JP2007317347A - 光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光記録媒体Dは、一方の面にハードコート層1Hが形成された基板1を有する。基板1の他方の面には、少なくとも第1の誘電体膜2と記録膜3と反射膜5とからなる情報層が形成されている。ハードコート層1Hは、ハードコート剤とイオン性液体である帯電防止剤とを含む帯電防止性ハードコート剤を硬化させて形成されている。
【選択図】図1
Description
そのため、熱可塑性樹脂によって形成した基板を有する光ディスクを日常的に使用した場合、基板に取扱い傷ができたりゴミが帯電によって付着したりなどして、記録または再生時のエラー発生の原因となる。以上のことを改善する目的で、基板表面に比較的高い硬度のハードコートを形成し、基板表面を保護することが考えられる。
誘電体膜の膜厚は、必要とする膜厚(設計値)に対して±5%の誤差範囲を超えると、反射率、変調度やオーバライト特性などの要件を満たせなくなる。従って、設計値±5%の誤差範囲を超えることなく誘電体膜の膜厚が成膜されることが必要である。
そこで本発明は前記した問題を解決するために、一方の面にハードコートを形成した基板を用いても、基板の他方の面上に続けて形成される各膜の成膜レートが低下せず、高い生産性、耐擦傷性及び帯電防止性を有する光記録媒体を提供することを目的とする。
(a)光によって情報が記録または再生される光記録媒体(D)において、基板(1)と、前記基板の一方の面に形成されたハードコート層(1H)と、前記基板の他方の面に形成された、少なくとも誘電体膜(2)と記録膜(3)と反射膜(5)とからなる情報層を備え、前記ハードコート層は、ハードコート剤とイオン性液体である帯電防止剤とを含む帯電防止性ハードコート剤を硬化させたものであることを特徴とする光記録媒体。
(b)前記ハードコート剤の水分含有率は0.05重量%以下であることを特徴とする(a)記載の光記録媒体。
(c)前記帯電防止剤は、前記帯電防止性ハードコート剤に対して0.5重量%から6重量%の含有率で含有されていることを特徴とする(b)記載の光記録媒体。
ハードコート層1Hは、基板1を成型した後、例えばスピンコート法によりハードコート剤を塗布し、紫外線照射によってハードコート剤を硬化させて形成する。ハードコート剤は、基板1の成型後あまり時間をおかず、できるだけ早く塗布することで、塵埃付着による塗布欠陥を減らすことができて好ましい。またハードコート剤を硬化させるには、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射する硬化方法があるが、なかでも紫外線を用いる硬化方法は、設備コストが抑えられ、記録膜あるいは他の膜への悪影響がなく好ましい。
また、ハードコート層1Hが帯電することを防止するために、帯電防止剤(導電剤)としてイオン性液体をハードコート剤に適宜添加することが好ましい。イオン性液体とは、イオンのみで構成された化合物であり、室温で液体であるという特性を有する。イオン性液体を常温溶融塩とも言う。イオン性液体は導電効果、相溶性、保存安定性などを考慮して適宜選択することが可能であるが、光記録媒体の使用・保存環境を考慮し、具体的には、脂肪族系イオン性液体、イミダゾリウム系イオン性液体などが好ましい。
本実施形態のハードコート剤を構成する樹脂材料の組成は、ペンタエリスリトールトリアクリレートを62重量%、イソステアリルメタクリレートを21重量%、ポリテトラメチレングリコールジアクリレートを10重量%とした。更に、光重合開始剤としてイルガキュア500(日本チバガイギー株式会社製)を6.5重量%、重合禁止剤としてt−ブチルハイドロキノンを0.5重量%添加して、40℃で充分に攪拌して混合調整したものを、本実施形態のハードコート剤とした。ハードコート剤を構成するそれぞれの材料の割合(重量%)は、ハードコート剤全体の重量に対するそれぞれの含有率を示すものである。なお、樹脂材料自体にわずかながら水分が含まれているため、ハードコート剤は0.02重量%の水分を含有する。イルガキュアは、チバスペシャルティケミカルズホールディングインコーポレーテッドの登録商標である。
ハードコート層1Hが形成された基板1の面と反対の面に、第1の誘電体膜2をZnS・SiO2を用いてスパッタ法によって膜厚80nmで成膜した。続いて同様の方法で、記録膜3をAgInSbTe合金を用いて膜厚20nmで成膜し、第2の誘電体膜4をZnS・SiO2を用いて膜厚20nmで成膜し、反射膜5をAlを用いて膜厚750nmで成膜した。第1の誘電体膜2から反射膜5までを情報層とする。
更に、反射膜5の上にスピンコート法によって、ソニーケミカル株式会社製の紫外線硬化樹脂(SK5110)を4μmの厚さで塗布し、積算光量1000mj/cm2の紫外線を照射し硬化させて保護膜6を形成した。接着膜7を用いて、基板1と同様に形成された基板8のレーベル面8Bが形成された面とは反対の面と保護膜6とを対向させて貼り合わせる。
本実施形態で用いた全ての光記録媒体Dは、基板1、情報層、保護膜6、接着膜7と基板8を上記した条件で形成した。
ハードコート剤に一切水を添加しない場合の水分含有率は0.02重量%であり、これはハードコート剤を構成する樹脂材料自体に含有されている水分の量である。ハードコート剤に45μlの水を添加すると、水分含有率は0.05重量%となり、80μlの水を添加すると水分含有率は0.07重量%である。更に、125μlの水を添加すると水分含有率は0.10重量%であり、280μlの水を添加すると水分含有率は0.20重量%である。なお、本実施形態のハードコート層1Hは、上記したように基板1に塗布したハードコート剤に紫外線を照射し硬化させて形成されているため、紫外線照射による水分の減少はほとんどない。従って、ハードコート層1Hは使用したハードコート剤とほぼ同じ水分含有率で水分を含有している。
第1の誘電体膜2の成膜レートは、所望の膜厚(設計値)である80nmに対する実際に成膜された第1の誘電体膜2の膜厚の割合である。すなわち、第1の誘電体膜2が膜厚80nmで成膜されていれば、成膜レートは100%である。
従って、ハードコート剤の水分含有率を0.05重量%以下に抑えると、一方の面にハードコート層1Hを形成した基板1の他方の面に成膜された第1の誘電体膜2は、所望の膜厚に対して±5%の誤差範囲の膜厚を得られるので、反射率、変調度やオーバライト特性などを良好にできる。
実施例1〜実施例4及び比較例1において、ハードコート剤に添加する帯電防止剤の種類を変化させてハードコート層1Hを基板1の一方の面に形成した光記録媒体Dを用いて、それぞれのハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1及び表面を拭取った後の電気抵抗値R2を調べた。ハードコート層1Hの表面の拭取りは、水とアルコールを50対50で混合した混合液を用いて10回行った。
97重量%のハードコート剤と、帯電防止剤として3重量%のイオン性液体であるNNジエチルNメチル(2メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下導電剤1と称する)とを充分に混合し、イオン性液体を3重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%であり、イオン性液体を添加したことによる水分含有率の増加はない。
なお、本実施形態において、ハードコート剤及び導電剤の割合(重量%)は、帯電防止性ハードコート剤全体の重量に対するそれぞれの含有率を示すものである。更に、本実施形態のハードコート層1Hは、上記したように基板1に塗布した帯電防止性ハードコート剤に紫外線を照射し硬化させて形成されているため、紫外線照射による水分の減少はほとんどない。従ってハードコート層1Hは、使用した帯電防止性ハードコート剤とほぼ同じ水分含有率で水分を含有し、ハードコート剤及び導電剤の含有率もほぼ同じである。
更に、80℃85%環境のもとで96時間保存した光記録媒体Dの外観変化A1及び、80℃85%環境のもとで1000時間保存した光記録媒体Dの外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
表2に上記した結果を示す。なお、以下で説明する実施例2〜実施例9及び比較例1〜比較例4の結果についても同様に表2に示す。
ハードコート剤を97重量%、イオン性液体のトリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下導電剤2と称する)を3重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
ハードコート剤を97重量%、イオン性液体の1エチル3メチルイミダゾリウムテトラフルオロメタンスルフォネート(以下導電剤3と称する)を3重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
ハードコート剤を97重量%、イオン性液体のトリオクチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(以下導電剤4と称する)を3重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
97重量%のハードコート剤に対し、4級アンモニウム塩であるNNジメチルアミノプロピルアクリルアミド(以下導電剤5と称する)を3重量%加えて充分に混合し、4級アンモニウム塩を3重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.15重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1は1×1014Ωより小さかったものの、拭取り後の電気抵抗値R2は1×1014Ωより大きく、帯電防止効果が得られなかった。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察した。図3に示す外観変化A1、図4に示す外観変化A2共に大きいシミ状の析出物(ブリード)が観察された。
それぞれの帯電防止性ハードコート剤について、上記と同様の方法で電気抵抗値R1及び拭取り後の電気抵抗値R2を調べ、外観変化A1及び外観変化A2を観察した。結果を表2に示す。
なお、本実施形態では、導電剤1〜4を3重量%加えた帯電防止性ハードコート剤を用いて基板1にハードコート層1Hを形成すると、帯電防止効果を発現するのに充分な表面電気抵抗値R1が得られる事から、導電剤1〜4はハードコート用帯電防止剤として有効である。
98重量%のハードコート剤に対し導電剤2を2重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を2重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
99重量%のハードコート剤に対し導電剤2を1重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を1重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
99.5重量%のハードコート剤に対し導電剤2を0.5重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を0.5重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
96重量%のハードコート剤に対し導電剤2を4重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を4重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
94重量%のハードコート剤に対し導電剤2を6重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を6重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察した。図5に示すように外観変化A1は特に変化がなかったが、外観変化A2は図6に示すように小さいシミ状の析出物(ブリード)が観察された。
92重量%のハードコート剤に対し導電剤2を8重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を8重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ω以下であり、帯電防止効果が得られた。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察した。図7に示すように外観変化A1は大きいシミ状の析出物(ブリード)が、図8に示すように外観変化A2は同様の小さい析出物が観察された。
帯電防止剤を添加せず、ハードコート剤のみでハードコート層1Hを形成した。ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ωより大きく、帯電防止効果が得られなかった。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
99.75重量%のハードコート剤に対し導電剤2を0.25重量%加えて充分に混合し、イオン性液体を0.25重量%含有する帯電防止性ハードコート剤を作成し、ハードコート層1Hを形成した。調整した帯電防止性ハードコート剤の水分含有率は0.02重量%である。
ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2はいずれも1×1014Ωより大きく、帯電防止効果が得られなかった。
更に、80℃85%環境における光記録媒体Dの外観変化A1、外観変化A2を観察したが、特に変化はなかった。
図9より、イオン性液体である導電剤2の含有率が0.5重量%より小さくなると、電気抵抗値R1は1×1014Ωより大きくなることがわかる。従って比較例3及び4のように、帯電防止性ハードコート剤に含有されている導電剤2の含有率が0.5重量%未満であると、ハードコート層1Hの表面における電気抵抗値R1、R2が1×1014Ωより大きくなり、帯電を防止する効果が望めない。
しかし、比較例2のように導電剤2の含有率が8重量%と大きくなると、光記録媒体Dを80℃85%環境のもとで保存した場合の外観に変化が観察される。比較例2では図8に示すように、80℃85%環境のもとで1000時間保存した場合(外観変化A2)に、大きなシミ状の析出物(ブリード)が観察された。析出物が発生すると、エラーレートの増加やトラッキングはずれの原因となり、記録・再生が困難になる。
なお、導電剤の含有率が6重量%である帯電防止性ハードコート剤を用いた実施例9では、図6に示すように外観変化A2において小さいシミ状の析出物が観察されたが、記録再生への影響は極めて小さい。
1H ハードコート層
2 第1の誘電体膜
3 記録膜
4 第2の誘電体膜
5 反射膜
6 保護膜
7 接着膜
8 基板
8B レーベル印刷面
Claims (3)
- 光によって情報が記録または再生される光記録媒体において、
基板と、
前記基板の一方の面に形成されたハードコート層と、
前記基板の他方の面に形成された、少なくとも誘電体膜と記録膜と反射膜とからなる情報層を備え、
前記ハードコート層は、ハードコート剤とイオン性液体である帯電防止剤とを含む帯電防止性ハードコート剤を硬化させたものであることを特徴とする光記録媒体。 - 前記ハードコート剤の水分含有率は0.05重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 前記帯電防止剤は、前記帯電防止性ハードコート剤に対して0.5重量%から6重量%の含有率で含有されていることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。
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