JP2007263873A - 磁歪式トルクセンサと、この磁歪式トルクセンサを用いた電動パワーステアリング装置 - Google Patents

磁歪式トルクセンサと、この磁歪式トルクセンサを用いた電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】トルク検出信号でゲイン減衰や位相遅れを生じない磁歪式トルクセンサと、操舵フィーリングを良好にできる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】磁歪式トルクセンサ20は、ステアリング軸に設けられ、印加トルクに応じて磁気特性が変化する磁歪膜20b,20cと、磁歪膜の周囲に配置され、磁気特性の変化に感応するコイル20e,20fと、コイルに直列に接続された抵抗素子20d,20gと、コイルと抵抗素子で形成する直列回路に周期的に電圧を印加する電圧印加部52と、コイルの端子電圧の変化を取り出す端子と、コイルの端子電圧の変化の位相を反転させる位相シフト部55,56と、上記端子での電圧変化と位相シフト部の出力端での電圧変化とを交互に選択して出力する選択部57,58と、選択部から出力される電圧信号を平滑して直流電圧を出力する平滑部63,64と備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、磁歪膜の周囲に設けられたコイルのインダクタンスの値の変化に基づいて印加トルクを検出する磁歪式トルクセンサと、この磁歪式トルクセンサを用いた電動パワーステアリング装置に関する。
電動パワーステアリング装置では、機械的に構成された操舵装置に対して補助力発生用モータを付設し、モータから供給する回転トルクを制御装置を用いて制御することにより、運転者の操舵トルクを軽減している。従来の電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに連結されたステアリング軸に、操舵トルクを検出するための操舵トルク検出部(トルクセンサ)が設けられている。操舵トルク検出部の検出値は、制御装置に対し、モータに適切な補助操舵トルクを発生させるための信号として供給される。
上記の操舵トルク検出部としては、従来、トーションバーの捻れを利用するトーションバー式トルクセンサが主流である。近年では磁歪式トルクセンサも知られている。磁歪式トルクセンサの一例としては、ステアリングホイールに連結されたステアリング軸の表面に例えばNi−Feメッキめっきのごとき磁歪膜を上下2箇所に設ける。2箇所の磁歪膜は、逆方向の磁気異方性となるように、軸方向所定幅で設けられる。ステアリング軸に操舵トルクが印加されたとき、磁歪膜での磁気異方性に基づいて発生する磁歪特性の変化を、磁歪膜の周囲に配設されたコイルにより検知する。このような磁歪式トルクセンサは、例えば特許文献1や特許文献2で開示されている。
特許文献1と特許文献2で開示された磁歪式トルクセンサでは、ステアリング軸の表面に形成した2つの磁歪膜のそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設けた構成である。励磁コイルを必要とする磁歪式トルクセンサの他に、検出コイルのみを使用し、検出コイルのインダクタンスの変化によりトルクを検出する方式もある(例えば、特許文献3と特許文献4を参照)。
特許文献3で開示される磁歪式トルクセンサでの検出回路は、ステアリング軸の表面に形成された磁歪膜の周囲のコイルと、コイルに直列に抵抗素子とスイッチング素子が接続されている。コイルに対しては所要電圧を印加する電源が設けられている。さらに、抵抗素子とコイルとの間の接続部には、出力信号の最低値を保持するボトムホールド回路が接続されている。
さらに特許文献4には、上記方式を改良した磁歪式トルクセンサが開示されている。この磁歪式トルクセンサでも、磁歪膜の周囲に配置されたコイルと、このコイルに直列に抵抗素子およびスイッチング素子とが接続されている。
特開2001−133337公報 特開2002−168706公報 特開2002−71476公報 特開2005−321316公報
従来の特許文献4等で開示される磁歪式トルクセンサでは、スイッチング素子のオン・オフ周波数は例えば約30kHzという高い周波数である。このため、磁歪膜の磁気特性の変化に感応するコイルの端子から取り出される電圧信号の変化の周波数も約30kHzとなる。その結果、ピークホールド回路の検出周期は、約30kHzの逆数という短い周期となる。しかし、通常、使用されるピークホールド回路の周波数特性は、30kHzという周波数領域ではゲインが減衰し、位相遅れも大きくなる。磁歪式トルクセンサの出力信号における位相遅れが大きいと、電動パワーステアリング装置の制御が不安定になり、操舵を補助するアシスト出力が振動的になる。この結果、操舵トルクが振動的になり、操舵フィーリングを不良にするという問題が提起される。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、従来装置で使用されたピークホールド回路の周波数特性による影響を受けず、トルク検出信号でゲインの減衰や位相遅れを生じることなく、回転軸に印加されたトルクを安定して検出できる磁歪式トルクセンサと、この磁歪式トルクセンサを用いることによって操舵フィーリングを良好にすることができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
本発明に係る磁歪式トルクセンサと電動パワーステアリング装置は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
第1の磁歪式トルクセンサ(請求項1に対応)は、回転軸に設けられ、印加されるトルクに応じて磁気特性が変化する磁気特性変化部(磁歪膜)と、磁気特性変化部の周囲に配置され、磁気特性の変化に感応するコイルと、コイルに直列に接続された抵抗素子と、コイルと抵抗素子で形成する直列回路に周期的に電圧を印加する電圧印加手段と、コイルの端子電圧の変化を取り出す端子と、コイルの端子電圧の変化の位相を反転させる位相シフト手段と、上記端子での電圧変化と位相シフト手段の出力端での電圧変化とを交互に選択して出力する選択手段と、選択手段から出力される電圧信号を平滑して直流電圧を出力する平滑手段と備えるように構成される。
第1の磁歪式トルクセンサによれば、回転軸に形成された磁気特性変化部が回転軸に印加されたトルクに応じてその磁気特性が変化するとき、磁気特性の変化をコイルの端子電圧の変化として取り出すことができる。コイルの端子電圧は、周期的に電圧を印加する電圧印加手段によって周期的な電圧信号として取り出される。この電圧信号における波形がオン動作に対応して立ち上がるとき、その波形の立ち上がり状態は回転軸に印加されるトルクに応じて変化する。最終的に印加トルクに応じた直流電圧信号は、コイルの周期的な端子電圧信号とこれを反転させた周期的電圧信号と交互に選択して合成した電圧信号を平滑手段で平滑することにより得られる。平滑手段から出力される電圧信号は、磁気特性変化部の磁気特性の変化に感応するコイルのインダクタンスの値の変化に応じた信号である。
第2の磁歪式トルクセンサ(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、磁気特性変化部は回転軸に2つ設けられ、2つの磁気特性変化部のそれぞれに対して、個別に、上記のコイル、抵抗素子、電圧印加手段、端子、位相シフト手段、選択手段、平滑手段を備えると共に、2つの平滑手段のそれぞれから出力する2つの電圧信号の差を演算する演算手段を備えるように構成される。この構成では、2つの磁気特性変化部の各々の演算手段から出力される電圧信号の電圧値の差を演算することにより、回転軸に印加されたトルクに応じた電圧値を得ることが可能となる。その電圧値が後段のサンプルホールド回路に入力される。このサンプルホールド回路は、従来のボトムホールド回路とは異なり、動作周波数特性に依存せず、安定した印加トルクの検出を可能にする。
第3の磁歪式トルクセンサ(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、抵抗素子は回転軸の周囲に配置されたコイルであり、磁気特性の変化に感応する少なくとも1つのコイルと抵抗素子として作用する少なくとも1つのコイルの各々の回転軸での巻き方向は同一であることで特徴づけられる。
また第4の磁歪式トルクセンサ(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、電圧印加手段は、定電圧源と、この定電圧源に接続されたスイッチング素子からなることで特徴づけられる。
本発明に係る電動パワーステアリング装置(請求項5に対応)は、ステアリング軸にトルクを印加するモータと、ステアリング軸に印加された操舵トルクを検出するトルク検出手段と、トルク検出手段からの信号に応じてモータの目標電流を演算する目標電流演算手段と、モータを駆動する駆動手段とを備え、トルク検出手段に上記の第1から第4のいずれかの磁歪式トルクセンサを用いると共に、磁歪式トルクセンサの回転軸をステアリング軸と一致させることで特徴づけられる。
本発明に係る磁歪膜トルクセンサによれば、印加トルクに対応する信号値をホールドするためのホールド手段に入力される電圧信号は直流電圧信号になり、このため、ホールド手段を周波数特性の減衰域で使用することがなくなり、当該ホールド手段での位相遅れもなくなり、センサ出力信号の位相遅れがなくなり、回転軸に印加されたトルクを安定して検出することができる
さらに本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、上記特性を有する磁歪膜トルクセンサを用いることにより、制御の位相遅れがなくなり、制御が安定化し、滑らかなかつ良好な操舵フィーリングを得ることができる。
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る磁歪式トルクセンサを搭載した電動パワーステアリング装置の全体構成を示す。電動パワーステアリング装置10は、ステアリングホイール11に連結されるステアリング軸12a等に対して補助用の操舵力(操舵トルク)を与えるように構成されている。ステアリング軸12aは、ステアリング軸12bと、自在軸継手12cを介して連結されており、ステアリング軸12aの上端はステアリングホイール11に連結され、ステアリング軸12bの下端にはピニオンギヤ13が取り付けられている。ピニオンギヤ13に対して、これに噛み合うラックギヤ14aを設けたラック軸14が配置されている。ピニオンギヤ13とラックギヤ14aによってラック・ピニオン機構15が形成される。ラック軸14の両端にはタイロッド16が設けられ、各タイロッド16の外側端には前輪17が取り付けられる。上記ステアリング軸12bに対し動力伝達機構18を介してモータ19が設けられている。動力伝達機構18は、ウォームギヤ18aとウォームホイール18bによって形成されている。モータ19は、操舵トルクを補助する回転力(トルク)を出力し、この回転力を、動力伝達機構18を経由して、ステアリング軸12b,12aに与える。またステアリング軸12bには操舵トルク検出部20が設けられている。操舵トルク検出部20は、運転者がステアリングホイール11を操作することによって生じる操舵トルクをステアリング軸12a,12bに加えたとき、ステアリング軸12a,12bに加わる当該操舵トルクを検出する。21は車両の車速を検出する車速検出部であり、22はコンピュータで構成される制御装置である。制御装置22は、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部21から出力される車速信号Vを取り入れ、操舵トルクに係る情報を車速に係る情報に基づいて、モータ19の回転動作を制御する駆動制御信号SG1を出力する。上記のラック・ピニオン機構15等は図1中で図示しないギヤボックスに収納されている。
上記において電動パワーステアリング装置10は、通常のステアリング系の装置構成に対し、操舵トルク検出部20、車速検出部21、制御装置22、モータ19、動力伝達機構18を付加することによって構成されている。
上記構成において、運転者がステアリングホイール11を操作して自動車の走行運転中に走行方向の操舵を行うとき、ステアリング軸12a,12bに加えられた操舵トルクに基づく回転力はラック・ピニオン機構15を介してラック軸14の軸方向の直線運動に変換され、さらにタイロッド16を介して前輪17の走行方向を変化させようとする。このときにおいて、同時に、ステアリング軸12bに付設された操舵トルク検出部20は、ステアリングホイール11での運転者による操舵に応じた操舵トルクを検出して電気的な操舵トルク信号Tに変換し、この操舵トルク信号Tを制御装置22へ出力する。また、車速検出部21は、車両の車速を検出して車速信号Vに変換し、この車速信号Vを制御装置22へ出力する。制御装置22は、操舵トルク信号T、車速信号Vに基づいてモータ19を駆動するためのモータ電流を発生する。モータ電流によって駆動されるモータ19は、動力伝達機構18を介して補助操舵力をステアリング軸12b,12aに作用させる。以上のごとくモータ19を駆動することにより、ステアリングホイール11に加えられる運転者による操舵力が軽減される。
図2は、電動パワーステアリング装置10の機械的機構の要部と電気系の具体的構成を示す。ラック軸14の左端部および右端部の一部は断面で示されている。ラック軸14は、車幅方向(図2中左右方向)に配置される筒状ハウジング31の内部に軸方向へスライド可能に収容されている。ハウジング31から突出したラック軸14の両端にはボールジョイント32がネジ結合され、これらのボールジョイント32に左右のタイロッド16が連結されている。ハウジング31は、図示しない車体に取り付けるためのブラケット33を備えると共に、両端部にストッパ34を備えている。
図2において、35はイグニションスイッチ、36は車載バッテリ、37は車両エンジンに付設された交流発電機(ACG)である。交流発電機37は車両エンジンの動作で発電を開始する。制御装置22に対してバッテリ36または交流発電機37から必要な電力が供給される。制御装置22はモータ19に付設されている。また38はラック軸の移動時にストッパ34に当たるラックエンドであり、39はギヤボックスの内部を水、泥、埃等から保護するためのダストシール用ブーツである。
図3は図2中のA−A線断面図である。図3では、ステアリング軸12bの支持構造、操舵トルク検出部20、動力伝達機構18、ラック・ピニオン機構15の具体的構成が明示される。
図3において、上記ギヤボックス24を形成するハウジング24aにおいてステアリング軸12bは2つの軸受け部41,42によって回転自在に支持されている。ハウジング24aの内部にはラック・ピニオン機構15と動力伝達機構18が収納され、さらに上部には操舵トルク検出部20が付設されている。ハウジング24aの上部開口はリッド43で塞がれ、リッド43はボルトで固定されている。ステアリング軸12bの下端部に設けられたピニオン13は軸受け部41,42の間に位置している。ラック軸14は、ラックガイド45で案内され、かつ圧縮されたスプリング46で付勢されピニオン13側へ押さえ付けられている。動力伝達機構18は、モータ19の出力軸に結合される伝動軸48に固定されたウォームギヤ18aとステアリング軸12bに固定されたウォームホイール18bとによって形成される。操舵トルク検出部20はリッド43に取り付けられている。
上記したように操舵トルク検出部20は、ステアリング・ギヤボックス24内に設けられており、ステアリング軸12bに作用する操舵トルクを検出し、その検出値は制御装置22へ入力されて、モータ19に適切な補助操舵トルクを発生させるための基準信号として供給される。
ここで用いられる操舵トルク検出20は磁歪式トルクセンサである。以下では、「磁歪式トルクセンサ20」という。図3に示すように、ステアリングホイール11からステアリング軸12a、自在軸継手12cを介して連結されたステアリング軸12bの表面に例えばNi−Feめっきのごとき磁気異方性を有する磁歪膜を上下2箇所(20bおよび20c)でそれぞれ逆方向の異方性となるように軸方向所定幅で設け、磁歪膜20b,20cに操舵トルクが作用したときに発生する逆磁歪特性を、磁歪膜20b,20cの周囲に配設されたコイル20d,20eの交流抵抗等を利用して検知するものである。また、コイル20f,20gは、抵抗素子として用いるコイルである。
次に、本発明の実施形態に係る磁歪式トルクセンサ20について詳細に説明する。この磁歪式トルクセンサ20は、図3に示されるように磁性材からなるステアリング軸12bの周囲面で2箇所に磁歪膜20b,20cが設けられ、ステアリング軸12bに設けられた磁歪膜の磁化の変化を検出するコイル20d,20eと20f,20gが設けられている。また、検出コイル20d,20eの外周にはヨーク部20hが設けられている。
図4は、磁歪式トルクセンサ20の回路構成を示す。磁歪式トルクセンサ20は、ステアリング軸12bの2箇所にそれぞれ逆の磁気異方性を持つように磁歪膜20b,20cが形成されている。これら磁歪膜20b,20cは、ステアリング軸12bにトルクが印加されると、そのトルクに応じて磁気特性が変化する磁気特性変化部として作用する。この回路では、ステアリング軸12bにトルクが印加されたときの磁歪膜20b,20cの磁化の変化に感応し、この磁化変化をインダクタンスの変化として検出するコイル20d,20eが磁歪膜の周囲に設けられている。またこの回路では、コイル20d,20eに対してそれぞれ直列に接続されたコイル20f,20g(以下「抵抗素子20f,20g」ともいう)が設けられる。さらに、コイル20d,20eと抵抗素子20f,20gで形成する2つの直列回路から成るブリッジ回路に対して所定周期で電圧を印加するための、スイッチング素子50a,50b,50c,50dとこれらに接続された定電圧源51とから成る電圧印加部52が設けられている。
また、図4に示した回路構成では、コイル20d,20eのそれぞれの両端の電圧(端子電圧)の変化を検出するため、抵抗素子20f,20gとコイル20d,20eの各接続部に検出端子53,54を設けている。さらに、コイル20d,20eのそれぞれの両端の電圧変化の位相を反転(180°シフト)させる位相シフト部55,56を設けている。検出端子53,54から取り出される電圧信号と、位相シフト部55,56の出力端から取り出される電圧信号を、交互に選択して出力する選択部57,58を設けている。選択部57は、固定側の検出用端子53,55aを交互に選択する選択子59(例えばマルチプレクサ)を備える。また選択部58は、同様に、検出用端子54,56aを選択する選択子60を備える。
また選択部57の次段にはフィルタ61が設けられる。フィルタ61は、選択部57から出力される電圧信号に含まれるノイズをカットすると共に当該電圧信号の変化を平滑する働きを有する。フィルタ61は、その入力段に、選択部57から出力される電圧信号の変化を平滑して直流電圧を出力する平滑部63を備えている。同様に、選択部58の次段には、その出力電圧信号に含まれるノイズをカットする共に当該出力電圧信号の変化を平滑するフィルタ61が設けられる。フィルタ61の入力段には選択部58からの出力電圧信号の変化を平滑して直流電圧を出力する平滑部64を備える。フィルタ61,62の次段には、フィルタ61,62の各増幅器61a,62aから出力される2つの直流電圧の差を演算する演算部65を備えている。
演算部65の後段には、演算部65からのアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部66と、AD変換部66からのデジタル信号をホールドするサンプルホールド回路67と、サンプルホールド回路67から出力される信号をトルク値に変換する電圧−トルク変換部が設けられている。
上記の電気回路の構成でのコイル20d,20e,20f,20g(なおコイル20f,20gは抵抗素子としても作用する)は、図5に示すように、実際のステアリング軸12bの周囲に巻設されている。図5に示されるように、電源端子70からの配線71はコイル20dの一端に接続され、コイル20dの他端からの配線72はコイル20fの一端に接続され、コイル20fの他端からの配線73は他の電源端子74に接続される。また、接続点75は配線76によりVS1の端子に接続されている。さらに電源端子70からの配線77はコイル20eの一端に接続され、コイル20eの他端からの配線78はコイル20gの一端に接続され、コイル20gの他端からの配線79は、電源端子74に接続されている。また、接続点80はVS2の端子に接続されている。このようにコイル20d〜20gの各々は、ステアリング軸12bの長手方向に発生する磁界H1,H2,H3,H4の方向が全て一致するように、それらの巻き線方向が設定されている。ステアリング軸12bの周囲に巻設されるコイル20d〜20gの各々の巻き方向は同じとなるように設定される。なお電源端子70,74には前述した電圧印加部52によって所定周期の交流電圧が供給される。
図5で示したコイルの配置と配線では、スイッチング素子をオンしたときに、各コイルがステアリング軸12bの長手方向に発生する磁束(磁界H1〜H4)の方向(矢印A,B,C,D)が全て一致するように、コイルの巻き線方向を設定しているため、ステアリング軸12bの全体に各コイルの発生する磁界の合算磁界(矢印F)をかけることが可能となる。これにより、磁歪膜20b,20cに対して均一な強い磁界をかけることが可能となり、ヒステリシスが低減し、ハンドルを切ってから戻したときに、磁歪式トルクセンサのヒステリシスにより、アシストが減少せずにハンドル戻りが悪化することが生じなくなり、滑らかな操舵フィーリングを安定して得ることができる。
次に、図6と図7を参照して、上記のように構成された磁歪式トルクセンサ20の動作を説明する。図6は図5を簡略して示した等価回路を示し、図7は図6の回路での各箇所での電圧変化を示している。図6の示した電気回路において、スイッチング素子50Aとスイッチング素子50Bは所定の周期でオン・オフ動作する。スイッチング素子50Aとスイッチング素子50Bは、定電圧源51におけるブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子50a,50b,50c,50dによって作られる。
一方の磁歪膜20cに対する検出回路について説明する。図7の(a)〜(e)は、それぞれ、スイッチング素子50Aをオン・オフしたときの印加電圧の時間変化、端子53と端子55aと選択部57の出力端のそれぞれからの出力電圧の時間変化、平滑部63の出力端からの出力電圧の時間変化を示す。図7中、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。まず図7の(a)で示すようにスイッチング素子50Aが時刻t1,t3,t5でオンし、t2,t4,t6でオフしたとき、この抵抗素子20gとコイル20eを含む回路に電流が流れ、端子53は、図7の(b)で示す時間変化で電圧が変化する。このときのコイル20eのインダクタンス(L)の値はL(μ1)であるとする。
図7の(b)において、V(t)は、端子53の時刻tにおける電圧であり、Eは電源の電圧である。またtは時間である。スイッチング素子50Aをオフする時刻t2,t4,t6は、好ましくは、コイル20eに流れる最大電流が、その最大電流により発生するコイル20eからの磁束により磁歪膜20cの磁化が飽和する領域に達するまでの値となるようにする。
また位相シフト部55の出力端からの電圧波形は、半周期(180°)の分だけシフトした電圧波形が出力されるように設定される。その出力電圧は図7の(c)で示される。
選択部57は、スイッチング素子50Bの半周期ごとに切り換えるように設定される。そのときの選択部57の出力端からの出力される電圧信号の波形は図7の(d)で示される。
その後ノイズカットフィルタ61を通過した後、平滑部63からは、図7の(e)で示すように直流電圧<V>が出力される。平滑部63では、選択部57から出力された電圧波形の平均値に比例した値が出力される。記号「<V>」は「電圧波形の平均値に比例した値」という意味である。
図8の(a)〜(e)は、それぞれ、コイル20eのインダクタンスの値(L(μ2))が前述のインダクタンスの値(L(μ1))より大きい場合におけるスイッチング素子50Aをオン・オフしたときの印加電圧の時間変化、端子53と端子55aと選択部57の出力端のそれぞれからの出力電圧の時間変化、平滑部63の出力端からの出力電圧の時間変化を示す。まず図8の(a)で示すように、スイッチング素子50Aが時刻t1,t3,t5でオンし、時刻t2,t4,t6でオフしたとき、この抵抗素子20gとコイル20eを含む回路に電流が流れる。コイル20eは、図8の(b)で示す時間変化で電圧が変化する。このときのコイル20eのインダクタンス(L)の値はL(μ2)であるとする。
また位相シフト部55の出力端から出力される電圧信号は、前述のように半周期の分だけシフトした電圧波形が出力されるように設定される。その出力電圧は図8の(c)で示される。
選択部57は、前述のようにスイッチング素子の半周期ごとに切り換えるように設定しておき、そのときの選択部57から出力される電圧信号の波形は図8の(d)で示される。
ノイズカットフィルタ61を通過した後、平滑部63からは図8の(e)で示すように直流電圧<V>が出力される。平滑部63の出力端からは、選択部57から出力された波形の平均値に比例した値が出力される。
図7と図8で示されるように、直流電圧<V>と直流電圧<V>は、インダクタンスの値L(μ)の違いによって異なった値を示す。インダクタンスL(μ)は、磁歪膜の透磁率μに依存し、その透磁率μは磁歪膜にトルクが作用することによって変化するため、この電圧を測定することにより、操舵トルクを検出することができる。
もう一方の磁歪膜20bに対する回路も上記と同様の動作がなされ、平滑部64からは、トルクを反映した直流電圧が出力される。
図9は、印加トルク(操舵トルク)と直流電圧との関係を示すグラフである。2つの磁歪膜20b,20cの各々の検出回路を経由して検出される直流電圧は曲線L10と直線L11となる。これは、磁歪膜20b,20cは、上下2箇所で、それぞれ逆方向となる磁気異方性を持つように堆積されており、その磁気異方性が反映された結果、縦軸に対して対称的になっている。直線L12は2つのコイル20e,20fによって検出された特性曲線L10から特性曲線L11を引いた値を示すものであり、操舵トルクがゼロのときにその値はゼロとなり、操舵トルクの変化にほぼ直線的に変化することを示す。直線L12の特性を利用することで、2つの検出用コイル20e,20fを含むそれぞれの検出回路の値から操舵トルクを検出することができる。
演算部65では、2つの直流電圧を減算する演算を行い、AD変換部66でAD変換してサンプルホールド回路67に入力している。サンプルホールド回路67からの出力は、電圧−トルク変換部68で電圧値をトルク値に変換して出力している。
このように、演算部65で出力される電圧と予めトルクと電圧との関係を求めたテーブルを有する電圧−トルク変換部68によってトルク(T)を検出することができる。
上記のように、サンプルホールド回路67に入力される電圧は直流電圧になる。このため、ホールド回路を周波数特性の減衰域で使用することがなくなり、ホールド回路の位相遅れもなくなり、センサ出力の位相遅れがなくなる。それにより、電動パワーステアリング装置の制御の位相遅れがなくなり、制御が安定化し、滑らかな操舵フィーリングを得ることができる。
本発明は、ステアリング軸に印加されるトルクを安定に検出できる磁歪式トルクセンサの実現に利用され、良好な操舵フィーリング特性を有する電動パワーステアリング装置の実現に利用される。
本発明の磁歪式トルクセンサが適用される電動パワーステアリング装置の全体構成図である。 電動パワーステアリング装置の機械的機構の要部と電気系の具体的構成を示す図である。 図2中のA−A線断面図である。 本発明に係る磁歪式トルクセンサの実施形態を説明するための電気回路図である。 コイルの配置と結線の関係を具体的に示す図である。 本発明に係る磁歪式トルクセンサの要部構成を示す電気回路図である。 第1のインダクタンス値での図6に示した電気回路における各箇所での電圧波形を示す波形図である。 第2のインダクタンス値での図6に示した電気回路における各箇所での電圧波形を示す波形図である。 操舵トルクと検出電圧との関係を示すグラフである。
符号の説明
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
18 動力伝達機構
19 モータ
20 操舵トルク検出部(磁歪式トルクセンサ)
20b,20c 磁歪膜
20d,20e コイル
20f,20g コイル(抵抗素子)
22 制御装置
51 定電圧源
52 電圧印加部
53,54 検出端子
55,56 位相シフト部
57,58 選択部
63,64 平滑部
65 演算部

Claims (5)

  1. 回転軸に設けられ、印加されるトルクに応じて磁気特性が変化する磁気特性変化部と、
    前記磁気特性変化部の周囲に配置され、前記磁気特性の変化に感応するコイルと、
    前記コイルに直列に接続された抵抗素子と、
    前記コイルと前記抵抗素子で形成する直列回路に周期的に電圧を印加する電圧印加手段と、
    前記コイルの端子電圧の変化を取り出す端子と、
    前記コイルの端子電圧の変化の位相を反転させる位相シフト手段と、
    前記端子での電圧変化と前記位相シフト手段の出力端での電圧変化とを交互に選択して出力する選択手段と、
    前記選択手段から出力される電圧信号を平滑して直流電圧を出力する平滑手段と、
    を備えることを特徴とする磁歪式トルクセンサ。
  2. 前記磁気特性変化部は前記回転軸に2つ設けられ、
    2つの磁気特性変化部のそれぞれに対して、個別に、前記コイルと、前記抵抗素子と、前記電圧印加手段と、前記端子と、前記位相シフト手段と、前記選択手段と、前記平滑手段とを備えると共に、
    2つの前記平滑手段のそれぞれから出力する2つの電圧信号の差を演算する演算手段を備えることを特徴とする請求項1記載の磁歪式トルクセンサ。
  3. 前記抵抗素子は前記回転軸の周囲に配置されたコイルであり、前記磁気特性の変化に感応する少なくとも1つの前記コイルと前記抵抗素子として作用する少なくとも1つの前記コイルの各々の前記回転軸での巻き方向は同一であることを特徴とする請求項1または2記載の磁歪式トルクセンサ。
  4. 前記電圧印加手段は、定電圧源と、この定電圧源に接続されたスイッチング素子とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁歪式トルクセンサ。
  5. ステアリング軸にトルクを印加するモータと、
    前記ステアリング軸に印加された操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
    前記トルク検出手段からの信号に応じて前記モータの目標電流を演算する目標電流演算手段と、
    前記モータを駆動する駆動手段とを備え、
    前記トルク検出手段に請求項1〜4のいずれか1項に記載した磁歪式トルクセンサを用いると共に、前記磁歪式トルクセンサの前記回転軸を前記ステアリング軸と一致させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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