が太い。これは、文字等からなる文書の画像を記録する場合には、主としてモノクロで画像記録が行われることから、ブラックインクに対応する記録ヘッド41のインク吐出口53aを他のインク色のインク吐出口53aより多くして記録速度等を向上するために、ブラックインクの単位時間当たりの供給量を増加させることを目的とするものである。
インク収容部6から導出された各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置フレーム等の適当な部材に一旦固定されている。この固定手段は特に限定されず、装置フレーム等に係止部を設けて固定しても、固定部材により狭持するようにして固定してもよい。この固定部分を中間固定部69と呼ぶ。各インク供給管43C,43M,43Y,43Kにおいて、インク収容部6から中間固定部69までの部分は、適当な位置で装置フレーム等に係止されて固定されており、記録キャリッジ40の往復移動に拘わらず一定の姿勢を保っている。
一方、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kにおいて、中間固定部69から記録キャリッジ40までの部分は、装置フレーム等に固定されておらず、記録キャリッジ40の往復移動に追従して姿勢変化する。このような中間固定部69の位置は、記録キャリッジ40が往復移動方向の一方端であって、該記録キャリッジ40から延出される各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの曲げ半径が最小となる位置にある場合に、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが屈曲等せずに湾曲姿勢を維持する位置の範囲内において、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの長さや引き回し経路を考慮して適宜設定すればよい。
上記各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの中間固定部69から記録キャリッジ40までの部分は、記録キャリッジ40から、その往復移動方向の一方向へ略水平に延出され、記録キャリッジ40と中間固定部69との略中間位置に相当する中間部70が湾曲して上記一方向と反対方向へ延出されて中間固定部69に至っている。したがって、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの中間固定部69から記録キャリッジ40までの部分は、水平方向へ略U字状に湾曲している。記録キャリッジ40から各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが延出する方向は、記録キャリッジ40の往復移動方向のいずれの方向であってもよいが、該記録キャリッジ40に接続されるフラットケーブル76の延出方向と逆方向とすれば、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kとフラットケーブル76とが相互に干渉せず、また、記録キャリッジ40の周囲の空間を低くして複合機1を薄型化できるので好適である。
さらに詳細に説明するに、図5に示すように、記録キャリッジ40の記録用紙搬送方向下流側の端部には、下流側に突出するようにして管結合片71(結合部)が突設されている。該管結合片71には、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが略水平方向に配列されて結合されている。図には詳細に示していないが、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kからそれぞれ供給される各色インクは、記録ヘッド41の各バッファタンク57内へ導かれる。
図5に示すように、上記管結合片71から略水平方向へ記録キャリッジ40の往復移動方向に沿って延出された各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、その湾曲された中間部70において水平方向から垂直方向へ捩るようにして配列が変化している。そして、中間部70で湾曲されて、上記管結合片71からの延出方向と反対方向へ延出して中間固定部69に至るまでは、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは垂直方向の配列が維持されている。
このように、記録キャリッジ40の管結合片71において各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを水平方向に配列することにより、記録キャリッジ40の周囲に必要な空間の高さを低くすることができる。すなわち、図4,5に示したように、記録キャリッジ40の周囲には、ガイドレール45,46やベルト駆動機構47の他、フラットケーブル76等の多数の部材が存在するが、管結合片71において各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを水平方向に配列し、略水平方向へ延出することにより、これら部材との干渉を少なくし、且つ記録ヘッド41周囲の空間の高さが低くなるように各部材をレイアウトすることができる。
一方、中間部70から中間固定部69において各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを垂直方向に配列することにより、装置の奥行き方向におけるスペースを小さくすることができる。すなわち、記録キャリッジ40の周囲においては高さ方向のスペースを低減することが要求される一方、記録キャリッジ40の周囲以外では、図2に示したように、プリンタ部2の上方に設けられたスキャナ部3との関係等より、奥行き方向のスペースを低減することが装置全体の小型化に寄与する。
また、図8に示すように、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、記録キャリッジ40の往復移動に追従して中間部70の湾曲を変化させながら移動する。図に示すように、記録キャリッジ40が往復移動されることにより、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの中間固定部69から記録キャリッジ40側の部分が記録キャリッジ40に追従する。そして、記録キャリッジ40が往復移動方向の一端(図左側)へ移動するに従い、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、図に2点鎖線で示したように、湾曲している中間部70の曲げ半径が小さくなるように撓みながら、記録キャリッジ40の移動方向へ移動する。また、中間部70から中間固定部69までは、不図示の装置フレームに沿って往復移動方向に直線状となる。一方、記録ヘッド41が往復移動方向の多端(図右側)へ移動するに従い、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、図に2点鎖線で示したように、湾曲している中間部70の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、記録キャリッジ40の移動方向へ移動する。
このように、記録キャリッジ40の往復移動に追従して中間部70の曲げ半径を変化させながら移動する各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを、中間固定部69から記録キャリッジ40の管結合片71において、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを垂直方向から水平方向へ配列が変化するように引き回すことにより、記録キャリッジ40に追従して移動する際に、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが中間部70において垂直方向に暴れにくくなる。また、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは相互に独立しているので、中間部70において曲げ半径が変化する湾曲を形成するように撓みやすく、記録キャリッジ40の往復移動に干渉するような力が作用し難い。
また、相互に独立した各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、中間部70より中間固定部69側において結束部材72により結束されている。結束部材72は、垂直方向に配列された各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを、その配列状態で一体に結束するものであり、金属製や合成樹脂製の帯状の部材により実現される。結束部材72による結束位置は、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが垂直方向に配列されている中間部70より中間固定部69側であって、ガイドレール46やベルト駆動機構47等の他の部材と干渉しない位置であればよい。これにより、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを相互に独立として中間部70が撓みやすくなるとともに、記録キャリッジ40の往復移動に追従する際に、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの配列が乱れることが防止される。
また、図4及び図5に示すように、カラーインクを供給するインク供給管43C,43M,43Yより径の太いブラックインク用のインク供給管43Kは、中間部70から中間固定部69において最下位置となるように配置されている。径の太いインク供給管43Kは、他のインク供給管43C,43M,43Yより曲げ剛性が高い。したがって、該インク供給管43Kを最下位置に配置することにより、他のインク供給管43C,43M,43Yをインク供給管43Kで支持することができる。これにより、特に中間部70付近において、インク供給管43Kの上方に配置された他のインク供給管43C,43M,43Yが、下方に弛むことが防止される。
このように引き回された各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、記録キャリッジ40の管結合部71付近において管支持部73により支持され、中間部70付近において支持リブ74に支持されている。各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが管支持部73及び支持リブ74に支持されることにおり、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが下方へ垂れ下がるように弛んで、ガイドレール46やベルト駆動機構47,エンコーダストリップ等の他の部材に接触することが防止され、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが損傷したり、エンコーダストリップが汚染等されてキャリッジ40の位置検出に影響することがない。
管支持部73は、図3及び図4に示すように、記録キャリッジ40を構成するヘッドカバー75の記録用紙搬送方向下流側の端部から、下流側に突出するように設けられている。該管支持部73は、平板状の部材が下流側へ水平方向に延設され、その下流側の端部で上方へ直角に曲折された横向きL字状の部材である。各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、該管支持部73の上面に担持されるようにして支持される。該管支持部73を合成樹脂製のものとしてヘッドカバー75と一体的に成形することにより、記録キャリッジ40が小型化されるとともに、管支持部73を記録キャリッジ40に取り付ける工程が不要となるので好適であるが、ヘッドカバー75と別の部材としてネジ止め等により記録キャリッジ40に固定することとしてもよい。また、本実施の形態では、管支持部73を記録キャリッジ40のヘッドカバー75に一体成形しているが、管支持部73は記録キャリッジ40と一体的に成形されていれば、ヘッドカバー75以外の箇所に設けてもよい。
また、上記管支持部73は、図5に示すように、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが接続されている管結合片71より若干上側に位置されている。したがって、管支持部73は、管結合片71から延出した各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを上方へ持ち上げるようにして支持している。これにより、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、記録キャリッジ40から中間部70へ向かって斜め上方に持ち上げられるように延出するので、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが下方へ弛んで、ガイドレール46やベルト駆動機構47等の他の部材と接触することが防止される。また、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを斜め上方へ持ち上げることにより、その反力が記録キャリッジ40に作用して、該記録キャリッジ40がガイドレール45,46へ押さえつけられる。これにより、ガイドレール45,46上を往復移動する記録キャリッジ40の浮き上がりが防止される。なお、管支持部73と管結合片71との位置関係は、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kと他の部材との配置関係や弛み具合、記録キャリッジ40の浮き等を考慮して設定されるものであり、例えば、管支持部73と管結合片71とをほぼ同じ高さとなるように配置してもよい。
また、上記管支持部73は、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを管結合片71に結合された水平方向の配列で支持している。これにより、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの配置のために上記管結合片71の周辺に必要な空間を低くすることができるとともに、記録キャリッジ40の往復移動に追従する際に、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの配列が乱れることが防止される。なお、図には詳細に示していないが、管支持部73が各インク供給管43C,43M,43Y,43Kを担持する部分を、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの外径に沿って凹凸させれば、各インク供給管43C,43M,43Y,43Kの水平方向の移動が規制されるので好適である。
一方、支持リブ74は、ガイドレール46の下流側において、記録キャリッジ40の往復移動方向に沿って上方へ突設されている。該支持リブ74は、装置フレームや他の合成樹脂製の部材等と一体的に成形しても、別に成形したものを装置フレーム等に固定しても、いずれでもよい。支持リブ74の上端面は、図5に示すように、ガイドレール46やベルト駆動機構47等の配置高さより高い。また、支持リブ74の幅は、図8に示すように、記録キャリッジ40の往復移動に追従して各インク供給管43C,43M,43Y,43Kが移動する範囲に対応しており、少なくとも、中間部70の湾曲の曲げ半径が大きくなって下方へ垂れ下がりやすくなる位置において、該中間部70付近を支持する。これにより、記録キャリッジ40の往復移動に追従して移動する各インク供給管43C,43M,43Y,43Kは、その中間部70付近が支持リブ74に担持されるようにして摺動しながら移動するので、該中間部70付近が下方へ弛んで他の部材に接触することが防止される。
なお、本実施の形態では、4色のインクで画像記録を行う複合機1について説明しているのでインク供給管43も4本であるが、前述したように、本発明に係る画像記録装置においてインク色の数は特に限定されない。したがって、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行うことも可能であり、その場合には、インク供給管43の本数を増やせばよい。また、6本や8本のインク供給管43を水平方向に配列するスペースが記録キャリッジ40の周辺に十分にない場合には、インク供給管43を2群に分割して、記録キャリッジ40の右側と左側とからそれぞれ延出し、各群のインク供給管の湾曲方向が逆となるように引き回してインクタンク42に接続することとしてもよい。そのような場合には、各群のインク供給管に対応して、左右両側に上記管支持部73及び支持リブ74を設ければよい。