以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更され得ることは言うまでもない。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10(インクジェット記録装置)の外観斜視図であり、図2は、この複合機10の内部構成を示す縦断面図である。
複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機1のうちプリンタ部2が、本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。したがって、プリンタ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、スキャナ部3が省略された単機能のプリンタとして本発明に係るインクジェット記録装置が実施されてもよい。
複合機1のプリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙(被記録媒体)に画像や文書を記録する。なお、複合機1は、デジタルカメラ等が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体が装填されて、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1が示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口2aの内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、被記録媒体である記録用紙が貯蔵され、例えば、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容される。給紙トレイ20はスライドトレイ20aを備えており、これが必要に応じて引き出されることによりトレイ面が拡大される。(図2参照)これにより、給紙トレイ20は、例えば、リーガルサイズの記録用紙を収容することができるようになる。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2が示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31には、画像読取りを行う原稿が載置される。プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向(図2の左右方向)を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向(図2の紙面垂直方向)に往復動可能に設けられている。
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている(図1参照)。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、操作パネル4の液晶表示部に表示され、この表示に基づいて、任意の画像をプリンタ部2が記録用紙に記録させる。
以下、複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明される。
図2が示すように、複合機1の底側に給紙トレイ20が設けられ、給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から重送された記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙を上方へ案内する。用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
図3が示すように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ロータ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、LFモータ71(図5参照)を駆動源として駆動伝達機構27を介して回転駆動される。この駆動伝達機構27は複数のギアを有し、これらが噛合されることにより構成されている。
給紙アーム26は、基軸26aに支持されている。給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として回転可能に設けられており、このため、給紙トレイ20に接離可能に上下動することができる。ただし、給紙アーム26は、自重により又はバネ等に付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動付勢されており、給紙トレイ20が挿抜される際に上側へ退避するようになっている。給紙アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されることにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機1の背面側の用紙搬送路23の湾曲部17は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが装置フレームに固定されることにより構成されている。用紙搬送路23において、特に用紙搬送路23が曲がっている箇所には、回転コロ16が設けられている。この回転コロ16は、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。回転コロ16のローラ面は、外側ガイド面に露出されている。したがって、用紙搬送路23が曲がっている箇所においても、記録用紙が円滑に搬送される。
図3が示すように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が配置されている。画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。インクジェット記録ヘッド39には、複合機1内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクカートリッジからインクチューブ41(図4参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。なお、図3及び図4には、インクカートリッジは図示されていない。
図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成を示すものである。また、図5は、プリンタ部2の主要構成を示す斜視図であり、画像記録ユニット24の構成を示すものである。
図4及び図5が示すように、用紙搬送路23の上側において一対のガイドレール43、44が配置されている。これらガイドレール43、44は、記録用紙の搬送方向(図4の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4の左右方向)に延設されている。ガイドレール43、44は、プリンタ部2の筐体内に設けられて、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43、44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能に載置されている。このように、ガイドレール43、44が記録用紙の搬送方向にほぼ水平に並べられることにより、プリンタ部2の高さが低くなり、装置の薄型化が実現されている。
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(図4の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。また、記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されており、キャリッジ38は、各ガイドレール43、44の長手方向に摺動されるようになっている。
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43、44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43、44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動する。なお、図示されていないが、縁部45には、キャリッジ38の摺動を円滑にするためにグリースなどの潤滑剤が塗布されている。
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ73(図5参照)から駆動力が伝達され、駆動プーリ47の回転によりタイミングベルト49が周運動する。なお、タイミングベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
キャリッジ38は、その底面側においてタイミングベルト49に固着されている。したがって、タイミングベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43、44上を往復動する。このようなキャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、インクジェット記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動される。
図4が示すように、ガイドレール44には、リニアエンコーダ77(図8参照)のエンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38の往復動方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持部33、34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持部33、34に係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、同図には示されていないが、支持部33、34の一方には、板バネが設けられており、該板バネによりエンコーダストリップ50の端部が係止されている。この板バネにより、エンコーダストリップ50には、長手方向に張力が作用して弛みが生じることが防止されるとともに、エンコーダストリップ50に外力が作用した場合には、該板バネが弾性変形して、エンコーダストリップ50が撓むようになっている。
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、所定ピッチで長手方向に交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、キャリッジ38とともにエンコーダストリップ50の長手方向に沿って往復動し、その往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。インクジェット記録ヘッド39には、インクの吐出を制御するヘッド制御基板が設けられている。このヘッド制御基板は、光学センサ35の検知信号に基づくパルス信号を出力する。このパルス信号に基づいてキャリッジ38の位置が判断されて、キャリッジ38の往復動が制御される。なお、図4及び図5では、ヘッド制御基板はキャリッジ38のヘッドカバーで覆われており、図に表れていない。
図3及び図4が示すように、用紙搬送路23の下側には、インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。後に詳述されるが、このプラテン42に可動支持部88(図5参照)が設けられている。この可動支持部88は、プラテン42上を搬送される記録用紙に追従して搬送方向に移動し、常時記録用紙の端部を支持するようになっている。
図4が示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ84等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53(図6参照)から気泡や異物を吸引除去するものである。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53を覆うキャップ52と、キャップ52を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ52をインクジェット記録ヘッド39のノズル53に接離させるための移動機構とからなる。なお、図4においては、ポンプ機構及び移動機構はガイドフレーム44の下方にあり、図に表れていない。
インクジェット記録ヘッド39から気泡等の吸引除去が行われる際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ52上に位置するようにキャリッジ38が移動される。その状態でキャップ52が上方へ移動されて、インクジェット記録ヘッド39の下面にノズル53が密閉するように密着される。ポンプ機構によりキャップ52内が負圧にされることにより、インクジェット記録ヘッド39のノズル53からインクが吸引される。ノズル53内の気泡や異物は、該インクとともに吸引除去される。
廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれるインクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ84は、プラテン42の上面であって、キャリッジ38の往復動範囲内且つ画像記録範囲外に形成されている。なお、廃インクトレイ84内にはフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、該フェルトに吸収されて保持される。これらメンテナンスユニットにより、インクジェット記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止等のメンテナンスが行われる。
図1が示すように、プリンタ部2の筐体の正面には、扉7が開閉自在に設けられている。扉7が開かれると、カートリッジ装着部が装置正面側に露出され、インクカートリッジが装抜可能になる。カートリッジ装着部は、図示されていないが、インクカートリッジに対応して4つの収容室に区画されており、各収容室に、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各色インクを保持するインクカートリッジが収容される。カートリッジ装着部からキャリッジ38へは、各色インクに対応した4本の上記インクチューブ41が引き回されている。前述のように、キャリッジ38に搭載されたインクジェット記録ヘッド39には、各インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから各色インクが供給される。
図4が示すように、インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に追従して撓む可撓性を有する。カートリッジ装着部から導出された各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置本体の固定クリップ36に一旦固定されている。各インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分が装置本体等に固定されておらず、当該部分がキャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。なお、図4においては、固定クリップ36からカートリッジ装着部側へ延びるインクチューブ41は省略されている。
インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分がキャリッジ38の往復動方向に反転する湾曲部を形成して引き回されている。換言すれば、インクチューブ41は、平面視において略U字形状を形成するように引き回されている。4本のインクチューブ41は、キャリッジ38において記録用紙搬送方向に沿って水平方向に配列されて、キャリッジ38の往復動方向に延出されている。一方、固定クリップ36は、4本のインクチューブ41が垂直方向に積み重ねられた状態となるように、これらを配列し固定している。固定クリップ36は、上側に開口した断面がU字形状の部材である。そして、該開口から各インクチューブ41が挿入されて垂直方向に積み重ねられ、一体的に狭持されている。これにより、4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36へ向かって、水平方向の配列が垂直方向の配列になるように捻られながら、4本全体として略U字形状に湾曲されている。
4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36までの長さが略同一にされている。キャリッジ38において、記録用紙の搬送方向の最も上流側に配置されたインクチューブ41が、固定クリップ36において最も上側に配置されている。そして、上記インクチューブ41の次に上流側に配置されたインクチューブ41が、固定クリップ36において該インクチューブ41の次となる下側に配置されている。これを繰り返して、キャリッジ38における記録用紙搬送方向の上流側のインクチューブ41から下流側へ向かって順に、固定クリップ36の最も上側から下側へ順次配置されている。各インクチューブ41の長さは略同一なので、キャリッジ38の記録用紙搬送方向の配列に従って、各インクチューブ41の略U字形状の湾曲部の中心が記録用紙搬送方向にずれるように湾曲される。これにより、湾曲部において、4本のインクチューブ41が上側から下側へ向かって斜め方向に整列され、キャリッジ38に追従して姿勢変化する際に、インクチューブ41同士が干渉することが低減される。なお、本実施形態では、4本のインクチューブ41について示しているが、インクチューブ41がさらに増えた場合には、順次同様に、キャリッジ38における記録用紙搬送方向の上流側のインクチューブ41から、固定クリップ36の上側に順次配置される。
制御部64(図8参照)を構成するメイン基板からインクジェット記録ヘッド39のヘッド制御基板へはフラットケーブル85を通じて記録用信号等の伝送が行われる。なお、上記メイン基板は装置正面側(図4手前側)に配設されており、図4では図示されていない。フラットケーブル85は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続している。
フラットケーブル85は、キャリッジ38の往復動に追従して撓む可撓性を有する。図4が示すように、フラットケーブル85は、キャリッジ38から固定クリップ86までの部分がキャリッジ38の往復動方向に反転する湾曲部を形成して引き回されている。換言すれば、フラットケーブル85は、薄帯状の表裏面を垂直方向として、平面視において略U字形状を形成するように引き回されている。つまり、フラットケーブル85の表裏面は、その垂線が水平方向を向いて、その面が垂直方向に拡がっている。また、キャリッジ38からフラットケーブル85が延出される方向と、インクチューブ41が延出される方向とは、キャリッジ38の往復動方向に対して同方向である。
キャリッジ38に固定されたフラットケーブル85の一端側は、キャリッジ38に搭載されたヘッド制御基板に電気的に接続されている。固定クリップ86に固定されたフラットケーブル85の他端側は、さらにメイン基板へ延出されて電気的に接続されている。フラットケーブル85が略U字形状に湾曲された部分は、いずれの部材にも固定されておらず、インクチューブ41と同様に、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。このように、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化するインクチューブ41及びフラットケーブル85は、回動支持部材90によって支持されている。なお、回動支持部材90の端部は、軸受部91に回動自在に支持されており、したがって、回動支持部材90は、この軸受部91を揺動中心として揺動し得る。
インクチューブ41及びフラットケーブル85の装置正面側には、規制壁37が装置幅方向(図4の左右方向)に延設されている。規制壁37は、インクチューブ41に当接する垂直方向の壁面を有する壁であり、キャリッジ38の往復動方向に沿って直線状に立設されている。規制壁37は、インクチューブ41を固定する固定クリップ36からインクチューブ41の延出方向に設けられている。規制壁37の高さは、固定クリップ36により垂直方向に配列された4本のインクチューブ41のすべてが当接可能な寸法に設定されている。インクチューブ41は、固定クリップ36から規制壁37に沿って延出されている。このインクチューブ41は、規制壁37の装置背面側の壁面に当接することによって、装置正面側、換言すればキャリッジ38から離れる方向へ膨出することが規制されている。
固定クリップ36は、装置の幅方向の略中央付近に配置されている。固定クリップ36は、インクチューブ41が規制壁37へ向かって延出されるように該インクチューブ41を固定している。つまり、規制壁37の垂直方向の壁面と、固定クリップ36がインクチューブ41を延出させる方向は、平面視において180°より小さな鈍角をなしている。インクチューブ41は可撓性を有するものであるが、適度な腰(曲げ剛性)をも有する。したがって、インクチューブ41は、固定クリップ36により規制壁37に対して角度をもって延出されることにより、規制壁37の壁面に押し付けられる。これにより、キャリッジ38の往復動範囲において、インクチューブ41が規制壁37に沿って躾けられる範囲が広くなり、インクチューブ41の湾曲部からキャリッジ38までの部分が装置背面側、換言すればキャリッジ38側へ膨出する領域を小さくすることができる。
固定クリップ86は、装置の幅方向の略中央付近であって固定クリップ36より湾曲内側となる位置に設けられている。この固定クリップ86は、フラットケーブル85が規制壁37へ向かって延出されるように該フラットケーブル85を固定している。つまり、規制壁37の垂直方向の壁面と、固定クリップ86がフラットケーブル85を延出させる方向は、平面視において180°より小さな鈍角をなしている。フラットケーブル85は可撓性を有するものであるが、適度な腰(曲げ剛性)をも有する。したがって、フラットケーブル85は、固定クリップ86により規制壁37に対して角度をもって延出されることにより、規制壁37の壁面に押し付けられる。これにより、キャリッジ38の往復動範囲において、フラットケーブル85が規制壁37に沿って躾けられる範囲が広くなり、フラットケーブル85の湾曲部からキャリッジ38までの部分が装置背面側、換言すればキャリッジ38側へ膨出する領域を小さくすることができる。
図6は、インクジェット記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。
同図が示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面にノズル53が設けられている。ノズル53は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インクごとに、記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復動方向である。CMYBkの各色インクのノズル53は、それぞれ記録用紙搬送方向に列をなしており、その各色インクのノズル53の列が、キャリッジ38の往復動方向に並んでいる。各ノズル53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じてノズル53の列数を増減することも可能である。
図7は、インクジェット記録ヘッド39の内部構成を示す部分拡大断面図である。
同図が示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたノズル53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形され、キャビティ55の容積を縮小する。このキャビティ55の容量の変化によって、キャビティ55内のインクがノズル53からインク滴として吐出される。
キャビティ55は、各ノズル53ごとに設けられており、複数のキャビティ55に渡ってマニホールド56が形成されている。マニホールド56は、CMYBkの各色インクごとに設けられている。マニホールド56の上流側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57も、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各バッファタンク57には、インクチューブ41を流通するインクがインク供給口58から供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59からポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
このようにして、インクカートリッジからインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク流路が構成される。このようなインク流路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、圧電素子54の変形により、ノズル53からインク滴として記録用紙に吐出される。
図3が示すように、画像記録ユニット24の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。図3では、ピンチローラは、他の部材に隠れて表れていないが、搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。画像記録ユニット24の下流側には、一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転は同期されている。搬送ローラ60に設けられたロータリーエンコーダ76(図8参照)は、搬送ローラ60とともに回転するエンコーダディスク61のパターンを光学センサ82(図5参照)で検知する。この検知信号に基づいて、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。拍車ローラ63は、排紙ローラ62と接離する方向にスライド移動可能に設けられ、コイルバネにより排紙ローラ62に圧接するように付勢されている。排紙ローラ62と拍車ローラ63との間に記録用紙が進入すると、拍車ローラ63は、記録用紙の厚み分だけ付勢力に反して退避し、該記録用紙を排紙ローラ62に圧接するように狭持する。これにより、排紙ローラ62の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。ピンチローラも搬送ローラ60に対して同様に設けられたものであり、記録用紙を搬送ローラ60に圧接するように狭持して、搬送ローラ60の回転力を確実に記録用紙へ伝達させる。
用紙搬送路23の上記搬送ローラ60の上流側にレジセンサ95が配置されている。このレジセンサ95は、図3が示す検出子及び図示されていない光学センサを備えている。検出子は、用紙搬送路23に出没可能に配置されている。検出子は、常時用紙搬送路23に突出するように弾性付勢されており、用紙搬送路23を搬送される記録用紙が当接することにより、用紙搬送路23へ没入するように回動する。検出子の出没により、上記光学センサがON又はOFFされる。したがって、記録用紙が検出子を出没させることによって、用紙搬送路23における記録用紙の先端又は後端の位置が検出される。
本実施形態に係る複合機1では、LFモータ71は、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のほか、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙の排紙トレイ21への排出の駆動源となっている。すなわち、LFモータ71は、搬送ローラ60を駆動すると共に(図5参照)、前述のように上記駆動伝達機構27を介して給紙ローラ25を駆動し(図3参照)、且つ所定の動力伝達機構83を介して排紙ローラ62が取り付けられた排紙ローラ軸を駆動するようになっている(図5参照)。なお、この動力伝達機構83は、例えば歯車列により構成されていてもよいし、組付スペースの関係上、適宜タイミングベルトが使用されてもよい。
図8は、複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。
制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機1の全体動作を制御するものであり、フラットケーブル85が接続されるメイン基板により構成される。なお、スキャナ部3に関する構成は、本発明の主要な構成ではないのでその詳細な説明は省略される。
制御部64は、図が示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LFモータ71に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、LFモータ71の駆動回路72に付与され、この駆動回路72を介して駆動信号がLFモータ71に通電される。このようにして、LFモータ71の回転制御が行われる。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62及びパージ機構51に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてLFモータ71が回転し、LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51へ伝達される。すなわち、前述のように、本実施形態に係る複合機1では、LFモータ71は、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のほか、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙の排紙トレイ21への排出の駆動源となっている。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CRモータ73に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、CRモータ73の駆動回路74に付与され、この駆動回路74を介して駆動信号がCRモータ73に通電される。このようにして、CRモータ73の回転制御が行われる。
駆動回路74は、CRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてCRモータ73が回転し、CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されることによりキャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39を所定のタイミングで駆動させるものである。駆動回路75は、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいて、ASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路75は、ヘッド制御基板に搭載されており、フラットケーブル85を介して制御部64を構成するメイン基板からヘッド制御基板へ信号が伝送される。これにより、インクジェット記録ヘッド39は、所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に吐出する。
ASIC70には、搬送ローラ60の回転量を検出するロータリーエンコーダ76、キャリッジ38の位置検知を行うリニアエンコーダ77、記録用紙の先端及び後端の検知を行う上記レジセンサ95が接続されている。キャリッジ38は、複合機1の電源オンにより、ガイドレール43、44の一方の端まで移動されて、リニアエンコーダ77による検知位置が初期化される。この初期位置から、キャリッジ38がガイドレール43、44上を移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ35がエンコーダストリップ50のパターンを検知し、これに基づくパルス信号数がキャリッジ38の移動量として制御部64に把握される。制御部64は、この移動量に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ73の回転を制御する。また、制御部64は、レジセンサ95の信号及びロータリーエンコーダ76が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置を把握し、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。この改行幅は、記録条件として入力された解像度等に基づいて設定される。
ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
図9は、図5の要部拡大斜視図であって、プラテン42の拡大斜視図である。
このプラテン42は、前述のように、インクジェット記録ヘッド39に対向して(図3において下方に)配置されており、搬送される記録用紙を支持する。図9が示すように、このプラテン42は、全体として薄肉の細長矩形板状を呈している。プラテン42は、その長手方向が上記主走査方向(矢印87の方向)に沿うように配置されている。また、同図において、矢印89の方向が上記搬送方向であって、記録用紙は、この矢印89の向きに搬送されるようになっている。
このプラテン42は、フレーム100と、フレーム100に設けられた第1固定リブ102(第1媒体支持部)及び第2固定リブ103(第2媒体支持部)と、フレーム100にスライド可能に設けられた可動支持部88と、この可動支持部88を後述のようにスライド駆動する連動機構105とを備えている。
フレーム100は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、プラテン42の骨格を構成している。このフレーム100は、断面形状が略C形に形成されている。フレーム100の主走査方向両端に、それぞれ、ブラケット106、107が設けられている。これらブラケット106、107は、フレーム100と一体的に形成されている。フレーム100は、これらブラケット106、107を介して複合機10に係止固定されている。
フレーム100の一端部側(図9において手前側)に駆動機構取付部108が設けられている。この駆動機構取付部108は、フレーム100と一体的に形成されており、フレーム100の上面109に連続する上板110を備えている。この上板110は、矩形状を呈し、後に詳述される連動機構105を支持するものである。
フレーム100の上面109に上記第1固定リブ102及び第2固定リブ103が設けられている。具体的には、第1固定リブ102は、上記上面109の搬送方向上流側端部に設けられており、上方に(インクジェット記録ヘッド39側に)突出されている。また、第2固定リブ103は、上記上面109の搬送方向下流側端部に設けられており、上方に突出されている。本実施形態では、同図が示すように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103は、それぞれ搬送方向に二分割されているが、これらが一体的に形成されていてもよいことは勿論である。
本実施形態では、複数の第1固定リブ102が上記上面109に設けられており、各第1固定リブ102は、主走査方向に並設されている。同様に、複数の第2固定リブ103が上記上面109に設けられており、主走査方向に並設されている。このように第1固定リブ102及び第2固定リブ103が設けられることにより、第1固定リブ102と第2固定リブ103との間に溝116が形成されている。この溝116は、同図が示すように、上記主走査方向に延び、且つ上記搬送方向に広がっている。この溝116の幅寸法117は、上記インクジェット記録ヘッド39のサイズに対応されている。具体的には、この溝116の幅寸法117は、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出領域118(図6参照)よりも広くなるように設定されている。このように、上記溝116の幅寸法が広く設定されることによる作用効果については後述される。
特に、本実施形態では、同図が示すように、一の第1固定リブ102と一の第2固定リブ103とは、上記溝116を挟んで搬送方向(矢印89の方向)に対向されている。また、第1固定リブ102の角部は面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、第1固定リブ102の搬送方向両側の角部に傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部に傾斜面が形成されていればよい。同様に、第2固定リブ103の角部にも面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。第2固定リブ103についても搬送方向両側の角部に傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部に傾斜面が形成されていればよい。このように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103の各角部に面取加工が施されていることによる作用効果については、後述される。
上記フレーム100の上面109に複数のスリット119が設けられている。同図が示すように、各スリット119は、搬送方向に沿って上記上面109の搬送方向上流側端部から下流側端部まで延びており、且つ走査方向に並設されている。各スリット119は、隣り合う第1固定リブ102の間と隣り合う第2固定リブ103の間とに架け渡すように形成されている。上記可動支持部88は、このスリット119に嵌め込まれ、当該スリット119から上方に突出している。
図10は、可動支持部88の拡大斜視図である。また、図11は、プラテン42の底面側からみた可動支持部88の拡大斜視図である。さらに、図12は、上記連動機構105の拡大斜視図である。
可動支持部88は、図10及び図11が示すように、箱状に形成されたベース120と、これに設けられたリブ121(可動リブ)とを有する。このリブ121は、薄肉板状に形成されており、プラテン42から突出している(図9参照)。この可動支持部88は、合成樹脂又は金属から構成され得る。ベース120は、全体として細長の板状に形成されていが、その断面形状はC形に形成されている。ベース120は、図9が示すように上記フレーム100の下側から内側に嵌め込まれている。図10が示すように、ベース120の主走査方向の両端部にスライドローラ93が回動自在に設けられている。このスライドローラ93は、上記フレーム100に対して円滑に転動する。したがって、ベース120は、上記フレーム100の内側で搬送方向(図9、図10において矢印89の方向)に滑らかにスライドすることができるようになっている。
このベース120の上面に上記リブ121が設けられている。このリブ121は、ベース120と一体的に形成されている。リブ121は、三角形状に形成されている。本実施形態では、複数のリブ121がベース120の上面に立設されている。これらリブ121は、ベース120の上面に設けられており、主走査方向(図10において矢印87の方向)に沿って所定間隔で並んでいる。この所定間隔は、上記スリット119(図9参照)のピッチに対応されている。したがって、各リブ121は、フレーム100に設けられたスリット119を挿通してフレーム100の上面109から上方に突出している。
可動支持部88を構成するリブ121は、前述のように三角形状に形成されていることから、換言すれば、リブ121の角部122、123は、第1固定リブ102及び第2固定リブ103と同様に面取加工が施されており、上記搬送方向に対して傾斜する傾斜面を構成している。本実施形態では、各リブ121の搬送方向両側の角部122、123に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部122に上記傾斜面が形成されていればよい。このように、リブ121の角部122、123に面取加工が施されていることによる作用効果については、後述される。
連動機構105は、前述のように可動支持部88を搬送方向にスライドさせるためのものである。この連動機構105は、排紙ローラ軸92と可動支持部88との間に介在されている。連動機構105が設けられることにより、可動支持部88は、排紙ローラ軸92と連動する。可動支持部88は、プラテン42上を搬送される記録用紙の端部を常時支持するように、当該記録用紙に追従して移動される。具体的には、記録用紙がプラテン42のフレーム100の搬送方向上流側端部94(図9参照)に搬送されたときに、上記リブ121がこれを迎えるように移動し、その後、記録用紙の搬送に伴って当該記録用紙の端部を支持したまま搬送方向下流側にスライドする。
図12が示すように、連動機構105は、動力伝達機構124を介して排紙ローラ軸92を駆動源として回転駆動される回転板125と、回転板125と可動支持部88との間に配設され、回転板125の回転運動を可動支持部88の並進運動に変換するレバー部材126とを備えている。
図13は、回転板125の拡大斜視図である。また、図14は、回転板125の下面図である。
図12及び図13が示すように、回転板125は円盤状に形成されており、樹脂や金属から構成され得る。回転板125は、円形の回転板部141と、この回転板部141の上面中央に立設された円筒軸127とを備えている。この円筒軸127は、プラテン42のフレーム100に回転可能に支持されている。具体的には、例えば上記フレーム100に回転中心軸(不図示)が立設される。この場合、この回転中心軸は、上記主走査方向及び上記搬送方向の双方に対して直交する方向に延びる。そして、この回転中心軸に上記円筒軸127が回転自在に嵌め合わされる。もっとも、上記円筒軸127が直接フレーム100に嵌め込まれることにより、当該回転板125の回転中心軸を構成していてもよい。この回転板125の上面にリブ128、129が立設されている。リブ129の断面形状は矩形に形成されており、軸127を中心とする円環状に形成されている。また、リブ128の断面面形状も矩形に形成されており、軸127を中心としてリブ129を囲繞するように円環状に形成されている。
回転板125は、後述される動力伝達機構124を介して矢印130の方向を正転方向として正転又は逆転される。図13が示すように、リブ128に略V字状の溝131が設けられている。この溝131によって2つの壁面が形成されている。一つは、上記軸127の軸方向、すなわち回転板125の回転方向に対して直交する方向に延びる正転規制面132であり、他の一つは、正転規制面132の下縁からリブ128の周方向正転側へ延びながら当該リブ128の上面137に連なる逆転許容面133である。また、リブ129にも略V字状の溝134が設けられており、この溝134によって2つの壁面が形成されている。一つは、上記軸127の軸方向、すなわち回転板125の回転方向に対して直交する方向に延びる逆転規制面135であり、他の一つは、逆転規制面135の下縁からリブ129の周方向逆転側へ延びながら当該リブ129の上面138に連なる正転許容面136である。そして、これら溝131及び溝134に、それぞれ、後に詳述されるロック部材139及びロック部材140が係合されるようになっており、これにより、回転板125の正転及び逆転が規制又は許容されるようになっている。
図11及び図14が示すように、回転板125の裏面142に案内溝143(係合部)が設けられている。この案内溝143は、所定の軌跡曲線を描くように形成されている。具体的には、図14において上記円筒軸127の中心を原点とする極座標系が設定され、且つ同図において上記裏面142に沿って水平方向に延びる仮想軸144が設定された場合に、上記案内溝143は、R=kθ(kは定数)を満たす軌跡曲線に沿って形成される。この場合、原点から仮想軸144の左側方向に向かう角度がθ=0であり、時計回りがθの正の方向である。すなわち、この軌跡曲線はアルキメデス螺旋を描き、原点と案内溝143の中心までの距離Rと上記角度θとは線型の関係にある。ただし、本実施形態では、R=kθにしたがう軌跡曲線は、0°(degree)≦θ≦180°の範囲であり、この範囲で形成された軌跡曲線が上記仮想軸144を中心に左右対称(同図では上下対称)に配置されている。したがって、上記案内溝143は、上記仮想軸144を基準に上下対称に形成されたアルキメデス螺旋に沿って形成されている。
図11が示すように、上記レバー部材126は、細長の棒状に形成されており、上記可動支持部88のベース120に取り付けられている。具体的には、レバー部材126の先端部145が上記ベース120の裏面側に嵌合されており、レバー部材126の基端部146が上記回転板125の案内溝143に嵌合されている。このレバー部材126は、その中間部147がプラテン42のフレーム100に支持されている。同図では、レバー部材126とプラテン42のフレーム100との支持構造が図示されていないが、例えば、フレーム100に設けられた支持軸(不図示)に上記中間部147が回動自在に嵌合される構造が採用され得る。
レバー部材126の基端部146は、回転板125の案内溝143に嵌め合わされることにより、当該案内溝143の長手方向にのみ変位可能となっている。一方、レバー部材126の先端部145は、上記ベース120に嵌め合わされることにより、主走査方向にのみ変位可能となっている。このため、回転板125が回転することにより、レバー部材126の基端部146が上記案内溝143に案内されながら、当該レバー部材126が中間部147を揺動中心として揺動する。その結果、上記中間部147を揺動中心としてレバー部材126の先端部145が揺動する。当該先端部145が上記ベース120に対して主走査方向に変位可能であるから、レバー部材126の先端部145が揺動することによって上記ベース120が搬送方向にスライドすることになる。
このとき、レバー部材126の先端部145の変位量は、レバー部材126の基端部146の変位量の所定倍である。具体的には、この倍率は、上記中間部147から上記先端部145までの距離と上記昼間部147から上記基端部146までの距離との比率に対応しており、したがって、上記先端部145の変位量は、上記基端部146の変位量を上記所定倍に増幅したものである。すなわち、このレバー部材126が設けられることにより、上記回転板125の回転量が上記ベース120の搬送方向の変位量に上記所定倍率で変換される。
図12が示すように、動力伝達機構124は、排紙ローラ軸92に設けられたトルクリミッタ148と、歯車149〜151とを備えている。トルクリミッタ148は、排紙ローラ軸92に設けられたフランジ153と、摩擦板152(典型的には不織布)を介してフランジ153に当接される押圧板154と、この押圧板154を摩擦板152と共にフランジ153に弾性的に付勢するコイルバネ155とを備えている。このコイルバネ155によって押圧板154がフランジ153に押しつけられると、両者間に所定の摩擦力が発生し、この摩擦力によって両者間で動力伝達が行われる。換言すれば、上記押圧板154と上記フランジ153との間で伝達されるトルクが制限されており、上記コイルバネ155の弾性力が大きく設定されることにより、制限されるトルクは大きくなる。
同図では明確に図示されていないが、押圧板154の外周面に歯が形成されており、当該歯が歯車149と噛み合っている。したがって、押圧板154が回転すると歯車149も回転する。歯車150は歯車149と噛み合っており、さらに歯車151は、歯車150と噛み合っている。ただし、歯車150と歯車151とは傘歯車列を構成しており、その回転中心軸が直交している。図11が示すように、この歯車151の外周面が上記回転板125の外周面と接触している。本実施形態では、歯車151と回転板125とが接触することにより発生する摩擦力によって、両者間でトルク伝達が行われる。ただし、歯車151及び回転板125の双方に歯が形成され、両者が平歯車列を構成して連結されていてもよいことは勿論である。
本実施形態では、上記回転板125の回転を規制する回転規制手段156が設けられている。図12が示すように、この回転規制手段は、上記ロック部材139及びロック部材140と、ロック部材139が回転板125に係合するように弾性的に付勢するコイルバネ157(弾性部材)と、主走査方向にスライドするインクジェット記録ヘッド39が当接されることによって、ロック部材140の姿勢を後述のように変化させる当接部材158とを備えている。
ロック部材139は、クランク状に形成されており、その基端部が支持軸159によって支持されている。ロック部材139の基端部は、支持軸159に回動自在に支持されており、このため、ロック部材139は、支持軸159を揺動中心として矢印160の方向に回転俯仰することができる。ロック部材139の先端部に係合爪161が設けられている。この係合爪161の外形形状は楔状に形成されており、回転板125の溝131に嵌め合わされるようになっている。
ロック部材139が支持軸159を中心に揺動することから、ロック部材139は、回転板125側に倒伏して係合爪161が上記溝131に嵌め込まれた姿勢(回転規制姿勢)と、回転板125から起立して係合爪161が上記溝131から脱出した姿勢(回転許容姿勢)との間で姿勢変化が可能となっている。ただし、上記コイルバネ155が設けられているので、常時においては、ロック部材139が回転規制姿勢側に付勢されている。
したがって、上記係合爪161が上記溝131に嵌合した状態では、回転板125が正転しようとした場合であっても、係合爪161と上記正転規制面132(図13参照)とが正転方向に当接するので、回転板125の正転が規制される。一方、上記係合爪161が上記溝131に嵌合した状態であっても、回転板125が逆転した場合には、係合爪161が上記逆転許容面133(図13参照)に沿ってスライドすることが可能である。係合爪161が上記逆転許容面133に沿ってスライドすることによってロック部材139は、上記コイルバネ155の弾性力に抗して回転許容姿勢側へ変化する。これにより、係合爪161は、回転板125のリブ128の上面137に到達し、回転板125の回転に伴って当該上面137上を摺動することになる。
また、ロック部材140は、四角柱状に形成されている。図12では図示されていないが、ロック部材140の下端部に係合爪が形成されている。この係合爪も上記ロック部材139の係合爪161と同様に楔状に形成されており、回転板125のリブ129に設けられた溝134に嵌め合わされるようになっている。ロック部材140は、同図において上下方向にスライド可能に設けられており、コイルバネ162によって常時下方に弾性付勢されている。つまり、ロック部材140に設けられた係合爪は、常時回転板125に係合して回転板125の逆転を規制しているが、回転板125の正転は許容している。
当接部材158は、ロック部材139の基端部に連結されている。したがって、当接部材158は上記支持軸159を中心としてロック部材139と共に回動可能となっている。当接部材158の先端部164は、上方に延びるアーム状に形成されており、上記インクジェット記録ヘッド39のキャリッジ38(図5参照)が主走査方向にスライドした際に当該先端部164に当接するようになっている。また、上記コイルバネ157は、当接部材158に連結されており、当該当接部材158と共にロック部材139を前述のように弾性付勢している。
次に、本実施形態に係る複合機1による画像記録の要領が説明される。
本実施形態に係る複合機1では、上記操作パネル4(図1参照)が操作されることによって、画像記録の態様が選択され得るようになっている。すなわち、ユーザーが操作パネル4を操作することによって、いわゆる縁あり記録又は縁なし記録を任意に選択することができるようになっている。操作パネル4により記録態様が設定されると、ASIC70(図8参照)からCPU65に記録態様を指示する信号が送られる。CPU65は、この信号を受けて、上記駆動回路74及び駆動回路75にCRモータ73及び記録ヘッド39を駆動するための命令を出す。具体的には、縁なし記録の設定がなされた場合には、上記CRモータ73は、上記キャリッジ38(図5参照)が上記当接部材158を押圧するように駆動されるようになっている。
図15は、縁なし記録が行われるときの記録用紙の搬送及び可動支持部88のスライドのタイミングを示すタイミングチャートである。同図において、横軸は時間の経過を表わしている。また、同図において、線図167及び線図173は、それぞれ、搬送される記録用紙の先端及び後端の位置の変位を示し、線図170は、可動支持部88の変位を示している。さらに、同図において、線図169及び線図168は、それぞれ、当接部材158の変位及びLFモータ71の駆動タイミングを示している。図16は、記録用紙の搬送時における可動支持部88の変位を(a)から(d)の順に示す図である。同図において、矢印166の方向が記録用紙の搬送方向である。なお、同図では、記録用紙が搬送ローラ60によりレジストされた後から当該記録用紙への記録が終了するまでの動作タイミングが示されており、給紙トレイ20から給送された記録用紙が搬送ローラ60に至るまでの動作は省略されている。
画像記録が行われるときは、まず、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ給送するために、給紙ローラ25を回転すべく、制御部64がLFモータ71を駆動する。給紙の際には、LFモータ71は逆転で駆動され、この駆動が伝達されることによって、給紙ローラ25が記録用紙を給送する方向に回転され、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が搬送方向と逆方向に回転される。給紙トレイ20から用紙搬送路23に給送された記録用紙は、用紙搬送路23に沿って下方から上方へ反転するように搬送され、その先端がレジセンサ95に当接し、さらに搬送されることにより搬送ローラ60及びピンチローラに当接する。搬送ローラ60は、搬送方向と逆方向に回転されているので、記録用紙は、先端を搬送ローラ60及びピンチローラに当接させた状態でレジスト処理される。このレジスト位置が、図15において参照符号174で示されている。記録用紙のレジスト処理が終了された後、制御部64は、LFモータ71を正転で駆動する。これにより、レジスト処理された記録用紙が搬送ローラ60及びピンチローラにニップされ、線図167が示すようにプラテン42上を搬送される。
LFモータ71が逆転されることにより、排紙ローラ62が搬送方向と逆方向に回転され、この回転が駆動伝達機構124を介して回転板125に伝達される。回転板125が初期位置にあるとき、つまりロック部材140が溝134に係合しているときは、回転板125の回転が規制される。したがって、トルクリミッタ148により、回転板125の逆転が停止された状態で排紙ローラ軸92のみが逆転される。また、回転板125が初期位置になければ、ロック部材140が溝134と係合していないので、排紙ローラ62の回転が駆動伝達機構124により回転板125に伝達され、回転板125が逆転する。そして、回転板125が初期位置まで逆転されると、ロック部材140が溝134に係合し、前述のように回転板125の逆転が規制され、排紙ローラ軸92のみが逆転される。なお、このようなLFモータ71の逆転駆動は、回転板125が初期位置にイニシャライズされるための動作として、複合機1の電源オンのときやエラー解除後に行われるように設定されていてもよい。また、回転板125が初期位置になることにより、ロック部材139が溝131に係合して、回転板12の正転も規制される。
縁なし記録が行われる場合は、記録用紙の搬送に追従して可動支持部88がスライドされる。詳述すれば、記録用紙が上記初期位置174(図15参照)に配置されたときは、図16(a)が示すように、可動支持部88はプラテン42の中央に位置し、レバー部材126の基端部146は、回転板125の案内溝143の所定位置、すなわち、図14において参照符号165で示される位置に配置されている。なお、この参照符号165で示される位置とは、上記円筒軸127の中心を通り仮想軸144と直交する仮想軸172が案内溝143と交差する位置である。図16(a)における可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係がこれら各部材の初期位置である。
前述のように、搬送ローラ60を基準として記録用紙の先端がレジストされた後、図15の線図168が示すようにLFモータ71が正転で間欠駆動され、記録用紙がプラテン42上の記録位置へ搬送される。その後、線図169が示すように、所定のタイミングでCRモータ73も駆動される。これにより、キャリッジ38(図5参照)が主走査方向にスライドし、回転規制手段156の当接部材158(図12参照)に当接する。このときのキャリッジ38のスライド量の制御、すなわちCRモータ73の駆動制御は、上記制御部64が行う。
図12が示すように、当接部材158がキャリッジ38によって主走査方向に押されると(図15において「ON」)、ロック部材139が支持軸159を中心に回動し、回転許容姿勢となる。すなわち、係合爪161が回転板125から外れ、回転板125は、正転(円筒軸127を中心にして時計方向への回転)が可能となる。前述のように、LFモータ71によって排紙ローラ軸92が搬送方向に回転されると、この回転が動力伝達機構124を介して回転板125に伝達され、この回転板125が正転する。その結果、可動支持部88は、図15の線図170が示すように変位し、可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係は、図16(b)〜(d)の順に変化する。以下、可動支持部88の移動についてさらに詳述される。
可動支持部88は、初期において第1固定リブ102と第2固定リブ103との間(図9参照)に位置するが、図15において線図170が示すように、記録用紙の先端がプラテン42のフレーム100の搬送方向上流側端部に搬送された場合には、可動支持部88が搬送方向上流側へ移動して当該記録用紙を迎える。具体的には、LFモータ71の正転により搬送ローラ60が搬送方向に回転されて記録用紙がプラテン42へ送られると共に、このLFモータ71の正転が駆動伝達されて回転板125が正転される。このときの回転板125の回転方向は、図14及び図16において時計回りの方向である。回転板125が正転すると、レバー部材126の基端部146の位置165は、図14において矢印171の方向に相対的に移動する。すなわち、上記基端部146の位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次小さくなる。したがって、図16(b)が示すように、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、その結果、可動支持部88を上記搬送方向上流側へ移動させる。回転板125の回転角度が90°に達すると、可動支持部88は、隣り合う第1固定リブ102の間に進入した位置(第1位置)に配置され、記録用紙を迎える。本実施形態では、図15が示すように、記録用紙の先端がプラテン42の搬送方向上流側端部に到達する前に可動支持部88が当該搬送方向上流側端部に対応する第1位置に移動する。このため、可動支持部88のリブ121は、記録用紙によって上から被われることになる。
その後、同図が示すように、キャリッジ38のスライドによるインク滴の吐出及び設定された解像度に対応した記録用紙の所定の改行幅ごとの搬送が交互に繰り返され、当該記録用紙に画像記録がなされる。つまり、図15の線図168が示すように、LFモータ71が正転で間欠的に駆動され、記録用紙が所定の改行幅ごとに間欠的に送られることになる。LFモータ71の駆動に連動して回転板125が回転されるから、記録用紙が前述のように間欠的に送られることによって、回転板125もこれに同期して所定の回転角度づつ間欠的に回転される。レバー部材126の基端部146の位置165は、図14において矢印171の方向にさらに移動し、回転板125の回転角度が360°に達したときに上記初期位置に復帰する。すなわち、回転板125の回転角度が90°を超え270°以下の範囲では、上記基端部146の位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次大きくなる。したがって、図16(b)〜(d)が示すように、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、その結果、可動支持部88を上記搬送方向下流側へ移動させる。回転板125の回転角度が270°に達すると、可動支持部88は、隣り合う第2固定リブ103の間に進入した位置(第2位置)に配置される。さらに、回転板125が回転することにより、上記基端部146の位置165と円筒軸127との距離は、回転板125の回転に伴って漸次小さくなる。このため、レバー部材126は、中間部147を揺動中心として揺動し、可動支持部88を上記搬送方向上流側へ移動させる。回転板125の回転角度が360°に達すると、可動支持部88は、上記初期位置に復帰する。
このように回転板125が回転しているときは、図12が示すように、係合爪161がリブ128の上面137を摺動する。したがって、回転板125の回転角度が360°に達したときは、コイルバネ157によって付勢されている係合爪161が再び回転板125の溝131(図13参照)に嵌め込まれ、回転板125の正転が規制される。回転板125の正転が規制された場合には動力伝達機構124が停止されるが、トルクリミッタ148が設けられているので、LFモータ71の駆動力は搬送ローラ60及び排紙ローラ軸92に伝達される。したがって、記録用紙の円滑な搬送が確保される。
記録用紙の円滑な搬送が確保された状態で、記録用紙は、図15が示すように所定の改行幅で間欠的に搬送され、画像記録が続行される。このとき、同図において線図170が示すように、可動支持部88は上記初期位置で停止されている。ただし、線図173が示すように、記録用紙の搬送に伴って当該記録用紙の後端がプラテン42の搬送方向上流側端部に接近する。記録用紙の後端は、レジセンサ95により検知される。この検知信号に基づいて制御部64がCRモータ73の駆動制御を行い、これにより、図15の線図169が示すように、キャリッジ38が主走査方向にスライドして上記当接部材158(図12参照)に当接する(図15の「ON」)。
当接部材158がキャリッジ38によって主走査方向に押されると、前述のように、ロック部材139が支持軸159を中心に回動し、係合爪161が回転板125から外れる。これにより、回転板125は、正転(円筒軸127を中心にして時計方向への回転)が可能となり、その結果、可動支持部88は、図15の線図170が示すように変位し、可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係は、再び図16(b)〜(d)の順に変化する。すなわち、記録用紙の後端が プラテン42の搬送方向上流側端部に到達する前に、LFモータ71の間欠駆動によって可動支持部88が当該搬送方向上流側端部に対応する第1位置まで間欠的に移動される。なお、このときも可動支持部88のリブ121は、搬送される記録用紙によって上から被われる。その後、同図が示すように、キャリッジ38のスライドによるインク滴の吐出及び設定された解像度に対応した記録用紙の所定の改行幅ごとの搬送が交互に繰り返され、当該記録用紙への画像記録が続行される。LFモータ71の駆動に連動して回転板125が回転されるから、LFモータ71が前述のように間欠的に駆動されることによって、回転板125もこれに同期して所定の回転角度づつ間欠的に回転される。この状態でリブ121は、記録用紙を支持したまま搬送方向下流側へスライドする。
回転板125が一回転すると、再びコイルバネ157によって付勢されている係合爪161が回転板125の溝131(図13参照)に嵌め込まれ、回転板125の正転が規制されると共に、可動支持部88、回転板125及びレバー部材126の相対的位置関係が初期位置に復帰する。そして、当該記録用紙への画像記録が終了すると、LFモータ71は正転で連続駆動され、当該記録用紙が排紙トレイ21(図3参照)へ排出される。なお、このとき、回転板125の回転は規制されているが、上記トルクリミッタ148(図12参照)により排紙ローラ62は、円滑に回転される。
また、上記操作パネル4が操作されることによって、画像記録の態様が縁有り記録に設定される場合は、上記キャリッジ38が上記当接部材158に当接されることはない。したがって、上記可動支持部88は前述のようにスライドされず、上記初期位置に停止したままである。なお、縁有り記録が行われる場合においても、給紙に先立ってLFモータ71が逆回転されるように設定されているのが好ましい。この場合、前述のように、仮に、ロック部材140が回転板125に係合していないとしても、回転板125が逆回転することによって、ロック部材140が必ず回転板125の溝134に嵌り込み、確実にイニシャライズが行われる。
本実施形態に係る複合機1では、プラテン42上に搬送された記録用紙は、このプラテン42によって支持され、インクジェット記録ヘッド39が主走査方向にスライドされつつインク滴を吐出することにより、記録用紙に画像が記録される。この記録用紙は、画像記録と共にさらに搬送方向に搬送されるが、このとき、図9及び図15が示すように可動支持部88が記録用紙を支持したまま搬送方向にスライドするから、この記録用紙の端部は、画像記録の際中にリブ121によって常時支持されることになる。しかも、可動支持部88は、LFモータ71を駆動源としてスライドされるから、可動支持部88が滑らかにスライドされる。したがって、記録用紙が搬送方向に対して撓むことがなく、本実施形態のように、第1固定リブ102と第2固定リブ103との間に溝116(図9参照)が形成されていたとしても、記録用紙がこの溝116側に垂れることはない。その結果、この記録用紙とインクジェット記録ヘッド39との距離が一定に保たれ、高画質印刷が実現される。
特に本実施形態では、可動支持部88は、LFモータ71によって駆動される排紙ローラ軸92に連動される。一般にインクジェット記録装置では、搬送ローラは記録ヘッドの近傍に配置され、搬送ローラ60から排紙ローラ62への動力伝達機構83、パージ機構51等は、これら搬送ローラ60及びインクジェット記録ヘッド39に対して所定の幾何学的位置関係が保持されなければならない。したがって、仮に上記可動支持部88がインクジェット記録ヘッド39に近接配置されている搬送ローラ60から駆動力を得るとすれば、上記幾何学的位置関係から画像記録ユニット24の設計が困難となり、機構も複雑となる。しかし、本実施形態に係る複合機では、上記可動支持部88は、スペースに余裕のある排紙ローラ62側から駆動力を得るので、機構が簡略化され、複合機1のコンパクト設計が可能となる。
また、本実施形態では、プラテン42上に搬送された記録用紙は、まず第1固定リブ102によって支持され、さらに、上記溝116を通過して第2固定リブ103側へ送られる。この溝116は、特に縁なし記録が行われるときに、記録用紙の縁を越えてインクジェット記録ヘッド39から吐出されたインク滴を受け止めることができる。この溝116の底部に例えばシート状のスポンジ等のインク吸収材が敷設されていてもよく、これにより、溝116内に到達したインク滴が確実に吸収される。
上記第1固定リブ102上を搬送される記録用紙の端部は、上記溝116の上方を通過することになる。このとき、搬送される記録用紙に追従して可動支持部88がスライドするから、この記録用紙の端部は、可動支持部88によって常時支持され、上記溝116内に進入することはない。その結果、この記録用紙とインクジェット記録ヘッド39との距離が一定に保たれる。加えて、前述のように、可動支持部88は、記録用紙の先端部及び後端部を支持することによって当該記録用紙によって隠蔽されることになるから、記録用紙に対して吐出されたインク滴が可動支持部88に付着することがない。したがって、連続して記録用紙に画像記録される場合において、当該記録用紙に連続する次の記録用紙が可動支持部88上に配置されたときでも、当該記録用紙の裏面がインクによって汚れてしまうという不都合はない。
さらに、本実施形態では、可動支持部88によって記録用紙が支持されるので、上記溝116の幅寸法117が大きく設定され得る。これにより、インクジェット記録ヘッド39の大形化が可能であるし、インクジェット記録ヘッド39が大型化されたとしても、上記溝116は、このインクジェット記録ヘッド39のインク吐出領域118の全体をカバーすることができる。その結果、縁なし記録の高速化も実現されるという利点がある。
特に、記録用紙を支持する部材が第1固定リブ102、第2固定リブ103及びリブ121であるから、記録用紙を支持する部材の構造がきわめて簡単になるうえ、これら各リブと記録用紙との接触面積が小さくなる。したがって、記録用紙の搬送抵抗が小さくなり、記録用紙の一層円滑な搬送が可能となる。
本実施形態では、上記溝116の幅寸法117(図9参照)は、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出領域118(図6参照)よりも広くなるように設定されている。これにより、仮に記録用紙がプラテン42上に配置されていない場合に、インクジェット記録ヘッド39の全ノズル53からインク滴が吐出されたとしても、これらすべてのインク滴は、上記溝116に受け止められる。したがって、縁なし記録が行われるときに、インクジェット記録ヘッド39の全ノズル53からインク滴が吐出されながら、記録用紙の端部への画像記録が可能となる。すなわち、縁なし記録が高速で行われると共に、全ノズル53からのインク滴の吐出に関し、複雑な制御が不要となる。
換言すれば、仮に上記溝116の幅寸法117がインクジェット記録ヘッド39のインク吐出領域118よりも狭いとすれば、記録用紙の搬送方向の先端部分に縁なし記録が行われる場合には、インクジェト記録ヘッド39の上流側のノズル53のみからインク滴が吐出され、当該記録用紙の搬送に伴って順次下流側のノズル53からもインク滴が吐出されなければならず、インクジェット記録ヘッド39の複雑な制御が必要となるのに対して、本実施形態に係る複合機1では、そのような複雑な制御が不要であり、前述のように、全ノズル53からインク滴が吐出されることによって記録用紙の端部への縁なし記録が可能である。すなわち、ノズル53からのインク滴の吐出に関して複雑な制御が施されることなく、縁なし記録が高速で行われる。
さらに、上記ノズル53の断面形状は必ずしも真円ではないことに加えて、ノズル53内に微細なゴミが付着する場合もあり、そのため、インク滴は、ノズル53から真直に吐出されるのではなく若干斜め方向に吐出される場合がある。その場合においても、上記溝116の幅寸法117がインクジェット記録ヘッド39のインク吐出領域118よりも広く設定されているので、インク滴が溝116の外部に付着することがない。その結果、記録用紙の裏面がインクによって汚れることが確実に防止される。
また、本実施形態では、可動支持部88のリブ121の角部122、123に面取加工が施されており(図9参照)、この角部122、123に傾斜面が形成されている。これにより、第1固定リブ102を通過した記録用紙の端部が上記角部122に当接した場合であっても、この記録用紙の端部は、滑らかに可動支持部88上に案内される。したがって、可動支持部88が設けられることに起因して、記録用紙の円滑な搬送が妨げられることはない。また、前述のように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103のそれぞれの角部にも面取加工が施されており、この部分が傾斜面として構成されている。このため、搬送中の記録用紙が第1固定リブ102及び第2固定リブ103の角部に当接した場合であっても、記録用紙の円滑な搬送が妨げられることはない。
本実施形態では、上記連動機構105が設けられることにより、図15及び図16が示すように、記録用紙がプラテン42側に搬送されたときは、可動支持部88が記録用紙を一旦搬送方向上流側へ迎えにいき、その後、この記録用紙の搬送に伴って当該記録用紙の端部を支持したまま搬送方向下流側にスライドする。これにより、記録用紙の端部は、可動支持部88によって確実に支持され、搬送中に上記溝116内に進入することが確実に防止されるという利点がある。
図12が示すように、この連動機構105によれば、排紙ローラ軸92の回転に伴って回転板125が回転され、この回転板125に係合したレバー部材126が回転板125の回転量を上記可動支持部88の搬送方向の変位量に所定の倍率で変換する。これにより、可動支持部88は、記録用紙の搬送に同期してスライドされる(図15参照)。しかも、レバー部材126によって回転板の回転量が搬送方向の変位量に所定の倍率で変換されるので、回転板125が小型化される。その結果、複合機1のさらなるコンパクト設計が可能である。
本実施形態では、図12が示すようにロック部材139が常時回転板125に係合しているから、縁なし記録が行われるとき以外は、可動支持部88は、記録用紙に追従してスライドされることはない。この場合、可動支持部88は、第1固定リブ102と第2固定リブ103との間に配置されているから、プラテン42上を搬送される記録用紙が溝116内に進入することが抑制される。そして、上記ロック部材139は、縁なし記録が行われるときに回転板125から離脱されるので、縁なし記録又は縁有り記録のいずれかが自在に変更設定され得る。
次に、本実施形態の変形例について説明される。
図17は、本実施形態の変形例に係る複合機1の要部拡大斜視図であって、プラテン42及び可動支持部176の拡大斜視図である。
本変形例に係る可動支持部176が上記実施形態に係る可動支持部88と異なるところは、上記実施形態では、図11が示すように可動支持部88にレバー部材126が設けられており、このレバー部材126を介して可動支持部88が回転板125と連結されていたのに対し、本変形例では、可動支持部176に係合ピン175が設けられており、この係合ピン175が回転板125の案内溝143に嵌め込まれている点、及びそのために回転板125の円筒軸127が主走査方向(矢印87の方向)に沿って延びており、この回転板125を駆動するための歯車151を含む動力伝達機構124のジオメトリーが変更されている点である。なお、その他の構成については、上記実施形態と同様である。
すなわち、本変形例では、回転板125の係合面142(上記実施形態では、「裏面」)がプラテン42の上面109と略直交しており、可動支持部176の側面に突設された係合ピン175が回転板125の係合面142に設けられた案内溝143と嵌合している。そして、この係合ピン175は、案内溝143に沿ってスライド可能となっている。したがって、本変形例においても、回転板125が回転することによって、上記係合ピン175を介して可動支持部176がスライドし、プラテン42上を搬送される記録用紙が確実にリブ121によって支持される。しかも、可動支持部176が上記係合ピン175を介してスライドされるから、可動支持部176駆動する連動機構105の構成が簡単になるという利点がある。