JP2007314723A - 表面偏析型プラスチック用添加剤及びその用途 - Google Patents

表面偏析型プラスチック用添加剤及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】プラスチックに添加することで、プラスチック成形品の表面部分のみを親水化させ、タンパク吸着性抑制等の生体適合性を改良することができ、更には、プラスチック成形品からの溶出が抑制された表面偏析型プラスチック用添加剤、該添加剤を用いた成形用プラスチック組成物及びプラスチック成形品を提供すること。
【解決手段】本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤は、特定のホスホリルコリン類似基含有単量体10〜60mol%と、特定の含フッ素単量体0.5〜10mol%と、非含フッ素疎水性単量体10〜70mol%とを含む重合性単量体組成物を重合した、重量平均分子量が10000〜1000000のホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体を含み、本発明の成形用プラスチック組成物は、プラスチック用樹脂原料及び上記添加剤を含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プラスチックの表面に、防曇性、流滴性、水滴付着防止性、帯電防止性等の親水性に係る物性や、抗タンパク吸着性を付与することができ、更には、抗血栓性、生体適合性等の表面の界面活性的性質に優れたフィルムや成形品、包装材料等の製造を可能とする表面偏析型プラスチック用添加剤、該添加剤を含む成形用プラスチック組成物及びプラスチック成形品に関する。
従来、プラスチック表面の改質処理としては、プラスチック成形品表面へのコーティング剤の塗布や、表面のプラズマ処理等が知られている。例えば、非特許文献1には、プラスチック表面の親水化及び生体適合化の方法として、ホスホリルコリン類似基含有重合体による表面コーティング方法が記載されている。しかし、この表面処理は、成形加工後の後工程として行うため、製造工程を煩雑にする問題がある。
一般に、プラスチックに添加する、防曇剤、流滴剤や水滴付着防止剤、帯電防止剤として、第4級アンモニウム型のカチオン性界面活性剤、ソルビタン系界面活性剤等のノニオン系界面活性剤や、スルホン化物等のアニオン性界面活性剤が使用されている。これらはプラスチックに混合するという簡便な操作で、プラスチックの表面を親水化できるために汎用されている。しかし、これらは、プラスチック成形品の表面から溶出し、水に洗い流されることで、効果が持続しないという欠点がある。
一方、特許文献1及び非特許文献2には、ホスホリルコリン類似基含有重合体中に第4級アンモニウム基、水酸基、スルホン基等の親水性基を導入したプラスチック用添加剤が提案されている。
しかしながら、これらの第4級アンモニウム基、水酸基、スルホン基等の親水性基を導入したホスホリルコリン類似基含有重合体は、プラスチックとの相溶性が良く、混合によりプラスチック全体に均一に配合されるため、混合量に伴う、プラスチック成形品の表面における充分な親水性化効果が得られていない。
また、特許文献2には、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレート1〜25重量%、水酸基含有フッ素重合性単量体5〜70重量%及びその他の成分として重合性単量体20〜94重量%からなる重合性単量体組成物が開示されている。この組成物は、コンタクトレンズ材料に用いることで、装用感が良く汚れにくいコンタクトレンズを製造できることが記載されているが、表面偏析型プラスチック用添加剤として使用しうることやその構成については示されていない。
特開2002−322320号公報 特開2000−169526号公報 特殊機能コーティングの開発と展望、シーエムシー、p.203−226、2002年、K. Ishihara et al., J. Biomed. Mater. Res., 1990, 24, 1069−1077 K. Ishihara et al., Biomaterials, 2004, 25, 5353−5361
本発明の課題は、プラスチックに添加することで、プラスチック成形品の表面部分のみを親水化させ、タンパク吸着性抑制等の生体適合性を改良することができ、更には、プラスチック成形品からの溶出が抑制された表面偏析型プラスチック用添加剤、該添加剤を用いた成形用プラスチック組成物及びプラスチック成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた。その結果、ホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体を用いることにより、表面自由エネルギーの低いフッ化アルキル基が界面に濃縮してプラスチック用添加剤が表面に偏析し、水系媒体への浸漬時にプラスチック表面を親水化することを見出し、さらに表面偏析型プラスチック用添加剤の溶出も無く、優れた効果を発揮することを確認し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、式(1)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体10〜60mol%と、
Figure 2007314723
(式(1)中、Xは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2、R3及びR4は同一若しくは異なる基であって、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は炭素数1〜3のヒドロキシ炭化水素基を示す。mは0又は1、nは2〜4の整数である。)
式(2)で示される含フッ素単量体0.5〜10mol%と、
Figure 2007314723
(式(2)中、L1は−C64−、−C69−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−を示す。L2は共有結合もしくは炭素数1〜3のアルキレン基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキレン基を示す。L3は炭素数1〜10のフルオロアルキル基を示す。R6は水素原子又はメチル基を示す。)
非含フッ素疎水性単量体10〜70mol%とを含む重合性単量体組成物を重合した、重量平均分子量が10000〜1000000のホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体を含む表面偏析型プラスチック用添加剤が提供される。
また本発明によれば、プラスチック用樹脂原料と、上記表面偏析型プラスチック用添加剤とを含み、該表面偏析型プラスチック用添加剤の含有割合が1〜50重量%である成形用プラスチック組成物が提供される。
更に本発明によれば、上記成形用プラスチック組成物を成型してなるプラスチック成形品が提供される。
本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤は、プラスチック表面を親水性化、生体適合性化させ、抗タンパク吸着や抗血栓性を発揮させる目的で各種プラスチックに配合することができる。加えて、得られるプラスチック成形品からの水による溶出性がほとんど無いため、安全に使用でき、その効果が持続的である。
本発明の成形用プラスチック組成物は、本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤を含むので、生体適合性等を有する本発明のプラスチック成形品を簡便に得ることができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤(以下、本発明の添加剤と略すことがある)は、特定のホスホリルコリン類似基含有単量体と、特定の含フッ素単量体と、非含フッ素疎水性単量体とを特定割合で含む重合性単量体組成物を重合した、特定の重量平均分子量を有するホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体を含むことを特徴とする。
本発明の添加剤において、特定のホスホリルコリン類似基含有単量体は、上記式(1)で示される単量体である。
式(1)中、Xは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を示す。該炭素数2〜4のアルキレンオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、2−ブトキシ基を挙げることができ、好ましくは入手性の点からエトキシ基である。
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示す。また、R2、R3及びR4は同一若しくは異なる基であって、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は炭素数1〜3のヒドロキシ炭化水素基を示す。該炭素数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくは入手性の点からメチル基である。前記炭素数1〜3のヒドロキシ炭化水素基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基が挙げられ、好ましくは入手性の点からヒドロキシエチル基である。
式(1)中、mは0又は1、nは2〜4の整数であり、特に好ましくは、入手性の良さ等の点から、m=1、n=2である。
前記式(1)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシ)ブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートが挙げられる。入手性及び生体適合性の点から、2−メタクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下MPCと略記する)が最も好ましく挙げられる。これらのホスホリルコリン類似基含有単量体は、使用に際して単独若しくは混合物として用いることができる。
前記重合性単量体組成物において、前記ホスホリルコリン類似基含有単量体の含有割合は、10〜60mol%、好ましくは20〜40mol%である。10mol%より少ないと成形加工時に表面に偏析するホスホリルコリン類似基含有単量体の量が不十分なために親水性、抗タンパク吸着性を発現することができない恐れがあり、60mol%より多いと、水に対する溶出性が無視できなくなり、十分な耐久性を得られない恐れがある。
前記ホスホリルコリン類似基含有単量体は、例えば、特開昭54−63025号公報、特開昭58−154591号公報等に示された公知の方法によって製造することができる他、市販品を使用することもできる。
本発明の添加剤において、特定の含フッ素単量体は、上記式(2)で示される単量体である。
式(2)中、L1は−C64−、−C69−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−を示す。
式(2)中、L2は共有結合もしくは炭素数1〜3のアルキレン基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキレン基を示す。該炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられ、好ましくは入手性の点からメチレン基とエチレン基である。また前記炭素数1〜3のヒドロキシアルキレン基としては、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基が挙げられ、好ましくは入手性の点からヒドロキシメチレン基である。
式(2)中、L3は炭素数1〜10のフルオロアルキル基を示し、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基が挙げられる。入手性の良さ等の点から、炭素数3〜8のフルオロアルキル基が好ましく、特に、パーフルオロペンチル基、パーフルオロオクチル基が好ましい。
式(2)中、R6は水素原子又はメチル基を示す。
前記式(2)で示される含フッ素単量体としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、1H,1H−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリルアミド、ビニルヘプタフルオロブチレート、ビニルパーフルオロヘプタノエート、ビニルパーフルオロオクタノエート、ビニルパーフルオロノナノエート、4−ビニルベンジルパーフルオロオクタノエートが挙げられる。この中で1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレートが共重合性や入手のし易さから最も望ましい。
前記重合性単量体組成物において、前記含フッ素単量体の含有割合は、0.5〜10mol%、好ましくは1〜5mol%である。0.5mol%より少ないと表面偏析型プラスチック用添加剤が成形加工時に表面に偏析できない恐れがあり、10mol%より多いと含フッ素単量体の有するフッ化アルキル基が得られるプラスチックの表面を覆い、親水性能が得られない恐れがある。
本発明の添加剤において、非含フッ素疎水性単量体は、式(1)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体ならびに式(2)で示される含フッ素単量体と異なる構造の非含フッ素疎水性単量体であって、これらと重合可能な非含フッ素疎水性単量体であれば、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知のフッ素を含有しない疎水性単量体を用いることができる。中でも、式(3)で示される非含フッ素疎水性単量体が好ましく挙げられる。
Figure 2007314723
式(3)中、L4は−C64−、−C69−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−で表される基を示す。
式(3)中、L5は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基を示す。該炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基が挙げられ、中でも入手性の点からはブチル基、ドデシル基、オクタデシル基が好ましく挙げられる。また、前記炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシオクタデシル基が挙げられ、中でも入手性の点からはヒドロキシエチル基とヒドロキシプロピル基が好ましく挙げられる。
式(3)中、R7は水素原子又はメチル基を示す。
前記式(3)で示される非含フッ素疎水性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルが挙げられる。入手性及び生体適合性の点から、ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが最も好ましく挙げられる。
前記重合性単量体組成物において、前記非含フッ素疎水性単量体の含有割合は、10〜70mol%、好ましくは25〜60mol%である。10mol%より少ないと得られる表面偏析型プラスチック用添加剤に十分な水不溶性を付与することができない恐れがあり、70mol%より多く配合すると、得られるプラスチックの表面において疎水性単量体が表面を被覆し、十分な親水性、抗タンパク質吸着性が得られない恐れがある。
本発明の添加剤において、前記重合性単量体組成物を重合する方法は、例えば、特開平9−3132号公報、特開平8−333421号公報、特開平11−35605号公報等に記載される公知のホスホリルコリン類似基含有単量体の重合方法を用いることができ、また塊状重合、乳化重合、分散重合、溶液重合等の公知の方法を用いることもできる。重合時の発熱による分子量コントロールのし易さ等の点からは、溶液重合が望ましい。
溶液重合を行う場合、溶媒を用いて、重合性単量体組成物を希釈して重合してもよい。前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、更に水−有機混合媒体において使用可能な水溶性有機媒体としての、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトニトリル、ニトロベンゼン等が好ましく挙げられる。最も好ましくは安全性の理由からエタノール、プロパノールである。
溶媒の使用量は、前記溶液重合ができる範囲であれば何れの濃度でも構わないが、溶媒と重合性単量体組成物との全量に対して、通常40〜95重量%である。
前記重合は、必要に応じて重合系を不活性ガス、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウムで置換ないし雰囲気下にして、重合温度0〜100℃、重合時間10分〜48時間の条件で、重合開始剤を用いてラジカル重合させる方法等により行なうことができる。
重合開始剤としては特に限定されず、通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニルパーオキサイド、グルタルパーオキサイド、サクシニルパーオキシグルタノエート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミヂン)ジハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2−アゾビス(2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等のアゾ化合物が挙げられ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。
重合開始剤の使用量は、目的の共重合体の分子量を制御する等の理由から適宜設定できるが、分子量を制御し易く扱い易い濃度として、溶媒と重合性単量体組成物との重合溶液全体に対して、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%である。
前記重合方法により得られるホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体は、その重合反応溶液をそのまま又は希釈して表面偏析型プラスチック用添加剤として使用することができる他、溶液重合の場合にはその溶液から溶剤を蒸発乾固させる、あるいは貧溶媒に添加して析出沈殿させる、混合溶媒において凍結乾燥させることで、固形物とし、表面偏析型プラスチック用添加剤として使用することもできる。もちろん、更に精製して純度を高めて使用してもよい。
本発明の添加剤において、有効成分として用いる前記重合性単量体組成物を重合したホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体の分子量は、通常重量平均分子量で10000〜1000000、好ましくは50000〜500000である。重量平均分子量が10000未満では、得られるプラスチックから溶出し易くなる恐れがあり、1000000を超えると混練(混合)できないか、それに時間を要する恐れがある。
本発明の添加剤において、有効成分としての前記ホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体としては、例えば、MPC−2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、
MPC−1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート−ラウリル(メタ)アクリレート共重合体、MPC−2,2,2−トリフオロエチル(メタ)アクリレート−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、MPC−1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート共重合体が好ましく挙げられる。
本発明の成型用プラスチック組成物(以下、本発明の組成物と略すことがある)は、プラスチック用樹脂原料と、前記本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤を含むことを特徴とする。
前記プラスチック用樹脂原料としては、例えば、熱可塑性プラスチック樹脂、熱硬化性プラスチック樹脂、又はプラスチックの原料モノマーが挙げられる。
熱可塑性プラスチック樹脂及び熱硬化性プラスチック樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
上記プラスチックの原料モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、トリス(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメート、(トリメトキシシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピロイロキシ)プロピルビス(トリメトキシシロキシ)メチルシラン、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の一般にコンタクトレンズ重合用のビニル基含有の重合性単量体が挙げられ、使用に際しては単独若しくは2種以上の混合物として用いることができない。
前記熱可塑性プラスチック樹脂、熱硬化性プラスチック樹脂、プラスチックの原料モノマーは、相溶する場合には混合して使用することもできる。
本発明の組成物において、前記表面偏析型プラスチック用添加剤の含有割合は、本発明の添加剤における前記ホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体の割合で、組成物全量に対して、通常1〜50重量%である。該割合が1重量%未満では、本発明の添加剤に係る十分な機能を得られるプラスチック成形品表面で発現させることができない恐れがあり、50重量%を超えると、プラスチック成形品の力学的強度低下等の物性に影響を及ぼす恐れがある。
本発明の成型用プラスチック組成物は、例えば、プラスチック樹脂原料に対して、本発明の添加剤を添加して混練する方法により得ることができる。混練は、従来公知の一軸あるいは二軸型混練機等を使用して実施することができる。
また、他の方法として、プラスチック樹脂原料及び本発明の添加剤を溶剤にて希釈したものを、攪拌して均一化した溶液とする方法も挙げられる。
前記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、更に水−有機混合媒体において使用可能な水溶性有機媒体としての、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトニトリル、ニトロベンゼン等が好ましく挙げられる。
プラスチック樹脂原料及び表面偏析型プラスチック用添加剤を、前記溶剤に希釈する濃度は、成型加工が可能な濃度であれば濃い方が良いが、流動性や溶解性の点から、プラスチック樹脂原料及び表面偏析型プラスチック用添加剤の合計が15〜80重量%になるよう希釈するのが望ましい。この際、プラスチック樹脂原料及び表面偏析型プラスチック用添加剤の相溶性をコントロールするために、例えば、適当な添加剤を使用しても構わない。
本発明のプラスチック成形品は、成型用プラスチック組成物を、例えば、そのまま成型加工、あるいは溶剤に希釈して成型加工することにより得られた成型品であって、表面自由エネルギーの低いフッ化アルキル基が濃縮し、表面偏析型プラスチック用添加剤がプラスチック成形品の表面に偏析して、親水性及び抗タンパク吸着性がプラスチック成形品の表面に付与されたプラスチック成形品である。
前記成型用プラスチック組成物の成型加工の方法としては、例えば、プレス成型や、「ポリマーを成型加工する、高分子学会編、1993年」に記載の熱可塑射出成型及び熱硬化射出成型、更には「コーティング、(株)加工技術研究会編、2002年、p.322−449」に記載のキャスト成形が挙げられる。
プレス成型や熱可塑射出成型及び熱硬化射出成型をする場合の成型加工の温度としては、ホスホリルコリン類似基の分解温度以下である230℃以下が望ましい。
本発明のプラスチック成形品は、前記キャスト成形により、フィルムやシート等のプラスチック成形品とすることができる。
キャスト成形方法として、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、ディップコーター、スプレイコーター、スピンコーター、押出コーター、ダイコーターにより本発明の組成物を塗工した後、熱風乾燥して乾燥膜厚約0.01mm〜1mm程度の被膜を得る方法が挙げられる。このようなプラスチック成形品は、例えば、衣料用品、おむつや生理用品用のライナー、食品包装吸水フィルム、農業用防曇フィルム、水滴付着防止保護シート等として使用することができる。
本発明のプラスチック成形品は、プラスチック樹脂原料又はそれを溶剤に溶解したものに対して本発明の添加剤を添加し、公知のスピンキャスト製法、スタティックキャスト製法等のモールド成形加工法により製造することもできる。
このような製造方法を採用する場合の本発明の組成物におけるプラスチック樹脂材料としては、プラスチックの原料モノマーの使用が好ましい。またこのような成形の際の重合温度は、成形品の変形を防ぐために40〜70℃であることが望ましい。このようなプラスチック成形品としては、例えば、コンタクトレンズが挙げられる。
本発明のプラスチック成形品としては、例えば、カテーテル、ガイドワイヤー等の医療用具、また、フィルムやシート、チューブ、台所、トイレ、浴槽等の家庭の水周り用部材、各種防曇シート、水滴付着防止保護シート等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
尚、例中の各種測定は、以下の方法により実施した。
ポリマーの分子量の分析方法
(1)ポリマーの分子量
メタノール/クロロホルム(4/6(重量比))を溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリエチレングリコールを標準として使用し、屈折率にて検出し測定を行った。
(2)X線光電子分光法(XPS)測定
日本電子(株)製の商品名「JPS−9200」を用いて、試料表面の元素分析を行い、リン(P)のスペクトル面積に対する炭素(C)のスペクトル面積の比を算出した。
(3)静的接触角測定
協和界面科学(株)製の接触角測定器、商品名「DropMaster 500」を用いて水による液滴法で行った。温水流水洗浄は、約2×5cm2のプレート状サンプルを約5L/hrの温水で2時間洗浄を行い、1晩風乾後の接触角値を同様に測定した。
(4)タンパク質吸着性試験
ウシ血清アルブミン0.6重量%のリン酸緩衝液(以下PBSと略す)10.0mLの入った試験管に、コーティング膜(1cm×1cm)を入れ、4℃で一晩インキュベートした後、4.0mLのPBSで3回洗浄した。その後、ドデシル硫酸ナトリウムを添加したPBS4.0mLを加えて、試験管内壁に吸着したタンパク質を溶出させ、このPBS中のタンパク質の濃度を「マイクロBCAプロテインアッセイキット」(PIERCE社製)を使用して測定した。測定試料は、加熱処理前(比較例)及び加熱処理後(実施例)のコーティング膜をそれぞれ測定し、その後、耐久性(耐水洗性)を調べるために流水中で1時間水洗したものについても測定を行った。
評価はタンパク吸着量により行い、吸着量が0.5μg/cm2未満を○、0.5〜1.0μg/cm2を△、1.0μg/cm2以上を×とした。
合成例1
MPC 155.1g、スチレン118.7g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート26.3gを、2−プロパノール/トルエン(8/2(重量比))1200gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、50℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート3.30gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液を50倍量のアセトン中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.3−スチレン0.65−1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート0.05)共重合体のポリマー粉末284gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量223000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例2
MPC 155.1g、スチレン118.7g、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルメタクリレート26.3gを2−プロパノール5700gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、65℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート26.40gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液を、エバポレータを使用して濃縮した後、50℃で一晩加熱真空乾燥を行って、(MPC0.3−スチレン0.65−1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート0.05)共重合体のポリマー塊状体257gを得た。得られた塊状体の分子量を測定したところ、重量平均分子量5300であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例3
MPC 162.5g、スチレン90.2g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート47.3gを2−プロパノール/トルエン(8/2(重量比))900gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、40℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート1.76gを加えて12時間重合反応させた。得られた重合液を30倍量のアセトン中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.35−スチレン0.55−1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート0.10)共重合体のポリマー粉末288gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量731000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例4
MPC 164.5g、スチレン135.5gを2−プロパノール/トルエン(8/2(重量比))700gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、50℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート3.30gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液を50倍量のアセトン中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.3−スチレン0.7)共重合体のポリマー粉末289gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量208000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例5
MPC 11.7g、プロピレングリコールモノメタクリレート87.0g、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート1.34gをエタノール400gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、45℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート1.1gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液をエバポレーションにより40%まで濃縮後、50倍量のアセトン/ヘキサン混合溶媒中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.25−プロピレングリコールメタクリレート0.70−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート0.05)共重合体のポリマー粉末72gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量280000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例6
MPC 11.2g、プロピレングリコールモノメタクリレート88.8gをエタノール400gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、45℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート1.1gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液をエバポレーションにより40%まで濃縮後、50倍量のアセトン/ヘキサン混合溶媒中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.25−プロピレングリコールメタクリレート0.75)共重合体のポリマー粉末70gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量324000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例7
MPC 12.6g、信越シリコーン社製のシリコーンメタクリレート(商品名「X−24−8201」)86.4g、1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート1.0gをエタノール400gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、65℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート3.30gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液を50倍量のアセトン中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.50−シリコーンメタクリレート0.48−1H,1H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート0.02)共重合体のポリマー粉末62gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量26000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
合成例8
MPC 12.3g、信越シリコーン社製のシリコーンメタクリレート(商品名「X−24−8201」)87.7gを、エタノール400gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、65℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート3.30gを加えて6時間重合反応させた。得られた重合液を50倍量のアセトン中に滴下し、析出した沈殿を濾過し、真空乾燥を行って、(MPC0.5−シリコーンメタクリレート0.5)共重合体のポリマー粉末65gを得た。得られた粉末の分子量を測定したところ、重量平均分子量31000であった。重合組成及び分子量を表1に示す。
Figure 2007314723
実施例1〜3及び比較例1、2
合成例1〜4において合成したポリマーを、20重量%エタノール溶液としてポリエチレン粒子(略称PE、住友化学社製 グレード:LE−1080)に添加、混合し溶媒を蒸発させた。これを十分に混練し、東洋精機社製のラボプラストミルを用いて110℃でストランドを作成し、ペレットを得た。得られたペレットを東洋精機社製のミニテストプレスにて、120℃、5分間、20MPaでプレス成形加工した。試料片の一部を切り出し、表面をミクロトームにより厚さ10μmに削った深さ方向のXPS測定用サンプルを調製し、測定を行った。更に残りの試料片の一部を切り出し、接触角測定とタンパク質吸着試験を行った。結果を表2に示す。
実施例4及び比較例3
ポリカーボネートウレタン(略称PCU、The Polymer Technology社製、商品名Bionate 80A)の20重量%−N,N−ジメチルホルムアミド溶液を調製した後、合成例5又は6で合成したポリマーの20重量%イソプロピルアルコール溶液を固形分換算で5重量%となるように添加、均一混合した。得られたプラスチック混合溶液をテフロン(登録商標)シャーレに流し込み、温度70℃、20mmHgにて一晩減圧しながら、流延キャスト成形加工した。得られたフィルムをテフロン(登録商標)シャーレより剥離し、接触角測定とタンパク質吸着試験を行った。結果を表2に示す。
実施例5及び比較例4
(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(略称TRIS)40重量部、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート(略称SIGMA)20重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド(略称DMAAm)10重量部に、合成例7又は8で合成したポリマーを50重量%となるようにエタノールに溶解した溶液20重量部を添加して均一混合した。混合物の溶液を耐圧瓶に入れ、減圧開放を繰り返して脱酸素し、これに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を加えて均一溶解後にポリプロピレン製のコンタクトレンズモールドに流し込み、120℃、1.5時間重合成型を行った。続いて、型より取り出した成型品をエタノール洗浄後、純水で6時間膨潤させた後、接触角測定及びタンパク質吸着試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2007314723
表2の結果より、合成例1、3、5及び7で合成したホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体であるポリマーは、表面のリン原子(P)濃度が高いことが明らかとなり、表面へのの偏析が確認されたので、本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤として使用できるものであることがわかる。実施例1〜5では、初期性状において接触角が小さく親水性発現していることがわかる。比較例2では湯洗後の接触角値が低下しており、これはプラスチックからのポリマーの溶出があるためと示唆される。それに対して実施例1〜5では、湯洗後の性状においても十分な親水性を維持しており水への流出は認められなかった。また同様の傾向が、抗タンパク吸着性についても発現していることがわかり、親水性と抗タンパク質吸着性がホスホリルコリン類似基の機能発現によるものであることがわかる。
以上より、実施例1〜5において添加混合した合成例1、3、5及び7の本発明の表面偏析型プラスチック用添加剤は、プラスチックの表面を親水化させ、抗タンパク吸着性を発現する優れた効果の持続性を示した。

Claims (4)

  1. 式(1)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体10〜60mol%と、
    Figure 2007314723
    (式(1)中、Xは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2、R3及びR4は同一若しくは異なる基であって、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は炭素数1〜3のヒドロキシ炭化水素基を示す。mは0又は1、nは2〜4の整数である。)
    式(2)で示される含フッ素単量体0.5〜10mol%と、
    Figure 2007314723
    (式(2)中、L1は−C64−、−C69−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−を示す。L2は共有結合もしくは炭素数1〜3のアルキレン基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキレン基を示す。L3は炭素数1〜10のフルオロアルキル基を示す。R6は水素原子又はメチル基を示す。)
    非含フッ素疎水性単量体10〜70mol%とを含む重合性単量体組成物を重合した、重量平均分子量が10000〜1000000のホスホリルコリン類似基含有含フッ素重合体を含む表面偏析型プラスチック用添加剤。
  2. 非含フッ素疎水性単量体が、式(3)で示される非含フッ素疎水性単量体である請求項1記載の表面偏析型プラスチック用添加剤。
    Figure 2007314723
    (式(3)中、L4は−C64−、−C69−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−で表される基を示す。L5は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のヒドロキシアルキレン基を示す。R7は水素原子又はメチル基を示す。)
  3. プラスチック用樹脂原料と、請求項1又は2記載の表面偏析型プラスチック用添加剤とを含み、該表面偏析型プラスチック用添加剤の含有割合が1〜50重量%である成形用プラスチック組成物。
  4. 請求項3記載の成形用プラスチック組成物を成型してなるプラスチック成形品。
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