JP2007291721A - トラス構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】棒状部材について三角形を最小基本構造として骨組みしたトラス構造体において、当該棒状部材の形状を変更することなく、その全体座屈強度の向上を図ることが可能なトラス構造体を、重量および製造コスト抑えつつ提供する。
【解決手段】棒状部材のうち断面の最小二次率半径iy(棒状部材の断面積Aと断面の最小二次モーメントIの関数として、√(I/A)で与えられる物理定数)と有効座屈長さLとの比で表される有効細長比(L/iy)が、84≦L/iy≦250の範囲を満たし、圧縮力を受ける少なくとも1以上の棒状部材は、圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板を成形してなる鋼製部材で構成され、高ヤング率鋼板は、その圧延方向が棒状部材の長手方向とされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、棒状部材を三角形を最小基本構造として骨組みしたトラス構造体に関し、より詳しくはトラス構造体を構成する棒状部材の外形寸法や板厚や重量を増すことなく、それらの全体座屈強度を向上させたトラス構造体に関する。
トラス構造体は、土木,建築、橋梁,鉄塔,機械,プラント鉄骨構造物等の骨格構造として広く利用されている。このトラス構造体は、棒状部材を三角形を最小基本構造として骨組みすることにより構成されるのが一般的であり、この棒状部材には、溝形鋼を始めとしてH形鋼、円形鋼管などの様々な鋼製部材が用いられている。
このようなトラス構造体においては、個々の棒状部材には、圧縮力や曲げ力が作用することになり、それらの作用力により、曲げ座屈、ねじれ座屈、曲げねじれ座屈、横座屈などの全体座屈と、板の面外変形を伴い局所的に生じる局部座屈(板座屈)の2種類の座屈が生じることになるが、本発明は前者の全体座屈を対象としたものである。
全体座屈の強度は、一般に有効細長比(L/iy)が長くなればなるほど低下する傾向にある。ここで、Lはトラス構造体を構成する棒状部材の有効座屈長さであり、設計では部材長さを有効座屈長さとして扱うのが一般的である。また、iyは棒状部材の断面の最小二次率半径であり、棒状部材の断面積Aと断面の最小二次モーメントIの関数として、√(I/A)で与えられる物理定数である。たとえば、棒状部材として、図4(a)に示すようなリップのある溝形鋼(ウェブ背が60mm、フランジ幅が30mm、リップ長が10mm、板厚が2.3mm)を対象とする場合では、断面二次モーメントIは、一般に強軸41まわりの値(156000mm4)と、弱軸(座屈が生じる軸)42まわりの値(33200mm4)の2種の値が算出されるが、両値のうち最小となる弱軸まわりの断面二次モーメント、すなわち33200mm4を用いる。断面積Aは287mm2であるので、断面二次率半径iy=√(I/A)=√(33200/287)=10.7mmと算出される。
図4(a)に示すような断面形状を有する棒状部材の全体座屈の発生強度を高める手段としては、まず、鋼材の強度(主に降伏強度)を高める方法が考えられる。しかし、部材の有効細長比(L/iy)が大きい場合では、鋼材の強度を高めても座屈強度を向上させることはできない。このことを図4を用いて説明する。図4(b)は、図4(a)に示したリップのある溝形鋼における有効細長比(L/iy)と部材の座屈強度Pcrの関係を示している。図4の□印を伴う曲線は、鋼材の降伏点を280N/mm2とした場合であり、また、○印を伴う曲線は、鋼材の降伏点を420N/mm2(図4の場合の1.5倍の値)とした場合である。2つの曲線の比較から分かるように、有効細長比(L/iy)が小さい範囲では、鋼材の降伏強度を高めることにより、部材の座屈強度Pcrを高めることができるが、有効細長比(L/iy)が大きく約110以上となる範囲では、鋼材の降伏点を高めても、部材の座屈強度Pcrは高めることができない。なお、ここでの計算は非特許文献1に従って行っている。
このように、鋼材の強度(主に降伏点)を高めても、本発明が対象とするトラス構造体のように有効細長比の比較的大きな部材を扱う場合では、良好な効果が得られないことがわかる。
図4に示した部材において、有効細長比(L/iy)が約110以上の範囲で生じる座屈は、一般に弾性座屈とよばれ、鋼材の強度(主に降伏強度)の影響を殆ど受けることがない。この弾性座屈の発生強度を高める方法としては、例えば特許文献1、2に示されるような、棒状部材の断面形状を改良する技術が提案されている。
特許文献1の開示技術では、部材のウエブ両端を折り曲げて第1フランジと第2フランジを設けると共に、第1フランジの先端を折り返して第3フランジを設けることにより、略J又は略逆J形の端面形状に構成している。
また、特許文献2には、溝形鋼のウエブに、当該ウエブの外側方向に最大張出し長さがフランジ幅の60%以下の張出し部を形成した断面形状を形成する技術が開示されている。即ち、この開示技術では、ウエブ断面のせん断中心を図心(重心)から遠ざかる方向に補剛リブを設けている。溝形鋼がかかる断面形状を有することにより、単位断面積当りの部材耐力を上昇させることが可能となる。
弾性座屈の発生強度を高める別の方法として、鋼材のヤング率Eを向上させるという手段も考えられる。鋼材ヤング率Eは、非特許文献2では、設計用の値として、205GPa(=kN/mm)と定められている。建築鋼構造分野では、この205GPaという値が「基準値」として扱われることが一般的である。
この基準値は、異方性のある鉄の結晶粒の方位が偏ることなく配列したときの安定的な状態に基づき定められたものであるが、実際にはこの値に対して±5%程度の偏りが存在することになる。そのため、一般的な鋼材のヤング率は195GPa以上215GPa以下の範囲の値にあると考えられている。すなわち、一般的な鋼材のヤング率は、基準値の205GPaを超えることはあっても、215GPaを超えることはないといえる。
曲げ剛性EIを向上させる手段として、この鋼材ヤング率Eを向上させ、215GPa超とすることを狙った取組も以前からなされている。ヤング率Eの理論上最大値は約290GPaとなることが知られている(非特許文献3参照)が、例えば特許文献3を始めとして、ヤング率Eを290GPaに近づけるための、幾つかの方法が提案されている。しかしこれらの提案はいずれも、鋼材の圧延直角方向のヤング率を向上させた鋼板(C方向高ヤング率鋼)の開示である。
また、円形鋼管については、たとえば特許文献4において、部材長手方向のヤング率を向上させるために、圧延鋼板の圧延方向に対してヤング率が最大となる方向へ向けて鋼板を斜めに切り出し、その切り出し方向が鋼管の長手方向と一致するように成形することにより、長手方向のヤング率を向上させた鋼管(高剛性鋼管)が開示されている。
特開平10−299172号公報 特開平9−268701号公報 特開平8‐311541号公報 特開2004−330242号公報 日本建築学会、鋼構造座屈設計指針、1996 日本建築学会、鋼構造設計規準 -許容応力度設計法-、2005 桑村仁、鋼構造の性能と設計、共立出版株式会社、2002
上述の特許文献1および特許文献2に示される方法を用いれば、断面形状の変更が許される場合では有効な改良を行うことができる。しかしながら、上述したトラス構造体において、他部材との接合方法の問題や、部材製造技術や製造コストの問題により、これを構成する棒状部材の断面形状の変更が許されない場合が多いことも事実である。
そのため、かかる棒状部材の断面形状の変更を行うことなく、トラス構造体の全体座屈強度を向上させる必要性が高かった。また、一般に全体座屈強度の向上を図る際には、棒状部材の厚肉化を図る方法が先ず考えられるが、これによってトラス構造体を構成する全ての棒状部材の外形寸法や内径寸法を統一させることができず、製造コストの低減を図ることができないという問題点があり、またトラス構造体の全体重量を軽減させることができないという問題点があった。
また、上記特許文献3に示されるような、鋼材の圧延幅方向(C方向)のヤング率を高める手段を利用したとしても、鋼材圧延方向(C方向)の長さが圧延ローラ寸法による制限を受け、最長でも1.4m程度となる。これに対し、建築構造のトラスなどの用途で利用する場合の形鋼は、主に冷間ロール成形により製造されることが一般的であり、そのためには、コイル状に巻かれた鋼材が必要になる。すなわち、1.4m程度では短く、効率的に利用することができない。勿論、C方向にヤング率の高い1.4m程度の長さの鋼材を溶接等でつなぎ合わせて延長したうえで、コイル状に巻いた鋼材を構成することは技術的には可能であるが、製造コストの観点から、その実現は困難である。
また、特許文献4に示される高剛性鋼管に関する発明によれば、円形鋼管や角形鋼管を構成することはできるが、溶接長が長くなったりすることによる高コストが問題となる。
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、棒状部材について三角形を最小基本構造として骨組みしたトラス構造体において、当該棒状部材の形状を変更することなく、その全体座屈強度の向上を図ることが可能なトラス構造体を、重量および製造コスト抑えつつ提供することにある。
第一の発明に係るトラス構造体は、棒状部材について三角形を最小基本構造として骨組みしたトラス構造体において、棒状部材のうち断面の最小二次率半径iy(棒状部材の断面積Aと断面の最小二次モーメントIの関数として、√(I/A)で与えられる物理定数)と有効座屈長さLとの比で表される有効細長比(L/iy)が、84≦L/iy≦250の範囲を満たし、圧縮力を受ける少なくとも1以上の棒状部材は、圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板を成形してなる鋼製部材で構成され、前記高ヤング率鋼板は、その圧延方向が前記棒状部材の長手方向とされていることを特徴とする。
本発明を適用したトラス構造体は、棒状部材について三角形を最小基本構造として骨組みしたトラス構造体において、棒状部材のうち断面二次率半径iyと座屈長さLとの比で表される有効細長比(L/iy)が、84≦L/iy≦250の範囲を満たす、圧縮力を受ける少なくとも1以上の棒状部材は,圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板を成形してなる鋼製部材で構成され、当該高ヤング率鋼は、その圧延方向が上記棒状部材の長手方向とされている。
トラス構造体において、以上のように定めた範囲の有効細長比(L/iy)の部材へ高ヤング率鋼を適用することで、効果的に軽量化を図ることが可能となり、その結果として、運搬性、施工性を改善することが可能となる。また、トラス構造を構成する部材の中で、必要な部材にだけ高価な高ヤング率形鋼を適用し、またかかる高ヤング率形鋼を適用する必要のない有効細長比の小さい部材は、安価な一般鋼を適用すれば足りるため、トラス構造体全体のコストアップを抑えつつ、高強度化、軽量化を実現することが可能となる。
また、従来において、必要とされる強度が異なる場合には、棒状部材の断面形状や板厚を変えることで対応してきたが、本発明を適用したトラス構造体では、高ヤング率形鋼を使用するため、断面形状を変えることなく素材を変えることで耐座屈性能を向上させることが可能となる。このため、棒状部材の部材形状を共通化させることが可能となり、接合時の詳細な寸法条件等を統一することが可能となり、設計の簡略化、設計労力の軽減等を図ることが可能となる。
さらに、本発明では、高ヤング率形鋼を使用することにより、棒状部材の薄肉化を図ることで、棒状部材の断面形状の統一化を実現することも可能となり、製造設備を縮小させることが可能となり、ひいては製造コストそのものを軽減させることも可能となる。
本発明において、有効細長比(L/iy)を84≦L/iy≦250の範囲に限定している根拠について説明する。
まず、有効細長比(L/iy)の上限値の根拠ついて説明する。有効細長比(L/iy)は、無限に大きくなっても理論的には発明の効果が発揮されることになる。しかし、実験および解析により、有効細長比(L/iy)を、250超とした場合には、部材の初期不整や初期ひずみの影響が過大になり、ヤング率を高めることによる効果は小さくなることが確認された。この検討結果を踏まえ、本発明の有効細長比(L/iy)の上限値を250以下としている。
次に有効細長比(L/iy)の下限値の根拠ついて説明する。図5は、ウェブ背が60mm、フランジ幅が30mm、リップ長が10mm、板厚が2.3mm、断面二次率半径が10.7mm(断面積が287mm2、弱軸まわりの断面二次モーメントが33200mm4であるため、断面二次率半径は√(33200/287)として計算される)、鋼材の降伏強度が280N/mm2となるリップのある溝形鋼の有効細長比(L/iy)と部材の座屈強度Pcrの関係を示している。図5の中には2種類のプロットがあるが、破線で示すプロットが、ヤング率を205GPaとして計算した結果であり、実線で示すプロットが、ヤング率を245GPaの場合の結果である。図5から、ヤング率が向上することにより、座屈強度Pcrが向上することが読み取れるが、この向上分をさらに定量的に示したものが図6である。
図6では、有効細長比(L/iy)を横軸とし、ヤング率を205GPaから245GPaに引き上げたことによる部材の座屈強度Pcrの向上率を縦軸としている。
ヤング率を高めることによる座屈強度向上効果を、設計上有意な効果として評価するためには、少なくても5%以上は必要であると考えられるが、この図から座屈強度を5%引き上げるためには、有効細長比(L/iy)は84以上である必要があることが読み取れる。
以上のような、典型的なリップのある溝形鋼を対象にした考察に基づき、部材の座屈強度を5%以上高められるための、有効細長比(L/iy)の下限値を84としている。
なお、部材の座屈強度をより高めるための範囲として、有効細長比(L/iy)は105以上であることが望ましく、120以上であれば更に望ましい。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、棒状部材を骨組みした低層建築物の屋根架構として利用されるトラス構造体を例に掲げ、図面を参照しながら詳細に説明をする。
図1は、本発明を適用したトラス構造体1の構成図である。このトラス構造体1は、地盤水平方向に対して上側に傾斜した状態で配設される第1の棒状部材11a、11dと、この第1の棒状部材11a、11dの上端が連結される連結点B、Cに同一傾斜角をもってそれぞれ連結されるとともに互いの上端が連結点Aにおいて連結される第1の棒状部材11b、11cとを備えている。ちなみに、この連結点Aには、鉛直方向から立ち上げられた第1の棒状部材11eの上端も取り付けられる。
第2の棒状部材12a〜第2の棒状部材12dは、地盤水平方向へ延長される。この第2の棒状部材12aと第2の棒状部材12bとの連結点Dには、第2の棒状部材12eが立ち上げられ、その上端は上記連結点Bに連結される。また、この第2の棒状部材12cと第2の棒状部材12dとの連結点Eには、第2の棒状部材12fが立ち上げられ、その上端は上記連結点Cに連結される。
第3の棒状部材13aは、連結点Fから連結点Bに至るまで斜めに配設され、また第3の棒状部材13bは、連結点Fから連結点Cに至るまで斜めに配設されている。
即ち、このトラス構造体1は、これら棒状部材11〜13について三角形を最小基本構造として骨組みすることによりトラス構造を構成している。
図2はこれら棒状部材11〜13の断面構成を示している。第1の棒状部材11は、図2(a)に示すようにフランジ32とウエブ31とからなる2本の溝形鋼21におけるウエブ31の背面同士を接合することにより構成される組立形鋼である。このときフランジ32の先端を折り曲げることによりリップ33を形成させるようにしてもよい。
棒状部材12、13は、例えば図2(b)に示すように、フランジ32とウエブ31とからなる1本の溝形鋼21により構成される。
このようなトラス構造体1において強度を増加させるためには、これら棒状部材11〜13のうち、圧縮力に対する応力度比(作用応力/保有耐力)が大きく、有効細長比(L/iy)が、84≦L/iy≦250となり、全体座屈し易い状況にある部材について圧延方向(L方向)のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率形鋼を適用する。この高ヤング率形鋼は、その圧延方向(L方向)が棒状部材11〜13の長手方向となるように使用される。
一般にこの第3の棒状部材13a、13bの全体座屈強度を向上させるためには、板厚を増加させる等、断面形状を変えなければならないのに対して、本発明を適用したトラス構造体1は、L方向のヤング率を高めた高ヤング率形鋼を使用するため、板厚を厚肉化させることなく全体座屈強度を向上させることが可能となる。
特に、本発明を適用したトラス構造体1は、高ヤング率形鋼のL方向が長手方向とさせている。その結果、第3の棒状部材13a、13bの長手方向のヤング率を215GPa超290GPa以下の範囲まで向上させることが可能となる。この高ヤング率形鋼のL方向は、C方向と比較して長く取ることも可能となることから、当該L方向を第3の棒状部材13a、13bの長手方向としてより好適に用いることが可能となる。
本発明では、トラス構造体に適用するL方向高ヤング率鋼におけるヤング率の範囲を上記の通り定めているが、本発明範囲の下限値(すなわち215GPa)は、一般的な鋼材におけるL方向ヤング率Eの最大値に基づき定めており、また、本発明範囲の上限値(すなわち290GPa)は、鋼材のヤング率の理論上の最大値に基づき定めている。
しかし、製造難度、製造時間、製造コスト、あるいは材料の歩留り等を考慮すれば、圧延方向(L方向)のヤング率は225GPa以上260GPa以下であることが好ましく、更にいえば、230GPa以上250GPaであることが最も好ましい。
図7は、従来の形鋼と本発明を適用した形鋼の相違および範囲を明確にするための図である。グラフの横軸を形鋼の長手方向のヤング率Eとし、また、グラフの縦軸を形鋼の座屈強度Pcrとし、両者の関係を示したものである。
ここで例として用いている形鋼は低層建築物の屋根トラスに用いられる典型的なリップのある溝形鋼(ウェブ背が60mm、フランジ幅が30mm、板厚が2.3mm、断面二次率半径が10.7mm、断面積が287mm2、有効座屈長さが1300mm、有効細長比(L/iy)が121)の場合である。
図7のグラフ中に点線で示される部分が、従来のトラス構造体で広く使用される形鋼の範囲(195GPa以上215GPa以下の一般的なヤング率を有する鋼材を適用した範囲)であり、破線で示される部分が本発明の範囲(215GPa超290GPa以下のL方向高ヤング率鋼を適用した範囲)である。そして、実線で示される部分が本発明の中でも好ましい範囲(225GPa以上260GPa以下のL方向高ヤング率鋼を適用した範囲)であり、二重線で示される部分が最良の範囲(230GPa以上250GPa以下のL方向高ヤング率鋼を適用した範囲)である。
なお、ここでいう全体座屈し易い状況にある部材とは、棒状部材11〜13のうち断面二次率半径iyと座屈長さLとの比で表される有効細長比(L/iy)が、84≦L/iy≦250の範囲を満たす棒状部材11〜13とするが、これに限定されるものではなく、他の要因から座屈が生じやすい状況にあるものもこれに含まれる。
また、上述した例においては、トラス構造体1をあくまで低層建築用の 屋根トラスに適用することを想定して説明をしたが、これに限定される趣旨ではなく、例えば、住宅用屋根タルキ、単層ラチス構造、立体トラス、鉄塔等、棒状部材について三角形を最小基本構造として骨組みした構造物であればいかなるものに適用しても同様の効果が得られることは勿論である。
さらに、上述した例においては、棒状部材としてリップのある溝形鋼(図2(b))、およびリップのある溝形鋼を背中合わせにした組立形鋼(図2(a))で説明してきたが、この他にも、図12に示すような円形鋼管、角形鋼管、リップの無い溝形鋼、H形鋼、Z形鋼、Σ形鋼、ハット形鋼など、L方向高ヤング率鋼を成形してなる鋼製部材であれば、本発明の範囲に含まれ、同等の効果を得ることができる。また、図13に示すような複数の形鋼からなる鋼製部材も勿論本発明の技術的範囲に含まれる。
この圧延方向(L方向)のヤング率が215GPa超290GPa以下となる鋼材としては、たとえば、特開2005−273001号公報に開示されている発明のように、「質量%で、C:0.0005〜0.30%、Si:2.5%以下、Mn:2.7〜5.0%、P:0.15%以下、S:0.015%以下、Mo:0.15〜1.5%、B:0.0006〜0.01%、Al:0.15%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼材」の適性が高い。 しかし、必ずしもこの鋼材に限定される訳はなく、上述の成分に、「質量%で更に、Ti:0.001〜0.20%、Nb:0.001〜0.20%のうち、1種または2種を含有させた鋼材」や、出願番号2005−330429に示す「質量%で、C:0.0005〜0.30%、Si:2.5%以下、Mn:0.1〜5.0%、P:0.15%以下、S:0.015%以下、Al:0.15%以下、N:0.01%以下、及びMo:0.005〜1.5%、Nb:0.005〜0.20% 、Ti:48/14×N(質量%)以上,0.2%以下、B:0.0001〜0.01%、のいずれか1種又は2種以上を合計で0.015〜0.191質量%含有し、板厚の1/8層における{110}<223>及び/又は{110}<111>の極密度が10以上であることを特徴とする高ヤング率鋼板」を用いることも可能である。
この他にも、鋼材組成のいかんによらず「JISZ2280に準拠した常温での横共振法に基づき計測したL方向ヤング率の値、または静的引張試験法に基づき計測した圧延方向(L方向)のヤング率の値が215GPa超290GPa以下のあることが確認される鋼材」を用いた場合でも同等の効果が得られる。
素材のヤング率の測定はJISZ2280に準拠した常温での横共振法、あるいは静的引張試験法に基づき実施する。
横振動法では、試料を固定せずに振動を加え、発振機の振動数を徐々に変化させて一次共振振動数を測定して下式よりヤング率を算出する。
E=0.946×(l/h)3 ×m/w×f2
ここで、E:動的ヤング率(N/m2 )、l:試験片の長さ(m)、h:試験片の厚さ(m)、m:質量(kg)、w:試験片の幅(m)、f:横共振法の一次共振振動数(s-1)、である。
静的引張ヤング率試験法では、JISZ2201に準拠した引張試験片を用いて、素材降伏強度の1/2に相当する引張応力レベルまで5回繰り返し引張力を加え測定した応力-ひずみ線図の傾きに基づき算出する。測定のバラツキを排除するため、5回の計測結果のうちの最大値および最小値を除いた3つの計測値の平均値として算出した値を鋼材のヤング率とするのが一般的である。
なお、3の棒状部材13の長手方向の長さは、1.4m以下となる場合もあるので、たとえば特許文献(特開平8−311541号公報)に示されるC方向(圧延幅方向)のヤング率を向上させた鋼材でも、技術的には可能となる。しかし、一般にここで使用される溝形鋼等の棒状部材は、連続的なロール成形で製造しなければ、コスト的に実現不可能になる。ロール成形により製造するためには、コイル状に巻いた鋼材の利用が必須となる。つまり、本発明を実現するためには、L方向に向けてヤング率を向上させた鋼板を用いることが必須となり、C方向(圧延幅方向)のヤング率を向上させた鋼材では実現不可能である。
図8は、低層建築物の屋根架構として利用されるトラス構造体の典型的な例であるが、この図8を利用して、本発明による実施例1を従来技術(比較例)と対比させて具体的な差異を述べる。従来技術におけるトラス構造体の各形鋼の断面の形状および寸法、板厚、断面の最小二次率半径、有効細長比、ヤング率は図9に示す通りである。この比較例では、全ての形鋼は一般鋼材、すなわちヤング率が基準値である205GPaの鋼材で構成されている。このトラス構造体の各部材の寸法等は、主に雪荷重に対し十分安全な強度を有するよう定められたものである。
実施例1では、比較例1において、有効細長比が最大の225となる形鋼83aおよび83bに対し、L方向のヤング率が245GPaとなる高ヤング率鋼、鋼材のL方向(圧延方向)が形鋼の材長方向になるように適用した例を示している。実施例1の各形鋼の構成は図10に示す通りであるが、高ヤング率鋼を用いることで、高ヤング率鋼を使用しない場合において板厚tを3.2mmとする必要があった形鋼83aおよび83bについて、その板厚を2.3mmまで薄肉化することができる。このため、構成する形鋼の板厚を全て2.3mmに統一することができる。
なお、実施例1において、下弦材となる形鋼82a、82b、82cおよび82dの各々の有効細長比も192と比較的大きくなるが、これらの形鋼に作用する主な力は引張力であるため、座屈の発生は問題にならない。そのため、高ヤング率鋼を適用しなくてもよい。
実施例2を従来技術(比較例)と対比させて具体的な差異を述べる。実施例2では、トラス構造体を構成する圧縮力を受ける形鋼のうち、有効細長比が105以上250以下となる形鋼81a、81b、81c、81d、81e、83aおよび83bに対し、L方向のヤング率が245GPaとなる高ヤング率鋼を、鋼材のL方向(圧延方向)が形鋼の材長方向になるように適用している。
実施例2の各形鋼の構成は図11に示す通りであるが、L方向高ヤング率鋼を適用した結果、形鋼81a、81b、81cおよび81dについては板厚tを1.6mmとすることができ、形鋼83aおよび83bについては板厚tを2.3mmとすることが可能となり、トラス重量全体を15%低減させることが可能となる。即ち、この実施例においては、高ヤング率鋼を使用しない場合において板厚tを3.2mmとする必要があった形鋼83aおよび83bについて、その板厚tを2.3mmまで薄肉化することができる。さらに、高ヤング率鋼を使用しない場合において板厚tを2.3mmとする必要があった形鋼81a、81b、81cおよび81dについて、その板厚tを1.6mmまで薄肉化することができる。このため、トラス構造体1全体の軽量化を実現することが可能となる。
なお、実施例2においても実施例1と同様に、下弦材となる形鋼82a、82b、82cおよび82dの各々の有効細長比は192と大きくなるが、これらの形鋼に作用する主な力は引張力である。そのため、座屈の発生は問題にならず、高ヤング率鋼を適用しなくてもよい。
本発明を適用したトラス構造体の構成図である。 本発明を適用したトラス構造体を構成する棒状部材の断面形状を示す図である。 実施例について説明するための図である。 鋼材の降伏強度が向上しても、部材の座屈強度が向上しない場合があることを示すための図である。 鋼材のヤング率と部材強度の関係を示す図である。 鋼材のヤング率と部材強度の上昇率の関係を示す図である。 従来技術と本発明を適用した技術の相違を明確にするための図である。 従来技術(比較例)と実施例1および2の相違を説明するための図である。 従来技術(比較例)におけるトラス構造体を構成する形鋼の一覧図である。 本発明(実施例1)におけるトラス構造体を構成する形鋼の一覧図である。 本発明(実施例2)におけるトラス構造体を構成する形鋼の一覧図である。 鋼製部材の断面形状の一例を示す図である。 複数の形鋼により構成される鋼製部材の一例を示す図である。
符号の説明
1 トラス構造体
11 第1の棒状部材
12 第2の棒状部材
13 第3の棒状部材
21 溝形鋼
31 ウエブ
32 フランジ
41 強軸
42 弱軸(座屈が生じる軸)
81 第1の棒状部材
82 第2の棒状部材
83 第3の棒状部材

Claims (1)

  1. 棒状部材について三角形を最小基本構造として骨組みしたトラス構造体において、
    上記棒状部材のうち断面の最小二次率半径iy(棒状部材の断面積Aと断面の最小二次モーメントIの関数として、√(I/A)で与えられる物理定数)と有効座屈長さLとの比で表される有効細長比(L/iy)が、84≦L/iy≦250の範囲を満たし、圧縮力を受ける少なくとも1以上の棒状部材は、圧延方向のヤング率が215GPa超290GPa以下である高ヤング率鋼板を成形してなる鋼製部材で構成され、
    上記高ヤング率鋼板は、その圧延方向が上記棒状部材の長手方向とされていることを特徴とするトラス構造体。
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