JP2007321250A - 塩化ビニリデン系人形毛髪用繊維 - Google Patents

塩化ビニリデン系人形毛髪用繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】 安定剤や可塑剤をできるだけ用いずに、塩化ビニリデン系繊維の人形毛髪としての優れた外観や手触り感等を維持しつつ、さらに紡糸加工性にも優れる人形毛髪用繊維を提供する。
【解決手段】 塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする組成物からなる人形毛髪用繊維であって、前記塩化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量が5万〜8万であり、かつ、分子量が1万以下の低分子量成分を3%以上10%以下含有し、(Mw/Mn)が2.0以上5.0以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維への加工性等に優れ、人形の頭部に植えて毛髪とした場合の手触り感や風合い等に優れた塩化ビニリデン系の人形毛髪用繊維に関する。
人形の頭部に植えられる人形毛髪は、人間の毛髪に近い外観や手触り感さらには風合い等を有することが求められる。このような人形毛髪用繊維としては、材料に合成線状ポリアミドやアクリル樹脂等を用いたものも知られているが、特に毛髪の外観や手触り感に優れていることから、塩化ビニリデン系樹脂の人形毛髪(例えば、特許文献1参照)が主流となっている。
しかし、塩化ビニリデン系樹脂は熱安定性が低いため、繊維の溶融紡糸工程において熱分解物に起因した糸切れ等が多く発生しやすい。さらに、軽い人形毛髪が得られることから広く好まれている中空繊維とした場合(例えば、特許文献2参照)には、紡口における圧損が大きく、熱分解の促進に伴う紡口交換の頻度も高くなってしまう問題点がある。そのため、繊維を安定的に生産することが困難で、生産効率も低く留まらざるを得ないのが実情であった。
この塩化ビニリデン系樹脂の熱安定性を改善するためには、各種の安定剤や可塑剤等を比較的多く用いることも考えられる。ところが、これらを人形毛髪に多く使用すると、紡糸後の塩化ビニリデン系樹脂の結晶化により、余剰の安定剤や可塑剤が繊維表面に移行し、繊維表面のべたつきが生じることになる。すると、手触り感や風合いに劣る繊維しか得られないうえ、この繊維を用いて人形を製造した場合には、カール加工工程での詰まり等のトラブルが発生する原因となってしまう。
そのため、安定剤や可塑剤をできるだけ用いずに、塩化ビニリデン系繊維の人形毛髪としての優れた外観や手触り感等を維持しつつ、さらに紡糸加工性にも優れる繊維が求められていた。
特開昭61−113814号公報 特開平7−268162号公報
本発明は、塩化ビニリデン系繊維の人形毛髪としての優れた外観や手触り感等を維持しつつ、紡糸加工性に優れる人形毛髪用繊維を提供することを課題とする。
本発明は、塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする組成物からなる人形毛髪用繊維であって、前記塩化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量が5万〜8万であり、かつ、分子量が1万以下の低分子量成分を3%以上10%以下含有するものであることを特徴とする人形毛髪用繊維である。ここで、前記組成物は、前記塩化ビニリデン系樹脂を90重量%以上含むことことは好ましい。また、前記塩化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.0以上5.0以下であることは好ましい。また、前記の繊維が、中空率が3〜30%の中空糸であり、かつ、平均外径が0.01〜0.2mmであることは好ましい。
紡糸加工性に優れ、紡糸時の糸切れや紡口交換の頻度が低くなり、繊維の生産性が向上する。安定剤や可塑剤の使用量を必要最低限に留めることができるから、繊維表面のベタツキが生じにくく、手触り感や風合いに優れた人形毛髪用繊維が得られる。
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。本発明の人形毛髪用繊維は、以下に説明する特定の塩化ビニリデン系樹脂を含む組成物を紡糸することで得られる。この組成物は、塩化ビニリデンを主体とするモノマー組成物を重合して特定の塩化ビニリデン系樹脂とし、これに他の成分を必要により混合して得られる。なお、主体とするとは、モノマー組成物の50重量%以上を占めることを言う。
特定の塩化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量が5万〜8万と、従来になく小さい範囲のものである。重量平均分子量を小さくシフトすることで、得られる繊維の強度が従来より低下するものの人形毛髪として必要な強度は維持しつつ、生産性を向上することが可能になる。重量平均分子量を5万以上とすることで、人形毛髪に必要な強度が確保され、人形頭部への植毛時における植毛加工性やブラッシング時の非脱毛性が良好となる。また、理由は必ずしも明確ではないが、重量平均分子量を8万以下とすることで、紡糸時における押出機内部における熱分解や紡口の詰まりが生じにくくなり、紡口を交換せずに連続的に使用できる時間が長くなる。つまり、繊維の生産性が向上する。
ここにいう紡口の交換とは、塩化ビニリデン系樹脂の熱劣化・分解に起因して、気泡(塩酸ガス)の発生や紡口詰まりが生じた場合に、紡糸作業を停止して押出機内の分解物を洗浄すると共に、精密洗浄に時間を要する紡口を洗浄済みの他の紡口に交換する作業をいう。紡口交換の頻度は、生産性に大きく影響するため、運転から停止までの紡口連続使用時間の長さは重要である。塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、5万5千以上7万5千以下であることが好ましく、6万以上7万以下であることがより好ましい。塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記の範囲に調整するには、重合開始剤量を従来と比較して多めに用いる、または重合温度を従来と比較して高めに設定する、または両者を併用するなどの方法を用いればよい。
次に、特定の塩化ビニリデン系樹脂は、分子量が1万以下の低分子量成分を、塩化ビニリデン系樹脂の全量のうちの3%以上10%以下の範囲内で含有するものである。ここで、分子量が1万以下の低分子量成分の割合は、後述のゲルパーミエイションクロマトグラフィ法により得られたGPCチャートにおいて、ピークの全面積に対する分子量が1万以下の低分子量成分が占める面積の比率により定義される。
塩化ビニリデン系の分子量が1万以下の低分子量成分を3%以上含有することにより、理由は不明であるが、紡糸時における気泡(塩酸ガス)の発生や紡口の詰まりが生じにくくなり、紡口を交換せずに連続的に紡糸できる時間が長くなる。また、分子量が1万以下の低分子量成分を10%以下とすることで、人形毛髪に必要な強度は確保され、人形頭部への植毛時における植毛加工性やブラッシング時の非脱毛性が良好となる。分子量が1万以下の低分子量成分は、3%以上9%以下であることが好ましく、4%以上8%以下であることがより好ましく、5%以上7%以下であることがさらに好ましい。
塩化ビニリデン系樹脂における分子量が1万以下の低分子量成分の含有量を上記の範囲に調整するには、従来と比較して重合率を高く設定する、重合開始剤の量を従来より多くする、または重合開始剤の種類を変更する、またはこれらを併用する等の方法がある。ここで、重合率とは、重合に用いた全モノマーに対して重合反応により生成したポリマーの重量比率を言う。重合率を高く設定すると低分子量成分の量が増加するのは、重合前段から中段における重合率が比較的低い範囲では比較的高分子量のポリマーが多く生成し、重合終段で重合率が高くなると比較的低分子量のポリマーが多く生成する特性があることによる。また、重合開始剤の種類を変更する方法による場合は、従来比較的多く使用されているジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキサイド等ではなく、ターシャリブチルパーオキシピパレイドのような比較的特殊な重合開始剤を用いることができる。
塩化ビニリデン系樹脂の分子量分布は、上記の条件を満たしていれば、一山の分布でも良いし、比較的低分子量の成分と比較的高分子量の成分との二山の分布でも良いし、さらに多くの山の集合でも良いが、製造の容易さの観点から一山とするのが好ましい。塩化ビニリデン系樹脂における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分散度(Mw/Mn)は、2.0〜5.0の範囲であることが好ましく、2.1〜4.0の範囲であることがより好ましく、2.2〜3.0の範囲がさらに好ましい。図1に、塩化ビニリデン系樹脂における好ましい分子量分布の典型的な例の概念図を示す。なお、図中で斜線で示された範囲の面積が、分子量1万以下の低分子量成分の量を意味する。
塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンモノマー単独を重合することで得ても良いが、繊維の物性をより改善するために、塩化ビニリデンモノマーを主体とし、塩化ビニリデンモノマーと共重合可能な少なくとも1種類のエチレン誘導体モノマーを含めた組成物を重合して得るのが好ましい。
モノマー組成物に含めても良いエチレン誘導体モノマーとしては、アクリルニトリルやメタクリロニトリルのごときエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、メチルアクリレートやメチルメタクリレートのごときアクリル酸やメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシプロピルアクリレートやヒドロキシエチルアクリレートやヒドロキシブチルアクリレートのごときヒドロキシアルキルエステル、酢酸ビニルのごとき飽和カルボン酸のビニルエステル、アクリルアミドのごときエチレン性不飽和カルボン酸のアミド、アクリル酸のごときエチレン性不飽和カルボン酸、アリルアルコールのごときエチレン性不飽和アルコール、塩化ビニルのごときハロゲン化ビニルなどが例示される。これらの中で熱安定性が良い点でメチルアクリレートまたは塩化ビニルが好ましく、より好ましくは塩化ビニルである。
モノマー組成物における塩化ビニリデンモノマーとエチレン誘導体モノマーの好ましい重量比は、使用されるエチレン誘導体モノマーによって異なるものの、例えば、エチレン誘導体モノマーが塩化ビニルの場合には、塩化ビニリデンモノマー/塩化ビニルモノマーの好ましい重量比は65/35以上98/2以下である。塩化ビニルモノマーを35重量%以下とすることで得られる塩化ビニリデン系樹脂の透明度が維持され、塩化ビニルモノマーを2重量%以下とすることで塩化ビニリデン系樹脂の溶融粘度が低く維持されて、溶融押出がより容易になる。より好ましくは、塩化ビニリデンモノマー/塩化ビニルモノマーの重量比が80/20以上95/5以下である。また、例えば、エチレン誘導体モノマーがメチルアクリレートの場合には、塩化ビニリデンモノマー/メチルアクリレートモノマーの重量比は、80/20〜99/1の範囲とするのが好ましい。
塩化ビニリデン系樹脂を得るには、まず、上記のモノマー類を、攪拌翼を備えた反応槽に投入して、これを一定の重合条件下、攪拌しながら重合する。重合は、上記の条件を満たすようにし、その他は常法に従って行えばよい。これにより、5万〜8万の重量平均分子量を有し、かつ一定量の低分子量成分を含有する塩化ビニリデン系樹脂が得られる。
塩化ビニリデン系樹脂組成物は、上記の塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする他に、必要により可塑剤や熱安定剤などの他の成分を混合することで得られる。他の成分としては、本発明の効果を妨げない範囲で、塩化ビニリデン系樹脂以外の他の樹脂や、可塑剤、熱安定剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定化剤、顔料等を挙げることができる。塩化ビニリデン系樹脂組成物における塩化ビニリデン系樹脂の含有量は、人形毛髪とした場合の手触り感の観点から、90重量%以上であることが好ましく、92重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましい。
可塑剤としては、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、クエン酸アセチルトリブチル、セバチン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル等を例示することができ、得られる繊維の手触り感の改善の観点から、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、クエン酸アセチルトリブチルとするのが好ましく、ジイソブチルアジペートまたはジブチルアジペートとするのがさらに好ましい。可塑剤を用いることで溶融押出しの加工性が改良され、繊維の生産性をさらに向上させることができるが、一方で、繊維表面のベタツキが生じ易くなり、人形毛髪とした場合の手触り感が低下する。可塑剤量は、樹脂組成物において5重量%以下とするのが好ましく、より好ましくは2重量%以上5重量%以下である。
熱安定剤としては、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸オクチル、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、パラフィン等を例示することができる。好ましくはエポキシ化安定剤であり、最も好ましいのはエポキシ化アマニ油である。熱安定剤を用いることで塩化ビニリデン系樹脂の熱分解を低減することができるが、一方で、可塑剤と同様に繊維表面のベタツキが生じ易くなり手触り感が低下する。熱安定剤は、樹脂組成物において5重量%以下とするのが好ましく、1重量%以上4重量%以下とするのがより好ましい。
可塑剤と熱安定剤は、共に繊維表面のベタツキ感を増大させて手触り感を低下させるため、可塑剤と熱安定剤の合計含有量は、樹脂組成物において10重量%以下とするのが好ましく、8重量%以下とするのがより好ましい。
本発明の人形毛髪用繊維は、上記の塩化ビニリデン系樹脂組成物を、常法に従って、塩化ビニリデン系樹脂用押出機に供給し、溶融押出しして紡口より紡出した後、冷水槽で冷却し、目的に応じた延伸温度や延伸倍率で延伸してからボビン等に巻き取ることで製造できる。
繊維の断面構造は、用途、目的に応じて均一構造、中空構造、多層構造等のいずれであってもよいし、断面形状は、通常の円形状であってもよいし、三角形、多角形、Y字形、星形、扁平形状等の異形形状であってもよい。人形毛髪とした場合の軽い滑らかな手触り感が得られることから、特に、円形形状の中空構造とするのが好ましい。また、繊維は、これらの様々な構造や形状の単糸を組み合わせたマルチフィラメントであってもよい。マルチフィラメントとして用いる場合、本発明の繊維以外の他の繊維と混繊してもよい。
繊維を中空糸とする場合、繊維の中空率は3〜30%であることが好ましい。ここで中空率とは、繊維の長さ方向に直角となる面の断面形状を顕微鏡で観察した場合に、繊維外径で画される断面積に対して、繊維の中空部分の断面積が占める割合を言う。この中空率が3%以上で、人形毛髪に求められる軽い手触り感とボリューム感とが得られやすくなり、30%以下で人形毛髪に必要とされる強度が確保されて糸割れ等が発生しにくく、人形頭部への植毛時における植毛加工性やブラッシング時の非脱毛性も良好となる。
繊維の平均外径は、0.01〜0.2mmであることが好ましい。ここで平均外径とは、繊維の長さ方向に直角となる面の断面形状を顕微鏡で観察した場合に、繊維断面の外接円の直径を複数の断面に関して求め、それらの数平均により得られる値を言う。平均外径が0.01mm以上で人形毛髪に必要とされる強度が確保され、0.2mm以下で天然毛髪に類似する柔らかい手触り感が得られる。
得られた繊維は、必要によりカール処理等の成形処理が行われる。図2は、繊維にカール処理を行うカーリング装置の一例の概略構成を示した模式図である。紡糸された繊維が巻回された1または2以上のボビン7から繊維が取り出され、パイプ糸道6を経由して束の状態でマシンヘッド5に供給される。マシンヘッド5は、図面に向かって左右方向に延びるマンドレル3を中心として回転しており、ボビン7と反対側からマンドレル3上に繊維を吐出する。繊維はマンドレル3に巻き付いた状態で図面左側に順次移動し、マンドレル3の周囲に設けられた加熱ヒーター4により加熱されて、巻き付いた状態のままで繊維形状が固定される。図面に向かって左側に移動して加熱ヒーター4を通過した繊維は、マンドレル3の端部でマンドレル3から外れ、カールした形状のまま樹脂製袋1に収納される。これでカール処理が完了する。
必要によりカール処理等が行われた繊維は、人形頭部に植毛されて人形毛髪となる。図3は、人形頭部に繊維を植毛する植毛ミシンの一例の概略構成を示した図である。繊維が巻回されたボビン13から、繊維14が引き出されてミシン本体8の懸垂部に設けられた回転パイプ糸道11を経由して人形頭部9の上に導かれる。ミシン針10が、内側から上向きに人形頭部9を貫通して、繊維14を引っ掛けて人形頭部9内に引き込むようにして植毛する。人形頭部9の位置と回転パイプ糸道11の出口とを相対的に移動させることで、人形頭部9の必要部分全体に植毛する。
以下、本発明を実施例や比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の具体的態様に限定されるものではない。なお、各種物性の評価方法は下記の通りである。
《重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)》
ゲルパーミエイションクロマトグラフィにより、常法に従って測定した。測定に使用した液体クロマトグラフィ装置は、型名:LC−10AD(島津製作所製)のものを、カラムは、商品名:ショウデックス、アサヒパックGS−310 7E(昭和電工社製)を2本直列にして用い、キャリアはテトロヒドロフランを、測定温度は40℃とし、ポリスチレン標準試料(ジーエルサイエンス社製)を外部標準として行った。
《分子量が1万以下の成分の割合》
重量平均分子量等を測定する際に得られた液体クロマトグラフィのチャートにおいて、ピークの占める全体面積に対して、分子量が1万以下の部分が占める面積の割合から求めた。
《平均外径、中空率》
10本の中空単糸をエポキシ樹脂で固め、長さ方向に直角の断面を切り出して顕微鏡観察により測定した。測定は、各断面の外周の長径と短径とを計測して単純平均して単糸外径とし、さらに内周の長径と短径とを測定して単糸内径とし、単糸外径と単糸内径とから各単糸の中空部分の割合を計算した。最後に、これらの値の10本の平均値をそれぞれ求めて、平均外径と中空率とした。
《紡糸生産性評価》
溶融紡糸工程において、紡糸開始から紡口交換を行うまでの紡口連続使用時間の長さで紡糸生産性を評価した。紡糸運転開始後、紡口から押し出される複数の単糸のうちの少なくとも1本に糸切れが生じた場合に連続紡糸が中断するが、運転30分の間に3回以上この紡糸中断が生じた場合に、糸切れが多発するようになった段階と判断する。糸切れが多発した場合は、紡糸運転を停止して、押出機内の分解物を洗浄すると共に紡口の交換を行ったのち、紡糸運転を再開する。紡糸運転の開始から停止まで、紡糸が連続的に行えた時間を測定し、紡糸連続運転の5回分の単純平均を紡口連続使用時間とした。この紡口連続使用時間が長いほど紡糸生産性が高いと評価する。紡糸生産性の評価基準は以下の通りである。
◎:紡口連続使用時間が15時間以上
○:紡口連続使用時間が10時間以上15時間未満
△:紡口連続使用時間が6時間以上10時間未満
×:紡口連続使用時間が6時間未満
《ベタツキ性》
長さ約200mmの多数の糸を、合計の糸量が約20gになるように房状に束ねて試料を作成した。この試料を54℃の恒温槽中に3日間保管した後、繊維表面のベタツキの程度を、20人のモニターの手触りにより官能評価した。各モニターにおける評価基準は以下の通りである。
4点:さらっとした手触り感を感じる。
3点:少し粘着性を感じる。
2点:ベタツキ感を感じる。
1点:油のようなベトベトした感触を感じる。
次に、20人のモニターがそれぞれつけた点数を単純平均して評価点数を求め、以下の基準で糸のベタツキ性評価とした。
4.0点以下3.5点以上:◎
3.5点未満3.0点以上:○
3.0点未満2.0点以上:△
2.0点未満1.0点以上:×
《カール加工性》
図2に示したものと同様のカーリング装置を用いて、回転速度4000rpm、加熱槽温度180±5℃の条件で、500d/10f(単糸10本の束)の2本の試料糸をそれぞれの4kg巻本ボビンより取り出し、13mmφのカール品を連続製造した。その際、図2のマンドレル3上において、コイル状糸の走行異常(詰り、糸束の縺れ)の発生回数(回数/ボビン1本当たり)を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:1回未満
○:1回以上3回未満
△:3回以上5回未満
×:3回以上
《植毛加工性》
塩化ビニルシート(厚さ1mm)から成形された直径2.5cmの球形の人形ヘッドに、図3に示したのと同様な人形植毛用ミシン(DOLLY CO.LTD社製、型名:TUNF−28B、植毛速度1000RPM、繊維カット長20cm)を使用し、実施例、比較例で得られた繊維をそれぞれ、人形ヘッドの頭頂部から後頭部(垂直部分)と側頭部(垂直部分)にかけて約7cm2の面積を植毛した。人形ヘッド100個の植毛時に発生した糸切れの回数を「糸切れ発生率(%)」とした。評価基準は以下の通りである。
◎:1%未満
○:1%以上5%未満
△:5%以上10%未満
×:10%以上
《ブラッシング非脱毛性》
塩化ビニルシート(厚さ1mm)から成形された直径2.5cmの球形の人形ヘッドに、図3に示したのと同様な人形植毛用ミシン(DOLLY CO.LTD社製、型名:TUNF−28B、植毛速度1000RPM、繊維カット長20cm)を使用し、実施例、比較例で得られた繊維をそれぞれ、人形ヘッドの頭頂部から後頭部(垂直部分)と側頭部(垂直部分)にかけて約7cm2の面積を植毛した。
さらに地面から垂直に立てた長さ30cmの固定棒の頂部に、植毛した上記の人形ヘッドを固定し、室温23℃、湿度80%RHの条件下で、毛髪を市販の犬猫ペット用スリッカーブラシで真下に20回ブラッシングした後、脱毛した毛髪の重量を測定し、植毛された毛髪の重量に対する脱毛した毛髪の重量比率を求めた。評価基準は以下の通りである。
◎:1重量%未満
○:1重量%以上3重量%未満
△:3重量%以上5重量%未満
×:5重量%以上
[実施例1]
塩化ビニリデン87重量部と、塩化ビニル13重量部と、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.5重量部とからなるモノマー混合物を用意し、これを重合温度65℃でラジカル重合して塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂(A樹脂)を用意した。重合率は93%であった。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は56000であり、分子量1万以下の低分子量成分の割合は7.0%であった。また、分散度(Mw/Mn)は、2.3であった。結果を表1に示した。この樹脂に、可塑剤としてジイソブチルアジペート1重量%、クエン酸アセチルトリブチル3重量%、及び熱安定剤としてエポキシ化アマニ油2重量%を混合して、樹脂組成物を得た。
次に、この樹脂組成物を、スクリュー径50mmφサイズの単軸押出機(押出量25kg/hr)に投入し、押出温度180℃で中空用紡口より溶融紡出し、冷水槽で急冷した後、速度差ローラーで4倍延伸して断面中空円形の外直径70μmの単糸10本よりなるマルチフィラメント(500d/10f)の繊維を得た。単糸の中空率は15%であった。当該繊維について紡糸生産性、ベタツキ性、カール加工性、植毛加工性、ブラッシング非脱毛性を評価した。結果を表1に示す。得られた繊維は紡糸生産性が高く、又、ドールヘアとして、植毛加工性、カール加工性も良好で、サラサラとした手触り感を有しており、優れた性能を兼備していることが確かめられた。
[実施例2]
重合開始剤の使用量を0.4重量部と少なめに設定した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂(B樹脂)を得た。この樹脂の重合平均分子量は68000であり、分子量1万以下の低分子量成分の割合は5.6%であった。また、分散度は2.4であった。結果を表1に示した。この樹脂を用いて、実施例1と同様にして繊維を得て、その性能を評価した。なお、得られた単糸の中空率と外直径は実施例1と同じであった。評価結果を表1に示す。いずれの評価項目に関しても良好な結果が得られた。
[実施例3]
重合開始剤の使用量を0.3重量部と少なめに設定した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂(C樹脂)を得た。この樹脂の重合平均分子量は79000であり、分子量1万以下の低分子量成分の割合は4.2%であった。また、分散度は2.6であった。結果を表1に示す。この樹脂を用いて、実施例1と同様にして繊維を得て、その性能を評価した。なお、得られた単糸の中空率と外直径は実施例1と同じであった。評価結果を表1に示す。
[比較例1〜3]
重合開始剤量と重合温度、重合率とをそれぞれ調整することにより、塩化ビニリデン87重量%と塩化ビニル13重量%とからなる塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂で、重量平均分子量が86000で分子量1万以下の低分子量成分の割合が6.2%の樹脂(D樹脂、比較例1)、重量平均分子量が95000で分子量1万以下の低分子量成分の割合が2.0%の樹脂(E樹脂、比較例2)、重量平均分子量が75000で分子量1万以下の低分子量成分の割合が2.5%の樹脂(F樹脂、比較例3)をそれぞれ用意し、これらの各々に実施例1と同様の可塑剤・安定剤を混合した樹脂組成物を3種類作製した。これらの各々を用いて実施例1と同様の方法にて紡糸し、マルチフィラメント繊維を3種類得た。これらの各々を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。いずれも、紡糸時の糸切れが発生しやすく、短い時間で紡口交換が必要となる生産性の低いものであった。
[比較例4〜6]
比較例1〜3で使用したD〜F樹脂の各々に、増量した可塑剤(ジイソブチルアジペート2重量%、クエン酸アセチルトリブチル5重量%)及び増量した熱安定剤(エポキシ化アマニ油3重量%)を混合した以外は、比較例1〜3と同様にして3種類の樹脂組成物を作成した。これらの各々を用いて実施例1と同様の方法にて紡糸し、3種類のマルチフィラメント繊維を得た。これらの繊維の各々について実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。得られた繊維は生産性が比較例1〜3よりも改良されているものの、カール加工時に糸が詰まるトラブルが多く、また、ベタベタとして手触り感が悪いため、人形毛髪としては、不満足なものであった。
[比較例7〜9]
重合開始剤量、重合温度、重合率とをそれぞれ調整することにより、塩化ビニリデン87重量%、塩化ビニル13重量%からなる塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂で、重量平均分子量が47000で分子量1万以下の低分子量成分の割合が8.2%の樹脂(G樹脂、比較例7)、重量平均分子量が40000で分子量1万以下の低分子量成分の割合が12.5%の樹脂(H樹脂、比較例8)、重量平均分子量が52000で分子量1万以下の低分子量成分の割合が11.0%の樹脂(I樹脂、比較例9)をそれぞれ用意し、実施例1と同様の可塑剤・安定剤を混合して3種類の樹脂組成物を作成した。これらの各々を用いて実施例1と同様の方法にて紡糸し、3種類のマルチフィラメント繊維を得た。これらの繊維の各々について実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。得られた繊維は、植毛時に糸切れが多く、また、ブラッシング時の脱毛が多く、人形毛髪としては、実用上問題のあるものであった。
Figure 2007321250
Figure 2007321250
塩化ビニリデン系樹脂の典型的な分子量分布の例を示した概念図である。 カーリング装置の概略構成を示した模式図である。 植毛ミシンの概略構成を示した模式図である。
符号の説明
1 樹脂製袋
2 カール処理された繊維
3 マンドレル
4 加熱ヒーター
5 マシンヘッド
6 パイプ糸道
7 ボビン
8 植毛ミシン本体
9 人形頭部
10 ミシン針
11 回転パイプ糸道
12 人形毛髪
13 ボビン
14 繊維

Claims (4)

  1. 塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする組成物からなる人形毛髪用繊維であって、前記塩化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量が5万〜8万であり、かつ、分子量が1万以下の低分子量成分を3%以上10%以下含有するものであることを特徴とする人形毛髪用繊維。
  2. 前記組成物は、前記塩化ビニリデン系樹脂を90重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の人形毛髪用繊維。
  3. 前記塩化ビニリデン系樹脂は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.0以上5.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の人形毛髪用繊維。
  4. 中空率が3〜30%の中空糸であり、かつ、平均外径が0.01〜0.2mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の人形毛髪用繊維。
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