JP2007291299A - アクリル系粘着剤組成物 - Google Patents

Abstract

【課題】低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する対剥離性能に優れたアクリル系粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】水酸基を有するアクリル系共重合体、架橋剤及び粘着付与剤を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、前記粘着付与剤は、軟化点１３０℃以上、水酸基価が３５〜８０ｍｇＫＯＨ／ｇであるロジンエステル化合物であり、前記アクリル系共重合体１００重量部に対して１０〜４０重量部含有されるアクリル系粘着剤組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する対剥離性能に優れたアクリル系粘着剤組成物に関する。

アクリル系共重合体、架橋剤及び粘着付与剤を含有するアクリル系粘着剤組成物は、粘着力、凝集力等の粘着性能及び耐候性、耐熱性等の耐老化性能に優れ、特に粘着テープ又は粘着シートの粘着剤層として、包装用、事務用、電気絶縁用、表面保護用、医療用、各種部材の接合用等に広く利用されている。

上記アクリル系共重合体としては、一般に、アルキル（メタ）アクリレートを主成分とし、これと水酸基又はカルボキシル基を有するビニルモノマーとの共重合体が用いられる。上記アクリル系共重合体は、それ自体に粘着力と凝集力とを有しているが、架橋剤を用いてアクリル系共重合体を架橋させることにより凝集力や耐熱性が高められる。
また、例えば特許文献１には、アクリル系共重合体に粘着付与剤を配合するにより、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンのような低極性被着体に対しても高い粘着力を発揮できることが記載されている。

アクリル系粘着剤組成物には、比較的低速で剥離される場合には充分な粘着力が発揮されないという問題点があった。これに対して、特許文献２〜４には低軟化点を有し一定の水酸基価を有する粘着付与剤を選択して用いることにより、比較的低速で剥離される場合でも充分な粘着力を発揮できることが記載されている。しかしながら、このような粘着付与剤を用いた場合には、低温、軽圧着、短時間貼り付けという条件下での粘着力が不充分になるという問題があった。
特開平３−２８１５８７号公報 特開平８−３４９６５号公報 特開平１０−２０４３９９号公報 特開平１０−３３０７２２号公報

本発明は、上記現状に鑑み、低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する対剥離性能に優れたアクリル系粘着剤組成物を提供することを目的とする。

本発明は、水酸基を有するアクリル系共重合体、架橋剤及び粘着付与剤を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、前記粘着付与剤は、軟化点１３０℃以上、水酸基価が３５〜８０ｍｇＫＯＨ／ｇであるロジンエステル化合物であり、前記アクリル系共重合体１００重量部に対して１０〜４０重量部含有されるアクリル系粘着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。

本発明者らは、鋭意検討の結果、軟化点及び水酸基価が一定の範囲になるロジンエステル化合物を粘着付与剤として用いることにより、低温から高温にかけての温度領域において粘着特性に優れ、接着面積の少ないウレタンフォームのような発泡基材に対する低温領域での軽圧着時の接着力が高く、かつ、ポリオレフィンのような低極性被着体に対する低速剥離領域での対剥離性能が高いアクリル系粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

本発明のアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系共重合体を含有する。
上記アクリル系共重合体としては、水酸基を有するものであれば特に限定されず、従来公知の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合したものを用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されないが、例えば、アルキル基の炭素数が１〜１２の１級又は２級アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが好適である。

上記アクリル系共重合体は、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーに由来する成分を含有してもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーは、アクリル系共重合体を改質して凝集力を高めるために用いられるものであり、例えば、分子内に含有する官能基と外部架橋剤との架橋反応によりポリマー同士の網目形成に寄与するもの等が用いられる。

分子内に含有する官能基と外部架橋剤との架橋反応によりポリマー同士の網目形成に寄与するビニルモノマーとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー；２-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ｎ-メチロールアクリルアミド等の水酸基含有モノマー；グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー；酢酸ビニル、スチレン等の高ガラス転移温度モノマー等が挙げられる。

上記アクリル系共重合体が(メタ)アクリル酸エステルモノマーとこれと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体である場合には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量はモノマー組成中の７０重量％以上を占めることが好ましい。ビニルモノマーが分子内に含有する官能基と外部架橋剤との架橋反応によりポリマー同士の網目形成に寄与するものである場合には、このようなビニルモノマーの含有量の好ましい下限は０．０１重量％、好ましい上限は１０重量％であり、より好ましい下限は０．０５重量％、より好ましい上限は５重量％である。

上記アクリル系共重合体を調製する方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合(沸点重合、沸点未満重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、リビング重合等の公知の重合方法を用いることができる。

上記アクリル系共重合体を調製する際には、分子量を調整する目的で連鎖移動剤が添加されてもよい。上記連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、チオール化合物、ハロゲン化合物等の連鎖移動性の高いもの等が挙げられる。
上記チオール化合物としては特に限定されず、例えば、ｎ−ドデシルメルカプタン、２−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス（β−チオプロピオネート）、チオグリコール酸ブチル；プロパンチオール類；ブタンチオール類；チオホスファイト類等が挙げられる。
上記ハロゲン化合物としては特に限定されず、例えば、四塩化炭素等が挙げられる。

上記アクリル系共重合体を調製する際における重合の開始方法としては特に限定されず、例えば、アゾイソブチロイルニトリル、パーオキサイド系重合開始剤等の熱重合開始剤による方法；ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン等の光重合開始剤による方法；及びこれらの方法と紫外線照射や電子線照射等とを併用する方法等が挙げられる。

本発明のアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。
上記架橋剤としては特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、水酸基と反応可能である。

本発明のアクリル系粘着剤組成物は、粘着付与剤を含有する。
本発明に用いられる粘着付与剤は、ロジンエステル化合物である。本明細書においてロジンエステル化物とは、重合ロジン系化合物と多価アルコールとのエステル化物を意味する。上記ロジンエステル化合物を用いることにより、本発明のアクリル系粘着剤組成物は、ポリオレフィン系樹脂からなる被着体に対する接着力、高温下における保持力、耐曲面反発性の向上という性能を発揮する。このような性能は、他の石油樹脂系化合物やトール脂肪酸系化合物等の粘着付与剤を用いても充分には得られない。

上記重合ロジン系化合物としては特に限定されず、例えば、重合ロジンやロジンモノマー、不均化ロジン、水添ロジン、部分不均化ロジン及びこれらの混合物を重合したもの等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
上記ロジンエステル化合物としては、なかでも、架橋性に優れ、物性向上効果が非常に大きいことから重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物が好適である。

上記粘着付与剤として用いるロジンエステル化合物は、軟化点１３０℃以上であることが好ましい。１３０℃未満であると、得られるアクリル系粘着剤組成物の耐熱性(高温軟化点)が低下し、低極性被着体に対する低速剥離速度での剥離力の向上が小さくなる。好ましくは１４０℃以上である。軟化点の上限については特に限定されないが、通常用いられるロジンエステル化合物の軟化点の上限は２００℃程度である。
なお、本明細書において軟化点とは、ＪＩＳ規格(ＪＩＳ Ｋ ５６０１−２−２)に準ずる環球法で測定した化合物の軟化点温度を意味する。

上記粘着付与剤として用いるロジンエステル化合物の水酸基価の下限は３５ｍｇＫＯＨ／ｇであり、上限は８０ｍｇＫＯＨ／ｇである。３５ｍｇＫＯＨ／ｇ未満であると、低極性被着体に対する低速剥離速度での剥離力が低下し、８０ｍｇＫＯＨ／ｇを超えると、低温での初期粘着力が低下し、低温軽圧着短時間での接着力が低下する。好ましい下限は４０ｍｇＫＯＨ／ｇであり、好ましい上限は６０ｍｇＫＯＨ／ｇである。
なお、本明細書において水酸基価とは、ＪＩＳ規格(ＪＩＳ Ｋ ０７００)に準ずる水酸基価測定法で測定した化合物１ｇあたりの水酸基の数を意味する。

本発明のアクリル系粘着剤組成物における上記粘着付与剤の配合量の下限はアクリル系共重合体１００重量部に対して１０重量部であり、上限は４０重量部である。１０重量部未満であると、低極性被着体に対する低速剥離速度での剥離力が低下し、４０重量部を超えると、アクリル系粘着剤組成物のガラス転移点が上がり、低温での初期粘着力が低下し、低温軽圧着短時間条件でのウレタンフォーム等に対する接着力が低下する。好ましい下限は１５重量部、好ましい上限は２５重量部である。

本発明のアクリル系粘着剤組成物は、必要に応じて、充填剤、顔料、染料等のアクリル系粘着剤組成物に使用される従来公知の添加剤等を含有してもよい。

本発明のアクリル系粘着剤組成物は、軟化点の高いロジンエステル化物を粘着付与剤として用いることにより、耐熱性を得ることができ、低極性被着体に対する低速剥離の領域での剥離力を持たせることを可能にした。また、粘着付与剤の水酸基価を限定することで、粘着剤に最適な架橋構造を発現させることを可能にし、低極性被着体に対する低速剥離の領域での剥離力を持たせることができ、かつ、低温での初期粘着力を持たせ低温軽圧着短時間での接着力を持たせることを可能にした。更に、粘着付与剤の使用量を限定することで、低温接着性を持たせ、接着面積の少ないウレタンフォームのような発泡基材に対する低温領域での軽圧着時の接着力も持たすことを可能にした。この結果、低温から高温にかけての粘着特性に優れ、接着面積の少ないウレタンフォームのような発泡基材に対する低温領域での軽圧着時の接着力も持たすことを可能にし、ポリオレフィンのような低極性被着体に対する低速剥離の領域での剥離力が高いアクリル系粘着剤組成物が得られた。

本発明のアクリル系粘着剤組成物の用途としては特に限定されず、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、シーリング材等が挙げられる。特に粘着テープ、粘着性シート、ラベル、両面粘着テープ等の粘着加工物の粘着剤層として好適である。
本発明のアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着加工物もまた、本発明の１つである。

本発明のアクリル系粘着剤組成物を粘着加工物の粘着剤層として用いる場合には、例えば、本発明のアクリル系粘着剤組成物を適当な溶媒に溶解した溶液として、基材の片面又は両面に塗布し、乾燥することにより粘着剤層を形成することができる。上記基材としては、例えば、紙；不織布；ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂フィルム；ポリウレタン、ポリクロロプレン、アクリル系樹脂等の合成樹脂発泡体シート等が挙げられる。
また、本発明のアクリル系粘着剤組成物は、それ自体をシート状に成形して、基材のない両面粘着テープとすることもできる。

本発明によれば、低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する対剥離性能に優れたアクリル系粘着剤組成物を提供することができる。

以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。

（アクリル系共重合体の調製）
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にて、ｎ−ブチルアクリレート７９重量部、２−エチルヘキシルアクリレート１８重量部、アクリル酸３重量部、２−ヒドロキシエチルメタクリレート０．１重量部、ドデカンチオール０．０５重量部、及び、酢酸ビニルモノマー５重量部からなるモノマー混合物を酢酸エチル８２重量部に溶解し、還流点において、重合開始剤としてパーオキシケタール０．０１重量部を重合開始時に加え、更にパーオキシエステル０．７９重量部を１．０時間から４．５時間に適宜加えながら６．５時間反応させ、アクリルモノマーを重合した。得られた溶液を冷却し、アクリル系共重合体溶液（アクリル系共重合体５５重量％含有、酢酸エチル溶液）を得た。

（粘着付与樹脂の選択）
粘着付与樹脂として、以下の５種を選択した。
Ａ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１５０℃、水酸基価５０ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１３５改良品(試作品)」
Ｂ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１３０℃、水酸基価３５ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１３５改良品(試作品)」
Ｃ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１４０℃、水酸基価４０ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１３５改良品(試作品)」
Ｄ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１５０℃、水酸基価８０ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１３５改良品(試作品)」
Ｅ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１２５℃、水酸基価４０ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１２５」
Ｆ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１３５℃、水酸基価２０ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１３５」
Ｇ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１３５℃、水酸基価１００ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「ペンセルＤ―１３５改良品(試作品)」
Ｈ：重合ロジンのペンタエリスリトールエステル化物；軟化点１４０℃、水酸基価０ｍｇＫＯＨ／ｇ、荒川化学工業社製「アルコンＰ−１２５」

（実施例１〜１３、比較例１〜１４）
得られたアクリル系共重合体溶液中のアクリル系共重合体１００重量部に対して、粘着付与樹脂、架橋剤としてイソシアネート化合物（トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の酢酸エチル溶液；日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートＬ５５Ｅ」、固形分５５重量％）を表１及び表２に記載した配合量で加えてアクリル系粘着剤組成物を得た。
更に、得られたアクリル系粘着剤組成物を厚さ５０μｍのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータの片面に、乾燥後の厚さが６０μｍになるように塗布し、１００℃で３分間乾燥して溶媒を完全に除去し、不織布を挟み、両面粘着テープを作製した。その後、得られた両面粘着テープを２３℃中で７日間養生した。

（評価）
実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表１、２に示した。

（１）対ポリプロピレン被着体への粘着力評価
得られた両面粘着テープを２５ｍｍ幅の短冊状に細切して、ポリプロピレン板に２ｋｇゴムローラ１往復の荷重にて貼り合わせ、２３℃で２０分間放置した。その後、ＪＩＳ規格(ＪＩＳ Ｚ ０２３７)に準ずる方法により剥離速度３００ｍｍ／ｍｉｎで１８０°方向のピール試験を行い、剥離力を測定した。

（２）６０℃定荷重剥離力の評価
得られた両面粘着テープを幅２０ｍｍ、長さ５０ｍｍに細切して、ポリプロピレン板に２ｋｇゴムロール１往復の荷重にて貼り合わせた。その後、６０℃ギヤーオーブン中で両面粘着テープが下になるように８０ｇの荷重をかけて（角度はポリプロピレン板に対して９０°）３時間後の剥離距離（ｍｍ）を測定した。なお、ポリプロピレン板から完全に落下してしまったものについては「落下」と評価した。

（３）５℃低温接着性の評価
得られた両面粘着テープを２５ｍｍ幅の短冊状に細切して、気泡が入らないようにアルミニウム板に貼り付けた。次いで、両面粘着テープの他方の面に、幅２０ｍｍ、厚さ１０ｍｍのウレタンフォームを配置し、該ウレタンフォームの両脇に厚さ５ｍｍのスペーサーを配置したうえで２ｋｇゴムロール１往復の荷重にて貼り合わせ、５℃で２０分間放置した。その後、ＪＩＳ規格(ＪＩＳ Ｚ ０２３７)に準ずる方法により剥離速度３００ｍｍ／ｍｉｎで９０°方向のピール試験を行い、剥離力を測定した。

本発明によれば、低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する対剥離性能に優れたアクリル系粘着剤組成物を提供することができる。

Claims (2)

1. 水酸基を有するアクリル系共重合体、架橋剤及び粘着付与剤を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、
   前記粘着付与剤は、軟化点１３０℃以上、水酸基価が３５〜８０ｍｇＫＯＨ／ｇであるロジンエステル化合物であり、前記アクリル系共重合体１００重量部に対して１０〜４０重量部含有される
   ことを特徴とするアクリル系粘着剤組成物。
2. 請求項１記載のアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着加工物。