以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
1. 概要
本発明の例では、スピン注入書き込みにより、スピンFETのソース領域とドレイン領域の磁性体の一方の磁化方向を変化させると共に、さらに、磁化方向を変化させるに当たって、磁場を磁化反転のアシストとして使用する。
磁化反転のアシストとして使用する磁場は、磁化方向を変化させる磁性体の磁化困難軸方向(direction of hard magnetization)に作用させる。
また、この磁場は、磁場書き込みのように、書き込み線に電流を流すことにより発生させるのではなく、スピン偏極電子を発生させるためのスピン注入電流により発生する磁場を利用する。
これにより、トランジスタ構造を複雑にすることなく、ソース領域とドレイン領域の磁性体の相対的な磁化方向を小さな電流密度で制御できる。
2. 実施の形態
次に、最良と思われるいくつかの実施の形態について説明する。
(1) 第1実施の形態
図1は、第1実施の形態のスピンFETを示している。
半導体基板11内には、例えば、STI(shallow trench isolation)構造の素子分離絶縁層12が形成される。素子分離絶縁層12に取り囲まれた素子領域内にスピンFETが形成される。
スピンFETは、半導体基板11の凹部に埋め込まれたソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14を有する。強磁性層14上には、非磁性層15が形成され、非磁性層15上には、強磁性層16が形成される。
強磁性層13,16は、その磁化方向が固定され、ピンド層(磁気固着層)として機能する。本例では、強磁性層13,16の磁化は、共に、紙面を表から裏に突き抜ける方向に固定されるが、その反対方向に固定されてもよいし、強磁性層13,16の磁化が互いに異なる方向に固定されてもよい。
強磁性層14は、その磁化方向が可変であり、フリー層(磁気記録層)として機能する。強磁性層14の残留磁化の磁化方向は、紙面に垂直な方向である。
強磁性層14の残留磁化が紙面を表から裏に突き抜ける方向を向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに同じ向きとなる。この状態が平行(parallel)であり、平行状態のときのスピンFETのオン抵抗は、低くなる。
強磁性層14の残留磁化が紙面を裏から表に突き抜ける方向を向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに反対向きとなる。この状態が反平行(anti-parallel)であり、反平行状態のときのスピンFETのオン抵抗は、高くなる。
強磁性層13,14間のチャネル上には、ゲート絶縁層17が形成され、ゲート絶縁層17上には、ゲート電極18が形成される。ゲート電極18の側壁(side-wall)上には、スペーサとしての絶縁層19が形成される。
強磁性層13,14上及びゲート電極18上には、それぞれ、保護層としての機能を備えた導電層20,21,22が形成される。
導電層20上には、コンタクトプラグ23が形成され、コンタクトプラグ23上には、導電線24が形成される。また、導電層21上には、コンタクトプラグ25が形成され、コンタクトプラグ25上には、導電線26が形成される。導電線26の上面及び側面は、磁力線を収束する機能を有するヨーク(yoke)層27に覆われる。
ここで、本例では、強磁性層14の磁化容易軸(axis of easy magnetization)は、紙面に垂直な方向であるため、導電線26は、強磁性層14の磁化容易軸方向(direction of easy magnetization)に延ばす。これにより、強磁性層14の磁化を反転させるときに導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haは、チャネル長方向、即ち、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面に平行な方向)に作用する。
このような構造によれば、導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haがスピン注入書き込みをアシストするため、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
尚、ヨーク層27は、省略してもよい。但し、ヨーク層27が存在する場合のほうが存在しない場合よりもスピン注入電流の低電流化には有効である。
次に、スピン注入電流の経路について検討する。
図2は、スピンFETのチャネルにスピン注入電流を流す例である。
この場合、強磁性層14の磁化方向を制御するために、スピンFETのチャネルに流れるスピン注入電流Isの向きを可変としなければならない。
従って、スピンFETに、書き込みのためのドライバ/シンカーを接続する必要がある。
本例では、導電線24に、直列接続されたPチャネルMOSFET PB及びNチャネルMOSFET NAからなるドライバ/シンカーを接続し、導電線26に、直列接続されたPチャネルMOSFET PA及びNチャネルMOSFET NBからなるドライバ/シンカーを接続する。
また、強磁性層13の磁化方向と強磁性層16の磁化方向とは、互いに反対向きとなるように固定する。
本例では、強磁性層13の磁化は、紙面を表から裏に突き抜ける方向に固定し、強磁性層16の磁化は、紙面を裏から表に突き抜ける方向に固定する。
そして、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して平行にする場合、制御信号A,bBを“H”にし、制御信号bA,Bを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PAからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NAに向かって流れる。
このため、強磁性層13において紙面を表から裏に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。また、紙面を表から裏に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層16において反射され、さらに、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面上を左から右に向かう方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して同じ向き(平行状態)になる。
また、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して反平行にする場合、制御信号bA,Bを“H”にし、制御信号A,bBを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PBからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NBに向かって流れる。
このため、強磁性層16において紙面を裏から表に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。また、紙面を裏から表に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層13において反射され、さらに、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面上を右から左に向かう方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して反対向き(反平行状態)になる。
図3は、スピンFETのチャネルにスピン注入電流を流さない例である。
スピンFETをロジック回路に使用する場合、通常、スピンFETのチャネルに流れる電流の向きは固定される。例えば、インバータの“H”を出力するトランジスタについてみると、チャネルを流れる電流の向きは、常に、電源端子から出力端子に向かう方向となる。
そこで、スピンFETのチャネルをスピン注入電流の経路から外し、スピンFETのチャネルを流れる電流の向きを固定する。
この場合、強磁性層14の磁化方向を制御するためのドライバ/シンカーは、強磁性層14と導電線26とにそれぞれ接続する。
本例では、強磁性層14に、直列接続されたPチャネルMOSFET PB及びNチャネルMOSFET NAからなるドライバ/シンカーを接続し、導電線26に、直列接続されたPチャネルMOSFET PA及びNチャネルMOSFET NBからなるドライバ/シンカーを接続する。
また、強磁性層16の磁化は、例えば、紙面を表から裏に突き抜ける方向に固定する。
本例では、スピン注入電流IsがスピンFETのチャネルを流れないため、強磁性層13,16の相対的な磁化方向に制限はない。
本例では、強磁性層13,16の磁化は、共に、紙面を表から裏に突き抜ける方向に固定しているが、強磁性層13の磁化方向は、強磁性層16の磁化方向と同じであっても、異なっていても、どちらでも構わない。
そして、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して平行にする場合、制御信号bA,Bを“H”にし、制御信号A,bBを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PBから強磁性層14を経由してNチャネルMOSFET NBに向かって流れる。
このため、強磁性層16において紙面を表から裏に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面上を右から左に向かう方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層16の磁化方向に対して同じ向きになる。つまり、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対しても同じ向き(平行)になる。
また、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して反平行にする場合、制御信号A,bBを“H”にし、制御信号bA,Bを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PAから強磁性層14を経由してNチャネルMOSFET NAに向かって流れる。
このため、紙面を裏から表に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層16において反射され、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面上を左から右に向かう方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層16の磁化方向に対して反対向きになる。つまり、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対しても反対向き(反平行)になる。
次に、図1のスピンFETの製造方法を説明する。
まず、半導体基板11に対して不純物のイオン注入(チャネルインプラ)とアニールを行い、スピンFETのチャネルを形成する。チャネルは、イオン注入に代えて、変調ドープを用いたヘテロ界面成長プロセスにより形成してもよい。また、チャネルは、超格子構造を利用してもよい。
チャネルタイプとしては、エンハンスメント及びデプリーションのいずれであっても構わない。
次に、ゲート絶縁層17及びゲート電極18を形成する。また、半導体基板1をエッチングして凹部を形成し、この凹部内にソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14を形成する。さらに、強磁性層14上に、非磁性層15及び強磁性層16を形成する。
次に、ゲート電極18の側壁上に絶縁層19を形成する。また、強磁性層13,14上及びゲート電極18上に、それぞれ、保護層としての機能を備えた導電層20,21,22を形成する。
この後、層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層にコンタクトホールを形成し、続けて、コンタクトホール内にコンタクトプラグ23,25及びその上に導電線24,26,27を形成する。
最後に、約1T (tesla)の一様な磁場中で、約270℃、約1時間のアニールを行い、強磁性層13,14,16に磁気異方性を付与する。
(2) 第2実施の形態
図4及び図5は、第2実施の形態のスピンFETを示している。
半導体基板11内には、例えば、STI構造の素子分離絶縁層12が形成される。素子分離絶縁層12に取り囲まれた素子領域内にスピンFETが形成される。
スピンFETは、半導体基板11の凹部に埋め込まれたソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14を有する。強磁性層14上には、非磁性層15が形成され、非磁性層15上には、強磁性層16が形成される。
強磁性層13,16は、その磁化方向が固定され、ピンド層(磁気固着層)として機能する。本例では、強磁性層13,16の磁化は、共に、紙面上を左から右に向かう方向に固定されるが、その反対方向に固定されてもよいし、強磁性層13,16の磁化が互いに異なる方向に固定されてもよい。
強磁性層14は、その磁化方向が可変であり、フリー層(磁気記録層)として機能する。強磁性層14の残留磁化の磁化方向は、紙面に平行な方向である。
強磁性層14の残留磁化が紙面上を左から右に向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに同じ向き(平行)となる。平行状態のときのスピンFETのオン抵抗は、低くなる。
強磁性層14の残留磁化が紙面上を右から左に向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに反対向き(反平行)となる。反平行状態のときのスピンFETのオン抵抗は、高くなる。
強磁性層13,14間のチャネル上には、ゲート絶縁層17が形成され、ゲート絶縁層17上には、ゲート電極18が形成される。ゲート電極18の側壁上には、スペーサとしての絶縁層19が形成される。
強磁性層13,14上及びゲート電極18上には、それぞれ、保護層としての機能を備えた導電層20,21,22が形成される。
導電層21上には、コンタクトプラグ25が形成され、コンタクトプラグ25上には、導電線26が形成される。導電線26の上面及び側面は、磁力線を収束する機能を有するヨーク層27に覆われる。導電線26上には、さらに、コンタクトプラグ28及び導電線29が形成される。
ここで、本例では、強磁性層14の磁化容易軸は、紙面に平行な方向であるため、導電線26は、強磁性層14の磁化容易軸方向(チャネル長方向)に延ばす。これにより、強磁性層14の磁化を反転させるときに導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haは、チャネル幅方向、即ち、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面に垂直な方向)に作用する。
このような構造によれば、導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haがスピン注入書き込みをアシストするため、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
尚、ヨーク層27は、省略してもよい。但し、ヨーク層27が存在する場合のほうが存在しない場合よりもスピン注入電流の低電流化には有効である。
次に、スピン注入電流の経路について検討する。
図6は、スピンFETのチャネルにスピン注入電流を流す例である。
この場合、第1実施の形態と同様に、強磁性層14の磁化方向を制御するために、スピンFETのチャネルに流れるスピン注入電流Isの向きを可変としなければならない。
そこで、本例では、導電層20に、直列接続されたPチャネルMOSFET PB及びNチャネルMOSFET NAからなるドライバ/シンカーを接続し、導電線26に、直列接続されたPチャネルMOSFET PA及びNチャネルMOSFET NBからなるドライバ/シンカーを接続する。
また、強磁性層13の磁化方向と強磁性層16の磁化方向とは、互いに反対向きとなるように固定する。
本例では、強磁性層13の磁化は、紙面上を左から右に向かう方向に固定し、強磁性層16の磁化は、紙面上を右から左に向かう方向に固定する。
そして、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して平行にする場合、制御信号A,bBを“H”にし、制御信号bA,Bを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PAからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NAに向かって流れる。
このため、強磁性層13において紙面上を左から右に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。また、紙面上を左から右に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層16において反射され、さらに、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面を表から裏に突き抜ける方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して同じ向き(平行状態)になる。
また、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して反平行にする場合、制御信号bA,Bを“H”にし、制御信号A,bBを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PBからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NBに向かって流れる。
このため、強磁性層16において紙面上を右から左に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。また、紙面上を右から左に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層13において反射され、さらに、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面を裏から表に突き抜ける方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して反対向き(反平行状態)になる。
図7は、スピンFETのチャネルにスピン注入電流を流さない例である。
第1実施の形態で説明したように、スピンFETをロジック回路に使用する場合、通常、スピンFETのチャネルに流れる電流の向きは固定される。
そこで、スピンFETのチャネルをスピン注入電流の経路から外し、スピンFETのチャネルを流れる電流の向きを固定する。
この場合、強磁性層14の磁化方向を制御するためのドライバ/シンカーは、強磁性層14と導電線26とにそれぞれ接続する。
本例では、強磁性層14に、直列接続されたPチャネルMOSFET PB及びNチャネルMOSFET NAからなるドライバ/シンカーを接続し、導電線26に、直列接続されたPチャネルMOSFET PA及びNチャネルMOSFET NBからなるドライバ/シンカーを接続する。
また、強磁性層16の磁化は、例えば、紙面上を左から右に向かう方向に固定する。
本例では、スピン注入電流IsがスピンFETのチャネルを流れないため、強磁性層13,16の相対的な磁化方向に制限はない。
本例では、強磁性層13,16の磁化は、共に、紙面上を左から右に向かう方向に固定しているが、強磁性層13の磁化方向は、強磁性層16の磁化方向と同じであっても、異なっていても、どちらでも構わない。
そして、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して平行にする場合、制御信号bA,Bを“H”にし、制御信号A,bBを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PBから強磁性層14を経由してNチャネルMOSFET NBに向かって流れる。
このため、強磁性層16において紙面上を左から右に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面を裏から表に突き抜ける方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層16の磁化方向に対して同じ向きになる。つまり、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対しても同じ向き(平行)になる。
また、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して反平行にする場合、制御信号A,bBを“H”にし、制御信号bA,Bを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PAから強磁性層14を経由してNチャネルMOSFET NAに向かって流れる。
このため、紙面上を右から左に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層16において反射され、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面を表から裏に突き抜ける方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層16の磁化方向に対して反対向きになる。つまり、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対しても反対向き(反平行)になる。
第2実施の形態のスピンFETのソース/ドレイン領域の残留磁化の磁化方向を第1実施の形態のそれと比べると、図8に示すようになる。
同図(a)は、第1実施の形態の構造に相当し、磁化容易軸は、チャネル幅方向を向くように設定される。また、同図(b)は、第2実施の形態の構造に相当し、磁化容易軸は、チャネル長方向を向くように設定される。
尚、図5及び図6のスピンFETの製造方法については、図1のスピンFETの製造方法と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
(3) 第3実施の形態
図9は、第3実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第1実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図1と同一部分には同じ符号を付してある。
図1のスピンFETと異なる点は、フリー層としての強磁性層14とピンド層としての強磁性層16との間に配置される非磁性層がトンネルバリア層30であることである。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(4) 第4実施の形態
図10は、第4実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第2実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図5と同一部分には同じ符号を付してある。
図5のスピンFETと異なる点は、フリー層としての強磁性層14とピンド層としての強磁性層16との間に配置される非磁性層がトンネルバリア層30であることである。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(5) 第5実施の形態
図11は、第5実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第1実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図1と同一部分には同じ符号を付してある。
図1のスピンFETと異なる点は、半導体基板11と、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14との間に、トンネルバリア層31,32が配置されていることである。
トンネルバリア層31,32は、半導体基板11と強磁性層13,14との間に生じる反応を防止する役割を果たすため、半導体基板11と強磁性層13,14との接合が良好になり、スピンFETの製造歩留まりが向上する。
また、トンネルバリア層31,32は、高いスピン偏極率で、キャリアをチャネルに移動させる機能を有するため、強磁性層13,14の相対的な磁化方向の変化に伴うコンダクタンスの変化率が大きくなる。
尚、本例では、トンネルバリア層31,32が強磁性層13,14側にそれぞれ配置されるが、実現すべきトランジスタの性能に応じて、いずれか一方のトンネルバリア層を省略してもよい。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(6) 第6実施の形態
図12は、第6実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第2実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図5と同一部分には同じ符号を付してある。
図5のスピンFETと異なる点は、半導体基板11と、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14との間に、トンネルバリア層31,32が配置されていることである。
トンネルバリア層31,32は、半導体基板11と強磁性層13,14との間に生じる反応を防止する役割を果たすため、半導体基板11と強磁性層13,14との接合が良好になり、スピンFETの製造歩留まりが向上する。
また、トンネルバリア層31,32は、高いスピン偏極率で、キャリアをチャネルに移動させる機能を有するため、強磁性層13,14の相対的な磁化方向の変化に伴うコンダクタンスの変化率が大きくなる。
尚、本例では、トンネルバリア層31,32が強磁性層13,14側にそれぞれ配置されるが、実現すべきトランジスタの性能に応じて、いずれか一方のトンネルバリア層を省略してもよい。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(7) 第7実施の形態
図13は、第7実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第1実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図1と同一部分には同じ符号を付してある。
図1のスピンFETと異なる点は、ピンド層としての強磁性層13,16の磁化方向を安定に固定する反強磁性層(anti-ferromagnetic layer: AF1, AF2)33,34が配置されていることである。
本例では、反強磁性層33,34は、それぞれ、強磁性層13,16直上に配置される。
反強磁性層33,34は、強磁性層13,16の磁化安定性を向上させる機能を有するため、スピンFETの安定動作が実現される。
尚、本例では、反強磁性層33,34が強磁性層13,14側にそれぞれ配置されるが、実現すべきトランジスタの性能に応じて、いずれか一方の反強磁性層を省略してもよい。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(8) 第8実施の形態
図14は、第8実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第2実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図5と同一部分には同じ符号を付してある。
図5のスピンFETと異なる点は、ピンド層としての強磁性層13,16の磁化方向を安定に固定する反強磁性層(anti-ferromagnetic layer: AF1, AF2)33,34が配置されていることである。
本例では、反強磁性層33,34は、それぞれ、強磁性層13,16直上に配置される。
反強磁性層33,34は、強磁性層13,16の磁化安定性を向上させる機能を有するため、スピンFETの安定動作が実現される。
尚、本例では、反強磁性層33,34が強磁性層13,14側にそれぞれ配置されるが、実現すべきトランジスタの性能に応じて、いずれか一方の反強磁性層を省略してもよい。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(9) 第9実施の形態
図15は、第9実施の形態のスピンFETを示している。
半導体基板11内には、例えば、STI構造の素子分離絶縁層12が形成される。素子分離絶縁層12に取り囲まれた素子領域内にスピンFETが形成される。スピンFETは、半導体基板11の凹部に埋め込まれたソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14を有する。
強磁性層13は、その磁化方向が固定され、ピンド層(磁気固着層)として機能する。本例では、強磁性層13の磁化は、紙面を裏から表に突き抜ける方向に固定されるが、その反対方向に固定されてもよい。
強磁性層14は、その磁化方向が可変であり、フリー層(磁気記録層)として機能する。強磁性層14の残留磁化の磁化方向は、紙面に垂直な方向である。
強磁性層14の残留磁化が紙面を裏から表に突き抜ける方向を向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに同じ向き(平行)となり、スピンFETのオン抵抗は、低くなる。
強磁性層14の残留磁化が紙面を表から裏に突き抜ける方向を向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに反対向き(反平行)となり、スピンFETのオン抵抗は、高くなる。
強磁性層13,14間のチャネル上には、ゲート絶縁層17が形成され、ゲート絶縁層17上には、ゲート電極18が形成される。ゲート電極18の側壁上には、スペーサとしての絶縁層19が形成される。
強磁性層13,14上及びゲート電極18上には、それぞれ、保護層としての機能を備えた導電層20,21,22が形成される。
導電層20上には、コンタクトプラグ23が形成され、コンタクトプラグ23上には、導電線24が形成される。また、導電層21上には、コンタクトプラグ25が形成され、コンタクトプラグ25上には、導電線26が形成される。導電線26の上面及び側面は、磁力線を収束する機能を有するヨーク層27に覆われる。
ここで、本例では、強磁性層14の磁化容易軸は、紙面に垂直な方向であるため、導電線26は、強磁性層14の磁化容易軸方向に延ばす。これにより、強磁性層14の磁化を反転させるときに導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面に平行な方向)に作用する。
このような構造によれば、導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haがスピン注入書き込みをアシストするため、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
尚、ヨーク層27は、省略してもよい。但し、ヨーク層27が存在する場合のほうが存在しない場合よりもスピン注入電流の低電流化には有効である。
次に、スピン注入電流の経路について検討する。
図15に示す構造の場合、図16に示すように、スピン注入電流Isは、スピンFETのチャネルを経由する経路を流す。
この場合、強磁性層14の磁化方向を制御するために、スピン注入電流Isの向きを可変としなければならない。
そこで、本例では、図16に示すように、導電線24に、直列接続されたPチャネルMOSFET PB及びNチャネルMOSFET NAからなるドライバ/シンカーを接続し、導電線26に、直列接続されたPチャネルMOSFET PA及びNチャネルMOSFET NBからなるドライバ/シンカーを接続する。
そして、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して平行にする場合、制御信号A,bBを“H”にし、制御信号bA,Bを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PAからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NAに向かって流れる。
このため、強磁性層13において紙面を裏から表に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面上を左から右に向かう方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して同じ向き(平行状態)になる。
また、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して反平行にする場合、制御信号bA,Bを“H”にし、制御信号A,bBを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PBからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NBに向かって流れる。
このため、紙面を表から裏に突き抜ける方向にスピン偏極された電子は、強磁性層13において反射され、さらに、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面上を右から左に向かう方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して反対向き(反平行状態)になる。
尚、図15のスピンFETの製造方法については、図1のスピンFETの製造方法と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
(10) 第10実施の形態
図17は、第10実施の形態のスピンFETを示している。
半導体基板11内には、例えば、STI構造の素子分離絶縁層12が形成される。素子分離絶縁層12に取り囲まれた素子領域内にスピンFETが形成される。スピンFETは、半導体基板11の凹部に埋め込まれたソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14を有する。
強磁性層13は、その磁化方向が固定され、ピンド層(磁気固着層)として機能する。本例では、強磁性層13の磁化は、紙面上を右から左に向かう方向に固定されるが、その反対方向に固定されてもよい。
強磁性層14は、その磁化方向が可変であり、フリー層(磁気記録層)として機能する。強磁性層14の残留磁化の磁化方向は、紙面に平行な方向である。
強磁性層14の残留磁化が紙面上を右から左に向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに同じ向き(平行)となり、スピンFETのオン抵抗は、低くなる。
強磁性層14の残留磁化が紙面上を左から右に向く場合、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14の相対的な磁化方向は、互いに反対向き(反平行)となり、スピンFETのオン抵抗は、高くなる。
強磁性層13,14間のチャネル上には、ゲート絶縁層17が形成され、ゲート絶縁層17上には、ゲート電極18が形成される。ゲート電極18の側壁上には、スペーサとしての絶縁層19が形成される。
強磁性層13,14上及びゲート電極18上には、それぞれ、保護層としての機能を備えた導電層20,21,22が形成される。
導電層21上には、コンタクトプラグ25が形成され、コンタクトプラグ25上には、導電線26が形成される。導電線26の上面及び側面は、磁力線を収束する機能を有するヨーク層27に覆われる。導電線26上には、さらに、コンタクトプラグ28及び導電線29が形成される。
ここで、本例では、強磁性層14の磁化容易軸は、紙面に平行な方向であるため、導電線26は、強磁性層14の磁化容易軸方向(チャネル長方向)に延ばす。これにより、強磁性層14の磁化を反転させるときに導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面に垂直な方向)に作用する。
このような構造によれば、導電線26に流れるスピン注入電流により発生する磁場Haがスピン注入書き込みをアシストするため、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
尚、ヨーク層27は、省略してもよい。但し、ヨーク層27が存在する場合のほうが存在しない場合よりもスピン注入電流の低電流化には有効である。
次に、スピン注入電流の経路について検討する。
図17に示す構造の場合、図18に示すように、スピン注入電流Isは、スピンFETのチャネルを経由する経路を流す。
この場合、強磁性層14の磁化方向を制御するために、スピン注入電流Isの向きを可変としなければならない。
そこで、本例では、図18に示すように、導電層20に、直列接続されたPチャネルMOSFET PB及びNチャネルMOSFET NAからなるドライバ/シンカーを接続し、導電線26に、直列接続されたPチャネルMOSFET PA及びNチャネルMOSFET NBからなるドライバ/シンカーを接続する。
そして、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して平行にする場合、制御信号A,bBを“H”にし、制御信号bA,Bを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PAからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NAに向かって流れる。
このため、強磁性層13において紙面上を右から左に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面を表から裏に突き抜ける方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して同じ向き(平行状態)になる。
また、強磁性層14の磁化方向を強磁性層13の磁化方向に対して反平行にする場合、制御信号bA,Bを“H”にし、制御信号A,bBを“L”にする。この時、スピン注入電流Isは、PチャネルMOSFET PBからスピンFETのチャネルを経由してNチャネルMOSFET NBに向かって流れる。
このため、紙面上を左から右に向かう方向にスピン偏極された電子は、強磁性層13において反射され、さらに、強磁性層14内の電子にスピントルクを与える。
これと同時に、導電線26を流れるスピン注入電流Isは、強磁性層14の磁化困難軸方向(紙面を裏から表に突き抜ける方向)の磁場Haを発生する。
従って、強磁性層14の磁化方向は、強磁性層13の磁化方向に対して反対向き(反平行状態)になる。
尚、図17のスピンFETの製造方法については、図1のスピンFETの製造方法と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
(11) 第11実施の形態
図19は、第11実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第9実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図15と同一部分には同じ符号を付してある。
図15のスピンFETと異なる点は、半導体基板11と、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14との間に、トンネルバリア層31,32が配置されていることである。
トンネルバリア層31,32は、半導体基板11と強磁性層13,14との間に生じる反応を防止する役割を果たすため、半導体基板11と強磁性層13,14との接合が良好になり、スピンFETの製造歩留まりが向上する。
また、トンネルバリア層31,32は、高いスピン偏極率で、キャリアをチャネルに移動させる機能を有するため、強磁性層13,14の相対的な磁化方向の変化に伴うコンダクタンスの変化率が大きくなる。
尚、本例では、トンネルバリア層31,32が強磁性層13,14側にそれぞれ配置されるが、実現すべきトランジスタの性能に応じて、いずれか一方のトンネルバリア層を省略してもよい。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(12) 第12実施の形態
図20は、第12実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第10実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図17と同一部分には同じ符号を付してある。
図17のスピンFETと異なる点は、半導体基板11と、ソース/ドレイン領域としての強磁性層13,14との間に、トンネルバリア層31,32が配置されていることである。
トンネルバリア層31,32は、半導体基板11と強磁性層13,14との間に生じる反応を防止する役割を果たすため、半導体基板11と強磁性層13,14との接合が良好になり、スピンFETの製造歩留まりが向上する。
また、トンネルバリア層31,32は、高いスピン偏極率で、キャリアをチャネルに移動させる機能を有するため、強磁性層13,14の相対的な磁化方向の変化に伴うコンダクタンスの変化率が大きくなる。
尚、本例では、トンネルバリア層31,32が強磁性層13,14側にそれぞれ配置されるが、実現すべきトランジスタの性能に応じて、いずれか一方のトンネルバリア層を省略してもよい。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(13) 第13実施の形態
図21は、第13実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第9実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図15と同一部分には同じ符号を付してある。
図15のスピンFETと異なる点は、ピンド層としての強磁性層13の磁化方向を安定に固定する反強磁性層(AF1)33が配置されていることである。
本例では、反強磁性層33は、強磁性層13の直上に配置される。
反強磁性層33は、強磁性層13の磁化安定性を向上させる機能を有するため、スピンFETの安定動作が実現される。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(14) 第14実施の形態
図22は、第14実施の形態のスピンFETを示している。
このスピンFETは、第10実施の形態のスピンFETの変形例であるため、図17と同一部分には同じ符号を付してある。
図17のスピンFETと異なる点は、ピンド層としての強磁性層13の磁化方向を安定に固定する反強磁性層(AF1)33が配置されていることである。
本例では、反強磁性層33は、強磁性層13の直上に配置される。
反強磁性層33は、強磁性層13の磁化安定性を向上させる機能を有するため、スピンFETの安定動作が実現される。
このような構造においても、スイッチング(磁化反転)に必要なスピン注入電流の値を低減できる。
(15) その他
第1乃至第14実施の形態の特徴点に関し、これら特徴点のいくつかを互いに組み合わせてスピンFETを構成してもよい。例えば、半導体基板及び強磁性層の間のトンネルバリア層と、ピンド層の磁化を安定的に固定する反強磁性層とを組み合わせて使用しても、スピン注入電流の低減を実現できる。
3. 材料例
第1乃至第14実施の形態のスピンFETを実現するための材料例について説明する。
半導体基板は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、SixGe1-x (0<x<1)、III-V族又はII-VI族の化合物半導体、磁性半導体からなるグループから選択する。半導体基板は、p型、n型のいずれであってもよく、また、半導体基板には、半導体基板内に形成されるウェル領域を含む。
ゲート電極については、例えば、ポリシリコン、メタル、及び、これらの積層構造のうちの1つとする。
ピンド層としての強磁性層及びフリー層としての強磁性層は、一方向異方性を有し、その厚さは、0.1nm〜100nmの範囲内の値であることが好ましい。また、強磁性層の厚さを0.4nm未満にすると、超常磁性となる可能性があるため、その厚さは、0.4nm〜100nmの範囲内の値にすることがさらに好ましい。
強磁性層は、例えば、i) Co、Fe、Ni及びこれらの合金、ii) Co-Pt、Co-Fe-Pt、Fe-Pt、Co-Fe-Cr-Pt、C0-Cr-Pt、NiMnSb、Co2MnGe、Co2MnAl、Co2MnSi、CoCrFeAlなどの合金、iii) GeMn、SiCNi、SiCMn、SiCFe、ZnMnTe、ZnCrTe、BeMnTe、ZnVO、ZnMnO、ZnCoO、GaMnAs、InMnAs、InMnAb、GaMnP、GaMnN、GaCrN、AlCrN、BiFeTe、SbVTe、PbSnMnTe、GeMnTe、CdMnGeP、ZnSiNMn、ZnGeSiNMn、BeTiFeO、CdMnTe、ZnMnS、TiCoO、SiMn、SiGeMnなどの磁性半導体からなるグループから選択される少なくとも1つとする。
強磁性層については、上記磁性材料に、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Ru(ルテニウム)、Os(オスニウム)、Re(レニウム)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)などの非磁性元素を添加して、磁気特性、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節してもよい。
反強磁性層は、例えば、Fe-Mn(鉄−マンガン)、Pt-Mn(白金−マンガン)、Pt-Cr-Mn(白金−クロム−マンガン)、Ni-Mn(ニッケル−マンガン)、Ir-Mn(イリジウム−マンガン)、NiO(酸化ニッケル)、Fe2O3(酸化鉄)のグループから選択される1つとする。
トンネルバリア層は、例えば、Si、Ge、Al、Ga、Mg、Tiなどの酸化物若しくは窒化物、SrTiO、又は、NdGaOから構成する。
非磁性層は、例えば、i) Cu、Cr、Au、Ag、Hf、Zr、Rh、Pt、Ir、Alのグループから選択される少なくとも1つの元素を含む材料及びその合金、ii) Si、Ge、Al、Ga、Mg、Tiなどの酸化物及び窒化物、iii) SrTiO、NdGaO、SixGe1-x (0<x<1)、III-V族及びII-VI族の化合物半導体、及び、磁性半導体のグループから選択される1つとする。
4. 実施例
次に、本発明の実施例を説明する。
サンプルとしてのスピンFETを以下の手順により製造する。
まず、図23に示すように、CMOSプロセスにより、半導体基板11上に、素子分離絶縁層12及び超格子構造のチャネル層35を形成する。また、熱酸化法により、SiO2から構成されるゲート絶縁層17を形成し、CVD法により、ゲート絶縁層17上にゲート電極18となるポリシリコン層を形成する。
イオン注入法により、ポリシリコン層に不純物を注入し、アニールを行った後に、フォトリソグラフィー及びエッチングによってポリシリコン層を加工し、ゲート電極18を形成する。また、セルフアラインプロセスにより、SiO2から構成される側壁絶縁層19を形成する。
この後、ゲート電極18及び側壁絶縁層19をマスクにして、反応性イオンエッチングにより、ゲート絶縁層17、チャネル層35をエッチングし、ソース/ドレイン領域となる凹部を形成する。
次に、図24に示すように、熱酸化法により、ソース/ドレイン領域となる凹部の内面を覆うSiO2から構成されるトンネルバリア層31,32を形成する。続けて、指向性の良いスパッタ装置を用いて、凹部内に、(Co50Fe50)80B20(3nm)/Ta(5nm)の積層から構成される強磁性層13,14を形成する。
また、強磁性層13の上部に開口を有するレジストを形成した後に、強磁性層13のTaを除去すると共に、指向性の良いスパッタ装置を用いて、強磁性層13の(Co50Fe50)80B20上に、PtMn(20nm)から構成される反強磁性層(AF1)33を形成する。
尚、Taを除去するチャンバーからPtMnを形成するチャンバー(指向性の良いスパッタ装置)へのウェハ(サンプル)の移動は、搬送室を介して行うことにより、ウェハの環境を常に真空を保った状態とすることができる。
この後、強磁性層14の上部に開口を有するレジストを形成した後に、指向性の良いスパッタ装置を用いて、強磁性層14上に、Cuから構成される非磁性層15、Co90Fe10から構成される強磁性層16及びPtMn(20nm)/Ta(5nm)の積層から構成される反強磁性層(AF2)34を形成する。
また、反強磁性層33,34上及びゲート電極18上に、それぞれ、Alから構成される導電層20,21,22を形成する。
最後に、1T(tesla)の一様な磁場中で、270℃、1時間のアニールを行い、ピンド層としての強磁性層13,16の磁化方向を固定する。
このようなプロセスにより製造されたスピンFETに対して、書き込み(強磁性層14の磁化反転)に必要とされるスピン注入電流の値を測定する。
測定の手順は、次の通りである。
まず、図25に示すように、電流経路P1により、強磁性層14にスピン注入電流Isを供給する。この時、書き込みに必要なスピン注入電流Isは5.0mAであった。次に、図26に示すように、電流経路P2により、強磁性層14にスピン注入電流Isを供給する。この時、書き込みに必要なスピン注入電流Isは4.6mAであった。
この結果から明らかなように、スピン注入電流Isの経路を工夫し、スピン注入電流Isにより発生する磁場を磁化反転のアシストとして利用すれば、スピン注入書き込みにおける書き込み時の低電流化を実現できる。
5. 適用例
次に、本発明の例に関わるスピンFETの適用例について説明する。
(1) リコンフィギャブルなロジック回路に適用する場合
リコンフィギャブル(re-configurable)なロジック回路とは、プログラムデータに基づいて、1つのロジック回路で複数のロジックのうちの1つを選択的に実現できる回路のことである。
ここで、プログラムデータとは、同一チップ内若しくは別チップ内のFeRAMやMRAMなどの不揮発性メモリに記憶されたデータ、又は、制御データのことである。
従来のロジック回路では、FETの接続関係によりロジックの種類(AND,NAND,OR,NOR,Ex−ORなど)が決定されるため、ロジックが変更されると、再設計によりFETの接続関係も変えなければならない。
そこで、1つのロジック回路で複数のロジックのうちの1つを選択的に実現できるリコンフィギャブルなロジック回路の実現が望まれる。
本発明の例に関わるスピンFETを用いれば、リコンフィギャブルなロジック回路の実現が可能になる。
実際に、スピンFETを用いてリコンフィギャブルなロジック回路を構成する場合、ANDとORが実現できれば、その他のロジックは、ANDとORの組み合わせにより実現できるため、以下では、ANDとORを選択的に実現できるリコンフィギャブルなロジック回路の例を説明する。
図27は、リコンフィギャブルなロジック回路の例を示している。
本例では、2つのスピンFETが電源端子Vdd,Vssの間に直列に接続される。
スピンFET SPは、Pチャネルタイプであり、ゲートには、入力信号Aが入力される。スピンFET SPの特性は、フリー層としての強磁性層の磁化状態により決定される。スピンFET SPのコンダクタンスGmは、平行状態のときの値と反平行状態のときの値との比が“100:1”になるように設定される。
スピンFET SNは、Nチャネルタイプであり、ゲートには、入力信号Bが入力される。スピンFET SNについては、平行状態に固定される。スピンFET SNのコンダクタンスGmは、“10”に設定される。
スピンFET SP,SNに関して、例えば、共通のフローティングゲートを設けてもよい。この場合、フローティングゲートの電圧Vfgとして(A+B)/2を生成できるため、このようにすることは、安定したロジックを構成するに当たって好ましい。
スピンFET SP,SNの接続点の信号V1は、インバータを経由すると出力信号Voutとなる。
図27のリコンフィギャブルなロジック回路において、スピンFET SPのフリー層としての強磁性層の磁化方向を変化させ、そのコンダクタンスGmを“100”にすると、表1に示すように、出力信号Voutは、入力信号A,BのAND(Y=A・B)となる。
但し、表1において、ロジック値“1”は、“H(high)”に相当し、ロジック値“0”は“L(low)”に相当する。ロジック値“1/2”は、“H”と“L”の中間の電圧であることを意味する。
即ち、入力信号A,Bの双方が“1”のときは、共通のフローティングゲートの電圧Vfgは、“1”となる。この時、スピンFET SPはオフ、スピンFET SNはオンとなるため、V1は“0”となり、出力信号Voutは“1”となる。
また、入力信号A,Bの双方が“0”のときは、共通のフローティングゲートの電圧Vfgは、“0”となる。この時、スピンFET SPはオン、スピンFET SNはオフとなるため、V1は“1”となり、出力信号Voutは“0”となる。
さらに、入力信号A,Bの一方が“1”、他方が“0”であるときは、共通のフローティングゲートの電圧Vfgは、“1/2”となる。この時、スピンFET SP,SNは、共に、オンとなる。
但し、スピンFET SPのコンダクタンスGmは“100”に設定され、スピンFET SNのコンダクタンスGmは“10”に設定されているため、この時、スピンFET SP、SNに流れる電流の比は、“100:10”=“10:1”になる。
従って、V1をVdd(=“1”)にプルアップする能力が、V1をVss(=“0”)にプルダウンする能力よりも勝り、V1は“1”となり、出力信号Voutは“0”となる。
また、図27のリコンフィギャブルなロジック回路において、スピンFET SPのフリー層としての強磁性層の磁化方向を変化させ、そのコンダクタンスGmを“1”にすると、表2に示すように、出力信号Voutは、入力信号A,BのOR(Y=A+B)となる。
但し、表2において、ロジック値“1”は、“H(high)”に相当し、ロジック値“0”は“L(low)”に相当する。ロジック値“1/2”は、“H”と“L”の中間の電圧であることを意味する。
即ち、入力信号A,Bの双方が“1”のときは、共通のフローティングゲートの電圧Vfgは、“1”となる。この時、スピンFET SPはオフ、スピンFET SNはオンとなるため、V1は“0”となり、出力信号Voutは“1”となる。
また、入力信号A,Bの双方が“0”のときは、共通のフローティングゲートの電圧Vfgは、“0”となる。この時、スピンFET SPはオン、スピンFET SNはオフとなるため、V1は“1”となり、出力信号Voutは“0”となる。
さらに、入力信号A,Bの一方が“1”、他方が“0”であるときは、共通のフローティングゲートの電圧Vfgは、“1/2”となる。この時、スピンFET SP,SNは、共に、オンとなる。
但し、スピンFET SPのコンダクタンスGmは“1”に設定され、スピンFET SNのコンダクタンスGmは“10”に設定されているため、この時、スピンFET SP、SNに流れる電流の比は、“1:10”になる。
従って、V1をVss(=“0”)にプルダウンする能力が、V1をVdd(=“1”)にプルアップする能力よりも勝り、V1は“0”となり、出力信号Voutは“1”となる。
このように、本発明の例に関わるスピンFETが適用されたリコンフィギャブルなロジック回路によれば、例えば、プログラムデータに基づいて、スピンFET SPの状態(平行/反平行)を制御し、そのコンダクタンスGmを変えることにより、再設計することなく、1つのロジック回路で複数のロジックのうちの1つを選択的に実現できる。
尚、本例のリコンフィギャブルなロジック回路では、NチャネルスピンFET SNをパラレル状態に固定して、そのコンダクタンスGmを“10”に固定する。つまり、スピンFET SNについては、そのコンダクタンスGmが“10”に固定されていればよいので、例えば、図28に示すように、通常のNチャネルMISトランジスタSNを使用してもよく、さらに、図29に示すように、反平行状態のNチャネルスピンFET SNを使用してもよい。
図30は、図27乃至図29のリコンフィギャブルなロジック回路において、共通のフローティングゲートの電圧Vfgと出力電圧Voutとの関係を示したものである。
その特徴は、共通のフローティングゲートの電圧Vfgが“1/2”のときに、スピンFET SPの状態(平行/反平行)に応じて、出力電圧Voutが変化する点にある。
図31は、スピンFETにより構成したインバータのデバイス構造の例を示している。図32は、図31のXXXII−XXXII線に沿う断面図である。
このデバイスの特徴は、第一に、スピンFET SP,SNのフローティングゲートFGが電気的に接続される点、第二に、スピンFET SP,SNのドレイン領域となる強磁性層13が共有される点にある。
半導体基板11内には、例えば、STI構造の素子分離絶縁層12が形成される。また、素子分離絶縁層12により取り囲まれた素子領域内には、N型ウェル領域36及びP型ウェル領域37が形成される。
N型ウェル領域36とP型ウェル領域37との境界に設けられた凹部内には、磁化方向が固定されたピンド層としての強磁性層13が形成される。強磁性層13は、スピンFET SP,SNのドレインとなる。
強磁性層13上には、反強磁性層20が形成される。半導体基板11と強磁性層13との間には、トンネルバリア層31が形成される。
N型ウェル領域36に設けられた凹部内には、磁化方向が変化するフリー層としての強磁性層14が形成される。強磁性層14は、スピンFET SPのソースとなる。P型ウェル領域37に設けられた凹部内には、磁化方向が固定される強磁性層13’が形成される。強磁性層13’は、スピンFET SNのソースとなる。
強磁性層13’上には、反強磁性層20’が形成される。半導体基板11と強磁性層13’との間には、トンネルバリア層31が形成され、半導体基板11と強磁性層14との間には、トンネルバリア層32が形成される。
強磁性層13,14の間のチャネル上には、ゲート絶縁層17を介してフローティングゲートFGが形成される。フローティングゲートFG上には、例えば、ONO(oxide/nitride/oxide)からなる絶縁層を介して、入力信号Aが供給されるゲート電極18が形成される。
同様に、強磁性体13,13’の間のチャネル上には、ゲート絶縁層17を介してフローティングゲートFGが形成される。フローティングゲートFG上には、例えば、ONOからなる絶縁層を介して、入力信号Bが供給されるゲート電極18が形成される。
反強磁性層20上には、コンタクトプラグ23を介して導電線24が形成される。また、フリー層としての強磁性層14上には、コンタクトプラグ25を介して導電線26が形成される。導電線26の上面及び側面は、それぞれ、ヨーク層27により覆われる。
以上、説明したように、本発明の例に関わるスピンFETを用いてリコンフィギャブルなロジック回路を実現できる。
(2) 磁気ランダムアクセスメモリに適用する場合
次に、本発明の例に関わるスピンFETを磁気ランダムアクセスメモリに適用した場合の例について説明する。
図33は、磁気ランダムアクセスメモリの例を示している。
メモリセルアレイは、アレイ状に配置された複数のスピンFETから構成される。そして、例えば、1つのスピンFETにより1つのメモリセルが構成される。スピンFETのソース/ドレイン領域の一方は、ビット線BL(L)に接続され、他方は、ビット線BL(R)に接続される。ビット線BL(L),BL(R)は、同じ方向、本例では、共に、カラム方向に延びている。
ビット線BL(L)の一端には、CMOSタイプドライバ/シンカーDS1が接続される。ドライバ/シンカーDS1は、電源端子Vdd,Vss間に直列接続され、スピン注入電流Isの発生/遮断を制御するPチャネルMISトランジスタPB及びNチャネルMISトランジスタNAから構成される。
そして、ビット線BL(L)の一端は、MISトランジスタPB,NAの接続点に接続され、制御信号bBjは、PチャネルMISトランジスタPBのゲートに入力され、制御信号Ajは、NチャネルMISトランジスタNAのゲートに入力される。
ビット線BL(L)の他端には、カラム選択スイッチとしてのNチャネルMISトランジスタNFを経由して、センスアンプS/Aが接続される。センスアンプS/Aは、例えば、差動増幅器から構成され、リファレンス電圧REFに基づいて、スピンFETに記憶されたデータの値を判定する。
センスアンプS/Aの出力信号は、選択されたスピンFETの読み出しデータRoutとなる。
制御信号Fjは、カラムjを選択するカラム選択信号であり、NチャネルMISトランジスタNFのゲートに入力される。
ビット線BL(R)の一端には、CMOSタイプドライバ/シンカーDS2が接続される。ドライバ/シンカーDS2は、電源端子Vdd,Vss間に直列接続され、スピン注入電流Isの発生/遮断を制御するPチャネルMISトランジスタPA及びNチャネルMISトランジスタNBを有する。
そして、ビット線BL(R)の一端は、MISトランジスタPA,NBの接続点に接続され、制御信号bAjは、PチャネルMISトランジスタPAのゲートに入力され、制御信号Bjは、NチャネルMISトランジスタNBのゲートに入力される。
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、例えば、メモリセルとしてのスピンFETがNチャネルタイプである場合、制御信号Wiが“H”、制御信号bBj,Ajが“L”、制御信号bAj,Bjが“H”になると、スピン注入電流Isは、ドライバ/シンカーDS1からドライバ/シンカーDS2に向かって流れる。
また、制御信号Wiが“H”、制御信号bBj,Ajが“H”、制御信号bAj,Bjが“L”になると、スピン注入電流Isは、ドライバ/シンカーDS2からドライバ/シンカーDS1に向かって流れる。
以上、説明したように、本発明の例に関わるスピンFETを用いて磁気ランダムアクセスメモリを実現できる。
(3) その他
本発明の例に関わるスピンFETは、ロジック回路、磁気ランダムアクセスメモリの他にも、様々な半導体集積回路に適用できる。
例えば、スピンFETと誘電体キャパシタとを組み合わせてDRAM(dynamic random access memory)とすることもできるし、スピンFETと強誘電体キャパシタとを組み合わせてFeRAM(ferroelectric random access memory)とすることもできる。
また、スピンFETを、フラッシュメモリなどのEEPROMのメモリセルトランジスタや周辺回路として利用することも可能である。
さらに、スピンFETを、システムLSI(マイコンを含む)に搭載するROM又はRAMとして使用することもできる。
6. まとめ
本発明の例によれば、スピンFETのソース領域とドレイン領域の磁性体の一方の磁化方向を従来よりも小さな電流密度で変化させることができる。
本発明の例は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
11: 半導体基板、 12: 素子分離絶縁層、 13,14,16: 強磁性層、 15: 非磁性層、 17: ゲート絶縁層、 18: ゲート電極、 19: 側壁絶縁層、 20,21,22: 導電層、 23,25,28: コンタクトプラグ、 24,26,29: 導電線、 27: ヨーク層、 30,31,32: トンネルバリア層、 33,34: 反強磁性層。