JP2007320530A - 歩行者衝突緩和装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】衝突時に歩行者の下半身部(特に脚部)を適切に支持することで、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和すること。
【解決手段】車両前方の障害物に対する車両の衝突を予知する衝突不可避判定部502、802と、車両前部のバンパ60、60”、160よりも車両上方に配置され、エネルギ吸収機能を持つグリル70、70”、170と、車両前部のバンパよりも車両下方に配置され、エネルギ吸収機能を持つロアバンパ80、80”、180と、前記グリルを車両前方に突出させるグリル駆動手段(272、274、243、244等)と、前記ロアバンパを車両前方に突出させるロアバンパ駆動手段(272、274、243、244等)と、前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル及びロアバンパをバンパ前面よりも車両後方に位置する通常位置から車両前方に向けて突出させるよう前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段を制御する制御ECU600、700と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、衝突時にグリル及びロアバンパにより歩行者の保護を図る歩行者衝突緩和装置に関する。
従来から、弾性体により突出付勢されたバンパー本体と、弾性体の付勢力に抗してバンパー本体を引込み状態に保持するロック機構と、車両と障害物との距離を検出する距離検出手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記距離検出手段および走行状態検出手段からの検出出力に基づいて障害物に対する衝突の可能性を演算し、演算結果に応じて衝突予測信号を出力する衝突予測手段と、衝突予測手段からの衝突予測信号の出力に応じて前記ロック機構によるバンパー本体の保持状態を解除してバンパー本体を突出させると共に、衝突予測信号の消滅に応じてバンパー本体の保持状態を解除する前の状態に復帰するロック解除機構を備えていることを特徴とする車両用可動バンパー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、衝突体を判別する衝突体判別手段と、前記衝突体判別手段の判別結果に基づいてそれそれの作動と不作動が選択される複数のクチュエータと、前記複数のアクチュエータによってそれぞれ車体前方へ移動する剛性の異なる複数のエネルギ吸収部材と、前記複数のエネルギ吸収部材に車体後方から支持された保護装置とを有し、前記複数のエネルギ吸収部材が重なり合った複数の筒部材であることを特徴とする車体前部の保護装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
その他、同様にバンパガードを前方に突出させて歩行者の保護を図る歩行者衝突緩和装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平11−291845号公報 特開2004−314733号公報 特開2000−142279号公報
しかしながら、上述の従来技術では、何れも車体の前部の一部のみが突出する構成であるため、衝突時に歩行者の下半身部(特に脚部)が一部位により支持されることなり、歩行者の下半身部への入力が局部的に大きくなってしまう虞がある。
そこで、本発明は、衝突時に歩行者の下半身部(特に脚部)を適切に支持することで、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる歩行者衝突緩和装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明に係る歩行者衝突緩和装置は、車両前方の障害物に対する車両の衝突を予知する衝突予知手段と、
車両前部のバンパよりも車両上方に配置され、エネルギ吸収機能を持つグリルと、
車両前部のバンパよりも車両下方に配置され、エネルギ吸収機能を持つロアバンパと、
前記グリルを車両前方に突出させるグリル駆動手段と、
前記ロアバンパを車両前方に突出させるロアバンパ駆動手段と、
前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル及びロアバンパをバンパ前面よりも車両後方に位置する通常位置から車両前方に向けて突出させるよう前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。これにより、衝突時に歩行者の下半身部(特に脚部、以下同じ。)をグリル及びロアバンパにより上下方向の広い間隔にて支持することができ、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。
第2の発明は、第1の発明に係る歩行者衝突緩和装置において、前記グリル及びロアバンパは、前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段により、前記グリル前面及びロアバンパ前面がバンパ前面よりも車両前方に位置するように突出され、衝突初期にグリル前面とロアバンパ前面との2部位にて歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする。これにより、衝突時に歩行者の下半身部をグリル及びロアバンパの2部位にて支持することができ、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。
第3の発明は、第1の発明に係る歩行者衝突緩和装置において、前記グリル及びロアバンパは、衝突初期の衝突エネルギ吸収に伴い車両後方へ変位して、前記グリル前面及びロアバンパ前面並びにバンパ前面の3部位にて歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする。これにより、衝突初期では歩行者の下半身部をグリル及びロアバンパの2部位にて支持することができ、その後、歩行者の下半身部をグリル及びロアバンパ並びにバンパ前面の3部位にて支持することができる。この結果、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。
第4の発明は、第1の発明に係る歩行者衝突緩和装置において、前記グリル及びロアバンパは、前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段により、前記グリル前面及びロアバンパ前面がバンパ前面と略同一の面内に位置するように突出され、衝突初期に前記グリル前面及びロアバンパ前面並びにバンパ前面の3部位にて歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする。これにより、歩行者の下半身部をグリル及びロアバンパ並びにバンパ前面の3部位にて支持することができ、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。
第5の発明は、第3又は4の発明に係る歩行者衝突緩和装置において、前記グリル前面及びロアバンパ前面並びにバンパ前面の3部位は、前記ロアバンパ前面が前記バンパ前面よりも車両前方に位置し且つ前記グリル前面が前記バンパ前面よりも車両後方に位置する状態で、歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする。これにより、歩行者との衝突時に、歩行者を車両下に巻き込むことを確実に防止することが可能となる。即ち、衝突後に歩行者をフード上に跳ね上げてフードにて保護することが可能となる。
第6の発明は、第3又は5の発明に係る歩行者衝突緩和装置において、前記グリル及びロアバンパによるエネルギ吸収特性は、衝突前半のエネルギ吸収荷重が低く、衝突後半のエネルギ吸収荷重が高くなるように構成されていることを特徴とする。これにより、歩行者が子供であっても大人であっても適切な保護性能を実現することができる。
第7の発明は、第1〜6の何れかの発明に係る歩行者衝突緩和装置において、歩行者の体格を検出する歩行者検知センサを更に備え、
前記制御手段は、前記歩行者検知センサの検出結果に基づいて、前記グリル及びロアバンパの突出態様を変化させて、歩行者の体格に応じて前記グリル及びロアバンパによるエネルギ吸収特性を変化させることを特徴とする。これにより、歩行者の体格(身長等)に応じて適切に歩行者の下半身部への衝撃を緩和することができる。
本発明によれば、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる歩行者衝突緩和装置が得られる。
以下、図面を参照して、幾つかの実施例に分けて、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本発明の実施例1による歩行者衝突緩和装置を示す車両左側面の側面図であり、図1(A)は、グリル70及びロアバンパ80が通常位置にある通常状態を示し、図1(B)は、グリル70及びロアバンパ80が突出位置にある突出状態を示す。尚、図1(A)及び図1(B)においては、車両のバンパ60の内部の主要構成が模式的に示されている。
グリル70は、車両の幅方向に沿って延在する長尺な部材であり、その後方に配置されるラジエータ71に空気を導くための開口を有する。グリル70は、一般的なグリルと同様、バンパ60の上方に配置される。グリル70自体の構成は、一般的なものであってよい。ロアバンパ80は、車両の幅方向に沿って延在する長尺な部材であり、例えば樹脂や発泡材料により形成される。ロアバンパ80は、バンパ60の下方に配置される。即ち、グリル70及びロアバンパ80は、バンパ60を挟んで上下方向にそれぞれ設けられる。
グリル70及びロアバンパ80は、バンパ60の前面よりも車両後方に位置する通常位置(図1(A)参照)から、突出位置(図1(B)参照)に向けて突出可能に支持される。
図2は、グリル70及びロアバンパ80の突出移動を実現する支持機構100A、100Bの一実施例を概略的に示す図であり、図2(A)は、グリル70及びロアバンパ80を通常位置に保持する通常状態を示し、図2(B)は、グリル70及びロアバンパ80を突出位置に保持する突出状態を示す。尚、グリル70及びロアバンパ80に対する支持機構100A、100Bは、ストローク(突出量)等の非本質的な部分には相違を有するものの、本質的に同様であってよいので、以下では、特に言及しない限り、グリル70及びロアバンパ80に対する支持機構100A、100Bを区別せずに、参照符号100を付して説明する。尚、グリル70及びロアバンパ80に対する支持機構100は、グリル70及びロアバンパ80の長手方向(車両幅方向)の左右両側にそれぞれ設定されてもよいし、或いは、グリル70及びロアバンパ80の長手方向の中央付近に1つだけ設定されてもよい。
支持機構100は、図2(A)及び図2(B)に示すように、2重筒構造となっており、閉断面の筒状部材である支持部材102と、閉断面の筒状部材であるクラッシュボックス104とを含む。クラッシュボックス104は、衝突エネルギを吸収するのに適した構造を有し、例えば、図2(B)に示すように、軸方向の変形(局所的な座屈を伴う変形)を促進する弱部105が形成された構造であってよい。この場合、クラッシュボックス104が軸方向に潰れる過程で効率的なエネルギ吸収が実現される。
クラッシュボックス104の前端には、図1(A)及び図1(B)に示すように、グリル70及びロアバンパ80が固定される。支持部材102の後端側は、車体に対して固定される。例えば、図1(A)及び図1(B)に示すように、ロアバンパ80に係る支持部材102の後端側は、ラジエータサポートロア72にブラケットを介して固定される。尚、支持部材102の後端側の固定相手部材は、車体の強度部材であれば、如何なる部材であってもよい。
クラッシュボックス104は、通常状態では、図2(A)に示すように、支持部材102の内部に格納されている。この状態では、クラッシュボックス104は、図示しない付勢手段(例えばスプリング)により突出方向に付勢されており、支持部材102に設定されるロック機構(図示せず)により格納状態が保持されている。ロック機構は、例えば支持部材102を係止する係止部材を備え、係止部材は例えばソレノイド(図示せず)により駆動される。係止部材がソレノイドにより駆動されると、ロック状態が解除され、図2(B)に示すような突出状態が実現される。尚、ロック機構やソレノイド等の駆動手段は、後の実施例3において詳細に説明されるロック機構及び駆動手段の原理が用いられてよい。
本実施例では、図1(B)に示すように、突出状態では、グリル70及びロアバンパ80は、グリル70の前面及びロアバンパ80の前面がバンパ60の前面と略同一の面内に位置するように突出される。即ち、図1(B)に示すように、側面視で、グリル70及びロアバンパ80並びにバンパ60の最も前方位置にある各ポイントは、略同一直線上に来るように構成される。これにより、後述の如く歩行者との衝突時における衝突初期にグリル70の前面及びロアバンパ80の前面並びにバンパ60の前面の3部位にて歩行者の下半身部が支持されるので、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。例えば、従来的な構成のように、グリル70及びロアバンパ80の何れかを他よりも前方に突出される場合には、当該最も突出した部位の1部位にて歩行者の下半身部が支持されるので、歩行者の下半身部への局部的な入力が大きくなる。これに対して、本実施例によれば、3部位にて歩行者の下半身部が支持されるので、歩行者の下半身部への局部的な入力が緩和され、歩行者保護性能が大幅に向上する。
図3は、歩行者衝突緩和装置の制御系の主要構成を示すシステム構成図である。本実施例の歩行者衝突緩和装置は、プリクラッシュECU(電子制御ユニット)800と、制御ECU700とを中心として構成される。
制御ECU700は、プリクラッシュECU800と同様、マイクロコンピュータによって構成されており、例えば、制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。
制御ECU700は、後述の如くプリクラッシュシステムECU800からの指示に従って、支持機構100(正確にはロック機構をロック/アンロックさせるソレノイド)を制御して、グリル70及びロアバンパ80の状態を通常状態と突出状態の間で切り替える。
プリクラッシュECU800には、図1に示すように、例えば専用のシリアル通信線を介して、衝突対象物検出手段50が接続される。また、プリクラッシュECU800には、CAN(controller area network)などの適切なバスを介して、制御ECU700を含む各種ECUや、加速度センサ30等の各種センサが接続される。
加速度センサ30は、車両のフロアトンネル(図示せず)に取付けられ、当該取付け位置の車両前後方向の減速度を検出するフロアセンサと、車両のフロントサイドメンバの前方に取付けられ、当該取付け位置の減速度を検出する左右フロントセンサとから構成されている。左右フロントセンサは省略されてもよい。
衝突対象物検出手段50は、車両に対して衝突の可能性のある物体を衝突対象物として検出し、当該衝突対象物に関する情報(衝突対象物情報)を生成する。衝突対象物情報は、衝突対象物の位置、速度及び進路を含んでよい。この種の衝突対象物情報は、例えば車両のフロントグリル付近に若しくはフロントバンパ内部に車両前方を監視するように配設されるレーダセンサにより取得可能である。レーダセンサは、検出波を放射し、その放射された検出波のうち、レーダセンサの検出ゾーン内の衝突対象物(典型的には、先行車)によって反射した検出波を受けることにより、衝突対象物の自車からの距離や、衝突対象物の自車に対する相対的な方向や速度を衝突対象物情報として生成する。レーダセンサが放射する検出波としては、光波(例えば、レーザ波)や電波(例えば、ミリ波)、音波(例えば、超音波)であってよい。
衝突対象物情報は、レーダセンサに代えて又はそれに加えて、画像センサに基づいて生成されてもよい。画像センサは、例えばCCD(ステレオ)カメラ(以下、「前方監視カメラ」という)を用いたセンサである。前方監視カメラは、車両前方の風景を撮像するように搭載され、例えば車室内のルームミラー付近に固定される。画像センサは、前方監視カメラが撮像した衝突対象物の画像データに基づいて、例えば三角測量の原理を用いて、衝突対象物の自車からの距離や、衝突対象物の自車に対する相対的な方向や速度を衝突対象物情報として生成する。或いは、衝突対象物情報は、車載通信器を用いた車車間通信又は路車間通信を介して生成されてもよい。
プリクラッシュECU800は、車両の衝突の前段階を検出する衝突不可避判定部802と、衝突対象物が歩行者であるか否かを判断する歩行者判定部804と、突出指示部806と、衝突判定部809と、を含む。
衝突不可避判定部802には、衝突対象物情報や各種センサの出力信号が、適切な周期毎にリアルタイムに入力される。衝突判定部809には、加速度センサ30の出力信号が、適切な周期毎にリアルタイムに入力される。
図4は、図3に示したプリクラッシュECU800により実現される主要処理流れを示すフローチャートである。
ステップ10では、衝突不可避判定部802は、衝突対象物情報に基づいて、車両前方の障害物に対する車両の衝突を予知する。即ち、衝突不可避判定部802は、衝突対象物情報に基づいて、車両前方に検出される衝突対象物に対して車両が衝突不可避である否かを判定する。この衝突不可避判定手法は、プリクラッシュセーフティシステムの分野で各種提案されており、これらの判定ロジックの任意のものが用いられよい。例えば、自車進路上に衝突対象物が存在し、衝突前時間(=相対距離/相対速度)が所定値以下となった場合に、衝突不可避であると判定するものであってよい。また、不可避判定は、必ずしもON/OFF判定である必要はなく、多段階的に評価されてもよい。衝突不可避であると判定された場合には、ステップ11に進み、衝突不可避でないと判定された場合は、今回の処理ルーチンはそのまま終了する。
ステップ11では、歩行者判定部804は、衝突対象物情報に基づいて、衝突不可避と判定された衝突対象物が歩行者であるか否かを判定する。例えば、歩行者判定部804は、レーダセンサにより取得される反射波の強度や、反射波の特徴により衝突対象物が歩行者であるか否かを判定してもよい。或いは、歩行者判定部804は、前方監視カメラにより取得される画像に対して、エッジ処理により特徴点を抽出し、その輪郭線の形状が歩行者の特徴であるか否かを判定してもよい。或いは、歩行者判定部804は、前方監視カメラが赤外線感応CCDを備える場合に、認識対象物の温度特徴に基づいて衝突対象物が歩行者であるか否かを判定してもよい。或いは、これらの判定結果を複合的に考慮してもよい。衝突対象物が歩行者であると判定された場合には、ステップ12に進み、衝突対象物が歩行者でないと判定された場合は、今回の処理ルーチンはそのまま終了する。
ステップ12では、突出指示部806は、制御ECU700に対して、グリル70及びロアバンパ80の突出状態を形成するように指示を出力する。これに応じて、制御ECU700は、支持機構100(正確にはロック機構をロック/アンロックさせるソレノイド)を制御して、グリル70及びロアバンパ80を突出させて、図1(B)に示すグリル70及びロアバンパ80の突出状態を形成する。
ステップ13では、衝突判定部809は、加速度センサ30の出力信号に基づいて、上記の衝突予知時点から所定時間内に実際に衝突が検出されるか否かを判定する。尚、衝突判定部809は、例えば衝突発生時にエアバックを起動するエアバックECU(図示せず)からの情報に基づいて、衝突の有無を判定してもよい。いずれにしても、加速度センサ30の出力値が所定閾値を超えるような衝突が検出された場合には、そのまま終了し、衝突が検出されない場合には、ステップ14に進む。尚、衝突不可避と判断されたにも拘らず、衝突が検出されない場合とは、例えば衝突対象物側での衝突回避動作のような、その後の予期せぬ環境変化により衝突が回避されるような場合等が該当する。
ステップ14では、突出指示部806は、制御ECU700に対して、上記ステップ12により突出させたグリル70及びロアバンパ80を、元に戻すように指示を出力する。これに応じて、制御ECU700は、支持機構100を制御して、グリル70及びロアバンパ80を退避させて、図1(A)に示すグリル70及びロアバンパ80の通常状態を復帰させる。尚、グリル70及びロアバンパ80は、図示しないモータによりワイヤを介して通常状態へと駆動されてよい。
このように、本実施例によれば、歩行者との衝突が予知された場合に、グリル70及びロアバンパ80を突出させるので、その後生じうる歩行者との衝突時の初期段階では、図1(B)に示すように、グリル70の前面及びロアバンパ80の前面並びにバンパ60の前面の3部位にて歩行者の下半身部が支持されるので、歩行者の下半身部への局部的な入力を緩和することができる。尚、歩行者の下半身部とは、歩行者が大人の場合には脚部に相当するが、歩行者が例えば6歳児未満の子供の場合には、脚部ないし腹部に相当しうる。
また、本実施例によれば、図1(B)にて角度α(<90度)により示すように、ロアバンパ80の前面がバンパ60の前面よりも車両前方に位置し且つグリル60の前面がバンパ60の前面よりも車両後方に位置する状態で、歩行者の下半身部を支持するよう構成されているので、バンパ60下方での歩行者の脚部の巻き込みや歩行者の押し倒しを効果的に防止することができる。即ち、本実施例によれば、グリル70の前面及びロアバンパ80の前面並びにバンパ60の前面の3部位にて、歩行者の上半身がフード(ボンネット)方向に倒れやすい傾斜で、歩行者の下半身部を支持するので、歩行者をフードに跳ね上げた後にエネルギ吸収能力の高いフード部で歩行者を効果的に保護することができる。
図5は、上述の実施例1に適用可能な支持機構のその他の構成を概略的に示す斜視図であり、図5(A)は、グリル70及びロアバンパ80を通常位置に保持する通常状態を示し、図5(B)は、グリル70及びロアバンパ80を突出位置に保持する突出状態を示す。尚、グリル70及びロアバンパ80に対する支持機構100A’、100B’は、ストローク(突出量)等の非本質的な部分には相違を有するものの、本質的に同様であってよいので、以下では、特に言及しない限り、グリル70及びロアバンパ80に対する支持機構100A’、100B’を区別せずに、参照符号100’を付して説明する。但し、以下で説明するように、支持機構100’は、特に歩行者が子供の場合に肋骨部が当たりうる高さにあるグリル70に対する支持機構として好適である。
支持機構100’は、図5(A)及び図5(B)に示すように、3重筒構造となっており、閉断面の筒状部材である支持部材102’と、閉断面の筒状部材である第1クラッシュボックス104’と、第2クラッシュボックス106’とを含む。第1クラッシュボックス104’及び第2クラッシュボックス106’は、衝突エネルギを吸収するのに適した構造を有し、例えば、図5(B)に示すように、軸方向の変形(潰れ)を促進する弱部105’が形成された構造であってよい。この場合、クラッシュボックス104’、106’が軸方向に潰れる過程で効率的なエネルギ吸収が実現される。第2クラッシュボックス106’は、図5(B)に示すように、第1クラッシュボックス104’よりも車両前方へと突出するように構成される。第2クラッシュボックス106’は、第1クラッシュボックス104’よりもエネルギ吸収荷重が小さくなるように設定される。かかる支持機構100’によれば、エネルギ吸収特性は、衝突前半のエネルギ吸収荷重が低く、衝突後半のエネルギ吸収荷重が高くなる。これにより、歩行者が大人である場合であっても子供である場合でもそれぞれに対して適切な保護を実現することができる。即ち、衝突前半の低いエネルギ吸収荷重により、子供に対して適切な保護性能を発揮することができ、また、衝突後半の高いエネルギ吸収荷重により、大人に対して適切な保護性能を発揮することができる。
実施例2は、上述の実施例1に対して、ロアバンパ及びグリルの突出量が異なる点が主に異なる。以下では、実施例2に特有な構成を重点的に説明し、実施例1と同様の構成について同様の参照符号を付して説明を適宜省略する。
図6は、本発明の実施例2による歩行者衝突緩和装置を示す車両左側面の側面図であり、図6(A)は、グリル70”及びロアバンパ80”が通常位置にある通常状態を示し、図6(B)は、グリル70”及びロアバンパ80”が突出位置にある突出状態を示す。尚、図6(A)及び図6(B)においては、車両のバンパ60”の内部の主要構成が模式的に示されている。
本実施例では、図6(B)に示すように、突出状態では、グリル70”及びロアバンパ80”は、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面がバンパ60”の前面よりも車両前方に位置するように突出される。これにより、衝突時に、上述の実施例1の構成に比べて早期から、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面により歩行者の衝撃を吸収することができる。また、実施例1のように3部位ではないが、依然として2部位(上下方向の間隔が大きい2部位)にて歩行者の下半身部が支持されるので、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。
図7は、歩行者との衝突が発生した過程におけるグリル70”及びロアバンパ80”の突出状態を示す図である。
本実施例では、図7に示すように、グリル70”及びロアバンパ80”は、衝突初期の衝突エネルギの吸収に伴い車両後方へ変位して、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面が車両後方へと後退される。グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面が車両後方へと後退すると、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面がバンパ60”の前面と略同一の面内に至り、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面並びにバンパ60”の前面の3部位にて歩行者の下半身部が支持されることになる。即ち、グリル70”及びロアバンパ80”は、クラッシュボックス104”の変形に伴い、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面がバンパ60”の前面と略同一の面内になるように後退する。これにより、上述の実施例1と同様、クラッシュボックス104”の変形後又は変形途中に、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面並びにバンパ60”の前面の3部位にて歩行者の下半身部が支持されるので、歩行者の下半身部への局部的な入力を効果的に緩和することができる。
尚、本実施例において、グリル70”及びロアバンパ80”に係るそれぞれのクラッシュボックス104”の長さを調整し、クラッシュボックス104”が潰れきった段階で、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面がバンパ60”の前面と略同一の面内に至るようにしてよい。また、この際、実施例1の場合と同様に、当該面を側面視で上方側が後になるように傾斜させることで(図7の角度α参照)、バンパ60”下方での歩行者の脚部の巻き込みや歩行者の押し倒しを効果的に防止することができる。
また、本実施例においても、実施例1の場合と同様、図5に示したような支持機構100A’、100B’を用いてもよい。この場合も同様、第1クラッシュボックス104’、又は第1クラッシュボックス104’及び第2クラッシュボックス106’が潰れきった段階で、グリル70”の前面及びロアバンパ80”の前面がバンパ60”の前面と略同一の面内に至るようにしてよい。
実施例3は、衝突対象である歩行者の体格(身長ないし体重)応じて、グリル及びロアバンパ(クラッシュボックス)のエネルギ吸収特性を可変制御する点が、上述の実施例1及び実施例2に対して主に異なる。以下では、実施例3に特有な構成を重点的に説明し、実施例1と同様の構成については説明を適宜省略する。
図8は、本発明の実施例3による歩行者衝突緩和装置を示す車両左側面の側面図であり、図8(A)は、グリル170及びロアバンパ180が通常位置にある通常状態を示し、図8(B)は、グリル170及びロアバンパ180が突出位置にある突出状態を示す。尚、図8(A)及び図8(B)においては、車両のバンパ160の内部の主要構成が模式的に示されている。尚、図示の例では、グリル170及びロアバンパ180が突出量は、上述の実施例2と同じとしているが、上述の実施例1と同じとしてもよい。
図9は、グリル170及びロアバンパ180の突出移動を実現する支持機構200A、200Bの一実施例を概略的に示す斜視図である。図10は、図9の矢視Fを示す図である。尚、グリル170及びロアバンパ180に対する支持機構200A、200Bは、ストローク(突出量)等の非本質的な部分には相違を有するものの、本質的に同様であってよいので、以下では、特に言及しない限り、グリル170及びロアバンパ180に対する支持機構200A、200Bを区別せずに、参照符号200を付して説明する。尚、グリル170及びロアバンパ180に対する支持機構200は、グリル170及びロアバンパ180の左右両側にそれぞれ設定されてもよいし、グリル170及びロアバンパ180の中央付近に設定されてもよい。
支持機構200は、図9に示すように、3重筒構造となっており、閉断面の筒状部材である支持部材220と、閉断面の筒状部材である第1クラッシュボックス240と、同じく閉断面の筒状部材である第2クラッシュボックス260とを含む。第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260は、衝突エネルギを吸収するのに適した構造を有し、例えば、上述したような軸方向の変形(座屈)を促進する弱部(図示せず)が形成された構造であってよい。第1クラッシュボックス240は、第2クラッシュボックス260よりもエネルギ吸収荷重が大きくなるように構成される。
支持部材220の側面には、第1クラッシュボックス240に対するロック機構223、224、225、226が設けられる。ロック機構225、226については、支持部材220の反対側の側面に設けられており、図9中では見えない。
第1クラッシュボックス240の側面には、同様に、第2クラッシュボックス260に対するロック機構243、244、245、246が設けられる。ロック機構245、246については、第1クラッシュボックス240の反対側の側面に設けられており、図9中では見えない。ロック機構243、244及びロック機構245、246は、互いに対向した第1クラッシュボックス240の側面に配置され、ロック機構223、224及びロック機構225、226とは異なる側面側に設定される。尚、ロック機構243、244及びロック機構245、246が設定される側の支持部材220の側面には、ロック機構243、244及びロック機構245、246のための切り欠き222a、222bが形成されている。
本実施例による支持機構200は、エネルギ吸収特性が3段階で変更可能に構成されている。以下、図11〜図14を参照して、これについて説明する。
図11は、通常状態(格納状態)の支持機構200の断面図であり、図11(A)は、図10のA−A断面に相当し、図11(B)は、図10のB−B断面に相当する。通常状態では、第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260は、支持部材220内に収容されており、第2クラッシュボックス260は、図11(A)に示すように、ロック機構246の係止部材246aにより第1クラッシュボックス240に対して係止され、第1クラッシュボックス240は、図11(B)に示すように、ロック機構226の係止部材226aにより支持部材220に対して係止されている。尚、各係止部材246a、226a(以下の係止部材243a、244a、245a、223a、224a、225aも同様)は、ソレノイドにより電磁的に作動される磁性体のプランジャであってよい。
即ち、通常状態では、ロック機構226及びロック機構246のソレノイドのみが非通電とされている。尚、他のロック機構243、244、245、223、224、225のソレノイドは、図11に示すように、通常状態で通電されていてもよいが、消費電力の無駄を無くすため、非通電とされていてもよい。但し、以下では、通常状態で通電されているものとして説明を続ける。
第2クラッシュボックス260は、図11(A)に示すように、スプリング272により突出方向(車両前方)に付勢されており、第1クラッシュボックス240は、図11(B)に示すように、スプリング274により突出方向(車両前方)に付勢されている。第1クラッシュボックス240の底部には、ワイヤ278が係止され、ワイヤ278は、支持部材220の外部の巻き取りモータ(図示せず)に接続されている。同様に、第2クラッシュボックス260の底部には、ワイヤ276が係止され、ワイヤ276は、支持部材220の外部の巻き取りモータ(図示せず)に接続されている。巻き取りモータ及びワイヤ278、276は、後述の如く、突出された第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260を、元の通常状態に戻す役割を果たす。
図12は、第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の双方が一体的に突出した状態を示し、当該状態における図10のB−B断面に相当する。この状態は、以下の手順で形成される。先ず、図11に示した通常状態から、ロック機構226のソレノイドに通電し、ロック機構226の係止部材226aによる係止を解除する。これにより、第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の双方が一体となってスプリング274の付勢力により突出状態となる。次いで、ロック機構223のソレノイドに対する通電を解除し、第1クラッシュボックス240の後端部を係止部材223aにより係止する。尚、通常状態で全てのソレノイドを非通電としている場合には、ロック機構226のソレノイドに通電する前に、他のロック機構225、223、224のソレノイドに通電し、ロック機構225、223、224の係止部材225a、223a、224aにより第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の突出が阻害されないようにする。
図12に示す突出状態では、第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の双方が衝突初期の衝撃を吸収することになるので、衝突初期に比較的大きなエネルギ吸収荷重が発生することになる。従って、図12に示す状態は、歩行者が比較的体格が大きい大人である場合に対して好適なエネルギ吸収特性を有する。
図13は、第2クラッシュボックス260のみが突出した状態を示し、当該状態における図10のA−A断面に相当する。この状態は、以下の手順で形成される。先ず、図11に示した通常状態から、ロック機構246のソレノイドに通電し、ロック機構246の係止部材246aによる係止を解除する。これにより、第2クラッシュボックス260がスプリング272の付勢力により突出状態となる。次いで、ロック機構243のソレノイドに対する通電を解除し、第2クラッシュボックス260の後端部を係止部材243aにより係止する。
この状態では、第2クラッシュボックス260が衝突初期の衝撃を吸収することになるので、衝突初期に比較的小さいエネルギ吸収荷重が発生することになる。従って、図13に示す状態は、歩行者が比較的体格が小さい子供である場合に好適なエネルギ吸収特性を有する。
図14は、第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の双方がそれぞれ最大突出量の約半分ずつ突出した状態を示し、図14(A)は、当該状態における図10のA−A断面に相当し、図14(B)は、当該状態における図10のB−B断面に相当する。
図14に示す状態は、以下の手順で形成される。先ず、図11に示した通常状態から、ロック機構245及びロック機構225のソレノイドを非通電としてから、ロック機構246及びロック機構226のソレノイドに通電を行う。これにより、第2クラッシュボックス260がスプリング272の付勢力により突出するが、図14(A)に示すように、ロック機構245の係止部材245aにより係止され、その突出量が規制される。同様に、第1クラッシュボックス240がスプリング274の付勢力により突出するが、図14(B)に示すように、ロック機構225の係止部材225aにより係止され、その突出量が規制される。次いで、同様に、ロック機構244、224のソレノイドに対する通電を解除し、第2クラッシュボックス260及び第1クラッシュボックス240の後端部を係止部材244a、224aによりそれぞれ係止する。
この状態では、第2クラッシュボックス260が衝突初期の前半の衝撃を吸収し、第1クラッシュボックス240が衝突初期の後半の衝撃を吸収することになるので、大人及び子供の双方に対して適切なエネルギ吸収荷重が発生することになる。即ち、図12に示した状態によるエネルギ吸収特性は、衝突初期の前半からエネルギ吸収荷重が適度に高く、大人に対しては好適であるが、子供に対しては不適であり、同様に、図13に示した状態によるエネルギ吸収特性は、子供に対しては好適であるが、衝突初期の前半でエネルギ吸収荷重が低く、大人に対しては不適である。これに対して、図14に示す突出状態では、衝突初期の前半でエネルギ吸収荷重が低いので、子供に対して過度に大きなエネルギ吸収荷重を作用させることを防止でき、また、衝突初期の前半でエネルギ吸収荷重が適度に高いので、大人に対しても適切な保護性能を実現することができる。
図15は、実施例3による歩行者衝突緩和装置の制御系の主要構成を示すシステム構成図である。本実施例の歩行者衝突緩和装置は、プリクラッシュECU(電子制御ユニット)500と、制御ECU600とを中心として構成される。
プリクラッシュECU500には、上述の実施例1と同様、衝突対象物検出手段50や加速度センサ30等の各種センサが接続される。プリクラッシュECU500は、車両の衝突の前段階を検出する衝突不可避判定部502と、衝突対象物が歩行者であるか否かを判断する歩行者判定部504と、突出指示部506と、衝突判定部509と、を含む。
図16は、図15に示したプリクラッシュECU500により実現される主要処理流れを示すフローチャートである。
ステップ20では、衝突不可避判定部502は、衝突対象物情報に基づいて、車両前方の障害物に対する車両の衝突を予知する。即ち、衝突不可避判定部502は、衝突対象物情報に基づいて、車両前方に検出される衝突対象物に対して車両が衝突不可避である否かを判定する。衝突不可避であると判定された場合には、ステップ21に進み、衝突不可避でないと判定された場合は、今回の処理ルーチンはそのまま終了する。
ステップ21では、歩行者判定部504は、衝突対象物情報に基づいて、衝突不可避と判定された衝突対象物が歩行者であるか否かを判定する。衝突対象物が歩行者であると判定された場合には、ステップ22に進み、衝突対象物が歩行者でないと判定された場合は、今回の処理ルーチンはそのまま終了する。
ステップ22では、歩行者判定部504は、衝突対象物情報に基づいて、歩行者の体格を検出する。例えば、歩行者の体格は、前方監視カメラにより取得される画像に対して、エッジ処理により特徴点を抽出し、その輪郭線の形状・サイズの特徴に基づいて検出されてよい。体格としては、簡易的に、歩行者の身長を目安にして評価されてよい。歩行者の体格が検出された場合には、ステップ23に進み、例えば歩行者の体格が検出できない場合、又は、歩行者の体格の検出結果の信頼性が低い場合には、ステップ26に進む。
ステップ23では、突出指示部506は、歩行者の体格が所定の基準値より小さいか否かを判定する。所定の基準値は、例えば6歳児程度の子供の平均的な体格に対応し、肋骨付近がグリル170に当たるような体格に対応させてもよい。この場合、歩行者の体格が所定の基準値より小さい場合とは、肋骨付近がグリル170に当たる可能性がある子供である場合に対応し、歩行者の体格が所定の基準値より大きい場合とは、脚部がグリル170に当たる大人の場合に対応する。歩行者の体格が所定の基準値より小さい場合には、ステップ24に進み、歩行者の体格が所定の基準値より大きい場合には、ステップ25に進む。
ステップ24では、突出指示部506は、制御ECU600に対して、グリル170のエネルギ吸収荷重がb1[N]及びロアバンパ180のエネルギ吸収荷重がb2[N]となるように指示を出力する。これに応じて、制御ECU600は、支持機構200の突出態様を適切に選択して、グリル170及びロアバンパ180を突出させる。ここで、本ステップ24における目標のエネルギ吸収荷重b1、b2は、身長が低く肋骨の高さがグリル170付近となる子供に対して適合された値が用いられてよい。このエネルギ吸収荷重b1、b2は、予め試験等により導出しておいた適性値が用いられてよく、図13に示したような支持機構200の突出状態(第2クラッシュボックス260の構成)を、このようなエネルギ吸収荷重b1、b2に適合させておく。この場合、制御ECU600は、ロック機構243、244、245、246、223、224、225、226のソレノイドを適切に制御して、図13に示したような支持機構200の突出態様によりグリル170及びロアバンパ180を突出させる。
これにより、以後生じうる子供との衝突時においても、グリル170の前面及びロアバンパ180の前面の2部位により子供の下半身部を支持し、その際に、子供の体格や骨の強さに応じた適切なエネルギ吸収特性を実現することができる。また、第2クラッシュボックス260の変形後は、上述の如く3部位にて子供の下半身部が支持されるので、子供の下半身部への局部的な入力が効果的に緩和される。
ステップ25では、突出指示部506は、制御ECU600に対して、グリル170のエネルギ吸収荷重がc1[N]及びロアバンパ180のエネルギ吸収荷重がc2[N]となるように指示を出力する。これに応じて、制御ECU600は、支持機構200の突出態様を適切に選択して、グリル170及びロアバンパ180を突出させる。ここで、本ステップ25における目標のエネルギ吸収荷重c1、c2は、上記のステップ24における目標のエネルギ吸収荷重b1、b2よりもそれぞれ大きな値であり、脚部がグリル170付近となる大人に対して適合された値が用いられてよい。このエネルギ吸収荷重c1、c2は、予め試験等により導出しておいた適性値が用いられてよく、図12に示したような支持機構200の突出状態(第2クラッシュボックス260及び第1クラッシュボックス240の構成)を、このようなエネルギ吸収荷重c1、c2に適合させておく。この場合、制御ECU600は、ロック機構243、244、245、246、223、224、225、226のソレノイドを適切に制御して、図12に示したような支持機構200の突出態様によりグリル170及びロアバンパ180を突出させる。
これにより、以後生じうる大人との衝突時においても、グリル170の前面及びロアバンパ180の前面の2部位により大人の下半身部(この場合、脚部)を支持し、その際に、大人の体格や骨の強さに応じた適切なエネルギ吸収特性を実現することができる。また、第2クラッシュボックス260及び第1クラッシュボックス240の変形後は、上述の如く3部位にて大人の脚部が支持されるので、大人の脚部への局部的な入力が効果的に緩和される。
ステップ26では、突出指示部506は、制御ECU600に対して、グリル170のエネルギ吸収荷重がd1[N]及びロアバンパ180のエネルギ吸収荷重がd2[N]となるように指示を出力する。これに応じて、制御ECU600は、支持機構200の突出態様を適切に選択して、グリル170及びロアバンパ180を突出させる。ここで、本ステップ25における目標のエネルギ吸収荷重d1、d2は、上記のステップ24における目標のエネルギ吸収荷重b1、b2よりもそれぞれ大きな値であるが、上記のステップ25における目標のエネルギ吸収荷重c1、c2よりもそれぞれ小さい値である。この場合、制御ECU600は、ロック機構243、244、245、246、223、224、225、226のソレノイドを適切に制御して、図14に示したような支持機構200の突出態様によりグリル170及びロアバンパ180を突出させてよい。この場合、衝突対象物が子供であっても大人であっても適切な保護性能を発揮させることができる。
ステップ27では、衝突判定部509は、加速度センサ30の出力信号に基づいて、上記の衝突予知時点から所定時間内に実際に衝突が検出されるか否かを判定する。加速度センサ30の出力値が所定閾値を超えるような衝突が検出された場合には、そのまま終了し、衝突が検出されない場合には、ステップ28に進む。
ステップ28では、突出指示部506は、制御ECU600に対して、上記ステップ24、25又は26により突出させたグリル170及びロアバンパ180を、元に戻すように指示を出力する。これに応じて、制御ECU600は、支持機構200の巻き取りモータ(図示せず)によりワイヤ276、278(図11等参照)を巻き取り、グリル170及びロアバンパ180を退避させて、図8(A)に示すグリル170及びロアバンパ180の通常状態を復帰させる。
このように、本実施例によれば、歩行者の体格に応じてグリル170及びロアバンパ180のエネルギ吸収特性を変化させることで、歩行者の体格に応じた適切な保護態様を実現することができる。
尚、本実施例では、図14に示した突出態様は、上述の如く、歩行者の体格が不定の場合等に用いられているが、例えば歩行者の体格を3段階で評価し、中くらいの体格の歩行者が検出された場合に、図14に示した突出態様を実現することとしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、グリル70、170及びロアバンパ80、180の駆動手段は、ロック機構243、244等やスプリング272、274の付勢力により実現されているが、モータ等のアクチュエータによりグリル70、170及びロアバンパ80、180の支持機構100、200を駆動させてもよいし、また、スプリング272、274の付勢力に代えて油圧等の流体圧が用いられてもよい。
また、上述の実施例では、プリクラッシュECU800、500と制御ECU600、700が設けられているが、制御ECU600、700の機能の一部又は全部をプリクラッシュECU800、500に組み込んでもよいし、逆に、プリクラッシュECU800、500の機能の一部又は全部制御ECU600、700に組み込んでもよい。
本発明の実施例1による歩行者衝突緩和装置を示す車両左側面の側面図である。 グリル70及びロアバンパ80の突出移動を実現する支持機構100A、100Bの一実施例を概略的に示す斜視図である。 歩行者衝突緩和装置の制御系の主要構成を示すシステム構成図である。 プリクラッシュECU800により実現される主要処理流れを示すフローチャートである。 実施例1に適用可能なその他の支持機構100A’、100B’を概略的に示す斜視図である。 本発明の実施例2による歩行者衝突緩和装置を示す車両左側面の側面図である。 歩行者との衝突が発生した過程におけるグリル70”及びロアバンパ80”の突出状態を示す図である。 本発明の実施例3による歩行者衝突緩和装置を示す車両左側面の側面図である。 グリル170及びロアバンパ180の突出移動を実現する支持機構200の一実施例を概略的に示す斜視図である。 図9の矢視Fを示す図である。 通常状態(格納状態)の支持機構200の断面図である。 第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の双方が突出した状態を示す断面図である。 第2クラッシュボックス260のみが突出した状態を示す断面図である。 第1クラッシュボックス240及び第2クラッシュボックス260の双方がそれぞれ最大突出量の約半分ずつ突出した状態を示す断面図である。 実施例3による歩行者衝突緩和装置の制御系の主要構成を示すシステム構成図である。 図15に示したプリクラッシュECU500により実現される主要処理流れを示すフローチャートである。
符号の説明
30 加速度センサ
50 衝突対象物検出手段
60、60”、160 バンパ
70、70”、170 グリル
80、80”、180 ロアバンパ
100、100’、200 支持機構
102、102’、220 支持部材
104、104’、104”、240 クラッシュボックス
105、105’ 弱部
106’、260 第2クラッシュボックス
223、224、225、226 ロック機構
223a、224a、225a、226a 係止部材
243、244、245、246 ロック機構
243a、244a、245a、246a 係止部材
272、274 スプリング
276、278 ワイヤ
600、700 制御ECU
500、800 プリクラッシュECU
502、802 衝突不可避判定部
504、804 歩行者判定部
506、806 突出指示部
509、809 衝突判定部

Claims (7)

  1. 車両前方の障害物に対する車両の衝突を予知する衝突予知手段と、
    車両前部のバンパよりも車両上方に配置され、エネルギ吸収機能を持つグリルと、
    車両前部のバンパよりも車両下方に配置され、エネルギ吸収機能を持つロアバンパと、
    前記グリルを車両前方に突出させるグリル駆動手段と、
    前記ロアバンパを車両前方に突出させるロアバンパ駆動手段と、
    前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル及びロアバンパをバンパ前面よりも車両後方に位置する通常位置から車両前方に向けて突出させるよう前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする歩行者衝突緩和装置。
  2. 前記グリル及びロアバンパは、前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段により、前記グリル前面及びロアバンパ前面がバンパ前面よりも車両前方に位置するように突出され、衝突初期にグリル前面とロアバンパ前面との2部位にて歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の歩行者衝突緩和装置。
  3. 前記グリル及びロアバンパは、衝突初期の衝突エネルギ吸収に伴い車両後方へ変位して、前記グリル前面及びロアバンパ前面並びにバンパ前面の3部位にて歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の歩行者衝突緩和装置。
  4. 前記グリル及びロアバンパは、前記衝突予知手段により車両の衝突が予知された場合に、前記グリル駆動手段及びロアバンパ駆動手段により、前記グリル前面及びロアバンパ前面がバンパ前面と略同一の面内に位置するように突出され、衝突初期に前記グリル前面及びロアバンパ前面並びにバンパ前面の3部位にて歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の歩行者衝突緩和装置。
  5. 前記グリル前面及びロアバンパ前面並びにバンパ前面の3部位は、前記ロアバンパ前面が前記バンパ前面よりも車両前方に位置し且つ前記グリル前面が前記バンパ前面よりも車両後方に位置する状態で、歩行者の下半身部を支持するよう構成されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の歩行者衝突緩和装置。
  6. 前記グリル及びロアバンパによるエネルギ吸収特性は、衝突前半のエネルギ吸収荷重が低く、衝突後半のエネルギ吸収荷重が高くなるように構成されていることを特徴とする、請求項3又は5に記載の歩行者衝突緩和装置。
  7. 歩行者の体格を検出する歩行者検知センサを更に備え、
    前記制御手段は、前記歩行者検知センサの検出結果に基づいて、前記グリル及びロアバンパの突出態様を変化させて、歩行者の体格に応じて前記グリル及びロアバンパによるエネルギ吸収特性を変化させることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の歩行者衝突緩和装置。
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