JP2007283330A - 形鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】強軸まわりの曲げ剛性EIを向上させた形鋼を、重量および製造コストを抑えつつ提供する。
【解決手段】上下フランジとウエブとを有する形鋼において、少なくとも上下フランジは、圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板で構成され、この高ヤング率鋼板を、その圧延方向が上下フランジの長手方向となるようにウエブに固着させている。このとき、部材長手方向のヤング率を215GPa超290GPa以下で構成するようにしてもよい。
【選択図】図2

Description

本発明は、主に鋼構造建築物の梁材等に用いられる組立形鋼に関し、より詳しくは鋼材の寸法や板厚を増加させずに強軸まわりの曲げ剛性を向上させた組立形鋼に関するものである。
H形鋼をはじめとする形鋼は、建築構造における柱材や梁材として利用されている。これら形鋼は、ユニバーサル圧延機によりフランジとウェブが一体となって製造される「圧延形鋼」と、複数の鋼帯を溶接により組み立てて製造される「組立形鋼」に分類される。本発明は後者の「組立形鋼」に関するものである。
まず、本発明が対象とする組み立て形鋼の構成を、図1および図6を用いて説明する。組立形鋼は、互いに対向する一対のフランジ13、14と、この一対のフランジを連設するウェブ15から形成され、ウェブ15がフランジ13、14のほぼ中央に配置されたものはH形鋼1(斜視図を図1に示す)、ウェブ15がフランジ13、14の端部に配置されたものはC形鋼2(斜視図を図6に示す)と一般的に呼ばれ区別されている。また形鋼では、図7に例示するように、断面の寸法形状により、その断面重心73が幾何学的に一律に定められる。この断面重心を通り、上下フランジと平行な軸が強軸71、これに直行する軸が弱軸72と各々定義されるが、本発明では、強軸71まわりの曲げ剛性EIを向上させるための技術を対象にしている。
ここに示す曲げ剛性EIとは、形鋼の断面二次モーメントI(形鋼の形状寸法のみから一律に定められる物理定数であり、強軸71まわりに計算した値)と、鋼材ヤング率(縦弾性係数)Eを掛け合わせた結果として、すなわちEIで与えられる部材の曲げ性能を表す指標である。この曲げ剛性EIを向上させる手段としては、形鋼の高さ寸法や幅寸法を増したり、板厚を増したりして、断面二次モーメントIを向上させることは一般的に行われている。
曲げ剛性EIのもうひとつの支配要因である鋼材ヤング率Eは、非特許文献1では、設計用の値として205GPa(=kN/mm)と定められている。本発明は、鋼構造建築物にかかるものであるため、この205GPaという値を「基準値」と定義する。
この基準値は、異方性のある鉄の結晶粒の方位が偏ることなく配列したときの安定的な状態に基づき定められたものであるが、実際にはこの値に対して±5%程度の偏りが存在することになる。そのため、一般的な鋼材のヤング率は195GPa以上215GPa以下の範囲の値にあると一般に考えられている。すなわち、一般的な鋼材のヤング率は、基準値の205GPaを超えることはあっても、215GPaを超えることはないといえる。
曲げ剛性EIを向上させる手段として、この鋼材ヤング率Eを向上させ、215GPa超とすることを狙った取組も以前からなされている。ヤング率Eの理論上最大値は約290GPaとなることが知られている(非特許文献2参照)が、例えば特許文献1を始めとして、ヤング率Eを290GPaに近づけるための、幾つかの方法が提案されている。しかしこれらの提案はいずれも、鋼材の圧延直角方向のヤング率を向上させた鋼板(C方向高ヤング率鋼)の開示である。
また、建築用の部材という観点では、たとえば特許文献2において、部材長手方向のヤング率を向上させるために、圧延鋼板の圧延方向に対してヤング率が最大となる方向へ向けて鋼板を斜めに切り出し、その切り出し方向が鋼管の長手方向と一致するように成形することにより、長手方向のヤング率を向上させた鋼管(高剛性鋼管)が開示されている。
特開平8−311541号公報 特開2004−330242号公報 日本建築学会、鋼構造設計規準 -許容応力度設計法-、2005 桑村仁、鋼構造の性能と設計、共立出版株式会社、2002
しかしながら、上記特許文献1に示されるC方向高ヤング率鋼については、鋼材C方向の長さが圧延ローラに寸法による制限を受け、最長でも1.4m程度となる。これに対し、建築構造の梁などの用途で利用する場合には、少なくても3m、長い場合には12mに及ぶ長さが必要になるため、1.4m程度では短く、適用することができない。勿論、C方向にヤング率の高い1.4m程度の長さの鋼材を溶接等でつなぎ合わせて延長することは技術的には可能であるが、製造コストの観点から、その実現は困難である。
また、特許文献2に示される高剛性鋼管は、円形や角形のパイプであり、H形鋼やC形鋼など上下フランジおよびウェブを有する形鋼を製造することはできない。
そこで、本発明は、これらの問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、前述の強軸まわりの曲げ剛性EIを向上させた形鋼を、重量および製造コストを抑えつつ提供することにある。
第1の発明に係る形鋼は、上下フランジとウエブとを有する形鋼において、少なくとも前記上下フランジは、圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板で構成され、前記高ヤング率鋼板は、その圧延方向が上下フランジの長手方向となるように上記ウエブに固着されていることを特徴とする。
第2の発明に係る形鋼は、請求項1記載の形鋼において、そのウエブの部材長手方向のヤング率が、215GPa超290GPa以下であることを特徴とする。
第3の発明に係る形鋼は、請求項1又は2記載の形鋼において、断面形状がH形であることを特徴とする。
第4の発明に係る形鋼は、請求項1又は2記載の形鋼において、断面形状がC形であることを特徴とする。
本発明を適用した形鋼においては、上下フランジの材長方向のヤング率Eが215GPa以上290GPa以下となるため、その結果として、形鋼の断面二次モーメントIを増すことなく、形鋼の強軸まわりの曲げ剛性EIを向上させることができるようになる。上下フランジに適用する鋼材は、L方向高ヤング率鋼板であるため、形鋼の長さが12mに及ぶような長い場合でも、鋼材を溶接等で繋ぎ合わせるといったコストアップの原因になる作業を行うことなく好適に用いることが可能になる。
また、剛性を一定に保ったままで軽量化を実現することも可能となる。またフランジだけに高価なL方向高ヤング率鋼を適用し、ウエブに安価な一般鋼を適用することにより、コストを抑えつつ、部材の高剛性化、軽量化を実現することが可能となる。
また、従来においては、必要とされる梁の曲げ剛性が異なる場合には、断面形状や寸法を変化させることでしか対応できなかったのに対し、本発明を適用した形鋼では、L方向高ヤング率鋼を少なくとも上下フランジに用いることにより、断面形状や寸法を変化させることなく、素材を変えることで対応できるようになる。そのため、部材形状が共通化され、接合時の詳細な寸法条件等を統一することができ、設計の簡略化、ひいては設計労力の軽減をも図ることが可能となる。また、形状を統一することができれば製造設備を縮小することができ、ひいては製造コストを大幅に削減することも可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、鋼構造建築物の梁材等に用いられるH形鋼に関し、図面を参照しながら詳細に説明をする。
図1は、本発明を適用したH形鋼1の構成図である。このH形鋼1は、互いに対向する一対のフランジ13,14と、この一対のフランジ13,14の幅方向中央間を連設するウエブ15により断面がH状に形成されている。そして、フランジ13上面及びフランジ14下面にはウエブ15がそれぞれ溶接により固定されている。ここでは、溶接により固着されているが、固着の手段としては、溶接,ドリルねじ、ボルト、接着或いはリベット等によってもかまわない。
このH形鋼1において、少なくともこれらフランジ13、14は、圧延方向(L方向)のヤング率が215GPa超290GPa以下であるL方向高ヤング率鋼板で構成され、このL方向高ヤング率鋼板は、その圧延方向(L方向)がフランジ13、14の長手方向となるようにウエブ15に固着されている。
本発明では、形鋼に適用するL方向高ヤング率鋼におけるヤング率の範囲を上記の通り定めているが、本発明範囲の下限値(すなわち215GPa)は、一般的な鋼材におけるL方向ヤング率Eの最大値に基づき定めており、また、本発明範囲の上限値(すなわち290GPa)は、鋼材のヤング率の理論上の最大値に基づき定めている。
しかし、製造難度、製造時間、製造コスト、あるいは材料の歩留り等を考慮すれば、圧延方向(L方向)のヤング率は225GPa以上260GPa以下であることが好ましく、更にいえば、230GPa以上250GPaであることが最も好ましい。
図8は、従来の形鋼と本発明を適用した形鋼の相違および範囲を明確にするための図である。グラフの横軸を形鋼の長手方向のヤング率Eとし、また、グラフの縦軸を形鋼の強軸まわりの曲げ剛性EIとし、両者の関係を示したものである。形鋼は低層建築物の床梁に用いられる典型的なH形鋼(高さ250mm、フランジ幅が100mm、ウエブの板厚が3.2mm、フランジの板厚が6.0mm、強軸まわりの断面二次モーメントI=21500000mm)の場合を例に説明する。
グラフ中に点線で示される部分が、建築構造用途で広く使用される従来の形鋼(従来形鋼)の範囲(195GPa以上215GPa以下の一般的なヤング率を有する鋼材を適用した範囲)であり、破線で示される部分が本発明の範囲(215GPa超290GPa以下のL方向高ヤング率鋼を適用した範囲)である。そして、実線で示される部分が本発明の中でも好ましい範囲(225GPa以上260GPa以下のL方向高ヤング率鋼を適用した範囲)であり、二重線で示される部分が最良の範囲(230GPa以上250GPa以下のL方向高ヤング率鋼を適用した範囲)である。
図6は、本発明を適用したC形鋼2の構成図である。前出のH形鋼では、ウェブ15がフランジ13、14の中央に配置されているのに対し、C形鋼では、ウェブ15がフランジ13、14の端部に配置されている点が異なる。
上記H形鋼1よびC形鋼2に用いる圧延方向(L方向)のヤング率が215GPa超290GPa以下となる鋼材としては、たとえば、特開2005−273001号公報に開示されている発明のように、「質量%で、C:0.0005〜0.30%、Si:2.5%以下、Mn:2.7〜5.0%、P:0.15%以下、S:0.015%以下、Mo:0.15〜1.5%、B:0.0006〜0.01%、Al:0.15%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼材」の適性が高い。
しかし、必ずしもこの鋼材に限定される訳はなく、上述の成分に、「質量%で更に、Ti:0.001〜0.20%、Nb:0.001〜0.20%のうち、1種または2種を含有させた鋼材」や、出願番号2005−330429に示す「質量%で、C:0.0005〜0.30%、Si:2.5%以下、Mn:0.1〜5.0%、P:0.15%以下、S:0.015%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、及びMo:0.005〜1.5%、Nb:0.005〜0.20% 、Ti:48/14×N(質量%)以上,0.2%以下、B:0.0001〜0.01%、のいずれか1種又は2種以上を合計で0.015〜0.191質量%含有し、板厚の1/8層における{110}<223>及び/又は{110}<111>の極密度が10以上であることを特徴とする高ヤング率鋼板」を用いることも可能である。
この他にも、鋼材組成のいかんによらず「JISZ2280に準拠した常温での横共振法に基づき計測したL方向ヤング率の値、または静的引張試験法に基づき計測した圧延方向(L方向)のヤング率の値が215GPa超290GPa以下のあることが確認される鋼材」を用いた場合でも同等の効果が得られる。
素材のヤング率の測定はJISZ2280に準拠した常温での横共振法、あるいは静的引張試験法に基づき実施する。
横共振法では、試料を固定せずに振動を加え、発振機の振動数を徐々に変化させて一次共振振動数を測定して下式よりヤング率を算出する。
E=0.946×(l/h)3 ×m/w×f2
ここで、E:動的ヤング率(N/m2 )、l:試験片の長さ(m)、h:試験片の厚さ (m)、m:質量(kg)、w:試験片の幅(m)、f:横共振法の一次共振振動数 (s-1)、である。
静的引張ヤング率試験法では、JISZ2201に準拠した引張試験片を用いて、素材降伏強度の1/2に相当する引張応力レベルまで5回繰り返し引張力を加え測定した応力-ひずみ線図の傾きに基づき算出する。測定のバラツキを排除するため、5回の計測結果のうちの最大値および最小値を除いた3つの計測値の平均値として算出した値を鋼材のヤング率とするのが一般的である。
なお、本発明は、ウエブ15に対しても上述した高ヤング率鋼板を適用してもよい。このとき高ヤング率鋼板のL方向がウエブ15の長手方向とされていてもよい。その結果、H形鋼1におけるウエブ15の長手方向のヤング率を215GPa超290GPa以下の範囲まで向上させることができ、形鋼の強軸まわりの曲げ剛性EIをさらに向上させることができる。なお、ウェブにL方向高ヤング率鋼を用いる場合において、製造難度、製造時間、製造コスト、あるいは材料の歩留り等を考慮すれば、L方向高ヤング率鋼の圧延方向ヤング率は225GPa以上260GPa以下であることが好ましく、また、230GPa以上250GPaであることが最も好ましい。
また、本発明において、ウエブ15は、その部材長手方向のヤング率が、フランジ13、14の長手方向のヤング率と異なる材料で構成されていてもよい。特にフランジ13、14はウエブ15に対して溶接により固着されるものであるため、ウエブ15がフランジ13、14と異なる物性、力学的特性を有する材料で構成されていても、H形鋼1あるいはC形鋼2として仕上げることは可能となる。
図2は、本発明を適用したH形鋼1の各構成例に対する力学的特性の関係を示している。
この図2において、本発明を適用したH形鋼1は、本発明例1〜3として、その比較例は、比較例1として表している。
比較例1は、低層建築物の床梁に用いられるH形鋼の典型的な例であり、高さ250mm、フランジ幅が100mm、ウエブの板厚が3.2mm、フランジの板厚が6.0mmである。この比較例1を構成するフランジ、ウエブの材質は、いずれも一般鋼、すなわちヤング率は205GPaの鋼材とする。
本発明例1は、比較例1と同一サイズ、断面形状からなるH形鋼1として構成される。この本発明例1は、フランジ13、14のみ、長手方向がL方向となるように上記高ヤング率鋼を適用し、ウエブ15には一般鋼を適用している。
これに対して本発明例2は、比較例1と同一サイズ、断面形状からなるH形鋼1として構成される。この本発明例1は、フランジ13、14、ウエブ15ともに長手方向がL方向となるように高ヤング率鋼を適用している。
本発明例3は、比較例1に対してフランジ13、14の厚さを6mmから5mmに低減させたH形鋼1として構成される。この本発明例3は、フランジ13、14のみ、長手方向がL方向となるように上記高ヤング率鋼を適用し、ウエブ15には一般鋼を適用している。
これら比較例1並びに本発明例1〜3について、それぞれ重量、剛性、高ヤング率鋼の使用率(面積率)を計算により求めた。図2にその計算結果を示すが、重量比率、剛性比率は比較例1を基準として(1.0として)表したときの比率である。因みに、この計算においては、一般鋼のヤング率を205GPaとし、高ヤング率鋼のヤング率を245GPaとしている。
本発明例1は、比較例1と比較して重量比率は1.0と同一であるが、剛性比率は1.16と、約16%向上していた。即ち、本発明例1は、断面寸法や鋼重を増加させることなく曲げ剛性を向上させることができることを意味している。なお、この本発明例2において、高ヤング率鋼の使用率は、フランジ13、14のみに高ヤング率鋼を使用しているところ、0.61として表される。
本発明例2は、比較例1と比較して重量比率は1.0と同一であるが、剛性比率は1.2と、約20%向上していた。即ち、本発明例2は、断面寸法や鋼重を増加させることなく曲げ剛性を向上させることができることを意味している。なお、この本発明例2において、高ヤング率鋼の使用率は、フランジ13、14、ウエブ15全体に高ヤング率鋼を使用しているところ、1.0(100%)として表される。
本発明例3は、比較例1に対して10%軽量化しても比較例1と同等の曲げ剛性を確保することができることを意味している。
図9は、本発明を適用したC形鋼2の各構成例に対する力学的特性の関係を示している。この図9において、本発明を適用したC形鋼2は、本発明例4〜6として、その比較例は、比較例2として表している。
比較例2は、低層建築物の床梁に用いられるC形鋼の典型的な例であり、高さ250mm、フランジ幅が100mm、ウエブの板厚が3.2mm、フランジの板厚が6.0mmである。この比較例2を構成するフランジ、ウエブの材質は、いずれも一般鋼、すなわちヤング率は205GPaの鋼材とする。
本発明例4は、比較例2と同一サイズ、断面形状からなるC形鋼2として構成される。この本発明例4は、フランジ13、14のみ、長手方向がL方向となるように上記高ヤング率鋼を適用し、ウエブ15には一般鋼を適用している。
これに対して本発明例5は、比較例2と同一サイズ、断面形状からなるC形鋼2として構成される。この本発明例2は、フランジ13、14、ウエブ15ともに長手方向がL方向となるように高ヤング率鋼を適用している。
本発明例6は、比較例2に対してフランジ13、14の厚さを6mmから5mmに低減させたC形鋼2として構成される。この本発明例6は、フランジ13、14のみ、長手方向がL方向となるように上記高ヤング率鋼を適用し、ウエブ15には一般鋼を適用している。
これら比較例2並びに本発明例4〜6について、それぞれ重量、剛性、高ヤング率鋼の使用率(面積率)を計算により求めた。計算結果はH形鋼の場合と同じとなるが、念のために図9にその計算結果を示す。重量比率、剛性比率は比較例2を基準として(1.0として)表したときの比率である。因みに、この計算においては、一般鋼のヤング率を205GPaとし、高ヤング率鋼のヤング率を245GPaとしている。
本発明例4は、比較例2と比較して重量比率は1.0と同一であるが、剛性比率は1.16と、約16%向上していた。即ち、本発明例1は、断面寸法や鋼重を増加させることなく曲げ剛性を向上させることができることを意味している。なお、この本発明例2において、高ヤング率鋼の使用率は、フランジ13、14のみに高ヤング率鋼を使用しているところ、0.61として表される。
本発明例5は、比較例2と比較して重量比率は1.0と同一であるが、剛性比率は1.2と、約20%向上していた。即ち、本発明例4は、断面寸法や鋼重を増加させることなく曲げ剛性を向上させることができることを意味している。なお、この本発明例4において、高ヤング率鋼の使用率は、フランジ13、14、ウエブ15全体に高ヤング率鋼を使用しているところ、1.0(100%)として表される。
本発明例6は、比較例2に対して10%軽量化しても比較例2と同等の曲げ剛性を確保することができることを意味している。
図3(a)〜(e)は、本発明を適用した形鋼のバリエーションの例を示している。図3(a)は、ウエブ15がフランジ13、14における長手方向の中心線からずれた構成を示している。また、図3(b)は、フランジ13、14に対してリップ16が付く構成を示している。図3(c)は、ウエブ15の両端を折り曲げて溶接、ドリルねじ、ボルト、接着或いはリベット等の固着手段17でフランジ13、14とウエブ15を接合する構成を示している。図3(d)は、フランジ13、14を重ねることにより剛性を向上させることに重点を置いた構成である。図3(e)は、フランジ13、14の長さが異なる場合について示している。
なお、本発明を適用したH形鋼1は、これら図3(a)〜(e)の何れか2以上を組み合わせて構成してもよいことは勿論である。
また、上述した例においては、あくまでH形鋼1のフランジ13、14に対して高ヤング率鋼を適用する場合を例にとり説明をしてきたが、これに限定されるものではない。例えば、図4(a)に示すように、C形鋼2の上下フランジの各々の先端にリップ16を設けたリップ溝形鋼のフランジ13、14に適用してもよいし、図4(b)に示すようにZ形鋼のフランジ13、14として適用するようにしてもよい。また、図4(c)に示すようにΣ形の鋼材のフランジ13、14として適用してもよいし、図4(d)に示すように、ウエブ15が2本立設された形鋼のフランジ13、14として適用するようにしてもよい。さらに図4(e)〜(g)に示すように、箱形鋼やハット形鋼のフランジ部13、14に適用してもよいことも勿論よく、いずれもH形鋼1や溝形鋼2と同一の技術的思想に基づくものであるといえる。
本発明を適用したH形鋼の構成図である。 本発明を適用したH形鋼の各構成例に対する力学的特性の関係を示す図である。 本発明を適用したH形鋼のバリエーションの例を示す図である。 本発明を他の形鋼に応用した例について示す図である。 一般的なH形鋼の構成について説明するための図である。 本発明を適用したH形鋼の構成図である。 H形鋼およびC形鋼における断面重心、強軸、弱軸の関係を示す図である。 従来の形鋼と本発明を適用した形鋼の相違を明確にするための図である。 本発明を適用したC形鋼の各構成例に対する力学的特性の関係を示す図である
符号の説明
1 H形鋼
2 C形鋼
13、14 フランジ
15 ウエブ
16 リップ
71 強軸
72 弱軸
73 断面重心

Claims (4)

  1. 上下フランジとウエブとを有する形鋼において、
    少なくとも上記上下フランジは、圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板で構成され、
    上記高ヤング率鋼板は、その圧延方向が上下フランジの長手方向となるように上記ウエブに固着されていることを特徴とする形鋼。
  2. 上記ウエブは、その部材長手方向のヤング率が、215GPa超290GPa以下であることを特徴とする請求項1記載の形鋼。
  3. 断面形状がH形であることを特徴とする請求項1又は2記載の形鋼。
  4. 断面形状がC形であることを特徴とする請求項1又は2記載の形鋼。
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