JP5043501B2 - ホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体 - Google Patents

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Description

本発明は、ホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体、該重合体を用いた膜、該重合体を用いたコーティング皮膜を有するフィルム又はシートに関する。
従来、ホスホリルコリン類似基含有重合体は、生体膜に由来するリン脂質類似構造に起因して、血液適合性、補体非活性化、生体物質非吸着性等の生体適合性に優れ、非常に親水性が高く、保湿性が高いなどの優れた性質を有することが知られている。このため、それぞれの機能を生かした生体関連材料の開発を目的としたホスホリルコリン類似基含有重合体の合成、該重合体を利用した種々の研究開発が活発に行われている。
例えば、特許文献1及び2には、疎水性のアルキルメタクリレートとホスホリルコリン類似基含有単量体との共重合体、並びに医療用具等に利用できる、該共重合体を用いた耐水性に優れたコーティング皮膜が提案されている。また、特許文献3には、グリセロール基による架橋部位を有するホスホリルコリン類似基含有重合体及び該重合体を用いた、耐水性に加えて高保水性を有するコーティング皮膜が提案されている。
これらのコーティング皮膜は、基材に対して疎水性基が配向密着することで優れた耐水性を示すが、該疎水性の官能基がコーティング皮膜表面を覆っているために、その表面の初期の水濡れ性が低い、即ち、前進接触角値が高い(M.C.Davisら、Langumuir, 16, 5121, 2000)ことが知られている。
上記コーティング皮膜は、例えば、通常の環境下では乾燥条件で保存されそのまま直に血液成分と接触させる透析膜のような医療用具、臨床検査用バイオチップ、あるいは組織培養用基板等への利用が期待できる。
しかしながら、特に体液と瞬時に接触させて測定するバイオチップ等に利用する場合には、コーティング皮膜の初期の水濡れ性が低いために、これに基づいて僅かな生体成分吸収により測定誤差が生じ、十分な測定ができない場合がある。
そこで、コーティング皮膜におけるホスホリルコリン類似基含有重合体の性質を十分に発揮させるためには、使用前に緩衝液等の水系媒質による前処理を行う必要がある。
尚、多環式芳香族基を有するホスホリルコリン類似基含有重合体については従来知られていない。
特開平9−3132号公報 特開平3−39309号公報 特開2002−356519号公報
本発明の課題は、タンパク等の吸着抑制能に優れ、特に、優れた耐水性と初期水濡れ性とを両立しうる膜やコーティング皮膜を有するフィルム又はシート、並びに該膜やフィルム又はシートの原料として利用可能な新規なホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のホスホリルコリン類似基含有単量体と、多環式芳香族基含有ビニル単量体という特徴的な疎水性単量体とを共重合して得た新規な重合体を用いて製造した皮膜が、耐水性に優れ、特に高い初期水濡れ性(低い前進接触角値)を有することの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、ホスホリルコリン類似基含有単量体に基づく式(1)で示される構成単位U1と、多環式芳香族基含有ビニル単量体に基づく式(2)で示される構成単位U2とを含み、U1とU2とのモル比が1〜99:99〜1であり、かつ重量平均分子量が1000〜1000000であるホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体が提供される。
Figure 0005043501
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基又はアルキレンオキシ基を示す。pは0又は1、qは1〜4の整数である。式(2)中、Lは多環式芳香族基を示す。)
また本発明によれば、上記ホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体を含む厚さ0.05〜1.0μmの膜が提供される。
更に本発明によれば、上記ホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体を含むコーティング皮膜を表面に有するフィルム又はシートが提供される。
本発明のホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体(以下、本発明の重合体と略す)は、ホスホリルコリン類似基含有単量体に基づく特定の構成単位U1と、多環式芳香族基含有ビニル単量体に基づく特定の構成単位U2とを含むので、各種材料等に優れた生体適合性を付与し、更には優れた耐水性と初期水濡れ性との両者を付与することができる。
本発明のフィルム又はシートは、本発明の重合体を含むコーティング皮膜を表面に有するので、生体適合性に優れ、タンパク等の吸着の抑制作用に優れ、また、優れた耐水性と初期水濡れ性とを両立する。従って、医療用具、化粧品、生化学分析等の様々な分野への利用が期待できる。特に、その中でも初期水濡れ性が特に必要とされる生化学分析への利用に好適である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の重合体は、ホスホリルコリン類似基含有単量体に基づく上記式(1)で示される構成単位U1と、多環式芳香族基含有ビニル単量体に基づく上記式(2)で示される構成単位U2とを含む。
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基又はアルキレンオキシ基を示す。pは0又は1、qは1〜4の整数である。式(2)中、Lは多環式芳香族基を示す。式(2)で示される各構成単位U2中のLは同一でも異なっていても良い。また、該Lで示される多環式芳香族基としては、下記式で表される1−ナフタレン基、2−ナフタレン基、9−アントラセン基又は1−ピレン基からなる群より選択される多環式芳香族基が挙げられる。
Figure 0005043501
本発明の重合体において、上記構成単位U1及びU2のモル比は、1〜99:99〜1、好ましくは20〜95:80〜5、特に好ましくは40〜60:60〜40の範囲である。構成単位U1が1モル%未満であると生体適合性が十分でなく、99モル%を超えてもそれ以上効果が期待できない。また構成単位U2が1モル%未満であると、基材等にコーティングした際に、多環式芳香族基の疎水性による基材への密着性が十分でないため、基材への付着性(耐洗浄性)が十分発揮できず、99モル%を超えても付着性についてそれ以上効果が期待できない。
本発明の重合体は、本発明における所望の特性を損なわない範囲で、構成単位U1及びU2の他に、重合可能な他の重合性単量体に基づく構成単位を含んでいても良い。また、各構成単位による本発明の重合体は、ランダム共重合体である。このような他の構成単位の割合は特に限定されないが、重合体全量基準で、50モル%以下とすることが好ましい。
本発明の重合体の重量平均分子量は、1000〜1000000の範囲、好ましくは2000〜100000の範囲である。重量平均分子量が1000未満の場合は、重合体の基材への密着力が十分でないため耐水性が劣ることになり、1000000を超える場合は、加工液とした場合に粘性が高くなりすぎ基材に均一にコーティングすることが困難となり生体適合性を十分に発揮することが困難となる恐れがある。
本発明の重合体は、例えば、上記構成単位U1の原料となるホスホリルコリン類似基含有単量体(単量体M1と略す)と、上記構成単位U2の原料となる多環式芳香族ビニル単量体(単量体M2と略す)と、必要により共重合可能な他の重合性単量体とを含む単量体組成物を、重合開始剤の存在下、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで置換または雰囲気においてラジカル重合、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の方法により調製することができる。精製等の観点から溶液重合が好ましく挙げられる。重合体の精製は、再沈殿法、透析法、限外濾過法等の一般的な精製方法により行うことができる。
上記単量体組成物において、単量体M1と単量体M2との含有割合は、好ましくは単量体M1 20〜95モル%、単量体M2 80〜5モル%であり、特に好ましくは単量体M1 40〜60モル%、単量体M2 60〜40モル%である。単量体M1が20モル%未満であると生体適合性が十分でない恐れがあり、単量体M2が5モル%未満であると、基材にコーティング等した際に、多環式芳香族基の基材に対する密着性や疎水性相互作用による自己架橋性が低下し、コーティング皮膜の耐水性が十分発揮できない恐れがある。また、他の重合性単量体を含む場合には、組成物全量基準で、50モル%以下が好ましい。
上記単量体M1としては、下記式で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体が挙げられる。
Figure 0005043501
式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基又はアルキレンオキシ基を示す。pは0又は1、qは1〜4の整数である。
上記式で示される単量体M1としては、例えば、2−((メタ)クリロイルオキシ)エチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−((メタ)クリロイルオキシ)プロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−((メタ)クリロイルオキシ)ブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−((メタ)クリロイルオキシ)ペンチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−((メタ)クリロイルオキシ)ヘキシル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)クリロイルオキシ)プロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)クリロイルオキシ)ブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)クリロイルオキシ)ペンチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)クリロイルオキシ)ヘキシル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、ω−((メタ)クリロイルオキシ)ポリオキシエチレン−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、ω−((メタ)クリロイルオキシ)ポリオキシプロピレン−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートを挙げることができる。ここで、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。これらの中でも特に入手性の点からは、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCと略す)がより好ましい。
本発明の重合体を調製する際において、前記単量体M1は1種を単独で、もしくは2種以上を混合物として用いることができる。
単量体M1は、公知の方法で製造できる。例えば、特開昭54−63025号公報に示される水酸基含有重合性単量体と2−ブロムエチルホスホリルジクロリドとを3級塩基存在下で反応させて得られる化合物と3級アミンとを反応させる方法、特開平11−43496号公報等に示される、水酸基含有重合性単量体と環状リン化合物との反応で環状化合物を得た後、2級アミンで開環反応する方法によって製造することができる。
上記単量体M2としては、下記式で示される多環式芳香族基含有ビニル単量体が挙げられる。
Figure 0005043501
式中、Lは、多環式芳香族基を示す。
上記式で示される単量体M2として、例えば、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン、1−ビニルピレン及びその誘導体が挙げられる。中でも、特に、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンが入手のし易さ等により好ましく挙げられる。
上記単量体組成物において、単量体M1、単量体M2以外の必要に応じて含有させることができる他の重合性単量体としては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の親水性の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸等の酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素単量体;2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の疎水性ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体が挙げられる。
本発明の重合体は、上記単量体M1と単量体M2とを含む単量体組成物をラジカル重合することにより得ることができるが、他の重合性単量体の種類により基材との密着性が異なるため、コーティングする基材の性質を考慮して他の重合性単量体を選択することが望ましい。他の単量体の中でもホスホリルコリン類似基含有重合体の生体適合性の発現と基材との密着性との観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基含有単量体や(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性基含有単量体が好ましく挙げられる。
本発明の重合体において、重合体の両末端は、通常、製造する際のラジカル重合時における開始反応や停止反応によって生成する基であり、例えば、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル、溶媒としてエタノールを用いた場合、以下の式に示される、重合開始剤、溶媒や単量体に由来する末端基が挙げられる。さらに、連鎖移動剤を用いる場合にはそれに由来する重合末端も挙げられる。
Figure 0005043501
本発明の重合体を製造する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビス(2−アミジノプロピル)二塩酸塩、2,2−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2,2'−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミヂン)ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス(2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等のアゾ系ラジカル重合開始剤が挙げられる。また、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、コハク酸ペルオキシド(=サクシニルペルオキシド)、グルタルペルオキシド、サクシニルペルオキシグルタレート、t−ブチルペルオキシマレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシカーボネート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシピバレート等の有機過酸化物が挙げられる。さらに、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸化物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は単独で用いても混合物で用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、上記単量体組成物100質量部に対して通常0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5.0質量部である。
本発明の重合体を製造する際に用いる溶媒としては、上記単量体組成物における単量体を溶解でき、かつ反応しないものであればいずれも使用できる。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;エチルセルソルブ、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の直鎖又は環状のエーテル系の溶媒;アセトニトリル、ニトロメタン等の含窒素系の溶媒が挙げられる。好ましくは、溶媒は、水、または水−アルコール系の混合溶媒が挙げられる。
本発明の膜は、本発明の重合体を用いて、既存のいずれのコーティング方法により基材に皮膜を形成させる方法等により得ることができる。例えば、本発明の重合体を0.1〜50質量%の濃度の溶液とし、密着性の低い基材、例えば、フッ素樹脂に塗布して乾燥し、剥離して取り出す方法により得ることができる。
本発明の膜の厚さは、通常、0.05〜1.0μmである。
本発明のフィルム又はシートは、本発明の重合体を含むコーティング皮膜を表面に有するものであって、該コーティング皮膜の厚さは、通常、0.05〜0.1μmである。
本発明のフィルム又はシートは、既存のいずれの方法でも得ることができるが、例えば、本発明の重合体を含む希釈液を、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンのような素材からなるフィルム又はシート上に塗布して乾燥する方法、あるいは上記素材のフィルム又はシートを、本発明の重合体を含む希釈液に漬浸して乾燥させる方法により得ることができる。
本発明の膜やフィルム又はシートを調製する際に用いる、本発明の重合体を溶解又は希釈する溶媒としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等の有機溶媒や、水とアルコールの混合液等の2種以上を用いた混合溶媒が挙げられる。
本発明のフィルム又はシートを製造するにあたり、コーティング皮膜の調製は、例えば、本発明の重合体を0.5〜5質量%の濃度になるように、エタノール/水=20/80(容量比)等の溶媒に溶解した本発明の重合体を含む溶液を基材に塗布、乾燥する方法により行うことができる。
上記コーティング皮膜の調製に用いる本発明の重合体を含む上記溶液には、本発明の重合体に加えて、バインダー成分等を混合することにより、さらに耐水性の高いコーティング皮膜を得ることができる。
バインダー成分としては、例えば、アルキル基、フェニル基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基のうちいずれかを有する単量体と、単量体M1等のホスホリルコリン類似基含有単量体との共重合体が挙げられる。具体的には例えば、バインダー成分として、MPC−ラウリルメタクリレート共重合体、MPC−メタクリル酸共重合体、MPC−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド共重合体、MPC−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体等が好ましく挙げられる。
上記コーティング皮膜は、前進接触角値を40°以下とすることができ、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に形成することが好ましい。
本発明の膜や、フィルム又はシートは、医療用具、化粧品、生化学分析等の様々な分野に使用可能である。特に、その中でも初期水濡れ性が特に必要とされる生化学分析に好適である。
本発明の膜や、フィルム又はシートを付与した物品は、いずれの生化学分析にも使用可能であり、例えば、バイオチップ、マルチプレート、血液フィルターに使用することができる。また生体適合性の観点から、ドラッグデリバリー担体、創傷被覆剤等に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが本発明はこれらに限定されない。尚、各例のポリマーの分子量の分析方法は以下のとおりである。
<共重合体の数平均分子量の測定>
共重合体の数平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定した数平均分子量の値である。即ち、得られた共重合体水溶液を0.5質量%になるよう蒸留水で希釈し、この溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、試験溶液とした。なお、GPC分析の測定条件はつぎのとおりである。
<GPC分析の測定条件>
溶出溶媒;メタノール/水=70/30、標準物質;ポリエチレングリコール、検出;示差屈折率計
実施例1(MPC 0.50−VN 0.50共重合体)
MPC 1.48g及びビニルナフタレン(VN)0.77gをエタノール7.8gに溶解し、これをガラス管に入れ、AIBN 0.0082gを加えて、30分間アルゴンガスを吹き込み封管し、60℃で46時間重合反応させた。重合液を200mlのクロロホルム中にかきまぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末1.98gを得た。GPCにより評価した分子量は、重量平均分子量24000であった。得られたポリマーをP−1と略記する。以下に、IR及びNMRのデータを示す。
IRデータ:2954cm-1(−CH)、1732cm-1(C=O)、1489cm-1(−CH)、1246cm-1(P=O)、1161cm-1(C−O−C)、1088cm-1(P−O−C)、740cm-1、820cm-1、860cm-1(C−H、芳香環)。
NMRデータ:0.8−1.2ppm(CH3−C−)、1.4ppm(−CH2CH2−)、3.3ppm(−N(CH3)3)、7.0〜8.1ppm(ベンゼン環,7H)。
実施例2(MPC 0.71−VN 0.29共重合体)
MPC 2.07g及びVN 0.46gをエタノール7.8gに溶解し、これをガラス管に入れ、AIBN 0.0082gを加えて30分間アルゴンガスを吹込み封管し、60℃で46時間重合反応させた。重合液を200mlのクロロホルム中にかきまぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末2.20gを得た。GPCにより評価した分子量は重量平均分子量25000であった。得られたポリマーをP−2と略記する。以下に、IR及びNMRのデータを示す。
IRデータ:2954cm-1(−CH)、1732cm-1(C=O)、1489cm-1(−CH)、1246cm-1(P=O)、1161cm-1(C−O−C)、1088cm-1(P−O−C)、740cm-1、820cm-1、860cm-1(C−H、芳香環)。
NMRデータ:0.8−1.2ppm(CH3−C−)、1.4ppm(−CH2CH2−)、3.3ppm(−N(CH3)3)、7.0〜8.1ppm(ベンゼン環,7H)。
比較例1(MPC 0.4−BMA 0.6共重合体)
MPC 11.6g及びブチルメタクリレート(BMA)8.4gをエタノール180gに溶解し、4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、50℃でAIBN 0.85gを加えて8時間重合反応させた。重合液を3リットルのジエチルエーテル中にかきまぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末15.8gを得た。GPCにより評価した分子量は重量平均分子量225000であった。得られたポリマーをP−3と略記する。以下に、IR及びNMRのデータを示す。
IRデータ:2954cm-1(−CH)、1732cm-1(C=O)、1489cm-1(−CH)、1246cm-1(P=O)、1161cm-1(C−O−C)、1088cm-1(P−O−C)。
NMRデータ:0.8−1.2ppm(CH3−C−)、1.4ppm(−CH2CH2−)、3.3ppm(−N(CH3)3)。
比較例2(MPC 0.4−BMA 0.2−GLM 0.4共重合体)
MPC 11.2g、BMA 2.7g及びグリセロールモノメタクリレート(GLM)6.1gをエタノール180gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、50℃でAIBN 0.85gを加えて8時間重合反応させた。重合液を3リットルのジエチルエーテル中にかきまぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末16.1gを得た。GPCにより評価した分子量は重量平均分子量341000であった。得られたポリマーをP−4と略記する。以下に、IR、NMRのデータを示す。
IRデータ:3413cm-1(−OH)、2954cm-1(−CH)、1732cm-1(C=O)、1489cm-1(−CH)、1246cm-1(P=O)、1161cm-1(C−O−C)、1088cm-1(P−O−C)
NMRデータ:0.8−1.2ppm(CH3−C−)、1.4ppm(−CH2CH2−)、3.3ppm(−N(CH3)3)、3.5−4.4ppm(−CH2CH2O−、−CH2CH(OH)CH2OH)
Figure 0005043501
実施例3、4及び比較例3、4、5
(1)コーティング皮膜フィルムの調製
エタノール/水(20/80;容量比)9.95gに、実施例1、2、比較例1、2において調製したポリマー(P−1〜P−4)を各々0.05g溶解した、コーティング液を準備した。各コーティング液に、20mm×30mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを漬浸して50℃で100分間乾燥させて、コーティング皮膜フィルムを調製した。
(2)コーティング皮膜のタンパク質吸着抑制試験
耐水性確認のため、一部のコーティングしたPETフィルムをウシ血清アルブミン0.6質量%のリン酸緩衝液(PBS)4.0mlの入った試験管に入れ、4℃で一晩インキュベートした後、4.0mlのPBSで3回洗浄した。その後、ドデシル硫酸ナトリウムを添加したPBS 4.0mlを加えて、ポリエチレンテレフタレートフィルム内壁に吸着したタンパク質を溶出させ、このPBS中のタンパク質の濃度を「マイクロBCAプロテインアッセイキット」(PIERCE社製)を使用して着色量の官能評価から3段階に分けて評価した。結果を表2に示す。
(3)コーティング皮膜の前進接触角値と耐水性(溶出性試験)
上記コーティング皮膜の前進接触角を、動的接触角測定器を用いて測定した。評価はn=5で実施した結果を、接触角40°以下を○、40°以上を×として判定した。結果を表2に示す。
Figure 0005043501
比較例3〜5の場合に比較して、本発明の重合体を使用した実施例3及び4によると、タンパク吸着量が少なく耐水性を有し、前進接触角値の低いコーティング皮膜が得られていることがわかる。

Claims (4)

  1. ホスホリルコリン類似基含有単量体に基づく式(1)で示される構成単位U1と、多環式芳香族基含有ビニル単量体に基づく式(2)で示される構成単位U2とを含み、U1とU2とのモル比が1〜99:99〜1であり、かつ重量平均分子量が1000〜1000000であるホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体。
    Figure 0005043501
    (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基又はアルキレンオキシ基を示す。pは0又は1、qは1〜4の整数である。式(2)中、Lは多環式芳香族基を示す。)
  2. 式(2)で示される各構成単位U2中のLは同一でも異なっていても良く、かつ該Lで示される多環式芳香族基が、下記式で表される1−ナフタレン基、2−ナフタレン基、9−アントラセン基又は1−ピレン基からなる群より選択される、請求項1記載のホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体。
    Figure 0005043501
  3. 請求項1又は2記載のホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体を含む厚さ0.05〜1.0μmの膜。
  4. 請求項1又は2記載のホスホリルコリン類似基含有ランダム共重合体を含むコーティング皮膜を表面に有するフィルム又はシート。
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