JP2007277391A - ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物および成形品 - Google Patents

ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性、耐振動疲労性に優れ、さらに、当該組成物を用いた射出成形品における流動方向と直角方向の機械的特性と成形収縮率の異方性および反りが少ないガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物および成形品を提供すること。
【解決手段】末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計が100ミリ当量/kg以上200ミリ当量/kg以下でありかつ、末端アミノ基濃度が末端カルボキシル基濃度より高いポリアミド樹脂30〜90質量部、および繊維径10〜20μmでかつ、重量平均繊維長さが1.8〜30mmのガラス繊維70〜10質量部からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械的特性、特に面衝撃性、耐振動疲労性に優れ、かつ射出成形によって得られた成形品において、機械的強度および成形収縮率が流動方向と該流動方向に直角な方向との異方性や反りが少ないガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂は、その優れた耐熱性や機械的特性を生かし、自動車、機械関連、建材および住宅設備部品などに広く利用されている。特に、ガラス繊維を配合した強化熱可塑性樹脂組成物は、その優れた機械的特性および成形加工性から、金属材料を代替し、部品の軽量化や部品点数の削減に有用である。さらに、例えば特許文献1、特許文献2に記載されている長繊維強化熱可塑性樹脂組成物は成形した時に繊維の損傷が少ないことから、特に機械的強度に優れた成形品を提供する成形材料として知られている。
一方、特許文献3には、末端アミノ基濃度が一定以上のときに耐加水分解性に優れるポリアミド膜が開示されている。また、特許文献4には、末端アミノ基濃度が一定以上のときに溶着強度に優れる、ガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献5には、末端アミノ基濃度が末端カルボキシル基濃度より高い範囲においてガラスとポリアミドの界面の耐久性、特に耐不凍液性に優れたガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、上記技術においてもなお、例えば、自動車エンジンルーム内において、常に振動を受け、他の金属部品との密着性、気密性を要求される部品、例えば、エンジンヘッドカバー、オイルパン、チェーンガイド等に用いる場合には、十分な性能を発現できない場合があった。
特公昭63−37694号公報 特開平5−162124号公報 特表平9−507426号公報 特開2002−30215号公報 特開平10−316849号公報
本発明は、こうした実情のもとに耐衝撃性、耐振動疲労性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とし、さらに、当該組成物を用いた射出成形品における流動方向と直角方向の機械的特性と成形収縮率の異方性、反りが少ない成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ガラス長繊維ポリアミド樹脂組成物において、特定の末端基量を有するポリアミド樹脂と特定の形状のガラス繊維を用いることが有効であることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は以下に記載する通りのガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物及びその射出成形品である。
[1]末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計が100ミリ当量/kg以上200ミリ当量/kg以下でありかつ、末端アミノ基濃度が末端カルボキシル基濃度より高いポリアミド樹脂30〜90質量部、および繊維径10〜20μmでかつ、重量平均繊維長さが1.8〜30mmのガラス繊維70〜10質量部からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[2]前記ポリアミド樹脂がポリアミド66であることを特徴とする[1]記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[3]前記ポリアミド樹脂が半芳香族ポリアミドであることを特徴とする[1]記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物からなる射出成形品。
本発明により、高い強度・剛性を有し、耐衝撃性、耐振動疲労性等の実用特性に優れたガラス長繊維ポリアミド樹脂が得られるようになった。また、該組成物を射出成形してなる成形品により、流動方向と直角方向の機械的特性、成形収縮率の異方性、反りが少ない部品が得られるようになり、例えば、自動車エンジンルーム内で使用されるエンジンヘッドカバー、オイルパン、チェーンカバー等の金属部品を代替し軽量化できるようになる。
本発明におけるポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計が、ガラス長繊維束への樹脂の含浸性の観点から100ミリ当量/kg以上である必要がありかつ、機械的特性発現の観点から200ミリ当量/kg以下である必要がある。より好ましい末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計は、110〜150ミリ当量/kgであり、特に好ましい範囲は115〜140ミリ当量/kgである。また、本発明のポリアミド樹脂は耐振動疲労特性の観点から末端アミノ基濃度が末端カルボキシル基濃度より高い必要がある。
本発明に用いるポリアミド樹脂は、上記の末端基の要件を満たしていれば特に制限はないが、例えば、ε−カプロラクタム、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(3ーメチルー4アミノシクロヘキシル)メタン等のポリアミド形成性モノマーを適宜組み合わせて得られるホモポリマー単独、共重合体単独、ホモポリマー同士の混合物、共重合体同士の混合物、共重合体とホモポリマーの混合物等を用いることができる。このようなポリアミドの具体例としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸を重合してなるポリアミド(ポリアミド6I)、イソフタル酸とビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンを重合してなるポリアミド(ポリアミドPACMI)などのホモポリマー、アジピン酸とイソフタル酸とへキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6I共重合体)、アジピン酸とテレフタル酸とへキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6T共重合体)、イソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド(ポリアミド6I/6T共重合体)、アジピン酸とイソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6I/6T共重合体)、テレフタル酸と2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド(ポリアミドTMDT共重合体)、イソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンを重合してなる共重合ポリアミド、およびイソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンを重合してなる共重合ポリアミドとポリアミド6の混合物、ポリアミドMXD6とポリアミド66の混合物等が挙げられる。なかでも、ポリアミド66、ポリアミド66/6T共重合体、ポリアミド66/6T/6I共重合体などの半芳香族ポリアミドは、融点が高くより耐熱性の必要な部品、例えば自動車エンジンルーム内部品に好適である。また、ポリアミド66/6I共重合体、ポリアミドMXD6などの半芳香族ポリアミドおよびそれら半芳香族ポリアミドと他の脂肪族ポリアミドとのブレンド物は、その共重合比、ブレンド比により結晶化温度を適宜制御することで成形品表面にガラス繊維が露出し難く、外観に優れた成形品を得られやすい。
本発明に用いるポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度の制御方法としては、例えば重合時にジアミンとジカルボン酸の等モル塩等のポリアミド原料に更に、モノカルボン酸、ジカルボン酸、モノアミン、モノアミンを一種又は複数種を末端基調整剤として所定量添加(配合)するという方法が挙げられる。具体的な例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ウンデカン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸フェニル酢酸等のモノカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等のモノアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等のジアミンが挙げられる。酢酸、アジピン酸、ヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン等でポリアミドの末端アミノ基濃度を制御するのが、製造効率的に簡便で好ましい。
本発明における末端アミノ基濃度(単位:ミリ当量/kg)及び末端カルボキシル基濃度(単位:ミリ当量/kg)の測定方法としては、末端アミノ基濃度に関しては、例えば、所定量の試料を90%フェノール水溶液に溶解して、25℃にて1/50N塩酸で電位滴定し算出する方法が挙げられる。又末端カルボキシル基濃度に関しては、例えば、所定量の試料を160℃のベンジルアルコールに溶解して、1/10NNaOHのエチレングリコール溶液で、指示薬としてフェノールフタレインを使用して滴定し算出する方法が挙げられる。
本発明におけるポリアミドの水分は、特に限定しないが、なかでもコンパウンド原料のポリアミドのペレット水分率0.1〜0.5質量%に調整したものを用いて、コンパウンドするのが好ましい。
本発明のガラス繊維径は、樹脂の含浸性の観点から10μm以上、機械的特性発現の観点から20μm以下である。より好ましいガラス繊維平均径は、10〜17μm、特に好ましい範囲は13〜17μmである。
本発明におけるガラス繊維の組成物および成形品中での重量平均繊維長は、1.8mm〜30mmの範囲である必要がある。
重量平均ガラス繊維長が、1.8mm以上であれば、補強効果が発揮され、特に高温時の剛性改善効果に優れる。また、例えば射出成形品における流動方向と、直角方向の機械的特性や、成形収縮率の異方性や反りが小さくなり、部品設計の上で大きな利点となる。重量平均ガラス繊維長が30mm以下であれば、成形加工時に当該ガラス長繊維強化熱可塑性樹脂を供給する際、特別な装置等を用いなくても容易に供給可能である。より好ましい重量平均ガラス繊維長の範囲は2mm〜20mm、特に好ましい範囲は2.5mm〜15mmである。また当該ガラス長繊維強化熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形品は、重量平均ガラス繊維長は、1.8mm〜5mm程度となる。より好ましい範囲は2.5mm〜3mmである。重量平均ガラス繊維長を本発明の範囲にするためには、例えば、連続したガラス繊維ロービングを用い公知のプルトルージョン法や、特開2003−175512号公報に記載の方法によって工夫されたプルトルージョン法によって製造することができる。
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維の配合割合はポリアミド樹脂30〜90質量部に対して、ガラス繊維70〜10質量部である。十分な機械的特性を得るためには、ガラス繊維が10質量部以上である必要がある。また、ガラス長繊維束にポリアミド樹脂を十分に含浸させるためには、ガラス繊維が70質量部以下である必要がある。より好ましくは、ポリアミド樹脂35〜75質量部に対して、ガラス繊維65〜25質量部であり、特に好ましいのは、ポリアミド樹脂67〜40質量部に対して、ガラス繊維60〜33質量部である。
本発明に用いるガラス繊維は、上記要件を満足していれば特に制限はなく、通常の強化熱可塑性樹脂に使用されているものを使うことができ、通常、ガラス繊維の表面には、カップリング剤、集束剤等を適宜付着させたものを用いる。カップリング剤としては、アミノ系、エポキシ系、クロル系、および、カチオン系シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤等が例示できる。集束剤としては、無水マレイン酸系、ウレタン系、アクリル系、および、これらの共重合体や混合物を含有する集束剤等が例示できる。
本発明のガラス長繊維強化熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲に於いて通常の熱可塑性樹脂に添加される酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色染・顔料等を添加することもできるし、他の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
ポリアミド樹脂としてアミノ末端基濃度83ミリ当量/kg カルボキシル末端基濃度44ミリ当量/kg (蟻酸溶液粘度VR 46)のポリアミド66を、また、ガラス繊維として繊維径13μmのフィラメント状ガラス繊維約3800本を集束した日本電気硝子株式会社製ロービング状ガラス繊維T−428を用いた。組成物を作成するために、Coperion社製2軸押出機ZSK25を用い、バレル温度310℃、スクリュー回転数300rpmでポリアミド66樹脂を310℃で溶融し、特開2003−175512号公報に詳述される株式会社神戸製鋼所製の長繊維強化樹脂製造装置の樹脂含浸用ローラーを供えたクロスヘッドに供給した。
一方ガラス繊維は、ロービング台より2本のロービング(ガラス繊維束)を溶融ポリアミド樹脂が充満するクロスヘッドに導入した。
クロスヘッド内で溶融ポリアミドが含浸されたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂をノズルより連続的に引き抜き1本のストランド上にし、水冷バス中で冷却固化したのちペレタイザーで長さ約1cmの、直径約3mmの円筒状ペレットを得た。このとき、ストランドが引き取られる際、ストランドの引き取り方向を軸にストランドを回転させ撚りを付与した。
また、組成物中にガラス繊維含有率が約50質量部になるよう、ガラス繊維ロービングの引き取り速度および、ポリアミド66樹脂の吐出量を制御した。
得られたペレットを以下の方法により、評価を行った。
(1)ガラス繊維含有率:得られたガラス長繊維強化樹脂組成物のペレットを、ISO3451−4に準じて、燃焼法でガラス繊維含有率を求めた。
(2)重量平均ガラス繊維長:得られたガラス長繊維強化樹脂組成物のペレットを、電気炉にて800℃で樹脂成分が実質上なくなるまで燃焼除去した。得られたガラス繊維をポリエチレングリコールを用いて、スライドグラス上に、破損がないよう静かにのばした。これを光学顕微鏡下で観察し、無作為に選んだ約50本のガラス繊維の長さを旭化成株式会社製画像解析装置IP−1000を用いて測定し、組成物ペレット中の重量平均ガラス繊維長を求めた。
また、ガラス長繊維強化樹脂組成物を東芝機械株式会社製IS80EPN射出成形機を用い、シリンダー温度を融点+25℃、充填時間が約1秒になるよう射出圧力、速度を適宜調整してASTM1号ダンベル状試験片を得た。尚、金型温度は、80〜120℃の範囲で組成物のガラス転移温度に応じて適宜設定した。得られた試験片を用い、同様の方法で、ガラス繊維を沈降させ、無作為に選んだ300−500本のガラス繊維の長さを旭化成株式会社製画像解析装置IP−1000を用いて測定し、成形品中の重量平均ガラス繊維長を求めた。
(3)シャルピー衝撃強度:前記(2)と同様の方法で150x150x4mm(ゲート:6x4mmで、正方形状試験片の一辺の中央に位置する。)の平板状試験片を得、射出成形時の流動方向及び該流動方向と直角方向にそれぞれ切り出しISO180に準じてシャルピー衝撃強度を測定した。値が高いとともに、流動方向と直角方向の比が1に近い方が好適である。
(4)曲げ特性:前記(3)と同様の方法で試験片を得、射出成形時の流動方向及び該流動方向と直角方向にそれぞれ切り出し、ISO178に準じて測定を行った。値が高いとともに、流動方向と直角方向の比が1に近い方が好適である。
(5)耐振動疲労性:前記(2)と同様の方法でASTM1号試験片を得、JIS K7118に準じて株式会社鷺宮製作所製油圧サーボ疲労試験機EHF−50−10−3を用い、120℃の雰囲気下、周波数20Hzの正弦波にて引張り荷重を負荷し、1,000,000回で破壊する応力を求めた。破壊応力が高い方が耐振動疲労性に優れる。
(6)成形収縮率:前記(3)と同様の方法で試験片を得、23℃、50%相対湿度下で24時間静置した後、試験片の寸法を射出成形時の流動方向と該流動方向に対し直角方向のそれぞれをノギスで0.1mmの精度で測定し、予め同様の方法で測定しておいた成形時の金型温度における金型基準寸法と比較し、試験片の寸法と金型基準寸法の差を金型基準寸法で除した値を100分率で表した数値を成形収縮率とした。成形収縮率の値が低いとともに、流動方向と直角方向の収縮率の比が1に近い方が好適である。
(7)反り:前記(3)と同様の方法で試験片を得、23℃、50%相対湿度下で24時間静置した後、定盤の上で成形品の4角のうち、1角を定盤に押し付け持ち上がった対角の下面と定盤との距離をノギスで0.1mmの精度で測定した。4角のうち最も定盤との距離が大きいものを反りとした。反り値の小さいものが優れる。
(8)表面光沢性:前記(3)と同様の方法で試験片を得、試験片の中央部をHORIBA製IG320光沢計を用いてJIS−K7150に準じて60度グロスを測定した。
グロス値の高いものが、ガラス繊維の表面への露出が少なく外観に優れることを示す。
[実施例2]
ガラス繊維の含有率を約30質量部に調整した以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得た。
[実施例3]
ガラス繊維の含有率を約65質量部に調整した以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得た。
[実施例4]
ポリアミド樹脂として、アミノ末端基濃度124ミリ当量/kg、カルボキシル末端基濃度47ミリ当量/kg(蟻酸溶液粘度VR30)のポリアミド66/6I(82/18wt%)共重合体を用い、ガラス繊維として、繊維径10μmのフィラメント状ガラス繊維約3200本を集束した日本電気硝子株式会社製ロービング状ガラス繊維T−428を用い、組成物作成時の押出機バレル温度を290℃にした以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得た。
[実施例5]
ガラス繊維含有率を約30質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でペレットを得た。
[実施例6]
ポリアミド樹脂として、アミノ末端基濃度67ミリ当量/kg、カルボキシル末端基濃度45ミリ当量/kg(蟻酸溶液粘度VR51)のポリアミド66/6T(80/20wt%)共重合体を用い、ガラス繊維として、繊維径17μmのフィラメント状ガラス繊維約4200本を集束した日本電気硝子株式会社製ロービング状ガラス繊維T−428を用い、組成物作成時の押出機バレル温度を310℃にし、ガラス繊維含有率を約30質量部とした以外は、実施例4と同様の方法でペレットを得た。
[実施例7]
ガラス繊維含有率を約40質量部とした以外は、実施例6と同様の方法でペレットを得た。
[比較例1]
ポリアミド樹脂としてアミノ末端基濃度44ミリ当量/kg カルボキシル末端基濃度81ミリ当量/kg (蟻酸溶液粘度VR 45)のポリアミド66を用いた以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得た。
[比較例2]
ガラス繊維含有率を、約30質量部に調整した以外は、比較例1と同様の方法でペレットを作成した。
[比較例3]
ガラス繊維含有率を、約65質量部に調整した以外は、比較例1と同様の方法でペレットを作成した。
[比較例4]
ポリアミド樹脂としてアミノ末端基濃度83ミリ当量/kg カルボキシル末端基濃度44ミリ当量/kg (蟻酸溶液粘度VR 46)のポリアミド66、ガラス繊維として繊維径13μmのフィラメント状ガラス繊維約3800本を集束した日本電気硝子株式会社製ロービング状ガラス繊維T−428を用いた。組成物を作成するために、Coperion社製ZSK40MC2軸押出機を用いた。この際、スクリュー回転数480rpm、吐出量90kg/hr、バレル設定温度295℃、ポリアミド樹脂投入量45kg/hrとし、ガラス繊維含有率を約50質量部になるよう調整した。該押出機のバレルの樹脂溶融位置より下流側に直接ガラス繊維ロービングを導入し、直径5mmのダイス出口から押出されたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ストランドを連続的に得、水冷固化させた後、ペレタイザーにて、長さ約10mm、直径約3mmのペレットを得た。
[比較例5]
ポリアミド樹脂として、アミノ末端基濃度45ミリ当量/kg カルボキシル末端基濃度123ミリ当量/kg (蟻酸溶液粘度VR 32)のポリアミド66/6I(82/18wt%)共重合体を用い、実施例4と同様の方法でペレットを得た。
[比較例6]
ガラス繊維含有率を約30質量部とした以外は、比較例5と同様の方法でペレットを得た。
[比較例7]
ポリアミド樹脂としてアミノ末端基濃度45ミリ当量/kg、カルボキシル末端基濃度68ミリ当量/kg(蟻酸溶液粘度VR52)のポリアミド66/6T(80/20wt%)共重合体を用いた以外は、実施例6と同様の方法でペレットを得た。
[比較例8]
ガラス繊維含有率を40質量部とした以外は、比較例7と同様の方法でペレットを得た。
[比較例9]
ペレットのカット長を約40mmとした以外は、実施例1と同様の方法でペレットを得た。
[比較例10]
ポリアミド樹脂としてアミノ末端基濃度45ミリ当量/kg カルボキシル末端基濃度35ミリ当量/kg (蟻酸溶液粘度VR 80)のポリアミド66を用いた以外は実施例1と同様の方法で試料作成を試みたが、溶融樹脂粘度が高すぎてストランドが引き取れなかった。
[比較例11]
ポリアミド樹脂としてアミノ末端基濃度132ミリ当量/kg カルボキシル末端基濃度88ミリ当量/kg (蟻酸溶液粘度VR 23)のポリアミド66を用いた以外は実施例1と同様の方法で試料作成を試みたが、溶融樹脂粘度が低すぎてストランドが引き取れなかった。
実施例1〜7の評価結果を表1および比較例1〜8の評価結果を表2に示す。
Figure 2007277391
Figure 2007277391
実施例1〜3と比較例1〜3をそれぞれ同一ガラス繊維含有率同士で比較すると、実施例1〜3の方が、シャルピー衝撃強度、耐振動疲労性、かつ曲げ強度、曲げ弾性率、成形収縮率の異方性、反りが少なく優れている。同様に、実施例4、5と比較例5,6を比較すると実施例4,5の方が、シャルピー衝撃強度、耐振動疲労性に優れる。実施例6、7と比較例7、8の比較においても、前記同様の効果が、シャルピー衝撃強度、耐振動疲労性、かつ曲げ強度、曲げ弾性率、成形収縮率の異方性、反りに認められる。さらに、実施例1と比較例4を比較すると、末端基濃度が本発明の要件を満足していても重量平均繊維長が本発明の範囲にないと性能が十分に発揮されない。実施例4、5に示す60°グロスの値より、外観を重要視する部品においては、ポリアミド樹脂としてポリアミド66/6I共重合体が好適であることを示す。
本発明により、自動車、機械関連、建材および住宅設備等の分野において金属材料を代替し、部品の軽量化や部品点数の削減が可能となった。

Claims (4)

  1. 末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計が100ミリ当量/kg以上200ミリ当量/kg以下でありかつ、末端アミノ基濃度が末端カルボキシル基濃度より高いポリアミド樹脂30〜90質量部、および繊維径10〜20μmでかつ、重量平均繊維長さが1.8〜30mmのガラス繊維70〜10質量部からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記ポリアミド樹脂がポリアミド66であることを特徴とする請求項1記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記ポリアミド樹脂が半芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物からなる射出成形品。
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