しかしながら、上記従来の気相成長装置では、均熱板の周辺で、上記均熱板の移動の拘束が行われる。このような従来の気相成長装置では、気相成長時に均熱板が偏芯する。これにより、均熱板の温度分布が不均一になり、基板に対し均一に伝熱しがたくなる。そのため、基板に形成される膜の膜厚および膜質が不均一になるという問題が生じる。
均熱板の偏芯について以下に説明する。上記従来の気相成長装置では、気相成長を行う際、サセプタ103を回転させる。また、均熱板102は基板加熱用ヒーター105によって加熱されるため、均熱板102は膨張する。そのため、均熱板102は側面移動し、均熱板102の中心軸と気相成長部100の中心軸部分とにずれが生じるため、均熱板102は偏芯する。
上記偏芯によって、均熱板102の温度分布およびサセプタ103の回転の中心軸から均熱板102への径方向の距離にばらつきが生じるなどの要因によって、均熱板102の温度分布が非対称、すなわち、不均一となる。均熱板102の温度分布が不均一になることで、基板101に均一に伝熱しがたくなり基板101の温度分布が不均一になる。よって、基板101に施される膜の厚みおよび膜質が不均一になる。
なお、均熱板102の側面とサセプタ103との間の所定間隔は、均熱板102およびサセプタ103の高温域における線膨張係数に基づき設定されている。そのため、低温域では高温域の場合よりも、上記の所定間隔は大きくなり、均熱板102の可動範囲が大きくなる。そのため、低温域では高温域よりも、均熱板102は偏芯する。
また、上記特許文献1に記載の気相成長装置では、サセプタの開口部に基板をはめこみ、その上から基板とほぼ同径の均熱板が設置されている。上記均熱板は、基板の裏面に接触することによって保持されている。このとき、均熱板の面方向の移動は、均熱板の最外周部がサセプタの開口部の壁面に接触することで拘束される。
上記の気相成長装置では、上記間隔の範囲内で均熱板は面方向の移動が可能となる。均熱板が1枚の場合には基板加熱用ヒーター105による発熱分布やサセプタの回転の中心軸から均熱板が偏芯する。
また、基板が複数であり、それらの各々に対して均熱板が複数設置されている場合には、基板加熱機構による発熱分布やサセプタの回転の中心軸から各均熱板への径方向の距離が不均一になるため、均熱板の温度分布が非対称または不均一となり得る。上述のように、基板の温度分布が不均一の原因となり、基板上に成膜される膜の膜質が不均一となる。
さらに複数の温度域を用い気相成長を行う場合、均熱板とサセプタとの膨張量の差が小さい高温での膨張率に合わせ、上記間隔を設定する必要があるため、低い温度域では、均熱板とサセプタとの膨張量の差は大きく、均熱板の可動範囲が大きくなることが避けられない。このような場合、均熱板が広範囲で可動できるため、気相成長時、均熱板が偏芯し、均熱板の温度分布が不均一になる。
特許文献2に記載の気相成長装置では、均熱板の面内での移動拘束が凸部の側面でなされている場合には均熱板の可動範囲は、特許文献1に記載の気相成長装置の場合とほぼ同一と考えられ、また、面内移動拘束が最外周部で行われている場合にはむしろ、均熱板を拘束する径が大きくなるため、特許文献1に記載の気相成長装置の場合よりも可動範囲が広い。そのため、上記均熱板は面方向において、広範囲で移動可能であり、均熱板の偏芯が生じる。よって、均熱板の温度分布が不均一になり、基板上に施される膜の膜厚および膜質が不均一になる。
また、以上示したそれぞれ従来の気相成長装置では、均熱板は、その外周部で拘束されている。そのため、均熱板が面方向に移動し、その外周部がサセプタと接触することで、均熱板はその側面から冷却または加熱され得る。このように、均熱板が側面からも冷却または加熱されることによって、均熱板の温度分布が不均一となる問題も生じ得る。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、均熱板の面方向の膨張に伴う移動を抑制することで、均熱板の偏芯を抑制することができ、均熱板の温度分布が不均一になることを防止することが可能な気相成長装置および気相成長方法を提供することにある。
上記従来の気相成長装置では、均熱板の外周部で均熱板の拘束が行われている。均熱板の外周部以外、例えば、均熱板の中心軸近傍にて、均熱板の拘束が行われていないことについては、以下の2つの理由が考えられる。
(1)均熱板の中心軸近傍で均熱板の移動拘束を行う場合、均熱板の外周部以外に、移動拘束のための構造を設ける必要がある。しかしながら、その場合、均熱板の厚みが部分的に不均一になり、均熱板の温度分布が不均一になることが予想される。
(2)また、従来の気相成長装置では、基板加熱用ヒーターによって、均熱板を加熱しているが、均熱板に移動拘束のための構造を設けた場合、サセプタにも均熱板を移動拘束するための構造を設ける必要性が生じ得る。そのため、基板と基板加熱用ヒーターとの間にサセプタが位置するため、均熱板の温度分布が不均一になる要因となることが予想される。
上記(1)・(2)の理由から、従来の気相成長装置では、均熱板の移動拘束は、均熱板の外周部で行われていたと考えられる。
発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討することによって本発明を見出した。すなわち、本発明に係る気相成長装置は、上記課題を解決するために、気相成長を施す基板を加熱するための基板加熱機構と、基板加熱機構から照射される熱を、基板に均一に伝熱するための均熱板と、上記均熱板を保持するための保持台とが備えられている気相成長装置であって、上記均熱板と保持台との接触面かつ、上記均熱板の中心軸近傍で、上記均熱板の面方向の移動を拘束するための移動拘束手段を備えることを特徴としている。
上記の発明によれば、上記均熱板および保持台は、上記均熱板と保持台との接触面かつ、上記均熱板の中心軸近傍で、上記均熱板の面方向の移動を拘束するための移動拘束手段を備えるため、気相成長時、上記均熱板はその面方向の移動が抑制される。そのため、上記均熱板が偏芯することを抑制でき、均熱板の温度分布が不均一になることを抑制できる。
このように、上記の発明によれば、従来均熱板の拘束を行えないとされてきた、均熱板の中心軸近傍で均熱板の偏芯を抑制し、均熱板の温度分布をより均一にすることができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記移動拘束手段は、均熱板および保持台のそれぞれに備えられていることが好ましい。
これにより、上記均熱板と上記保持台を用いて均熱板の面方向の移動を拘束することができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記移動拘束手段は互いに嵌合されていることが好ましい。
これにより、均熱板および保持台に備えられた移動拘束手段同士が互いに嵌合されることで、均熱板の面方向の移動を拘束することができる。
また、上記移動拘束手段は複数であり、それぞれが凸部および開口部、または凸部および凹部のいずれか一方を含むことが好ましい。
これにより、凸部および開口部、または、凸部および凹部の嵌合によって、均熱板の移動拘束を行うため、均熱板および保持台に複雑な構造を施すことなく、均熱板の面方向の移動を拘束することができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記凸部は、均熱板に形成され、上記凹部または開口部は、保持台に形成されていることが好ましい。
これにより、保持台の加工性が低い場合、保持台には凹部または開口部を形成することのみで上記保持台を作成でき、保持台の加工量を低減することが可能である。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記凸部が、上記均熱板とは別個の部材からなる構成にすることができる。
これにより、均熱板に除去加工を施すことによって凸部を形成するよりも、均熱板とは別個の部材を用いるほうが、低コストで凸部を形成することができる。また、これにより、気相成長装置の特性に応じて、上記凸部に均熱板と異なる部材を用いることができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記凹部または開口部は、均熱板に形成され、上記凸部は、保持台に形成されていることが好ましい。
これにより、均熱板の加工性が低い場合、均熱板には凹部を形成することのみで、上記均熱板を作成でき、保持台の加工量を低減することが可能である。
また、本発明の気相成長装置では、上記均熱板に設けられた移動拘束手段が、上記基板と反対側に形成されている構成にすることができる。
これにより、位置拘束手段が基板側に位置しないため、位置拘束手段と基板とが接触しない。このため、均熱板に設けられた移動拘束手段を、基板の全面に接触させることができる。したがって、位置拘束手段が基板と接触する場合よりも、より均一に基板を加熱することができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記保持台は、均熱板とともに、基板と均熱板との間で上記基板を保持するためのものである構成にすることができる。
これにより、保持台によって均熱板が隔離されるため、気相成長時に導入される導入ガスから、均熱板を保護することができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記均熱板および上記保持台は、温度上昇とともに上記凸部と凹部または開口部との隙間が小さくなるよう、線膨張係数を考慮して選択される材料からなることが好ましい。
これにより、高温域において上記の隙間が小さくなり、均熱板の面方向の可動範囲をより狭くすることができる。均熱板の可動範囲が狭くなることによって、均熱板がさらに偏芯し難くなる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記均熱板および上記保持台のそれぞれの材料が、温度上昇とともに上記凸部と凹部または開口部との寸法が変化しないよう、線膨張係数を考慮して選択されていることが好ましい。
これにより、常温域から高温域までの温度域で、均熱板の可動範囲を狭くすることができ、温度変化にかかわらず、均熱板の偏芯を抑制することができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、基板と重なる上記保持台の部分が、石英からなることが好ましい。
これにより、石英は輻射熱の透過率が高く、熱伝導率が低いため、例えば、もっぱら輻射熱によって上記基板を加熱する際、上記凸部、凹部または開口部が備えられていることによる熱伝導の影響を低減できる。よって、上記基板をさらに均一な温度に加熱することができる。また、保持台の石英からなる部分を容易に洗浄でき、かつ、安価で製造できる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記基板と接する上記保持台の部分が、サファイアからなることが好ましい。
これにより、サファイアは輻射熱を透過しやすく、高耐熱性を有するため、基板加熱機構によって効率良く基板を加熱することができ、高温域において上記凸部または凹部の変形を抑制することができる。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記均熱板を複数備えることが好ましい。
これにより、複数の均熱板の偏芯を抑制できる気相成長装置を提供することが可能である。
また、本発明に係る気相成長装置では、上記均熱板は、複数の基板に伝熱することが好ましい。
これにより、複数の基板に伝熱可能であり、均熱板の偏芯を抑制できる気相成長装置を提供することが可能である。
本発明に係る気相成長方法は、上記課題を解決するために、基板に気相成長を施す気相成長装置を用いる気相成長方法であって、上記気相成長装置は、気相成長を施す基板を加熱するための基板加熱機構と、基板加熱機構から照射される熱を、基板に均一に伝熱するための均熱板と、上記均熱板を保持するための保持台とを備えており、上記均熱板と上記保持台との接触面、かつ、上記均熱板の中心軸近傍で、上記均熱板の面方向の移動拘束を行うことを特徴としている。
上記の構成によれば、上記均熱板の面方向の移動を抑制することができる。そのため、上記均熱板が偏芯することを防止することができ、均熱板の温度分布が不均一になることを抑制することができる。
本発明に係る気相成長装置および気相成長方法は、以上のように、上記均熱板と保持台との接触面かつ、上記均熱板の中心軸近傍で、上記均熱板の面方向の移動を拘束するための移動拘束手段を備えるものである。
それゆえ、上記均熱板の面方向における移動を抑制し、均熱板の偏芯を抑制することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1ないし図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1は、本実施の形態に係る横フロー型気相成長装置90の模式的断面図である。図1に示す横フロー型気相成長装置90は、フェイスアップ型であり、反応管11によって全体的な形状が形成されている。また、反応管11には、原料ガスおよびキャリアガス等の導入ガス14を導入するためのガス導入口12と、導入ガス14を排気するための排気口13とが備えられている。
また、横フロー型気相成長装置90には、気相成長部10が備えられている。気相成長部10は、気相成長を施すための基板1、保持台であるサセプタ3等が備えらており、上記ガス導入口12から導入ガス14が導入され、導入ガス14に含まれる原料ガスが、基板1において、気相反応することで結晶膜が成長する。なお、気相成長部10の詳細については、図3を用いて後に説明する。
図2は、図1の横フロー型気相成長装置90についてのA−A断面方向から気相成長部10を示す模式的断面図である。図2において、基板1は円形であり、サセプタ3はリング状であることが示されている。
図3に基づき気相成長部10について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る気相成長部10の模式的断面図である。説明の便宜上、基板1側を上面とし、基板加熱用ヒーター5側を下面とする。気相成長部10には、均熱板2の上面に基板1が設置されており、上記均熱板2は保持台であるサセプタ3によって下面が保持されている。また、均熱板2の上面は保持台である天板4によって保持されており、均熱板2はその面方向に対し垂直方向に移動しない構成となっている。
上記サセプタ3の下方には、均熱板2を加熱することによって基板1を加熱するための基板加熱機構である基板加熱用ヒーター5が備えられている。さらに、均熱板2とサセプタ3との接触面において、均熱板2には移動拘束手段である凸部21が形成され、サセプタ3には移動拘束手段である開口部32が形成されている。上記移動拘束手段は、換言すれば、均熱板2の位置を拘束するものということができる。また、上記凸部21は換言すれば突起である。なお、上記凸部21と開口部32とは嵌合されている。
基板1は、結晶膜の成長が施される部材である。基板1は、成膜処理を施すことができればよい。気相成長部10では、基板1が1枚設置されているが、基板1は複数設置されていてもよい。基板1が複数設置された気相成長部については、図9および図10に基づき後述する。また、基板1の材料としては、単結晶サファイアを用いることができる。
均熱板2は基板加熱用ヒーター5の熱を、熱輻射または熱伝導によって基板1に均一に伝導するためのものである。気相成長部10では、均熱板2は1枚設置されているが、設置数は複数であってもよい。均熱板2が複数設置された気相成長部については図9および図10を用いて後述する。均熱板2は、均熱板2の中心軸近傍、かつ、均熱板2とサセプタ3との接触面において、サセプタ3と嵌合するための凸部21を有している。
均熱板2は、輻射熱(輻射光)の透過率が高い材料で構成されていることが好ましい。例えば、石英、サファイア、黒鉛または窒化珪素を用いることができる。上記の材料を用いた場合、輻射熱によって、均熱板2および基板1を効率的に加熱することができる。
均熱板2は、輻射熱(輻射光)の透過率が低く、熱吸収率(熱放射率)が高く、熱伝導率の高い材料で構成されていることが好ましい。例えば、黒鉛または炭化珪素を用いることができる。上記の材料を用いた場合、輻射熱によって、均熱板2および基板1を効率的に加熱することができる。
均熱板2の中心軸近傍とは、均熱板2の中心軸を含む。すなわち、上記均熱板2とサセプタ3との接触面において、移動拘束手段である凸部21および開口部32が形成されていることによって、均熱板2の面方向における移動を拘束し、均熱板2の偏芯を抑制することができる範囲をいう。
サセプタ3は、均熱板2を保持するものである。サセプタ3は、均熱板2と基板加熱用ヒーター5との間に設置されている。サセプタ3は、ザグリ部分を有し、その位置に均熱板2が設置されている。サセプタ3は、基板加熱用ヒーター5による輻射熱の伝達を妨げないよう輻射熱の透過率が高い材料で構成されていることが好ましい。
また、基板1または均熱板2から熱が伝導することによって、基板1の温度が低下する可能性があるので、サセプタ3の材料としては、熱伝導率の低い材料で構成されていることが好ましい。例えば、輻射熱の透過率が高い材料として石英、サファイアを挙げることができる。また、熱伝導率の低い材料としては、石英を挙げることができる。
一例として、基板1と重なるサセプタ3の部分の材料が石英とする構成とすることができる。石英は輻射熱を透過しやすいことに加え、耐熱性を有し、熱伝導性が低い。これにより、例えば、もっぱら輻射熱によって上記基板1を加熱する際、凸部21、開口部32が備えられていることによる熱伝導の影響を低減できる。よって、上記基板1をさらに均一な温度に加熱することができる。また、サセプタ3の石英からなる部分を容易に洗浄でき、かつ、安価で製造できる。
また、基板1と接するサセプタ3の部分が、サファイアである構成とすることができる。サファイアは、輻射熱の透過率が高く、高耐熱性を有するため、サセプタ3が基板1の加熱をほとんど妨げることがない。これにより、効率良く基板1を加熱することができ、高温域において開口部32の変形を抑制することができる。なお、高温域とは開口部32等が変形を起こしやすい温度であり、例えば、600℃〜1100℃の範囲の温度域を示すものである。
また、均熱板2の加熱を妨げないよう、サセプタ3のザグリ部分における底板の厚みは、できる限り薄いことが好ましい。サセプタ3の材料として石英を用いた場合、上記底板の厚みが、1.0mm以下であれば、サセプタ3による伝熱の妨げを無視できる量に抑えることができる。
また、サセプタ3は、図示しない回転機構によって自転または公転することが可能となっている。気相成長を行う際、結晶膜の原料ガスは、気相成長部10に一方向から導入される。サセプタ3が回転することによって、原料ガスの温度分布および濃度分布が不均一になることを緩和でき、より均一な膜質および膜質の膜を基板1に施すことができる。
サセプタ3は、均熱板2の中心軸近傍、かつ、均熱板2とサセプタ3との接触面において、均熱板2と嵌合するための開口部32を有している。サセプタ3は、均熱板2の面方向における移動拘束手段を備えていればよいため、例えば、開口部32ではなく凹部を備えていてもよい。上記開口部32は換言すれば穴であり、上記凹部は換言すれば窪みであるともいえる。
サセプタ3が回転することによって、均熱板2がその面方向に移動したとしても、凸部21と開口部32とが嵌合しているため、均熱板2は開口部32と凸部21との寸法の差の範囲でしか移動しない。そのため、均熱板2は、その面方向でほとんど移動せず、均熱板2が偏芯することを抑制することができる。均熱板2の側面におけるサセプタ3との間隔については、後述する。
上記の凸部21は凸形状であるが、その形状は、均熱板2とサセプタ3とが嵌合する形状であればよい。例えば、その断面形状は円形形状に限定されず、四角形状など、多角形で構成される形状であってもよい。また、上記凸部21の形状は、均熱板2の軸方向に一定でなくともよく、錐形状または球形状であってもよい。さらに、サセプタ3に凸部21が形成されている場合、均熱板2に凹部が形成されていてもよい。また、図3において、凸部21は均熱板2と一体となっているが、凸部21が別個の部材からなっていてもよい。上記別個の部材を用いる形態については、図5を用いて後述する。
気相成長部10において、凸部21および開口部32はそれぞれ1箇所に形成されているが、この箇所数に限定されるものではない。均熱板2とサセプタ3とが嵌合することが可能ならば、複数箇所に形成されていてもよい。複数箇所に設置されることで、均熱板2の面方向の移動をより拘束することができ、それゆえ均熱板2の偏芯をより抑制することができる。
天板4は、均熱板2の面方向に対し垂直な方向おける均熱板2の移動を拘束し、かつ、基板1の表面とサセプタ3との高さを調整するためのものである。気相成長部10では、均熱板2はサセプタ3と天板4とによって挟まれ、保持されている。
基板加熱用ヒーター5は、均熱板2を加熱し、基板1を加熱するための加熱源であり、図示しないが駆動軸を介して保持されている。基板加熱用ヒーター5は、均熱板2を輻射加熱し、均熱板2を介して、基板1を所望の温度まで昇温することができるようになっている。
次に、気相成長部10における凸部21と開口部32との寸法について説明する。均熱板2および凸部21の材料は黒鉛であり、サセプタ3および天板4の材料は石英で構成されている。上記の材料は適宜変更可能である。基板加熱用ヒーター5により、均熱板2を加熱することで、基板1を加熱することによって、基板1の温度上昇に伴い均熱板2および凸部21は膨張する。ここで、均熱板2の外径の膨張量に比して凸部21の膨張量は十分に小さい。
また、基板加熱用ヒーター5によって加熱されることによって、サセプタ3および開口部32も膨張するが、サセプタ3の外径の膨張量に比して、開口部32の膨張量は十分に小さい。また、凸部21の外径の膨張量は、開口部32の膨張量に比して大きいが、気相成長部10を使用する最高温度下において、凸部21と開口部32との間には径方向の間隔が残されるよう、あらかじめそれぞれの寸法が設定され、製作されている。均熱板2は、凸部21と開口部32との間隔の寸法の範囲で面方向に移動可能となるが、その膨張量は、均熱板2の外径で均熱板2を拘束する場合に比して十分に小さい。これらの具体的な数値については、後述する。
以上により、低温域から高温域にわたって、均熱板2は所定の位置から大きく偏芯することがなく、その面方向に不均一な温度分布を生じることがない。それゆえ、基板1では、均一な温度分布が得られ、結晶膜を均一な厚みおよび膜質で成長させることができる。なお、凸部21および開口部32の寸法が十分に小さければ、凸部21および開口部32の有無で基板1の温度分布に与える影響はほぼ無視できる。
以下に、均熱板2の側面部分とサセプタ3との間の間隔および均熱板2の面方向における可動範囲について具体的に説明する。
まず、気相成長部10の昇温時に均熱板2とサセプタ3とが常に同一温度であると仮定すれば、均熱板2の可動範囲は、使用する最高温域において、以下の式(1)における左辺のように、表すことができる。
DS×(1+αS×TH)−DF×(1+αF×TH)=0・・・式(1)
上記式(1)において、DSはサセプタ3のザグリ径、DFは、均熱板2の凸部または凹部の径、αSはサセプタ3の線膨張係数、αFは均熱板2の線膨張係数、THは室温からの使用する最高の温度上昇値を示す。上記の式(1)を満たすよう、DSおよびDFを設定すれば使用する最高温度において均熱板2を完全に拘束できる。
しかし、必ず均熱板2の外径がサセプタ3の内径より小さくなるよう間隔を設定し、サセプタ3のザグリ径をA倍だけ大きく作成するとすれば可動範囲は、以下に示す式(2)のように表すことができる。
A×DS×(1+αS×TH)−DF×(1+αF×TH)・・・式(2)
式(1)を式(2)に用いることで、式(2)で示される高温時での可動範囲は、以下に示す式(3)のように表される。
(A−1)×Dv×(1+αS×TH)・・・式(3)
また、それよりも低い、低温時での可動範囲は、以下に示す式(4)のように表すことができる。
A×DS×(1+αS×TL)−DF×(1+αF×TL)・・・式(4)
上記式(4)において、TLは室温からの温度上昇値を示す。上記の式(2)および式(4)から、温度低下による可動範囲の増加量は、以下に示す式(5)のように表される。
−A×DS×αS×(TH−TL)+DF×αF×(TH−TL)=−(A×DS×αS−DF×αF)×(TH−TL) ・・・式(5)
さらに、上記式(5)および式(1)から、THからTLへ温度低下した際の可動範囲の増加量は、以下に示す式(6)のように表すことができる
−{A×αS−(1+αS×TH)/(1+αF×TH)×αF}×DS×(TH−TL) ・・・(6)
ここで、線膨張係数αは材料に固有の数値であり、成長温度Tは所定の膜質を得るための成長条件から均熱板の偏芯とは無関係に設定されるものである。また、AとDとは設計時に任意に設定可能なパラメータである。そのため、上記式(6)で、−{A×αS−(1+αS×TH)/(1+αF×TH)×αF}は一定条件下で定数である。
以上より、Aを1に近い値に設定すれば、使用する温度域が単一の場合は式(3)において可動範囲を十分に小さくすることができるが、使用する温度域がいくつかある場合は式(6)より低温域において可動範囲の増大を抑制できない。式(3)および(6)において可動範囲はサセプタ3のザグリ径であるDSに比例するから、これを十分に小さく設定すれば均熱板2の面内移動をさらに抑制することができ、均熱板2がその側面でサセプタ3と接触することを防止でき、均熱板2がその側面から冷却または加熱されることによって、基板1の温度分布が不均一になることを抑制することができる。
例えば、凸部21および開口部32の寸法を、上記基板1の外形寸法の10分の1以下とすることができる。これにより、基板1の外径寸法に対し、凸部21および開口部32の寸法の比を十分に小さくすることができる。その結果、凸部21および開口部32が基板1の温度分布に影響を与えることをさらに抑制することができる。また、均熱板2がその側面でサセプタ3と接触することを防止でき、均熱板2がその側面から冷却または加熱されることによって、温度分布が不均一になることを防止することができる。
気相成長部10では、均熱板2の面方向の移動を拘束するため、均熱板2の中心軸近傍に凸部21を有し、また、均熱板2の中心軸近傍に開口部32を有している。そのため、ザグリ径DSに相当する凸部21および開口部32の径を、均熱板2の外形よりも十分に小さく設定することが可能となる。その結果、複数の温度域を使用する成膜サイクルにおいて、均熱板2の面方向の移動を抑制し、偏芯を防止することができる。
次に、図3および図11において均熱板2および均熱板102を黒鉛、サセプタ3およびサセプタ103を石英で製造した場合における均熱板2および均熱板102の偏芯量について説明する。両材料の代表的な膨張係数は、石英について5.5E−07[1/K]を、黒鉛について4E−06[1/K]を用いる。また、均熱板2および均熱板102並びにサセプタ3およびサセプタ103の温度は同一で、かつ、素子成長条件下で均熱板2および均熱板102並びにサセプタ3およびサセプタ103の温度は、最高で1000℃、最低で600℃であるとする。
まず、図11に示す気相成長部100では、均熱板102の面方向の移動を、均熱板102の外周部で拘束している。常温でのサセプタ103の内径が100mmの場合、常温から1000℃温度上昇したときの、サセプタ103の内径は、100.056mmとなる。
このとき均熱板102の外径がこのサセプタ103の内径と一致するためには、常温での均熱板102の外径を99.66mmとしておけばよい。しかし、この構成では、均熱板102サセプタ103との間に隙間がほとんどないため、実際には設計温度と実際の温度との相違や、各部材の加工精度等を考慮して、サセプタ103の内径は余裕をもって製作しておく必要がある。
例えば、サセプタ103の内径を1%大きい101mm程度に設定する。すなわち、1000℃での均熱板102可動範囲はおよそこの余裕分の1mmとなる。素子成長における最低温度条件の600℃では、均熱板102のほうが、サセプタ103よりも外径が小さくなるため、およそ1.137mmとなり、均熱板102の可動範囲はより大きくなる。
次に、図3の気相成長部10について、均熱板2の偏芯量について説明する。まず、気相成長部100と同様に、常温でのサセプタ3の内径を101mm、均熱板2の外径を99.66mmに設定する。さらに、常温での開口部32の内径を2mmに設定し、サセプタ103の内径と同様に余裕をもって1%大きく製作すれば2.020mmとなる。均熱板102の外形と同様に最適な凸部21の外径を求めれば、常温で1.993mmとなる。
上記の気相成長部10の設定条件では、1000℃での均熱板2の可動範囲は0.020mmである。また、600℃では、均熱板2のほうが、サセプタ3よりも外径が小さいため、均熱板2の可動範囲はやや大きいが、およそ0.023mmである。
上述した均熱板の偏芯量についての比較結果から、気相成長部100のように均熱板102の外周部で均熱板102を拘束する場合に比して、凸部21を有する均熱板2および開口部32を有するサセプタ3によって均熱板2の移動拘束を行う気相成長部10では、均熱板2の偏芯量(可動範囲)は十分に小さい。そのため、均熱板2が偏芯することによって、均熱板2の温度分布が不均一になることを抑制できる。すなわち、均熱板2に加熱される基板1の温度分布が不均一になることを抑制できるため、基板1に形成される膜の膜質および膜厚が不均一になることを抑制することができる。
また、黒鉛の方が石英よりもその膨張係数は高いため、凸部21と開口部32との間隔は、温度上昇にともない小さくなる。そのため、温度が上昇するにともない均熱板2の可動範囲を狭くすることができ、均熱板の偏芯抑制することができる。すなわち、均熱板2の可動範囲が狭くなることによって、均熱板2がさらに偏芯し難くなる。
また、図3において、均熱板2および凸部21を黒鉛、サセプタ3を窒化珪素で製造した場合には、窒化珪素の膨張係数は3E−06[1/K]であるため、上記凸部21および開口部32の寸法はほとんど変化しない。これにより、常温域から高温域までの温度域で、均熱板の可動範囲を狭くすることができ、温度変化にかかわらず、均熱板の偏芯抑制することができる。
次に、横フロー型気相成長装置90を用いて気相成長を施す際の動作を、図1に基づき具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施の形態に係る気相成長方法は、気相成長を行うに際し、横フロー型気相成長装置90が備える均熱板2とサセプタ3との接触面かつ、上記均熱板2の中心軸近傍で、均熱板2の面方向における移動拘束を行う均熱板移動拘束工程を含む気相成長方法である。
まず、横フロー型気相成長装置90において、保持台であるサセプタ3を回転するとともに均熱板2を介し基板1が加熱される。サセプタ3の回転は、図示しない回転機構によって行う。回転は、自転もしくは公転またはその両方を伴うものであってもよい。また、ガス導入口12から、導入ガス14が導入される。導入ガス14は、基板1にて気相反応を終えた後には、排気口13から排気される。
本実施の形態に係る気相成長方法では、基板1において気相成長を施す際に、上記均熱板移動拘束工程を含むため、均熱板2の偏芯を抑制できる。すなわち、基板1の温度分布が不均一になることを抑制でき、均一な膜厚および膜質の結晶膜を得ることができる。
上記均熱板移動拘束工程は、均熱板2の中心軸近傍、かつ、均熱板2とサセプタ3との接触面において、均熱板2が凸部21を有し、サセプタ3が開口部32を有し、上記凸部21とサセプタ3とが嵌合し、均熱板2を移動拘束することでなされる。これにより、均熱板2の面方向における移動が拘束され、均熱板2の偏芯を抑制することができる。
図4〜10に基づき本実施の形態に係る気相成長部のバリエーションについて説明する。なお、説明の便宜上、図3に示す気相成長部10で用いた部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図4に基づき均熱板およびサセプタの形態について説明する。図4は本実施の形態に係る気相成長部20を示す模式的断面図である。気相成長部20において、均熱板2aには凹部22が形成され、サセプタ3には、均熱板2と嵌合できるよう凸部31が形成されている。均熱板2には、凹部22が形成され、その加工部分は凹形状の部分のみである。凸部を形成する場合のように凸形状の均熱板2の部分を除去加工する必要がないため、均熱板2の加工性が低い場合に好ましく気相成長部20を用いることができる。
また、図5に基づき他の均熱板の形態について説明する。図5は本実施の形態に係る気相成長部30を示す模式的断面図である。図5に示すように、均熱板2bには、移動拘束ピン21aが形成されている。移動拘束ピン21aは均熱板2bと別個の部材であり、均熱板2bにはめ込まれている。また、サセプタ3には、移動拘束ピン21aと嵌合される開口部32が形成されている。
例えば、図3に示す凸部21を有する均熱板2を製造するためには、凸部21の周囲を除去する加工が必要となる。一方、移動拘束ピン21aを有する均熱板2bを製造する工程においてはそのような工程は不要である。そのため、均熱板をより容易に製造することが可能となる。なお、均熱板2bと移動拘束ピン21aとは、同材料であっても、異なる材料からなっていてもよい。同材料からなっている場合、両部材の膨張率は同一であるから、温度変化に対して両部部材の構造が変化し難い。
また、図6に基づき他の天板4の形態について説明する。図6は本実施の形態に係る気相成長部40を示す模式的断面図である。図6に示す気相成長部40では、天板4aにはザグリ部分が形成され、そのザグリ部分に基板1が位置している。また、均熱板2と天板4aとは対向しており、均熱板2と保持台である天板4との接触面、かつ、均熱板2の中心軸近傍において、均熱板2は凸部21を有しており、天板4aは開口部42を有している。上記凸部21および開口部42とは嵌合している。均熱板2は、サセプタ3bによって、均熱板2の外周部分が保持されている。
上記の構成において、均熱板2は、基板加熱用ヒーター5から直接、効率良く輻射を受け昇温する。上記天板4aのザグリ部分における底板は非常に薄いため、均熱板2から基板1への伝熱をほとんど妨げない。そのため、均熱板2から基板1へ十分な熱量を伝熱することができる。天板4aの材料が石英である場合、上記ザグリ部分における底板の厚みは、1.0mm以下であることが好ましい。下限値については、可能限り薄いことが好ましいが、加工精度と加熱時の変化を考慮した厚み以上が必要となる。これにより、均熱板2から基板1へ十分な熱量が伝熱され得る。
また、天板4aのザグリ部分によって均熱板2は、気相成長時に原料ガスなどの導入ガスから隔離される。これにより、均熱板2に対し導入ガスが何らかの反応性を起こすとしても、均熱板2は影響を受けにくい。
また、図7に基づき気相成長部50について説明する。図7は本実施の形態に係る気相成長部50を示す模式的断面図である。図7に示すように、気相成長部50はフェイスダウン型であり、図3に示す気相成長部10を鉛直下向きに配置し、基板1を保持するためのリング状突起4bがさらに設けられた構成となっている。天板4によって均熱板2の外周部が保持されているように、リング状突起4bによって、基板1の外周部が保持されている。リング状突起4bは、基板1の外周部の全面を保持するものに限られず、ツメ状の突起を用いてもよい。ツメ状の突起を用いる場合には、その設置箇所および設置数については、基板1を保持することができるよう適宜変更すればよい。なお、凸部21および開口部32の構成については、気相成長部10と同様である。
また、図8に基づき気相成長部60について説明する。図8は本実施の形態に係る気相成長部60を示す模式的断面図である。気相成長部60は、フェイスダウン型であり、気相成長部60の下部に基板1が配置されている。また、天板4には基板1を保持するためのリング状突起4bが形成されている。さらに、サセプタ3はザグリ部分を有しており、ザグリ部分の上に均熱板2が配置されている。凸部21および開口部32の構造については、図3に示す気相成長部10と同様である。
また、図9に基づき気相成長部70について説明する。図9は、本実施の形態に係る気相成長部70を示す模式的断面図である。気相成長部70では、均熱板2は2箇所備えられており、基板1がそれぞれの均熱板2の上に配置されている。気相成長部70では、複数の基板1に伝熱可能であり、均熱板2の偏芯を抑制することが可能である。また、基板1および均熱板2の設置箇所は、2箇所に限られず3箇所以上であってもよい。
また、図10に基づき気相成長部80について説明する。図10は、本実施の形態に係る気相成長部80を示す模式的断面図である。気相成長部80では、均熱板2に対し2箇所に基板1が設置されている。上記構成により、気相成長部80は、均熱板2を複数箇所用いずとも、複数の基板1に気相成長を施すことができ、均熱板2の偏芯を抑制可能である。また、基板1の設置箇所は、2箇所に限られず3箇所以上であってももちろんよい。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。